説明

電池

【課題】耐熱性を付与することにより良好な電池性能を発揮することが可能なラミネート電池等の電池を提供する。
【解決手段】 正極板、負極板及びセパレータを重ねてなる電極体が外装体に収納され封止された電池であって、この電池の内部において無延伸ポリオレフィン材料が用いられている構成とした。この電池はラミネート電池であり、電極体の正負極にそれぞれタブが接続され、このタブがラミネート外装体の外部に露出した状態でラミネート外装体周辺が封止されており、タブ及びこれに接続された極板領域に対応して被着された保護テープと、封止部分におけるタブを覆うように配されたタブ樹脂とを備えており、これら保護テープ及びタブ樹脂の少なくともいずれかを無延伸ポリオレフィン樹脂で構成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の内部構成に関し、特にリチウムポリマー電池などのラミネート電池における耐熱性の向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ポケットPC、ポータブルオーディオ、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)などの小型電子機器の普及に伴い、薄型・軽量で高容量の電池に対する要求が急速に高まっている。特に、リチウムポリマー電解質とラミネート外装体を備えたラミネート電池は、柔軟で非常に薄く、大容量でありながら極めて薄型で軽量化することが可能なため、上記機器の電源用として広く使用されている。
【0003】
ラミネート電池は、一般的には、帯状の正負極板をセパレータを介して巻回し、これを押し潰してなる巻回体に電解液を含浸して発電要素としている。前記巻回体には、各極板芯体に対してタブ(集電端子)が取り付けられ、当該タブを外部に露出させて、正極端子或いは負極端子となるように配置する。この状態で、タブを外部へ露出させながら、発電要素の周囲をラミネート外装体で封止した構成を持つ。
【0004】
ラミネート外装体は、電極体および電解液が外部へ漏れ出さないように、特にタブ付近の辺において熱圧着処理により封止される。
ラミネート電池においては、その内部に、延伸ポリプロピレン(OPP)等の延伸ポリオレフィンからなるテープ材料が数カ所に用いられる。
例えば、前記タブが巻回体形成時に極板を破損したり、短絡を起こすのを防ぐ目的で、極板との接続部分における前記タブの表面には、前記テープ材料からなる保護テープで被覆され、保護される。また、タブには別途筒状のテープ材料が挿通され、熱圧着による封着性の向上が図られる。さらに、前記巻回体の巻き止めや、巻回体の上下端部を保護する目的で、PP製の巻き止めテープが貼着される。
【特許文献1】特開平11−312514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記延伸ポリオレフィンからなるテープ材料は、比較的耐熱性が低く、これによって電池性能に影響が出る恐れがある。
例えばラミネート電池では、ラミネート外装体を熱圧着することによって電池内部を封止する構成となっているが、当該熱圧着時に熱を受け、テープ材料が変質(軟化、収縮等)することがある。また熱による影響は、電池異常時の高温発生時においても想定される。
【0006】
このような変質は、このテープ材料を前記保護テープとして使用する場合、タブが露出して他方の極板と短絡を生じる原因にもなりうるので防止が望まれる。
以上のように、現在ではラミネート電池において、未だ解決すべき余地がある。また、この問題はラミネート電池に限らず、上記テープ材料を内部構成に用いる電池全般にわたって共通している。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みて為されたものであって、その目的は、電池内部に用いるテープ材料の変質を防ぐことにより、良好な電池性能を発揮することが可能なラミネート電池等の電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、正極板および負極板並びにセパレータを重ねてなる電極体が外装体に収納され、当該外装体が内部封止された電池であって、当該電池の内部において、無延伸ポリオレフィン材料が用いられている構成とした。
ここで前記電池はラミネート電池であり、前記電極体の正負各極板にそれぞれタブが接続され、当該各タブがラミネート外装体の外部に露出した状態で、ラミネート外装体周縁が封止されており、タブおよびこれに接続された極板領域に対応して被着された保護テープと、前記封止部分におけるタブを覆うように配されたタブ樹脂とを備えており、前記保護テープおよびタブ樹脂の少なくともいずれかを、無延伸ポリオレフィン材料で構成することもできる。
【0009】
また、前記電極体は、帯状の正極板および負極板をセパレータを介して巻き回し、これを巻き止めテープで固定してなる巻回体であって、前記巻き止めテープを、無延伸ポリオレフィン材料で構成することもできる。
また、前記保護テープおよび前記巻き止めテープの少なくともいずれかが前記無延伸ポリオレフィン材料で構成されている場合において、当該保護テープ或いは巻き止めテープの前記極板領域に対向する面には、前記封止部分に近接する領域を回避しつつ糊材が塗布されているようにすることもできる。
【0010】
さらに、前記タブ樹脂が無延伸ポリオレフィン材料で構成される場合において、無延伸ポリオレフィン材料が、これに対向するラミネート外装体の表面と同様の組成で構成されているようにすることもできる。
