説明

電池モジュール

【課題】短絡等により電池から噴出する高温のガスを速やかに安全な温度まで低下させ、電池モジュール外部へと排出できる電池モジュールを提供する。
【解決手段】複数の電池120を接続する組電池121を二次元方向に接続する電池ブロック122と、電池ブロック122を収納する収納部102を有し少なくとも一方に開口端を有する筐体101と、開口端を覆い電池120の電極部123に対応した貫通孔131を有する基板130と、複数の排気用通路141を形成するとともに一端に排気孔143を有する仕切り部材140と、仕切り部材140を覆う蓋体150と、を備え、仕切り部材140は複数の排気用通路141同士を連通するひとつ以上の通気孔を備えることを特徴とする電池モジュール100を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不具合などにより電池から噴出する高温のガスを安全な温度に低下させ、電池モジュール外部へと放出することができる電池モジュールを提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源や省エネルギーの観点から、繰り返し使用できるニッケル水素、ニッケルカドミウムやリチウムイオンなどの二次電池への需要が高まっている。中でもリチウムイオン二次電池は、軽量でありながら、起電力が高く、高エネルギー密度であるという特徴を有している。そのため、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラ、ノート型パソコンなどの様々な種類の携帯型電子機器や移動体通信機器の駆動用電源としての需要が拡大している。
【0003】
一方、化石燃料の使用量の低減やCOの排出量を削減するために、自動車などのモータ駆動用の電源として、電池モジュールへの期待が大きくなっている。この電池モジュールは、所望の電圧や容量を得るために、2つ以上の複数の電池から構成されている。
【0004】
上記電池モジュールの開発において、電池ユニットを構成する電池の高容量化が進むに伴って、利用の形態によっては、電池自身が発熱して高温になる場合がある。そのため、電池自体の安全性とともに、それらを集合した電池ユニットを組み合わせた電池モジュールにおける安全性がより重要となっている。すなわち、電池は、過充電、過放電あるいは内部短絡や外部短絡により発生するガスで内圧の上昇を生じ、場合によっては、電池の外装ケースが破裂する可能性がある。そこで、一般に、電池には、ガス抜きのためのベント機構や安全弁などを設け、内部のガスを放出している。このとき、排出されるガスへの引火などにより発煙や、まれに発火を生じる場合があり、信頼性や安全性に課題があった。特に、複数の電池を一体化した電池ユニットにおいては、1つの電池の異常発熱により、周囲の電池への異常加熱や、発火などを連鎖的に誘因して不具合を拡大する可能性が高く、それを防止することが重要である。
【0005】
上記のような問題に対処する手段として、例えば、電池モジュール内に排気ダクトを設け発生したガスを排気ダクトにより外部に放出する構成が開示されている(例えば、特許文献1)。また、他にも電池パックケースと電池との隙間に熱膨張部材を配置し、電池が発熱、発火した際に熱膨張部材が膨張することで発熱した電池を隔離する構成が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−117765号公報
【特許文献2】国際公開第2008/047721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、特許文献1によれば、電池モジュール内に別部材として排気ダクトを備える構成のため、電池モジュール内の構成が煩雑になる。さらに、電池モジュール自身のサイズアップにもつながり、モジュール自身の小型化を図りにくい。
【0008】
また、例えば特許文献2によれば、万が一、発熱、発火した電池自体は隔離されるが、電池パック内部は高温になってしまうため、他の電池への類焼が懸念される。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、電池の不具合により発生した高温のガスを安全な温度まで十分に低下させ、パック外へと排気する電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電池モジュールは、複数の電池を接続する組電池を二次元に接続する電池ブロックと、電池ブロックを収納する収納部を有し少なくとも一方に開口端を有する筐体と、開口端を覆い電池の電極部に対応した貫通孔を有する基板と、複数排気用通路を形成するとともに一端に排気孔を有する仕切り部材と、仕切り部材を覆う蓋体とを備え、仕切り部材は複数の排気用通路同士を連通するひとつ以上の通気孔を備える。
【0011】
