説明

電波ビームの指向性制御装置および電波式車内侵入検知装置

【課題】本発明は、電波ビームの指向性制御装置に係り、電波ビームの送信範囲内に予期せぬ方向へその電波ビームを反射させ得る反射部材が配置される状況において、その反射部材での電波ビームの反射を抑制することにある。
【解決手段】車室内天井に配設された侵入検知センサ12の有する送受信アンテナ18と、該送受信アンテナ18から送信される電波ビームを車両ガラス方向へ反射し得る金属で形成されたA/Tシフトパネル20などの電波反射部材24との間に存在するその侵入検知センサ12を覆う天井意匠部品16の裏面に、送受信アンテナ18から送信される電波ビームを遮蔽する遮蔽部材26を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波ビームの指向性制御装置および電波式車内侵入判定装置に係り、特に、送受信アンテナから送信される電波ビームの指向性を制御する電波ビームの指向性制御装置、および、その制御装置を用いて車内への人の侵入を検知する電波式車内侵入検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車室内への人の侵入を検知するのに電波を用いた装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置においては、送受信アンテナから車室内の範囲に送信信号としての電波を送信すると共に、その送受信アンテナで対象物に反射される電波を受信信号として受信し、それらの送信信号と受信信号との関係の変化に基づいて車室内への人の侵入を検知することとしている。
【特許文献1】特開平11−296757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の装置においては、上記の如く、電波の送信範囲が車室内の範囲に限定されているが、その電波の送信範囲内に、予期せぬ方向へその電波を反射させ得る電波反射部材が配置されていると、以下に示す不都合が生ずるおそれがある。例えば、送受信アンテナが車室内天井のオーバーヘッドコンソールに配置され、かつ、車室内フロア上にアルミニウムなどの金属で形成されたA/Tシフトパネルが配置される車両では、送受信アンテナから送信された電波が、その送信範囲内に存在するA/Tシフトパネルに反射して、車両のフロントガラスを透過して車室外へ漏れることがある。また、電波の送信範囲内にカップホルダーが存在しそのカップホルダーにアルミ缶が置かれていると、送受信アンテナから送信された電波が、そのアルミ缶に反射して、車両の窓ガラスを透過して車室外へ漏れることがある。このような場合、車室外で動く物体の存在に起因して車室内へ人が侵入したと誤検知するおそれがある。
【0004】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、電波の送信範囲内に予期せぬ方向へその電波を反射させ得る反射部材が配置される状況において、その反射部材での電波の反射を抑制することが可能な電波ビームの指向性制御装置および電波式車内侵入検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、送受信アンテナから送信される電波ビームの指向性を制御する指向性制御装置であって、前記送受信アンテナと該送受信アンテナから送信される電波ビームを所定方向へ反射し得る反射部材との間に配設された、該送受信アンテナから送信される電波ビームを遮蔽する遮蔽手段を備える電波ビームの指向性制御装置により達成される。
【0006】
この態様の発明において、電波ビームを送信する送受信アンテナとその送受信アンテナから送信される電波ビームを所定方向へ反射し得る反射部材との間には、その送受信アンテナから送信される電波ビームを遮蔽する遮蔽手段が配設されている。かかる構成においては、送受信アンテナから送信された電波ビームが反射部材に達する前に遮蔽手段により遮蔽されるため、反射部材での所定方向への電波ビームの反射が抑制される。
【0007】
ところで、上記した電波ビームの指向性制御装置において、前記遮蔽手段は、前記送受信アンテナと前記反射部材との間に存在する該送受信アンテナを覆う被覆手段に配設されていることとしてもよい。
【0008】
この場合、前記遮蔽手段は、前記電波ビームを反射する金属部材又は前記電波ビームを吸収する電波吸収部材であることとすればよい。
【0009】
また、上記した電波ビームの指向性制御装置において、前記遮蔽手段は、前記反射部材の表面側に配設されていることとしてもよい。
【0010】
この場合、前記遮蔽手段は、前記電波ビームを吸収する電波吸収部材であることとすればよい。
【0011】
尚、上記した電波ビームの指向性制御装置において、前記遮蔽手段は、前記被覆手段又は前記反射部材に圧着固定されていることとすればよい。
