説明

電池群制御装置及び電池電源システム

【課題】電池群を構成する二次電池の残存容量が広範囲に変化しても正確にセルバランスをとることができる電池群制御装置を提供する。
【解決手段】電池群制御装置は、起動時に全単電池の無負荷電圧を測定する電圧測定回路と、各単電池に並列に接続されバイパス抵抗及びバイパス制御スイッチを有するバイパス回路と、バイパス時間を算出し、該算出したバイパス時間に応じて対応するバイパス制御スイッチをオン状態に制御する主制御部と、を備えている。主制御部のCPUは、電圧測定回路で測定された各単電池の無負荷電圧を残存容量に変換して残存容量の平均値を算出し、変換した残存容量と算出した残存容量の平均値との差が設定値を越える単電池について、電池群の充放電時に、残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量に相当するバイパス時間、対応するバイパス制御スイッチをオン状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池群制御装置及び電池電源システムに係り、特に、複数個の二次電池が直列に接続された電池群を制御する電池群制御装置、及び、複数個の二次電池を直列に接続した電池群を制御する電池群制御装置と、電池群制御装置を制御する上位制御システムとを備え、電池群制御装置及び上位制御システム間で通信が可能な電池電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数個の二次電池(単電池)が直列に接続された電池群の充放電では、電池群の+端子と−端子とに充放電装置を接続して制御する充放電制御システムが用いられてきた。特に、近年実用化されているリチウムイオン電池では、電池群を構成する各単電池の電池電圧を測定し、かつ、セルバランス(単電池の容量調整)をとりながら各単電池の電池電圧を制御する充電制御システムが用いられている。セルバランス機能が必要な理由は、電池群を構成する各単電池の残存容量が異なってくると、電池群全体として充放電可能な容量が少なくなり、かつ、寿命も短くなるためである。例えば、ニッケル水素電池であれば、意図的に過充電し満充電状態としてセルバランスをとることが可能であるが、非水系の有機溶媒を電解液としているリチウムイオン電池では、安全性の観点から過充電状態とすることができないため、別の方法で単電池間の残存容量を揃えるセルバランス機能が不可欠である。
【0003】
その方法として、単電池と並列に容量調整用の抵抗(バイパス回路)を接続してバイパス放電を行って各単電池の残存容量を揃える技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、電池群を構成する各単電池の無負荷電圧から単電池の平均無負荷電圧を算出し、偏差(単電池の無負荷電圧と無負荷電圧の平均値との差)が設定値以上の場合に、偏差に定数を乗じた時間だけバイパス回路をオン状態としている。単電池と並列に接続されたバイパス回路がオン状態となると、放電時にはバイパス電流分放電電流が増えるため、バイパス回路がオフ状態の単電池と比べて残存容量は少なくなる。また、充電時でもバイパス電流分充電電流が少なくなるため、バイパス回路がオフ状態の単電池と比べて残存容量は少なくなる。従って、バイパス回路を制御すれば電池群として充放電しながら、残存容量が多い単電池の残存容量を下げて電池群を構成する各単電池の残存容量を揃えることができる。
【0004】
とりわけ、リチウムイオン電池、特に非晶質系の炭素材料を負極に用いたリチウムイオン電池では無負荷電圧と残存容量との関係が比較的直線的であり、例えば、ハイブリッド自動車の用途などでは充放電時の残存容量の使用範囲が比較的狭いため、無負荷電圧の偏差に定数を乗じた時間だけバイパス回路をオン状態とする単純な制御で良好に各単電池の残存容量を揃えることができる。
【0005】
一方、充放電時に電池群を構成する各単電池の残存容量を制御する技術として、電池群の総電圧、充放電電流および温度から、単電池の平均残存容量を算出して電池群の充放電量を制限する技術が知られている。本来は全単電池の電圧と充放電電流と温度から各単電池の残存容量を算出して充放電電気量を制限する方が望ましいが、多数の単電池電圧をリアルタイムに測定して単電池の残存容量を計算するには、制御回路が複雑で高コストとなるため、充放電中の電池群の総電圧のみを測定し、平均単電池電圧と充放電電流と温度から平均の残存容量を計算して充放電制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−92732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の制御技術では、電池群を構成する各単電池の残存容量の使用範囲が広い場合に、セルバランスがとれなくなる、という課題を有している。この理由について、図面を参照して説明する。図5は非晶質系の炭素材料を負極に用いたリチウムイオン電池の残存容量比と無負荷電圧との関係を示す特性線図である。無負荷電圧と残存容量の関係は比較的直線に近く、例えば、ハイブリッド自動車で用いられる残存容量比40〜60%の範囲ではほぼ直線状である。
【0008】
図6及び図7は、平均残存容量比が50%で、+4.0%、−4.3%のバラツキを持つ電池群で、従来の制御技術でセルバランス動作を行った場合のセルバランス効果をシミュレーションした特性線図である。図6は無負荷電圧の変化を、図7は残存容量比の変化を示している。条件としては、3.5Ahのセル(単電池)を96直列の電池群とし、78Ωのバイパス抵抗を有するバイパス回路とした。また、バイパス放電を行う偏差としては3mV以上とし、最大バイパス時間は10hとした。更に、バイパス時間の計算は、偏差1mVあたり0.06hのバイパス放電時間とした。図6に示すように、一回のセルバランス動作で無負荷電圧が高いセルはバイパス放電されバラツキが小さくなっており、セルバランス動作前が+51mV,−57mVのバラツキが、セルバランス動作後は+13mV,−46mVのバラツキまで減少した。また、図7に示すように、セルバランス動作前の残存容量の+4.0%,−4.3%のバラツキが、セルバランス後は+1.0%,−3.4%のバラツキまで減少している。
