説明

電池制御装置

【課題】セルを電源として作動する監視手段における消費量を正確に演算することができる電池制御装置を提供する。
【解決手段】組電池3に含まれる電池に接続され、電池を動力源として作動し、電池の状態を監視する監視手段と、電池の電圧に応じて監視手段により消費される、電池の第1の消費量を、電池の電圧を用いて推定する推定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組電池を構成する複数間の容量調整を行う容量調整装置において、特定のセルの電圧を電圧源として作動する複数の電流消費機器の消費電流の差を、当該電流消費機器の構成であるフォトカプラの有無に応じて演算し、当該消費電流の差に基づいて、セルを放電しセルの容量を調整するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−244058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の容量調整装置において、電流消費機器における消費電流は、フォトカプラの有無以外の要因でも差を生じてしまうため、消費電流の差による演算の際に十分な演算精度を得ることができない、という可能性があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電池セルを電源として作動する監視手段における消費量を正確に演算することができる電池制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電池の電圧に応じて監視手段により消費される、電池の第1の消費量を、電池の電圧を用いて推定することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、監視手段の電源となる電池の電圧に応じて、当該監視手段における消費量を推定するため、電池の電圧により監視手段の消費量が変化した場合であっても、正確に当該消費量を推定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】発明の実施形態に係る電池制御装置を示すブロック図である。
【図2】図1のセルコントローラCC2を示すブロック図である。
【図3】図1の電池セルの検出電圧に対するSOCの特性を示すグラフである。
【図4】図1の各セルコントローラに対する消費容量の特性を示すグラフである。
【図5】図1の電池制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図6】図1の電池セルの容量の変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
《第1実施形態》
図1は、本実施形態に係る電池制御装置を示すブロック図、図2は、図1のセルコントローラCC2を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る電池制御装置は、直列接続されたm個(mは任意の正の整数,図1に示す例ではm=4)の電池セル1を1単位とする電池モジュールM1,M2,Mn(nは任意の正の整数)と、それぞれの電池モジュールM1,M2〜Mnの電池容量(具体的には各単電池の電圧VC1〜VC4)を監視するn個のセルコントローラCC1,CC2〜CCnとを備える。組電池3は、電池モジュールM1,M2〜Mnを備える。電池モジュールM1,M2〜Mn及びセルコントローラCC1,CC2〜CCnは、それぞれ対応して接続されている。
【0012】
n個の電池モジュールM1〜Mnは直列に接続され、その両端に電気自動車等のモータである電池負荷2が、図示しないインバータなどの電力変換装置を介して接続されている。リレースイッチ4は、組電池3と電池負荷2の間に接続される。バッテリコントローラ10は、フォトカプラPC1等を介して、セルコントローラCC1、CC2〜CCnに接続される。
【0013】
セルコントローラCC1、CC2〜CCnは、各セルコントローラCC1、CC2〜CCnに接続される電池セル1の電圧を検出し保存し、検出電圧をバッテリコントローラ10に送信する。またセルコントローラCC1、CC2〜CCnは、バッテリコントローラ10からの信号に基づき、接続される電池セル1の電池容量を調整する。セルコントローラCC1〜CCnは、それぞれ接続されている電池セル1から電力供給を受けて作動する。すなわち、各セルコントローラCC1〜CCnは、それぞれ接続されている電池セル1を動力源とする。なお、電池容量の調整については、後述する。
【0014】
