説明

電池を誘導充電するシステムおよび方法

電池を再充電する誘導充電システムに関する。本システムは、充電回路および2次回路を含む。2次回路は、フィードバック機構を含み、1次コイルと2次コイルとの誘導結合を通して充電回路にフィードバックを与える。充電回路は、少なくとも部分的にはフィードバック機構からのフィードバックに応じて、1次コイルに印加された電力の周波数を制御する周波数制御機構を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
誘導給電を用いて電池を充電することは周知である。電気自動車の誘導充電は、歯ブラシの電池の充電のような小さな電気器具の電池の充電と同様に、若干の成功を収めている。誘導充電は、電池と充電器との間に物理的な接続を要しないため、大幅に利便性が向上するからである。しかしながら、全ての電池が、簡単に誘導充電できるとは限らない。リチウムイオン電池(Li−Ion)は、そういうものの1つである。
【0002】
リチウムイオン電池の再充電は、他の電池の再充電ほど簡単ではない。リチウムイオン電池は、過充電を吸収することができない。完全に充電されたリチウムイオン電池に一定の電圧が印加されると、電池の故障につながり得る金属リチウムめっきが生成されることがある。したがって、過充電することのないように注意を要する。
【0003】
逆に言えば、リチウムイオン電池を全容量充電することは、多少困難である。再充電の間に電池に一定電流を印加することにより、リチウムイオン電池の最大電圧に比較的速く達することできる。しかしなから、最大電圧に達していても、リチウムイオン電池は、完全には充電できていない。さらに充電しないと、電池は、約65%充電にとどまる。一定電圧を最大電圧に到達した後も引き続き電池に印加すると、電池は過充電となり、早期の電池故障を起こすことにつながる。
【0004】
従来、リチウムイオン電池を完全に充電するための電池充電器が開発されている。通常、その充電器は、定電流定電圧スキーマを用いて電池を充電する。放電した電池は、Cをアンペアアワー当たりの電池容量として、まず0.1C〜1Cアンペアの範囲の一定の電流レベルで充電され、約4.2Vの所望の電圧に達するまで充電される。この時点で、電池充電器は、定電圧モードに切り替わり、十分な電力を供給して追加的に充電をしながらこの最終の電圧を維持する。
【0005】
通常のリチウムイオン電池の充電プロファイルを図1に示す。定電流が所定の期間印加される。この局面では、リチウムイオン電池の充電は、概ね一定である。通常の電池では、この局面は、1時間をやや切る時間続く。リチウムイオン電池は、完全充電に達するより前に、好適な電圧付近の一定電圧を最終的に示す。それから、定電圧がリチウムイオン電池に印加される。電池は通常、約1時間の定電圧充電の後に、最大充電に達する。
【0006】
リチウムイオン電池の充電が図1に示す充電プロファイルに追随しない場合は、電池が完全に充電されていないかまたは充電により電池が破損した恐れがある。
【0007】
リチウムイオン電池の充電は、しばしば電池が充電前に完全に放電されていないために、さらに複雑になる。いくらかの残留電荷が電池に残る場合には、最適な充電のためには、定電流充電の後にいくらかの定電圧充電が必要とされる。あるいは、最適な充電のため定電圧充電のみが必要とされることもある。より良い性能のためには、電池充電器は、電池の充電状態を補償する機構を提供するべきである。
【0008】
リチウムイオン電池の充電は、誘導充電を使用する場合には特に問題がある。電池の誘導的な充電では、1次コイルは充電器内部に位置し、電池内部に位置する誘導の2次側に電力を供給する。2次電圧は、整流されて電池に印加され、電池を再充電する。電池と電池充電器との間には、直接的な物理的接続はない。電池と電池充電器との間に直接的な物理的接続がないため、電池の状態に関する情報が電池充電器で容易に入手できない。
【0009】
同時に、ポータブル機器では、軽量化が要求される。したがって、電池の充電状態を監視し、その情報を誘導充電器に中継する複雑な電気回路を備えると、ポータブル機器の価格や大きさ、重量が増加する。
【0010】
電池に直接接続される比較的簡単な回路を使用して、固有の充電サイクルを有する電池を充電することができる誘導システムが強く望まれている。
【発明の概要】
【0011】
固有の充電サイクルを有するリチウムイオン電池のような電池を再充電する誘導システムは一般的に、充電電力を誘導的に供給するための1次コイルを有する充電器と、充電電力を誘導的に受電してその電力を電池に印加する2次回路とを有する。2次回路は、フィードバック機構を有し、1次コイルと2次コイルの誘導的な結合を通じて充電回路にフィードバックを与える。充電回路は、少なくとも部分的にはフィードバック機構からのフィードバックに応じて1次コイルに印加する電力の周波数を制御する周波数制御機構を有する。