【0009】
これに対して、平均の残存容量比85%でバラツキが同一の+4.0%,−4.3%を持つ場合で同様のシミュレーションを行った結果を、図8及び図9に示す。図8に示すように、+23mV,−28mVのバラツキが+13mV,−25mVまで減少している。しかし、平均残存容量比で比較すると、図9に示すように、セルバランス後でも+2.2%,−3.8%までしかバラツキは解消されていない。その原因は、図5の特性線図に示すように、残存容量比が大きい場合には、無負荷電圧に対する残存容量の変化が大きく、残存容量が揃うようにはバイパス放電されないためである。
【0010】
図10に、電池群を構成する単電池の残存容量が1個のみ小さい場合に同様にシミュレーションを行った結果を示す。図10に示すように、95個のセルが同一電圧で、1個の単電池のみ100mV電圧が低いが、バイパス放電は行われていない。この原因は、1個の単電池のみ電圧が低くても平均電圧が3mV以上下がらないと、95個の単電池がバイパス放電を行わないためである。これを防ぐためには、3mVのバイパス放電開始偏差値を小さくし、かつ、単電池電圧の測定の分解能を上げれば良いが、単電池電圧の分解能を上げるとコストアップとなり、また、バイパス放電開始偏差値小さくすると、ほぼ単電池電圧が揃っている状態でバイパス放電を行うことになり、エネルギーの損失が増えるため、好ましくない。
【0011】
また、実際の電池群の充放電制御では、充放電時の残存容量制御値を電池本来の残存容量の上限値と下限値の範囲よりもマージンをとって狭くしているのが普通である。これは、電池群が長期間放置された場合などには、単電池の自己放電量の差が残存容量の差となって単電池の残存容量にバラツキが生じるため、単電池の平均の残存容量から充放電量の制御を行うと、特定の単電池が過充電/過放電となる可能性があるためである。特に、リチウムイオン電池では、過充電時に破裂・発火などの可能性があるため、過充電/過放電状態をリアルタイムに検出する構成を採用し、過充電電圧あるいは過放電電圧が検出された場合には、故障信号ないし警告信号を出力してシステムを停止させる機能を有しているのが普通である。このため、マージンが小さいと、過充電/過放電時に故障信号が発せられてシステムが停止する可能性が高くなる。特に、ハイブリッド自動車ではリチウムイオン電池が動力駆動系の重要な部分を占めているため、マージンは充分余裕をとってあるのが普通である。従って、電池群の残存容量の使用範囲は、単電池の残存容量の使用範囲よりマージン分狭くなっている。
【0012】
本発明は上記事案に鑑み、電池群を構成する二次電池の残存容量が広範囲に変化しても正確にセルバランスをとることができると共に、電池群を広い範囲で使用可能な電池群制御装置及び電池電源システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、複数個の二次電池が直列に接続された電池群を制御する電池群制御装置において、前記電池群制御装置の起動時に、前記二次電池の各々の無負荷電圧を測定する無負荷電圧測定手段と、容量調整用の抵抗及びスイッチを有し、前記二次電池の各々に並列に接続され、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるバイパス回路と、前記二次電池の各々の残存容量が略均等となるように、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるための時間を算出し、該算出した時間に応じて対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記無負荷電圧測定手段で測定された二次電池の各々の無負荷電圧を残存容量に変換して該変換した残存容量の平均値を算出し、前記変換した残存容量と前記算出した残存容量の平均値との差が予め設定された設定値を越える二次電池について、前記電池群の充放電時に、前記残存容量と前記残存容量の平均値との差分の電気量に相当する時間、対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御して該二次電池に流れる充放電電流をバイパスさせることを特徴とする。
【0014】
第1の態様では、無負荷電圧測定手段により、起動時、すなわち、電池群制御装置への電源投入時に、電池群を構成する二次電池の各々の無負荷電圧が測定される。制御手段により、無負荷電圧測定手段で測定された二次電池の各々の無負荷電圧が残存容量に変換されて該変換した残存容量の平均値が算出され、変換された残存容量と算出された残存容量の平均値との差が予め設定された設定値を越える容量調整対象の二次電池について、残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量に相当する時間が算出される。制御手段による時間の算出は、電池群の充放電開始前に行われる。そして、電池群の充放電時に、制御手段により、算出された時間、容量調整対象の二次電池に対応するバイパス回路のスイッチがオン状態に制御され、該二次電池に流れる充放電電流がバイパスして、電池群を構成する二次電池の各々の残存容量が略均等となる。第1の態様によれば、制御手段が、電池群を構成する二次電池の無負荷電圧を残存容量に変換して残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量に相当する時間を算出しているので、残存容量の範囲が広範囲に変化しても、電池群の充放電時に残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量が調整され、二次電池間のセルバランスを正確にとることができると共に、残存容量と残存容量の平均値との差が予め設定された設定値を越える二次電池を容量調整の対象とするので、放電時の容量調整に伴う二次電池のエネルギーロスを少なくすることができる。
