説明

電池モジュール及びこれを備えた電池システム

【課題】二次電池を直列に接続し高電圧を構成した場合においても、確実に絶縁しつつ各二次電池の情報を収集することを可能とする。
【解決手段】上記の課題を解決するため、本発明では、電池セルと電池セルの状態の検知・推定を行う電池状態推定装置を有する電池モジュールを、複数直並列に接続した電池システムにおいて、各電池モジュールは、1対1で無線通信を行う通信アンテナをモジュールの上面と下面に設置する。上面と下面の通信アンテナを離すことにより、各通信アンテナから送信される信号が干渉することによる通信不良回避することができる。上記電池モジュールは、無線通信を行うことにより、モジュールどうしを配線などが不要となり、故障による短絡を防ぎ信頼性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続された複数の電池モジュール及びそれを用いた二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道などの駆動システムや、バックアップ用のUPSシステムなどに搭載される鉛電池,ニッケル水素電池,リチウム電池などの二次電池は、システムに必要な電圧及び電流を得るために直列及び並列に接続して使用することが多い。
【0003】
二次電池は、その化学的な性質から充放電可能な電流や電荷量が決まっており、これを超えて充放電すると、性能の急激な低下や故障を引き起こす恐れがある。従って、これらを防ぐためには、二次電池の状態を監視しながら充放電する必要がある。
【0004】
文献1は複数の二次電池を直列接続し、高電圧の組電池を構成した場合においても、簡単かつ安価な構成で、二次電池の監視を実現する方式が述べられている。この方式は、複数の二次電池を直列に接続した「ブロック」を基本単位とし、これを複数個接続して所望の電圧・電流を得る構成となっている。このブロックにはそれぞれ、ブロックを構成する二次電池を監視,制御するコントローラを設けている。コントローラは当該ブロックから給電を受けることで動作する様に作られており、コントローラの電位はブロックと同電位となる。この構成によれば、コントローラの絶縁耐圧は、隣接するブロック間の電位差より大きければよく、組電池全体の電圧に耐え得る耐圧は必要ない。このため、ブロック内の電池の直列数を適当に設定することで、コントローラの絶縁耐圧を低く抑えることが可能となり、絶縁回路の小型化や、安価なフォトカプラの採用による低コスト化などが図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−141439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の発明には以下に述べる問題がある。
【0007】
上記コントローラは隣接した電位の異なるコントローラと通信するために、絶縁通信用のフォトカプラ等の光部品を有している。この光部品は、鉄道車両の変換装置内部のような高温で条件の悪い環境で長時間使用すると、経年劣化により故障しやすいことが知られている。フォトカプラが短絡故障を起こすと、コントローラ内部の回路にブロックの電圧を越える電圧が印加されコントローラが絶縁破壊する。また、コントローラが短絡すると、各ブロックに含まれる二次電池が短絡放電される可能性があることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの実施形態は、1つの二次電池、または直列に接続された複数の二次電池と、二次電池の状態の検知または推定を行う電池状態検知装置と、無線通信アンテナと、を有する電池モジュールにおいて、電池状態検知装置が検知または推定した電池状態を有するデータを無線通信アンテナにより電池モジュールの外部に送信可能な電池モジュールである。
【0009】
または、無線通信アンテナを2つ備え、2つの無線通信アンテナは電池モジュールの相対する位置に取り付けられ、隣接して配置された電池モジュール同士は、無線通信アンテナを介して電池状態を有する情報を1対1で無線通信可能な電池モジュールである。
【0010】