【0012】
また、上記した電波ビームの指向性制御装置において、前記反射部材が、前記送受信アンテナから送信される前記電波ビームを車両ガラス方向へ反射し得ることとしてもよい。
【0013】
更に、上記した電波ビームの指向性制御装置を備える車両に搭載された電波式車内侵入検知装置によれば、反射部材での所定方向への電波ビームの反射を抑制することで、車内侵入の誤検知を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電波ビームの送信範囲内に予期せぬ方向へその電波ビームを反射させ得る反射部材が配置される状況において、その反射部材での電波ビームの反射を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の第1実施例に用いられる車両の車室内を模式的に表した図を示す。図2は、本実施例の車両の要部拡大図を示す。図3は、本実施例の車両に搭載される電波式車内侵入検知装置の備える侵入検知センサの指向エリアを模式的に表した図を示す。また、図4は、本実施例の電波式車内侵入検知装置の備える指向性制御装置の有する遮蔽部材の取り付け部位周辺の斜視図を示す。
【0017】
本実施例において、車両は、電波(例えば24GHz帯やミリ波帯)を用いて車室内に侵入する人を検知する電波式車内侵入検知装置(以下、単に侵入検知装置と称す)10を搭載している。侵入検知装置10は、侵入検知センサ12を備えている。侵入検知センサ12は、車室内天井の略中央に配設されており、車体14とオーバーヘッドコンソールの樹脂等からなる天井意匠部品16との間の空間に収められている。この点、侵入検知センサ12は、車室内側から見るとその天井意匠部品16により一部又は全部が覆われたものとなっている。
【0018】
侵入検知センサ12は、所定周波数の発振信号を発生する発振回路と、その発振回路に接続する送受信アンテナ18と、を備えている。送受信アンテナ18は、発振回路から出力される発振信号の周波数に従った電波を送信する機能を有していると共に、その反射波を受信する機能を有している。送受信アンテナ18の送信する電波は、樹脂やガラスを透過する一方でアルミニウムなどの金属部材に反射する例えば上記した24GHz帯やミリ波帯の電波ビームである。
【0019】
送受信アンテナ18は、図3に示す如く、車両の車室内の形状に合わせてドアや窓から侵入する人に電波ビームが照射されるように電波の送受信についてその車室内略全域をカバーする指向性を有しており、また、図1に示す如く、その配設位置から車両の左右中心線に沿って斜め下後方へ指向されている。尚、以下では、送受信アンテナ18のアンテナ中心が向く方向を上下角0°及び左右角0°とし、図4に示す如くその電波の指向方向を定義する。
【0020】
侵入検知センサ12は、送受信アンテナ18から送信される電波である送信信号とその送受信アンテナ18に受信される反射波である受信信号とを混合して、その位相差を測定する。車室内で物体が動かないときは、送受信アンテナ18から送信される送信信号と対象物で反射された後に送受信アンテナ18に受信される受信信号との位相差は不変であり一定である一方、車室内で物体が動くときは、その動いた分だけ送信信号と受信信号との位相差は変化する。そこで、侵入検知センサ12は、測定した送信信号と受信信号との位相差の変化度合いに基づいて車室内への人の侵入の有無に応じた検知信号を出力する。
【0021】
侵入検知装置10は、侵入検知センサ12から出力される検知信号に基づいて車室内への人の侵入の有無を検知する。侵入検知装置10は、車両ドア閉鎖時やドアロック時等のセキュリティモードにおいて、侵入検知センサ12を用いて車室内に人が侵入したことを検知した場合、その侵入者を威嚇し、車両周辺の人に車両への不正侵入が生じたことを知らせ、或いは通報装置を介して車両の正規使用者や運転者に自車両への不正侵入が生じたことを知らせるなどの措置を行う。
【0022】
このように、本実施例の侵入検知装置10によれば、車室内天井に配置された侵入検知センサ12の有する送受信アンテナ18から送信される車室内に指向された電波を利用して、その車室内に侵入する不審者を検知することが可能となっている。
【0023】
ところで、上記の如く、侵入検知センサ12の有する送受信アンテナ18は、車室内天井に配置されており、車室内略全域に指向されている。しかし、車両には、図1に示す如く、車室内フロア上にアルミニウムなどの金属プレートで形成されたA/Tシフトパネル20が配置され、また、インパネ上や車室内フロア上にペットボトルやアルミ缶を収容するカップホルダー22が設けられることがある。この場合、それらのA/Tシフトパネル20やカップホルダー22に置かれたアルミ缶が送受信アンテナ18の指向エリア(侵入検知センサ12の検知可能領域)内に存在すると、送受信アンテナ18からの電波がそれらのA/Tシフトパネル20やアルミ缶に反射して、直接に車両のフロントガラスやサイドガラスを透過して車室外へ漏れる事態が生じ得る。かかる事態が生ずると、車室外で動く物体の存在に起因して、漏れた電波が車室外の物体に反射し更にA/Tシフトパネス20等で反射して、その反射波が送受信アンテナ18で受信されるため、車室内への不正侵入が生じていないにもかかわらずその侵入が生じたと誤検知されるおそれがある。
