説明

電池パックおよび制御方法

【課題】複数の電池セルそれぞれの劣化度合いに応じて強制的に充放電を禁止し、安全性を確保する。
【解決手段】
複数の電池セル10のセルバランスが崩れている場合、セルバランスの均一化処理として制御スイッチ22がONとされ、電圧が高い電池セル10を放電させる。電池セル10の放電容量が計測され、総放電容量値を示す総放電容量情報が更新される。総放電容量値と閾値C1とが比較され、総放電容量値が閾値C1を超えている場合には、充放電制御FET11aおよび12aがOFFとされ、二次電池2に対する充放電が一時的に禁止される。一時的な充放電禁止回数を示す充放電禁止履歴が更新される。充放電禁止回数と閾値Nとが比較され、充放電禁止回数が閾値Nを超えている場合には、スイッチ素子15がONとされることによりヒューズ13が溶断し、二次電池2に対する充放電が永久的に禁止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次電池それぞれの劣化度合いに応じて充放電を禁止する電池パックおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型PC(Personal Computer)や携帯電話、ディジタルカメラ等の携帯型電子機器が普及し、その電源として、高出力、高エネルギー密度、小型、軽量といった利点を有するリチウムイオン二次電池が広く使用されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、例えばニッケルカドミウムやニッケル水素を用いた他の二次電池と比較してエネルギー密度が高いので、電池の安全性を十分に確保することが非常に重要である。そのため、リチウムイオン二次電池を用いた電池パックにおいては、過充電や過放電、過電流などの際に充放電を禁止するための保護回路が搭載されている。
【0004】
しかしながら、このような保護回路だけでは、例えば電池パックを使用することによって発生するリチウムイオン二次電池の劣化が進行した場合の安全性が十分に確保されているとは言い難い。
【0005】
一般に、リチウムイオン二次電池は、充放電を繰り返すことにより劣化が進行し、二次電池内の内部抵抗が増加することが知られている。二次電池の劣化によって内部抵抗が増加すると、この内部抵抗の増加分による電圧降下が大きくなり、同一充電条件下における電池容量が低下してしまう。
【0006】
ここで、複数の二次電池(電池セル)が直列に接続された場合について考える。複数の電池セルが直列に接続された電池パックに対して充放電を繰り返すと、それぞれの電池セルの劣化が進行するが、この劣化度合いが異なってしまう場合がある。このように、それぞれの電池セルの劣化度合いが異なることによって電池容量が異なってしまう、所謂セルバランスが崩れた場合には、他の電池セルと比較して著しく劣化が進行した電池セルの安全性が低下しているおそれがある。このような場合には、ユーザの安全性を考慮して、電池パックに対する充放電を中止するなどの措置をとることが望ましい。
【0007】
例えば下記の特許文献1には、複数の電池パックを用いた電源供給装置において電池パック間のセルバランスの状態を検出し、セルバランスが崩れていると判断された場合に充放電を禁止する技術が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2007−335337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、通常、ユーザは、充放電を繰り返すことによって電池パックの使用可能時間が著しく短くなった場合などに、電池セルの劣化を認識して使用を中止することが考えられる。
【0010】
しかしながら、電池パックにおいては、劣化の度合いによっては安全性が低下しているにもかかわらず、使用可能時間が著しく短くならない場合が考えられる。このような場合、ユーザは、電池セルの劣化を認識できずに電池パックの使用を継続してしまい、危険な状態となるおそれがある。このような場合、従来の電池パックでは、充放電を強制的に禁止することができないという問題点があった。
【0011】
上述の特許文献1では、電池パック全体としての劣化度合いに注目して充放電を禁止させるように制御しているが、電池パックに用いられている複数の電池セルそれぞれの劣化度合いに応じて充放電を禁止させることができない。
【0012】
また、最近の電池パックでは、充放電サイクル数が予め設定された値を超えた場合などに、電池セルが劣化して安全性が低下したと判断し、充放電を禁止するように設定されているものも存在する。しかしながら、このような電池パックでは、設定された充放電サイクル数に達する前に安全性が低下した場合に、充放電を禁止することができない。
【0013】
したがって、この発明の目的は、複数の電池セルそれぞれの劣化度合いに応じて強制的に充放電を禁止し、安全性を確保することができる電池パックおよび制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、複数の電池セルを有する二次電池と、
複数の電池セルそれぞれの電圧を測定し、測定の結果に応じて各部を制御する制御部と、
制御部の制御により二次電池に対する充放電を一時的に禁止する充放電制御回路と、
制御部の制御により二次電池の充放電電流を遮断して二次電池に対する充放電を永久的に禁止する遮断回路と、
制御部の制御により複数の電池セルのうち所定の電池セルを放電させる放電回路と、
放電回路で放電された電池セルの放電容量を計測する容量計測部と、
容量計測部で計測された放電容量の総容量を示す総放電容量情報、および、充放電制御回路による二次電池に対する一時的な充放電禁止回数を示す充放電禁止履歴を記憶する記憶部と
を有し、
総放電容量情報が示す総放電容量値および充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数に対して、二次電池の安全性を判断するための第1および第2の閾値が設定され、
制御部は、
測定の結果に基づき複数の電池セルにおけるセルバランス状態の判定を行い、判定の結果、セルバランスが崩れていると判定した場合に、放電回路を制御し、複数の電池セルのうち電圧の高い電池セルを放電させることによりセルバランスを一致させるための均一化処理を行うとともに、容量計測部で計測された放電容量に基づき総放電容量情報を更新し、
記憶部に記憶された総放電容量情報が示す総放電容量値と第1の閾値とを比較し、比較の結果、総放電容量値が第1の閾値を超えていると判断した場合に、充放電制御回路を制御して二次電池に対する充放電を一時的に禁止するとともに、充放電禁止履歴を更新し、