【0015】
第1の態様において、制御手段が、残存容量の平均値を、二次電池の各々の残存容量の最大値と最小値との平均値として算出すれば、電池群に1個のみ残存容量が低い二次電池が存在した場合でも、残存容量の平均値が下がるため、残りの二次電池が容量調整対象となって、全ての二次電池の残存容量を揃えることができる。また、電池群の総電圧を測定する総電圧測定手段と、電池群に流れる充放電電流を測定する電流測定手段とを更に備え、制御手段が、変換した残存容量の最大偏差(=起動時の残存容量の最大値−残存容量の平均値)及び最小偏差(=起動時の残存容量の平均値−残存容量の最小値)を更に算出し、電池群の充放電時に、総電圧測定手段で測定された総電圧及び電流測定手段で測定された充放電電流から二次電池の平均残存容量を算出し、該算出した平均残存容量が、(二次電池の使用上限の残存容量−算出した最大偏差)と、(二次電池の使用下限の残存容量+算出した最小偏差)との間の範囲にあるかを監視するようにすれば、起動時に算出した二次電池の残存容量から、二次電池の残存容量のバラツキが実測できるので、充放電時に、制限する残存容量の上下限値に含まれるマージンを、二次電池の残存容量バラツキ分小さくして、電池群として使用可能な残存容量範囲を広くすることができる。なお、この監視範囲を外れたときには、電池群の使用を禁止したり、上位制御システムに警告信号を送信することで、充放電時の電池群の安全性を確保することができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、複数個の二次電池を直列に接続した電池群を制御する電池群制御装置と、前記電池群制御装置を制御する上位制御システムとを備え、前記電池群制御装置及び前記上位制御システム間で通信が可能な電池電源システムにおいて、前記電池群制御装置は、前記上位制御システムのシステム起動時に該上位制御システムから起動信号を受信したときに、前記二次電池の各々の無負荷電圧を測定する無負荷電圧測定手段と、容量調整用の抵抗及びスイッチを有し、前記二次電池の各々に並列に接続され、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるバイパス回路と、前記無負荷電圧測定手段で測定された前記二次電池の各々の無負荷電圧値を前記上位制御システムに送信すると共に、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるための時間値を前記上位制御システムから受信し、かつ、前記電池群の充放電時に、前記受信した時間値に応じて対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御して充放電電流をバイパスさせる電池群制御手段と、を有し、前記上位制御システムは、システム起動時に前記電池群制御装置に起動信号を送信すると共に、前記電池群制御装置から受信した前記二次電池の各々の無負荷電圧値に基づいて、前記二次電池の各々の残存容量が略均等となるように、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるための時間値を算出し、該算出した時間値を前記電池群制御装置に送信するシステム制御手段を有し、前記システム制御手段は、前記電池群制御装置から受信した前記二次電池の各々の無負荷電圧値を残存容量に変換して該変換した残存容量の平均値を算出し、前記変換した残存容量と前記算出した残存容量の平均値との差が予め設定された設定値を越える二次電池について、前記残存容量と前記残存容量の平均値の差分の電気量に相当する時間値を算出し、該算出した時間値を前記電池群制御装置に送信することを特徴とする。
【0017】
第1の態様の電池群制御装置の制御手段が、残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量に相当する時間が算出し、かつ、算出された時間、容量調整対象の二次電池に対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御するのに対し、第2の態様では、上位制御システムのシステム制御手段により、残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量に相当する時間値が算出される。このため、電池群制御装置の電池群制御手段は、無負荷電圧測定手段で測定された二次電池の各々の無負荷電圧値を上位制御システムに送信すると共に、二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるための時間値を上位制御システムから受信し、電池群の充放電時に、受信した時間値に応じて対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御して充放電電流をバイパスさせることで、電池群を構成する二次電池の各々の残存容量を略均等とする。第2の態様でも、第1の態様と同様に、システム制御手段が、電池群を構成する二次電池の無負荷電圧を残存容量に変換して残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量に相当する時間を算出しているので、残存容量の範囲が広範囲に変化しても、電池群制御手段が対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御するにより、電池群の充放電時に残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量が調整され、二次電池間のセルバランスを正確にとることができると共に、残存容量と残存容量の平均値との差が予め設定された設定値を越える二次電池を容量調整の対象とするので、放電時の容量調整に伴う二次電池のエネルギーロスを少なくすることができる。なお、第2の態様においては、電池群制御装置が、二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるための時間値を、上位制御システムから、充放電開始後に受信してもよい。