または、通信を行わないときは、電池状態検知装置をスリープさせ、電池状態検知装置の起動が必要な時は、起動信号を電力として動作する起動回路により電池状態検知装置を起動させる電池モジュールである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二次電池の状態を監視するコントローラ間の通信を無線で行うことにより、フォトカプラなどによる絶縁が不要となり、フォトカプラ等の絶縁素子の短絡によるコントローラの絶縁破壊や、二次電池の短絡放電を防止でき信頼性を向上できる効果がある。また、モジュールの相反する位置に通信アンテナを配置することにより、各通信アンテナから送信される信号が干渉することによる通信不良回避を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る二次電池システム1000のブロック図である。
【図2】通信経路がリングタイプの場合の二次電池システムの通信の様子を示す図である。
【図3】二次電池モジュールに搭載されるメイン基板とサブ基板の構成を示す図である。
【図4】メイン基板とサブ基板の起動シーケンスを示す図である。
【図5】起動用信号と通信信号の使用周波数を示す図である。
【図6】通信経路に終端のあるタイプの場合の二次電池システムの通信の様子を示す図である。
【図7】二次電池モジュールを横に2列並べた場合の通信の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
自動車や鉄道などの駆動システムや、バックアップ用のUPSシステムなど比較的高い電圧を必要とするシステムにおいては、複数の電池セルを直列・並列接続する必要があり、複数の電池を監視する必要があり、さらに通信線の絶縁を行う必要もある。本発明は無線通信によって通信線の絶縁と複数の電池の監視を可能とするものである。以下に、本発明の具体的な実施形態を各実施例に分けて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図5を用いて、本実施例を説明する。図1に本発明を適用した二次電池システム1000を示す。二次電池システム1000は、複数の二次電池モジュール100(100−1〜100−n)と、通信用アンテナ101,102、及び、二次電池システム監視装置200から構成される。
【0015】
二次電池モジュール100は、二次電池10,メイン基板20(20−1〜20−n),サブ基板30(30−1〜30−n)及び双方向に通信可能な無線通信アンテナ71(71−1〜71−n),72(72−1〜72−n)から構成されている。また、メイン基板20は、電源回路40と制御回路50からなる。電源回路40は、二次電池10より電力の供給を受け、制御回路50及び無線通信アンテナ71,72の駆動に必要な電力(例えば、直流5V)を供給する。
【0016】
制御回路50は、二次電池10の状態を検知または推定するとともに、無線通信アンテナ71,72が受信した信号と無線通信アンテナ71,72から送信する信号を処理する。
【0017】
通信用アンテナ101,102は二次電池システム監視装置200に接続されており、通信用アンテナ101は二次電池モジュール100−1と、通信用アンテナ102は二次電池モジュール100−nとそれぞれ通信を行う。図1では、通信用アンテナ101から送信した信号を二次電池モジュール100−1〜100−nを介して、通信用アンテナ102で受信する構成を示している。
【0018】
二次電池モジュール100は上面と下面(つまり、相反する位置)にそれぞれ無線通信アンテナ71,72を設置することで、自モジュール100の無線通信アンテナ71,72間の距離をとり、両無線通信アンテナ間の送受信の信号の干渉を防止する。また、隣接する二次電池モジュール(例えば100−1と100−2)間で無線通信アンテナ(例えば72−1と71−2)を対向させるように複数の電池モジュールを配置して、無線通信アンテナ間で1対1通信を行うことで、通信信号の乱反射等による干渉を防ぎ、通信不良を防止する。
【0019】
メイン基板20は二次電池10に蓄えられた電力で動作するため、待機時など二次電池10の監視が不要な時には、メイン基板20をスリープさせ、二次電池10の充電量の低下を防止する。サブ基板30は、このスリープ状態のメイン基板20を起動させるために設けられる。このサブ基板30は無線通信アンテナ71,72を介して二次電池モジュールの外部からの電力を得て起動し、スリープ状態のメイン基板20を起動させる。
【0020】
図2は、図1における通信用アンテナ101から二次電池モジュール100−1〜100−nを経由し、通信用アンテナ102に至るデータの通信を示したものである。
【0021】