記憶部に記憶された充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と第2の閾値とを比較し、比較の結果、一時的な充放電禁止回数が第2の閾値を超えていると判断した場合に、遮断回路を制御して二次電池に対する充放電を永久的に禁止する電池パックである。
【0015】
また、第2の発明は、複数の電池セルを有する二次電池における複数の電池セルそれぞれの電圧を測定し、測定の結果に応じて各部を制御する制御ステップと、
複数の電池セルのうち所定の電池セルを放電させる放電回路で放電された電池セルの放電容量を計測する容量計測ステップと、
容量計測ステップで計測された放電容量の総容量を示す総放電容量情報、および、二次電池に対する充放電を一時的に禁止する充放電制御回路による二次電池に対する一時的な充放電禁止回数を示す充放電禁止履歴を記憶部に記憶するステップと
を有し、
総放電容量情報が示す総放電容量値および充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数に対して、二次電池の安全性を判断するための第1および第2の閾値が設定され、
制御ステップは、
測定の結果に基づき複数の電池セルにおけるセルバランス状態の判定を行い、判定の結果、セルバランスが崩れていると判定した場合に、放電回路を制御し、複数の電池セルのうち電圧の高い電池セルを放電させることによりセルバランスを一致させるための均一化処理を行うとともに、容量計測ステップで計測された放電容量に基づき総放電容量情報を更新し、
記憶部に記憶された総放電容量情報が示す総放電容量値と第1の閾値とを比較し、比較の結果、総放電容量値が第1の閾値を超えていると判断した場合に、充放電制御回路を制御して二次電池に対する充放電を一時的に禁止するとともに、充放電禁止履歴を更新し、
記憶部に記憶された充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と第2の閾値とを比較し、比較の結果、一時的な充放電禁止回数が第2の閾値を超えていると判断した場合に、二次電池の充放電電流を遮断して二次電池に対する充放電を永久的に禁止する遮断回路を制御して二次電池に対する充放電を永久的に禁止する制御方法である。
【0016】
上述したように、第1および第2の発明では、複数の電池セルを有する二次電池における複数の電池セルそれぞれの電圧を測定し、測定の結果に応じて各部を制御し、複数の電池セルのうち所定の電池セルを放電させる放電回路で放電された電池セルの放電容量を計測し、容量計測ステップで計測された放電容量の総容量を示す総放電容量情報、および、二次電池に対する充放電を一時的に禁止する充放電制御回路による二次電池に対する一時的な充放電禁止回数を示す充放電禁止履歴を記憶部に記憶するようにされ、総放電容量情報が示す総放電容量値および充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数に対して、二次電池の安全性を判断するための第1および第2の閾値が設定され、測定の結果に基づき複数の電池セルにおけるセルバランス状態の判定を行い、判定の結果、セルバランスが崩れていると判定した場合に、放電回路を制御し、複数の電池セルのうち電圧の高い電池セルを放電させることによりセルバランスを一致させるための均一化処理を行うとともに、容量計測ステップで計測された放電容量に基づき総放電容量情報を更新し、記憶部に記憶された総放電容量情報が示す総放電容量値と第1の閾値とを比較し、比較の結果、総放電容量値が第1の閾値を超えていると判断した場合に、充放電制御回路を制御して二次電池に対する充放電を一時的に禁止するとともに、充放電禁止履歴を更新し、記憶部に記憶された充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と第2の閾値とを比較し、比較の結果、一時的な充放電禁止回数が第2の閾値を超えていると判断した場合に、二次電池の充放電電流を遮断して二次電池に対する充放電を永久的に禁止する遮断回路を制御して二次電池に対する充放電を永久的に禁止するようにしているため、電池パックの劣化が進行したことによる危険な状態を防ぎ、安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、複数の電池セルにおけるセルバランス状態の判定を行い、セルバランスが崩れていると判定した場合に、複数の電池セルのうち電圧の高い電池セルを放電させることによりセルバランスを一致させるための均一化処理を行う。そして、記憶部に記憶された総放電容量値と第1の閾値とを比較し、総放電容量値が第1の閾値を超えていると判断した場合に、二次電池に対する充放電を一時的に禁止する。さらに、記憶部に記憶された一時的な充放電禁止回数と第2の閾値とを比較し、一時的な充放電禁止回数が第2の閾値を超えていると判断した場合に、二次電池の充放電電流を遮断して二次電池に対する充放電を永久的に禁止する。そのため、電池パックの劣化が進行したことによる危険な状態を防ぎ、安全性を確保することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の一形態について、図面を参照して説明する。この発明の実施の一形態では、複数の電池セルが直列に接続された電池パックにおいて、電池セル間のセルバランスの状態を判定し、判定結果に応じて電池セルを放電させてセルバランスを一致させる処理を行う。このとき、セルバランスが一致しない場合には、放電容量に基づき一時的に充放電を禁止する。また、一時的に充放電を禁止した回数に応じて永久的に充放電を禁止する。
【0019】
[電池パックの構成]
図1は、この発明の実施の一形態に適用可能な電池パック1の一例の構成を示す。なお、この例では、説明が煩雑となるのを防ぐため、この発明の実施の一形態に関連する部分以外については、図示および説明を省略する。電池パック1は、電子機器使用時には正極端子6および負極端子7がそれぞれ外部の電子機器の正極端子および負極端子に接続され、放電が行われる。また、充電時には充電器に装着され、電気機器使用時と同様に、正極端子6および負極端子7がそれぞれ充電器の正極端子および負極端子に接続され、充電が行われる。
【0020】
電池パック1は主に、二次電池2、制御部3、遮断回路4およびスイッチ回路5で構成されている。二次電池2は、例えば、リチウムイオン電池の二次電池であり、複数の電池セル10aおよび10bが直列に接続されたものである。
【0021】