【0018】
第2の態様において、システム制御手段は、残存容量の平均値を、二次電池の各々の残存容量の最大値と最小値との平均値として算出することが好ましい。また、電池群制御装置は、電池群の総電圧を測定する総電圧測定手段と、電池群に流れる充放電電流を測定する電流測定手段とを更に有し、電池群制御手段は、電池群の充放電時に、総電圧測定手段で測定された総電圧値及び電流測定手段で測定された充放電電流値を上位制御システムに送信し、システム制御手段は、変換した残存容量の最大偏差(=起動時の残存容量の最大値−残存容量の平均値)及び最小偏差(=起動時の残存容量の平均値−残存容量の最小値)を更に算出し、電池群の充放電時に、電池群制御手段から受信した総電圧値及び充放電電流値から二次電池の平均残存容量を算出し、該算出した平均残存容量が、(二次電池の使用上限の残存容量−最大偏差)と、(二次電池の使用下限の残存容量+最小偏差)との間の範囲にあるかを監視することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電池群を構成する二次電池の無負荷電圧を残存容量に変換して残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量に相当する時間を算出しているので、残存容量の範囲が広範囲に変化しても、電池群の充放電時に残存容量と残存容量の平均値との差分の電気量が調整され、二次電池間のセルバランスを正確にとることができると共に、残存容量と残存容量の平均値との差が予め設定された設定値を越える二次電池を容量調整の対象とするので、放電時の容量調整に伴う二次電池のエネルギーロスを少なくすることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の電池群制御装置のブロック構成図である。
【図2】実施形態の電池群制御装置の主制御部のCPUが起動時に実行する起動時処理ルーチンのフローチャートである。
【図3】実施形態の電池群制御装置の主制御部のCPUが定常時に実行する定常時処理ルーチンのフローチャートである。
【図4】電池群を構成する単電池の電圧を1個のみ他のより100mV意図的に小さくした場合に、実施形態の電池群制御装置でセルバランス動作を行ったときの無負荷電圧の変化を示す特性線図である。
【図5】非晶質系の炭素材料を負極に用いたリチウムイオン電池の無負荷電圧と残存容量比との関係を示す特性線図である。
【図6】平均残存容量比が50%で、従来技術による電池群制御装置でセルバランス動作を行った場合の無負荷電圧の変化を示す特性線図である。
【図7】平均残存容量比が50%で、従来技術による電池群制御装置でセルバランス動作を行った場合の残存容量比の変化を示す特性線図である。
【図8】平均残存容量比が85%で、従来技術による電池群制御装置でセルバランス動作を行った場合の無負荷電圧の変化を示す特性線図である。
【図9】平均残存容量費が85%で、従来技術による電池群制御装置でセルバランス動作を行った場合の残存容量比の変化を示す特性線図である。
【図10】電池群を構成する単電池の電圧を1個のみ他のより100mV意図的に小さくした場合に、従来技術による電池群制御装置でセルバランス動作を行った場合の無負荷電圧の変化を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を、ハイブリッド自動車用の電池群を制御する電池群制御装置に適用した実施の形態について説明する。
【0022】
(構成)
図1に示すように、電池群1は、二次電池(以下、単電池という。)が96個直列に接続されている。詳述すれば、電池群1はハイブリッド自動車に搭載され振動が加わるため、96個の単電池を固定するために、4個の単電池を直列接続すると共に、遊動を防止するための枠体内に収容した組電池が24個使用されており、これら24個の組電池が電気的に直列に接続されている。また、本実施形態では、正極活物質にリチウム含有金属酸化物を用い、負極活物質に非晶質炭素を用いたリチウムイオン二次電池が単電池として使用されており、各単電池の定格容量は3.5Ahである。
【0023】
電池群制御装置10は、各単電池の各々に並列接続されたバイパス回路9、各単電池の無負荷電圧(開路電圧)を測定する電圧測定回路4、電池群1の充放電時の総電圧を測定する総電圧測定回路5、電池群1の充放電電流を測定する電流測定回路6、電池群1の温度を測定する温度測定回路8、及び、各単電池の残存容量が略均等となるように制御する主制御部7を有している。
【0024】
バイパス回路9は、直列接続されたバイパス抵抗2及びバイパス制御スイッチ3で構成されている。なお、本実施形態では、バイパス抵抗2に78Ωの抵抗値を有する抵抗を用い、バイパス制御スイッチ3にNチャネルFETを用いた。電圧測定回路4はオペアンプ及び抵抗を有する複数の作動増幅回路を含んで構成されており、総電圧測定回路5は分圧回路及び作動増幅回路を含んで構成されている。また、電流測定回路6には電流を電圧に変換するホール素子が用いられており、温度測定回路8にはサーミスタが用いられている。
【0025】
