説明

電池用セパレータ及びアルカリ電池

【課題】電解液の吸液性を高め、電解液を長時間保持でき、また電解液の吸上げ速度を改善し電池生産性を損なわず、負極におけるデンドライトの成長を抑制することで内部短絡を防止し、且つセパレータ自身の電気抵抗も低く、さらには電解液吸液後の厚さを抑制し、正極合剤および負極合剤の容量を増やすことを可能としたアルカリ電池用セパレータを提供すること、さらに、電池の搬送や携帯時の振動・落下による衝撃を受けても内部短絡を防止できるアルカリ一次電池を提供すること。
【解決手段】耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布に、カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物を5.0〜45.0g/m2付着させ、架橋させた基材に、耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布を貼り合せてなるアルカリ電池用セパレータであって、該架橋型高吸水性高分子化合物中に、ケイ酸塩化合物がセパレータ単位面積当りに1.0×10-4〜10mg/cm2含むように添加されてなるアルカリ電池用セパレータ及び該電池用セパレータを具備してなるアルカリ一次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、空気亜鉛電池等のアルカリ一次電池に好適な電池用セパレータ、及び該電池用セパレータを具備してなるアルカリ一次電池に関する。さらに詳しくは、耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布に、特定のケイ酸塩化合物を含有する架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、架橋させた該基材に耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布を貼り合せてなる、アルカリ一次電池用セパレータ、及び該電池用セパレータを具備してなるアルカリ一次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にアルカリ一次電池には、正極活物質と負極活物質を隔離するためのセパレータが用いられている。このセパレータには
1.前記正極活物質と負極活物質の内部短絡を防止すること、
2.十分な起電反応を生じさせるために高い電解液吸液性を有し、イオン伝導性が良好で電気抵抗が低いこと、
3.電池内部に組込まれた際の占有率が小さく、正極活物質・負極活物質等の量を増やせる(電池使用可能時間を長くできる)こと、
4.電池内部に組み込まれた際、電池の搬送や携帯時に振動・落下による衝撃によってセパレータ自体が座屈せず、内部短絡を引き起こさないこと、
などの様々な性能が要求される。
上記の性能を達成すべく、耐薬品性、親水性、機械的性能等に優れるポリビニルアルコール系繊維を用い、さらに電解液吸液性等を高めるためにセルロース系繊維等を併用した電池用セパレータが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、電解液中での水素の発生を抑えるために負極を構成する亜鉛に添加されているアルミニウム成分の作用によって、針状の酸化亜鉛が析出するいわゆるデンドライトに起因した短絡が生じて電圧の異常低下を引き起こし、結果として電池寿命が短くなるという問題がある。
また、従来のアルカリマンガン電池の正極合剤として使用される二酸化マンガンと黒鉛の混合物は、高温保存下ではアルカリマンガン電池用セパレータと正極合剤との接触面に存在するセルロース繊維を酸化劣化させ、その結果、正極容量が低下し電池性能が低下するという問題もある。
【0003】
一方、近年の各種デジタル機器の急速な普及、高機能化により、アルカリ電池にはより一層の電池特性の改善が求められている。これら電池が使用される機器の負荷電力は次第に大きくなり、強負荷放電性能に優れる電池が要望されている。そこで、正極活物質として二酸化マンガンにオキシ水酸化ニッケルを混合し、強負荷放電特性を向上させたアルカリ電池も実用化されている。しかし、オキシ水酸化ニッケルは、二酸化マンガンよりも酸化力が強いので、上記アルカリ電池用セパレータでは、正極合剤との接触面に存在するセルロース繊維が非常に速く酸化劣化し、強負荷電池性能が低下する問題が指摘されている。
【0004】
また、正極活物質と負極活物質との内部短絡を防止するために、耐アルカリ性繊維として、ポリビニルアルコール系繊維とセルロース系繊維を叩解し、繊維密度の高い緻密層と密度の低い保液層(粗層)を組み合わせた二層構造の電池用セパレータが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、良好な吸液性能と内部短絡防止機能を両立させるのは難しく、デンドライトによる短絡を防止するために緻密層の比率を多くすると吸液量が少なくなり、液切れによる内部短絡が生じて電池寿命が短くなるという問題がある。また緻密層にセルロース繊維の高叩解品を使用するとセパレータ自体のコシが低下するために、電池の搬送や携帯時における振動・落下の衝撃によってセパレータ自体が座屈し、内部短絡を生じてしまう事象も発生する。
さらに、正極活物質に使用されている二酸化マンガンとの接触面に存在するセルロース繊維が酸化劣化を受け、電池寿命が短くなる問題があり、当然オキシ水酸化ニッケルを混合した正極合剤を使用した高性能(強負荷放電特性に優れる)電池内では、さらに速くセルロース繊維が酸化劣化し、強負荷放電性能が低下する問題がある。
【0005】
一方、内部短絡を防止するために耐アルカリ性繊維とセルロース繊維を併用した紙または不織布と、セロハンフィルムを併用したものが採用されている。しかし該セパレータは吸液性能に劣り、吸液量を確保するには紙基材を多くする必要がある。そのため、電池内部でのセパレータの占有率が増え、正極・負極活物質の量が制限され、さらにセロハンフィルムを使用すること、及び紙基材を多くしたことによって極間距離が長くなり内部抵抗の上昇を招き、結果的に大容量の放電性能が得られなくなるという問題がある。
【0006】
また、耐アルカリ性繊維を用いた紙基材に吸液性能を増やすために、架橋型高吸水性高分子化合物を0.5〜10.0g/m2含浸・塗布した電池用セパレータが提案されている(特許文献3〜5参照)が、かかるセパレータもデンドライトの成長を抑制できないため、デンドライトによる短絡を高度に防止することは難しく、内部短絡を生じてしまうという問題がある。
【0007】
一方、ゲル状電解液からなる負極合剤中にケイ素元素を含む化合物を特定量含有させたアルカリ電池が提案されている(特許文献6参照)が、放電特性(3.9Ωで1日に5分間放電させ、60℃で1ヶ月保存後の放電試験)は満足するものの、落下時にセパレータ自体の座屈が確認され、内部短絡を生じる問題や、従来のアルカリ電池に使用されている二酸化マンガンと黒鉛を主成分とする正極合剤および、さらに二酸化マンガンに酸化力の強いオキシ水酸化ニッケルを使用した高性能(強負荷放電特性に優れる)電池の正極合剤に接触する面におけるセルロース繊維が酸化劣化することで空隙が大きくなり、内部短絡が発生したり、正極容量が低下して電池性能が低下するといった問題がある。
【0008】
また、耐アルカリ性繊維を用いた紙基材に、架橋型高吸水性高分子化合物を5.0〜45.0g/m2付着させ、該架橋型高吸水性高分子化合物中にケイ酸塩化合物をセパレータ単位面積当り1.0×10-4〜10mg/cm2含むように添加した電池用セパレータが提案されている(特許文献7参照)が、電池性能及び、耐落下性も満足するものの、紙基材に架橋型高吸水性高分子化合物を塗布・含浸させれば、紙基材全てが架橋型高吸水性高分子化合物に覆われ、特に円筒型電池内で使用する場合、電池の組立工程時、電池セパレータの上部まで電解液を吸上げる速度(吸上速度)が遅くなり、大幅に電池生産性が低くなる。また電池用セパレータが上部まで電解液を吸い上げる速度が遅いため、現行電池組立時間のまま、密封すれば、セパレータの座屈を発生する恐れもあり、内部短絡を起こしたり、セパレータ上部への電解液の濡れが不完全なため電池性能が不十分なものになってしまう問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平6−163024号公報
【特許文献2】特開平10−92411号公報
【特許文献3】特開昭57−105957号公報
【特許文献4】特開昭57−105958号公報
【特許文献5】特開平2−078150号公報
【特許文献6】特開平9−035720号公報
【特許文献7】国際公開第2005/124895号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたもので、電解液の吸液性を高め、電解液を長時間保持でき、また電解液の吸上げ速度を改善し電池生産性を損なわず、正極合剤に使用されている二酸化マンガンやオキシ水酸化ニッケル混合物からの酸化劣化を受け難く、さらに負極におけるデンドライトの成長を抑制することで内部短絡を防止し、且つセパレータ自身の電気抵抗も低く、さらには電解液吸液後の厚さを抑制し、正極合剤および負極合剤の容量を増やすことを可能としたアルカリ電池用セパレータを提供することを目的とする。さらに、本発明の目的は、電池の搬送や携帯時の振動・落下による衝撃を受けても内部短絡を防止できるアルカリ一次電池、特に円筒型アルカリ一次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、耐アルカリ性繊維を用いた湿式不織布に対し、ケイ酸塩化合物をセパレータ単位面積当りに1.0×10-4mg〜10mg/cm2含むように添加したカルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物を特定量、付着させ、架橋させてなる基材に、耐アルカリ性繊維を用いた湿式不織布を貼り合せたセパレータを用いると、電解液を吸液・膨潤させ、不織布の細孔を詰めるとともに高吸液性能を長時間保持することが可能であり、さらに吸上げ性能も満足し電池生産性を損なわず、且つ、正極活物質である二酸化マンガンや、強酸化剤であるオキシ水酸化ニッケル混合物による酸化劣化を受け難く、さらにデンドライトの成長を抑制するとともにデンドライトによる短絡を高度に防止し、且つ落下衝撃性にも耐え得ることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布に、カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物を5.0〜45.0g/m2付着させ、架橋させた基材に、耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布を貼り合せてなるアルカリ電池用セパレータであって、該架橋型高吸水性高分子化合物中に、ケイ酸塩化合物がセパレータ単位面積当りに1.0×10-4〜10mg/cm2含まれるように添加されてなることを特徴とするアルカリ電池用セパレータ及び該電池セパレータを具備してなるアルカリ一次電池である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電解液の吸液性を高め、電解液を長時間保持でき、湿式不織布を貼り合せることで吸上げ性能も満足し、正極合剤による酸化劣化を受け難く、さらにデンドライトの成長を抑制することで内部短絡を防止し、セパレータ自身の電気抵抗も低く、電解液吸液後の厚さを抑制することで電池内の正・負極合剤の容量も増やすことを可能とした電池セパレータを提供することができる。また、該セパレータを具備することにより、搬送や携帯時の振動・落下に対する衝撃に耐え得るアルカリ電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において使用する架橋型高吸水性高分子化合物は、分子内、または末端にカルボキシル基を有するものであり、且つ架橋型の高分子であって、耐アルカリ性に優れるものであれば、いずれも使用できる。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸塩、ポリイタコン酸、ポリイタコン酸塩、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸塩、ポリクロトン酸、ポリクロトン酸塩、無水マレイン酸共重合体(イソブチル−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル−無水マレイン酸共重合体)等が好適に使用できる。また、上記ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリイタコン酸塩、ポリクロトン酸塩としては、ナトリウム塩に限定されるわけではなく、カリウム塩、リチウム塩などを採用することができるが、中でもカリウム塩が好適に使用される。これらの中でも、特にポリアクリル酸カリウム塩や無水マレイン酸共重合体は、不織布への含浸・塗布工程通過性、及び電池セパレータでの遮蔽性と高吸液性能の点から好適に使用できる。