制御部3は、例えばIC(Integrated Circuit)で構成されている。このICには、端子FU,Vcc,VL,VH,CS,OD,OCおよびGNDが設けられている。端子FUは、遮断回路4に接続され、遮断回路4の動作を制御するための遮断制御信号を出力するための端子である。端子Vccは、制御部3であるICを駆動するための電源が供給される端子である。端子VLは、電池セル10aと電池セル10bとの間に接続され、電池セル10bの電圧V2を測定するための端子である。端子VHは、二次電池2の正極端子側に接続され、二次電池2の電圧を測定するための端である。端子CSは、後述するスイッチ回路5に設けられた充電制御FET(Field Effect Transistor)11aおよび放電制御FET12aの間に接続され、放電電流を検出して二次電池2に対する過電流保護を行う際に用いられる端子である。端子ODは、放電制御FET12aのゲート端子に接続され、放電制御FET12aの動作を制御する放電制御信号を出力するための端子である。端子OCは、充電制御FET11aのゲート端子に接続され、充電制御FET11aの動作を制御する充電制御信号を出力するための端子である。端子GNDは、二次電池2の負極端子側とスイッチ回路5との間に接続され、二次電池2の接地電位を測定するための端子である。
【0022】
制御部3は、二次電池2の各電池セル10aおよび10bの電圧を測定する。制御部3は、測定した電圧に基づき後述するスイッチ回路5を制御する。例えば、いずれかの電池セルの電圧が過充電検出電圧に達した場合や、過放電検出電圧以下になった場合にスイッチ回路5をOFFすることにより、過充電や過放電を防止する。
【0023】
また、制御部3は、各電池セル10aおよび10bの電圧の測定結果に基づき、電池セル10aおよび10bにおけるセルバランス状態を判定する。制御部3は、判定結果に基づき各電池セル間のセルバランスが崩れていると判定した場合に、セルバランスを一致させるための均一化処理を行い、この処理の結果に応じて遮断回路4およびスイッチ回路5の制御を行う。制御部3の詳細については、後述する。
【0024】
遮断回路4は、制御部3の制御に基づき二次電池2に対する充放電経路を遮断する。遮断回路4は、図2に示すように、例えばヒューズ13,13、ヒータ抵抗14およびスイッチ素子15で構成され、ヒューズ13,13が二次電池2に対して直列的に接続されて設けられている。二次電池2に対して過電流が流れた場合には、この過電流によってヒューズ13が発熱することによって溶断し、二次電池2に対する充放電経路を遮断する。
【0025】
また、例えば、各電池セル間のセルバランスが崩れた場合に、制御部3の制御に基づきスイッチ素子15がONとされ、二次電池2からヒューズ13およびヒータ抵抗14に電流が流れる経路が形成される。このとき、ヒータ抵抗14に電流が流れることによってヒータ抵抗14が発熱する。そして、このヒータ抵抗14からの熱によりヒューズ13の温度が上昇し、溶断温度に到達するとヒューズ13が溶断し、二次電池2に対する充放電経路を遮断する。
【0026】
なお、スイッチ素子15としては、例えば機械的な接点を有するスイッチを用いてもよいし、FETなどの電気的なスイッチを用いてもよい。また、遮断回路4についても、この例に限られず、他の遮断回路を用いてもよい。
【0027】
説明は図1に戻り、スイッチ回路5は、充電制御FET11aおよび放電制御FET12aとから構成されている。電池電圧が過充電検出電圧となったときは、制御部3からの充電制御信号に基づき充電制御FET11aをOFFとし、充電電流が流れないように制御される。なお、充電制御FET11aのOFF後は、寄生ダイオード11bを介することによって放電のみが可能となる。
【0028】
また、電池電圧が過放電検出電圧となったときは、制御部3からの放電制御信号に基づき放電制御FET12aをOFFとし、放電電流が流れないように制御される。なお、放電制御FET12aのOFF後は、寄生ダイオード12bを介することによって充電のみが可能となる。
【0029】
図3は、制御部3の一例の構成を示す。なお、図3においては、実際に電流が流れる経路を実線で示し、各種制御信号を点線で示している。制御部3は、制御回路21、制御スイッチ22aおよび22b、容量カウンタ23aおよび23b、メモリ24を備える。
【0030】
制御回路21は、図示しないROM(Read Only Memory)に予め格納されたプログラムに従い、図示しないRAM(Random Access Memory)をワークメモリとして各部を制御する。制御回路21は、端子VH,VLおよびGNDに供給された電圧に基づき、電池セル10aおよび10bの電圧を測定する。
【0031】
制御回路21は、電池セル10aおよび10bの電圧の測定結果に基づき各電池セル間の電圧差を算出し、各電池セル間のセルバランスの判定を行う。判定の結果、セルバランスが崩れている場合には、後述する制御スイッチ22aまたは22bを制御し、電圧が高い電池セルを放電させることによって電池セル10aおよび10bの電圧を均一にする均一化処理を行う。そして、均一化処理の結果に応じて、スイッチ回路5に設けられた充電制御FET11aおよび放電制御FET12aを制御するための充電制御信号および放電制御信号を端子OCおよびODに出力する。
【0032】
充電制御FET11aおよび放電制御FET12aをOFFとした場合、制御回路21は、FETをOFFとして二次電池2に対する充放電を一時的に禁止したことを示す情報(以下、充放電禁止情報と適宜称する)を後述するメモリ24に供給する。
【0033】
また、制御回路21は、メモリ24に記憶された情報に基づき、遮断回路4を制御するための遮断制御信号を端子FUに出力する。
【0034】
制御スイッチ22aおよび22bは、制御回路21によりON/OFFが制御される。制御スイッチ22aおよび22bは、通常時にはOFFとされており、電池セル間のセルバランスが崩れた場合に、ONとなるように制御される。例えば、電池セル10aの電圧が電池セル10bの電圧よりも高い場合には、制御スイッチ22aがONとされる。こうすることにより、端子VH−VL間に電流が流れる経路が形成され、後述する容量カウンタ23aに設けられた放電負荷により電池セル10aの放電が可能となる。また、電池セル10bの電圧が電池セル10aの電圧よりも高い場合には、制御スイッチ22bがONとされる。こうすることにより、端子VH−GND間に電流が流れる経路が形成され、容量カウンタ23bに設けられた放電負荷により電池セル10bの放電が可能となる。
【0035】
容量カウンタ23aは、図示しないが、放電負荷および放電容量検出回路を備え、制御スイッチ22aがONとされた場合に、放電負荷によって電池セル10aを放電させて電圧を低下させる。放電容量検出回路は、放電負荷に流れる電流を検出し、検出された電流と電流が流れている時間とを乗算することにより放電容量を算出する。容量カウンタ23bは、容量カウンタ23aと同様に、放電負荷および放電容量検出回路を備え、制御スイッチ22bがONとされた場合に放電負荷によって電池セル10bを放電させて電圧を低下させるとともに、放電容量検出回路によって放電容量を算出する。容量カウンタ23aおよび23bによって算出された放電容量を示す情報(以下、放電容量情報と適宜称する)は、メモリ24に供給される。
