説明

電池

【課題】複数の種類のセパレータを利用して電池異常の際の電池の安全性を向上することができる電池を提供する。
【解決手段】第1セパレータ5を介して第1極性の電位の第1電極板3と第2極性の電位の第2電極板4とが積層された積層電極体6と、前記積層電極体6を密閉して収納し且つ前記第1極性の電位に帯電した電池容器2と、前記電池容器2に収納された前記積層電極体6と前記電池容器2との間に配置される壁面用樹脂12とを有し、前記第1セパレータ5が溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第1温度よりも、前記壁面用樹脂12が溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第2温度は低い温度であり、前記電池容器2の内部が前記第2温度以上の温度となった場合に、前記電池容器2と前記第2電極板4とが接触又は電気的に短絡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、特に安全性を向上した電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池には、放電のみ行う一次電池や充放電が可能な二次電池が存在する。これらは電極板、すなわち正極板および負極板がセパレータを介して積層された積層電極体を電池容器に密閉した構成であり、一般的に電池システムにおけるモータ等の電力負荷駆動用の電力供給のために使用される。
しかし、例えば、当該電池システムが定置用である場合には、導電性の微粉が電池容器内に混入したなど、製造時における検査で検知困難な製造不良等によって、電池容器内部において正極板と負極板との間で電気的に微小な短絡(以下、微短絡という)が発生する恐れがある。また、例えば、当該電池システムが電気自動車である場合には、交通事故等により、やはり微短絡が発生する恐れがある。さらに、電池の材料によっては、デンドライトが発生して微短絡が発生する場合もある。
電池容器内部で微短絡が発生すると、当該微短絡している電流経路において当該電流経路の単位断面積当たりに流れる電流が過大となって急速に発熱し、いわゆる電池が異常、すなわち電池異常の状態となる。当該電池異常の状態では、発熱によって当該微短絡している箇所の周囲の電極板に悪影響を与えるのみならず、電解液が気化して電池容器の内圧を上昇させ、結果的に当該電池システムのユーザーに傷害等の危険を及ぼす恐れがある。
そこで、電池の安全性を向上して当該危険を回避すべく、電極板間に配置されるセパレータとは別個に、当該セパレータよりも溶融温度の低いセパレータを正極端子に接続されるアルミニウム箔と負極端子に接続される銅箔とで挟みこみ、当該溶融温度の低いセパレータが電極板間に配置されるセパレータよりも電池異常の際に早く溶融等することで当該アルミニウム箔と銅箔とが接触して短絡し、電極板間の電流の流れを阻害する構成(特許文献1参照)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−243037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電池は、電池異常の際に上記アルミニウム箔と上記銅箔とが短絡することで電池の安全性を向上するとしているが、後述の通り、電池の通常の放電または充電に悪影響を与えうる点で不十分な構成であった。
すなわち、特許文献1の電池では、上記アルミニウム箔と上記銅箔はいずれも電池の通常の放電または充電になんら関与しない部材(以下、無関与金属部材という)にもかかわらず、上記短絡をさせるには一方を正極板に電気的に接続し且つ他方を負極板に電気的に接続する必要性があるため、それぞれが異なる極性となる計2つの無関与金属部材を用いなければならない。そして、この2つの無関与金属部材で上記溶融温度の低いセパレータを挟みこんだ構成とするため、特許文献1の電池が市販されて使用された際に、振動等によりこれら2つの無関与金属部材と当該セパレータとの間に位置ズレが生じ、結果として電池異常でない場合、言い換えれば通常の放電または充電の際にも上記アルミニウム箔と上記銅箔とが短絡する恐れがある。このように電池異常でない場合にも当該短絡が生じるのは電池の動作特性上望ましくないのみならず、電池の寿命を十分に全うせずに電池交換する必要が生じることからユーザーにとって経済上望ましくない。
そこで、本発明は、複数の種類のセパレータを利用して電池異常の際の電池の安全性を向上するのみならず、特許文献1の電池の不十分な構成により生じる上述の課題を解決する電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の電池は、第1セパレータを介して第1極性の電位の第1電極板と第2極性の電位の第2電極板とが積層された積層電極体と、前記積層電極体を密閉して収納し且つ前記第1極性の電位に帯電した電池容器と、前記電池容器に収納された前記積層電極体と前記電池容器との間に配置される壁面用樹脂とを有し、前記第1セパレータが溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第1温度よりも、前記壁面用樹脂が溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第2温度は低い温度であり、前記電池容器の内部が前記第2温度以上の温度となった場合に、前記電池容器と前記第2電極板とが接触又は電気的に短絡することを特徴とする。
【0006】