【0012】
一実施形態では、フィードバック機構は、2次回路の反射インピーダンス(reflect impedance)を変化するサブ回路を有する。この実施形態では、充電回路は、充電回路の電力特性を監視するフィードバック検出器を有することができる。この電力特性は、少なくとも部分的には2次回路の反射インピーダンスの変化に応じて変化する。この実施形態では、フィードバック検出器は、1次回路と接続しているので、1次コイルを流れる電流を制御器が監視することができる。
【0013】
一実施形態では、フィードバック機構は、過電圧検出器、過電流検出器またはその双方を有することができる。この実施形態では、検出器は、トランジスタのような1つ以上のスイッチを制御するように配置することができる。過電圧状態または過電流状態のいずれかが2次回路で検出された場合、スイッチはオンし、2次コイルからの電流は、抵抗を通して電池から分路される。このようにして、電池は、過電圧状態や過電流状態に著しくさらされることから保護される。フィードバック機構は、電池と直接接続することができる。
【0014】
一実施形態では、フィードバック検出器は、1次タンク回路と接続した電流センサである。この実施形態では、電流が、2次のフィードバック信号回路が抵抗を通して分路することにより、2次コイルを流れる電流が増加し、このことにより2次回路の反射インピーダンスが変化して1次コイルを流れる電流の増加をもたらす。1次コイルを流れる電流の増加は、1次回路内の電流センサにより検出される。1次回路は、ピーク検出器を有することができ、これによって、電池が過電圧または過電流状態であるか否かを検出するフィードバック信号を制御器に与えることができる。一実施形態では、周波数制御機構は、周波数の適切な調節を行い、2次コイルへの電力供給が減少することにより過電圧または過電流状態が解消する。
【0015】
一実施形態では、充電回路は、インバータとタンク回路とを有する。この実施形態では、インバータの動作周波数は減少して、1次コイルに印加する電力の周波数をタンク回路の共振周波数の方へ移動する一方、インバータの動作周波数は増加して、1次コイルに印加する周波数をタンク回路の共振周波数から離すように移動する。インバータ周波数が増加することにより、1次コイルに印加する電力を共振の方へ移動することができ、これによって電力伝送を増加する一方、インバータ周波数が減少することにより、1次コイルに印加する電力をタンク回路の共振周波数から離すように移動することができ、これによって電力伝送を減少させるように配置することが同様に可能である。
【0016】
他の態様では、本発明は、1次コイルを含む充電回路と2次コイルを含む2次回路とを有する誘導充電システムの動作方法を提供する。この方法は一般的に、電池が2次回路内に存在するか否かを検出するステップと、1つ以上の充電サイクル手段で電池を充電するステップとを有する。充電ステップは一般的に、
ある周波数で1次コイルに電力を印加するステップと、
誘導的に結合する1次コイルと2次コイルを介する2次回路からのフィードバックを評価するステップと、
2次回路からのフィードバックに応じて1次コイルに印加する電力の周波数を調整するステップと、
を含む。このように、1次コイルに印加する電力の周波数は変化して電池への充電を最適化する。
【0017】
一実施形態では、本方法は、タンク回路を有する充電回路と共に利用される。この実施形態では、充電サイクルは、1次コイルに印加した電力をタンク回路の共振周波数の方へ移動するステップ、もしくは1次コイルに印加した電力をタンク回路の共振周波数から離すように移動するステップを選択的に有することができる。充電回路は、インバータを有することができる。このような実施形態では、1次コイルに印加した電力の周波数を移動するステップは、インバータの動作周波数を移動するステップとしてさらに規定することができる。
【0018】
一実施形態では、充電ステップは一般的に、
特定の周波数で1次コイルに電力を印加するステップと、
充電回路からのフィードバック信号が充電回路に受信されたか否かを判定するステップと、
1次コイルに印加する電力の周波数をフィードバック信号に応じて変更して、2次回路に供給する電力を増加または減少するステップと
を有する。一実施形態では、周波数を変更するステップは、
フィードバック機構からのフィードバック信号を受信したときに、1次コイルに印加する電力の周波数を共振から離すように移動するステップ、
またはフィードバック機構からのフィードバック信号を受信しないときに、1次コイルに印加する電力の周波数を共振の方へ移動するステップ、
をさらに含んで規定される。
【0019】
一実施形態では、充電ステップは一般的に、