【0036】
メモリ24は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリである。メモリ24には、制御回路21から供給された充放電禁止情報に基づく、二次電池2に対する充放電を一時的に禁止した回数を示す情報(以下、充放電禁止履歴と適宜称する)が記憶されている。充放電禁止履歴は、制御回路21から充放電禁止情報が供給される毎に更新される。
【0037】
また、メモリ24には、一連の均一化処理の際に容量カウンタ23aまたは23bによって計測された放電容量の総容量値を示す情報(以下、総放電容量情報)が記憶されている。総放電容量情報は、容量カウンタ23aまたは23bから放電容量情報が供給される毎に更新される。これらの充放電禁止履歴および総放電容量情報は、制御回路21の要求によって読み出され、制御回路21に供給される。
【0038】
なお、この例では、制御部3に設けられた各部がICに内蔵されているように説明したが、これはこの例に限られず、各部がそれぞれ外部に独立して設けられるようにしてもよい。
【0039】
[電池パックの動作]
この発明の実施の一形態による電池パック1では、各電池セル間のセルバランスの状態を判定し、判定結果に応じてセルバランスを一致させるための均一化処理を行う。均一化処理の結果に基づきセルバランスが一致しない場合には、一時的または永久的に充放電を禁止する処理を行う。以下、電池パック1で行われる各処理について、具体的に説明する。
【0040】
なお、以下の説明において、「電池セル10aまたは10b」、「制御スイッチ22aまたは22b」および「容量カウンタ23aおよび23b」を特に区別する必要がない場合には、単に、「電池セル10」、「制御スイッチ22」および「容量カウンタ23」と記述して説明する。
【0041】
先ず、制御回路21は、電池セル10aおよび10bの電圧V1およびV2に基づき、電池セル10aおよび10bにおけるセルバランス状態の判定処理を行う。制御回路21は、制御部3の端子VH,VLおよびGNDに供給された電圧VVH,VVLおよびVGNDに基づき、電池セル10aおよび10bの電圧V1およびV2を測定する。
【0042】
この例では、2個の電池セル10aおよび10bが直列に接続されている。そのため、電池セル10aの電圧V1は、端子VHの電圧VVHおよび端子VLの電圧VVLを用いて、数式(1)に基づき算出される。また、電池セル10bの電圧V2は、端子VLの電圧VVLと端子GNDの電圧VGNDを用いて、数式(2)に基づき算出される。なお、端子GNDの電圧VGNDは略0[V]であるため、端子VLの電圧VVLをそのまま電池セル10bの電圧V2としてもよい。
V1=VVH−VVL ・・・(1)
V2=VVL−VGND(≒VVL) ・・・(2)
【0043】
電池セル間のセルバランスの状態は、電池セル間の電圧差に基づき判定することができる。制御回路21は、算出された電池セル10aおよび10bの電圧V1およびV2に基づき、電圧差の絶対値|V1−V2|を算出し、電池セル間のセルバランスの状態を判定する。
【0044】
ここで、この発明の実施の一形態では、電圧差の絶対値|V1−V2|に対して所定の閾値(例えばA[V]とする)が予め設定されている。この閾値Aは、電池セル間のセルバランスが一致しているとみなすことができる値である。したがって、電圧差の絶対値|V1−V2|と閾値Aとの関係が以下の数式(3)を満足するか否かにより、セルバランスの状態を判定することができる。
|V1−V2|>A ・・・(3)
【0045】
上述の数式(3)を満足する場合、すなわち、電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値Aを超えている場合には、電池セル10aおよび10bのセルバランスが崩れていると判定する。また、数式(3)を満足しない場合、すなわち、電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値A以下である場合には、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致していると判定する。
【0046】
次に、上述した判定処理の結果に基づき、セルバランスが崩れていると判定された場合、制御回路21は、セルバランスを一致させるための均一化処理を行う。制御回路21は、セルバランスの均一化処理として、電池セル10aおよび10bのうち電圧が高い一方の電池セル10を放電させて他方の電池セル10との電圧差が閾値A以下となるように、制御スイッチ22を制御する。
【0047】
例えば、電池セル10aの電圧V1が電池セル10bの電圧V2よりも高い場合、制御回路21は、制御スイッチ22aをONとするように制御し、電池セル10aの放電を行う。このとき、容量カウンタ23aは、電池セル10aの放電容量を計測し、計測された放電容量値を示す放電容量情報をメモリ24に供給する。
【0048】
また、例えば、電池セル10bの電圧V2が電池セル10aの電圧V1よりも高い場合、制御回路21は、制御スイッチ22bをONとするように制御し、電池セル10bの放電を行う。容量カウンタ23bは、電池セル10bの放電容量を計測し、放電容量情報をメモリ24に供給する。
【0049】
制御回路21は、メモリ24に記憶されている総放電容量情報を読み出し、総放電容量情報が示す放電容量の総容量値に対して、供給された放電容量情報が示す放電容量値を加算することにより、総放電容量情報を更新する。そして、更新された総放電容量情報をメモリ24に記憶させる。
【0050】
セルバランスの均一化処理により、電池セル10aおよび10bの電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値A以下となった場合、制御回路21は、放電が行われた電池セル10に対応する制御スイッチ22をOFFとするように制御し、電池セルの10の放電を終了する。
【0051】
ここで、この発明の実施の一形態では、メモリ24に記憶されている総放電容量値に対して、電池パック1の安全性を判断するための閾値C1を設ける。そして、総放電容量値および閾値C1の関係に基づき電池パック1の安全性が低下しているか否かを判定する。制御回路21は、メモリ24に記憶されている総放電容量情報を読み出し、総放電容量情報が示す総放電容量値と閾値C1とを比較する。比較の結果、総放電容量値が閾値C1を超えている場合には、セルバランスが著しく崩れており、電池パック1の安全性が低下していると判定する。