【0024】
そこで、本実施例においては、送受信アンテナ18から送信される電波ビームの送信範囲(指向エリア)内に、A/Tシフトパネル20やカップホルダー22に収容されるアルミ缶などの車両ガラス方向へその電波ビームを反射させ得る電波反射部材が配置され得る状況で、その反射部材での電波ビームの反射が抑制されるようにその指向性を制御することとしている。以下、本実施例の特徴部について説明する。
【0025】
尚、以下では、上記したA/Tシフトパネル20やカップホルダー22に収容されるアルミ缶などの電波反射部材を総じて電波反射部材24とする。また、この電波反射部材24は、送受信アンテナ18のアンテナ中心を基準にして約、上下角−40°〜−70°の方向にかつ左右角−10°〜+10°の方向に存在するものとする。
【0026】
本実施例において、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18から電波ビームが送信される指向エリアのうちの少なくとも電波反射部材24の存在し得るエリア(以下、誤検知要因エリアと称す)には、送受信アンテナ18からの電波ビームの指向性を制御する部品として、図2に示す如く、その電波ビームを遮蔽する遮蔽部材26が設けられている。すなわち、送受信アンテナ18と金属製の電波反射部材24との間には、送受信アンテナ18からの電波ビームを遮蔽する遮蔽部材26が配設されている。
【0027】
具体的には、遮蔽部材26は、侵入検知センサ12を覆っている天井意匠部品16の裏面(車室内面とは反対の侵入検知センサ12側の面)に取り付けられており、車室内天井の略中央に配置されている。遮蔽部材26は、天井意匠部品16の裏面の位置で、送受信アンテナ18側から見て上記の電波反射部材24全体が隠れる程度の大きさ(面積)を有するプレート状の部材であり、その天井意匠部品16の裏面に樹脂等の材質で圧着されて貼り付け固定されている。この圧着は、送受信アンテナ18と上記の電波反射部材24とを結んだ線との交点近傍のプレート中心を避けて、例えば図4に示す如く遮蔽部材26の四隅に施されている。
【0028】
遮蔽部材26は、送受信アンテナ18から送信される電波を反射させることが可能なアルミニウムやSUSなどの金属で形成されており、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18の指向性を制御する部品である。すなわち、遮蔽部材26は、送受信アンテナ18から送信される電波の一部(誤検知要因エリア内のもの)を、車室内フロアやインパネ上の電波反射部材24まで到達させることなく、その放射直後に天井意匠部品16の位置で上方へ向けて反射させる機能を有している。尚、金属製の遮蔽部材26で反射した送受信アンテナ18からの電波は、直接に車両ガラスから車室外へ漏れることはなく、車体天井部や侵入検知センサ12の金属部分などで反射を繰り返すものとなる。
【0029】
図5は、本実施例の遮蔽部材26による効果を説明するための図を示す。尚、図5(A)には送受信アンテナ18の指向性を制御する部品としての遮蔽部材26が設けられていないシステムでの電波送信の様子を、また、図5(B)には送受信アンテナ18の指向性を制御する部品としての遮蔽部材26が設けられている本実施例での電波送信の様子を、それぞれ示す。また、図6は、本実施例の遮蔽部材26による効果を裏付ける実験データを示す。尚、図6(A)〜(C)には、上下角が+15°、−50°、及び−60°であるときの左右角の各位置からフロントガラスへ向けて放射される漏れ電波の強さについて、上記した所定位置に遮蔽部材26が配設されていないシステムでのものを一点鎖線で、上記した所定位置に遮蔽部材26が配設されている本実施例でのものを実線で、それぞれ示す。
【0030】
侵入検知センサ12の送受信アンテナ18と車室内フロアやインパネ上の金属製の電波反射部材24との間に遮蔽部材26が設けられていないと、図5(A)に太実線で示す如く、送受信アンテナ18から送信された電波の一部がその電波反射部材24で反射して直接に車両のフロントガラスから車室外へ漏れるおそれがあり、その結果、フロントガラス近傍の車室外で動く物体(例えばワイパーなど)の存在に起因して車室内への侵入が生じたと誤検知されるおそれがある。