フィードバック信号を受信するまで1次コイルに印加する電力の周波数を徐々に共振の方へ移動するステップと、
フィードバック信号を受信した後にフィードバック信号を受信しなくなるまで1次コイルに印加する電力の周波数を共振から徐々に離すように移動するステップと、
充電期間中にその周波数で1次コイルに電力を印加するステップと、
を含む。プロセスは繰り返すことができる。
【0020】
一実施形態では、フィードバック信号を受信したか否かを判定するステップは、充電回路内の電流を監視するステップと、監視した電流と所定のしきい値とを比較するステップを含む。
【0021】
一実施形態では、本方法は、1つの充電サイクルの終了する時間が最小充電サイクル時間よりも短いときに充電サイクルを終了するステップをさらに含む。本方法は、1次コイルに印加する電力の周波数が上限および/または下限に達したときに充電サイクルを終了するステップをさらに含むことができる。
【0022】
一実施形態では、検出ステップは、
所定のプローブ周波数で1次コイルに電力パルスを印加するステップと、
反射インピーダンスを監視するステップと、
監視した反射インピーダンスに応じて電池があるか否かを判定するステップと、
をさらに含む。
【0023】
本発明は、非線形の充電プロファイルによって少数の構成要素で誘導システムを実行できる、簡便かつ効果的な誘導充電回路を提供する。過電圧検出器および過電流検出器は、充電電力の周波数を駆動するために使用するフィードバックを与えるだけでなく、害を及ぼす恐れがある電力状態から電池を保護する。充電プロファイルは、システムの動作を命令する複数の記憶された値を変えることで簡単に変更できる。本発明は、携帯電話やデジタルの携帯端末、携帯ゲーム機器、携帯メディアプレーヤ、他の同種の機器などのポータブルの電子機器の充電に使用するのに適する。このような事情で、2次回路は、ポータブル電子機器を充電回路に近接近して置いて充電するように、ポータブル電子機器に組み入れることができる。これによって機器を充電器に差し込む必要性がなくなる。
【0024】
本発明のこれらと他の目的および利点、特徴は、本実施形態および図面を参照することにより十分に理解され、評価される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】通常のリチウムイオン電池の充電プロファイルを示す図である。
【図2】電池の誘導充電のシステムを示す図である。
【図3】1次コイルと2次コイル間の電力伝送を示す図である。
【図4】図2のブロック図に対応する充電回路の回路を示す図である。
【図5】図2のブロック図に対応する電池側の回路を示す図である。
【図6】増加した2次コイル内に起因するピーク検出器の出力を示す図である。
【図7】電池充電器の動作方法のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態に従う誘導充電システムを図2に示す。誘導充電システム4は、リチウムイオン電池のような非線形充電プロファイルを有する電池を誘導的に充電するように構成されている。このシステム4は、一般的に充電回路6と2次回路8を有する。充電回路6は、一般的に1次コイル15および1次コイルに所望の周波数を印加する周波数制御器80、2次回路8からのフィードバックを受信するフィードバック検出器82を有する。2次回路8は、一般的に充電回路6からの誘導電力を受電する2次コイル30および2次回路8の電源または電流の指示を充電回路6にフィードバックするフィードバック機構84を有する。周波数制御器80は、1次コイル15に印加される周波数を2次回路8からのフィードバックに応じて変化させる。標準的なリチウムイオン電池の充電に関して説明するが、本発明は、異なる充電プロファイルを有する電池を含む他の型の電池を充電するためにも適している。
【0027】
これまで述べたように、充電回路6は、一般的に周波数制御器80および1次コイル15、フィードバック検出器82を有する。本実施形態では、周波数制御器80は、制御器20および発振器18、ドライバ16、インバータ10を有する。この実施形態では、これらの構成要素は、全体でタンク回路12を駆動する。より具体的には、インバータ10は、AC(交流電流)電力をDC(直流電流)電源14からタンク回路12に供給する。タンク回路12は、1次コイル15を有する。タンク回路12は、直列共振回路とすることも並列共振回路とすることもできる。この実施形態では、ドライバ16は、インバータ10内部のスイッチを動作するのに必要な信号を供給する。次いで、ドライバ16は、発振器18で設定した周波数で作動する。次いで、発振器18は、制御器20により制御される。制御器20は、例えば、PIC18LC1320のようなマイクロコントローラとすることができ、あるいはより汎用的なマイクロプロセッサとすることができる。本実施形態では基本的に別の機器として示されているが、代替的にはドライバ16、発振器18、およびは、一体化することができ、制御器20内部にモジュールとして実現することもできる。