主制御部7は、マイクロコンピュータ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信ICを有し上位制御システム20と通信するための通信部を有している。マイクロコンピュータは、演算処理を行うCPU、CPUが実行するプログラム及び後述する設定値等のプログラムデータを記憶したROM、CPUのワークエリアとして働くRAMを有している。
【0026】
電圧測定回路4、総電圧測定回路5、電流測定回路6及び温度測定回路8は、それぞれ、主制御部7のセル(単電池)電圧測定ポート、総電圧測定ポート、電流測定ポート、温度測定ポートに接続されている。従って、電圧測定回路4、総電圧測定回路5、電流測定回路6及び温度測定回路8で測定されたセル電圧、総電圧、電流及び温度は、A/Dコンバータを介して主制御部7に取り込まれる。また、主制御部7のバイパス制御ポートはバイパス制御スイッチ3(FETのゲート)に接続されている。このため、主制御部7が2値ハイレベル信号を出力するとD/Aコンバータを介してバイパス制御ポートからアナログ電圧が出力されバイパス制御スイッチ3はオン状態となる。
【0027】
本実施形態では、車両を制御するメインコンピュータが上位制御システム20の主要部を構成している。上位制御システム20は、メインコンピュータの他、通信ICを有し、電池群制御装置10及び車両の他の周辺制御装置と通信を行う通信部を有している。
【0028】
電池群1の充放電+端子及び充放電−端子は、図示を省略した充放電装置に接続されている。充放電装置には充放電を許容する充放電許容スイッチが配置されており、充放電許容スイッチのオン・オフは上位制御システム20より制御されている。
【0029】
本実施形態の電池群1は自動車用電源のため、自動車が使用状態にないときに、すなわち、イグニッションキーがオフ(OFF)位置に位置しているときに、電池群制御装置10を作動させると、電池群制御装置10に作動電力を供給する電池群1にエネルギーロスが生じる。このため、上位制御システム20は、イグニッションキーがオン(ON)位置に位置したときに、電池群1から電池群制御装置10に作動電力を供給させる不図示のスイッチ機構を有している。このようなスイッチ機構は、例えば、フォトカプラとパワーFETとで構成することができる。すなわち、上位制御システム20からD/Aコンバータを介して所定のアナログ電圧を出力することにより、フォトカプラの発光ダイオードを発光させ、受光素子の出力をパワーFETのゲートに入力することで、パワーFETのドレイン−ソース間を通電し、電池群1から電池群制御装置10に作動電力を供給させる。
【0030】
(動作)
次に、フローチャートを参照して、本実施形態の電池群制御装置10の動作について、主制御部7のCPUを主体として説明する。
【0031】
<起動時の動作>
電池群1から電池群制御装置10に作動電力が供給されると、すなわち、電池群制御装置10が起動すると、ROMに格納されたプログラム及びプログラムデータをRAMに展開する初期設定処理を行い、展開されたプログラムに従って、バイパス回路9のバイパス時間等を算出する起動時処理ルーチンが実行される。
【0032】
図2に示すように、起動時処理ルーチンでは、まず、ステップ102において、電池群1を構成する全単電池の無負荷電圧を取り込む。すなわち、電圧測定回路4からセル電圧測定ポートに出力されたセル電圧をA/Dコンバータを介してデジタル電圧に変換し、RAMに格納する。なお、正確には、電池群制御装置10等の消費電流も含まれるが、電流値は少なく、内部抵抗の小さいリチウムイオン二次電池にとっては無負荷電圧としても問題はない。次に、ステップ104において、取り込んだ無負荷電圧を残存容量比に変換する。具体的には、無負荷電圧と残存容量比のテーブルを参照して(図5も参照)、補間を行って計算することで、テーブル自体の記憶容量を最小限にしている。
【0033】
次いで、ステップ106で、全単電池の残存容量比の単純平均値、すなわち、平均残存容量比SOCm1と、全単電池の残存容量比のうち最大の残存容量比と最小の残存容量比との平均値(メジアン平均値)SOCm2とを算出し、次のステップ108で、全単電池について、残存容量比の単純平均値からの差として定義される偏差1(=SOC−SOCm1)と、残存容量比のメジアン平均値からの差として定義される偏差2(=SOC−SOCm2)とを算出し、ステップ110で、偏差1の最大値(偏差1max)と、偏差1の最小値(偏差1min)とを算出する。
【0034】
次に、ステップ112、114において、偏差1の最大値(偏差1max)、偏差1の最小値(偏差1min)が予め設定された設定値±Aの範囲から逸脱しているかを判断する。肯定判断のときは、電池群1内に異常に残存容量が大きい又は小さい単電池が存在することになり、電池群1に何らかの異常が存在していると判断されるので、ステップ116で、充放電電流の通電を禁止するために上位制御システム20に警告信号を出力して、起動時処理ルーチンを終了する。警告信号を受信した上位制御システム20は、上述した充放電装置の充放電許容スイッチをオフ状態のまま維持(電池群1の充放電電流の通電を禁止)し、インストールメントパネルに電池群1に異常がある旨を表示する。
【0035】
一方、ステップ112及びステップ114で否定判断のときは、ステップ118において、使用上限の残存容量比と、使用下限の残存容量比とを算出する。上限の残存容量比は、定格の残存容量上限値から、標準のマージンと偏差1の最大値(偏差1max)を減算した値とする。また、下限の残存容量比は、定格の残存容量下限値に、標準のマージンと偏差1の最小値(偏差1min)の絶対値を加算した値とする。ここで、標準のマージンとは、単電池の特性バラツキ、総電圧、充放電電流、温度などの検出誤差によって発生する残存容量比の計算誤差を含めたものをいう。
【0036】