この構成により、万が一電池の不具合等で電池から高温の噴出ガスが発生しても、ひとつ以上の通気孔により連通する複数の排気用通路を経ることで、断熱膨張を利用して、安全な温度までガス温度を低下させてから電池モジュール外に排出することができる。また、電池モジュール内での他の電池への類焼を防止することができる。また、仕切り部材により空間を仕切ることで排気用通路を形成することができるので排気用のダクト等を設ける必要がないため空間を効率的に利用でき電池モジュール自体の小型化も可能となる。この結果、より小型で、より安全かつ信頼性の高い電池モジュールを実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排気ダクト等の部材を用いずに高温の噴出ガスを安全な温度で電池モジュール外部へ排出することができる安全かつ信頼性の高い電池モジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる電池の横断面図
【図2(a)】本発明の実施の形態1にかかる電池モジュールの全体斜視図
【図2(b)】本発明の実施の形態1にかかる電池モジュールの分解斜視図
【図3】本発明の実施の形態1にかかる電池モジュールの3−3面部分断面図
【図4】本発明の実施の形態1にかかる電池モジュールの上面透過図
【図5】(a)本発明の実施の形態1にかかる電池モジュールの仕切り部の横面図、(b)本発明の実施の形態1にかかる電池モジュールの他の仕切り部の横面図
【図6】本発明の実施の形態1にかかる他の電池モジュールの上面透過図
【図7】本発明の実施の形態2にかかる電池モジュールの部分断面図
【図8】本発明の実施の形態3にかかる電池モジュールの部分断面図
【図9】本発明の実施の形態3にかかる隔壁部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の発明は、複数の電池を接続する組電池を二次元方向に接続する電池ブロックと、電池ブロックを収納する収納部を有し少なくとも一方に開口端を有する筐体と、開口端を覆い電池の電極部に対応した貫通孔を有する基板と、複数の排気用通路を形成するとともに一端に排気孔を有する仕切り部材と、仕切り部材を覆う蓋体とを備え、仕切り部材は複数の排気用通路同士を連通するひとつ以上の通気孔を備えることを特徴とする電池モジュールである。
【0015】
この構成により、万が一、短絡等の理由で電池から高温のガスが噴出した場合でも、ひとつ以上の通気孔により連通した複数の排気用通路によりガス体積を膨張させることができる。このようにガスを膨張させることで、断熱膨張作用により、安全な温度までガスの温度を低下させて電池モジュール外部へ放出することができる。また、ガスを安全な温度まで速やかに低下させることができるので他の電池への類焼も防止することができるため安全かつ信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0016】
本発明の第2の発明は、収納部内において電池を電池ごとに分離する隔離構造を備えることを特徴とする第1の発明記載の電池モジュールである。
【0017】
この構成により、電池モジュール内での他の電池への類焼をさらに抑制することができるためより安全かつ信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0018】
本発明の第3の発明は、電池は、上縁部に基板と接触する肩部を備え、隔離構造は、肩部により形成される第2の発明記載の電池モジュールである。
【0019】
この構成により、電池モジュール内での他の電池への類焼をさらに抑制することができるためより安全かつ信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0020】
本発明の第4の発明は、さらに隔壁部材を有し、隔離構造は、隔壁部材により形成される第2の発明記載の電池モジュールである。
【0021】
この構成により、電池モジュール内での他の電池への類焼をさらに抑制することができるためより安全かつ信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0022】
本発明の第5の発明は、仕切り部材は一つ以上の組電池毎に対応して排気用通路を形成する第1の発明記載の電池モジュールである。
【0023】
この構成により、効果的に排気用通路を形成でき、断熱膨張を利用してさらに効率的に高温ガスの温度を低下させることができる。また、他の組電池への類焼を抑制することができる。そのため、安全かつ信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0024】
本発明の第6の発明は、通気孔は所定の間隔で設けられていることを特徴とする第1の発明記載の電池モジュールである。
【0025】