【0052】
また、総放電容量値が閾値C1以下である場合、制御回路21は、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致するまで、または、総放電容量値が閾値C1を超えてしまうまで均一化処理を継続して行う。
【0053】
総放電容量値が閾値C1を超えた場合、制御回路21は、スイッチ回路5に対して充電制御信号および放電制御信号を出力し、充電制御FET11aおよび放電制御FET12aをOFFとするように制御し、二次電池2に対する充放電を一時的に禁止する。なお、以下では、「スイッチ回路5に設けられた充電制御FET11aおよび放電制御FET12aをON/OFFする」ことを、「充放電制御FET11aおよび12aをON/OFFする」のように記述して説明する。
【0054】
充放電制御FET11aおよび12aをOFFして二次電池2に対する充放電を一時的に禁止した場合、制御回路21は、充放電を一時的に禁止したことを示す充放電禁止情報をメモリ24に供給する。そして、充放電禁止履歴としてメモリ24に記憶された、充放電を一時的に禁止した回数を示す値を"1"加算することにより充放電禁止履歴を更新し、メモリ24に記憶させる。
【0055】
なお、上述したセルバランスの均一化処理は、一時的な充放電禁止状態中においても行われる。充放電禁止状態中の均一化処理によって電池セル10aおよび10bの電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値A以下となった場合、制御回路21は、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致したと判定する。この場合、制御回路21は、スイッチ回路5に対して充電制御信号および放電制御信号を出力して充放電制御FET11aおよび12aをONとするように制御して充放電禁止状態を解除し、充放電が可能な状態となる。
【0056】
また、この発明の実施の一形態では、メモリ24に記憶されている総放電容量値に対して、電池パック1の安全性を判断するための閾値C2を設ける。そして、一時的な充放電禁止状態中において行われたセルバランスの均一化処理によって電池セル10から放電された総放電容量値と閾値C2との関係に基づき、電池パック1の安全性が低下しているか否かを判定する。
【0057】
制御回路21は、メモリ24に記憶されている総放電容量情報を読み出し、総放電容量情報が示す総放電容量値と閾値C2とを比較する。比較の結果、総放電容量値が閾値C2を超えている場合には、セルバランスが著しく崩れており、電池パック1の安全性が低下していると判断する。
【0058】
また、総放電容量値が閾値C2以下である場合、制御回路21は、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致するまで、または、総放電容量値が閾値C2を超えてしまうまで均一化処理を継続して行う。
【0059】
ところで、上述したように、この発明の実施の一形態では、セルバランスの均一化処理による放電容量値が閾値C1を超えてもセルバランスが一致しない場合に、二次電池2に対する充放電を一時的に禁止するようにしている。そして、一時的な充放電禁止状態中にセルバランスが一致した場合には、一時的な充放電禁止状態を解除し、充放電が可能な状態となるようにしている。
【0060】
しかしながら、例えば電池パック1の安全性が著しく低下している場合には、均一化処理によりセルバランスが一致しても、再度セルバランスが崩れてしまうことが考えられる。このような場合には、一時的な充放電禁止状態と充放電可能状態とが繰り返し行われてしまう。
【0061】
そこで、この発明の実施の一形態では、メモリ24に記憶されている充放電禁止履歴が示す充放電を一時的に禁止した回数に対して、電池パック1の安全性を判断するための閾値Nを設け、一時的な充放電禁止回数と閾値Nとの比較を行う。そして、比較の結果に応じて、電池パック1の安全性が著しく低下している場合の使用を防ぐため、二次電池2に対する充放電を永久的に禁止するようにしている。
【0062】
制御回路21は、メモリ24に記憶されている充放電禁止履歴を読み出し、充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と閾値Nとを比較する。比較の結果、充放電禁止回数が閾値Nを超えている場合には、電池パック1の安全性が著しく低下していると判断する。
【0063】
この場合、制御回路21は、遮断回路4に対して遮断制御信号を出力し、遮断回路4に設けられたスイッチ素子15をONとするように制御する。遮断回路4では、スイッチ素子15がONとされると、ヒータ抵抗14に電流が流れる経路が形成される。そして、ヒータ抵抗14の発熱によってヒューズ13が溶断し、二次電池2に対する充放電経路が遮断されて充放電を永久的に禁止する。
【0064】
また、充放電禁止回数が閾値N以下である場合、制御回路21は、セルバランスの均一化処理を継続して行う。
【0065】
ここで、電池パック1の動作についてより具体的な例に基づき説明する。なお、ここでは、電池セル10bの劣化が電池セル10aの劣化よりも進行した場合、すなわち、電池セル10aの電圧V1が電池セル10bの電圧V2よりも高い場合を例にとって説明する。ここでは、以下の4つの場合を例にとって説明する。
1.一時的な充放電禁止状態が複数回行われる場合
2.均一化処理によってセルバランスが一致した場合
3.一時的な充放電禁止状態中の均一化処理によりセルバランスが一致した場合
4.一時的な充放電禁止状態中の均一化処理によってもセルバランスが一致しない場合
【0066】
1.一時的な充放電禁止状態が複数回行われる場合
制御回路21は、上述の数式(3)に基づき電池セル10aおよび10bのセルバランスが崩れていると判定すると、制御スイッチ22aをONとするように制御し、電池セル10aの放電を行い、セルバランスの均一化処理を行う。容量カウンタ23aは、電池セル10aの放電容量を計測し、計測結果である放電容量情報をメモリ24に供給する。制御回路21は、メモリ24に供給された放電容量情報に基づき、総放電容量情報を更新する。
【0067】
次に、制御回路21は、メモリ24に記憶された総放電容量情報が示す総放電容量値と閾値C1とを比較する。この例では、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致せず、総放電容量値が閾値C1を超えてしまうため、制御回路21は、充放電制御FET11aおよび12aをOFFとするように制御し、二次電池2に対する充放電を一時的に禁止する。そして、制御回路21は、充放電禁止情報をメモリ24に供給し、充放電禁止履歴を更新する。
