説明

電池用粒子の製造方法及び製造装置

【課題】本体の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子であって、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供する。
【解決手段】
電池用粒子の製造方法及び製造装置は、本体の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子の製造をする製造装置及び製造方法であって、電池用粒子の本体の原材料及びリチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液を準備し、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径に対応する指標値を測定する。そして、前駆体の二次粒子径に対応する指標値に基づいてスプレー速度を制御して原材料に前駆体ゾルゲル溶液をスプレーすることにより塗布し、塗布した前駆体ゾルゲル溶液を乾燥させることにより原材料の表面をリチウムイオン伝導体で被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リチウム二次電池等における、本体の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子の製造方法及び製造装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されているリチウムイオン二次電池は、正極層と負極層との間に可燃性の電解液を使用している。したがって、安全性を確保するための構造や材料選択等の対策が必要になる。一方、固体電解質は不燃性であるため、上記対策を簡素化することができる。そのため、正極層と負極層との間に固体電解質層を備える形態のリチウムイオン二次電池が提案されている。この様な形態のリチウムイオン二次電池は全固体電池と呼ばれる。
【0003】
しかし、全固体電池では、正極層に含まれる正極活物質粒子と固体電解質粒子との界面をリチウムイオンが移動する際の抵抗が増大しやすい。これは正極活物質と固体電解質とが反応をすることにより、正極活物質粒子の表面に高抵抗部位ができるためであると言われている(非特許文献1)。このため、正極活物質粒子の表面に反応を抑制する層を設けることにより、高抵抗部位の発生を抑制する技術が開示されている。例えば、特許文献1には、反応を抑制する層として作用する固体電解質膜で正極活物質粒子の表面を被覆した電池用粒子の製造方法が開示されている。
【0004】
この種の電池用粒子の製造方法では、固体電解質の前駆体溶液を活物質粒子の表面にスプレーコートした後、スプレーコートされた活物質粒子を熱処理して、活物質粒子の表面が固体電解質膜で被覆された電池用粒子を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−193940号公報
【非特許文献1】Electrochemistry Communications、9(2007)、p.1486−1490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この種の電池用粒子の製造方法では、問題点として活物質粒子の表面のに対する固体電解質膜の被覆率にばらつきが発生する恐れがある。そして、被覆率のばらつきにより電池用粒子の性能が発生することが考えられる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本体の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子であって、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る電池用粒子の製造方法は、本体の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子の製造方法であって、上記電池用粒子の本体の原材料を準備する、原材料準備工程と、上記リチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液を準備する、前駆体準備工程と、上記前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径に対応する指標値を測定する、測定工程と、上記前駆体の二次粒子径に対応する指標値に基づいてスプレー速度を制御して上記原材料に上記前駆体ゾルゲル溶液をスプレーすることにより塗布し、塗布した上記前駆体ゾルゲル溶液を乾燥させることにより上記原材料の表面をリチウムイオン伝導体で被覆する、被覆工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】

ここで、電池用粒子とは、広義には電池に用いられる粒子を意味し、狭義には、正極層、電解質層、負極層のうち少なくともいずれか1つの層に用いられる粒子を意味する。本体とは、電池用粒子の中心となる部分のことを意味する。リチウムイオン伝導体とは、リチウムイオンを伝導させることができる物質、又はその物質を有する材料を意味する。被覆とは、電池用粒子の本体の表面をリチウムイオン伝導体で覆うことを意味し、電池用粒子の本体の少なくとも一部の表面にリチウムイオン伝導体が存在していればよい。
【0010】
原材料とは、電池用粒子の本体の原料又は材料を意味する。なお、原材料は電池材料の本体そのものであってもよい。原材料は、電池用粒子の本体となるものであれば特に限定されるものではない。例えば、原材料は、リチウムイオン伝導体を被覆する前後で化学的な組成が変化してもよいし、被覆する前後で化学的な組成が同様であってもよい。
【0011】