この構成により、複数の排気用通路をより効果的に連通することができるため、断熱膨張によりガス温度を効果的に低下させることができ、安全かつ信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、同一部分には同一符号を付して説明する。なお、本発明は、本明細書に記載された基本的な特徴に基づく限り、以下に記載の内容に限定されるものではない。また、以下では電池として、リチウムイオンなどの非水電解質二次電池(以下、「電池」と記す)を例に説明するが、これに限られないことはいうまでもない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電池モジュールを構成する電池の横断面図である。
【0028】
図1において、円筒型の電池は、例えばアルミニウム製の正極リード8を備えた正極1と、その正極1と対向する、例えば銅製の負極リード9を一端に備えた負極2とをセパレータ3を介して、捲回された電極群4を有する。そして、電極群4の上下に絶縁板10a、10bを装着して電池ケース5に挿入し、正極リード8の他方の端部を封口板6に、負極リード9の他方の端部を電池ケース5の底部に溶接する。さらに、リチウムイオンを伝導する非水電解質(図示せず)を電池ケース5内に注入し、電池ケース5の開放端部をガスケット7を介して正極キャップ16、PTC素子などの電流遮断部材18および封口板6をかしめた構成を有する。また、正極キャップ16には、電極群4の不具合による安全弁などのベント機構19の開放により生じるガスを抜くための孔17を設けている。そして、正極1は正極集電体1aと正極活物質を含む正極層1bから構成されている。
【0029】
ここで、正極層1bは、例えばLiCoOやLiNiO、LiMnO、またはこれらの混合あるいは複合化合物などの含リチウム複合酸化物を正極活物質として含む。また、正極層1bは、さらに、導電剤と結着剤とを含む。導電剤として、例えば天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類を含み、また結着剤として、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミドなどを含む。
【0030】
また、正極1に用いる正極集電体1aとしては、アルミニウム(Al)、炭素(C)、導電性樹脂などが使用可能である。
【0031】
非水電解質には有機溶媒に溶質を溶解した電解質溶液や、これらを含み高分子で非流動化されたいわゆるポリマー電解質層が適用可能である。非水電解質の溶質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiN(CFCO)、LiN(CFSOなどを用いることができる。さらに、有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)などを用いることができる。
【0032】
また、負極2の負極集電体11は、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタンなどの金属箔、炭素や導電性樹脂の薄膜などが用いられる。
【0033】
さらに、負極2の負極層15としては、黒鉛などの炭素材料や、ケイ素(Si)やスズ(Sn)などのようにリチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する理論容量密度が833mAh/cmを超える負極活物質を用いることができる。
【0034】
次に、図2(a)、図2(b)を用いて、本実施の形態における電池モジュールの全体像について説明する。図2(a)は、本実施の形態にかかる電池モジュールの全体斜視図である。図2(b)は、本実施の形態にかかる電池モジュールの分解斜視図である。
【0035】
電池モジュール100は、収納部102を備え少なくとも一方が開口端である筐体101と、収納部102に収納される電池ブロック122と、接続部材110と、基板130と、仕切り部材140と、蓋体150とで少なくとも構成される。
【0036】
電池ブロック122は複数の電池120から構成される。すなわち、電池120を並列に接続した組電池121を接続部材110により直列に接続して電池ブロック122を構成している。図1では、例えば電池120を10個並列に接続した組電池121をさらに7個直列に接続した電池ブロック122を示している。しかしながら、電池ユニット121および電池ブロック122を構成する電池120の数はこれに限られるものではない。また、必ずしも組電池121は並列接続したものでなくても良く、直列接続であっても良い。また、電池ブロック122も、組電池を直列に接続したものでなくても良く並列接続であっても良い。
【0037】