【0015】
上記架橋型高吸水性高分子化合物の分子量は、特に制限するものではないが、平均分子量としては1,000〜1,000,000の範囲のものが好ましく使用され、粘性を有する溶液の取り扱い、及び不織布への含浸・塗布工程を考慮して、5,000〜800,000のものがより好ましく使用され、10,000〜500,000のものがさらに好ましく使用される。
【0016】
また、架橋剤としては、グリセロールポリグリシジルエーテルに代表される水溶性エポキシ樹脂やポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの架橋剤を上記のカルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物に添加して、加熱等により、該架橋型高吸水性高分子化合物を架橋させることができる。
【0017】
上記架橋剤の分子量は、特に制限されるものではないが、20,000以下のものが好ましく使用され、15,000以下のものがより好ましく使用される。分子量が20,000を越えると粘度が高くなり、取り扱い性が困難になる。また、架橋剤の使用量は特に制限されるものではないが、例えば、架橋型高吸水性高分子化合物として水溶性ポリアクリル酸(分子量が200,000〜300,000)を使用する場合、架橋型高吸水性高分子化合物に対して、架橋剤を0.01〜30質量%使用することが好ましく、0.01〜15質量%使用することがより好ましい。該架橋剤の添加量が0.01質量%未満の場合は、架橋型高吸水性高分子化合物が充分に架橋されない場合がある。また架橋には30質量%程度で十分であり、30質量%を越えて添加する必要はない。
【0018】
本発明の電池用セパレータに使用する基材用の不織布としては、耐アルカリ性に優れた合成繊維、及び/又はフィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維を用いて、湿式法にて抄造された不織布が好適である。耐アルカリ性に優れる合成繊維としては、ポリビニルアルコール系繊維、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール系共重合体複合繊維、ポリアミド/変性ポリアミド複合繊維から選択された1種又は複数のものを使用することができる。中でも電解液との親和性(濡れ性)に優れるポリビニルアルコール系繊維を主体繊維及びバインダー繊維に使用することが望ましい。
【0019】
また、本発明の電池用セパレータとして、上記の如く架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、架橋させた基材に貼り合せる湿式不織布としては、上記同様に耐アルカリ性に優れた合成繊維、及び/又はフィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維を用いて、湿式法にて抄造された不織布が好適である。耐アルカリ性に優れる合成繊維としては、ポリビニルアルコール系繊維、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール系共重合体複合繊維、ポリアミド/変性ポリアミド複合繊維から選択された1種又は複数のものを使用することができる。中でも電解液との親和性(濡れ性)に優れるポリビニルアルコール系繊維とフィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維を主体繊維、バインダー繊維に使用することが望ましい。
【0020】
該ポリビニルアルコール系繊維を主体繊維として使用する場合には、水中溶解温度90℃以上、特に100℃以上の繊維が好ましい。具体的には平均重合度1000〜5000、鹸化度95モル%以上のビニルアルコール系ポリマーからなる繊維が好適に挙げられる。該ビニルアルコール系ポリマーは他の共重合成分により共重合されていてもよいが、耐水性等の点から共重合量は20モル%以下、特に10モル%以下であるのが好ましい。また、アセタール化等の処理が施されていることが望ましい。
【0021】
該ポリビニルアルコール系繊維は、ビニルアルコール系ポリマーのみから構成されている必要はなく、他のポリマーを含んでいても構わないし、他のポリマーとの複合紡糸繊維、混合紡糸繊維(海島繊維)であっても構わない。電解液吸液性等の点からはビニルアルコール系ポリマーを30質量%以上、特に50質量%以上、さらには80質量%以上含むポリビニルアルコール繊維を用いることが好ましい。該繊維の繊度は、セパレート性、薄型化の点から3.3dtex以下、特に1.5dtex以下であるのが好ましく、抄紙性の点から0.01dtex以上、さらに0.07dtex以上であるのものが好ましい。繊維長は単繊維繊度に応じて適宜設定すればよいが、抄紙性等の点から繊維長0.5〜10mm、特に1〜5mmとするのが好ましい。
【0022】
本発明の電池用セパレータを構成する基材用の不織布及び貼り合せ用の湿式不織布に使用するフィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維としては、レーヨン繊維(ポリノジックレーヨン繊維、有機溶剤系セルロース繊維を含む)、アセテート系繊維、マーセル化天然パルプ(木材パルプ、コットンリンターパルプ、麻パルプ、ユーカリパルプ等)が挙げられる。これらフィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維の1種または2種以上を水に分散させ、ビーター、ディスクリファイナーまたは高速叩解機等の製紙用叩解機で所定の濾水度まで叩解して使用することができる。フィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維を用いる場合は、叩解の程度が濾水度(CSF)の値で0〜700ml、好ましくは、0〜550mlの範囲とし、該フィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維の配合量を0〜70質量%の範囲、好ましくは20〜60質量%の範囲とすることが望ましい。70質量%を越えて耐アルカリ性セルロース繊維を含有すると、セパレータのコシ強力が弱くなり、電池の搬送や携帯時に振動・落下による衝撃によってセパレータ自体が座屈し、内部短絡を生じる恐れがある。なお、ここでいう濾水度とは、CSF(カナダ標準形濾水度、Canadian Standard Freeness)で、JIS P 8121に規定のカナダ標準形の方法で測定した値である。
また、耐アルカリ性セルロース繊維を用いない場合としては、耐アルカリ性合成繊維として例えば、繭形断面、扁平断面、若しくは丸形断面を有するポリビニルアルコール系繊維の0.6dtex以下を用いるのが好ましく、ポリビニルアルコール系繊維を叩解し、細繊度化して使用することや、ポリビニルアルコール系扁平断面繊維を叩解せずに使用することも可能である。
【0023】
本発明に用いるバインダーとしては、耐アルカリ性、電解液吸液性の点からポリビニルアルコール系バインダーが用いられる。形態としては、繊維状、粉末状、溶液状のものがあるが、湿式抄造によってセパレータを抄造する場合は、繊維状バインダーが好ましい。繊維状バインダーを用いた場合は、乾燥前の持ち込み水分をコントロールすることにより、バインダーを完全に溶解させず、繊維形態を残したままバインダー繊維と主体繊維との交点のみを点接着させることができるため、電解液吸液性の低下、電池内部抵抗の上昇を招くことなくセパレータの強力を保持することができるので、繊維状バインダーを使用するのが好ましい。
繊維状バインダーとして、ポリビニルアルコール系バインダー繊維を用いる場合、その水中溶解温度としては、60〜90℃が好ましく、さらに好ましくは、70〜90℃である。また平均重合度は500〜3000程度、鹸化度97〜99モル%のポリビニルアルコール系ポリマーから構成された繊維が好適に使用される。勿論、他のポリマーとの複合紡糸繊維、混合紡糸繊維(海島繊維)であっても構わない。電解液吸液性、機械的性能等の点からはビニルアルコール系ポリマーを30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に80質量%以上含むポリビニルアルコール系バインダー繊維を用いることが好ましい。繊度は、水分散性、他成分との接着性、ポアサイズ等の点から0.01〜3dtex程度であるのが好ましく、繊維長は、1〜5mm程度であるのが好ましい。勿論、上記繊維以外の他の繊維を配合しても構わない。またバインダー繊維の配合量は、5〜30質量%が望ましい。バインダーの配合量が5質量%未満の場合は、電池組立工程に必要なセパレータの引張強力が得られなかったり、架橋型高吸水性高分子化合物を塗布・含浸工程時の湿強力が保持されず、塗布・含浸工程通過性が困難になる。また30質量%を越える場合には、電解液吸液性が劣る点、及び不織布内の繊維間の細孔を塞ぐため電気抵抗を上昇させる点で望ましくない。
【0024】
次に本発明の電池用セパレータに使用する基材用の不織布の製造方法について説明する。上記した耐アルカリ性合成繊維及び/又はフィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維を所定の濾水度に叩解し、これに耐アルカリ性繊維、及びポリビニルアルコール系繊維バインダーを添加混合して原料としたものを用いて、湿式法にて不織布化することにより本発明の電池用セパレータに使用する不織布が得られる。湿式法での不織布化については特に限定されないが、例えば一般の湿式抄紙機を用いることにより効率的に所望の不織布を製造できる。用いる抄き網としては、円網、短網、及び長網等が挙げられ、通常の抄紙方法で抄紙することができる。また場合によっては、異種の網を組み合せ、抄紙しても構わない。