前駆体とは、広義には、リチウムイオン伝導体に変化することのできる原料を意味し、狭義には、縮合重合によりリチウムイオン伝導体になる中間原料を意味する。前駆体ゾルゲル溶液とは、前駆体を含んだゾルゲル法に用いられる溶液を意味する。
【0012】
二次粒子とは、前駆体である一次粒子が凝集している集合体を意味する。二次粒子径とは、二次粒子の直径を意味する。二次粒子径は、例えば、TEM写真、及びSEM写真等によって求めることができる。二次粒子径に対応する指標値は、例えば、二次粒子径そのもの、レーザー光線の散乱度、及びUV吸収度等を挙げることができる。
【0013】
スプレー速度とは、単位時間当たりにスプレーされる前駆体ゾルゲル溶液の量を意味する。
【0014】
被覆工程では、前駆体の二次粒子径に対応する指標値に基づいてスプレー速度を制御して原材料に前駆体ゾルゲル溶液をスプレーすることにより塗布し、塗布した前駆体ゾルゲル溶液を乾燥させることにより原材料の表面をリチウムイオン伝導体で被覆する。例えば、被覆工程では、測定工程で測定した前駆体の二次粒子径に対応する指標値と基準となる指標値とを比較することにより、スプレー速度の制御を行う。
【0015】
以上により、本発明に係る電池用粒子の製造方法は、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供することができる。
【0016】
本発明に係る電池用粒子の製造方法の一態様では、上記電池用粒子の製造方法において、更に前記原材料を流動させる、流動工程を備える。
【0017】
この態様によれば、原材料を流動させることができる。
【0018】
本発明に係る電池用粒子の製造方法の他の態様では、上記測定工程における上記二次粒子径に対応する指標値は上記前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度である。
【0019】
ここで、UV吸収度とは紫外線が吸収される度合いを意味する。
【0020】
この態様によれば、UV吸収度を測定することにより、簡単に前駆体の二次粒子径に対応する指標値を求めることができる。
【0021】
本発明に係る電池用粒子の製造方法の他の態様では、上記リチウムイオン伝導体は、LiNbO、LiTi、及びLiTi12から選択される少なくとも1種類以上の電解質を有する。
【0022】
本発明に係る電池用粒子の製造方法の他の態様では、上記リチウムイオン伝導体は、少なくともLiNbOを有する。
【0023】
本発明に係る電池用粒子の製造方法の他の態様では上記電池用粒子の本体は、LiNiCoMnO、LiCoO、及びLiNi1/3Co1/3Mn1/3から選択される少なくとも1種類以上の活物質を有する活物質粒子である。
【0024】
本発明に係る電池用粒子の製造方法の他の態様では、上記電池用粒子の本体は、少なくともLiNiCoMnOを有する活物質粒子である。
【0025】
上述した課題を解決するため、本発明に係る電池用粒子の製造装置は、電池用粒子の本体の表面をリチウムイオン伝導体で被覆するコート装置であって、上記電池用粒子の本体の原材料の表面を上記リチウム伝導体で被覆する処理を行う処理室と、上記処理に用いる上記リチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液を保存する保存容器と、上記前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径に対応する指標値を測定する測定手段と、上記処理室において上記前駆体ゾルゲル溶液のスプレーを行う噴霧器と、上記前駆体の二次粒子径に対応する指標値に基づいてスプレー速度を可変とするように上記噴霧器を制御する制御手段と、上記原材料を流動させる流動用の気体を上記処理室に導入する気体導入路と、上記流動用の気体を上記処理室から排出する気体排出路と、上記気体導入路と上記気体排出路のうち少なくとも一方に配置され上記気体を吸引する吸引装置と、を備える。
【0026】
ここで、電池用粒子とは、広義には電池に用いられる材料を意味し、狭義には、正極層、電解質層、負極層のうち少なくともいずれか1つの層に用いられる材料を意味する。本体とは、電池用粒子の中心となる部分のことを意味する。リチウムイオン伝導体とは、リチウムイオンを伝導させることができる物質、又はその物質を有する材料を意味する。被覆とは、電池用粒子の本体の表面をリチウムイオン伝導体で覆うことを意味し、電池用粒子の本体の少なくとも一部の表面にリチウムイオン伝導体が存在していればよい。
【0027】
原材料とは、電池用粒子の本体となる原料又は材料を意味する。原材料は、電池用粒子の本体となるものであれば特に限定されるものではない。例えば、原材料は、リチウムイオン伝導体を被覆する前後で化学的な組成が変化してもよいし、被覆する前後で化学的な組成が同様であってもよい。
【0028】
前駆体とは、広義には、リチウムイオン伝導体に変化することのできる原料を意味し、狭義には、縮合重合によりリチウムイオン伝導体になる中間原料を意味する。前駆体ゾルゲル溶液とは、前駆体を含んだゾルゲル法に用いられる溶液を意味する。
【0029】
二次粒子とは、前駆体である一次粒子が凝集している集合体を意味する。二次粒子径とは、二次粒子の直径を意味する。二次粒子径は、例えば、TEM写真、及びSEM写真等によって求めることができる。二次粒子径に対応する指標値は、例えば、二次粒子径そのもの、レーザー光線の散乱度、及びUV吸収度等を挙げることができる。
【0030】
処理室では、電池用粒子の本体となる原材料の表面をリチウム伝導体で被覆する処理を行う。言い換えると、処理室では、電池用粒子の原材料に前駆体ゾルゲル溶液を塗布し乾燥させることにより原材料の表面をリチウムイオン伝導体で被覆する。なお、処理室は、塗布を行う第1の処理室と乾燥を行う第2の処理室とに分かれていてもよい。
【0031】
保存容器では、前駆体ゾルゲル溶液の保存をする。保存容器は前駆体ゾルゲル溶液を保存することができるものであれば特に限定されない。保存容器は、例えば、前駆体ゾルゲル溶液の攪拌をするための攪拌手段を備えてもよい。