【0031】
これに対して、上記した本実施例の構造においては、送受信アンテナ18と電波反射部材24との間に、具体的には、その間に存在するその侵入検知センサ12を覆う天井意匠部品16の裏面に遮蔽部材26が設けられている。この遮蔽部材26は、送受信アンテナ18から送信される電波ビームのうち誤検知要因エリア(上下角−40°〜−70°かつ左右角−10°〜+10°の範囲)内の電波を遮蔽(反射)する。このため、送受信アンテナ18から送信される電波ビームの誤検知要因エリア内のもの(図5(B)に破線で示す)がその放射直後に天井意匠部品16の位置で上方へ向けて反射されるので、その送信電波が車室内フロアやインパネ上の電波反射部材24まで到達することは回避される。
【0032】
従って、本実施例によれば、送受信アンテナ18から送信される電波ビームの送信範囲(指向エリア)内にその電波ビームを車両ガラス方向へ反射させ得る電波反射部材24が配置され或いは置かれる状況でも、その電波反射部材24によって送受信アンテナ18からの電波ビームが車両ガラス方向へ反射することの無いように指向性を制御することができ、電波反射部材24での送受信アンテナ18からの電波ビームの車両ガラス方向への反射を防止することができる。
【0033】
例えば、送受信アンテナ18からの電波ビームの誤検知要因エリアでないすなわち遮蔽部材26が存在し得ない上下角+15°については、左右角の各位置からフロントガラスへ向けて放射される漏れ電波の強さは、図6(A)に示す如く遮蔽部材26の有無であまり変わらない一方、その誤検知要因エリアであるすなわち遮蔽部材26が存在し得る上下角−50°及び−60°についてはそれぞれ、その漏れ電波の強さが、図6(B)及び(C)に示す如く遮蔽部材26が有るときの方が無いときの方に比べて特にその遮蔽部材26の存在し得る左右角−10°〜+10°の範囲で大きく低下する。
【0034】
このため、本実施例の侵入検知装置10によれば、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18からの電波ビームを車両ガラス方向へ反射し得る電波反射部材24が存在するときにも、その送受信アンテナ18からの電波ビームがその電波反射部材24を介して直接に車両ガラスから車室外へ漏れることはなく、車室外で動く物体の存在に起因した車室内侵入の誤検知を防止することが可能となっている。
【0035】
また、本実施例においては、送受信アンテナ18から送信される電波ビームを遮蔽する遮蔽部材26が、その電波ビームを上方へ向けて反射させるアルミニウムなどの金属製のプレートである。この点、送受信アンテナ18からの電波ビームの指向性を制御する部品としての遮蔽部材26を、後述の第2実施例などで示す電波ビームを吸収する電波吸収部材に比べて安価に構成することが可能であり、また、比較的容易に所望の形状に加工・成形することが可能となっている。
【0036】
また、本実施例においては、上記の如く、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18と金属製の電波反射部材24との間に、その送受信アンテナ18からの電波を反射する遮蔽部材26が設けられるが、その配設位置は、侵入検知センサ12の筐体表面や送受信アンテナ18のドーム面ではなく、その侵入検知センサ12を覆っている車室内天井にあるオーバーヘッドコンソールの天井意匠部品16の裏面である。仮にその遮蔽部材26が侵入検知センサ12の筐体表面に配設されているものとすると、反射波の強度が高くなり、その遮蔽部材26での反射波が侵入検知センサ12の発振回路や送受信アンテナ18に大きな影響を与える可能性が高くなるが、上記した本実施例の構成によれば、侵入検知センサ12と遮蔽部材26とがある程度の大きさの空間を介して離れているので、反射波の強度が低下し、その遮蔽部材26での反射波が侵入検知センサ12の発振回路や送受信アンテナ18に与える影響を極力小さく抑制することができ、これにより、侵入検知センサ12の性能低下を軽減することが可能となっている。
【0037】
また、一般に、オーバーヘッドコンソールと例えばA/Tシフトパネル20などの電波反射部材24との相対位置関係は、車種ごとに変化するものであるので、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18と電波反射部材24との相対位置関係も車種ごとに変化する可能性がある。この点、仮に上記の遮蔽部材26がオーバーヘッドコンソール側の天井意匠部品16ではなく、侵入検知センサ12側に配設されるものとすると、遮蔽部材26の貼り付け固定位置や大きさについて車種ごとに異なる専用の侵入検知センサ12を作り上げることが必要となり、製造上、手間や時間,コストがかかることとなる。
【0038】