【0028】
本実施形態では、フィードバック検出器82は、タンク回路12の電流を検出する。制御器20は、動作中にピーク検出器22からの信号を用いて発振器18の動作周波数を判定することを支援し、またこれによってインバータ10の周波数を判定する。本実施形態のフィードバック検出器82は、タンク回路12の電流を検出するが、充電回路6の電力の他の特性は、電池に関する充電情報を提供することができる。
【0029】
2次回路8は、一般的に2次コイル30および整流器32、フィードバック機構84を有する。2次コイル30は、1次コイル15から電力を誘導的に受電する。整流器32は、DC電力を供給し、電池34を充電する。この実施形態では、フィードバック機構84は、電池34に印加する電流または電圧がしきい値を超えたときに、フィードバックを与えるように構成される。図のように、本実施形態のフィードバック機構は、一般的に過電圧検出器36および過電流検出器40、ORゲート38、スイッチ42、抵抗44を有する。過電圧検出器36の出力は、電池34の電圧が所定のレベルを超えるか否かを示す。同様に過電流検出器40の出力は、電池34に流入する電流が、所定の量を超えるか否かを示す。電流検出器40の出力も電圧検出器36の出力もORゲート38の入力に接続する。ORゲート38は、個別の回路にすることもでき、またこれらの検出器の出力の接続部とすることもできる。ORゲート38の出力は、スイッチ42に接続する。スイッチ42は、ORゲート38の出力により制御され、整流器32と抵抗44とに直列に接続する。スイッチ42は、例えばバイポーラトランジスタ、電解効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタのような任意の適当なスイッチにできる。抵抗44は、スイッチ42と接地とに直列に接続されている。
【0030】
動作中に、過電圧検出器36または過電流検出器40の出力が過電圧状態または過電流状態を検出した場合には、ORゲート38の出力がスイッチ42をオンにする。スイッチ42がオンになると、整流器から流れる電流が抵抗44を通り接地に流れる。
【0031】
抵抗44のインピーダンスは、電池34のインピーダンスより非常に小さいので、電流サージが抵抗44内で生じて、これにより2次コイル30内に電流サージが生じる。スイッチ34がオンのとき、ダイオード64により電池34は、いかなる電流も供給しない。2次コイル30の電流サージにより、1次コイル15を通じて充電回路6に同様の電流サージを生る。電流サージは、ピーク検出器22に検出される。そして制御器20は、発振器18の周波数を変更する。
【0032】
本実施形態では、1次コイル15と2次コイル30とは、結合が弱い。この実施形態では、2つのコイルが弱く結合しているので、共振周波数の周囲の電力伝達の曲線の傾きは、コイル15と30が強く結合するときよりも急ではない。コイル15と30の電力伝達の曲線の例を、図3に示す。この実施形態では、電力伝達は、インバータ10が共振で動作するときに最大になる。しかしながら、インバータ10を共振で動作しなくても、共振外でインバータを動作して十分に電力伝達することができる。一般的にインバータ10は、周波数AとBの間で動作する。周波数Bは、共振周波数よりも幾分ずれている。周波数AとBの間では、電力伝達の曲線は、制御器20内のソフトウェアの参照テーブルによって区分的に直線化できる。したがって、インバータ10の動作周波数を減らすことにより、1次コイルから2次コイルへの電力伝達を概ね予見可能な形で増やすことになる。グラフに見られるように、共振周波数よりも小さい動作周波数を使用することは、同様に効果的であろう。そのようにすれば、動作周波数を増加させることにより、電力伝達を増加させることになり、その逆もしかりである。
【0033】
図4は、図2のブロック図と対応する充電回路6のシステムの回路図である。ピーク検出器22(22Aと22Bとからなる)は、1次コイル15と直列に接続されており、1次コイル15に流れる電流に比例し変換器50を通る信号を供給する。この信号は、ダイオード52で整流され、キャパシタ54を充電するのに使用される。オペアンプ56と58は、制御器20でサンプリングする信号を平滑化するのに使用される。この特定の回路図は、一例であり本発明の範囲を特定の回路図に限定することを意図するものではない。
【0034】