バッテリコントローラ10は、各電池セル1を制御する制御部であって、電池容量演算部11及び消費量推定部12を含む。電池容量演算部11は、各セルコントローラCC1〜CCnから送信される、各電池セル1の検出電圧を用いて、各電池セル1の電池容量を演算する。消費量推定手段12は、各セルコントローラCC1〜CCnにおける、接続されている電池の消費量を演算する。バッテリコントローラ10は、セルコントローラCC1、CC2〜CCnを介して各電池セル1の状態を管理し、電池セル1の電圧を検出するための指令信号及び電池セル1の容量を調整するための制御信号等をセルコントローラCC1、CC2〜CCnに送信する。またバッテリコントローラ10は、セルコントローラCC1、CC2、CC3から電池セル1の検出電圧を読み出し、組電池3に接続された電流センサ(図示しない)からの検出電流等の情報を加えて、電池セル1の充電状態(SOC)等を演算する。なお、電池セル1の電池容量の演算方法は、後述する。
【0015】
またバッテリコントローラ10とセルコントローラCC1〜CCnとの間には、フォトカプラPC1及びフォトカプラPC2が、接続され、バッテリコントローラ10とセルコントローラCC1〜CCnで通信が行われる。フォトカプラPC1は、バッテリコントローラ10に接続される、送信側のフォトダイオードPD1と、セルコントローラCC1に接続される、受信側のフォトトランジスタPT1とを有する。フォトカプラPC2は、セルコントローラCCnに接続される、送信側のフォトダイオードPD2と、バッテリコントローラ10に接続される、受信側のフォトトランジスタPT2とを有する。そして、各セルコントローラCC1〜CCnの間は、抵抗R11、R12、R21、R22、R31、R32を介して、通信用の配線により接続される。すなわち、バッテリコントローラ10とセルコントローラCC1〜CCnとの間は、絶縁されつつ、セルコントローラCC1〜CCnはカスケード接続されている。そして、バッテリコントローラ10は、フォトカプラPC1を介して、信号をセルコントローラCC1に送信し、当該信号は、セルコントローラCC1から順にセルコントローラCCnに送信され、バッテリコントローラ10は、セルコントローラCCnから送信される信号を受信する。これにより、バッテリコントローラ10とセルコントローラCC1〜CCnとの間において、通信が行われる。
【0016】
n個の電池モジュールM1〜Mnから電池負荷2へ電力が供給されると、各電池セル1の製造上の個体差などによって電池容量にバラツキが生じる。このため、各電池セル1の電池容量の差に応じて、バッテリコントローラ10からセルコントローラCC1,CC2,CC3に指令を送信し、スイッチング素子6を閉じて、電池容量が高い電池セルの電力を容量調整用抵抗5(図2を参照)に供給することで、所定のタイミングで電池容量を調整することが行われる。
【0017】
制御部100は、リレースイッチ4のON、OFF操作を制御し、またバッテリコントローラ10からの信号に基づき組電池3の状態に応じて、電池負荷2を含めた車両全体の制御を行う。後述するように演算された、電池セル1の電池容量から、組電池1が過放電になる可能性が有る場合には、当該制御部100は、インバータを制御することでモータの出力トルクに制限をかけ、電池セル1の過放電を防止する。
【0018】
図2にセルコントローラCC2の内部構造を示す。他のセルコントローラCC1〜CCnも基本的な構造は同じであるが、セルコントローラCC1と、セルコントローラCCnには、フォトカプラPC1及びフォトカプラPC2がそれぞれ接続されている点が異なる。
【0019】
セルコントローラCC2は、4つの電池セル1からなる電池モジュールM2の各電池セル1の電圧を入力する入力端子VC1〜VC4およびその接地端子GNDと、電圧検出回路21と、CPU22とを有する。電圧検出回路21は、入力端子VC1〜VC4に入力された電圧値を検出し保持し、CPU22へ送信する。CPU22は、セルコントローラCC1からの信号を受信し、セルコントローラCC3に信号を送信する。セルコントローラCC1から送信される信号は、バッテリコントローラ10から送信される信号であり、セルコントローラCC2は、当該信号に基づき、電圧検出部21による電圧の検出、後述するスイッチング6のオン、オフ制御による電池容量の調整を行う。またセルコントローラCC2は、セルコントローラCC3に信号を送信する際に、電圧検出回路21による検出電圧のデータを信号に書き込んだ上で、送信する。
【0020】
また各電池セル1には、直列接続された、容量調整用抵抗5及びスイッチング素子6が、電池セル1の両端子に接続される。スイッチング素子6は、CPU22により制御され、スイッチング素子6がON状態になると、電池セル1から電流が容量調整用抵抗5に流れ、電池セル1の容量が調整され、当該電池セル1の電圧が降下する。これにより、他の電池セル1と比較して容量の大きい電池セル1の電力を、容量調整抵抗5で消費させて、電池セル1の出力電圧を降下させる機能を、容量調整用抵抗5及びスイッチング素子6は有する。