すなわち、電極板間に配置される第1セパレータが溶融等する第1温度よりも低い温度である第2温度で溶融等する壁面用樹脂が、第1極性の電位に帯電した電池容器と積層電極体との間に配置されているので、電池容器の内部が第2温度以上の温度となった場合に、積層電極体の第2電極板と電池容器とを電気的に短絡させることができる。従って、特許文献1における上記無関与金属部材を用いずとも、電池異常の際の電池の安全性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池によれば、複数の種類のセパレータを利用して電池異常の際の電池の安全性を向上するのみならず、特許文献1の電池の不十分な構成により生じうる上述の課題を解決する電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態の電池の概要図である。図1(a)は、電池の正面からの透視概要図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A´線における断面概要図である。
【図2】本発明の第2実施形態の電池における断面概要図である。
【図3】本発明の第3実施形態の電池における断面概要図である。
【図4】本発明の第4実施形態の電池における断面概要図である。
【図5】本発明の第5実施形態の電池における断面概要図である。
【図6】本発明の第6実施形態の電池における断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る電池は、積層電極体の電極板間に配置されるセパレータと異なる特性のセパレータを積層電極体と電池容器(後述のダミー電極板として機能することが可能である)の間、又は、後述のダミー電極板と電極板との間に介在させることを特徴の1つとしている。以下、図面を参照しながら、詳述する。
なお、第1実施形態から第3実施形態までの電池は正極板を袋状のセパレータに内包した構成例であり、第4実施形態から第6実施形態までの電池は負極板を袋状のセパレータに内包した構成例である。
また、これら実施形態の電池としては、一次電池または二次電池等のいずれの電池でも用いることが可能であるが、ここでは電池の一例として、充放電可能な電池、例えば蓄電池であるリチウムイオン二次電池を用いて説明する。
【0010】
[第1実施形態]
以下、本実施形態の電池1につき図1を参照して説明する。図1(a)は、電池1の正面(XZ平面)からの透視概要図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A´線のYZ平面における断面概要図である。なお、以下で使用する図は、いずれも同一の直交座標系を用いている。また、図1(a)は理解促進のための概要図であるため、図1(b)に示した各構成が全て記載されているわけではない。
【0011】
まず、電池1は、XY平面上に略矩形の形状の底面をもち且つ当該略矩形の全ての辺からZ軸方向へ伸びる壁面をもつ角型の導電性(例えば、アルミニウム等の金属製)の容器本体2と、容器本体2に収納され且つ正極板3と負極板4とがセパレータ(第1セパレータ)5を介して積層された積層電極体6と、積層電極体6を容器本体2に収納後に容器本体2を密閉する蓋7とを備えている(容器本体2と蓋7とが密閉されて電池容器となる)。なお、図示しないものの、電池容器には電解液又は電解質が蓄えられる。
ここで、蓋7は容器本体2と同一の導電性の材質である。そして、蓋7には、蓋7を貫通して配置される円柱状(XY平面における断面が実質的に直径rの円)の電極端子(正極端子8及び負極端子9)と、電極端子を蓋7に固定し且つ電極端子と蓋7との間を電気的に絶縁する絶縁性の樹脂10(例えば、プラスチック樹脂等)が形成されている。上述のように電池容器が導電性であるので、積層電極体6と電池容器との間を電気的に絶縁すべく、容器本体2の内側の底面に当該底面と実質的に同じ形状及び寸法の絶縁性の樹脂板11(例えば、プラスチック樹脂製の板またはシート)を配置し、容器本体2の内側の全ての壁面にやはり当該壁面と実質的に同じ形状及び寸法の絶縁性の樹脂(以下、壁面用樹脂12といい、ここでは後述の第2セパレータ13を用いている)を配置している。
また、電池の性能劣化を防止するため、積層電極体6の活物質等の材質に対応させて、電池容器の電位を電池1の正極電位または負極電位とすべく、導電部14が配置される。ここでは、積層電極体6の活物質等の材料が後述のとおりであるため、正極端子8と電池容器との間に導電経路を形成して電池容器を正極電位とすべく、導電部14は正極端子8と蓋7との間に接続される。この導電部14は、放熱性が向上するので電気抵抗の小さい配線でもよいが、安全性を鑑みて、ここでは高抵抗(例えば10MΩ)の抵抗体を用いている。
【0012】
積層電極体6は、一例として、複数の正極板3と複数の負極板4とが第1セパレータ5を介して順次積層された積層型の積層電極体であるとして、以下説明する。
正極板3は、アルミニウム等の正極用金属箔の両面にマンガン酸リチウム等の正極活物質が塗工された後、略矩形に打ち抜かれて形成される。この打ち抜きの際、正極活物質が塗工されていない正極用金属箔も正極板3と一体に打ち抜かれ、当該正極用金属箔は正極板3に接続した正極タブ15となる。
一方、負極板4は、銅等の負極用金属箔の両面にカーボン等の負極活物質が塗工された後、略矩形に打ち抜かれて形成される。この打ち抜きの際、負極活物質が塗工されていない負極用金属箔も負極板4と一体に打ち抜かれ、当該負極用金属箔は負極板4に接続した負極タブ16となる。負極板4のXZ平面における略矩形の寸法は、電池容器の内部に折れ曲がることなく収納される寸法であり、正極板3のXZ平面における略矩形の寸法は、負極板4のXZ平面における略矩形の寸法よりも小さい。従って、図1(a)に示すように、Y方向から見て、正極板3は負極板4の面内に配置される。また、負極タブ16は、正極板3と負極板4とを後述のようにY方向に積層した際に、XZ平面上で正極タブ15と重ならない位置に配置される。
第1セパレータ5は、後述の第2セパレータ13との特性の関係さえ満たせば、樹脂製のセパレータであっても、セラミックセパレータであっても、いわゆる電池に用いることができるセパレータであればよい。ここでは、第1セパレータ5は袋状に形成され、当該袋の内部に正極板3の全面が収められ且つ当該袋の内部から外部へ正極タブ15が飛び出るように当該袋の寸法が設計される。
なお、袋状のセパレータの内部に電極板(正極板3または負極板4)または後述のダミー電極板17、17aの全面が収められ且つ当該袋の内部から外部へ電極タブ(正極タブ15、負極タブ16、またはダミー電極タブ)が飛び出している状態を「内包」という。