【0032】
噴霧器は、保存容器の前駆体ゾルゲル溶液を処理室に導入し、処理室において前駆体ゾルゲル溶液のスプレーを行う。噴霧器の位置は、電池用粒子の原材料に前駆体ゾルゲル溶液をスプレーすることのできる位置であれば限定されない。なお、噴霧器には、前駆体ゾルゲル溶液を微細化するためにアトマイズ用気体導入路が設けられていてもよい。
【0033】
測定手段は、保存容器の前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径に対応する指標値を測定する。測定手段は、例えば、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。例えば、測定手段は、保存容器から測定のために前駆体ゾルゲル溶液を導入する測定導入路を備えていていてもよい。また、例えば、測定手段は、噴霧器に測定端子を配置して、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径に対応する指標値を測定してもよい。
【0034】
制御手段は、前駆体の二次粒子径に対応する指標値に基づいてスプレー速度を可変とするように噴霧器を制御する。制御手段は、例えば、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。なお、測定手段に用いるプロセッサやメモリ等と制御手段が用いるプロセッサやメモリ等を共通させてもよい。例えば、制御手段では、測定工程で測定した前駆体の二次粒子径に対応する指標値と基準となる指標値とを比較することにより、スプレー速度の制御を行う。
気体導入路とは、原材料を流動させる流動用の気体を処理室に導入する通路を意味し、気体排出路とは、流動用の気体を処理室から排出する通路を意味する。吸引装置は、流動用の気体を吸引する装置を意味する。なお、気体導入路と気体排出路とが接続し、気体導入路、気体排出路、及び処理室を含んだ1つの系が構成されてもよい。
【0035】
以上により、本発明に係る電池用粒子の製造装置は、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供することができる。
【0036】
本発明に係る電池用粒子の製造装置の一態様では、上記前駆体の二次粒子径に対応する指標値は上記前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度である。
【0037】
ここで、UV吸収度とは紫外線が吸収される度合いを意味する。
【0038】
この態様によれば、UV吸収度を測定することにより、簡単に前駆体の二次粒子径に対応する指標値を求めることができる。
【0039】
本発明に係る電池用粒子の製造装置の他の態様では、上記コート装置であって、上記処理室内の底部に設けられて回転する回転部材と、上記回転部材を回転駆動する回転駆動装置と、を更に備える。
【0040】
ここで、回転部材とは処理室内の底部に設けられて回転する部材を意味する。回転部材は、例えば、回転盤、及び回転羽等を挙げることができる。回転駆動装置は回転部材を回転駆動する装置を意味する。回転駆動装置は、例えば、電気モータ、圧力モータ、及びエンジン等を挙げることができる。
【0041】
この態様によれば、原材料が処理室の底部に堆積することを抑制することができる。
【0042】
本発明に係る電池用粒子の製造装置の他の態様では、上記リチウムイオン伝導体は、LiNbO、LiTi、及びLiTi12から選択される少なくとも1種類以上の電解質を有する。
【0043】
本発明に係る電池用粒子の製造装置の他の態様では、上記リチウムイオン伝導体は、少なくともLiNbOを有する。
【0044】
本発明に係る電池用粒子の製造装置の他の態様では、上記電池用粒子の本体は、LiNiCoMnO、LiCoO、及びLiNi1/3Co1/3Mn1/3から選択される少なくとも1種類以上の活物質を有する活物質粒子である。
【0045】
本発明に係る電池用粒子の製造装置の他の態様では、上記電池用粒子の本体は、少なくともLiNiCoMnOを有する活物質粒子である。
【発明の効果】
【0046】
本発明においては、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態のコート装置を表す概略図である。
【図2】実施形態の電池用粒子の製造方法を概念的に表すフローチャートである。
【図3】実験例1〜3で使用した前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明のコート装置及び電池用粒子の製造方法について、詳細に説明する。
【0049】
図1及び図2を参照して、実施形態に係るコート装置及び電池用粒子の製造方法について説明する。図1はコート装置を表す概略図である。図2は電池用粒子の製造方法を概念的に表すフローチャートである。
【0050】
図1において、流動層装置100は、処理室10、保存容器15、測定装置25、噴霧器60、制御装置30、気体導入路45、気体排出路50、及び吸引装置55及びを備えた、本発明に係るコート装置の一例である。
【0051】
具体的には、流動層装置100は、導入路20、回転盤35、モータ40、制御部65、攪拌機70、測定導入路75、及び測定排出路80を更に備える。
【0052】
処理室10は、例えば、アクリル樹脂やABS樹脂等の樹脂製、あるいはステンレスやアルミ等の金属製であり、円筒状の装置を使用することができる。
【0053】
保存容器15では、リチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液の保存をする。保存容器15は前駆体ゾルゲル溶液を保存することができるものであれば特に限定されない。保存容器15の材料は、例えば、ガラス、金属、及び樹脂等を挙げることができる。保存容器15には攪拌機70が備えられており、前駆体ゾルゲル溶液を攪拌しながら被覆処理をすることができる。攪拌機70は、必要に応じて、攪拌羽根や攪拌子等を有する。