次に、ステップ120において、全単電池について、残存容量比のメジアン平均値からの偏差2(=SOC−SOCm2)が予め設定された設定値Bより大きいか否かを判断する。この理由は、許容される残存容量比の偏差が小さい場合には、バイパス放電を行わなくても実用上問題はないので、バイパス放電による単電池のエネルギー損失を少なくするためである。否定判断の単電池については、ステップ126で、バイパス時間を0に決定し、肯定判断の単電池については、ステップ122でバイパス電気量を算出し、ステップ124でバイパス時間を算出して、起動時処理が終了した旨を上位制御システム20に報知した後、起動時処理ルーチンを終了する。バイパス電気量は(単電池の定格容量×偏差2)で算出され、バイパス時間は(バイパス電気量/バイパス電流)で算出される。なお、起動時処理ルーチンは、電池群1の充放電開始前に終了する。また、起動時処理が終了した旨の報知を受けた上位制御システム20は、上述した充放電装置の充放電許容スイッチをオン状態として、電池群1の充放電を許容する。これにより、電池群1は定常作動(充放電)に移行する。
【0037】
<定常時の動作>
主制御部7のCPUは、起動時処理ルーチンの実行を終了すると、図3に示す定常時処理ルーチンを実行する。
【0038】
定常時処理ルーチンでは、ステップ202において、ステップ124(図2参照)で算出したバイパス時間、容量調整対象の単電池に並列に接続された(対応する)バイパス回路9のバイパス制御スイッチ3をオン状態としてバイパス抵抗2にバイパス電流を通電する。これにより、バイパス電気量(バイパス時間×バイパス電流)はバイパス抵抗2により熱消費され、電池群1を構成する全単電池の残存容量が略均等となる。なお、図3では捨象したが、主制御部7のCPUは、算出したバイパス時間が経過すると、バイパス制御スイッチ3をオフ状態とする。
【0039】
次のステップ204では、所定時刻が経過するまで待機し、所定時刻が経過すると、ステップ206で、電池群1の総電圧、電池群1に流れる充放電電流、電池群1の温度を取り込む。すなわち、総電圧測定回路5から総電圧測定ポートに出力された総電圧、電流測定回路6から電流測定ポートに出力された電流、温度測定回路8から温度測定ポートに出力された温度を、それぞれ、A/Dコンバータを介してデジタル値に変換し、RAMに格納する。次いで、ステップ208で、取り込んだ電池群1の総電圧、電池群1に流れる充放電電流、電池群1の温度から、電極群1を構成する単電池の平均残存容量を算出する。このような平均残存容量の算出は背景技術欄に記載の通り公知であり、温度は温度補正テーブルにより算出ベースとなる室温に変換するために用いられる。
【0040】
次に、ステップ210において、ステップ208で算出した平均残存容量が、ステップ118で算出した上限の残存容量比と、下限の残存容量比との範囲(充放電許容範囲)内か否かを判断する。すなわち、充放電時の平均残存容量比が、起動時の無負荷電圧から算出された充放電許容範囲内にあるかが監視される。肯定判断のときは、監視を続行するためにステップ210に戻り、否定判断のときは、次のステップ212で、平均残存容量が充放電許容範囲内を外れた旨を上位制御システム20に報知(警告信号を出力)して、定常時処理ルーチンを終了する。
【0041】
充放電許容範囲を外れたときは、電池群1に何らかの異常が存在していると判断されるので、警告信号を受信した上位制御システム20は、上述した充放電装置の充放電許容スイッチをオフ状態とし(電池群1の充放電電流の通電を禁止し)、インストールメントパネルに電池群1に異常がある旨を表示する。なお、イグニッションキーがオフ(OFF)位置に位置したときに、上位制御システム20は、上述したスイッチ機構をオフ状態とし、電池群1から電池群制御装置10への作動電力の供給を停止させる。この場合には、定常時処理ルーチンは強制終了する。
【0042】
(作用等)
次に、本実施形態の電池群制御装置10の作用等について説明する。
【0043】
本実施形態の電池群制御装置10は、主制御部7のCPUが、電池群1を構成する単電池の無負荷電圧を残存容量比に変換して(ステップ104)、残存容量比と残存容量比の平均値との差分の電気量に相当するバイパス時間を算出しているので(ステップ122、124)、電池群1を構成する単電池の残存容量比の範囲が広範囲に変化しても、電池群1の充放電時に残存容量比と残存容量比の平均値との差分の電気量が調整され(ステップ202)、単電池間のセルバランスを正確にとることができる。また、残存容量比と残存容量比の平均値との差が予め設定された設定値を越える単電池を容量調整の対象とするので(ステップ120)、放電時の容量調整に伴う単電池のエネルギーロスを少なくすることができる。
【0044】
更に、本実施形態の電池群制御装置10は、残存容量比と、残存容量比のメジアン平均値からの差として定義された偏差2との差が、予め設定された設定値Bを越える単電池を容量調整の対象にしたので(ステップ120)、電池群1に1個のみ残存容量比が低い単電池が存在した場合でも、残存容量比の平均値が下がるため、残りの単電池が容量調整対象となって、全ての単電池の残存容量を揃えることができる。図4は、電池群1を構成する単電池の残存容量比を1個のみ意図的に100mV小さくした場合の、本実施形態の電池群制御装置10のシミュレーション結果である。条件は背景技術欄で示した図10と同一とした。図10に示した従来技術の電池群制御装置では、容量調整が行われないため、バラツキが解消されないのに対し、本実施形態の電池群制御装置10では、図4に示すように、1個の単電池のみが平均より100mV電圧が低くても他の単電池に容量調整が行われるため、セルバランス動作終了後は平均値より43mV電圧値が低い値にまでバラツキが解消している。従って、本実施形態の電池群制御装置10では、この動作を繰り返すことによって、バラツキを解消可能なことが明白である。
【0045】