【0013】
そして、正極板3より寸法の大きな負極板4から積層を始め、負極板4の上(+Y方向)に上記袋状の第1セパレータ5で包まれた正極板3を積層し、次に、当該第1セパレータ5で包まれた正極板3の上(+Y方向)に負極板4を積層する。この際、積層される複数の負極板4は、それぞれに接続された各々の負極タブ16のXZ平面における位置を揃えて積層される。
これを順次繰り返し、最終的に複数の正極板3と複数の負極板4からなり且つX方向から見たY方向の両端に負極板4が配置される積層電極体6が形成される。
なお、Y方向から見て実質的に同じ位置に揃えられた全ての正極タブ15は、リベット打ち又は溶接等で、正極端子8に電気的に接続される。この際、正極タブ15を直接的に正極端子8に接続してもよいし、正極タブ15と正極端子8との間に金属製の正極用リードを介在させてもよい。また、Y方向から見て実質的に同じ位置に揃えられた全ての負極タブ16は、リベット打ち又は溶接等で、負極端子9に電気的に接続される。この際、負極タブ16を直接的に負極端子9に接続してもよいし、負極タブ16と負極端子9との間に金属製の負極用リードを介在させてもよい。
【0014】
ここで、第1セパレータ5と第2セパレータ13の材質は、上記微短絡が生じて電池容器内部の温度が上昇した際に、第1セパレータ5が溶融または収縮をしてそれ自体の消滅または破壊を引き起こす第1温度よりも低い第2温度で、第2セパレータ13が溶融または収縮をしてそれ自体の消滅または破壊を引き起こす材質がそれぞれ選定される。もちろん、電池1における通常の放電または充電によって電池容器の内部の温度はある程度上昇する場合があるので、この程度の温度(以下、第3温度という)より当該第2温度は高いものである必要がある。
例えば、第1セパレータ5と第2セパレータ13が同一材料の樹脂製のセパレータである場合には、第2セパレータ13の厚み(Y方向)は第1セパレータ5の厚み(Y方向)よりも薄く(例えば半分程度に薄く)設計するとよい。この場合には、第1セパレータ5と第2セパレータ13の材料は、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂のうち、同一のものを用いることができる。第3温度は電池1の配置される環境等にも依存するが、概ね約40℃〜50℃程度であると考えることができるので、この場合には当該ポリエチレンは低密度のポリエチレン(融点は約80℃)であってもよい。
また、第1セパレータ5と第2セパレータ13とを互いに異なる材料で形成する場合には、第2セパレータ13は樹脂製のセパレータであって、第1セパレータ5に比べ融点の低い材質であることが望ましい。この場合には、例えば、第1セパレータ5の材料をポリプロピレン(融点は約160℃)とし、第2セパレータ13の材料を低密度のポリエチレンや高密度のポリエチレン(融点は約140℃)としてもよい。
【0015】
以上の構成により、電池1で上記微短絡が生じて電池容器の内部の温度が急激に上昇し続けた場合、壁面用樹脂12として用いている第2セパレータ13が第1セパレータ5よりも早く溶融等し、積層電極体6のY軸方向の両端に存在する負極板4と電池容器との間に介在した壁面用樹脂12の一部または大部分がなくなってしまうことで、正極電位となっている電池容器に負極板4が「面」で直接的に接触する。これにより、電池容器と当該負極板4との間で電気的に短絡が生じることで結果的に正極板3と負極板4とが短絡することとなるが、電極板間の微短絡のように「点」での短絡ではなく、電池容器と当該負極板4との間の短絡は「面」での短絡となるので当該短絡の電気経路における電気抵抗が低い。従って、「面」での短絡が生じた直後に電気抵抗の高い微短絡している箇所ではなく当該「面」における短絡の箇所をただちに電流が流れるので、微短絡している箇所のさらなる発熱を回避することができる。
さらに、上述のように正極板3と負極板4とが短絡することとなるので、「面」での短絡が生じた後、所定時間後に電池としての機能が失われる。すなわち、ユーザーに傷害等の危険を及ぼす前に自動的に電池の機能を停止させるので、電池の安全性を向上させることができる。
すなわち、特許文献1で述べた無関与金属部材を1つも用いることなく、安全性を向上させることができる。また、壁面用樹脂12は上記壁面と実質的に同じ形状及び寸法であるので負極板4のXZ平面の寸法に比べ相当大きい。従って、特許文献1の構造で生じた上述の位置ズレによる課題も解決できる。
【0016】
なお、図1(b)では、上記構成のほかに、袋状に形成された第2セパレータ13の内部に挿入されて包まれたダミー電極板17が積層体6の内部に挿入された構成も示されている。
このダミー電極板17は、例えば、正極活物質を塗工していない正極用金属箔を上述した正極板3の打ち抜きを行う打ち抜き装置で同様に打ち抜くことで形成すればよい。この場合には、正極活物質を塗工していない正極用金属箔からなるダミー電極板17の寸法及び形状は、XZ平面において正極板3とそれに接続した正極タブ15の寸法及び形状と同一となる。よって、ダミー電極板17にも、正極タブ15に相当する形状(以下、ダミー電極タブという)が存在する。
そして、袋状の第1セパレータ5と同様に形成された袋状の第2セパレータ13の当該袋の内部から外部へダミー電極タブが飛び出るように当該内部にダミー電極板17が収められる。当該袋状の第2セパレータ13に包まれたダミー電極板17は、積層電極体6の内部に配置される複数の袋状の第1セパレータ5に包まれた正極板3の1つ、特に、当該内部の中央付近に配置される袋状の第1セパレータ5に包まれた正極板3の1つと差し替えられて当該正極板3と同位置に配置される。従って、全ての正極タブ15とダミー電極タブは揃えて積層されることになり、また、これらのタブは正極端子8に上述の場合と同様に接続されるので、ダミー電極板17は正極電位となる。