【0021】
なお、容量調整用抵抗5及びスイッチング6素子は、最上段の電池セル1以外の電池セル1にも接続されているが、図2においては、最上段の電池セル1に接続される容量調整用抵抗5及びスイッチング6素子を記載し、それ以外の容量調整用抵抗5及びスイッチング6素子の記載を省略している。また、図1においても、容量調整用抵抗5及びスイッチング6素子の記載を省略している。またセルコントローラCC2以外の、他のセルコントローラCCnについても、同様に、容量調整用抵抗5及びスイッチング素子6が、それぞれの電池セル1の両端子に接続される。
【0022】
次に、バッテリコントローラ10とセルコントローラCC1〜CCnとの間の通信について、説明する。バッテリコントローラ10から送信される信号には、セルコントローラCC1〜CCn毎に付されているアドレス、及び、電池セル1毎に付されているアドレスが格納されている。そして、例えばセルコントローラCC2のCPU22は、受信する信号に、セルコントローラCC2のアドレス又は接続された各電池セル1のアドレスを含むか否かを判定する。そして、当該アドレスを含む場合には、受信した信号に含まれる制御指令に基づいて、制御を行う。制御指令に、例えば容量調整をする旨の指令が含まれる場合には、CPU22は、アドレスに基づき容量調整の対象となる電池セル1を特定し、対象となる電池セル1に接続されているスイッチング素子6を制御する。スイッチング素子6をオンにする時間は、バッテリコントローラ10からの信号に含まれており、CPU22は、当該時間、スイッチング素子6をオンにする。これにより、CPU22は、特定の電池セル1に対して容量を調整する。
【0023】
次に、図3〜図6を用いて、本例の電池制御装置における、電池容量の調整方法について、説明する。図3は電池セル1の充電状態(SOC(%):State of Charge)に対する電圧(V)の特性を示し、図4は各セルコントローラCC1〜CCnに対する消費容量(Ah)の特性を示す。ここで、図4について、セルコントローラの番号は、最上段のセルコントローラCC1を1番目として、最下段のセルコントローラCCnをn番目としている。
【0024】
最初に、各電池セル1の電池容量(電池セル1の残容量)の演算方法について説明する。
【0025】
各セルコントローラCC1〜CCnは、所定のサンプリング周期で各電池セル1の電圧を検出する。電池セル1の電圧の検出は、少なくとも組電池1に対して負荷がかかる前から始めており、各セルコントローラCC1〜CCnは、電池セル1に対し少なくとも無負荷時の電圧を検出する。
【0026】
図3に示すように、無負荷時の電圧と充電状態(以下SOC(%)と称す。)には、所定の関係が成り立つことが知られている。そのため、バッテリコントローラ10は、図3に示す関係を、電池セル1の検出電圧とSOCとを対応させたテーブルとして格納し、セルコントローラCCnから送信される制御信号から、各電池セル1の無負荷時の電圧を検出し、当該電圧に対応するSOCを導き出す。各電池セル1の満充電の時の電池容量(Ah)は、使用される電池の特性により予め定まるため、以下の(式1)により、電圧検出時の各電池セル1の電池容量(Ah)が導き出される。
【0027】
Ah=SOC(%)×Ah (式1)
なお、満充電の時の電池容量(Ah)は、電池セル1の経時的な劣化により変化するため、初期の電池セル1の満充電容量に劣化度を加えて、電池容量(Ah)としてもよい。
【0028】
次に、各電池セル1の現在の電池容量(Ah)について説明する。電池容量(Ah)は、電池負荷2を駆動させることで変化するが、本例では、電池セル1が、セルコントローラCC1〜CCnの電源となっているため、セルコントローラCC1〜CCnを駆動させることで消費される容量を容量演算に反映させなければならない。
【0029】
ここで、セルコントローラCC1〜CCnを駆動させることで、各電池セル1が消費する消費容量(Ahc)について、図4を用いて、説明する。セルコントローラCC1〜CCnにおける消費容量(Ahc)は、電源となる電池セル1の電圧に応じて異なり、また各セルコントローラCC1〜CCn間でも異なる。例えば、セルコントローラCC1について、接続される複数の電池セル1の検出電圧がVである場合に消費容量はAhとなり、検出電圧Vである場合に消費容量はAhとなり、検出電圧Vである場合に消費容量はAhとなる。ただし、V<V<V、Ah<Ah<Ahである。そして、他のセルコントローラCC2〜CCnについても、接続される複数の電池セル1の検出電圧に応じて、消費容量(Ahc)が異なる。すなわち、接続される複数の電池セル1の検出電圧と、消費容量(Ahc)は、図4に示すような、予め設計段階で定まる関係が成立する。そのため、本例は、セルコントローラCC1〜CCn毎に、検出電圧に対する消費容量(Ahc)を予め設定する。なお、本例において、図4に示す消費容量の時間成分は、サンプリング周期に対応しており、例えば、セルコントローラCC1について、対応する複数の電池セル1の電圧がVの場合に、サンプリング周期の間に、当該対応する複数の電池セル1は、容量(Ah)分を消費することになる。
