説明

電池モジュール、組電池、および電池モジュールの製造方法

【課題】ラミネート電池内部でガスが発生した場合に、ラミネート電池に設けられた安全弁を介してラミネート電池外部に排出されたガスを、効果的に電池モジュール外部へ排出可能な電池モジュールを提供すること。
【解決手段】発電要素をラミネートフィルムで封止してなる1または2以上のラミネート電池1を、モジュールケース21に収容してなる電池モジュールにおいて、前記発電要素を封止する前記ラミネートフィルムは、前記発電要素を覆っている発電要素被覆部と、前記発電要素被覆部から突出した突出部であって、前記ラミネート電池内部でガスが発生した場合に、前記ガスを前記ラミネート電池外部へ排出するための安全弁を有する突出部7とを形成し、前記突出部7は、前記モジュールケース21内において、巻回された状態で固定されており、前記モジュールケース21は、前記突出部の前記安全弁に対応する位置に、前記ガスを、前記電池モジュール外部に排出するためのガス排出口24を備えることを特徴とする電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール、組電池、および電池モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電要素をラミネートフィルムで封止してなる複数のラミネート電池かなる電池モジュールが知られている。このような電池モジュールを構成するラミネート電池として、充放電によりラミネート電池内部に発生するガスを外部に放出するために、ラミネートフィルムの熱溶着面の一部に、ガス排出用の安全弁を設ける技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−134138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、ラミネート電池内部でガスが発生した場合に、ラミネート電池に設けられた安全弁を介して排出されたガスが、電池モジュール外部に放出されずに、電池モジュール内部に留まってしまい、結果として、電池モジュール外部へ効果的にガスを排出することができない場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ラミネート電池内部でガスが発生した場合に、ラミネート電池に設けられた安全弁を介してラミネート電池外部に排出されたガスを、効果的に電池モジュール外部へ排出可能な電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1または2以上のラミネート電池を、モジュールケースに収容してなる電池モジュールにおいて、ラミネート電池の発電要素を封止するラミネートフィルムが、発電要素を覆う発電要素被覆部と、前記発電要素被覆部から突出したガス排出用の安全弁を備える突出部とを形成し、前記突出部を、前記モジュールケース内において巻回された状態で固定し、かつ、前記モジュールケースの前記突出部の安全弁に対応する位置に、ガス排出用の安全弁から排出されたガスを排出するためのガス排出口を設けることにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラミネート電池内部でガスが発生した場合には、ガスの発生によるラミネート電池内部の圧力の上昇により、突出部が、巻回された状態から突出した状態へと変化し、該変化した状態で、突出部に設けられた安全弁から、ラミネート電池内部で発生したガスが放出されることとなるため、該ガスを、効果的に電池モジュール外部へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態に係るラミネート電池1を示す平面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るラミネート電池1を示す側面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る電池モジュール20を示す斜視図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るラミネート電池1の突出部7が巻回された状態における平面図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るラミネート電池1の突出部7が巻回された状態における側面図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る組電池30を示す斜視図である。
【図7】図7は、本実施形態に係るラミネート電池1の製造方法を説明するための図である。
【図8】図8は、本実施形態に係るラミネート電池1の製造方法を説明するための図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るラミネート電池1の製造方法を説明するための図である。
【図10】図10は、他の実施形態に係るラミネート電池1aを示す平面図である。
【図11】図11は、他の実施形態に係るラミネート電池1aの突出部7aが巻回された状態における平面図である。
【図12】図12は、他の実施形態に係るラミネート電池1aの突出部7aが巻回された状態における側面図である。
【図13】図13は、モジュールケース21のガス排出口24に設けられる突出部検知部材について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