このため、電池1で上記微短絡が生じて電池容器の内部の温度が急激に上昇し続けた場合、積層電極体6の中央付近でもダミー電極板17を包む第2セパレータ13が第1セパレータ5よりも早く溶融等し、ダミー電極板17のY軸方向の両端に存在する2つの負極板4と正極電位となっているダミー電極板17とが「面」で直接的に接触する。これにより、上述した電池容器で生じる「面」での短絡に加え、当該ダミー電極板17での「面」での短絡も生じるため、より早く電池としての機能を失わせることができる。すなわち、上記所定時間を短縮することができる。よって、電池の安全性をより向上させることができる。なお、この場合には、特許文献1で述べた無関与金属部材に相当するダミー電極板17を1つ用いることとなるが、ダミー電極板17は袋状の第2セパレータ13で包まれているので特許文献1の構造で生じた上述の位置ズレによる課題も依然として解決できる。
【0017】
以上の電池1においては、壁面用樹脂12として第2セパレータ13そのものを用いたが、第2セパレータ13の材質であればよいので、壁面用樹脂12にはセパレータの機能はなくともよい。従って、容器本体2の上記壁面に、当該材質の材料、例えばポリエチレン等の樹脂をコーティングしてもよい。この場合には、コーティングであるので、特許文献1の構造で生じた上述の位置ズレはそもそも生じ得ないため、上記課題をより良く解決できる。
【0018】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の電池1aを、図2を用いて説明する。電池1aの電池容器は電池1の電池容器と同様の形状であり、電池1aの正面(XZ平面)からの透視概要図は、図1(a)と同様であるので省略する。図2は、電池1の図1(b)に相当するYZ平面における断面概要図である。また、図2において、図1と同一の構成については、同一番号を付して説明を省略する。
第2実施形態の電池1aの第1実施形態の電池1との相違点の1つは、積層電極体6と同様の構成の複数の積層電極体(ここでは2つの積層電極体を用いるので、理解容易のためそれぞれ6a及び6bと記載)のそれぞれのY方向の両端を、XZ平面において負極板4とそれに接続した負極タブ16の寸法及び形状と実質的に同一または大きく且つその厚み(Y方向における寸法)が張りのある程度に厚い2つのダミー電極板17a(ただし、第1実施形態で示したダミー電極板17と同様に袋状の第2セパレータ13に包まれている)で挟みこんでいる点である。
【0019】
言い換えれば、第1実施形態の電池1と異なり、第2実施形態の電池1aでは、1つの積層電極体の配置されるダミー電極板17aの数は2つである。また、ダミー電極板17aのXZ平面の寸法は正極板3と正極タブ15とからなる寸法ではなく、負極板4と負極タブ16とからなる寸法と実質的に同一またはそれより大きい寸法である(従って、ダミー電極板17aにも、負極タブ16に相当する形状のダミー電極タブが存在する。ただし、後述のように、当該ダミー電極タブが正極タブ15に束ねられて正極端子8に接続されるように配置される)。
さらに、ダミー電極板17aの厚みは、正極板3及び負極板4の厚み(Y方向における寸法)より厚く、それ単体で十分に張りがあって曲げに対する剛性のある厚み、例えば約1mmの厚みである。なお、電池1におけるダミー電極板17と同様、袋状の第2セパレータ13の当該袋の内部から外部へダミー電極タブが飛び出るように当該内部にダミー電極板17aが収められる。
ここで、ダミー電極板17a自体の酸化還元電位がダミー電極板17aに加えられる電位の範囲になく(ただし、ダミー電極板17aの表面に不働体皮膜等が形成されて、ダミー電極板17aがイオン化しない場合は除く)、且つ、当該電位の範囲が電池の機能を発現するためのイオン(例えば、リチウムイオン二次電池の場合はリチウムイオン)をダミー電極板17aが吸蔵する電位でない場合には、ダミー電極板17aの材質は電気抵抗値の小さい導電性の材質であればよい。従って、ダミー電極板17aを上述したように正極板3に電気的に接続する場合には、ダミー電極板17aを上記正極用金属箔の金属で形成してもよい。また、ダミー電極板17aを後述のように負極板4に電気的に接続する場合には、ダミー電極板17aを上記負極用金属箔の金属で形成してもよい。
【0020】
そして、積層電極体6(6a及び6b)のY方向の両端に配置される負極板4のうち、-Y側に配置される負極板4の-Y側へ袋状の第2セパレータ13に包まれたダミー電極板17aを1つ、また、+Y側に配置される負極板4の+Y側へ袋状の第2セパレータ13に包まれたダミー電極板17aを1つ配置して、全ての正極板3及び負極板4がダミー電極板17aのXZ平面における面内に収まるようにこれら2つのダミー電極板17aで積層電極体6を挟みこむ。そして、これら2つのダミー電極板17a同士を図示しない絶縁テープでしっかり接続することで、上述のように正極板3を負極板4の面内に配置した状態を維持して積層電極体6をこれら2つのダミー電極板17aの間に固定する。この際、ダミー電極板17aのダミー電極タブはY方向から見て正極タブ15と重なり且つ当該ダミー電極タブが負極タブ16と接触しないように配置される。従って、全ての正極タブ15と当該ダミー電極タブは揃えて積層されることになり、また、これらのタブは正極端子8に第1実施形態の電池1の場合と同様に接続されるので、ダミー電極板17aは正極電位となる。
なお、このように積層電極体6のY方向の両端に配置されるダミー電極板17aは袋状の第2セパレータ13で包まれているため、第2実施形態の電池1aでは第1実施形態の電池1で設けた壁面用樹脂12を別途設けなくてもよい。すなわち、当該第2セパレータ13が壁面用樹脂12として機能する。
【0021】
この構成により、第1実施形態の電池1と同様に、上記微短絡が生じて電池容器の内部の温度が急激に上昇し続けた場合、ダミー電極板17aを包む第2セパレータ13が第1セパレータ5よりも早く溶融等し、積層電極体6のY方向の両端に存在する2つの負極板4と正極電位となっているダミー電極板17aとが「面」で直接的に接触する。これにより、電池の安全性を向上させることができる。なお、第2セパレータ13が溶融等すると、ダミー電極板17aは電池容器とも接触するが、いずれも同一極性の電位であるので上記安全性の向上に特段の影響はない。