【0030】
本例において、バッテリコントローラ10は、消費用量推定部12において、図4に示す関係を、セルコントローラCC1〜CCn毎に、電池セル1の検出電圧と消費容量(Ahc)とを対応させたテーブルとして格納する。そして、バッテリコントローラ10が、セルコントローラCCnから送信される制御信号から各電池セル1の電圧を検出し、消費用量推定部12は、当該テーブルを参照して、各セルコントローラCC1〜CCnにおける、検出電圧に対応する消費容量(Ahc)を推定する。
【0031】
またセルコントローラCC1及びセルコントローラCCnには、通信用の抵抗R11,R12が接続され、フォトカプラPC1及びPC2がそれぞれ接続されている。他のセルコントローラCC2〜CCn−1には、通信用の抵抗R21、R22等が接続されている。そのため、電池セル1の電池容量(Ah)を演算する際には、フォトカプラPC1、PC2及び通信用の抵抗R11,R12、R21、R22、R31、R32等の、各セルコントローラに接続される回路構成による、消費量を加えた方がよい。当該回路構成によって消費される、電池セル1の消費容量(Ahp)は、使用される回路部品に応じて決まり、セルコントローラCC1〜CCn毎に予め設定されている。
【0032】
また、本例は容量調整により、電池セル1を放電させるため、容量調整による電池の消費量も容量演算に反映させた方がよい。容量調整による電池の消費容量(Aha)は、電池のバラツキに応じて、バッテリコントローラ10により、各電池セル1に接続されるスイッチング素子6のオン時間と当該スイッチング素子の抵抗値により決まる。なお、容量調整の具体的な方法は、後述する。
【0033】
そして、電池容量(Ah)が導きだされた後の現在の電池容量(Ah)、言い換えると、最初の無負荷時の電池セル1の電圧が検出された後、サンプリング周期分、経過後の電池容量(Ah)は、式2により導き出される。
【0034】
Ah=Ah−Ahc−Ahp−Aha (式2)
つまり、バッテリコントローラ10は、無負荷時の電池セル1の電圧を各セルコントローラCC1〜CCnからの信号により検出し、電池容量演算部11により、当該検出電圧から各電池セル1の電池容量(Ah)を演算する。バッテリコントローラ10は、次の周期で検出される検出電圧を検出し、消費量推定部12により当該検出電圧から消費容量(Ahc)を推定し、電池容量演算部11により消費容量(Aha)及び消費容量(Ahp)を演算する。そして、バッテリコントローラ10は、式2に基づき、現在の電池容量(Ah)を演算する。
【0035】
次に、バッテリコントローラ10により演算された電池容量(Ah)を用いた、電池セル1の容量調整の方法について説明する。
【0036】
上記の通り、組電池3に含まれる各電池セル1の電池容量(Ah)は、電池容量演算部11及び消費量推定部12により演算される。バッテリコントローラ10は、各電池セル1の電池容量(Ah)の中で、最も電池容量の小さい電池セル1を特定する。そして、特定された電池セル1の電池容量(Ah)と、その他の電池セル1の電池容量(Ah)との容量差を演算し、所定の閾値と比較する。
【0037】
ここで、当該所定の閾値とは、容量のバラツキの大きさに相当し、当該閾値を小さくすることでバラツキ条件は厳しくなり、当該閾値を大きくすることでバラツキ条件は緩くなる閾値である。本例において、所定の閾値は予め設定された値とするが、任意に可変できるようにしてもよい。
【0038】
そして、電池容量の差が所定の閾値より大きい場合に、バッテリコントローラ10は、バラツキが大きいと判断し、容量調整の対象の電池セル1として特定する。容量の調整量は、電池セル1の放電時間により調整されるため、バッテリコントローラ10は、容量調整の時間に相当する時間分、スイッチング素子6をオンにし、バラツキの大きい電池セル1を放電させる。容量調整用抵抗5の抵抗値は、設計の段階で設定されているため、スイッチング素子6をオンにする時間は、調整対象の電池セル1の容量と最も低い電池容量の電池セル1の容量との差と、当該容量調整用抵抗5の抵抗値とを用いて、演算される。上記の通り、バッテリコントローラ10は、電池容量演算部11により演算された電池容量(Aht)と所定の閾値との比較により、調整対象となる電池セル1を特定し、調整対象となる電池セル1毎に、スイッチング素子6をオンにする時間を設定し、対応するスイッチング素子6をオンにする。これにより、バラツキの大きい電池セル1の電池容量が調整され、各電池セル1のバラツキが解消される。