まず、本実施形態に係るラミネート電池1について説明する。図1は、本実施形態に係るラミネート電池1を示す斜視図、図2は、ラミネート電池1の側面図(電極タブ3の導出方向から見た側面図)である。図1、図2に示すように、本実施形態に係るラミネート電池1は、発電要素2、および一対の電極タブ3,4を備えている。このようなラミネート電池1としては、特に限定されないが、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などの各種二次電池が挙げられるが、以下においては、ラミネート電池1が、扁平型のリチウムイオン電池である場合を例示して説明を行なう。
【0011】
発電要素2は、正極活物質層および正極集電体からなる正極板と、負極活物質層および負極集電体からなる負極板を、セパレータを介して複数積層してなる電極積層体に、電解質を含浸させてなるものであり、発電要素2は、上側ラミネートフィルム9および下側ラミネートフィルム10に収容され、減圧封止されている。発電要素2を封止するための上側ラミネートフィルム9および下側ラミネートフィルム10としては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂フィルムや、アルミニウムなどの金属箔の両面をポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂でラミネートしてなるラミネートフィルムであり、図1に示す熱融着部5において、互いに融着されており、これにより、発電要素2を封止している。なお、図1中においては、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との熱融着部5を、ハッチングして示している(後述する図7〜図10においても同様。)。
【0012】
この発電要素2を封止するための上側ラミネートフィルム9および下側ラミネートフィルム10は、熱融着部5において、互いに融着されることにより、図1に示すように、発電要素2を覆うための発電要素被覆部6、および該発電要素被覆部6から突出した突出部7を形成している。発電要素被覆部6内部には発電要素2が収容されている一方で、突出部7内部は実質的に空であり、かつ、減圧されているため、図2に示すように、突出部7は、平面状(熱融着部5以外の部分においても、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10とが互いに接触している状態)となっている。一方で、発電要素被覆部6と突出部7とは、ラミネート電池1内部で、互いに連通しているため、たとえば、発電要素2でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合には、圧力の上昇により、突出部7が押し広げられ、膨らむこととなる。
【0013】
また、突出部7は、その先端に、安全弁8が形成されている。安全弁8は、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との熱融着部5の融着幅を他の部分より狭くすることにより形成されており、たとえば、ラミネート電池1内部でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合に、突出部7が押し広げられ、膨らんだ際に、この安全弁8部分において、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との間の融着が破れることにより、ラミネート電池1内部のガスを外部へ放出する機能を有する。
【0014】
次いで、上記のような構成を有するラミネート電池1を、内部に複数収容してなる電池モジュール20について、説明する。図3は、本実施形態に係る電池モジュール20を示す斜視図である。
【0015】
図3に示すように、本実施形態の電池モジュール20においては、複数のラミネート電池1が積層された状態で、モジュールケース21内部に収容されている。電池モジュール20内部に収容される複数のラミネート電池1は、たとえば、モジュールケース21内部において、直列接続され、かつ、電極端子22,23と電気的に接続されることにより、電極端子22,23を介して、電力の供給および取り出しが可能となっている。なお、図3に示す例においては、電池モジュール20を複数のラミネート電池1を収容してなるものを示したが、電池モジュール20は単一のラミネート電池1のみを収容してなるものであってもよい。
【0016】
本実施形態においては、モジュールケース21内にラミネート電池1を収容する際には、ラミネート電池1の突出部7を巻回した状態で、モジュールケース21内に収容する。ここで、図4は、ラミネート電池1の突出部7が巻回された状態における平面図、図5は、ラミネート電池1の突出部7が巻回された状態における側面図(電極タブ3の導出方向から見た側面図)である。なお、図4においては、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との熱融着部については、図示を省略した。
【0017】
図4、図5に示すように、本実施形態においては、モジュールケース21内にラミネート電池1を収容する際には、突出部7を棒状の巻芯11の周りに巻回させ、巻回させた状態にて、モジュールケース21内に収容する。なお、巻芯11としては、特に限定されないが、導電性の低い材料(たとえば、絶縁性材料)で構成されたものを用いることが好ましい。巻芯11を導電性の低い材料で構成することにより、突出部7に形成された安全弁8部分で、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との間の融着が破れた場合に、巻芯11を介した短絡不良が発生してしまうことを有効に防止することができる。
【0018】