これに対して、本実施例においては、上記の如く、遮蔽部材26が侵入検知センサ12側ではない天井意匠部品16に配設されるため、侵入検知センサ12を車種間で共通化することが可能となり、侵入検知センサ12の製造上のコストや時間等を削減することが可能となる。また、この場合にも、オーバーヘッドコンソールの天井意匠部品16は通常、車種ごとに異なるものであるので、その天井意匠部品16に車種に対応した位置や大きさで遮蔽部材26を取り付けるものであっても、製造上過大な負担を要しないものとなる。
【0039】
更に、本実施例においては、送受信アンテナ18からの電波を反射する遮蔽部材26が天井意匠部品16の裏面に圧着されて貼り付け固定されていると共に、その圧着貼り付け固定が天井意匠部品16と同等の樹脂等の材質を用いて送受信アンテナ18と上記の電波反射部材24とを結んだ線との交点近傍のプレート中心を避けて遮蔽部材26の四隅で行われる。この点、上記の遮蔽部材26が天井意匠部品16から剥がれるのを防止することができ、その結果、かかる剥がれに起因した、送受信アンテナ18からの電波を反射させるという遮蔽部材26の機能の低下を防止することができ、送受信アンテナ18からの電波ビームの指向性変化を抑止することができる。
【0040】
また、仮に遮蔽部材26の天井意匠部品16への固定が金属ビスなどを用いて行われるものとすると、送受信アンテナ18から送信される電波ビームが、遮蔽部材26の侵入検知センサ12側に突出する固定部材である金属ビスなどに反射することで、その電波ビームの指向性に与える影響が過大となるおそれがあるが、上記した本実施例の構成によれば、遮蔽部材26の天井意匠部品16への固定が樹脂等の材質を用いた圧着貼り付け固定であるので、送受信アンテナ18からの電波ビームの指向性に与える影響を極力小さく抑制することができ、これにより、侵入検知センサ12の性能低下を軽減することが可能となっている。
【0041】
尚、本実施例においては、上記の如く、送受信アンテナ18からの電波を反射する遮蔽部材26が天井意匠部品16の裏面に取り付けられる。この点、その遮蔽部材26が天井意匠部品16の表面(車室内から見える側の面)に取り付けられる場合と異なり、車室内からの意匠性が損なわれるのを防止しつつ、送受信アンテナ18からの電波の誤検知要因エリア内のものを遮蔽することが可能となっている。
【0042】
ところで、上記の第1実施例においては、侵入検知センサ12及び遮蔽部材26が特許請求の範囲に記載した「指向性制御装置」に、フロントやサイドの車両ガラスの存在する方向が特許請求の範囲に記載した「所定方向」に、A/Tシフトパネル20及びカップホルダー22に収容されたアルミ缶などの電波反射部材24が特許請求の範囲に記載した「反射部材」に、遮蔽部材26が特許請求の範囲に記載した「遮蔽手段」に、天井意匠部品16が特許請求の範囲に記載した「被覆手段」に、それぞれ相当している。
【0043】
尚、上記の第1実施例においては、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18と、車室内フロアやインパネ上のA/Tシフトパネル20やカップホルダー22に収容されるアルミ缶などの車両ガラス方向へその電波ビームを反射させ得る電波反射部材24との間に、送受信アンテナ18からの電波ビームを遮蔽する遮蔽部材26を配設するが、この遮蔽部材26は送受信アンテナ18からの電波ビームを反射するアルミニウムやSUSなどの金属プレートである。
【0044】
これに対して、その送受信アンテナ18と電波反射部材24との間に配設する遮蔽部材26として、上記第1実施例の送受信アンテナ18からの電波ビームを反射するアルミニウムやSUSなどの金属プレートに代えて、送受信アンテナ18からの電波ビーム(24GHz帯やミリ波帯)を吸収することが可能な電波吸収部材を用いることとしてもよい。
【0045】
すなわち、侵入検知センサの送受信アンテナ18と金属製の電波反射部材24との間に電波吸収部材である遮蔽部材26を配設する。そして、この遮蔽部材26を、侵入検知センサ12を覆っている天井意匠部品16の裏面に取り付け、車室内天井の略中央に配置し、送受信アンテナ18から送信される電波の一部(誤検知要因エリア内のもの)を、車室内フロアやインパネ上の電波反射部材24まで到達させることなくその放射直後に天井意匠部品16の位置で吸収させる。尚、この際、遮蔽部材26の天井意匠部品16への取り付け手法は、上記第1実施例と同様の手法であればよい。
【0046】