【0068】
次に、制御回路21は、メモリ24に記憶された充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と閾値Nとを比較する。この例では、一時的な充放電禁止回数が閾値Nを超えてしまうため、制御回路21は、遮断回路4のスイッチ素子15をONとするように制御する。制御回路21の制御により、遮断回路4では、ヒータ抵抗14に電流が流れる経路が形成され、ヒータ抵抗14の発熱によってヒューズ13が溶断する。このようにして、二次電池2に対する充放電が永久的に禁止される。
【0069】
2.均一化処理によってセルバランスが一致した場合
制御回路21は、数式(3)に基づき電池セル10aおよび10bのセルバランスが崩れていると判定すると、制御スイッチ22aをONとするように制御し、電池セル10aの放電を行い、セルバランスの均一化処理を行う。容量カウンタ23aは、電池セル10aの放電容量を計測し、計測結果である放電容量情報をメモリ24に供給する。制御回路21は、メモリ24に供給された放電容量情報に基づき、総放電容量情報を更新する。
【0070】
次に、制御回路21は、数式(3)に基づき電池セル10aおよび10bのセルバランス状態を判定する。この例では、均一化処理によってセルバランスが一致し、数式(3)を満足しないため、制御回路21は、制御スイッチ22aをOFFとするように制御し、電池セルの10aの放電を終了し、均一化処理を終了する。
【0071】
3.一時的な充放電禁止状態中の均一化処理によりセルバランスが一致した場合
制御回路21は、数式(3)に基づき電池セル10aおよび10bのセルバランスが崩れていると判定すると、制御スイッチ22aをONとするように制御し、電池セル10aの放電を行い、セルバランスの均一化処理を行う。容量カウンタ23aは、電池セル10aの放電容量を計測し、計測結果である放電容量情報をメモリ24に供給する。制御回路21は、メモリ24に供給された放電容量情報に基づき、総放電容量情報を更新する。
【0072】
次に、制御回路21は、メモリ24に記憶された総放電容量情報が示す総放電容量値と閾値C1とを比較する。この例では、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致せず、総放電容量値が閾値C1を超えてしまうため、制御回路21は、充放電制御FET11aおよび12aをOFFとするように制御し、二次電池2に対する充放電を一時的に禁止する。そして、制御回路21は、充放電禁止情報をメモリ24に供給し、充放電禁止履歴を更新する。
【0073】
次に、制御回路21は、メモリ24に記憶された充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と閾値Nとを比較する。この例では、一時的な充放電禁止回数が閾値Nを超えないため、均一化処理が継続される。容量カウンタ23aは、電池セル10aの放電容量を計測し、計測結果である放電容量情報をメモリ24に供給する。制御回路21は、メモリ24に供給された放電容量情報に基づき、総放電容量情報を更新する。
【0074】
次に、制御回路21は、数式(3)に基づき電池セル10aおよび10bのセルバランス状態を判定する。この例では、充放電禁止状態中の均一化処理によってセルバランスが一致し、数式(3)を満足しないため、制御回路21は、制御スイッチ22aをOFFとするように制御し、電池セルの10aの放電を終了し、均一化処理を終了する。また、制御回路21は、充放電制御FET11aおよび12aをONとするように制御し、二次電池2に対する一時的な充放電禁止状態を解除する。
【0075】
4.一時的な充放電禁止状態中の均一化処理によってもセルバランスが一致しない場合
制御回路21は、数式(3)に基づき電池セル10aおよび10bのセルバランスが崩れていると判定すると、制御スイッチ22aをONとするように制御し、電池セル10aの放電を行い、セルバランスの均一化処理を行う。容量カウンタ23aは、電池セル10aの放電容量を計測し、計測結果である放電容量情報をメモリ24に供給する。制御回路21は、メモリ24に供給された放電容量情報に基づき、総放電容量情報を更新する。
【0076】
次に、制御回路21は、メモリ24に記憶された総放電容量情報が示す総放電容量値と閾値C1とを比較する。この例では、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致せず、総放電容量値が閾値C1を超えてしまうため、制御回路21は、充放電制御FET11aおよび12aをOFFとするように制御し、二次電池2に対する充放電を一時的に禁止する。そして、制御回路21は、充放電禁止情報をメモリ24に供給し、充放電禁止履歴を更新する。
【0077】
次に、制御回路21は、メモリ24に記憶された充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と閾値Nとを比較する。この例では、一時的な充放電禁止回数が閾値Nを超えないため、均一化処理が継続される。容量カウンタ23aは、電池セル10aの放電容量を計測し、計測結果である放電容量情報をメモリ24に供給する。制御回路21は、メモリ24に供給された放電容量情報に基づき、総放電容量情報を更新する。
【0078】
次に、制御回路21は、メモリ24に記憶された総放電容量情報が示す総放電容量値と閾値C2とを比較する。この例では、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致せず、総放電容量値が閾値C2を超えてしまうため、制御回路21は、遮断回路4のスイッチ素子15をONとするように制御する。制御回路21の制御により、遮断回路4では、ヒータ抵抗14に電流が流れる経路が形成され、ヒータ抵抗14の発熱によってヒューズ13が溶断する。このようにして、二次電池2に対する充放電が永久的に禁止される。
【0079】
この発明の実施の一形態に適用可能な二次電池2に対する充放電制御の処理の流れについて、図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、特別な記載がない限り、以下の処理は、制御回路21の制御の下で行われるものとする。また、以下の処理は、所定時間毎に巡回的に行われるものとする。
【0080】
ステップS1において、制御部3の端子VH,VLおよびGNDに供給された電圧VVH,VVLおよびVGNDを用いて、上述の数式(1)および(2)に基づき、電池セル10aおよび10bの電圧V1およびV2が測定される。
【0081】