電池ブロック122は、少なくとも一方が開口端である筐体101の収納部102に収納される。筐体101は、例えば軟性ウレタン等で構成される。電池ブロック122の上方から、筐体101の開口端および電池ブロック122を覆うように基板130が設けられる。基板130は、NiやFe-Niメッキ等の金属板で構成しても良いし、CuやAl、それらの複合材などで構成しても良い。基板130は、電池120に対応した貫通孔131を備える。すなわち、電池120の電極部123それぞれの上方に位置する部分に貫通孔131が設けられている。さらに基板130はそれぞれの電池120の電極部123と接続する接続端子132を備える。また、基板130は、それぞれの接続端子132に接続され、複数の電池120を接続する接続配線133を有している。この接続配線133および接続端子132により、電池120が並列に接続され、組電池121が構成される。
【0038】
基板130を上方から覆うように仕切り部材140を設ける。仕切り部材140は、軟性ウレタン等で形成されるのが好ましい。仕切り部材140は、複数の排気用通路141を形成するように仕切り部142を備える。また、仕切り部材は、複数の排気用通路141同士を連通する通気孔(図示せず)を備える。さらに、仕切り部材は、排気用通路141と連通する排気孔143を備える。
【0039】
また、仕切り部材140を上方から覆うように蓋体150を設ける。蓋体150は、銅などの金属で形成されるのが好ましい。
【0040】
筐体101と仕切り部材140および仕切り部材140と蓋体150はそれぞれ嵌合される。また、筐体101は正極端子103と負極端子104とを備える。
【0041】
次に、図3、図4、図5(a)を用いて本実施の形態の電池モジュールの詳細を説明する。図3は、本実施の形態にかかる電池モジュールの3−3面部分断面図である。図4は、本実施の形態にかかる電池モジュールの上面透過図である。詳細には、仕切り部材140の上面透過図である。図5(a)は、本実施の形態にかかる電池モジュールの仕切り部の横面図である。図5(b)は、本実施の形態にかかる電池モジュールの他の仕切り部の横面図である。
【0042】
図3において、電池モジュール100は、筐体101の収納部102に、組電池121を構成する電池120を収納する。筐体101の一方に設けられた開口端を覆うように、基板130が設けられている。基板130は、電池120に対応する貫通孔131を備えている。貫通孔131は電池120の電極部123の上方に設けられる。さらに、基板130は、接続端子132を備えている。また、基板130は、それぞれの接続端子132と接続され、複数の電池120を接続する接続配線133を有している。接続配線133および接続端子132は、電池120の電極部123と接続することで複数の電池120を並列に接続し、組電池121を構成する。なお、このように、基板130に接続配線133を設けるような構成以外にも、基板130自体を導電性の金属により構成してもよい。このようにすることで、接続配線133を設けることなくそれぞれの電池120を接続することができる。基板130の上方には、排気用通路141を形成する仕切り部材140を備え、その上方を覆うように蓋体150を備える。仕切り部材140は、排気孔143を備え、排気孔143は排気用通路141と連通している。また、排気用通路141は、貫通孔131によって、収納部102と連通している。
【0043】
図4において、本実施の形態の仕切り部材についてさらに詳しく説明する。仕切り部材140は、組電池121に対応して仕切り部142を備え、排気用通路141を形成している。すなわち図4においては、組電池121一列ごとに一列の排気用通路141を形成している。また、仕切り部材140の仕切り部142は、排気用通路141同士を連通する通気孔144を少なくともひとつ有している。すなわち図4においては、電池120が4個分ごとにひとつの通気孔144を設けるようにしている。排気用通路141は、排気孔143と連通している。通気孔144は、例えば図5(a)に示すように仕切り部142にすきまを形成することで構成する。次に、図3、図4を用いて、電池の短絡等により電池から噴出する高温のガスの排気経路について説明する。
【0044】
電池120は、例えば短絡等の理由により高温ガス(以下、ガス)が発生する場合がある。このガスは、例えばLiイオン二次電池の場合、一酸化炭素、エタン、エチレン、水素、プロパン、メタン等で構成され、万が一、約400℃以上で空気と混合することで発火する恐れが生じる。
【0045】
このような、ガスが電池120から発生した場合、図3において、ガスは収納部102から基板130の貫通孔131を通り仕切り部材140により形成される排気用通路141へと流れ込む。排気用通路141へと流れ込んだガスは、排気用通路141を経て、排気孔143から電池モジュール100外部へと排出される。ここで、図4に示すように、排気用通路141同士は通気孔144により連通しているため、図4中の矢印で示す経路に沿って、流れ込んだガスは複数の排気用通路141へと分散して流れていく。このような構成により、ガスの体積を膨張させ、断熱膨張作用によってガスの温度を低下させていくことができる。これにより、ガスを排気孔143から電池モジュール100外部へと排出する際には、ガスの温度を安全な温度(例えば約400℃以下)まで低下させることができる。よって、万が一、酸素を含む空気と混合しても発火等の現象が起こらず、安全にガスを排気することができる。さらに、断熱膨張を利用して速やかにガスの温度を低下させることができるので他の電池120への類焼も抑制することができる。