【0039】
なお、本例は、最も低い電池容量との差に応じて容量調整を行うが、例えば、複数の電池セル1の電池容量の平均値を基準として、当該平均値より高い容量の電池セル1の容量を調整してもよい。また、他の周知な方法を用いて、容量調整を行ってもよい。
【0040】
次に、図5を用いて、本例の電池制御装置の制御手順を説明する。図5は、本例の電池制御装置の制御手順のフローチャートである。
【0041】
ステップS1にて、バッテリコントローラ10は、セルコントローラCC1〜CCnに制御信号を送信し、各電池セル1の電圧を検出する。ステップS2にて、バッテリコントローラ10は、電池セル1の電池容量(Ah)又は電池容量(Ah)が演算されているか否かを判定する。例えば、電池セル1が無負荷の状態で、初めて電池セル1の電圧を検出した場合には、電池容量(Ah)は電池容量演算部11にて演算されておらず、後述するステップS7にて電池容量(Ah)も演算されていないため、ステップS3に進む。ステップS3にて、電池容量演算部11は、図3に相当する、検出電圧とSOCとを対応させたテーブルを参照し、ステップS1にて検出された検出電圧を用いて、各電池セルの電池容量(Ah)を演算し、式1を用いて各電池セルの電池容量(Ah)を演算し、ステップS1に戻る。
【0042】
一方、ステップS2にて、電池容量(Ah)又は電池容量(Ah)が演算されている場合には、ステップS4に進む。そして、消費量推定手段12は、図4に相当する、検出電圧と消費容量(Ahc)とを対応させたテーブルを参照して、ステップS1にて検出された検出電圧を用いて、対応する電池セル1の検出電圧に応じて、各セルコントローラCC1〜CCnの消費容量(Ahc)を推定する。ステップS5にて、バッテリコントローラ10は電池容量演算部11にて消費容量(Ahp)を演算する。上記の通り、消費容量(Ahp)はセルコントローラCC1〜CCn毎に予め設定されており、ステップS1のサンプリング周期の間に、各セルコントローラCC1〜CCnの通信による消費量である。なお、セルコントローラCC1〜CCnに、図示しない総電圧センサや電流センサ等を接続し、当該センサを電池セル1の電力により駆動する場合には、当該センサを駆動させることによる消費量も、消費容量(Ahp)に含まれる。
【0043】
ステップS6にて、バッテリコントローラ10は電池容量演算部11により消費容量(Aha)を演算する。消費容量(Aha)は、容量調整による電池セル1の放電容量に相当し、後述するステップS11により設定される、スイッチング素子6のオン時間と容量調整用抵抗5の抵抗値から演算される。ステップS7にて、バッテリコントローラ10は電池容量演算部11により、式2を用いて、各電池セル1の電池容量(Aht)を演算する。
【0044】
次に、バッテリコントローラ10は、ステップS8にて、ステップS7による、各電池セル1の電池容量(Ah)から、最も電池容量の小さい電池セル1を特定する。ステップS9にて、バッテリコントローラ10は、ステップS8により特定された電池セル1の電池容量に対する、各電池セル1の容量差を演算する。ステップS10にて、バッテリコントローラ10はステップS9の電池容量の差と、予め設定されている所定の閾値を比較する。電池容量の差が所定の閾値より大きい電池セル1については、ステップS11及びステップS12の制御処理が行われ、電池容量の差が所定の閾値以下の電池セル1については、制御処理を終了する。
【0045】
ステップS11にて、バッテリコントローラ10は、ステップS10による電池容量の差から、スイッチング素子6のオン時間を設定する。ステップS12にて、バッテリコントローラ10は、容量調整される電池セル1のアドレスとオン時間とを対応させた上、容量調整をする旨の制御信号を、各セルコントローラCC1〜CCnに送信する。当該制御信号を受信したセルコントローラCC1〜CCnは制御信号を解析し、バッテリコントローラ10の指令に応じて、スイッチング素子6をオンにし、容量調整を行う。そして、全ての電池セル1について、上記の処理を終了すると、再びステップS1に戻る。
【0046】