その後、湿式法にて得られた不織布を接触型(ヤンキー型)乾燥機で乾燥させ、本発明の電池用セパレータに使用する基材用の不織布を得る。
【0025】
次いで得られた不織布に、架橋型高吸水性高分子化合物を5.0〜45.0g/m2、好ましくは8.0〜35.0g/m2の範囲で付着するように塗布または含浸する。該架橋型高吸水性高分子化合物の付着量が5.0g/m2未満であると、針状のデンドライトによる内部短絡を十分防止できなくなる。逆に架橋型高吸水性高分子化合物の付着量が45.0g/m2を越えると、セパレータ自体のインピーダンス(抵抗値)が高くなり、電池性能が劣る。また電池性能電解液吸液後のセパレータが厚くなり、電池内部でのセパレータの占有率が多くなるため、正・負極剤の容量が制限されることとなり重放電の放電性能が得られなくなる。
また、このときに、架橋型高吸水性高分子化合物中に対し、ケイ酸塩化合物をセパレータ単位面積当り1.0×10-4〜10mg/cm2の範囲で含まれるように添加する。該ケイ酸塩化合物を架橋型高吸水性高分子化合物内に上記した量添加することで、ケイ酸塩化合物が適度な分子間でのネットワーク構造を形成し、これによりデンドライトによる短絡を高度に防止するだけでなく、電池の搬送や携帯時の振動・落下に対する耐衝撃性が大きく向上する。
ケイ酸塩化合物の添加量が1.0×10-4mg/cm2未満では、針状のデンドライトの抑制効果は少なく、逆に10mg/cm2を越えて架橋型高吸水性高分子化合物内に添加した場合、粘度が急激に上昇するとともにケイ酸塩化合物が凝集して沈殿物となり、不織布への塗布・含浸工程時に均一に付与することが困難となる。また放電容量が低下してしまい、維持電圧も低下する場合がある。デンドライト抑制および耐衝撃性向上の点からケイ酸塩化合物の添加量は、5.0×10-3〜5mg/cm2が好ましく、5.0×10-2〜1mg/cm2がより好ましい。
【0026】
本発明に使用するケイ酸塩化合物としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩が挙げられ、粉末であってもよいし液体でも構わない。中でも特にケイ酸カリウムが好適に使用される。
【0027】
耐アルカリ性繊維を含む基材用の湿式不織布に該架橋型高吸水性高分子化合物を付着させる方法は、湿式法によって得られた不織布に含浸または塗布すればよく、特にその方法に制限されるものではない。塗布方法としては、ローラー転写(ロールコータ)、エアナイフコータ、ブレードコータ等の種々の方法があるが、特に制限されない。該架橋型高吸水性高分子化合物が付着した基材用の湿式不織布は、乾燥工程次いでキュアリング工程に送られて架橋型高吸水性高分子化合物が架橋される。
【0028】
次に乾燥工程、及びキュアリング工程について説明する。乾燥工程に使用する乾燥機は接触型乾燥機(ヤンキー型、多筒式乾燥機等)、非接触型乾燥機(熱風スルー乾燥機、オーブン乾燥機、電熱(赤外線))等を挙げることができ、いずれの乾燥機でも使用することができる。
接触型乾燥機にて乾燥する場合は、乾燥機表面に架橋型高吸水性高分子化合物を塗布した面を接触させて乾燥させることが好ましい。また、非接触型乾燥機を使用する場合も同様に架橋型高吸水性高分子化合物を塗布した面の側に熱源を設置するのが好ましい。例えば、熱風スルー乾燥機の場合であれば、熱風の当る面が架橋型高吸水性高分子化合物を塗布した面であるのが好ましい。
キュアリング工程において、熱処理に使用する機器は、上記乾燥工程と同様に接触型乾燥機、非接触型乾燥機のいずれも使用できる。キュアリング時の熱処理条件は100℃以上とするのが望ましい。100℃未満であれば1時間以上の熱処理時間が必要となり、実生産には不向きであり、100℃以上であることが好ましく、150℃以上がより好ましく、さらに生産効率を上げるためには180℃以上の温度で処理することが特に好ましい。
【0029】
また、本発明の電池用セパレータとして、上記の如く架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、架橋させた基材に貼り合せる湿式不織布の製造方法としては、上述した耐アルカリ性合成繊維及び/又はフィブリル化可能な耐アルカリ性セルロース繊維を用い、これに耐アルカリ性合成繊維、及びポリビニルアルコール系繊維バインダーを添加混合して原料としたものを用いて、湿式法にて不織布化することにより、貼り合せ用の湿式不織布が得られる。湿式法での不織布化については特に限定されないが、例えば一般の湿式抄紙機を用いることにより効率的に所望の不織布を製造できる。用いる抄き網としては、円網、短網、及び長網等が挙げられ、通常の抄紙方法で抄紙することができる。また場合によっては、異種の網を組み合せ、抄紙しても構わない。
その後、湿式法にて得られた不織布を接触型(ヤンキー型)乾燥機で乾燥させ、基材に貼り合せる湿式不織布が得る。
【0030】
架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、架橋させた耐アルカリ性繊維を含む基材と耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布を貼り合せる工程及び方法について説明するが、方法については特に限定されない。例えば、架橋型高吸水性高分子化合物を含浸し、付着させた場合は、キュアリングによって架橋させた基材用不織布のどちらの面でも、上記の方法で製造され、界面活性剤等の親水化処理を施した貼り合せ用の湿式不織布を貼り合せることができる。また、架橋型高吸水性高分子化合物を塗布等により片面に付着させ、キュアリングによって架橋させた基材の該架橋型高吸水性高分子化合物を付着させていない側と、上記の方法で製造され、界面活性剤処理等の親水化処理を施して湿らせた貼り合せ用の湿式不織布が重なるように接触型(ヤンキー型)乾燥機で貼り合せながら、乾燥させる。このとき接触型乾燥機表面には、貼り合わせ用の湿式不織布側がくる方が該湿式不織布と、架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、架橋させた基材とを、しっかりと貼り合せることができるので、好ましい。
【0031】
他の方法として、貼り合せ用の湿式不織布と、架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、架橋させた基材との間に接着剤を使用して貼り合わせを行ってもよい。
本発明にあっては、架橋させた基材の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、貼り合せ用の湿式不織布を重ねて貼り合わせて電池用セパレータとしてもよく、また、基材用の不織布に架橋型高吸水性高分子化合物を付着させたのちに貼り合せ用の湿式不織布を重ねて貼り合わせたのち、架橋させて電池用セパレータとしてもよい。
【0032】
また、乾燥工程、キュアリング工程及び貼り合わせ工程を経たセパレータは、必要に応じて熱プレスまたは冷間プレスによって目的とする厚さに調整することも可能である。
【0033】
本発明のアルカリ電池用セパレータにおいて、デンドライトによる内部短絡をより高度に防止できる遮蔽度の範囲として、15秒/20cm3以上であることが好ましく、より好ましくは100秒/20cm3以上、さらに好ましくは、15〜300秒/20cm3である。遮蔽度が15秒/20cm3以上であると、遮蔽性が十分となり、酸化亜鉛の針状のデンドライトによる内部短絡を防ぐことができ、保液量不足もなく、電池性能及び電池寿命の低下を防止することができる。ここで、本発明にいう遮蔽度は、アルカリ電池用のセパレータの「緻密度」の指標となるものであり、後述する方法により求めることができる。
【0034】
また、電池組立時の生産効率を示す指標として、セパレータを電池内に挿入する形(筒状)での電解液を吸上げる速度「吸上速度」を使用しているが、47mmの高さまで上がるのに、15分以内、好ましくは、12分以内、さらに好ましくは8分以内が良い。上記「吸上速度」は後述する方法により求めることができる。
【0035】
また、本発明のアルカリ電池用セパレータは、電池の搬送や携帯時の振動・落下による衝撃によるセパレータ自体の座屈、内部短絡を防止する観点から、コシ強力を1.96N以上とすることが好ましく、より好ましくは、1.96〜5.88Nである。本発明にいうコシ強力は、電池用セパレータにおけるいわゆる「硬さ」の指標となるものであり、後述する方法により求めることができる。
【0036】
上記したように、電池を高性能化および長寿命化するためには、正・負極合剤の容量を増やし、セパレータの占有率を少なくすることが必要である。かかる観点からセパレータの電解液吸液後の厚さは、0.08〜0.300mmが好ましく、さらには0.08〜0.250mmが好ましい。
【0037】
また、十分な起電反応を生じさせるために、イオン伝導性が良好でセパレータ自身のインピーダンス(抵抗値)が小さいものが良い。特に、電池寿命の延命化のためには、電池反応末期において電解液が少なくなった状態でもセパレータ自身が電解液を保液し、インピーダンスの小さいものが良い。電池寿命の基準として、電気抵抗値(特に、液切れ状態時:遠心脱水後の電気抵抗値)を1.0Ω以下とすることが好ましく、0.5〜0.8Ωがより好ましい。
【0038】
本発明のアルカリ電池用セパレータを用いることで、強負荷放電性能にも耐え得る高性能且つ、長寿命であるアルカリ電池を得ることができる。アルカリ電池内のセパレータ形状としては、特に制限されず、クロストリップ(十字構造有底円筒状セパレータ)、ラウンドストリップ(筒捲円筒状セパレータ)、スパイラル(螺旋捲き構造セパレータ)等が挙げられる。特に、本発明のアルカリ電池用セパレータをアルカリ電池に組み込む際には、貼り合せた湿式不織布が負極側に面するように配置する方が、より吸上性能は向上する。
【0039】
該アルカリ電池を構成する極合剤は、負極活物質として酸化亜鉛、電解液として40質量%の水酸化カリウム水溶液、ゲル化剤、亜鉛粉末から構成されるゲル状物を用いることができる。亜鉛粉末は、水銀、カドミウム、鉛が添加されていないものを使用するのが望ましい。特に該亜鉛粉末中にビスマス、インジウム、カルシウムおよびアルミニウムから選ばれた少なくとも一種を含有した亜鉛合金粉末が好適に使用される。一方、正極には二酸化マンガンと黒鉛を主構成材料とした正極合剤を用いることができる。また、強負荷放電性能に優れるアルカリ電池に使用されているオキシ水酸化ニッケルを含有させた正極合剤を使用することが好ましい。なお、強負荷放電特性とその保存性能の優位性を確保する観点から、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルのより好ましい含有比率は、二酸化マンガン:オキシ水酸化ニッケル=(80質量部:20質量部)〜(40質量部:60質量部)である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性値は下記の方法により測定したものである。
【0041】
(1)水中溶解温度(℃)
400mlの水(20℃)に試料繊維を2.6g投入し、昇温速度1℃/分、攪拌速度280rpmの条件で攪拌しながら昇温し、繊維が完全に溶解したときの温度を水中溶解温度とする。
【0042】
(2)濾水度(CSF)(ml)
JIS P 8121「パルプの濾水度試験方法」に準じてカナダ標準濾水度を測定する。
【0043】
(3)坪量(g/m2)