【0054】
測定装置25は、保存容器15に保存された前駆体ゾルゲル溶液の前駆体のUV吸収度を測定する。測定装置25は、例えば、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。UV吸収は前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径の大きさに対応する。したがって、測定装置25は、UV吸収度を測定することにより前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径の大きさにを得ることができる。
【0055】
噴霧器60は、処理室10の下部に位置し、電池用粒子の原材料に前駆体ゾルゲル溶液をスプレーする。噴霧器60の位置は上記の位置に限定されず、例えば、処理室10の上部であってもよい。噴霧器60には、前駆体ゾルゲル溶液を微細化するために図示しないアトマイズ用気体導入路が設けられていてもよい。アトマイズ用気体としては、例えば、窒素、及び酸素等を挙げることができる。噴霧器60の方式は、例えば、2流体式、及び超音波方式等を挙げることができる。
【0056】
制御装置30は、プロセッサやメモリ等を含んで構成される装置である。なお、測定装置25に用いるプロセッサやメモリ等と制御装置30が用いるプロセッサやメモリ等を共通させてもよい。制御装置30は、UV吸収度に応じてスプレー速度を可変とするように噴霧器60を制御する。例えば、制御装置30は、測定装置25で測定した前駆体のUV吸収度と基準となる指標値とを比較することにより、スプレー速度の制御を行う。なお、基準となる指標値は、例えば、予め実験を行って決定する。実験では、前駆体の二次粒子径が異なる前駆体ゾルゲル溶液を複数準備し異なるスプレー速度で、原材料に被覆を行った場合のリチウムイオン伝導体の良否から基準となる指標値を決定することが考えられる。
【0057】
制御部65は、例えば、バルブ等を上げることができる。バルブは各種既存のバルブを用いることができる。バルブは、例えば、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、及びバタフライバルブ等を挙げることができる。制御部65によって、UV吸収度に応じてスプレー速度を可変とするように噴霧器60を制御することができる。なお、制御部65は、噴霧器60と制御装置30の少なくとも一方に含まれていてもよい。
【0058】
気体導入路45により原材料を流動させる流動用の気体を処理室10に導入し、気体排出路50により流動用の気体を処理室10から排出する。
【0059】
吸引装置55は、気体排出路50に設けられ、流動用の気体を吸引する。吸引装置55は、例えば、循環用のファンを挙げることができる。なお、吸引装置55の位置は上記の位置に限定されず、流動用の気体を吸引できる位置であれば流動層装置100のいずれかの位置に配置することができる。
【0060】
導入路20により保存容器15から前駆体ゾルゲル溶液を処理室10に導入する。導入路20は、例えば、チューブ及びパイプ等を挙げることができる。保存容器15から処理室19に前駆体ゾルゲル溶液を導入するには、例えば、液送ポンプ等を用いることができ、導入路20は、図示しない液送ポンプを備えていてもよい。
【0061】
回転盤35は、処理室10の底部に設けられて水平に回転する。回転盤35の中心部には円錐状の隆起部材を設けてもよい。隆起部材は滑らかな曲面を有しており、原材料は隆起部材を滑り落ちながら運動方向の径方向に変化することができ、原材料が処理室10の底部に堆積することを抑制することができる。
【0062】
モータ40は、処理室10の下部に位置し、回転盤35を回転駆動する。
【0063】
測定導入路75により、前駆体ゾルゲル溶液を測定装置25に導入し、測定排出路80により前駆体ゾルゲル溶液を測定装置25から保存容器15に排出する。なお、測定導入路75と測定排出路のうち少なくとも一方はバルブを備えていてもよい。バルブによって前駆体ゾルゲル溶液の流動を抑制することができる。バルブは各種既存のバルブを用いることができる。バルブは、例えば、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、及びバタフライバルブ等を挙げることができる。
【0064】
以下、図1に示す流動層装置100の動作の一部について、活物質粒子の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子の製造を例に挙げて説明する。
【0065】
まず、処理室10に収容された活物質粒子85は、気体導入路45によって導入される流動用に気体によって浮遊流動する。
【0066】
次に、活物質粒子85の流動層に向けて噴霧器60からリチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液90がスプレーされる。
【0067】
ここで、噴霧器60からスプレーされる前駆体ゾルゲル溶液90の液体の成分によって、活物質粒子85が湿潤を受けると同時に、前駆体ゾルゲル溶液85の前駆体、即ち固体の成分が活物質粒子85の表面に付着する。言い換えると、活物質粒子85に前駆体ゾルゲル溶液90が塗布をされる。
【0068】
そして、前駆体ゾルゲル溶液90の乾燥をさせることにより活物質粒子85の表面にリチウムイオン伝導体の被覆層が形成される。上述の塗布及び乾燥によって、活物質粒子85の表面はリチウムイオン伝導体で被覆をされる。
【0069】
最後に、活物質粒子85を浮遊流動させた、流動用に気体は吸引装置55によって吸引され気体排出路50から排出される。
【0070】