次に、図6を用いて、本例の電池制御装置における、各電池セル1の容量変化について説明する。図6は、各電池セル1に対する電池容量の特性を示し、電圧検出のタイミングに伴う、電池容量の変化を示す。図6について、各セルコントローラCC1〜CCnにおける、検出電圧のサンプリング時の電池容量を示している。セル11はセルコントローラCC1に接続される最上段の電池セル1を示し、セル12はセルコントローラCC1に接続される最上段から2番目の電池セル1を示し、セルn1はセルコントローラCCnに接続される最上段の電池セル1を示し、セルn2はセルコントローラCCnに接続される最上段から2番目の電池セル1を示す。各電池セル1の検出のタイミングについて、Tは最初に検出するタイミングを示し、TはTからサンプリング周期経過後に検出するタイミングを示し、TはTからサンプリング周期経過後に検出するタイミングを示す。TはT後であって、所定の検出タイミングを示し、TはT後であって、所定の検出タイミングを示す。ただし、X、Yは自然数である。
【0047】
そして、横軸は各セルコントローラ及びスイッチング素子6のオン、オフを示し、縦軸は各電池セル1の残存容量である電池容量(Aht)を示す。なお、消費容量(Ahp)による減少分は省略されている。
【0048】
時間Tで検出される電池セル1は無負荷の状態であるが、図6に示すように、各電池セル1は、電池の経時劣化等により、ある程度のバラツキが生じている。
【0049】
そして、電池セル1の電圧が時間Tで検出されるまでに、各セルコントローラCC1〜CCnについて、接続される電池セル1の電圧に応じて、電池の容量を消費される。検出電圧に応じて消費される消費量は、消費容量(Ahc)に相当する。同じセルコントローラCC1〜CCnに接続される電池セル1間では、同じ容量分、消費するため、セル11及びセル12の消費容量(Ahc)はそれぞれ等しく、セルn1及びセルn2の消費容量(Ahc)はそれぞれ等しい。図4に示すように、セルコントローラCC1〜CCn毎に、消費容量(Ahc)は異なるため、図6において、時間Tにおける、消費容量(Ahc)は、セルコントローラCC1及びセルコントローラCCnで異なる。すなわち、バッテリコントローラ10は、時間Tから時間Tまでに消費される消費容量(Ahc)を、時間Tに検出される各電池セル1の検出電圧から演算する。そして、バッテリコントローラ10は、時間Tの検出電圧に基づく電池容量(Aht)から消費容量(Ahc)を減算することで、時間Tの電池容量(Aht)を演算する。演算された、時間Tの電池容量(Aht)から、バッテリコントローラ10は、容量調整の対象となる電池セル1を特定し、スイッチング素子6のオン時間を設定する。図6においては、セルn2の容量が最も小さいため、当該容量に合わせるように、セルn2の容量の容量を基準にして、セル11、セル12及びセルn1の容量が調整される。
【0050】
時間Tから時間Tまでに、各セルコントローラCC1〜CCnにより、消費容量(Ahc)が消費される。ここで、時間Tの検出電圧は時間Tの検出電圧より低いため、時間Tから時間Tまでの消費容量(Ahc)は、時間Tから時間Tまでの消費容量(Ahc)より小さい。また、時間Tから時間Tまでの間は、時間Tの時点で特定された電池セル1の容量調整が行われるため、消費容量(Aha)が消費される。すなわち、時間Tの電池セル1の電池容量(Aht)は、時間Tの電池セル1の電池容量(Aht)から、時間Tから時間Tの間の消費容量(Ahc)と、時間Tから時間Tの間の消費容量(Aha)とを減算した容量となる。そして、演算された、時間Tの電池容量(Aht)から、容量調整の対象となる電池セル1を特定する。図6において、セルn2が最も小さい容量の電池セル1となる。セル11はセルn2に対する容量差が小さいため調整の対象とならず、セル12及びセルn1はセルn2に対する容量差が大きいため調整の対象となる。
【0051】
時間Tについて、時間Tの電池容量(Ahc)は、時間Tx-1の電池容量から、時間Tx−1からTの間に消費される消費容量(Ahc)及び消費容量(Aha)を減算した容量値となる。図6において、セルn2が最も小さい容量の電池セル1となるため、容量調整のための基準の電池セル1となる。そして、セル11及びセルn1はセルn2に対する容量差が小さいため調整の対象とならず、セル12はセルn2に対する容量差が大きいため調整の対象となる。
【0052】
時間Tについて、時間Tの電池容量(Ahc)は、時間TY-1の電池容量から、時間TY−1からTの間に消費される消費容量(Ahc)及び消費容量(Aha)を減算した容量値となる。図6において、セル12が最も小さい容量の電池セル1となるため、容量調整のための基準の電池セル1となる。そして、セル11、セルn1及びセルn2は、はセル12に対する容量差が小さいため調整の対象とならない。
【0053】