図5は、システムの2次回路8の回路図である。図4の充電回路図と同様に、図5の2次回路図は、一例であり本発明の範囲を特定の回路図に限定することを意図するものではない。2次コイルの電力は、キャパシタ60を充電するのに使用され、さらに電池34と接続した電気回路用の電力供給装置として使用される。整流器32は、2次コイル30から供給されたAC電流をDC電流に変換する。キャパシタ62は充電され、電池34を充電するためのDC電源を提供する。阻止ダイオード64は、2次コイル30が受電してないときやフィードバック機構が過電圧または過電流状態の信号を送っているときに電池34が放電することを防止する。
【0035】
過電圧検出器36または過電流検出器40のいずれかにより、過度の電圧または電流が電池34に印加されたと判断された場合は、トランジスタ42はオンし、これにより抵抗44を通じてキャパシタ62を放電し、電池34の電圧の低下をもたらす。この実施形態では、2次回路8は、阻止ダイオード64を有する。このため電流は、電池34からキャパシタ62へ流入しない。
【0036】
電流が抵抗44を流れると、付加的な電流が2次コイルから引き出され、これにより1次コイル15の電流の増加をもたらす。
【0037】
キャパシタ62の電圧が低下するので、電池34の電圧は、電池34を流れる電流が低下するにつれて低下する。したがって、過電圧状態または過電流状態は修正される。検出器36と40は、クリアされ、これによりトランジスタ42にオフになる。トランジスタ42が過電流または過電圧の状態によりオンし、過電流または過電圧の状態が修正されることによりオフする時間までの期間が、その信号を送る信号時間である。
【0038】
本回路設計では、この信号時間の継続時間は、検出回路36と40の内部にある2つのRC回路66と68とで制御する。この実施形態では、電圧検出器36は、電池34の電圧の過電圧状態付近にあるとき、発振を減少させるために、約80mVのヒステリシスを有するように構成される。
【0039】
このように、トランジスタ42がオンすると、2次コイル20の電流が増加し、1次コイル15の電流の増加をもたらす。この電流増加は、ピーク検出器22により検出される。1次コイルの電流の増加によりもたらされたピーク検出器の出力を、図6に示す。本実施形態におけるピーク検出器出力は、約10msの間に約1.55V増加している。この信号の特性は、回路構成の特性によって、アプリケーションごとに異なる。例えば、増加幅と増加した信号の期間は所望のとおり制御できる。
【0040】
制御器20は、継続的にピーク検出器22の出力をサンプルしている。急激に増加したことが検出されると、FB_flagと呼ばれる内部フラグがセットされる。減少したことが検出されると、FB_flagはクリアされる。しかしながら、以下FB_latchと呼ばれるFB_flagのコピーが同様にセットされる。FB_latchは、減少したことが検出されてもクリアされない。制御器20によってのみクリアされる。したがって、FB_latchは定期的に制御器20によりチェックされ、与えられた時間の間に過電圧状態または過電圧状態が生じたか否かについて判定することができる。このようにして、システムは、制御器へのフィードバック機構を備える。
【0041】
ポータブル機器のユーザーは、完全に充電する前に充電回路6から機器を取り外すことができる。加えて、ユーザーは、充電器に完全に放電する前に機器を置くことができる。最適に電池を充電するために、誘導充電器は、電池があることを検出できるとともに、電池の固有の充電プロファイルを補償することができる。
【0042】
図7は、2次回路8が充電回路6に近接しているか否かを検出し、2次回路があるときに電池を最適に充電するプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。
【0043】
プロセスが開始する(ステップ100)。プローブ・プロセス99が開始される。制御器20は、所定の時間周期PROBE_INTERVALの間待機する(ステップ102)。PROBE_INTERVALが経過したのち、制御器20により、インバータ10は、1次コイル15を通して低周波数電流をPROBE_FREQUENCYで流す(ステップ104)。1次コイルを流れる電流が検出される(ステップ106)。
【0044】
2次回路8がある場合は、充電回路によるプローブは、2次コイル30にプローブ電流を生じさせることになる。電池34は、プローブ時に完全に充電していても損傷することはない。第1に、プローブは10〜20ミリ秒の短い持続時間である。この実施形態では、このときの休止期間は、通常は数秒の長さである。さらに過電圧検出器36および過電流検出器40は、トランジスタ42によって過度のプローブ電流を電池34よりもトランジスタ44に分路することになる。
【0045】
この実施形態では、PROBE_FREQUENCYにおける1次コイルの電流量は、あらかじめ実験的に決定され、制御器の記憶部に保存されている。1次コイル15の電流が所定の無負荷1次電流と近似的に等しくなった場合は(ステップ108)、2次回路8は2次回路8の中に存在しない。CHARGED_FLAGはクリアされ(ステップ109)。システムは、次のPROBE_INTERVALの間待機した後に、プロセスを再び開始する。