また、ダミー電極板17aが収納容器2へ積層電極体6を挿入する際の挿入ガイドとなり、積層電極体6を保護するので、正極板3や負極板4の折れ曲がり等を防止することができる。従って、電池の故障をより防止することができるので、電池の安全性のみならず電池の性能をもさらに向上させることができる。
さらに、ダミー電極板17aが上述のように「面」で接触することができれば、電解液の循環を良好とするためにダミー電極板17aをY方向に貫通する小孔を複数形成してもよい。この構成によれば、電解液が効果的に循環できるため、電池の性能をさらに向上させることができる。
【0022】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の電池1bを、図3を用いて説明する。電池1bの電池容器は電池1aの電池容器と同様の形状であり、電池1bの正面(XZ平面)からの透視概要図は、図1(a)と同様であるので省略する。図3は、電池1の図1(b)に相当するYZ平面における断面概要図である。また、図3において、第2実施形態の電池1aを示す図2と同一の構成については、同一番号を付して説明を省略する。
第3実施形態の電池1bと第2実施形態の電池1aとの相違点の1つは、電池1aでは絶縁性の樹脂板11の形状と寸法が、上記電池容器の底面と実質的に同じ形状および寸法であるため、複数の積層電極体6aと6bに共通に1つだけ樹脂板11が設けられていたが、電池1bでは、各積層電極体にそれぞれ1つの絶縁性の樹脂板11a(寸法は、積層電極体6のXY平面の寸法と実質的に同一)が配置されている点である。そして、積層電極体6を挟んで配置される袋状の第2セパレータ13に収納された2つのダミー電極板17aのZ方向の端部のうち-Z側の端部に形成された鉤部17b、17cとダミー電極板17aとで当該積層電極板6に対応して配置される樹脂板11aを抱え込む構成としている点である。
【0023】
詳述すると、鉤部17bおよび鉤部17cは、ダミー電極板17aの上記-Z側の端部に電気的に接続される構成である。そして、鉤部17bおよび鉤部17cとでダミー電極板17aと後述の鉤状の形状を維持できるように直接的又は間接的に物理的に接続されている。
図3では、ダミー電極板17aのXY平面における面をZ方向にやや長めに設計及び形成し、当該長めに形成されたダミー電極板17aの部位をY方向に折り曲げて鉤部17bおよび鉤部17cを形成している。ダミー電極板17aから+Y方向に曲げられた上記部位は鉤部17bとなり、ダミー電極板17aから-Y方向に曲げられた上記部位は鉤部17cとなる。これらいずれの鉤部も、YZ平面で見て、ダミー電極板17aと約90°となるよう配置される。当該折り曲げは、ダミー電極板17aを袋状の第2セパレータ13に内包してから行うと、製造がより容易となる。
なお、図3では、鉤部17bおよび鉤部17cはダミー電極板17aの一部を折り曲げて形成された例を示したが、ダミー電極板17aとは別体の金属を溶接等して形成してもよい。
【0024】
そして、鉤部17bの形成されたダミー電極板17aと鉤部17cの形成されたダミー電極板17aとで第2実施形態の電池1aと同様に積層電極体6を挟み込み、且つ、鉤部17bと鉤部17cとで、当該積層電極体6とこれら鉤部との間に配置される樹脂板11aを支える状態とした上で、第2実施形態の電池1aと同様にこれら2つのダミー電極板17a同士を図示しない絶縁テープでしっかり接続し、積層電極体6をこれら2つのダミー電極板17aの間に固定する。また、第2実施形態の電池1aと同様に、全ての正極タブ15とダミー電極タブは正極端子8に接続されるので、ダミー電極板17aは正極電位となる。
【0025】
この構成により、第2実施形態の電池1aと同様に、上記微短絡が生じて電池容器の内部の温度が急激に上昇し続けた場合、ダミー電極板17aを包む第2セパレータ13が第1セパレータ5よりも早く溶融等し、積層電極体6のY方向の両端に存在する2つの負極板4と正極電位となっているダミー電極板17aとが「面」で直接的に接触する。これにより、電池の安全性を向上させることができる。なお、第2セパレータ13が溶融等すると、ダミー電極板17aは電池容器とも接触するが、いずれも同一極性の電位であるので上記安全性の向上に特段の影響はない。
また、ダミー電極板17aが収納容器2へ積層電極体6を挿入する際の挿入ガイドとなり、積層電極体6を保護するので、正極板3や負極板4の折れ曲がり等を防止することができる。特に、本実施形態では、第2実施形態に比べY方向に大きな寸法を持った鉤部17b又は鉤部17cが当該挿入時に収納容器2の壁面に接触することになるので、挿入ガイドとしての機能をより強化することができている。従って、第2実施形態の電池1aに比べ、正極板3や負極板4の折れ曲がり等をより強固に防止することができる。従って、電池の故障をより防止することができるので、電池の安全性のみならず電池の性能をもさらに向上させることができる。
さらに、第2実施形態で述べたダミー電極板17aを貫通する小孔を複数形成するのみならず、樹脂板11aにもZ方向に貫通する小孔を複数形成すれば、電解液がより効果的に循環できるため、第2実施形態で述べた電池1aに比べ、電池の性能をさらに向上させることができる。
その上、上記微短絡が生じた場合には電池容器の壁面よりも電池容器の中央付近が高温となりがちであるが、複数の積層電極体6の間に介在するダミー電極板17a、ここでは積層電極体6aと積層電極体6bとの間に介在する2つのダミー電極板17aが電池容器に接触し、当該中央付近の熱を電池容器外部へ放熱することができる。この際、第2セパレータ13が溶融等して鉤部17b及び鉤部17cが電池容器と接触することになるが、これら鉤部は積層電極体6の自重によって-Z方向に電池容器へ押し付けられるので、より確実且つより効果的に当該放熱を行うことができる。従って、電池の安全性をさらに向上させることができる。