通常、二次電池モジュール100−1〜100−nは、無線通信アンテナ71,72を受信状態として待機している。二次電池システム監視装置200で生成されて通信用アンテナ101から送信されたデータ210は、二次電池モジュール100−1の無線通信アンテナ71−1により受信される。受信されたデータ210は、メイン基板20−1の制御回路50で処理され、受信した旨のACK信号を生成する。このACK信号は、無線通信アンテナ71−1から通信用アンテナ101に対して送信される。なお、このデータ210は、各二次電池モジュール100−1〜nそれぞれに対するコマンドを含んでおり、このコマンドには、内部状態の設定及び電源のOFF指令などがある。制御回路50は、データ210に含まれるコマンドに対応する処理を行うとともに、二次電池10の状態情報等を含む情報(data1)をデータ210に付加したデータ211−1を生成する。生成されたデータ211−1は、データ210を受信した無線通信アンテナ71−1とは反対側の無線通信アンテナ72−1から送信され、メイン基板20−1上の制御回路50はACK信号が無線通信アンテナ72−1で受信するのを持つ。
【0022】
二次電池モジュール100−1の無線通信アンテナ72−1から送信されたデータ211−1を二次電池モジュール100−2の無線通信アンテナ71−2が受信すると、二次電池モジュール100−2は、二次電池モジュール100−1に対しACK信号を無線通信アンテナ71−2から送信するとともに、二次電池モジュール100−2内部の二次電池10の状態をデータ211−1に付加したデータ211−2を生成し、無線アンテナ72−2から送信する。
【0023】
このようにすることで、二次電池システム監視装置200で生成されて通信用アンテナ101から送信されたデータ210に、二次電池モジュール100−1〜100−nの二次電池10の状態情報が順次追加されていくため、反対側の通信用アンテナ102は、二次電池モジュール100−1〜100−nの全ての二次電池情報が追加されたデータ211−nを受信することができ、二次電池システム監視装置200で全ての二次電池の状態を監視することができる。
【0024】
例えば、二次電池モジュール100−2が無線通信アンテナ72−2からデータ211−2を送信した後、一定時間経過しても二次電池モジュール100−3の無線通信アンテナ71−3からのACK信号が受信できない場合には、再度無線通信アンテナ72−2から当該データ211−2が再送される。しかし、所定回数、再送してもACK信号が受信できない場合には、当該二次電池モジュール100−2は、異常が発生したと判断し、反対側の無線通信アンテナ71−2から、当該データ211−2を送信する。なお、無線通信アンテナ71−2から送信されたデータを無線通信アンテナ72−1で受信した二次電池モジュール100−1は、受信したデータに自身の二次電池状態データが追加されているため、そのデータには情報を付加せず、二次電池モジュール100−2の無線通信アンテナ71−2に対してACK信号を返すとともに、反対側の無線通信アンテナ71−1より当該データ211−2を送信する。
【0025】
これにより、複数の二次電池モジュール100−1〜100−nの間の通信で通信障害が発生した場合においても、データを折り返して送信することで、通信が途絶している二次電池モジュールを除いた他の二次電池モジュールとの通信が可能となる。また、当該二次電池モジュール100−3の無線通信アンテナ71−3のみが故障している場合、通信用アンテナ102側からの通信は、正常である無線通信アンテナ72−3から通信される。したがって、二次電池モジュール100−mの無線通信アンテナ71−mが故障した場合、通信用アンテナ101からは、二次電池モジュール100−1〜m−1の二次電池10の情報を、また、通信用アンテナ102からは、二次電池モジュール100−m〜nの二次電池10の情報を収集でき、二次電池システム監視装置200では全ての二次電池モジュール100−1〜nの情報の収集が可能となる。
【0026】
また、無線通信アンテナ71と無線通信アンテナ72で送信する無線信号の周波数を変えることで無線通信アンテナ71,72から送信される無線信号どうしが干渉して通信不良になるのを避けることが可能となる。さらに、無線通信アンテナ71,72は二次電池モジュールの相反する位置に設置されて、隣接する二次電池モジュールの無線通信アンテナ71,72と対応して通信を行う特徴を生かし、通信手段として、無線以外にレーザー通信やLEDなどの発光素子を用いて通信を行うことで、他の通信との干渉を避けることが可能となる。
【0027】