【0046】
1次コイル15を流れる電流が所定の無負荷1次電流とほぼ等しいというのではないときには、2次回路が存在する。
【0047】
そして、CHARGED_FLAGがチェックされる(ステップ111)。CHARGED_FLAGは電池が完全に充電されているか否かを示す。CHARGED_FLAGがセットされてないときは、充電プロセスを開始する。
【0048】
インバータの周波数は、制御器20によりFREQ_STARTにセットされる(ステップ110)。ここでシステムは、所定の期間の遅延を設けて、過渡信号を除去する(ステップ112)。
【0049】
そして制御器20は、先に説明したフィードバック信号を受信しているか否かを判定する。受信していない場合は、周波数はΔFREQだけ減少する(ステップ116)。この実施形態では、周波数が減少すると、システムは共振の方へ移動し、充電器回路6から電池34への電力伝送が増加する。
【0050】
ΔFREQは、一定にできるが、またΔFREQが使用される特定の時間におけるインバータの動作周波数で索引付けされる参照テーブルからΔFREQの値を得ることにより決定できる。ΔFREQ用に選択した値は、周波数に依存して選択され、動作周波数がΔFREQずつ増加または減少する場合、対応する電流の増減が全ての動作周波数におけるΔFREQに関してほぼ同じものとすることができる。例えば、充電回路6がタンク回路12の共振周波数付近で動作する場合は、動作周波数を100Hz減らすことにより、タンク回路12を流れる電流が実質的に増加することになる。一方、比較的共振から離れて充電回路が動作している場合は、100Hzの変化は、1次側の電流に実質的な増加をもたらすことにはならない。したがって、ΔFREQは、低周波数または高周波数で1次電流がほぼ同一の変化するように選択することができる。
【0051】
その次に、周波数はMin_FREQと比較される(ステップ118)。Min_FREQは、インバータの所定の最小動作周波数である。一般的に、Min_FREQは、タンク回路12の共振周波数よりいくらか大きい。周波数がMin_FREQの周波数よりも小さいか同一である場合は、制御器20は、プローブ・プロセスに戻る。周波数がMin_FREQの周波数より大きい場合は、制御器20は、所定の期間の時間待機し(ステップ112)、フィードバック信号の発生をチェックする(ステップ114)。
【0052】
このようにして、フィードバック信号が制御器に検出されない限り、インバータ10の周波数は繰り返し減少し、最大電力を電池34に伝送するようになる。
【0053】
フィードバック信号が検出された場合は、電池34への電力伝送は、減少させるべきである。このため、周波数は、ΔFREQの値の2倍に等しい量だけ増加する。これも参照テーブルから得ることができる(ステップ122)。周波数を、Max_FREQと比較する(ステップ124)。Max_FREQは、インバータの最大動作周波数を示す所定の値である。周波数が所定の最大周波数Max_FREQより大きい場合は、充電回路6はプローブ・プロセス99に戻る。周波数がMax_FREQより大きくない場合は、制御器20は待機し(ステップ126)、フィードバック信号をチェックする(ステップ128)。
【0054】
フィードバック信号が検出されている場合は、インバータ周波数は、再びΔFREQの値の2倍減少する(ステップ122)。そしてプロセスは継続する。一方、フィードバック信号が検出されない場合は、システムは待機して、その時点の周波数の電力を1次コイル15に印加する(ステップ130)。ステップ130の長時間の充電遅延は、一般的にステップ112または126の遅延よりも非常に大きい。長時間の充電遅延によりかなりの量の電力が電池34に供給されることになる。
【0055】
このようにして、電池34の充電が増加して、フィードバック信号が検出され、その結果、システムは徐々にインバータ10の動作周波数を増加する。これにより、電池34への電力伝送が減少する。動作周波数の増加は、フィードバック信号を受信しなくなるまで続き、この場合には、電力は、長期間に亘り電池34に供給され、これにより電池34を最大に充電するごとができる。
【0056】
ステップ124に戻り、動作周波数がMax_FREQよりも大きい場合は、制御器20は、CHARGE_TIMEとMIN_CHARGE_T1MEとを比較する(ステップ132)。CHARGE_TIMEは、以前の充電サイクル経過時間の長さであり、一方MIN_CHARGE_T1MEは、所望の最小充電サイクル時間である。CHARGE_T1MEがMIN_CHARGE_T1MEよりも小さい場合は、電池34は完全に充電されたと考えられ、CHARGED_FLAGが設定される(ステップ134)。さらに、LEDが点灯し、ユーザに電池34が完全に充電されたことを示すことができる。