かかる変形例の構成においては、送受信アンテナ18から送信される電波ビームの誤検知要因エリア内のものがその放射直後に天井意匠部品16の位置で吸収されるので、その送信電波が車室内フロアやインパネ上の電波反射部材24まで到達することは回避されることとなる。従って、上記第1実施例と同様に、送受信アンテナ18から送信される電波ビームの送信範囲(指向エリア)内にその電波ビームを車両ガラス方向へ反射させ得る電波反射部材24が配置され或いは置かれる状況でも、その電波反射部材24によって送受信アンテナ18からの電波ビームが車両ガラス方向へ反射することの無いように指向性を制御することができ、電波反射部材24での送受信アンテナ18からの電波ビームの車両ガラス方向への反射を防止することができ、これにより、車室外で動く物体の存在に起因した車室内侵入の誤検知を防止することが可能となる。
【0047】
また、かかる変形例においては、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18と金属製の電波反射部材24との間に、その送受信アンテナ18からの電波を遮蔽(吸収)する遮蔽部材26が設けられるが、その配設位置は、電波反射部材24よりも送受信アンテナ18により近い、その送受信アンテナ18すなわち侵入検知センサ12を覆っている天井意匠部品16の位置である。送受信アンテナ18から送信される電波は一箇所から放射状に広がっていくものであるが、上記した変形例の構成によれば、遮蔽部材26の配設位置が電波反射部材24により近い構成に比べて、その遮蔽部材26の大きさを小さく抑えることができるので、送受信アンテナ18から電波反射部材24へ送信される電波を吸収させる遮蔽部材26を製造するうえでそのコスト削減を図ることが可能となっている。
【実施例2】
【0048】
上記した第1実施例では、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18と、車室内フロアやインパネ上のA/Tシフトパネル20やカップホルダー22に収容されるアルミ缶などの車両ガラス方向へその電波ビームを反射させ得る電波反射部材24との間に存在する、その侵入検知センサ12を覆う天井意匠部品16の裏面に、送受信アンテナ18からの電波ビームを遮蔽する遮蔽部材26を配設する。これに対して、本発明の第2実施例においては、その送受信アンテナ18からの電波ビームを遮蔽する遮蔽部材100を、車室内フロア上の電波反射部材24であるA/Tシフトパネル20の上面付近に配設することとしている。
【0049】
図7は、本発明の第2実施例に用いられる車両の車室内を模式的に表した図を示す。尚、図7において、上記図1及び図2に示す構成部分と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。すなわち、本実施例において、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18と電波反射部材24であるA/Tシフトパネル20との間には、送受信アンテナ18からの電波ビームを遮蔽する遮蔽部材100が配設されている。
【0050】
この遮蔽部材100は、A/Tシフトパネル20の上方側(表面側)に取り付けられており、送受信アンテナ18側から見て上記の電波反射部材24全体が隠れる程度の大きさ(面積)を有するプレート状の部材である。尚、遮蔽部材100は、例えばそのA/Tシフトパネル20の表面(上面)に樹脂等の材質で圧着されて貼り付け固定されてもよいし、また、そのA/Tシフトパネル20を覆う部材の内側天井部に貼り付け固定されてもよい。また、遮蔽部材100は、送受信アンテナ18から送信される電波ビーム(24GHz帯やミリ波帯)を吸収することが可能な電波吸収部材であり、侵入検知センサ12の送受信アンテナ18の指向性を制御する部品である。遮蔽部材100は、送受信アンテナ18から送信される電波の一部(誤検知要因エリア内のもの)を、車室内フロアやインパネ上の電波反射部材24まで到達させることなく、その放射直後に天井意匠部品16の位置で吸収する機能を有している。
【0051】
このような本実施例の構造においては、車室内上部の送受信アンテナ18から送信される電波ビームの誤検知要因エリア内のものが、車室内をその下部にある電波反射部材24としてのA/Tシフトパネル20へ向けて伝播することとなるが、そのA/Tシフトパネル20に達する前にその上方で吸収されるので、その送信電波が車室内フロア上の電波反射部材24まで到達することは回避される。
【0052】
従って、本実施例においても、上記第1実施例と同様に、送受信アンテナ18から送信される電波ビームの送信範囲(指向エリア)内にその電波ビームをフロント等の車両ガラス方向へ反射させ得る電波反射部材24(A/Tシフトパネル20)が配置される状況でも、その電波反射部材24によって送受信アンテナ18からの電波ビームが車両ガラス方向へ反射することの無いように指向性を制御することができ、電波反射部材24での電波ビームの車両ガラス方向への反射を防止することができ、これにより、車室外で動く物体の存在に起因した車室内侵入の誤検知を防止することが可能となっている。