以上のように構成される流動層装置100による電池用粒子の製造方法について、図2を参照して、活物質粒子の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子を例に挙げ、工程ごとに説明する。
【0071】
まず、原材料としての活物質粒子とリチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液とを準備し、開始する。
【0072】
次に、測定工程では、前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度を測定する(ステップS10)。
UV吸収度は前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径の大きさに対応する。したがって、測定工程でUV吸収度を測定することにより前駆体の二次粒子径の大きさに対応した指標値を得ることができる。
【0073】
そして、被覆工程では、前駆体の二次粒子径に対応する指標値に基づいてスプレー速度を制御して原材料に前駆体ゾルゲル溶液をスプレーすることにより塗布し、塗布した前駆体ゾルゲル溶液を乾燥させることにより原材料の表面をリチウムイオン伝導体で被覆する(ステップS20)。より具体的には、まず、ステップS10で測定されたUV吸収度が、あらかじめ設定された指標値の範囲内にあれば(ステップS20a:Yes)、スプレー工程(ステップS20e)にて前駆体ゾルゲル溶液のスプレーを行う。
【0074】
他方、測定されたUV吸収度が設定範囲外である場合は(ステップS20a:No)、更に、測定されたUV吸収度が設定範囲より低いか否かが判定される(ステップS20b)
ここで、測定されたUV吸収度が設定範囲より低い場合には(ステップS20b:Yes)、スプレー速度加速工程が行われる(ステップS20c)。即ち、制御装置30が作動して噴霧器60からスプレーされる前駆体ゾルゲル溶液のスプレー速度が速くなる。
【0075】
他方、測定されたUV吸収度が設定範囲より高い場合には(ステップS20b:No)、スプレー速度減速工程が行われる(ステップS20d)。即ち、制御装置30が作動して噴霧器60からスプレーされる前駆体ゾルゲル溶液のスプレー速度が遅くなる。
【0076】
最後に、スプレー量判定工程では、スプレーした前駆体ゾルゲル溶液の量が目標値に達しているか判定する(ステップS30)。スプレーした前駆体ゾルゲル溶液の量が目標値に達している場合には(ステップS30:Yes)、処理を終了する。スプレーした前駆体ゾルゲル溶液の量が目標値に達していない場合には(ステップS30:No)、測定工程で前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度を測定し、処理を続ける。
【0077】
以上により、本発明に係る電池用粒子の製造装置及び製造方法は、本体の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子であって、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供することができる。
【0078】
例えば、活物質粒子の表面が反応抑制層としてのリチウムイオン伝導体で被覆され電池用粒子を電極層に用いる場合、電極層は、電池用粒子、固体電解質粒子、導電化材料、及び結着材料等が含有された合剤層を用いることができる。上述の電池用粒子を得るために、リチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液を活物質粒子の表面にスプレーコートを行う場合、スプレーコートを行う時間が長いためスプレーコートを行う間に前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が変化することが考えられる。この時に、変化の前後で同じスプレー速度でスプレーコートを行うと、前駆体ゾルゲル溶液は、前駆体の二次粒子径の大きさによって活物質粒子に対する付着度合いが異なることが考えられるので、スプレー速度に影響を受け活物質粒子に対するリチウムイオン伝導体の被覆率はばらつくことが推定できる。
【0079】
具体的には、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が大きい場合には活物質粒子に対して付着しづらく、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が小さい場合には活物質粒子に対して付着しやすいことが考えられるので、同じスプレー速度でスプレーコートを行うと活物質粒子に対するリチウムイオン伝導体の被覆率はばらつくことが考えられる。
【0080】
被覆率がばらついた電池用粒子を電極層に用いると、電池用粒子と固体電解質粒子との間でリチウムイオンの移動のしやすさにばらつきが生じ、電極層の性能、言い換えると電池としての性能が低下する恐れが生じる。
【0081】
しかるに本実施形態によれば、UV吸収度を測定することにより、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径に応じてスプレー速度を制御することができ、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供することができる。言い換えると、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が大きい場合にはスプレー速度を遅く制御し、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が小さい場合にはスプレー速度を早く制御することによって、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供することができる。
【0082】