さらに、複数の二次電池モジュール100−1〜100−nの間の無線通信同士の干渉を避けるため、二次電池モジュール100の相反する面に設置された無線通信アンテナ71,72の一方が受信中は、もう片方から送信を行わない方式、つまり、各二次電池モジュール100の送信時間を時分割に行うことにより、各無線通信アンテナ71,72の通信タイミングをずらす方法が考えられる。
【0028】
図3に二次電池モジュール100に搭載されるメイン基板20とサブ基板30の構成を詳細に示す図である。
【0029】
メイン基板20は、電源回路40と制御回路50を有する。電源回路40はリレー41と電源生成回路42を有している。制御回路50は、電源回路40より電力供給を受けて動作し、電池状態検知装置52,通信制御装置53,送受信回路54−1,54−2,起動信号生成回路55,スプリッタ56−1,56−2を有している。二次電池モジュールは、二次電池10の状態情報(電圧,電流,温度)を検知するセンサ51をさらに有する。なお、電池状態検知装置52は、センサ51で検知した二次電池10の状態情報(電圧,電流,温度)をもとに、電池状態の検知または推定を行う。なお、電池状態検知装置52及び通信制御装置53は、1つのマイコンに実装してもよい。
【0030】
また、サブ基板30は、起動回路31と無線通信アンテナ71,72が受信した起動用信号34を電力として蓄えるコンデンサ32を持つ。起動回路31はコンデンサ32に蓄えられた電力が所定以上になると、メイン基板20に対して、起動要求33を出力する。
【0031】
電源回路40は、サブ基板30からの起動要求33を受けるとリレー41がONされ、電源生成回路42が起動し、二次電池の電力を用いて、制御回路50を起動する電力を生成するとともに、リレー41のON信号43を出力する。この方式により、サブ基板30からの起動要求33が一度ONになれば、ON継続信号43によりリレー41はON状態を継続できる。また、制御回路50よりOFF要求を受けると、リレー41をOFFとし、電源生成回路42の動作が終了することで、メイン基板20の動作を終了させることができる。
【0032】
送受信回路54−1,54−2は、スプリッタ56−1,56−2を介して、それぞれ無線通信アンテナ71,無線通信アンテナ72に接続される。送受信回路54−1及び54−2はそれぞれ、無線通信アンテナ71,72が受信した受信信号や、送信するデータの増幅,フィルタリング,周波数変換を行う。また、無線通信アンテナ71,72が受信した受信信号は、スプリッタ56−1,56−2により、二次電池モジュールに対するコマンドを含む送受信回路54−1,54−2に送られる通信用信号と、サブ基板30に送られる起動用信号34に分離される。これにより、通信用信号と起動用信号34とが別々の周波数であっても、無線通信アンテナ71と72は通信用信号と起動用信号34とを送受信することができる。
【0033】
起動信号生成回路55は、通信先相手の二次電池モジュール100を起動させるための起動要求信号を生成する。生成された起動要求信号は、セレクタ58を介して、スプリッタ57−1,57−2のいずれかに送られ、送受信回路54−1,54−2からの送信信号と合流され、無線通信アンテナ71,72に送られる。このセレクタ58により、隣接する二次電池モジュールからの起動用信号を無線通信アンテナ71,72のどちらが受信しても、その反対側の無線通信アンテナから起動用信号を送信できる。例えば、無線通信アンテナ71が隣接する二次電池モジュールから起動信号を受信した場合、セレクタ58にスプリッタ57−2側を選択させることで、起動信号生成回路55から起動用信号を、無線通信アンテナ72から送信できる。
【0034】
この構成により、図1に示す構成においても、通信用アンテナ101から起動用信号が出力されると、二次電池モジュール100−1内のサブ基板30−1を介して、メイン基板20−1が起動する。二次電池モジュール100−1が起動すると、無線通信アンテナ72−1から起動用信号を出力し、二次電池モジュール100−2を起動させる。このようにすることで、二次電池モジュール100−1〜100−nを順々に起動させることができる。
【0035】
続いて、メイン基板20をスリープさせる場合、通信用アンテナ101から終了要求を送信することにより、二次電池モジュール100−1〜100−nに終了要求が順々に伝わるため、全二次電池モジュール100−1〜100−n内のメイン基板20を全てスリープさせることができる。
【0036】
このように、起動用信号を受信してメイン基板20を起動させるサブ基板30を設けることで、各二次電池モジュール100内の二次電池10の監視が必要な時のみメイン基板20を起動させることができ、メイン基板20による二次電池10の電荷の消費量を抑えることができる。