また、本実施形態の電池群制御装置10は、起動時に、無負荷電圧から残存容量比の最大偏差(偏差1max)と最小偏差(偏差1min)と(ステップ110)、上限の残存容量比と下限の残存容量比と(ステップ118)を算出しておき、電池群1の充放電時に、電池群1の総電圧、充放電電流及び温度から平均残存容量比を算出し(ステップ208)、算出した平均残存容量比が充放電許容範囲内にあるかを監視している(ステップ210)。このため、起動時に算出した単電池の残存容量比から、単電池の残存容量のバラツキが実測できるので、充放電時に、制限する残存容量の上下限値に含まれるマージンを、単電池の残存容量バラツキ分小さくして、電池群1として使用可能な残存容量範囲を広くすることができる。これに対し、従来技術の電池群制御装置では、上述した標準のマージンに単電池の残存容量バラツキ分を含めなければならなかったため、マージンの値をかなり大きくせざるを得なかった。単電池の残存容量にバラツキがあるために、充放電中に過充電あるいは過放電が検出されてしまう可能性があるからである。その点、本実施形態の電池群制御装置10では単電池の残存容量比のバラツキを実測しているので、マージンを必要最低限にすることができる。
【0046】
すなわち、電池の特性が完全に同一となることはないため、従来技術では、例えば、使用可能残存許容範囲が20%〜80%のときに、マージンをみて30%〜70%の範囲を残存容量範囲として制御する。本実施形態では、残存容量のバラツキが大きすぎる場合には異常と判断して上位システムに報知すると共に、このマージンを最小にして、使用可能な残存容量範囲をできるだけ広くとるようにしている。例えば、電池の残存容量のバラツキが最大偏差+4%、最小偏差−6%と、起動時に測定されれば、従来技術では30%〜70%での使用範囲であったものを、20%+6%=26%から80%−4%=76%まで使用範囲を広げる制御を行っている。起動時の残存容量測定で電池の残存容量のバラツキが判明しているので、総電圧と充放電電流から算出される平均残存容量計算値を上記26%〜76%に制御すれば、残存容量のバラツキは+4%、−6%以内となるため、実際の電池の残存容量は使用可能残存容量許容範囲(26%−6%=20%から76%+4%=80%)内に収まり、このような制御により電池を劣化させるともない。
【0047】
なお、本実施形態では、バイパス時間の算出を電池群制御装置10側で行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、上位制御システム20側で行うようにしてもよい。このような実施形態では、電池群制御装置10と上位制御システム20とで電池電源システムが構成され、電池群制御装置10及び上位制御システム20で通信が可能なことが必要である。すなわち、電池群制御装置10の主制御部7は、単電池の各々の無負荷電圧値を上位制御システム20に送信する。上位制御システム20(のCPU)は、受信した無負荷電圧値から残存容量比と残存容量比の平均値との差分の電気量に相当するバイパス時間値を算出し、バイパス時間値を電池群制御装置10に送信する。電池群制御装置10の主制御部7は、上位制御システム20からバイパス時間値を受信し、電池群1の充放電時に、受信したバイパス時間値に応じて対応するバイパス回路9のスイッチ制御スイッチ3をオン状態に制御して充放電電流をバイパスさせることで、電池群1を構成する単電池の各々の残存容量を略均等とする。なお、電池群制御装置10の主制御部7は、充放電開始後に、上位制御システム20からバイパス時間値を受信しても、容量調整が可能なことは論を待たない。
【0048】
また、本実施形態では、平均残存容量比が充放電許容範囲内にあるかを電池群制御装置10側で監視する例を示したが、本発明はこれに制限されず、上位制御システム20側で監視するようにしてもよい。すなわち、電池群制御装置10の主制御部7は、電池群1の充放電時に、総電圧値、充放電電流値及び温度値を上位制御システム20に送信し、上位制御システム20は、受信した総電圧値、充放電電流値及び温度値から平均残存容量比を算出し、算出した平均残存容量比が上述した充放電許容範囲内にあるかを監視するようにしてもよい。この場合に、充放電許容範囲の算出については、一部又は全部を電池群制御装置10の主制御部7側で行うようにしてもよい。
【0049】
更に、本実施形態では、起動時に、残存容量比の最大偏差(偏差1max)と最小偏差(偏差1min)と、上限の残存容量比と下限の残存容量比とを算出した例を示したが、起動時に残存容量比の最大偏差(偏差1max)と最小偏差(偏差1min)を算出しておき、定常時に上限の残存容量比と下限の残存容量比とを算出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、電池群を構成する二次電池の残存容量が広範囲に変化しても正確にセルバランスをとることができると共に、電池群を広い範囲で使用可能な電池群制御装置及び電池電源システムを提供するものであるため、電池群制御装置ないし電池電源システムの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0051】
1 電池群
2 バイパス抵抗(抵抗)
3 バイパス制御スイッチ(スイッチ)
4 電圧測定回路(無負荷電圧測定手段の一部)
5 総電圧測定回路(総電圧測定手段の一部)
6 電流測定回路(電流測定手段の一部)
7 主制御部(制御手段)
9 バイパス回路
10 電池群制御装置
20 上位制御システム(電池電源システムの一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の二次電池が直列に接続された電池群を制御する電池群制御装置において、
前記電池群制御装置の起動時に、前記二次電池の各々の無負荷電圧を測定する無負荷電圧測定手段と、
容量調整用の抵抗及びスイッチを有し、前記二次電池の各々に並列に接続され、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるバイパス回路と、