【0046】
また、本実施の形態のように、組電池121一列ごとに排気用通路141を形成することによって、ガスが噴出した電池120を含む組電池121以外の組電池121への類焼を抑制できる。
【0047】
また、このような排気用通路141を仕切り部材140のような簡単な構成で形成することで、例えば排気ダクトのような構成を設ける必要がなく、しかも電池モジュール内部で排気用経路を設けることが可能となるので電池モジュール自体の小型化が可能となる。
【0048】
なお、仕切り部材140の構成として、本実施の形態では、電池4個分にひとつ通気孔144を設ける構成となっているが、これに限るものではない。例えば、図6に本実施の形態にかかる他の電池モジュールの仕切り部材の上面透過図を示す。
【0049】
図6に示す仕切り部材140においては、電池4個分にひとつ通気孔を設ける点では図4と同様であるが、隣接する仕切り部142同士で通気孔144がとなりあわないように構成している。すなわち、通気孔144が互い違いに設けられている。このような構成としても、図6中の矢印で示すような経路で噴出したガスは、排気孔143へと流れていくことで図4に示す仕切り部材140と同様の効果を得ることが可能である。
【0050】
また、本実施の形態においては、排気用通路141は、組電池121一列ごとに設けられているがこれに限るものではない。例えば、電池モジュールを構成する電池の数や大きさに応じて組電池121二列ごとに排気用通路141を設けてもよいし、1列、2列、1列、・・・というように異なる列数ごとに設けても良い。さらには、組電池121に対応している必要もなく、図4で設けられている排気用通路141に対して直交するようなかたちで排気用通路141を形成しても良い。
【0051】
また、仕切り部材140は、その一部を銅などの金属により形成しても良い。たとえば、基板130と接する部分のみを軟性ウレタン等の絶縁物質で形成し、それ以外の部分を銅等の導電物質で形成しても良い。これにより、排気用通路141を形成する仕切り部材140の熱伝導がさらに高まり、より速やかに高温のガスの温度を低下させることができる。
【0052】
また、通気孔144は、図5(a)に示すような形態に限るものではない。例えば、図5(b)に示すように、すきまを蓋体150側に広がるように形成しても良い。このように、蓋体150側に広がるように通気孔144を設けることで、ガスが排気用通路141をより効率よく流動し、断熱膨張が効果的に行われ速やかにガスの温度を低下させることができる。また、上記以外にも丸型の穴であっても良いし、細長いスリット状であっても良い。
【0053】
また、本実施の形態においては、ガスは仕切り部材140の排気孔143から電池モジュール外部へと排出されているが、これに限るものではない。例えば、仕切り部材140が、筐体101と蓋体150で形成される空間内部に包含されるように構成されても良い。この場合は、上記の排気孔143の他に、筐体101もしくは、蓋体150にさらに排気用の孔が設けられ、ガスは、この排気用の孔および排気孔143を通り電池モジュール100外部へと流出する。
【0054】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について図7を用いて説明する。以下では、実施の形態1と異なる点のみを説明する。
【0055】
図7は、本発明の実施の形態2にかかる電池モジュールの部分断面図である。基本的な構成は、実施の形態1と同様であるが、異なる点として、電池120の上縁部に肩部124が設けられている。電池120は、肩部124が電池モジュール100内において、基板130と接するように配置される。本実施の形態において、肩部124は、収納部102内において電池120を個々に隔離する隔離構造の役割をしている。すなわち、例えば、電池120の短絡等によりガスが噴出する場合、ガスは、まず収納部102内に広がるが、肩部124により電池120が空間的に個々に隔離された構造となっているため、ガスは肩部124と基板130により形成された空間部160内にしか広がらない。つまり、ガスは収納部102内全体には広がらずに、基板130の貫通孔131から速やかに排気用通路141へ流れる。
【0056】
この構成により、噴出したガスによる他の電池への類焼をさらに抑制することができる。よって、より安全で信頼性の高い電池モジュールを提供することができる。