【0037】
また、メイン基板20をスリープとさせる条件として、無線通信アンテナ71,72が終了信号を受信した時に加え、一定期間以上、無線通信アンテナ71,72がデータを受信しなかった時を含めても良い。また、無線通信アンテナによる通信エラーが所定回数以上連続して発生した場合を含めても良い。
【0038】
さらに、誤動作によるメイン基板20の起動を避けるため、二次電池モジュール100が起動用信号を受信してメイン基板20が起動すると、制御回路50は、起動用信号を送信した二次電池モジュールに対して、起動完了信号を送信する。この起動完了信号に対して、ACK信号が帰ってくれば、正式の起動要求としてメイン基板20は起動する。しかし、所定時間内にACK信号を受信できなければ、再びメイン基板20はスリープ状態に戻る。
【0039】
また、ACK信号に特定のコードを入れ込むことで、無用にメイン基板20が起動することを防ぎ、起動用信号の信頼性を上げることができる。
【0040】
図4にメイン基板20とサブ基板30の起動終了シーケンスを示す。最初、メイン基板20はOFF状態とする。サブ基板30はコンデンサ32の電圧を確認し、所定の電圧以上かどうかの判定を行う(301)。その結果、コンデンサ32の電圧が所定の電圧以上である場合、メイン基板20に起動要求信号33を出力する(302)。その後、メイン基板20の起動の確認を行う(303)。なお、図示していないが、一定時間経過後もメイン基板20の起動が確認できない場合には、エラーを検知する。メイン基板20起動が確認した後、メイン基板20の終了確認が終了するのを確認すると(304)、コンデンサ32に蓄えられた電荷を放電し(305)、コンデンサの電圧確認(301)に戻る。
【0041】
一方、メイン基板20は、サブ基板30から起動要求信号33を受けると(302)、先述のとおり、電源回路40が起動し、ON状態に遷移する。電源ON後、通信の下流(下位)の二次電池モジュール100が起動しているかどうか確認し(201)、起動していなければ、起動用信号を出力する(202)。メイン基板20は終了要求を受信するか、一定時間データを受信しなかった場合に、OFF状態に遷移する(203,204)。
【0042】
これにより、各二次電池モジュール100−1〜nのメイン回路20−1〜nは、メイン回路20−1から順々に起動することが可能となる。
【0043】
図5に通信用信号と起動用信号34の使用周波数帯域を示す。通信用信号に使用する周波数帯域と起動用信号34に使用する周波数帯域を分けることにより、通信用信号と起動用信号34の送信を同時に送信することが可能となる。また、通信用信号と起動用信号の使用帯域を同じとし、メイン基板20がスリープ状態か否かで通信用信号と起動用信号を切り替える方式も考えられる。つまり、メイン基板20がスリープ状態の場合には、起動用信号34を通信し、メイン基板20が起動している際には、通信用信号を通信する。
【0044】
さらには、本実施例では、通信用信号と起動用信号34の双方を送受信する無線通信アンテナ71,72を設けたが、通信用信号の専用アンテナと、起動用信号34の専用アンテナを別々に設けてもよい。
【実施例2】
【0045】
図6に二次電池システム監視装置200に接続された通信用アンテナが、1つしかない場合の通信方式を示す(ACK信号の通信は省略)。本実施例で言及しない構成は、実施例1と同様の構成であるものとする。この場合、二次電池モジュール100−1が通信用アンテナ102から最も離れた終端となる。通信用アンテナ102から送信されたデータ110は、各二次電池モジュールを経由して、通信用アンテナ102から最も離れた終端の二次電池モジュール100−1まで伝わり、その後、折り返して二次電池モジュール100−1から二次電池モジュール100−nに伝わる際に、順々に二次電池10の状態等の情報を追加されることで、通信用アンテナ102は、全ての二次電池10の情報を受信することができる。
【0046】
次に、二次電池モジュール100−1が故障して途中で通信ができなくなった場合について述べる。例えば、二次電池モジュール100−1が故障している場合には、二次電池モジュール100−2が、故障した二次電池モジュール100−1に送信しても、二次電池モジュール100−2はACK信号を受信できない。所定回数、再送してもACK信号が受信できない場合には、二次電池モジュール100−2は二次電池モジュール100−1が故障したと判断し、二次電池モジュール100−2は自身が終端であると判断し、通信経路を変更し、二次電池モジュール100−2が二次電池モジュール100−3から受信したデータに、二次電池モジュール100−2の二次電池10の情報を追加して、当該データを折り返して無線通信アンテナ72−2から送信する。