JIS P 8124「紙のメートル坪量測定方法」に準じて測定する。
【0044】
(4)厚さ(mm)及び密度 (g/cm3)
厚さは、得られたセパレータの5ヵ所を標準環境下(20℃×65%RH)に4時間以上放置した後、PEACOCK Dial-Thickness Gauge H Type(φ10mm×180g/cm2)にて測定した。密度は、坪量を厚さで除して算出する。
【0045】
(5)電解液吸液後厚さ(mm)
試料を濃度35質量%のKOH水溶液(20℃)に30分浸漬し、次いで正方形の試料の2辺が交わる頂点の1つを持ち上げた状態で30秒間静止させて、自然液切りした後、PEACOCK Dial-Thickness Gauge H Type(φ10mm×180g/cm2)にてセパレータの厚さを測定する。
【0046】
(6)遮蔽度(秒/20cm3
セパレータを濃度35質量%のKOH水溶液(20℃)に30分浸漬し、正方形の試料の2辺が交わる頂点の1つを持ち上げた状態で30秒間静止させて、自然液切りした後、メンブレンフィルターカートリッジ(ADVANTEC(株)製(ハウジング材:PP製)内径23mmφ)の中に入れ、気密性を有するように締め、上から注射器を差込み、その注射器の上に荷重500gを掛け、20cm3の空気が通過するのに要する時間(秒/20cm3)を測定する。
【0047】
(7)吸液量(g/25cm2
50mm×50mmの試料を濃度35質量%のKOH水溶液(20℃)に浴比1/100の条件で30分間浸漬し、正方形の試料の2辺が交わる頂点の1つを持ち上げた状態で30秒間静止させて、自然液切りした後、遠心分離機(himac CT 5DL:日立製作所(株)製)にて遠心脱水(3,000rpm×10分)を行った後の重量を測定して、下記の式より算出する。
吸液量(g/25cm2)=WA/(10000/25)×(W2−W1)/W1
WA=試料の坪量、W1=試料の質量、W2=遠心脱水後の質量
【0048】
(8)コシ強力(N)
試料(45mm×50mm)を筒状に2重捲きにし、内径8mmφ×長さ40mmのPP製の筒の中に挿入し、その後、濃度35質量%のKOH水溶液を添加し、筒状に入れたセパレータの上部先端(高さ45mm)まで濡れるようにした。その後、カトーテック(株)製ハンディー圧縮試験機(KES−G5)を使用し、加圧板(2cm2)を圧縮速度1mm/秒にて降下させ、筒から出た試料5mmの圧縮強力を測定する。
【0049】
(9)吸上速度(秒/47mm)
試料(47mm×50mm)を筒状に外側に架橋型高吸水性高分子化合物を塗布した面にするように2重捲きにし、内径8mmφ×長さ40mmのPP製の筒に挿入し、その後、濃度35質量%のKOH水溶液を1ml添加し、筒状に入れたセパレータの上部先端(高さ47mm)まで濡れるまでの時間を測定する。製造工程の通過性を考慮して、セパレータ上部先端(高さ47mm)まで濡れるまでの時間が15分未満であれば○、8分未満であれば◎、15分以上であれば×と評価した。
【0050】
(10)インピーダンス(抵抗値)
試料を上記トータル吸液量、及び繊維分吸液量測定時と同じ方法で、濃度35質量%のKOH水溶液(20℃)に30分浸漬し、保液十分な状態(正方形の試料の2辺が交わる頂点の1つを持ち上げた状態で30秒間静止して、液切りした状態)としたものと、同一試料を遠心分離機(himac CT 5DL:日立製作所(株)製)にて、遠心脱水(3,000rpm×10分)を行ない液切れ状態としたものとを、それぞれ20℃×65%RHの測定雰囲気下にてインピーダンス測定器(国洋電気工業(株)製 KC−547 LCR METER)で厚さを一定(0.100mm)にして測定する。
【0051】
(11)電池性能評価
電池性能評価方法として、単3(LR6)サイズのアルカリ乾電池を作製し、その組立直後、及び高温保存(80℃で3日間保存)後における放電性能を比較した。放電性能は、環境温度20℃において、3.9Ω負荷で1日5分間ずつの間欠放電したときの終止電圧0.9Vに至るまでの放電時間で評価した。セパレータを組み込み、正極合剤に二酸化マンガンと黒鉛混合物を使用したアルカリ電池(実施例1〜5)について性能を評価したものは、比較例1で得られた電池における、組立直後、及び高温保存後での放電時間をそれぞれ100としたときの相対値で示した。また、二酸化マンガンにオキシ水酸化ニッケルを混合させた正極合剤を使用したアルカリ電池(実施例6、7)については、比較例6で得られた電池における組み立て直後、および高温保存後での放電時間を100としたときの相対値で示した。組立直後及び、高温保存後の放電時間の相対値が100以上であれば長寿命且つ、内部短絡せず、酸化劣化していないと判断した。相対値が100以上105未満であれば○、105以上であれば◎、また100未満では×と判断した。
なお、電池作製法は実施例1および実施例6にて詳細に記述する。
【0052】
(12)耐落下試験
電池組立後、10個の電池を高さ1mから落下させ、落下後の電池が1個でも短絡した場合を×、短絡が全く起きなかった場合を○と評価した。
【0053】
実施例1
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)75質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)25質量%を加えて混合して原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して、坪量23.2g/m2、厚さ0.100mmの基材用の湿式不織布を得た。
カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、ポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、これに架橋剤としてポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製<分子量10,000>)を架橋型高吸水性高分子化合物に対し1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り5.0×10-2mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(オーカシール:東京応化工業(株)製)を加えて、得られた湿式不織布基材の片面にナイフコータにて塗布し、10.5g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた。その後、熱風スルー乾燥機にて乾燥したあと、熱風スルー乾燥機にてキュアリングを200℃×1分にて実施して架橋された基材を得た。該基材に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB053×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.6dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)50質量%、マーセル化パルプを35質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量13.2g/m2、厚さ0.060mmの湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、湿らせた状態で、上記基材の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させていない面と重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施した。このとき、界面活性剤を付与した貼り合わせ用の湿式不織布をドライヤー側に当てる方が、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合が乱れなくてよい。その貼り合わせを実施したセパレータをカレンダーロールにて厚さ調整を行い、坪量が46.9g/m2、厚さ0.130mmの電池用セパレータを得た。
【0054】
次に電池評価のために、二酸化マンガン94.3質量%、黒鉛粉末4.8質量%、および電解液である40質量%のKOH水溶液0.93質量%からなる正極合剤をミキサーで均一に混合し、一定粒度に調整した。
なお、二酸化マンガンは粒径20〜50μm、黒鉛粉末は粒径10〜25μmの範囲のものを分級した。続いて、一定粒度に調整された正極合剤を短筒状のペレットに圧縮成型した。
【0055】
一方、負極合剤としては、ゲル化剤であるポリアクリル酸ナトリウム1質量%、40質量%濃度のKOH水溶液33質量%、亜鉛合金粉末66質量%、さらに、ケイ素元素濃度が亜鉛粉末に対して、50質量ppmになるようにケイ酸カリウムを添加したゲル状の負極合剤を用いた。なお、亜鉛合金粉末として、亜鉛粉末に対し、ビスマスを200質量%、インジウムを500質量%およびアルミニウムを30質量%添加したものを用いた。
【0056】
得られた正極合剤ペレット、ゲル状負極合剤、および得られたセパレータと底紙(ビニロン不織布/セロハン/ビニロン不織布複合体)を用いて、セパレータがラウンドストリップ(筒捲円筒状セパレータ)型構造となるよう電池を組み立てた。そのときの電池組立性(工程通過性)及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
実施例2
実施例1と同じく、ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>、)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)35質量%、マーセル化パルプをディスクリファイナーにてCSF=550mlにまで叩解したもの50質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105-1×3:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%とを混合し、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量20.9g/m2、厚さ0.090mmの基材用の湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、イソブチル−マレイン酸共重合体(イソバン−10:(株)クラレ製<平均分子量160,000>)を用い、これに架橋剤としてポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製<分子量10,000>)を架橋型高吸水性高分子化合物に対して1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り5.0×10-3mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(オーカシール:東京応化工業(株)製)を加えたものを、得られた基材用の湿式不織布の片面にナイフコータで塗布し、14.5g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた。その後、熱風スルー乾燥機にて乾燥したあと、熱風スルー乾燥機にてキュアリングを実施して架橋させた基材を得た。該基材に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB033×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)50質量%、マーセル化パルプを35質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量15.3g/m2、厚さ0.050mmの貼り合せ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥した後、ドライヤー側にPVA(ポリビニルアルコール)水溶液をナイフコータで薄く塗布し、上記基材の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させていない面と重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ、貼り合わせを実施して電池用セパレータを得た。このとき、貼り合わせ用の湿式不織布の側をドライヤー側に当てる方が、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合が乱れなくてよい。得られた電池用セパレータをカレンダーロールにて厚さを調整し、坪量50.7g/m2、厚さ0.136mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用して、実施例1と同様の電池を作製した。電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