【0057】
システムは、故障状態を扱うように構成することができる。一実施形態では、制御器20は、カウンタを有することができ、そのカウンタは、全体の充電サイクルがフィードバック信号を生成せずに行われるごとに値をカウントする。カウンタ値が所定の故障の最大数よりも大きくなった場合、システムは、回復できない故障状態に陥る。この結果、制御器20は、駆動信号の動作を停止することができ、赤色LEDを高速点滅することができる。この実施形態では、充電回路6は、充電器の電源をいったん切って入れ直すことによってのみ、動作に戻れることができる。すなわち、充電回路6は、外部の電源から遮断する必要がある。
【0058】
さらにFREQ_TRIGGER_SAFEで指定された所定の安全な周波数よりも上の周波数でフィードバックを駆動する場合は、最小周波数は、FREQ_MIN_SAFEにセットされる。アルゴリズムで周波数をこのレベルよりも低く選択した場合は、システムは、通常通りにプローブ・プロセスを続ける。システム内に故障がある場合は、故障状態が生じることとなり、充電回路6は、電源をいったん切って入れ直すまで使用できなくなる。
【0059】
本発明は、2次回路のインピーダンスの変化(例えば、抵抗の変化により生じるもの)を使用してフィードバック信号を生成している実施形態に関して説明されているが、本発明は、本実施形態のフィードバック方法に限定されるものではない。本発明は、特に、抵抗および/またキャパシタ、インダクタンスを直列または並列にする構成利用して、フィードバック信号を生成することができる。
【0060】
これまでの説明は、本発明の当面の実施形態についての記載である。多くの代替および変更が本発明の精神と広範囲の態様から逸脱することなく行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、前記電源と電気的に接続した制御器と、前記制御器と電気的に接続した1次を有し、前記制御器は、ある周波数で前記電源から前記1次に電力を印加する、1次回路と、
前記1次と誘導的に結合した2次と、前記2次と電気的に接続したフィードバック回路と、前記2次と電気的に接続した電池を含む2次回路と、
を備え、
前記フィードバック回路は、前記誘導的な結合を介して前記1次にフィードバックし、
前記制御器は、前記フィードバック回路からの前記フィードバックに応じて、少なくとも部分的に前記1次に印加する前記電圧の特性を制御する、
誘導充電システム。
【請求項2】
前記フィードバック回路は、前記2次回路の反射インピーダンスを変更するサブ回路を有する請求項1に記載の誘導充電システム。
【請求項3】
前記2次回路の反射インピーダンスにおける変化の検出に応じて検出信号を生成する、前記1次と電気的に接続したフィードバック検出器を有する請求項1に記載の誘導充電システム。
【請求項4】
前記フィードバック回路は、
スイッチを制御するために配置される過電圧検出器と過電流検出器とを含み、
過電圧状態または過電流状態に応じて前記スイッチを動作して、前記2次からの電流を抵抗素子を通して前記電池から分路する、
請求項1に記載の誘導充電システム。
【請求項5】
前記1次回路は、電流センサを含み、
前記抵抗素子を通して分路される前記電流に応じて、前記2次を流れる前記電流は増加して、前記2次回路の反射インピーダンスは変化して、前記1次を流れる電流は増加し、
前記電流センサは、前記1次回路内の前記増加した電流を検出する、
請求項4に記載の誘導充電システム。
【請求項6】
前記1次回路は、過電圧状態または過電流状態の検出に応じて検出信号を前記制御器に与えるピーク検出器を含む請求項1に記載の誘導充電システム。
【請求項7】
前記制御器は、前記1次に印加する前記電力の前記周波数を調整して前記過電圧状態または前記過電流状態を修正する請求項6に記載の誘導充電システム。
【請求項8】
前記制御器は、インバータを含み、
前記インバータの動作周波数は減少して、前記1次に印加する前記電力の前記周波数を前記1次の共振周波数の方へ移動し、
前記インバータの前記動作周波数は増加して、前記1次に印加する前記電力の前記周波数を前記1次の前記共振周波数から離すように移動する、
請求項1に記載の誘導充電システム。
【請求項9】
前記電力の前記特性は、周波数である請求項1に記載の誘導充電システム。
【請求項10】
1次コイルを含む充電回路と、2次コイルと電池を含む2次回路とを有する誘導充電システムを充電プロファイルにしたがって動作する方法であって、
前記充電プロファイルにしたがって、過電圧状態および過電流状態を規定するステップと、