ステップS2では、ステップS1で算出された電池セル10aおよび10bの電圧V1およびV2に基づき電圧差の絶対値|V1−V2|が算出され、数式(3)に基づき閾値Aとの比較が行われる。比較の結果、電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値Aを超えている場合には、電池セル10aおよび10bのセルバランスが崩れていると判断し、処理がステップS3に移行する。一方、電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値A以下である場合には、セルバランスが一致していると判断し、処理がステップS1に戻る。
【0082】
ステップS3では、制御回路21の制御により、電池セル10aおよび10bのうち電圧が高い電池セル10に対応する制御スイッチ22がONとされる。そして、ステップS4で、電圧が高い電池セルの放電が行われ、セルバランスの均一化処理が行われる。このとき、放電が行われている電池セル10に対応する容量カウンタ23により放電容量が計測され、計測された放電容量値を示す放電容量情報がメモリ24に供給される。そして、メモリ24に供給された放電容量情報に基づき総放電容量情報が更新される。
【0083】
ステップS5では、電池セル10aおよび10bの電圧差の絶対値|V1−V2|と閾値Aとが再度比較される。電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値A以下である場合には、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致したと判断し、ステップS6において、ONとされている制御スイッチ22がOFFとされ、セルバランスの均一化処理が終了する。
【0084】
一方、ステップS5において、電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値Aを超えている場合には、セルバランスが崩れていると判断し、処理がステップS7に移行する。
【0085】
次のステップS7では、メモリ24に記憶された総放電容量情報が読み出され、セルバランスの均一化処理による総放電容量値と閾値C1とが比較される。比較の結果、総放電容量値が閾値C1を超えている場合には、電池パック1の安全性が低下していると判断し、処理がステップS8に移行する。一方、総放電容量値が閾値C1以下である場合には、処理がステップS4に戻る。
【0086】
ステップS8では、制御回路21から制御部3の端子OCおよびODを介して出力された充電制御信号および放電制御信号により、充電制御FET11aおよび放電制御FET12aがOFFとされる。このとき、制御回路21からメモリ24に対して、充放電を一時的に禁止したことを示す充放電禁止情報が供給される。そして、メモリ24に供給された充放電禁止情報に基づき充放電禁止履歴が更新される。
【0087】
ステップS9では、ステップS8において充電制御FET11aおよび放電制御FET12aがOFFとされることにより、二次電池2に対する充放電が一時的に禁止される。
【0088】
次のステップS10では、メモリ24に記憶された充放電禁止履歴が読み出され、充放電禁止履歴が示す一時的な充放電の禁止回数と閾値Nとが比較される。比較の結果、充放電の禁止回数が閾値Nを超えている場合には、ステップS11において、制御回路21から端子FUを介して出力された遮断制御信号により、遮断回路4のヒューズ13が強制的に溶断される。そして、二次電池2に対する充放電が永久的に禁止され、一連の処理が終了する。
【0089】
一方、ステップS10において、充放電の禁止回数が閾値N以下である場合には、処理がステップS12に移行する。
【0090】
ステップS12では、電池セル10aおよび10bの電圧差の絶対値|V1−V2|と閾値Aとが再度比較される。電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値A以下である場合には、電池セル10aおよび10bのセルバランスが一致したと判断し、ステップS14において、制御スイッチ22がOFFとされ、電池セル10の放電を終了させる。また、ステップS15において、充放電制御FET11aおよび12aがONとされ、二次電池2に対する充放電が可能となる。そして、処理がステップS1に戻る。
【0091】
一方、ステップS12において、電圧差の絶対値|V1−V2|が閾値Aを超えている場合には、セルバランスが崩れていると判断し、処理がステップS13に移行する。
【0092】
ステップS13では、メモリ24に記憶された総放電容量情報が読み出され、総放電容量値と閾値C2とが比較される。比較の結果、総放電容量値が閾値C2を超えている場合には、電池パック1の安全性が低下していると判断し、処理がステップS11に移行し、遮断回路4のヒューズ13が強制的に溶断され、二次電池2に対する充放電が永久的に禁止される。総放電容量値が閾値C1以下である場合には、処理がステップS12に戻る。
【0093】
このように、この発明の実施の一形態では、均一化処理によって放電される総放電容量を記憶し、総放電容量値が所定値を超えた場合に電池パックの安全性が低下していると判断し、二次電池に対する充放電を一時的に禁止するようにしている。また、充放電を一時的に禁止した回数を記憶し、一時的な充放電禁止回数が所定の回数を超えた場合に電池パックの安全性が著しく低下していると判断し、二次電池に対する充放電を永久的に禁止するようにしている。そのため、ユーザが電池パックの安全性の低下を認識できずに使用を続けてしまっている場合でも、危険な状態となるのを防ぐことができる。
【0094】
以上、この発明の実施の一形態について説明したが、この発明は、上述したこの発明の実施の一形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、この例では、2個の電池セル10aおよび10bが直列に接続されている場合について説明したが、これはこの例に限られず、3個以上の電池セルを用いた場合についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の実施の一形態に適用可能な電池パックの一例の構成を示すブロック図である。
【図2】遮断回路の一例の構成を示すブロック図である。
【図3】制御部の一例の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の一形態に適用可能な二次電池2に対する充放電制御の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0096】
1 電池パック
2 二次電池
3 制御部
4 遮断回路
5 スイッチ回路
11a 充電制御FET
12a 放電制御FET
13 ヒューズ
14 ヒータ抵抗
15 スイッチ素子
21 制御回路
22a,22b 制御スイッチ