そして、このように巻芯11の周りに巻回させた突出部7は、たとえば、ラミネート電池1内部でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合には、押し広げられ、膨らむことにより、巻回された状態(すなわち、図4、図5に示す状態)から、突出した状態(すなわち、図1、図2に示す状態)へと変化することとなる。また、上述したように、突出部7の先端には、安全弁8が形成されおり、このようにラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合には、巻回された状態ではなく、突出した状態にて、安全弁8部分において、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との間の融着が破れ、ラミネート電池1内部のガスが外部へ放出されることとなる。
【0019】
図3に戻り、本実施形態では、このように巻芯11の周りに巻回させた突出部7が、モジュールケース21のガス排出口24の形成位置に対応する位置となるように、モジュールケース21内に、ラミネート電池1を収容する。これにより、たとえば、ラミネート電池1内部でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合には、突出部7が、巻回された状態から、突出した状態となることで、その先端に形成された安全弁8が、モジュールケース21外部に位置することとなり、その結果、安全弁8部分において、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との間の融着が破れ、ラミネート電池1内部のガスが放出された場合に、放出されたガスがモジュールケース21外部に排出されることとなる。
【0020】
このようにして構成される本実施形態の電池モジュール20は、図6に示すように、複数組み合わせることにより、組電池30とすることができる。図6は、本実施形態に係る組電池30を示す斜視図である。図6に示すように、組電池30は、複数の電池モジュール20を組み合わせ、これらを互いに接続することにより構成される。また、本実施形態の組電池30には、組電池30を構成する各電池モジュール20から排出されるガスを、組電池30外部に排出するためのガス排出管31が設けられている。このガス排出管31は、各電池モジュール20のガス排出口24の形成位置に対応して設けられており、ガス排出口24を介して、電池モジュール20内部と連通した状態とすることができる。なお、本実施形態においては、ガス排出管31は、たとえば、ガス排出口24に直接接続するような構成とすることができる。また、ガス排出管31に、電池モジュール20を冷却するための冷却風が流れるような構成としてもよい(図6中において、冷却風の流れ方向を矢印で示している。)。
【0021】
ここで、本実施形態においては、上述したように、電池モジュール20を構成する各ラミネート電池1は、突出部7が、電池モジュール20のガス排出口24の形成位置に対応する位置となるように、電池モジュール20を構成するモジュールケース21内に収容されている(図3参照)。そのため、たとえば、ラミネート電池1内部でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合には、突出部7が、巻回された状態から、突出した状態となることで、突出部7が、ガス排出口24から電池モジュール20外部に突出し、突出部7の先端に形成された安全弁8が、ガス排出管31内部に位置することとなる。そして、安全弁8部分において、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との間の融着が破れ、ラミネート電池1内部のガスが放出された場合に、放出されたガスはガス排出管31内に放出されることとなり、ガス排出管31内に放出されたガスは、ガス排出管31を通って、組電池30外部に排出されることとなる。
【0022】
次いで、上記のような構成を有するラミネート電池1の製造方法について、説明する。図7〜図9は、本実施形態に係るラミネート電池1の製造方法を説明するための図である。
【0023】
まず、発電要素2および一対の電極タブ3,4を備える電池本体を作製し、一対の電極タブ3,4を外部に導出させた状態で、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10内に収容し、これら上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10を熱融着部5において、減圧環境下で熱融着することにより、減圧封止を行い、図7に示すような初充電前電池を作製する。なお、図7に示す初充電前電池においては、上側ラミネートフィルム9および下側ラミネートフィルム10は、熱融着部5において、互いに融着されることにより、発電要素2を覆うための発電要素被覆部6、および該発電要素被覆部6から延在した余白部12を形成している。ここで、発電要素被覆部6内部には発電要素2が収容されている一方で、余白部12内部は、実質的に空となっている。
【0024】
次いで、上記にて作製した初充電前電池について、初充電を行なう。初充電の条件は、特に限定されず、従来公知の条件を用いることができる。なお、本実施形態のラミネート電池1がリチウムイオン電池である場合には、一般的に、この初充電時に、電解質を構成する有機電解液の分解に伴うガス発生や、負極活物質表面への保護膜形成反応に伴うガス発生が起こることとなり、そのため、初充電後において、発生したガスの除去工程が必要となってくる。これに対して、本実施形態では、初充電後の電池について、図8に示す二点鎖線部分において、上側ラミネートフィルム9および下側ラミネートフィルム10を切断し、図9に示す状態とすることで、電池内部を開放状態とすることにより、発生したガスの除去を行なう。なお、図9において、符号13で示した部分は、発電要素被覆部6から突出した部分であり、ラミネート電池1の突出部7を形成することとなる部分である。
【0025】