実施例3
実施例1と同じく、主体繊維としてポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)55質量%、有機溶剤系レーヨン繊維1.7dtex×2mm(テンセル:レンチング社製)を高速離解機にてCSF=300mlにまで叩解したもの25質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%とを混合し、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量23.0g/m2、厚さ0.115mmの基材用の湿式不織布を得た。実施例1と同様のポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)に水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、架橋剤のポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対し、1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り4.0×10-1mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(和光純薬工業(株)製)を加えたものを、得られた基材用の湿式不織布の片面にローラー転写にて塗布し、スクレーパーにて搾液を実施して8.0g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、熱風スルー乾燥機にて乾燥した。実施例2と同様に、貼り合わせ用の湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(BFH163×3:(株)クラレ製<扁平断面>) 1.6dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)75質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)25質量%を加えて原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量12.8g/m2、厚さ0.065mmの貼り合せ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥した後、ドライヤー側にPVA(ポリビニルアルコール)水溶液をナイフコータで薄く塗布し、架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた基材用の不織布の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させていない面と重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施した。このとき、湿式不織布をドライヤー側に当てる方が、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合が乱れなくてよい。その貼り合わせを実施したのち、熱プレスロールにてキュアリング及び、厚さ調整を実施して架橋型高吸水性高分子化合物を架橋して電池用セパレータを得た。得られたセパレータをカレンダーロールにて厚さ調整を行い、坪量43.8g/m2、厚さ0.130mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用し、負極剤中の亜鉛合金粉末から、ケイ素元素を含まないものを負極剤に使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製し、電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
実施例4
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB053×3:(株)クラレ製<繭断面>)0.6dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)30質量%、ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)50質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105−1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)20質量%を加えて混合して原料とした。この原料を用い、短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量24.1g/m2、厚さ0.090mmの基材用の湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、実施例1と同様のポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化ナトリウム水溶液を混合してポリアクリル酸ソーダとし、架橋剤としてポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対し、1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り4.0×10-3mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(オーカシール:東京応化工業(株)製)を加えたものを、得られた基材用の湿式不織布の片面にナイフコータで塗布し、12.0g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた。その後、実施例1と同様に、熱風スルー乾燥機にて乾燥したあと、熱風スルー乾燥機にてキュアリングを200℃×1分にて実施して架橋された基材を得た。基材用の不織布に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB033×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)50質量%、マーセル化パルプを35質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量15.2g/m2、厚さ0,067mmの貼り合わせ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、湿らせた状態で、架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた基材の該架橋型高吸水性高分子化合物を付着させていない面と重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施した。このとき、界面活性剤を付与した貼り合わせ用の湿式不織布をドライヤー側に当てる方が、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られなく、地合が乱れなくて良い。得られたセパレータをカレンダーロールにて厚さ調整を行い、坪量が51.3g/m2、厚さ0.140mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いた底紙を使用し、実施例1と同様の電池を作製し、電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
実施例5
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB033×3:(株)クラレ製<繭断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)20質量%、ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭型断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)60質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105−1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)20質量%を加えて混合して原料とした。この原料を用い、短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量20.7g/m2、厚さ0.085mmの基材用の湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、実施例1と同様のポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、架橋剤のポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対し、1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り5.0×10-2mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(和光純薬工業(株)製)を加えたものを、得られた基材用の湿式不織布の片面にナイフコータで塗布し、10.4g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、実施例1と同様に乾燥、キュアリングを実施して架橋させた基材を得た。該基材に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB033×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)40質量%、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)40質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)20質量%を加えて原料とし、これを短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量12.8g/m2、厚さ0.050mmの貼り合わせ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥した後、ドライヤー側にPVA(ポリビニルアルコール)水溶液をナイフコータで薄く塗布し、架橋させた基材の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させていない面に貼り合わせ用の湿式不織布を重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施した。このとき、張り合わせ用の湿式不織布をドライヤー側に当てる方が、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合が乱れなくてよい。その貼り合わせを実施して得られた電池用セパレータをカレンダーロールにて厚さを調整して、坪量が43.9g/m2、厚さ0.134mmの電池用セパレータを得た。