【0026】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の電池1cを、図4を用いて説明する。電池1cの電池容器は電池1の電池容器と同様の形状であり、電池1cの正面(XZ平面)からの透視概要図は、図1(a)と同様であるので省略する。図4は、電池1の図1(b)に相当するYZ平面における断面概要図である。また、図4において、図1と同一の構成については、同一番号を付して説明を省略する。
第4実施形態の電池1cと第1実施形態の電池1との相違点の1つは、電池1では袋状の第1セパレータ5に正極板3が内包されていたが、電池1cでは袋状の第1セパレータ5に正極板3ではなく負極板4が内包される点である。また、電池1cでは、正極板3を袋状のセパレータで内包しない構成とすることに伴い、積層電極体6のY方向の両端に配置される負極板4が袋状の第2セパレータ13に内包される。すなわち、第2セパレータ13は袋状に形成され、当該袋の内部に負極板4の全面が収められ且つ当該袋の内部から外部へ負極タブ16が飛び出るように、当該袋に負極板4が配置される。このため、当該第2セパレータ13が壁面用樹脂12として機能するので、電池1cでは、電池1で配置していた壁面用樹脂12を別途設けなくてもよい。
さらに、電池1と同様、ダミー電極板17が積層電極体6の内部に配置される正極板3の1つ、特に、当該内部の中央付近に配置される正極板3の1つと差し替えられて当該正極板3と同位置に配置される。しかし、電池1では袋状の第2セパレータ13にダミー電極板17が内包されていたが、電池1cではダミー電極板17は袋状のセパレータに内包されていない。また、このため、電池1cではダミー電極板17に直近の2つの負極板4は袋状の第1セパレータ5ではなく袋状の第2セパレータ13に内包される。
なお、電池1と同様、電池1cにおいても、全ての正極タブ15とダミー電極タブは揃えて積層され且つ正極端子8に接続されるので、ダミー電極板17は正極電位となる。
【0027】
この構成により、第1実施形態の電池1と同様に、上記微短絡が生じて電池容器の内部の温度が急激に上昇し続けた場合、負極板4を包む第2セパレータ13が第1セパレータ5よりも早く溶融等し、積層電極体6のY方向の両端に存在する2つの負極板4と正極電位となっている電池容器とが「面」で直接的に接触する。これにより、電池の安全性を向上させることができる。なお、第2セパレータ13が溶融等すると、当該両端に存在する2つの負極板4はそれぞれ正極板3とも接触することになるが、電池容器との接触の方が正極板3との接触に比べ電気抵抗が小さいため、電流は電池容器との接触面に集中して流れる。従って、正極板3と負極板4との接触による発熱の影響は小さく、上記安全性の向上に特段の影響はない。
また、第1実施形態の電池1と同様に、上記微短絡が生じて電池容器の内部の温度が急激に上昇し続けた場合、積層電極体6の中央付近でも負極板4を包む第2セパレータ13が第1セパレータ5よりも早く溶融等し、ダミー電極板17のY軸方向の両端に存在する2つの負極板4と正極電位となっているダミー電極板17とが「面」で直接的に接触する。これにより、上述した電池容器で生じる「面」での短絡に加え、当該ダミー電極板17での「面」での短絡も生じるため、より早く電池としての機能を失わせることができる。すなわち、上記所定時間を短縮することができる。よって、電池の安全性をより向上させることができる。
【0028】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の電池1dを、図5を用いて説明する。電池1dの電池容器は電池1の電池容器と同様の形状であり、電池1dの正面(XZ平面)からの透視概要図は、図1(a)と同様であるので省略する。図5は、電池1の図1(b)に相当するYZ平面における断面概要図である。また、図5において、第2実施形態の電池1aを示す図2と同一の構成については、同一番号を付して説明を省略する。
第5実施形態の電池1dと第2実施形態の電池1aとの相違点の1つは、電池1aでは袋状の第1セパレータ5に正極板3が内包されていたが、電池1dでは袋状の第1セパレータ5に正極板3ではなく負極板4が内包される点である。また、電池1dでは、正極板3を袋状のセパレータで内包しない構成とすることに伴い、複数の積層電極体6(積層電極体6a及び6b)のそれぞれのY方向の両端に配置される負極板4が袋状の第2セパレータ13に内包される。
さらに、電池1aではダミー電極板17aは袋状の第2セパレータ13に内包されていたが、電池1dではダミー電極板17aは袋状のセパレータに内包されない。電池1dでは第1実施形態の電池1で設けた壁面用樹脂12を別途設けないこともあって、複数のダミー電極板17aのうち電池容器に直近のダミー電極板17aは、直接的に電池容器に「面」で接触することになる。ただし、複数の積層電極体6(積層電極体6a及び6b)のそれぞれのY方向の両端に配置される負極板4を内包する第2セパレータ13が壁面用樹脂12として機能する。
なお、次の点は、電池1dにおいても電池1aと同様である。すなわち、積層電極体6のY方向の両端に配置される袋状の第2セパレータ13に包まれた負極板4のうち、-Y側に配置される負極板4の-Y側へダミー電極板17aを1つ、また、+Y側に配置される負極板4の+Y側へダミー電極板17aを1つ配置して、全ての正極板3及び負極板4がダミー電極板17aのXZ平面における面内に収まるようにこれら2つのダミー電極板17aで積層電極体6を挟みこむ。そして、これら2つのダミー電極板17a同士を図示しない絶縁テープでしっかり接続することで、上述のように正極板3を負極板4の面内に配置した状態を維持して積層電極体6をこれら2つのダミー電極板17aの間に固定する。この際、ダミー電極板17aのダミー電極タブはY方向から見て正極タブ15と重なり且つ当該ダミー電極タブが負極タブ16と接触しないように配置される。従って、全ての正極タブ15と当該ダミー電極タブは揃えて積層されることになり、また、これらのタブは正極端子8に接続されるので、ダミー電極板17aは正極電位となる。
【0029】