【0047】
このようにすることで、二次電池モジュール100−1が故障した場合においても、通信用アンテナ102は、二次電池モジュール100−2〜100−nの二次電池情報を受信することが可能となる。
【実施例3】
【0048】
図7に、二次電池システム1000を横に2列(a系,b系)並べた際の構成を示す(ACK信号の通信は省略)。このようにa系とb系のそれぞれの系ごとに、複数の二次電池モジュール100と通信用アンテナ101,102を用意する。この例では縦方向に通信を行う例であるが、横方向でもよい。本実施例で言及しない構成は、実施例1と同様の構成であるものとする。
【0049】
また、通信用アンテナ101−aと101−bがデータを送信するタイミングをずらすことにより、a系とb系の隣接する二次電池モジュール100、例えば、二次電池モジュール100−1aと二次電池モジュール100−1bとの間で通信されることを避けることができ、通信の干渉を抑えることが可能となる。
【0050】
さらに、本実施例では、直列に接続された二次電池モジュール間で通信を行っているが、直列に接続されていない他系の二次電池モジュールであって隣接する二次電池モジュールと通信を行ってもよい。
【0051】
多系を構成する本実施例により、無線通信を用いて、多数の二次電池モジュール100内の二次電池10の状態を、二次電池システム監視装置200で容易に収集することができる。
【実施例4】
【0052】
次に、各二次電池モジュール100に固有の識別情報(以下、IDと呼ぶ)を割り当て、各二次電池モジュール100の無線通信アンテナ71と72がそれぞれ情報を受信する相手をIDにより限定することで、無線通信アンテナ71,72から送信された無線電波の乱反射の影響を排除する方法について説明する。本実施例で言及しない構成は、実施例1と同様の構成であるものとする。
【0053】
二次電池モジュール100は固有のIDを持ち、送信するデータ及びACK信号に自身のIDを付加して送信する。また、二次電池モジュール100がデータを受信すると、受信データに含まれるIDを読み取り、予め定められた受信相手のIDならば、そのデータに対して処理を行い、そうでなければ、受信したデータを廃棄する。これにより、無線電波の乱反射により二次電池モジュール100から送信されたデータが複数の二次電池モジュール100に受信された場合にも、予め定められた受信相手の二次電池モジュール100のみがそのデータに対して処理を行うため、予め定めた通信経路に従ってデータを通信することができる。
【0054】
例えば、図1において、二次電池モジュール100−iのIDをi(i=1〜n)とする。この時、無線通信アンテナ71−iは二次電池モジュール100−(i−1)と、無線通信アンテナ72−iは二次電池モジュール100−(i+1)と通信するので、それぞれ、IDが(i−1),(i+1)を含む受信データを処理するようにする。
【0055】
なお、通信用アンテナ101,102のIDはそれぞれ、ID=0,ID=n+1とする。
【0056】
続いて、各二次電池モジュール100にIDを設定する方法としては、以下の方法が考えられる。
【0057】
一つ目は、二次電池モジュール100に識別情報設定手段として、例えばID設定スイッチを設け、メイン基板20の起動時にID設定スイッチに設定されたIDをメイン基板20上の制御回路50が読み取る方法である。
【0058】
二つ目は、図1には図示されていないが、二次電池モジュール100を二次電池システム1000に取り付ける際のコネクタに、ID設定用情報を設け、メイン基板20の起動時に、コネクタからIDをメイン基板20上の制御回路50が読み取る方法である。この方式は、二次電池モジュール100側にIDを設定する必要がないため、二次電池モジュール100を故障や劣化などで交換した場合においても、二次電池モジュール側で設定することなく、IDを設定できる特徴がある。
【0059】