前記二次電池の各々の残存容量が略均等となるように、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるための時間を算出し、該算出した時間に応じて対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記無負荷電圧測定手段で測定された二次電池の各々の無負荷電圧を残存容量に変換して該変換した残存容量の平均値を算出し、前記変換した残存容量と前記算出した残存容量の平均値との差が予め設定された設定値を越える二次電池について、前記電池群の充放電時に、前記残存容量と前記残存容量の平均値との差分の電気量に相当する時間、対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御して該二次電池に流れる充放電電流をバイパスさせることを特徴とする電池群制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記残存容量の平均値を、前記二次電池の各々の残存容量の最大値と最小値との平均値として算出することを特徴とする請求項1に記載の電池群制御装置。
【請求項3】
前記電池群の総電圧を測定する総電圧測定手段と、前記電池群に流れる充放電電流を測定する電流測定手段とを更に備え、前記制御手段は、前記変換した残存容量の最大偏差(=起動時の残存容量の最大値−残存容量の平均値)及び最小偏差(=起動時の残存容量の平均値−残存容量の最小値)を更に算出し、前記電池群の充放電時に、前記総電圧測定手段で測定された総電圧及び前記電流測定手段で測定された充放電電流から前記二次電池の平均残存容量を算出し、該算出した平均残存容量が、(前記二次電池の使用上限の残存容量−前記算出した最大偏差)と、(前記二次電池の使用下限の残存容量+前記算出した最小偏差)との間の範囲にあるかを監視することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電池群制御装置。
【請求項4】
複数個の二次電池を直列に接続した電池群を制御する電池群制御装置と、前記電池群制御装置を制御する上位制御システムとを備え、前記電池群制御装置及び前記上位制御システム間で通信が可能な電池電源システムにおいて、
前記電池群制御装置は、
起動時に、前記二次電池の各々の無負荷電圧を測定する無負荷電圧測定手段と、
容量調整用の抵抗及びスイッチを有し、前記二次電池の各々に並列に接続され、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるバイパス回路と、
前記無負荷電圧測定手段で測定された前記二次電池の各々の無負荷電圧値を前記上位制御システムに送信すると共に、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるための時間値を前記上位制御システムから受信し、かつ、前記電池群の充放電時に、前記受信した時間値に応じて対応するバイパス回路のスイッチをオン状態に制御して充放電電流をバイパスさせる電池群制御手段と、
を有し、
前記上位制御システムは、
前記電池群制御装置から受信した前記二次電池の各々の無負荷電圧値に基づいて、前記二次電池の各々の残存容量が略均等となるように、前記二次電池の各々に流れる充放電電流をバイパスさせるための時間値を算出し、該算出した時間値を前記電池群制御装置に送信するシステム制御手段
を有し、
前記システム制御手段は、前記電池群制御装置から受信した前記二次電池の各々の無負荷電圧値を残存容量に変換して該変換した残存容量の平均値を算出し、前記変換した残存容量と前記算出した残存容量の平均値との差が予め設定された設定値を越える二次電池について、前記残存容量と前記残存容量の平均値の差分の電気量に相当する時間値を算出し、該算出した時間値を前記電池群制御装置に送信することを特徴とする電池電源システム。
【請求項5】
前記システム制御手段は、前記残存容量の平均値を、前記二次電池の各々の残存容量の最大値と最小値との平均値として算出することを特徴とする請求項4に記載の電池電源システム。
【請求項6】
前記電池群制御装置は、前記電池群の総電圧を測定する総電圧測定手段と、前記電池群に流れる充放電電流を測定する電流測定手段とを更に有し、前記電池群制御手段は、前記電池群の充放電時に、前記総電圧測定手段で測定された総電圧値及び前記電流測定手段で測定された充放電電流値を前記上位制御システムに送信し、
前記システム制御手段は、前記変換した残存容量の最大偏差(=起動時の残存容量の最大値−残存容量の平均値)及び最小偏差(=起動時の残存容量の平均値−残存容量の最小値)を更に算出し、前記電池群の充放電時に、前記電池群制御手段から受信した総電圧値及び充放電電流値から前記二次電池の平均残存容量を算出し、該算出した平均残存容量が、(前記二次電池の使用上限の残存容量−前記算出した最大偏差)と、(前記二次電池の使用下限の残存容量+前記算出した最小偏差)との間の範囲にあるかを監視することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の電池電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−178040(P2009−178040A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110631(P2009−110631)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【分割の表示】特願2006−65432(P2006−65432)の分割
【原出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】