23a,23b 容量カウンタ
24 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを有する二次電池と、
上記複数の電池セルそれぞれの電圧を測定し、該測定の結果に応じて各部を制御する制御部と、
上記制御部の制御により上記二次電池に対する充放電を一時的に禁止する充放電制御回路と、
上記制御部の制御により上記二次電池の充放電電流を遮断して上記二次電池に対する充放電を永久的に禁止する遮断回路と、
上記制御部の制御により上記複数の電池セルのうち所定の電池セルを放電させる放電回路と、
上記放電回路で放電された電池セルの放電容量を計測する容量計測部と、
上記容量計測部で計測された放電容量の総容量を示す総放電容量情報、および、上記充放電制御回路による上記二次電池に対する一時的な充放電禁止回数を示す充放電禁止履歴を記憶する記憶部と
を有し、
上記総放電容量情報が示す総放電容量値および上記充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数に対して、上記二次電池の安全性を判断するための第1および第2の閾値が設定され、
上記制御部は、
上記測定の結果に基づき上記複数の電池セルにおけるセルバランス状態の判定を行い、判定の結果、上記セルバランスが崩れていると判定した場合に、上記放電回路を制御し、上記複数の電池セルのうち電圧の高い電池セルを放電させることにより上記セルバランスを一致させるための均一化処理を行うとともに、上記容量計測部で計測された放電容量に基づき上記総放電容量情報を更新し、
上記記憶部に記憶された上記総放電容量情報が示す総放電容量値と上記第1の閾値とを比較し、比較の結果、上記総放電容量値が上記第1の閾値を超えていると判断した場合に、上記充放電制御回路を制御して上記二次電池に対する充放電を一時的に禁止するとともに、上記充放電禁止履歴を更新し、
上記記憶部に記憶された上記充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と上記第2の閾値とを比較し、比較の結果、上記一時的な充放電禁止回数が上記第2の閾値を超えていると判断した場合に、上記遮断回路を制御して上記二次電池に対する充放電を永久的に禁止する電池パック。
【請求項2】
上記制御部は、
上記均一化処理によって上記セルバランスが一致したと判定した場合に、上記放電回路を制御して上記均一化処理を終了する請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
上記制御部は、
上記総放電容量値と上記第1の閾値との比較の結果、該総放電容量値が該第1の閾値以下である場合に、上記均一化処理を継続する請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
上記総放電容量値に対して、上記二次電池の安全性を判断するための第3の閾値が設定され、
上記制御部は、
上記一時的な充放電禁止回数と上記第2の閾値との比較の結果、該一時的な充放電禁止回数が該第2の閾値以下であると判断した場合に、上記セルバランス状態の判定を再度行い、
判定の結果、上記セルバランスが崩れていると判定した場合に、上記均一化処理を継続し、
上記総放電容量値と上記第3の閾値とを比較し、比較の結果、上記総放電容量値が上記第3の閾値を超えていると判断した場合に、上記遮断回路を制御して上記二次電池に対する充放電を永久的に禁止する請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
上記制御部は、
上記セルバランス状態の判定の結果、上記セルバランスが一致したと判定した場合に、上記放電回路を制御して上記均一化処理を終了し、
上記充放電制御回路を制御して一時的な充放電禁止状態を解除する請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
上記制御部は、
上記総放電容量値と上記第3の閾値との比較の結果、該総放電容量値が該第3の閾値以下であると判断した場合に、上記均一化処理を継続する請求項4に記載の電池パック。
【請求項7】
複数の電池セルを有する二次電池における該複数の電池セルそれぞれの電圧を測定し、該測定の結果に応じて各部を制御する制御ステップと、
上記複数の電池セルのうち所定の電池セルを放電させる放電回路で放電された電池セルの放電容量を計測する容量計測ステップと、
上記容量計測ステップで計測された放電容量の総容量を示す総放電容量情報、および、上記二次電池に対する充放電を一時的に禁止する充放電制御回路による該二次電池に対する一時的な充放電禁止回数を示す充放電禁止履歴を記憶部に記憶するステップと
を有し、
上記総放電容量情報が示す総放電容量値および上記充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数に対して、上記二次電池の安全性を判断するための第1および第2の閾値が設定され、
上記制御ステップは、
上記測定の結果に基づき上記複数の電池セルにおけるセルバランス状態の判定を行い、判定の結果、上記セルバランスが崩れていると判定した場合に、上記放電回路を制御し、上記複数の電池セルのうち電圧の高い電池セルを放電させることにより上記セルバランスを一致させるための均一化処理を行うとともに、上記容量計測ステップで計測された放電容量に基づき上記総放電容量情報を更新し、
上記記憶部に記憶された上記総放電容量情報が示す総放電容量値と上記第1の閾値とを比較し、比較の結果、上記総放電容量値が上記第1の閾値を超えていると判断した場合に、上記充放電制御回路を制御して上記二次電池に対する充放電を一時的に禁止するとともに、上記充放電禁止履歴を更新し、
上記記憶部に記憶された上記充放電禁止履歴が示す一時的な充放電禁止回数と上記第2の閾値とを比較し、比較の結果、上記一時的な充放電禁止回数が上記第2の閾値を超えていると判断した場合に、上記二次電池の充放電電流を遮断して上記二次電池に対する充放電を永久的に禁止する遮断回路を制御して該二次電池に対する充放電を永久的に禁止する制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−223872(P2011−223872A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128923(P2011−128923)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【分割の表示】特願2008−294333(P2008−294333)の分割
【原出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】