三つ目は、複数の二次電池モジュール100−1〜100−nの間の起動処理の無線通信によってIDを割り当てていく方法である。図1において、通信用アンテナ101から起動要求信号が出力されると、それを受けた二次電池モジュール100−1は起動後、起動完了信号を出力する。通信用アンテナ101は二次電池モジュール100−1からのこの起動完了信号を受けてACK信号を出力する。このACK信号には通信用アンテナ101のIDが含まれており、二次電池モジュール100−1はこの通信用アンテナ101のIDより、自身のIDを決定する。例えば、通信用アンテナ101のIDがID=0であり、二次電池モジュール100−1は受信したIDに1を加えたものを自身のIDとするものとする。このとき、通信用アンテナ101から送信されたACK信号には通信用アンテナ101のID=0が含まれていることから、二次電池モジュール100−1は、ID=0に1を加えた1を自身のIDとする。さらに、二次電池モジュール100−1は無線通信アンテナ71−1で通信用アンテナ101との通信を行うことから、無線通信アンテナ71−1はID=0(通信用アンテナ101)のデータを受信するように登録される。さらに、二次電池モジュール100−1の無線通信アンテナ72−1は自身のIDが1であるため、自身のIDに1を加えたID=2のデータを受信するようにと登録される(通信用アンテナ101は自身のIDが0であることから、これに1を加えたID=1のデータを受信するように登録される。)。
【0060】
同様の起動シーケンスを二次電池モジュール100−1〜100−nと順々に行っていくため、二次電池モジュール100−1〜100−nはそれぞれIDを設定するとともに、各無線通信アンテナ71,72が受信するIDも設定することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 二次電池
20 メイン基板
30 サブ基板
31 起動回路
32 コンデンサ
40 電源回路
41 リレー
42 電源生成回路
50 制御回路
51 センサ
52 電池状態検知装置
53 通信制御装置
54 送受信回路
55 起動信号生成回路
56 スプリッタ
71,72 無線通信アンテナ
101,102 通信用アンテナ
200 二次電池システム監視装置
1000 二次電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの二次電池、または直列に接続された複数の二次電池と、前記二次電池の状態の検知または推定を行う電池状態検知装置と、無線通信アンテナと、を有する電池モジュールにおいて、
前記電池状態検知装置が検知または推定した電池状態を有するデータを無線通信アンテナにより前記電池モジュールの外部に送信可能であることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールにおいて、
無線通信アンテナを2つ備え、前記2つの無線通信アンテナは前記電池モジュールの相対する位置に取り付けられ、
隣接して配置された前記電池モジュール同士は、前記無線通信アンテナを介して電池状態を有する情報を1対1で無線通信可能であることを特徴とする電池モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の電池モジュールにおいて、
2つの前記無線通信アンテナは受信待ちの状態である場合に、一方の無線通信アンテナがデータを受信すると、他方の無線通信アンテナからデータを送信することを特徴とする電池モジュール。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の電池モジュールにおいて、
一方の無線通信アンテナから受信したデータに、前記電池状態検知装置で検知または推定された電池状態を追加したデータを、他方の無線通信アンテナから送信することを特徴とする電池モジュール。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
前記他方の無線通信アンテナからデータを送信する場合に、各電池モジュールの送信時間を時分割に行って、各電池モジュール間での通信タイミングをずらすことを特徴とする電池モジュール。
【請求項6】
請求項3に記載の電池モジュールにおいて、
前記他方の無線通信アンテナからデータを送信する場合に、受信時に使用した無線信号の周波数とは異なる周波数を用いることで、送信と受信の無線通信が干渉しないようにすることを特徴とする電池モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
前記無線通信アンテナで起動用信号を受信することにより、前記電池状態検知装置を起動させる起動回路を備えることを特徴とする電池モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の電池モジュールにおいて、