【0061】
次に電池評価のために、強負荷放電性能が優れるアルカリ電池の正極合剤に使用されている、オキシ水酸化ニッケル46.9質量%、二酸化マンガン46.9質量%、黒鉛粉末4.8質量%、ポリエチレン粉末0.47質量%および電解液である40質量%の水酸化カリウム水溶液0.93質量%をミキサーで均一に混合し、一定粒度に調整した。なお、オキシ水酸化ニッケルは粒径5〜15μm、二酸化マンガンは粒径20〜50μm、黒鉛粉末は粒径10〜25μm、およびポリエチレン粉末は粒径5〜15μmの範囲のものを分級化した。続いて、一定粒度に調整された正極合剤を短筒状のペレットに圧縮成型した。
【0062】
該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用し、上記二酸化マンガンにオキシ水酸化ニッケルを混合した正極合剤を使用し、負極合剤は実施例1に記載しているものから、ケイ素元素を含まないものを使用したこと以外は、実施例1と同様の電池を作製し、電池組立性、及び耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
実施例6
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)75質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105−1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)25質量%を加えて混合して原料とした。この原料を用い、短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量23.2g/m2、厚さ0.098mmの基材用の湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、実施例1と同様のポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、架橋剤のポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対して1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り1.8mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(オーカシール:東京応化工業(株)製)を加えたものを得られた基材用の湿式不織布を含浸させ、スクレーパーにて搾液し、28.0g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた。実施例1と同様に乾燥、キュアリングを実施して架橋させた基材を得た。該基材に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB033×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)30質量%、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)50質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)20質量%を加えて原料とし、これを短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量18.2g/m2、厚さ0.081mmの貼り合わせ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥した後、ドライヤー側にPVA(ポリビニルアルコール)水溶液をナイフコータで薄く塗布し、架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた上記基材と重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施した。このとき、貼り合わせ用の湿式不織布をドライヤー側に当てる方が、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合が乱れなくてよい。その貼り合わせを実施して得た電池用セパレータをカレンダーロールにて厚さを調整し、坪量が70.3g/m2、厚さ0.157mmの電池用セパレータを得た。実施例5と同様にオキシ水酸化ニッケルが混合された正極合剤を使用し、負極合剤としてケイ素元素を含まないものを使用した電池を作製し、電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB033×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)35質量%、有機溶剤系レーヨン繊維(テンセル:レンチング社製)1.7dtex×2mm(CSF=300ml)50質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VP105−1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を混合して原料とし、これを短網−円網抄紙機にて2層抄きあわせ抄紙を行い、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して、坪量34.8g/m2、厚さ0.114mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用して実施例1と同様の電池を作製し、電池組立性、及び耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0065】
比較例2
緻密層に、ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB053×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.6dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)25重量%、有機溶剤系レーヨン繊維(テンセル:レンチング社製)1.7dtex×2mm(CSF=10ml)70質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105-1:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)5質量%を加えて混合して原料とした。また、粗層用として、ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB053×2:(株)クラレ製<繭形断面>)0.6dtex×2mm(水中溶解温度100℃以上)25質量%、ポリノジックレーヨン繊維0.6dtex×2mm(未叩解:CSF=740ml)60質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105-1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%とを混合して原料とした。これらの原料を短網−円網抄紙機にて2層積層抄紙した。抄紙に際し、緻密層の坪量を20.0g/m2、粗層の坪量を23.0g/m2となるように調整し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して、坪量43.2g/m2、厚さ0.120mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用して実施例2と同様の電池を作製した。電池組立性、及び耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0066】
比較例3
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)55質量%、レーヨン繊維1.7dtex×3mm(未叩解:CSF=760ml)30質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105-1×3:(株)クラレ製<繭断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を混合して原料とし、これを短網−円網抄紙機にて2層抄きあわせ抄紙を行い、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して、坪量31.0g/m2、厚さ0.110mmの電池用セパレータを得た。この電池セパレータとセロハンフィルム#300(二村化学(株)製:坪量30g/m2、厚さ0.020mm)を併用して使用し、実施例1と同様の正極合剤、負極合剤を使用し、クロストリップ型セパレータ方式にて電池を作製し、電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0067】
比較例4
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)80質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105-1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)20質量%を加えて混合して原料とし、これらの原料を長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して、坪量30.5g/m2、厚さ0.110mmの湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、実施例1と同様のポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、架橋剤のポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対し、1質量%添加したものを、得られた湿式不織布の片面にローラー転写にて塗布し、スクレーパーにて搾液して10.5g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、実施例1と同様に乾燥、キュアリングして架橋された電池用セパレータを得た。得られた電池用セパレータをカレンダーロールにて厚さを調整して、坪量41.0g/m2、厚さ0.130mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用して実施例1と同様の電池を作製した。電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価の結果を表2に示す。