なお、前記ラミネート電池はリチウムポリマー電池に主として適用される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明の電池では、外装体内部に耐熱性に優れる無延伸ポリオレフィン材料を電池内部に用いることによって、従来の延伸ポリオレフィン材料を用いる構成に比べて電池性能が向上されている。
このため、例えば電池が異常温度を発生し、過熱状態に陥っても、当該無延伸ポリオレフィン材料は熱収縮等の変形を生じることがない。これにより例えば無延伸ポリオレフィン材料をテープ材料として用いると、当該テープ材料が貼着された発電要素や、タブと極板との接続部分等がテープの熱収縮により露出するのが回避され、短絡の発生を効果的に防止することができるので、安定した電池性能を発揮することが可能となっている。
【0012】
また、本発明をラミネート電池に適用する場合には、上記効果に加えてラミネート外装体を封止する加熱処理(ラミネート処理)における熱の影響においても効果が奏される。例えば、当該熱処理に封止部に近接するタブ周囲は、比較的高温に曝されやすいが、本発明では上記無延伸ポリオレフィン材料を前記タブ周囲に用いることによって、良好な封止工程を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1-1.ポリマー電池の構成
図1は、本発明の電池の一適用例である、本実施の形態1に係る角形リチウムポリマー電池1(以下、「ラミネート電池1」と称す。)の構成を示す図である。さらに図2は、ラミネート電池の正負極板周辺の構造を示す図である。このうち図2(a)は、正極板周辺の構造を示す図であり、図2(b)は、負極板周辺の構造を示す部分的な拡大図である。
【0014】
また図3は、電池1の封止工程を示す模式図である。
図1に示すラミネート電池1は、薄型の直方体に形成されたラミネート外装体10の内部に電極体20が収納され、ラミネート外装体10内部の電極体20から正負一対のタブ11、12が外部に延出された構成を持つ。ラミネート外装体10の周囲には、各辺に合わせてトップ封止部102、サイド封止部10a、10b、底部10cがそれぞれ形成されており、外装体内部が密閉構造に保たれている。電池サイズ例は、縦6cm×横3.5cm×厚み3.6mmとすることができる。
【0015】
電極体20は、図1中で点線で示すように、セパレータ21を介して、帯状の正極板22、負極板23を巻き回して渦巻き状にし、これを扁平に押し潰して薄型直方体形状とした巻回体から構成される。
なお、ここで言う電極体の「直方体形状」とは、実際には電極体20の側面がカーブしているため厳密な直方体ではないが、本発明ではこのような形状も「直方体」と称することにする。
【0016】
また、巻回体20はこの他に短冊状の正極板、負極板をセパレータを介して積層することにより構成してもよい。
セパレータ21は、厚み0.03mmの多孔質ポリエチレンから構成することができる。
正極板22は、一例として帯状のアルミ箔にからなる芯体に活物質としてコバルト酸リチウムLiCoO2を塗布してなる。
【0017】
負極板23は、一例として帯状の銅箔からなる芯体に活物質231として黒鉛(グラファイト)粉末を塗布してなる。
なお、電極体20では、サイズ的に正極板22、負極板23、セパレータ21の順に、各幅が広くなるように設定されている。これは、正極板22より負極板23の面積を広く確保することによって、充電時において、正極板22からのLiイオンを十分に負極板23に吸収させ、デンドライト(樹枝状結晶)の発生を抑制するようにしたものである。電極体20では、最外周に位置するセパレータ21を留めるための巻き留めテープ105が貼り付けられる。
【0018】
負極板23と正極板22の周辺構成は以下の通り、ほぼ同様である。
すなわち正極板22は、例えば図2(a)に示すように、その巻回方向下流側の一端部に芯体が露出してなるリーダー部222が形成されている。このリーダー部222において、帯状のアルミ、ニッケル、銅等からなる集電端子としてのタブ11が一定の長さで外部に延出するように、抵抗溶接等の方法で接続部110において接続される。さらに、タブ11とこれが接続されたリーダー部222の領域には、前記タブ11のエッジがセパレータ21を突き破って負極側と短絡等の問題を生じないように、これらを被覆して保護するための保護テープ150が、その表面に形成された糊材配設領域151により貼着されている。当該保護テープ150のサイズ・形状はいずれでもよいが、少なくとも極板との接続領域を良好に覆うことのできるように設定する必要がある。図2(a)の保護テープ150の例では、極板の幅方向より若干サイズを大きめとし、はみ出すように設定している。これは、正負各芯体の短絡をより確実に防止する目的による。
【0019】
一方、負極板23においても、図2(b)に示すように、その巻回方向下流側の一端部に芯体が露出してなるリーダー部232が形成されている。このリーダー部222において、11と同様のタブ12が一定の長さで外部に延出するように、抵抗溶接等の方法で接続部120において接続される。さらに、タブ12とこれが接続されたリーダー部222の領域には、前記タブ12のエッジがセパレータ21を突き破って負極側と短絡等の問題を生じないように、これらを被覆して保護するための保護テープ160が、その表面に形成された糊材配設領域161により貼着されている。当該保護テープ160のサイズ・形状はいずれでもよいが、少なくとも極板との接続領域を良好に覆うことのできるように設定する必要がある。
【0020】
図2(b)の保護テープ160においても、正負各芯体の短絡をより確実に防止する目的で、極板の幅方向より若干サイズを大きめとし、はみ出すように設定している。