例えば、被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を電極層に用いると、電池用粒子と固体電解質粒子との間でリチウムイオンの移動のしやすさが均一になり、電極層の性能、言い換えると電池としての性能が向上する。更に、電池用粒子の本体の原材料を流動させることにより原材料同士は衝突し、原材料の表面にスプレーした前駆体ゾルゲル溶液は原材料の表面上で引き伸ばされる。そうすると、原材料の表面に対する前駆体ゾルゲル溶液の被覆率は向上し、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率が向上する。即ち、性能の高い電池用粒子を得ることができる。
【0083】
リチウムイオン伝導体は、ゾルゲル法を用いて合成することができるものであれば特に限定されない、リチウムイオン伝導体の材料は、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及び窒化物固体電解質等を挙げることができる。硫化物系固体電解質としては、硫黄成分を含有し、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、LiS−P、70LiS−30P、80LiS−20P、LiS−SiS、及びLiGe0.250.75等を挙げることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、LiPON、Li1+XAlTi2−X(PO、Li1+XAlGe2−X(PO、LiLaZr12、LiLaNb12、LiTi、LiTi12及びLiNbOを挙げることができる。リチウムイオン伝導体の材料は1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
電池用粒子の本体は、例えば、正極活物質粒子、負極活物質粒子、固体電解質粒子、及び固体電解質層の補強に用いる機械的強度が高い粒子等を挙げることができる。上述した電池用粒子の本体に含まれる材料は、例えば、固体電解質、正極活物質、及び負極活物質等を挙げることができる。
【0085】
固体電解質としては、上述のリチウムイオン伝導体と同様の材料を用いることができる。
【0086】
正極活物質としては、例えば、硫化物系活物質、及び酸化物系活物質等を挙げることができる。硫化物系活物質は、例えば、TiS、MoS、FeS、FeS、CuS、及びNiS等を挙げることができる。酸化物系活物質は、例えば、Bi、BiPb、CuO、V13、LiCoO、LiCrO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNiMn、LiNiCoMnO、LiNiCoMnO、LiMgMn、LiNiGe、LiNiVO、LiCoVO、LiFePO、及びLiCoPO等を挙げることができる。正極活物質は、1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、Li金属、Li合金、酸化物材料、窒化物材料等を挙げることができる。炭素系材料は、例えば、黒鉛、カーボンナノチューブ、メソカーボンマイクロビーズ、高配向性グラファイト、ハードカーボン、及びソフトカーボン等を挙げることができる。Li合金は、例えば、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、及びHg等とLiとの合金を挙げることができる。酸化物材料としては、例えば、Nb、TiO、LiTi12、WO、及びFe等を挙げることができる。窒化物材料としては、例えば、Li3−XCoN、Li3−XNiN、Li3−XCuN等を挙げることができる。負極活物質は、1種類を単独で用いる、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0089】
以下に合成例1、及び実験例1〜3を示して、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径の大きさと前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度との関係を明らかにする。
[合成例1]
まず、等モルのLiOC(高純度科学製)及びNb(OC(高純度科学製)を用意した。次に、COH溶液と準備したLiOCとを混合し、LiOCが完全に溶解するまで約1時間攪拌した。そして、LiOCが溶解した溶液と準備したNb(OCとを混合し、約1時間攪拌して加水分解によりリチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液を生成した。なお、前駆体の組成式はLiNb(OH)であり、リチウムイオン伝導体はLiNbOである。LiNb(OH)は縮合重合によりLiNbOとなる。
[実験例1]
合成例1で得られた前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度を生成直後に島津製作所製のUV3600を用いて測定した。
[実験例2]
合成例1で得られた前駆体ゾルゲル溶液を更に攪拌し続け、合計24時間攪拌した。24時間攪拌した前駆体ゾルゲル溶液の一部を取り出し、UV吸収度を島津製作所製のUV3600を用いて測定した。
[実験例3]
実験例2で使用した前駆体ゾルゲル溶液を更に攪拌し続け、合計168時間攪拌した。168時間攪拌した前駆体ゾルゲル溶液を取り出し、UV吸収度は島津製作所製のUV3600を用いて測定した。
【0090】