【0068】
比較例5
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB053×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.6dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)30質量%、有機溶剤系レーヨン繊維(テンセル:レンチング社製)1.7dtex×2mm(CSF=300ml)55質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105-1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて混合して原料とし、これらの原料を短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して、坪量25.6g/m2、厚さ0.114mmの基材用の湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、実施例1と同様のポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、架橋剤のポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対し、1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り8.2×10-2mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(オーカシール:東京応化工業(株)製)を加えたものを、得られた基材用の湿式不織布に含浸させ、スクレーパーにて搾液して3.0g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、実施例1と同様に乾燥、キュアリングを実施して架橋させた基材を得た。該基材に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB033×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)50質量%、マーセル化パルプを35質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量15.2g/m2、厚さ0.070mmの貼り合わせ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、湿らせた状態で、上記基材に重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施して電池用セパレータを得た。このとき、界面活性剤を付与した貼り合わせ用の湿式不織布をドライヤー側に当て、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合のよいものが得られる。得られた電池用セパレータをカレンダーロールにて厚さを調整して、坪量43.8g/m2、厚さ0.130mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用して実施例1と同様に電池を作製し、電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0069】
比較例6
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB053×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.6dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)30質量%、マーセル化パルプを55質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105-1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて混合して原料とし、これらの原料を短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して、坪量20.9g/m2、厚さ0.090mmの基材用の湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、実施例1で使用したポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、架橋剤のポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対して1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り1.0×10-1mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(和光純薬工業(株)製)を加えたものを、得られた基材用の湿式不織布に含浸させ、スクレーパーにて搾液して53.0g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた。実施例1と同様に乾燥、キュアリングを実施して架橋させた基材を得た。該基材に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB033×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)20質量%、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB053×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.6dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)30質量%、マーセル化パルプを35質量%、ポリビニルアルコール繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて原料とし、これを短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量20.5g/m2、厚さ0.080mmの貼り合わせ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥した後、ドライヤー側にPVA(ポリビニルアルコール)水溶液をナイフコータで薄く塗布し、上記基材を重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施して電池用セパレータを得た。このとき、湿式不織布をドライヤー側に当て、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合のよいものが得られる。得られた電池用セパレータをカレンダーロールにて厚さを調整して、坪量94.4g/m2、厚さ0.175mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用して実施例1と同様の電池を作製し、電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0070】
比較例7
実施例1と同様の原料を用い、抄紙方法も同様にして坪量23.2g/m2、厚さ0.090mmの基材用の湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、実施例1と同様のポリアクリル酸(ジュリマーAC−10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、架橋剤のポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対して1質量%添加し、さらに、セパレータ単位面積当り1.3×10-6mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(和光純薬工業(株)製)を加えたものを、得られた湿式不織布基材にナイフコータにて塗布し、12.0g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させた。実施例1と同様に乾燥、キュアリングを実施して架橋させた基材を得た。該基材に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB053×3:(株)クラレ製<繭形断面>)0.4dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)50質量%、マーセル化パルプを35質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量15.5g/m2、厚さ0.070mmの貼り合わせ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、湿らせた状態で、上記基材の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させていない面と重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施して電池用セパレータを得た。このとき、界面活性剤を付与した貼り合わせ用の湿式不織布をドライヤー側に当て、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合のよいものが得られる。得られた電池用セパレータをカレンダーロールにて厚さを調整して、坪量50.7g/m2、厚さ0.130mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用して実施例1と同様の電池を作製し、電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0071】
比較例8