ここで保護テープ150、160のタブ配設側端部には糊材が配設されていないテープ露出部152、153、162、163が設けられている。これらは、万一保護テープ150、160の貼着位置が所定位置より外側にはみ出た(例えば図2(b)中Aで示す領域)場合に、当該保護テープ150、160の糊材が外装体20内部で他の部材と接触するのを防止するために設ける。特に153、163は、この部分が外部にはみ出て外装体10のトップ封止部102に噛み込んで熱溶着時に糊材が溶融することにより封止性を低下させる原因となるのを防止するものである。
【0021】
さらにタブ11、12には、ラミネート外装体10のトップ封止部102となる領域に対応して、タブ樹脂(「熱溶着性フィルム」または「集電端子フィルム」とも言う。)103、104がそれぞれ被覆される。このタブ樹脂103、104は、元は幅1cm程度の帯状フィルムを環状に繋いでおき、これを側面から矩形状に押し潰し、タブ11、12に挿通して配設することができる。タブ樹脂103、104は、理想的には前記保護テープ150、160の端部と近接して設けられる。
【0022】
なお、電極体20の上下方向端部には、さらに形態維持等の目的で保護テープを別途設けるようにしてもよい。
また図1に示す構成では視認性向上および極性誤認防止のためタブ11、12の幅を変えているが(タブ11は幅3mm、タブ12は幅5mm)、当然ながら同一の幅で作製してもよい。

当該電極体20には、非水電解液としてゲル状のポリマー電解質が含浸される。
【0023】
当該ポリマー電解質としては、例えばポリエチレングリコールジアクリレートとEC/DEC混合物(質量比30:70)を1:10の割合で混合し、これにLiPF6を1mol/l添加して、加熱重合し、ゲル化させたものを用いることができる。
ラミネート外装体10は、一例として、ポリプロピレン/アルミ/ポリプロピレンの3層構造のラミネートフィルム(厚み約100μm)から構成され、これを用いた3方封止型構造(カップ式ラミネート)に形成される。