図3は、実験例1〜3の結果である。前駆体ゾルゲル溶液のLiNb(OH)は二次粒子化しやすいため、LiNb(OH)の二次粒子径は攪拌時間に応じて大きくなると推定することができる。即ち、前駆体ゾルゲル溶液のLiNb(OH)の二次粒子径の大きさは、実験例1、実験例2、及び実験例3の順番で大きくなると考えられる。図3では、実験例3の前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度が、実験例1及び実験例2の前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度より大きいことが示されている。そのメカニズムとしては、LiNb(OH)の二次粒子径が大きいほどUVが吸収されることが考えられる。したがって、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径の大きさと前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度とは相関関係があるということができる。
【0091】
以下に合成例2、及び実験例4〜6を示して、コート条件と被覆率との関係を明らかにする。
【0092】
以下に合成例2及び合成例3並びに実験例4〜6を示して、電池用粒子の本体に対するリチウムイオン伝導体の被覆率とスプレー速度との関係を明らかにする。
[合成例2]
まず、等モルのLiOC(高純度科学製)及びNb(OC(高純度科学製)を用意した。次に、COH溶液と準備したLiOCとを混合し、LiOCが完全に溶解するまで約1時間攪拌した。そして、LiOCが溶解した溶液と準備したNb(OCとを混合し、約1時間攪拌して加水分解によりリチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液を生成した。なお、前駆体の組成式はLiNb(OH)であり、リチウムイオン伝導体はLiNbOである。LiNb(OH)は縮合重合によりLiNbOとなる。COH溶液はLiNbOが1.39wt%になるように混合した。即ち、LiNbOは固体であるので合成例2で得られた前駆体ゾルゲル溶液の固形分濃度は1.39wt%である。
[合成例3]
OH溶液をLiNbOが6.95wt%になるようにLiOCと混合した以外は合成例2と同様にして前駆体ゾルゲル溶液を生成した。即ち、合成例3で得られた前駆体ゾルゲル溶液の固形分濃度は6.95wt%である。
[実験例4]
パウレック社製の転動流動装置SFPを用い、活物質粒子であるLiNiCoMnO(日亜化学工業(株)製、平均粒径4μm)に合成例2で得られた前駆体ゾルゲル溶液を活物質粒子1gに対し0.005g/minのスプレー速度で10時間スプレーし、被覆する処理を行った。上記処理によりLiNiCoMnOの表面にLiNbOが被覆された粉体を得ることができた。LiNbOで構成される被覆層の厚さは10nmであった。被覆層の厚さは粉体をFIBにて断面出しした後にTEMで測定した。LiNiCoMnOの表面に対するLiNbOの被覆率は91%であった。被覆率はXPSにて粉体の表面元素分析を行うことにより算出した。ここでは表面元素分析で得られたNb/(Ni+Co+Mn)の元素比を被覆率として算出した。
[実験例5]
パウレック社製の転動流動装置SFPを用い、活物質粒子であるLiNiCoMnO(日亜化学工業(株)製、平均粒径4μm)に合成例3で得られた前駆体ゾルゲル溶液を活物質粒子1gに対し0.002g/minのスプレー速度で5時間スプレーし、被覆する処理を行った。上記処理によりLiNiCoMnOの表面にLiNbOが被覆された粉体を得ることができた。LiNbOで構成される被覆層の厚さは10nmであった。被覆層の厚さは実験例4と同様にして測定した。LiNiCoMnOの表面に対するLiNbOの被覆率は92%であった。被覆率は実験例4と同様にして算出した。
[実験例6]
パウレック社製の転動流動装置SFPを用い、活物質粒子であるLiNiCoMnO(日亜化学工業(株)製、平均粒径4μm)に合成例3で得られた前駆体ゾルゲル溶液を活物質粒子1gに対し0.005g/minのスプレー速度で2時間スプレーし、被覆する処理を行った。上記処理によりLiNiCoMnOの表面にLiNbOが被覆された粉体を得ることができた。LiNbOで構成される被覆層の厚さは10nmであった。被覆層の厚さは実験例4と同様にして測定した。LiNiCoMnOの表面に対するLiNbOの被覆率は86%であった。被覆率は実験例4と同様にして算出した。
【0093】
【表1】

【0094】
実験例4〜6の結果をまとめると表1のようになった。ここで、固形分濃度は前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の濃度に対応し、固形分濃度が高いほど、前駆体の二次粒子化が進み前駆体の二次粒子径は大きくなると考えられる。また、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が大きい場合には活物質粒子に対して付着しづらく、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が小さい場合には活物質粒子に対して付着しやすいことが考えられる。
【0095】
したがって、表1にまとめた実験例4及び実験例5の結果から、前駆体ゾルゲル溶液の二次粒子径が異なっていても、スプレー速度を制御することにより、同じ被覆層厚さで同等の被覆率の粉体を得ることができることが示された。
【0096】
また、表1にまとめた実験例5及び実験例6の結果から、前駆体ゾルゲル溶液の二次粒子径が同等でも、スプレー速度によっては、同じ被覆層厚さでも被覆率が異なる粉体となることが示された。
【0097】
以上から、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が大きい場合にはスプレー速度を遅く制御し、前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径が小さい場合にはスプレー速度を早く制御することによって、電池用粒子の本体の表面に対するリチウムイオン伝導体の被覆率のばらつきが抑制された電池用粒子を提供することができることが示された。
【0098】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