ポリビニルアルコール系主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)60質量%、ポリビニルアルコール系主体繊維(BFH163×3:(株)クラレ製<扁平断面>)1.6dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)20質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(VPB105-1×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)20質量%を加えて混合して原料とし、これらの原料を短網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して、坪量30.5g/m2、厚さ0.110mmの基材用の湿式不織布を得た。カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物として、実施例1で使用したポリアクリル酸(ジュリマーAC‐10LHP:日本純薬(株)製<平均分子量250,000>)を用い、これに水酸化カリウム水溶液を混合してポリアクリル酸カリウムとし、架橋剤のポリエチレンイミン(エポミンSP-200:(株)日本触媒製)を架橋型高吸水性高分子化合物に対して1質量%添加し、さらにケイ酸カリウムがセパレータ単位面積当り15mg/cm2含まれるようにケイ酸カリウム水溶液(和光純薬工業(株)製)を加えたものを、得られた基材用の湿式不織布に含浸させ、スクレーパーにて搾液して20.0g/m2の架橋型高吸水性高分子化合物を付着させ、実施例1と同様に乾燥、キュアリングを実施して架橋させた基材を得た。該基材に貼り合わせる湿式不織布として、ポリビニルアルコール主体繊維(VPB103×3:(株)クラレ製<繭形断面>)1.1dtex×3mm(水中溶解温度100℃以上)50質量%、マーセル化パルプを35質量%、ポリビニルアルコール系バインダー繊維(ビニロンバインダー:繭形断面)1.1dtex×3mm(水中溶解温度70℃)15質量%を加えて原料とし、これを長網抄紙機にて抄紙し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥し、坪量18.0g/m2、厚さ0.080mmの貼り合わせ用の湿式不織布を得た。これに界面活性剤を付与し、ヤンキー型乾燥機にて乾燥した後、ドライヤー側にPVA(ポリビニルアルコール)水溶液をナイフコータで薄く塗布し、上記基材に重ね合わせ、ヤンキー型乾燥機にて乾燥させ貼り合わせを実施して電池用セパレータを得た。このとき、湿式不織布をドライヤー側に当て、架橋型高吸水性高分子化合物がドライヤーへ取られず、地合のよいものが得られる。得られた電池用セパレータをカレンダーロールにて厚さを調整して、坪量68.5g/m2、厚さ0.145mmの電池用セパレータを得た。該セパレータと実施例1で用いたのと同様の底紙を使用して実施例1と同様の電池を作製し、電池組立性及び、耐落下試験、電池性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0072】
比較例9
比較例1と同様のセパレータ及び、底紙を使用し、電池を構成する極合剤として実施例6で用いた正極合剤を使用し、負極合剤として実施例5で用いたのと同様のゲル剤を使用して電池を作製し、耐落下試験及び、電池性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1及び表2に示した通り、実施例1、2は耐アルカリ性繊維を使用した基材用の湿式不織布にカルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物にケイ酸塩化合物を添加したものを塗布して、架橋させた基材に、耐アルカリ性繊維を使用した湿式不織布を貼り合わせた電池用セパレータである。単位面積当りの電解液吸液量、特に繊維分吸液量は、架橋した高吸水性高分子化合物が付着していないもの(比較例1、2、3)に比し、略同等から1.5倍以上を確保している。特にインピーダンス(液切り状態想定:遠心脱水後)が1.00Ω以下の低い抵抗値となり、電池寿命が長くなる傾向が見られる。
また針状デンドライトを防止するために必要な遮蔽性を確保・維持することができた。また、コシ強力も1.96N以上であり、落下衝撃にも耐え得るセパレータが得られていることが分かる。さらに湿式不織布を貼り合わせることで、電解液吸上速度を改善し、電解液吸上性能に劣る(比較例4)に比し、15分以内で吸上げ高さ47mmまで吸上げる性能を有し、電池組立性(工程通過性)も問題が解決した。電池性能評価でも比較例1に比し、80℃で3日間保存後の放電性能も約5〜9%向上し、優れていることがわかる。
【0076】
実施例3の結果から、耐アルカリ性繊維を使用した基材用の湿式不織布を用い、カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物中にケイ酸塩化合物を添加したものを塗布して、架橋させた基材に、耐アルカリ性繊維を使用した湿式不織布を貼り合わせたセパレータであれば、負極合剤の亜鉛合金中にケイ素元素を添加しなくても針状のデンドライトの成長を抑制する効果があり、また吸上げ性能も問題なく、電池性能においても実施例1、2に比較しても性能自体変わらず、問題なく使用できることがわかる。
【0077】
実施例4の結果から、ナトリウム塩でも問題なく使用できるが、カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物のポリアクリル酸塩としてはナトリウム塩よりもカリウム塩の方が、好ましい結果となっていることがわかる。
【0078】
実施例5、6の結果から、強負荷放電性能を向上させる目的で二酸化マンガンにオキシ水酸化ニッケルを混合させた正極合剤を用いたアルカリ電池内においても問題なく使用でき、従来の合成繊維とセルロース系繊維を使用したセパレータに比し、性能が著しく向上することがわかる。また、従来のアルカリ電池よりも強負荷放電性能を向上させるためオキシ水酸化ニッケルを混合させた正極合剤を使用したアルカリ電池はその性能がより向上し、電池寿命が延びることがわかる。
【0079】
比較例1は吸液量、吸上速度は満足しているものの、遮蔽度が13秒以下となり、遮蔽性の面で劣り、析出するデンドライトを防止することは困難である。また、遠心脱水後のインピーダンスも高く、コシ強力も1.96N未満となっているため、電池の搬送や携帯時に振動・落下による衝撃によってセパレータ自体が座屈し、電池内で内部短絡を生じた。
【0080】
比較例2は遮蔽度が13秒未満であり、また遠心脱水後のインピーダンスも高いために、電池寿命の延長にはならない。セパレータのコシ強力が1.96N未満となるため、電池の搬送や携帯時に振動・落下による衝撃によってセパレータ自体が座屈し、電池内で内部短絡を生じた。
【0081】
比較例3は遮蔽性に優れているものの、遠心脱水後のインピーダンスが高く、高温保存後の電池性能は低下する。またコシ強力も1.96N未満となるため、電池の搬送や携帯時に電動・落下により衝撃によってセパレータ自体が座屈し、電池内で内部短絡を生じた。
【0082】
比較例4は繊維分吸液量も満足し、遮蔽度も15秒以上、セパレータのコシ強力も1.96N以上を確保し、遠心脱水後のインピーダンスも低いものの、吸上げ速度が遅いため、電池組立性(工程通過性)の面で問題がある。
【0083】
比較例5は、繊維分電解液吸液量も確保し、遠心脱水後のインピーダンスも低く、コシ強力も1.96N以上を確保しているものの、遮蔽度が15秒未満であるために遮蔽性が不足している。また架橋型高吸水性高分子がセパレータ自体を覆うことは難しく、成長するデンドライトを防止することは不可能であった。さらに架橋型高吸水性高分子化合物にてセパレータ自体が覆われていないために、正極合剤である二酸化マンガンと接触していた湿式不織布のマーセル化パルプが酸化劣化し、80℃で3日間保存後の放電性能が劣っている。
【0084】
比較例6は、繊維分電解液吸液量も確保し、コシ強力が1.96N以上、遮蔽度が15秒以上を保有しているものの、遠心脱水後のインピーダンスも高いため、電池性能が劣る。また、電解液吸液後の厚さが大きく、負極合剤の容量を増やすことが困難であるため、電池寿命が短く、80℃×3日間保存後の放電性能が劣っている。
【0085】
比較例7は、吸液量も確保し、遮蔽度も15秒以上、コシ強力も1.96N以上を確保しているものの、ケイ酸塩化合物の添加量が少なく、成長するデンドライトをセパレータ表面で防ぐことは困難であり、また内部短絡(異常放電)が見られた。
【0086】
比較例8は、吸液量も確保し、遮蔽度も15秒以上、コシ強力も1.96N以上を確保しているものの、ケイ酸塩化合物の添加量が多く、低電圧となり、80℃で3日間保存後の放電性能が劣っている。
【0087】
比較例9は、吸液量は確保しているものの、遮蔽性が劣り、析出するデンドライトを防止することは困難である。またインピーダンスも高く、コシ強力も1.96N未満となっているので、耐落下性に劣り、セパレータ自体が座屈して内部短絡を発生した。また高負荷放電性能の優れる正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合させたアルカリ電池に使用すると、正極合剤と接触していた有機溶剤系セルロースのフィブリル化物が酸化劣化し、内部短絡が発生し、電池寿命の短い電池となった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、電解液の吸液性を高め、電解液を長時間保持し、電池組立性(工程通過性)に必要な電解液吸上性能を有し、正極合剤による酸化劣化を受け難く、さらにデンドライトの成長を抑制することで内部短絡を防止し、セパレータ自身の電気抵抗も低く、電解液吸液後の厚さを抑制することで電池内の正・負極合剤の容量も増やすことを可能とした電池セパレータを提供することができる。また、該セパレータを具備することにより、搬送や携帯時の振動・落下に対する衝撃に耐え得るアルカリ一次電池を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布に、カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物を5.0〜45.0g/m2付着させ、架橋させた基材に、耐アルカリ性繊維を含む湿式不織布を貼り合せてなるアルカリ電池用セパレータであって、該架橋型高吸水性高分子化合物中に、ケイ酸塩化合物がセパレータ単位面積当りに1.0×10-4〜10mg/cm2含まれるように添加されてなることを特徴とするアルカリ電池用セパレータ。
【請求項2】
遮蔽度が15秒以上、電解液吸上速度が47mm/15分以上、コシ強力が1.96N以上、電解液吸液後の厚さが0.300mm以下であって、且つ、インピーダンス(電気抵抗値)が1.00Ω以下である請求項1に記載のアルカリ電池用セパレータ。
【請求項3】
カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物が、ポリアクリル酸塩及び/又は無水マレイン酸共重合体である請求項1に記載のアルカリ電池用セパレータ。
【請求項4】
カルボキシル基を有する架橋型高吸水性高分子化合物が、ポリアクリル酸カリウムである請求項1記載のアルカリ電池用セパレータ。
【請求項5】
ケイ酸塩化合物がケイ酸カリウムである請求項1に記載のアルカリ電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池用セパレータを具備してなるアルカリ一次電池。

【公開番号】特開2007−227067(P2007−227067A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45062(P2006−45062)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】