ラミネート外装体の封止方法としては以下の例が挙げられる。
【0024】
すなわち、封止工程の模式図(図3)に示すように、まずラミネートフィルム材料200を帯状体に切り出すとともに凸部201を形成する。
そして巻回して巻き止めされた(S1)電極体20を、ラミネートフィルム材料200に載置し、前記凸部201に電極体20が収納されるように位置合わせしつつ、当該200の長手方向の中央202から半分に折り返す(S2)。
【0025】
続いて、200の幅方向両端部Aを熱圧着処理してサイド封止部10a、10bを形成するとともに、最終的にタブ11、12を横切るようにラミネート外装体10の周縁を熱圧着してトップ封止部102を形成する。
このとき電極体20は、タブ11、12の先端を外部へ約1.6cmの長さで延出した状態でラミネート外装体10に収納される。
【0026】
なお、この封止方法以外にも、先にカップ式ラミネートの外装体10を作製したのち、電極体10を収納し、熱圧着してトップ封止部102を形成する方法も挙げられる。
このようなタブ樹脂103、104が設けられたタブ11、12を挟んで、ラミネート外装体10がタブ樹脂103、104の部分を横切るように熱圧着処理されることにより、トップ封止部102が形成される。この熱圧着処理によって、タブ樹脂103、104はタブ11、12の両面と、これに対応と、これに対向するラミネート外装体10内面の両方に対して熱溶着性を呈し、封止部102の封止性を維持する役目をなす。
【0027】
ここにおいて本発明のラミネート電池1では、前記タブ樹脂103、104、巻き止めテープ105および保護テープ150、160のそれぞれが、従来材料の延伸ポリプロピレン(OPP)に比べて耐熱性に優れる無延伸テープ、具体的には無延伸ポリプロピレン(CPP)等の無延伸ポリオレフィン材料で構成されていることを特徴とする。
ラミネート電池1では、このような材料を用いることによって、 製造時においてラミネート外装体10を熱圧着する際に前記巻き止めテープ105および保護テープ150、160に熱が及んでも、当該材料が熱収縮等の変質を起こすのを回避することができ、電池性能を良好に保つことができる。
【0028】
以下、この効果の詳細について説明する。
1-2.実施の形態1の効果
本実施の形態1のラミネート電池1では、当該電池内で使用するテープ材料、具体的には、前記タブ樹脂103、104、巻き止めテープ105および保護テープ150、160を耐熱性を有する無延伸ポリオレフィン材料で構成しており、当該テープ材料に延伸ポリプロピレン等を用いる従来構成に比べて飛躍的に耐熱性が向上されている。
【0029】
このような無延伸ポリオレフィン材料の耐熱性は、高温時においても熱収縮しにくい特性として呈される。その結果、当該電池1に一定以上の熱が及ぶ条件下、例えば製造時のラミネート熱圧着工程や、駆動時に何らかの故障が生じて電池が異常温度上昇した場合においても、前記テープ材料の不要な収縮が抑制されるので、当該テープ材料によって被覆されている電池の構成要素の露出が防止され、安定した電池性能が発揮される。ここで上記CPPを用いれば、120℃程度まで耐熱性が発揮される。
【0030】
例えば、無延伸ポリオレフィン材料で保護テープ150、160を構成すれば、当該保護テープ150、160が被覆するタブ11、12の表面が電極体20中において、前記テープの熱収縮により露出されるのが防止されるので、当該タブ11,12がこれと対向するセパレータ21、正極22、負極23等に接触して短絡を起こすのが効果的に防止され、またタブ11、12のエッジを保護することで、セパレータ21を破損から防止する効果も維持されることとなる。
【0031】
さらに、当該熱処理に封止部に近接するタブ周囲は、比較的高温に曝されやすいが、無延伸ポリオレフィン材料でタブ樹脂103、104を構成することによって、トップ封止部102中における当該樹脂の良好な充填を行い、確実な封止が期待できる。これによりトップ封止部102の封止信頼性を損なうことなく良好な電池性能が実現されるようになっている。なお、タブ樹脂103、104がトップ封止部102において良好に溶融できるように、無延伸ポリオレフィン材料を選択することが望ましい。
【0032】
ここで、無延伸ポリオレフィン材料としては、ポリプロピレン、変性ポリプロピレンの他、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリメチルペンテン、またはこれらの共重合体等が例示できる。
また、無延伸ポリオレフィン材料で巻き止めテープ105を構成すれば、高温時でも電極体20表面での熱収縮を回避して、良好な巻き止め効果を維持できるので、ラミネート電池1内部で電極体20の巻き止めが開放され、当該巻回構造が崩れるのが防止される。
【0033】
なお、上記無延伸ポリオレフィン材料は、前記タブ樹脂103、104、巻き止めテープ105および保護テープ150、160の全てに用いる必要はなく、このうちのいずれかだけに適用しても、それなりの効果は望める。しかしながら、電池異常温度上昇時には、概して電池全体が過熱状態に陥り易いため、熱収縮する恐れを考慮すると、やはりこれらを無延伸ポリオレフィン材料で構成するのが望ましい。
【実施例】
【0034】
ここでは本発明のラミネート電池を実際に作製し、その性能比較実験を行った結果について説明する。