【0053】
尚、本実施例において、車室内上部の送受信アンテナ18から送信される電波ビームの誤検知要因エリア内のものは、A/Tシフトパネル20の上方にある遮蔽部材100で吸収されるが、その吸収が行われる前までは車室内を有効に伝播する。このため、送受信アンテナ18の指向エリア(すなわち侵入検知センサ12の検知可能領域)を車室内広範囲にわたって確保することができ、これにより、車室内に不審者が侵入しているにもかかわらず車内侵入が生じていないと誤検知されるのを防止することが可能となっている。
【0054】
ところで、上記の第2実施例においては、侵入検知センサ12及び遮蔽部材100が特許請求の範囲に記載した「指向性制御装置」に、電波反射部材24であるA/Tシフトパネル20が特許請求の範囲に記載した「反射部材」に、遮蔽部材100が特許請求の範囲に記載した「遮蔽手段」に、それぞれ相当している。
【0055】
尚、上記の第1及び第2実施例は、車両に搭載される侵入検知装置10に適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、住宅やビルなどに搭載される侵入検知装置10に適用することとしてもよく、また、侵入の有無を検知する侵入検知装置10以外の、送受信アンテナ1から送信される電波ビームの指向性を制御する装置に適用することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施例に用いられる車両の車室内を模式的に表した図である。
【図2】本実施例の車両の要部拡大図である。
【図3】本実施例の車両に搭載される電波式車内侵入検知装置の備える侵入検知センサの指向エリアを模式的に表した図である。
【図4】本実施例の電波式車内侵入検知装置の備える指向性制御装置の有する遮蔽部材の取り付け部位周辺の斜視図である。
【図5】本実施例の遮蔽部材による効果を説明するための図である。
【図6】本実施例の遮蔽部材による効果を裏付ける実験データである。
【図7】本発明の第2実施例に用いられる車両の車室内を模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0057】
10 電波式車内侵入検知装置
12 侵入検知センサ
16 天井意匠部品
18 送受信アンテナ
20 A/Tシフトパネル
22 カップホルダー
24 電波反射部材
26,100 遮蔽部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信アンテナから送信される電波ビームの指向性を制御する指向性制御装置であって、
前記送受信アンテナと該送受信アンテナから送信される電波ビームを所定方向へ反射し得る反射部材との間に配設された、該送受信アンテナから送信される電波ビームを遮蔽する遮蔽手段を備えることを特徴とする電波ビームの指向性制御装置。
【請求項2】
前記遮蔽手段は、前記送受信アンテナと前記反射部材との間に存在する該送受信アンテナを覆う被覆手段に配設されていることを特徴とする請求項1記載の電波ビームの指向性制御装置。
【請求項3】
前記遮蔽手段は、前記電波ビームを反射する金属部材又は前記電波ビームを吸収する電波吸収部材であることを特徴とする請求項2記載の電波ビームの指向性制御装置。
【請求項4】
前記遮蔽手段は、前記反射部材の表面側に配設されていることを特徴とする請求項1記載の電波ビームの指向性制御装置。
【請求項5】
前記遮蔽手段は、前記電波ビームを吸収する電波吸収部材であることを特徴とする請求項4記載の電波ビームの指向性制御装置。
【請求項6】
前記遮蔽手段は、前記被覆手段又は前記反射部材に圧着固定されていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項記載の電波ビームの指向性制御装置。
【請求項7】
前記反射部材が、前記送受信アンテナから送信される前記電波ビームを車両ガラス方向へ反射し得ることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項記載の電波ビームの指向性制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項記載の電波ビームの指向性制御装置を備えることを特徴とする車両に搭載された電波式車内侵入検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−232407(P2007−232407A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51264(P2006−51264)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】