上記のように、本例は、電池セル1の検出電圧に応じてセルコントローラCC1〜CCnにより消費される、電池セル1の消費量(Ahcに相当)を推定する。これにより、電池の電圧により監視手段の消費量が変化した場合であっても、正確に当該消費量を推定することができる。その結果として、電池の制御の精度を高めることができる。
【0054】
また本例は、当該消費量(Ahcに相当)を用いて、各電池セル1の電池容量を演算し、演算された電池容量に応じて電池セル1を制御する。例えば図4及び6に示すように、電池セル1のサンプリング周期の間に、各セルコントローラCC1〜CCnは、接続される電池セル1を電源とするため、電池容量を消費させる。この際、電池セル1の消費量は、電池セル1の検出電圧に応じて変化する。そのため、本例では、電池セル1の検出電圧に応じて、当該消費量を推定し、電池容量を演算する。これにより、本例は、電池の残容量を精度よく把握することできるため、電池セル1の制御の精度を向上させることができる。
【0055】
また本例は、消費量(Ahcに相当)を用いて演算された、電池セル1の電池容量Ahtを用いて、電池セル1の容量調整を行う。これにより、消費量(Ahcに相当)を反映させた電池容量に基づいて容量調整を行うため、より精度よく調整を行うことができ、バラツキを防ぐことができる。
【0056】
本例において、例えばTのタイミングにおける、各電池セル1の電池容量は、Tn-2のタイミングにおいて演算された電池容量から、Tn-1のタイミングで検出された検出電圧に対応する消費量(Ahcに相当)と、Tのタイミングで検出された検出電圧に対応する消費量(Ahcに相当)とを減算することにより、演算される(nは自然数であり、Tはサンプリング周期に相当する。例えばn=1の場合は、図6のTに相当し、n=XはTに相当する。)。これにより、時間T以降は、各電池セル1の電池容量自体を直接的に演算せずに、検出電圧に応じた消費量を減算させることで電池量(Ahtに相当)を演算するため、演算負荷を軽減させることができ、早く精度よく電池制御を行うことができる。なお、この際、Tn-2からTの間に、容量調整を行う場合には、消費量(Ahaに相当)を演算に加えてもよく、消費量(Ahpに相当)を演算に加えてもよい。
【0057】
また本例は、セルコントローラCC1〜CCnの通信により消費される消費量(Ahpに相当)を用いて、消費量(Aht)を演算する。これにより、セルコントローラCC1〜CCnとバッテリコントローラ10との間の通信による消費される、各電池セル1の消費量を容量の演算に反映させることができるため、より演算精度を高めることができる。
【0058】
また本例は、容量調整用抵抗5に電流の流すことにより消費される電池セル1の消費量(Aha)を用いて、消費量(Aht)を演算する。これにより、容量調整のための放電による消費量を容量の演算に反映させることができるため、より演算精度を高めることができる。
【0059】
なお本例において、バッテリコントローラ10の消費量推定部12は、予め電池セル1の検出電圧と消費容量とを対応させるテーブルを格納するが、検出電圧に応じて消費電流を推定し、消費量を推定してもよい。この際、消費量推定部12は、例えば、検出電圧と消費電流とを対応させるテーブルを格納してもよい。消費容量(Ahc)は、検出電圧に応じてセルコントローラCC1〜CCnにより消費される消費電流にサンプリング周期を乗じたものに相当ため、消費量推定部12は、検出電圧に応じた消費電流を推定することにより、消費容量(Ahc)を演算することができる。そして、当該消費電流は、検出電圧に応じて設計段階で予め設定される。
【0060】
なお本例において、例えば時間Tにおける消費容量(Ahc)は、時間Tの検出電圧に応じて推定するが、時間Tの検出電圧に応じて推定してもよく、時間Tから時間Tへの検出電圧の変化量に応じて、推定してもよい。時間Tにおける消費容量(Ahc)は、時間Tの検出電圧に応じて推定するが、時間Tn-1の検出電圧に応じて推定してもよく、時間Tn-1から時間Tへの検出電圧の変化量に応じて、推定してもよい。
【0061】
なお、本例のセルコントローラCC1〜CCnが本発明の「監視手段」に相当し、消費量推定部12が「推定手段」に、電池容量演算部11が「容量演算手段」に、バッテリコントローラ10が「制御手段」に、容量調整用抵抗5が「容量調整抵抗」に相当する。また本発明における第1のタイミングを本例のTn-2とすると、第2のタイミングは本例のTn-1に相当し、第3のタイミングは本例のTに相当する。また本発明における第1のタイミングを本例のTとすると、第2のタイミングは本例のTに相当し、第3のタイミングは本例のTに相当する。
【0062】