前記起動回路は、前記無線通信アンテナで受信した起動用信号を電源として起動することを特徴とする前記電池モジュール。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の電池モジュールにおいて、
無線通信されるデータは、前記起動用信号と、二次電池モジュールに対するコマンドを含む通信用信号と、を有しており、前記起動用信号と前記通信用信号とは異なる周波数帯を使用することを特徴とする電池モジュール。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
無線通信されるデータは、前記起動用信号と、電池モジュールに対するコマンドを含む通信用信号と、を有しており、同じ無線通信アンテナから前記起動用信号と前記通信用信号とを送信することを特徴とする電池モジュール。
【請求項11】
請求項2乃至請求項10のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
終了要求を含むデータを無線通信アンテナにより受信した場合に、前記電池状態検知装置をスリープ状態にすることを特徴とする電池モジュール。
【請求項12】
請求項2乃至請求項11のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
前記無線通信アンテナによるデータの受信が一定時間以上無い場合に、前記電池状態検知装置をスリープ状態になることを特徴とする電池モジュール。
【請求項13】
請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
前記無線通信アンテナによる通信エラーを所定回数以上連続すると、前記電池状態推定装置をスリープ状態とすることを特徴とする電池モジュール。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の電池モジュールにおいて、
前記電池モジュールには、他の前記電池モジュールとは異なる識別情報が割り当てられており、
送信するデータに自己の前記識別情報を付加する手段と、特定の識別情報を有するデータを受信して他のデータを破棄する手段と、を備えることを特徴とする電池モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載の電池モジュールにおいて、
識別情報を設定する識別情報設定手段を有し、前記識別情報設定手段により設定された識別情報を、送信するデータに付加することを特徴とする電池モジュール。
【請求項16】
請求項14に記載の電池モジュールにおいて、
前記電池モジュールの識別情報が未設定の状態である場合に、前記無線通信アンテナで受信したデータに含まれる前記識別情報をもとに、自身の識別情報を生成することを特徴とする電池モジュール。
【請求項17】
請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の電池モジュールを複数備え、
前記複数の電池モジュールの前記二次電池の状態を監視する電池システム監視装置と、
前記電池システム監視装置と接続された通信用アンテナと、を備え、
前記通信用アンテナから送信されたデータは、複数の前記電池モジュール間を経由して、前記電池システム監視装置に通信されることを特徴とする電池システム。
【請求項18】
請求項17に記載の電池システムにおいて、
前記電池システム監視装置と接続された前記通信用アンテナを2つ備え、
一方の通信用アンテナから送信されたデータは、複数の前記電池モジュール間を経由して、他方の通信用アンテナで受信されることを特徴とする電池システム。
【請求項19】
請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の電池モジュールを複数備え、
隣接する電池モジュールで互いに1対1通信が可能となるように、隣接する電池モジュールの前記無線通信アンテナが対向するように、隣接する電池モジュールが配置されることを特徴とする電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−222913(P2012−222913A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84996(P2011−84996)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】