【0057】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について図8および図9を用いて説明する。実施の形態2と同様に、実施の形態3も基本的な構成は実施の形態1と同様であるため異なる点のみを説明する。
【0058】
図8は、本発明の実施の形態3にかかる電池モジュールの部分断面図である。図9は本実施の形態にかかる隔壁部材の斜視図である。実施の形態1および実施の形態2と異なる点として、収納部102内を電池120個々に隔離する隔離構造として隔壁部材180をさらに備えている。隔壁部材180は、図9に示すような部材である。図8に示すように隔壁部材180の上端部分は、基板130に接しており、一方、隔壁部材180の下端部分は、筐体101の底部に接している。よって隔壁部材180は、電池モジュール100内において、収納部102を、電池120ごとの空間部170ごとに分離する。
【0059】
このような構成により、例えば、短絡等により電池120からガスが噴出した場合、収納部102全体に高温ガスが広がることを防ぐことができる。すなわち、隔壁部材180により隣接する電池120と空間的に分離しているため、発生したガスは、不具合を起こした電池120の収納されている空間部170から速やかに貫通孔131を通って排気用通路141へと流れる。
【0060】
よって、不具合を起こしていない他の正常な電池120への類焼をさらに防止することができる。これにより、より安全で信頼性の高い電池モジュールを提供できる。
【0061】
なお、隔壁部材180は、図8に示すような構成に限定されるものではないのはいうまでもない。例えば、隔壁が、筐体101や基板130と一体に形成されるような構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、自動車、自転車や電動工具などの高い信頼性と安全性が要求される、電池モジュールとして有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 正極
1a 正極集電体
1b 正極層
2 負極
3 セパレータ
4 電極群
5 電池ケース
6 封口板
7 ガスケット
8 正極リード
9 負極リード
10a,10b 絶縁板
11 負極集電体
15 負極層
16 正極キャップ
17 孔
18 電流遮断部材
19 ベント機構
100 電池モジュール
101 筐体
102 収納部
103 正極端子
104 負極端子
110 接続部材
120 電池
121 組電池
122 電池ブロック
123 電極部
124 肩部
130 基板
131 貫通孔
132 接続端子
133 接続配線
140 仕切り部材
141 排気用通路
142 仕切り部
143 排気孔
144 通気孔
150 蓋体
160,170 空間部
180 隔壁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を接続する組電池を二次元方向に接続する電池ブロックと、
前記電池ブロックを収納する収納部を有し少なくとも一方に開口端を有する筐体と、
前記開口端を覆い前記電池の電極部に対応した貫通孔を有する基板と、
複数の排気用通路を形成するとともに一端に排気孔を有する仕切り部材と、
前記仕切り部材を覆う蓋体と、を備え、
前記仕切り部材は前記複数の排気用通路同士を連通するひとつ以上の通気孔を備えることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記収納部内において前記電池を前記電池ごとに分離する隔離構造を備えることを特徴とする請求項1記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記電池は、上縁部に前記基板と接触する肩部を備え、
前記隔離構造は、前記肩部により形成される請求項2記載の電池モジュール。
【請求項4】
さらに隔壁部材を有し、
前記隔離構造は、前記隔壁部材により形成される請求項2記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記仕切り部材は一つ以上の前記組電池毎に対応して前記排気用通路を形成する
請求項1記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記通気孔は所定の間隔で設けられていることを特徴とする請求項1記載の電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2(a)】
image rotate

【図2(b)】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−70872(P2011−70872A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219988(P2009−219988)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】