この構成により、第2実施形態の電池1aと同様に、上記微短絡が生じて電池容器の内部の温度が急激に上昇し続けた場合、負極板4を包む第2セパレータ13が第1セパレータ5よりも早く溶融等し、負極板4と正極電位となっているダミー電極板17aとが「面」で直接的に接触する。これにより、電池の安全性を向上させることができる。
また、ダミー電極板17aが収納容器2へ積層電極体6を挿入する際の挿入ガイドとなり、積層電極体6を保護するので、正極板3や負極板4の折れ曲がり等を防止することができる。従って、電池の故障をより防止することができるので、電池の安全性のみならず電池の性能をもさらに向上させることができる。
さらに、上述のように、電池容器に直近のダミー電極板17aは直接的に電池容器に「面」で接触するので、電池容器は正極電位となる。従って、第1実施形態から第4実施形態で述べた各電池に配置していた導電部14は設けなくてもよい。すなわち、第1実施形態から第4実施形態で述べた各電池よりも部品数を減少させることができるので、製造コストを低減させることができる。なお、当該効果を鑑みない場合には、第2実施形態の電池1aと同様、ダミー電極板17aを袋状の第2セパレータ13に内包してもよい。この場合には、当該第2セパレータ13も壁面用樹脂12として機能する。
【0030】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態の電池1eを、図6を用いて説明する。電池1eの電池容器は電池1の電池容器と同様の形状であり、電池1eの正面(XZ平面)からの透視概要図は、図1(a)と同様であるので省略する。図6は、電池1の図1(b)に相当するYZ平面における断面概要図である。また、図6において、第3実施形態の電池1bを示す図3と同一の構成については、同一番号を付して説明を省略する。
第6実施形態の電池1eと第3実施形態の電池1bとの相違点の1つは、電池1bでは袋状の第1セパレータ5に正極板3が内包されていたが、電池1eでは袋状の第1セパレータ5に正極板3ではなく負極板4が内包される点である。また、電池1eでは、正極板3を袋状のセパレータで内包しない構成とすることに伴い、複数の積層電極体6(積層電極体6a及び6b)のそれぞれのY方向の両端に配置される負極板4が袋状の第2セパレータ13に内包される。
さらに、電池1bでは鉤部17bまたは鉤部17cを備えたダミー電極板17aは袋状の第2セパレータ13に内包されていたが、電池1eでは当該ダミー電極板17aは袋状のセパレータに内包されない。電池1eでは第1実施形態の電池1で設けた壁面用樹脂12を別途設けないこともあって、複数のダミー電極板17aのうち電池容器に直近の鉤部17bまたは鉤部17cを備えたダミー電極板17aは、直接的に電池容器に「面」で接触することになる。ただし、複数の積層電極体6(積層電極体6a及び6b)のそれぞれのY方向の両端に配置される負極板4を内包する第2セパレータ13が壁面用樹脂12として機能する。
なお、次の点は、電池1eにおいても電池1bと同様である。すなわち、鉤部17bの形成されたダミー電極板17aと鉤部17cの形成されたダミー電極板17aとで第2実施形態の電池1aと同様に積層電極体6を挟み込み、且つ、鉤部17bと鉤部17cとで、当該積層電極体6とこれら鉤部との間に配置される樹脂板11aを支える状態とした上で、第2実施形態の電池1aと同様にこれら2つのダミー電極板17a同士を図示しない絶縁テープでしっかり接続し、積層電極体6をこれら2つのダミー電極板17aの間に固定する。また、第2実施形態の電池1aと同様に、全ての正極タブ15とダミー電極タブは正極端子8に接続されるので、ダミー電極板17aは正極電位となる。
【0031】
この構成により、第3実施形態の電池1bと同様に、上記微短絡が生じて電池容器の内部の温度が急激に上昇し続けた場合、第2セパレータ13が第1セパレータ5よりも早く溶融等し、積層電極体6のY方向の両端に存在する2つの負極板4と正極電位となっているダミー電極板17aとが「面」で直接的に接触する。これにより、電池の安全性を向上させることができる。
また、ダミー電極板17aが収納容器2へ積層電極体6を挿入する際の挿入ガイドとなり、積層電極体6を保護するので、第3実施形態の電池1bと同様に、正極板3や負極板4の折れ曲がり等を防止することができる。従って、電池の故障をより防止することができるので、電池の安全性のみならず電池の性能をもさらに向上させることができる。
さらに、鉤部17b及び鉤部17cが積層電極体6の自重によって-Z方向に押し付けられ、第2セパレータ13を介さずに電池容器と直接的に接触しているので、第3実施形態の電池1bよりも、より早く且つより効果的に放熱を行うことができる。従って、電池の安全性をさらに向上させることができる。
その上、上述のように、電池容器に直近のダミー電極板17aは直接的に電池容器に「面」で接触するので、電池容器は正極電位となる。従って、第5実施形態の電池1dと同様、第1実施形態から第4実施形態で述べた各電池に配置していた導電部14は設けなくてもよい。すなわち、第1実施形態から第4実施形態で述べた各電池よりも部品数を減少させることができるので、製造コストを低減させることができる。なお、当該効果を鑑みない場合には、第3実施形態の電池1bと同様、ダミー電極板17aを袋状の第2セパレータ13に内包してもよい。この場合には、当該第2セパレータ13も壁面用樹脂12として機能する。
【0032】
本発明は上述した実施形態及びこれらの組み合わせに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りで種々の変形が可能である。例えば、電池容器の形状は角型として説明したが、円筒型であってもよい。同様に、上記積層電極体6は、複数の正極板と複数の負極板とがそれぞれセパレータを介して順次積層された積層電極体(積層型積層電極体)でもよいし、1つの正極板と1つの負極板とが1つのセパレータを介して積層され且つ巻かれた状態の積層電極体(捲回型積層電極体)でもよい。なお、積層電極体6が積層型積層電極体である場合には、正極板3と負極板4の数は1以上、すなわち適宜複数に設計が可能である。