10…処理室
15…保存容器
20…導入路
25…測定装置
30…制御装置
35…回転盤
40…モータ
45…気体導入路
50…気体排出路
55…吸引装置
60…噴霧器
65…制御部
70…攪拌機
75…測定導入路
80…測定排出路
85…活物質粒子
90…前駆体ゾルゲル溶液
100…流動層装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の表面がリチウムイオン伝導体で被覆された電池用粒子の製造方法であって、
前記電池用粒子の本体の原材料を準備する、原材料準備工程と、
前記リチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液を準備する、前駆体準備工程と、
前記前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径に対応する指標値を測定する、測定工程と、
前記前駆体の二次粒子径に対応する指標値に基づいてスプレー速度を制御して前記原材料に前記前駆体ゾルゲル溶液をスプレーすることにより塗布し、塗布した前記前駆体ゾルゲル溶液を乾燥させることにより前記原材料の表面をリチウムイオン伝導体で被覆する、被覆工程と、
を備えることを特徴とする、電池用粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池用粒子の製造方法において、更に前記原材料を流動させる、流動工程を備えることを特徴とする、電池用粒子の製造方法。
【請求項3】
前記測定工程における前記二次粒子径に対応する指標値は前記前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電池用粒子の製造方法。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝導体は、LiNbO、LiTi、及びLiTi12から選択される少なくとも1種類以上の電解質を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池用粒子の製造方法。
【請求項5】
前記リチウムイオン伝導体は、少なくともLiNbOを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池用粒子の製造方法。
【請求項6】
前記電池用粒子の本体は、LiNiCoMnO、LiCoO、及びLiNi1/3Co1/3Mn1/3から選択される少なくとも1種類以上の活物質を有する活物質粒子であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池用粒子の製造方法。
【請求項7】
前記電池用粒子の本体は、少なくともLiNiCoMnOを有する活物質粒子であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池用粒子の製造方法。
【請求項8】
電池用粒子の本体の表面をリチウムイオン伝導体で被覆するコート装置であって、
前記電池用粒子の本体の原材料の表面を前記リチウム伝導体で被覆する処理を行う処理室と、
前記処理に用いる前記リチウムイオン伝導体の前駆体ゾルゲル溶液を保存する保存容器と、
前記前駆体ゾルゲル溶液の前駆体の二次粒子径に対応する指標値を測定する測定手段と、
前記処理室において前記前駆体ゾルゲル溶液のスプレーを行う噴霧器と、
前記前駆体の二次粒子径に対応する指標値に基づいてスプレー速度を可変とするように前記噴霧器を制御する制御手段と、
前記原材料を流動させる流動用の気体を前記処理室に導入する気体導入路と、
前記流動用の気体を前記処理室から排出する気体排出路と、
前記気体導入路と前記気体排出路のうち少なくとも一方に配置され前記気体を吸引する吸引装置と、
を備えることを特徴とする、コート装置。
【請求項9】
前記前駆体の二次粒子径に対応する指標値は前記前駆体ゾルゲル溶液のUV吸収度であることを特徴とする、請求項8に記載のコート装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のコート装置であって、
前記処理室内の底部に設けられて回転する回転部材と、
前記回転部材を回転駆動する回転駆動装置と、
を更に備えることを特徴とする、コート装置。
【請求項11】
前記リチウムイオン伝導体は、LiNbO、LiTi、及びLiTi12から選択される少なくとも1種類以上の電解質を有することを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載のコート装置。
【請求項12】
前記リチウムイオン伝導体は、少なくともLiNbOを有することを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載のコート装置。
【請求項13】
前記電池用粒子の本体は、LiNiCoMnO、LiCoO、及びLiNi1/3Co1/3Mn1/3から選択される少なくとも1種類以上の活物質を有する活物質粒子であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一項に記載のコート装置。
【請求項14】
前記電池用粒子の本体は、少なくともLiNiCoMnOを有する活物質粒子であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一項に記載のコート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−226877(P2012−226877A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91445(P2011−91445)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】