次いで、図9に示すガス除去後の電池について、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10を、減圧環境下で熱融着し、電池内部を封止することで、図1に示すラミネート電池1を製造することができる。
【0026】
そして、このように製造されるラミネート電池1の突出部7を、図4、図5に示すように、棒状の巻芯11の周りに巻回させ、巻回させた状態にて、モジュールケース21内に収容することで、本実施形態の電池モジュール20を得ることができる。
【0027】
本実施形態においては、ラミネート電池1を、発電要素2を覆うための発電要素被覆部6、および該発電要素被覆部6から突出した突出部7を有する構成とし、かつ、突出部7の先端に、ラミネート電池1内部のガスを外部へ放出するための安全弁8を形成している。そして、本実施形態においては、このようなラミネート電池1をモジュールケース21に収容し、電池モジュール20とする際に、突出部7を棒状の巻芯11に巻回させ、巻芯11に巻回させた状態で、モジュールケース21に収容する。そのため、本実施形態によれば、たとえば、ラミネート電池1内部でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合に、突出部7が押し広げられ、膨らんだ際に、突出部7が巻回された状態から、突出した状態となる。そして、これにより、突出部7の先端に形成された安全弁8が、モジュールケース21外部に位置することとなり、その結果、安全弁8部分において、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との間の融着が破れ、ラミネート電池1内部のガスが放出された場合に、放出されたガスをモジュールケース21外部に効果的に排出することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態においては、このような電池モジュール20を複数接続し、組電池30とする場合には、各電池モジュール20のガス排出口24の形成位置に対応して、ガス排出管31を設けている。そのため、ラミネート電池1内部でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合には、突出部7が、巻回された状態から、突出した状態となることで、突出部7の先端に形成された安全弁8が、ガス排出管31内部に位置することとなり、その結果、ラミネート電池1内部で発生したガスが、安全弁8を介して、ガス排出管31内に放出されることとなる。そして、これにより、ラミネート電池1内部で発生したガスを、ガス排出管31を通って、組電池30外部に排出することが可能となる。
【0029】
さらに、本実施形態によれば、ラミネート電池1をモジュールケース21に収容し、電池モジュール20とする際に、安全弁8が形成されている突出部7を棒状の巻芯11に巻回させた状態とすることで、突出部7を収容するために特別なスペースを設ける必要がないため、省スペース化を図ることができ、これにより、電池モジュール20の体積当たりのエネルギー密度およびパワー密度を高く保つことができる。
【0030】
加えて、本実施形態によれば、突出部7は、棒状の巻芯11に巻回されることにより、その巻回構造を固定することができ、これにより、ラミネート電池1への振動や衝撃により、突出部7の巻回構造が、押しつぶされたり、折れ曲がったりしてしまうなどの不具合を防止することができる。そして、その結果として、たとえば、ラミネート電池1内部でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇した場合に、突出部7の巻回構造が押しつぶされたり、折れ曲がったりしてしまうことにより、突出部7内部の圧力が上昇せず、結果として、突出部7が膨らまず、巻回されたままの状態となってしまうという不具合を有効に防止することができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、突出部7を巻回させるための棒状の巻芯11として、軸方向断面が円形状であるものを用いているため、ラミネート電池1内部でガスが発生し、ラミネート電池1内部の圧力が上昇し、突出部7が押し広げられ、膨らんだ際に、巻回状態から突出状態への変化をスムーズなものとすることができる。さらに、巻芯11を、導電性の低い材料(たとえば、絶縁性材料)で構成することにより、突出部7が巻回状態から突出状態へと変化し、かつ、安全弁8部分において、上側ラミネートフィルム9と下側ラミネートフィルム10との間の融着が破れた際に、ラミネート電池1の内部での短絡や、電池モジュール20を構成するラミネート電池1間での短絡の発生を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、ラミネート電池1の突出部7は、従来より行なわれている初充電後におけるガスの除去工程において、ガスを除去するために、上側ラミネートフィルム9および下側ラミネートフィルム10を切断する際における切断形状を、突出部7に対応する形状とすることにより設けることができるため、従来と比較して、特に、製造工程を増加させることなく、突出部7を形成することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0034】
たとえば、上述した実施形態では、電極タブ3,4が異なる側面から導出された構成を例示したが、図10に示すように、電極タブ3a,4aが同じ側面から導出された構成としてもよい。図10は、他の実施形態に係るラミネート電池1aを示す平面図である。なお、この場合においては、図10に示すように、突出部7aは、発電要素2aを被覆している発電要素被覆部6から延在するような形態とすることができ、さらに、突出部7aは、その先端部分に、安全弁8aを有する構成とすることができる。