また、上述した実施形態では、積層電極体6をX方向から見たY方向の両端に負極板4が配置され且つ電池容器を正極電位にすべく導電部14が正極端子8と蓋7との間に接続しているが、電池の材料(活物質、電解液等)に応じて、積層電極体6の当該両端に正極板3を配置し且つ電池容器を負極電位にすべく導電部14を負極端子9と蓋7との間に接続してもよい。
さらに、上述した実施形態では電池容器を導電性として説明したが、ダミー電極板17または17aを用いる構成であれば、電池容器をプラスチック製等の絶縁性の樹脂で形成してもよい。そして、この場合には樹脂10は形成せずともよい。
【符号の説明】
【0033】
1a、1b、1c、1d、1e…電池、
2…収納容器、3…正極板、4…負極板、5…セパレータ(第1セパレータ)、
6、6a、6b…積層電極体、
7…蓋、8…正極端子、9…負極端子、10…樹脂、11…樹脂板、
12…壁面用樹脂、13…第2セパレータ、
14…導電部、15…正極タブ、16…負極タブ、
17、17a…ダミー電極板、
17b、17c…鉤部、



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セパレータを介して第1極性の電位の第1電極板と第2極性の電位の第2電極板とが積層された積層電極体と、
前記積層電極体を密閉して収納し且つ前記第1極性の電位に帯電した電池容器と、
前記電池容器に収納された前記積層電極体と前記電池容器との間に配置される壁面用樹脂とを有し、
前記第1セパレータが溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第1温度よりも、前記壁面用樹脂が溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第2温度は低い温度であり、前記電池容器の内部が前記第2温度以上の温度となった場合に、前記電池容器と前記第2電極板とが接触又は電気的に短絡することを特徴とする電池。
【請求項2】
前記壁面用樹脂は袋状の第2セパレータであり、前記第2電極板は前記袋状の第2セパレータに内包されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1極性の電位の第1ダミー電極板及び第2ダミー電極板と、
前記第2温度で溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第2セパレータと
をさらに有し、
前記積層電極体は、前記第2セパレータを介して前記第1ダミー電極板と前記第2ダミー電極板とで挟まれて前記第1ダミー電極板と前記第2ダミー電極板との間に固定され、前記電池容器の内部が前記第2温度以上の温度となった場合に、前記第1ダミー電極板又は前記第2ダミー電極板と前記第2電極板とが接触することを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記第1ダミー電極板及び前記第2ダミー電極板はそれぞれ鉤部を備え、前記鉤部が前記積層電極体と前記電池容器の間に介在して配置され且つ前記積層電極体の自重によって前記鉤部が前記電池容器に押し付けられることを特徴とする請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記第1極性は正極であり、前記第2極性は負極であり、前記第1電極板は正極板であり、前記第2電極板は負極板であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記第1極性は負極であり、前記第2極性は正極であり、前記第1電極板は負極板であり、前記第2電極板は正極板であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の電池。
【請求項7】
第1セパレータを介して第1極性の電位の第1電極板と第2極性の電位の第2電極板とが積層された積層電極体と、
前記第1極性の電位のダミー電極板と、
前記第2電極板と前記ダミー電極板と間に介在して配置される第1壁面用樹脂と、
前記積層電極体、前記ダミー電極板、及び前記第1壁面用樹脂を密閉して収納する電池容器と
を有し、
前記第1セパレータが溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第1温度よりも、前記第1壁面用樹脂が溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第2温度は低い温度であり、前記電池容器の内部が前記第2温度以上の温度となった場合に、前記第2電極板と前記ダミー電極板とが接触又は電気的に短絡することを特徴とする電池。
【請求項8】
前記第1壁面用樹脂は袋状の第2セパレータであり、前記ダミー電極板を内包することを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記電池容器と前記積層電極体との間に配置され且つ前記第2温度で溶融又は収縮をしてそれ自体の消滅又は破壊を引き起こす第2壁面用樹脂をさらに有し、
前記電池容器の内部が前記第2温度以上の温度となった場合に、前記電池容器と前記第2電極板とが接触又は電気的に短絡することを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項10】
前記第1極性は正極であり、前記第2極性は負極であり、前記第1電極板は正極板であり、前記第2電極板は負極板であることを特徴とする請求項7、請求項8、または請求項9に記載の電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−138287(P2012−138287A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290671(P2010−290671)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】