また本例の消費容量(Ahc)は本発明の「第1の消費量」に相当し、本例の消費容量(Aha)は本発明の「第2の消費量」に、本例の消費容量(AHp)は本発明の「第3の消費量」に相当する。
【符号の説明】
【0063】
1…電池セル
Ml、M2、Mn…電池モジュール
2…電池負荷
3…組電池
4…リレースイッチ
5…容量調整用抵抗
6…スイッチング素子
10…バッテリコントローラ
11…電池容量演算部
12…消費量推定部
CC1、CC2、CCn…セルコントローラ
Rll、R12…通信用抵抗
R21、R22…通信用抵抗
R31、R32…通信用抵抗
PC1、PC2…フォトカプラ
PD1、PD2…フォトダイオード、
PT1、PT2…フォトトランジスタ
21…電圧検出部
22…CPU
100…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池に含まれる電池に接続され、前記電池を動力源として作動し、前記電池の状態を監視する監視手段と、
前記電池の電圧に応じて前記監視手段により消費される、前記電池の第1の消費量を、前記電池の電圧を用いて推定する推定手段とを備える
ことを特徴とする電池制御装置。
【請求項2】
前記電池の電圧と前記第1の消費量を用いて、前記電池の容量を演算する容量演算手段と、
前記電池の容量に応じて前記単電池を制御する制御手段とをさらに備える
ことを特徴とする請求項1記載の電池制御装置。
【請求項3】
前記監視手段は、所定のタイミングで前記電池の電圧を検出し、
前記容量演算手段は、
前記監視手段により第1のタイミングで検出された前記電池の電圧を用いて、前記電池の第1の電池容量を演算し、
前記第1の電池容量から前記第1の消費量を減算し前記電池の第2の電池容量を演算する
ことを特徴とする請求項2記載の電池制御装置。
【請求項4】
前記推定手段は、
前記監視手段により第2のタイミングで検出された前記電池の電圧を用いて、前記第1の消費量を推定する
ことを特徴とする請求項3記載の電池制御装置。
【請求項5】
前記推定手段は、
前記監視手段により第2のタイミングで検出された前記電池の電圧を用いて、1回目の前記第1の消費量を推定し、
前記監視手段により第3のタイミングで検出された前記電池の電圧を用いて、2回目の前記第1の消費量を推定し、
前記容量演算手段は、前記第1の電池容量から、前記1回目の第1の消費量及び前記2回目の第1の消費量を減算し前記第2の電池容量を演算する
ことを特徴とする請求項3記載の電池制御装置。
【請求項6】
複数の前記監視手段は、前記組電池に含まれる複数の前記電池に対応して接続され、対応する前記電池の電圧を検出し、
前記推定手段は、前記複数の監視手段により消費される前記第1の消費量を、対応する前記電池の電圧を用いて、それぞれ推定し、
前記容量演算手段は、
前記複数の監視手段により前記第1のタイミングで検出された前記電池の電圧を用いて、前記対応する電池の前記第1の電池容量をそれぞれ演算し、
前記第1の電池容量から前記第1の消費量を減算し前記対応する電池の前記第2の電池容量をそれぞれ演算する
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電池制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記第2の電池容量を用いて、前記電池を放電させて容量を調整することを特徴とする
請求項6記載の電池制御装置。
【請求項8】
前記電池に接続される容量調整抵抗をさらに備え、
前記容量演算手段は、
前記第1の電池容量から、前記制御手段により容量調整の対象となった前記電池から前記容量調整抵抗に流れて消費される第2の消費量を減算し、前記容量調整の対象となった電池の前記第2の電池容量を演算することを特徴とする
請求項7に記載の電池制御装置。
【請求項9】
複数の前記監視手段は、前記組電池に含まれる複数の前記電池に対応して接続され、前記制御手段は、前記複数の監視手段のうち、少なくとも一つの監視手段と通信し、
前記容量演算手段は、前記第1の電池容量から、前記制御手段と前記監視手段との通信により消費される第3の消費量を減算し、前記制御手段と通信する前記監視手段に接続されている前記電池の前記第2の電池容量を演算することを特徴とする
請求項3〜5のいずれか一項に記載の電池制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−254670(P2011−254670A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128449(P2010−128449)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】