【0035】
そして、このようなラミネート電池1aにおいても、上述のラミネート電池1と同様に、図11、図12に示すように、突出部7aを、棒状の巻芯11aの周りに巻回させた状態とすることができ、突出部7aを巻回させた状態にて、電池モジュール内に収容するような構成とすることができる。なお、図11は、他の実施形態に係るラミネート電池1aの突出部7aが巻回された状態における平面図、図12は、他の実施形態に係るラミネート電池1aの突出部7aが巻回された状態における側面図(電極タブ3,4の導出方向と垂直な方向から見た側面図)である。また、図11においては、上側ラミネートフィルム9aと下側ラミネートフィルム10との熱融着部については、図示を省略した。
【0036】
また、上述の実施形態において、電池モジュール20を構成するモジュールケース21のガス排出口24に、突出部7が、巻回された状態から突出された状態に変化したことを検知するための検知機構を設けてもよい。このよう検知機構としては、特に限定されないが、突出部7の変化を検知可能な各種検知部材(たとえば、検出スイッチ、歪みゲージ、糸状部材などの各種検知部材)が挙げられ、たとえば、図13中において、符号40で示す位置に設置することができる。このような検知部材を設けることにより、突出部7が、巻回された状態から突出された状態に変化し、安全弁8からラミネート電池1内部のガスが放出された際に、突出部7が検知部材に接触することで、突出部7のこのような変化を検知することができ、これに基づきラミネート電池1の寿命の確認を可能とすることができる。
【0037】
なお、上述した実施形態において、上側ラミネートフィルム9および下側ラミネートフィルム10は本発明のラミネートフィルムに、ガス排出管31は本発明の排出管に、それぞれ相当する。
【符号の説明】
【0038】
1…ラミネート電池
2…発電要素
3,4…電極タブ
5…熱融着部
6…発電要素被覆部
7…突出部
8…安全弁
9…上側ラミネートフィルム
10…下側ラミネートフィルム
11…巻芯
20…電池モジュール
24…ガス排出口
30…組電池
31…ガス排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素をラミネートフィルムで封止してなる1または2以上のラミネート電池を、モジュールケースに収容してなる電池モジュールにおいて、
前記発電要素を封止する前記ラミネートフィルムは、前記発電要素を覆っている発電要素被覆部と、前記発電要素被覆部から突出した突出部であって、前記ラミネート電池内部でガスが発生した場合に、前記ガスを前記ラミネート電池外部へ排出するための安全弁を有する突出部とを形成し、
前記突出部は、前記モジュールケース内において、巻回された状態で固定されており、
前記モジュールケースは、前記突出部の前記安全弁に対応する位置に、前記ガスを、前記電池モジュール外部に排出するためのガス排出口を備えることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールにおいて、
前記突出部は、前記ラミネート電池内部でガスが発生した場合には、前記ガスの発生による前記ラミネート電池内部の圧力の上昇により、巻回された状態から突出した状態へと変化することを特徴とする電池モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の電池モジュールにおいて、
前記モジュールケースの前記ガス排出口は、前記突出部が巻回された状態から突出した状態へと変化した後における、前記安全弁の位置に対応して設けられることを特徴とする電池モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
前記突出部は、棒状の巻芯に巻回されていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の電池モジュールにおいて、
前記巻芯は、軸方向断面が円形状であることを特徴とする電池モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
前記モジュールケースは、前記突出部が、巻回された状態から突出した状態へと変化した場合に、該変化を検知するための検知機構を備えることを特徴とする電池モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電池モジュールが複数接続されて構成される組電池であって、
前記電池モジュールを構成する各モジュールケースに設けられたガス排出口から排出されたガスを、前記組電池外部に排出するための排出管を備えることを特徴とする組電池。
【請求項8】
発電要素を、前記発電要素を被覆する発電要素被覆部と、前記発電要素被覆部と連通された余白部とが形成されるように、ラミネートフィルムで封止することで初充電前電池を得る工程と、
前記初充電前電池に、初充電を行なう工程と、
初充電後の前記電池の余白部のうち一部を切り落とし、再封止することで、前記発電要素被覆部から突出した突出部であって、前記ラミネート電池内部でガスが発生した場合に、前記ガスを前記ラミネート電池外部へ排出するための安全弁を有する突出部を形成して、ラミネート電池を得る工程と、
1または2以上の前記ラミネート電池を、前記突出部を巻回された状態で固定して、モジュールケースに収納する工程と、を備える電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−54420(P2011−54420A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202399(P2009−202399)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】