<実施例および比較例の作製>
(実施例1)
正極活物質として、LiMn24に代表されるスピネル型マンガン酸リチウム、およびLiCoO2に代表されるコバルト酸リチウムを一定比率で混合したものを用いた。
【0035】
なお本実施例には示していないが、正極に用いられる活物質としてはマンガン酸リチウムあるいはコバルト酸リチウムに異種元素を添加したものも同様に利用できる。
この混合正極活物質に対し、さらに炭素導電剤、グラファイトをそれぞれ所定量混合した後、フッ素樹脂系結着剤と一定の割合で混合し、正極合剤とした。これを電極芯体であるアルミ箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延して正極板を作製した。
【0036】
一方、負極炭素材とフッ素樹脂系結着剤とを一定の割合で混合し、電極芯体である銅箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延して負極板を作製した。
さらにポリマー電解質を以下の手順で作製した。すなわちエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比30:70となる割合で混合し、さらに電解質塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/Lとなる割合で溶解することにより、非水電解液を作製した。
【0037】
続いて、前記非水電解液15質量部に対し、ポリプロピレングリコールアクリレート(化学式1)、もしくはポリプロピレングリコールメタクリレート(化学式2)等の重合化合物を1質量部混合した。その後、ビニレンカーボネートを加えて混合し、さらに重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレートを5000ppm添加し、ポリマー電解質前駆体とした。

[化学式1]
CH2=CHCO-O-(CH(CH3)CH2-O)-COCH=CH2

[化学式2]
CH2=C(CH3)CO-O-(CH(CH3)-CH2-O)n-COC(CH3)=CH2
(但しnは3以上の整数)

なお、ポリマー電解質としては、LiPF6の他にLiBF4、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、およびこれらのいずれか1種以上を混合して用いることができる。
【0038】
次に、上記作製した正極板および負極板にタブを取り付けた。このとき、当該タブと極板領域に、無延伸ポリオレフィン材料の一例として、無延伸ポリプロピレン(CPP)材料からなる保護テープを貼着した。
そして、正極板および負極板をポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して渦巻き状に巻き取り、その後扁平に押し潰して、電極体を形成した。
【0039】
この電極体を、封筒状に予め加工しておいたラミネート外装体に収納するとともに、外装体内部に上記ポリマー電解質前駆体を注入した。
そして、タブが突出している当該外装体のトップ封止部を熱溶着し、外装体内部を封止した。次に、60℃オーブン中に3時間静置することでポリマーを硬化させた。
その後、ガス抜きおよび充電工程を経て最終シールを行い、実施例電池の作製を完了した。
【0040】
比較例電池では、上記保護テープを従来の延伸ポリプロピレン(OPP)で構成した以外は実施例電池と同様に作製した。