ある周波数で前記1次コイルに電圧を印加するステップと、
対応する前記過電圧状態または前記過電流状態に応じて前記2次回路内にフィードバック信号を生成するステップと、
前記1次コイルと前記2次コイルとの誘導結合によって前記2次回路から供給される前記フィードバック信号を評価するステップと、
前記2次回路からの前記フィードバックに応じて前記1次コイルに印加する前記電力の前記周波数を調整するステップと、
を含む誘導充電システムを動作する方法。
【請求項11】
前記充電回路は、共振周波数を有するタンク回路を含み、
前記調整するステップは、
前記1次コイルに印加する前記電圧の前記周波数を前記タンク回路の前記共振周波数の方へ移動するステップと、
または前記1次コイルに印加する前記電圧を前記タンク回路の前記共振周波数から離すように移動するステップと、
を含む請求項10に記載の誘導充電システムを動作する方法。
【請求項12】
評価するステップには、前記充電器回路からのフィードバック信号が前記充電器回路に受信されるか否かを判定するステップを含み、
調整するステップには、前記フィードバック信号の受信に応じて前記1次コイルに印加する前記電力の前記周波数を共振から離すように移動するステップと、所定の時間の後に前記フィードバック信号を受信しないことに応じて前記1次コイルに印加する前記電力の前記周波数を共振の方へ移動するステップと、
を含む請求項10に記載の誘導充電システムを動作する方法。
【請求項13】
調整するステップは、
フィードバック信号を受信するまで徐々に前記1次コイルに印加する前記電力の前記周波数を共振の方へ移動するステップと、
フィードバック信号に応じて、フィードバック信号を受信しなくなるまで徐々に前記1次に印加する前記電力の前記周波数を共振から離すように移動するステップと、
充電期間中に前記調整した周波数で電力を前記1次コイルに印加するステップと、
を含む請求項10に記載の誘導充電システムを動作する方法。
【請求項14】
前記評価するステップは、
前記充電回路内の電流を監視するステップと、
監視した前記電流と所定のしきい値とを比較するステップと、
を含む請求項10に記載の誘導充電システムを動作する方法。
【請求項15】
1サイクル以上の充電サイクル手段で前記電池を充電するステップと、
1つの充電サイクルが終了する時間が最小充電サイクル時間よりも短いときに前記充電サイクルを終了するステップと、
をさらに含む請求項10に記載の誘導充電システムを動作する方法。
【請求項16】
1サイクル以上の充電サイクル手段で前記電池を充電するステップと、
前記1次コイルに印加する前記電力の前記周波数が上限または下限を達したときに前記充電サイクルを終了するステップと、
をさらに含む請求項10に記載の誘導充電システムを動作する方法。
【請求項17】
前記評価するステップは、
所定のプローブ周波数で前記1次コイルに電力パルスを印加するステップと、
前記反射インピーダンスを監視するステップと、
前記監視している反射インピーダンスに応じて電池が存在しているか否かを判定するステップと、
を含む請求項10に記載の誘導充電システムを動作する方法。
【請求項18】
反射インピーダンスを有する2次回路を含むポータブル電子機器であって、
2次コイルと、
前記2次コイルと電気的に接続した電池と、
前記2次コイルと電気的に接続し、前記2次回路の前記反射インピーダンスを変化させて、過電圧状態または過電流状態に応じて前記2次コイル内にフィードバック信号を生成するフィードバック回路と、
を含むポータブル電子機器。
【請求項19】
前記フィードバック回路は、スイッチを制御するために配置される過電圧検出器および過電流検出器を含み、
前記過電圧状態または前記過電流状態に応じて前記スイッチは、作動し、前記2次からの電流は、抵抗素子を通して前記電池から分路される、
請求項18に記載のポータブル電子機器。
【請求項20】
前記過電圧状態および前記過電流状態は、前記電池の充電プロファイルにしたがって規定される請求項18に記載のポータブル電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−505379(P2010−505379A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529814(P2009−529814)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053834
【国際公開番号】WO2008/038203
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(302070822)アクセス ビジネス グループ インターナショナル リミテッド ライアビリティ カンパニー (122)
【Fターム(参考)】