<測定実験>
実施例電池および比較例電池を、それぞれ加熱槽に入れ、室温から180℃まで加熱する実験を行った。この温度処理において、電池の内部短絡の有無を確認した。
【0041】
その結果、実施例電池は最後まで短絡を発生しなかったが、比較例電池は169℃にて短絡を発生した。
この結果から、実施例電池においては上記のような比較的厳しい高温条件下でも保護テープの熱収縮が抑制され、安定した電池性能が期待できることが確認された。このような性能は、特にラミネート電池において、ラミネートの熱圧着工程による封止時においても、その封止効果を損なうことなく良好な電池を作製できることを意味していると思われる。

<その他の事項>
【0042】
本発明の保護テープを除くラミネート電池の全体構成は、当然ながら上記実施の形態、および実施例に限定するものではなく、他の種類の材料構成を用いることができる。例えば実施例では、正極活物質の具体的材料を列挙したが、そのほかにコバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムを使用してもよい。また、電解液にはゲル状の他に液状のものを用いてもよい。
【0043】
上記電池では、ポリプロピレン/アルミ/ポリプロピレンの三層構造からなるラミネート外装体を用いる例を示したが、本発明のCPPテープをタブ樹脂に用いる場合、前記ラミネート外装体と同様の材料同士を用いることで良好に熱圧着させるためにも無延伸ポリプロピレンを用いることが望ましい。
同様の理由で、前記ラミネート外装体の内表面に位置するフィルム層がポリプロピレン以外のポリオレフィン、例えばポリエチレンで構成されている場合には、前記CPPテープ材料にこれと同様の組成からなるポリエチレンの無延伸フィルムを加工したテープを用いると、より効果的な熱圧着を期待することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の電池は、例えば小型電子機器用の電源等に利用されるリチウムポリマー電池などのラミネート電池の他、金属外装缶を有する各種電池にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1におけるリチウムポリマー電池(ラミネート電池)の外観図である。
【図2】正負各極板周辺の構成を示す図である。図2(a)は正極板、図2(b)は負極板周辺の各構成を示す。
【図3】ラミネート電池の封止工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ラミネート電池(角形リチウムポリマー電池)
10 ラミネート外装体
10a、10b サイド封止部
11、12 タブ(集電端子、または正極端子、負極端子)
20 巻回体
21 セパレータ
22 正極板
23 負極板
102 トップ封止部
103、104 タブ樹脂
110、120 溶接部分
150、160 保護テープ
151、161 糊材配設領域
152、153、162、163 テープ露出部
200 ラミネートフィルム材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板および負極板並びにセパレータを重ねてなる電極体が外装体に収納され、当該外装体が内部封止された電池であって、
当該電池の内部において、無延伸ポリオレフィン材料が用いられていることを特徴とする電池。
【請求項2】
前記電池はラミネート電池であり、前記電極体の正負各極板にそれぞれタブが接続され、当該各タブがラミネート外装体の外部に露出した状態で、ラミネート外装体周縁が封止されており、
タブおよびこれに接続された極板領域に対応して被着された保護テープと、
前記封止部分におけるタブを覆うように配されたタブ樹脂とを備えており、
前記保護テープおよびタブ樹脂の少なくともいずれかが、無延伸ポリオレフィン材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電極体は、帯状の正極板と負極板をセパレータを介して巻き回し、これを巻き止めテープで固定してなる巻回体であって、
前記巻き止めテープが、無延伸ポリオレフィン材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記保護テープおよび前記巻き止めテープの少なくともいずれかが前記無延伸ポリオレフィン材料で構成されている場合において、当該保護テープ或いは巻き止めテープの前記極板領域に対向する面には、前記封止部分に近接する領域を回避しつつ糊材が塗布されている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の電池。
【請求項5】
前記タブ樹脂が無延伸ポリオレフィン材料で構成される場合において、
無延伸ポリオレフィン材料が、これに対向するラミネート外装体の表面と同様の組成で構成されている
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の電池。
【請求項6】
前記ラミネート電池はリチウムポリマー電池であることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−73243(P2006−73243A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252631(P2004−252631)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】