説明

電波モジュール及びその動作モード切替方法。

【課題】電池が無駄に消耗したり誤通信したりすることを未然に回避すると共に、電波モジュールが悪用されることをも未然に回避する。
【解決手段】電波モジュール1は、車両に取付けられていない単体の状態では、磁石14が近付けられることにより、リードスイッチ12がオフ状態からオン状態に切替わり、部分通電動作モードから通電動作モードに移行し、車両に取付けられている状態では、外部から通信起動信号を受信すると、通電動作モードから通信動作モードに移行すると共にリードスイッチ12が耐タンパスイッチとして機能し、車両から取外されて耐タンパスイッチが作動すると、耐タンパ動作を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に取付可能に構成されてなる電波モジュール及びその動作モード切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に取付可能に構成されてなる電波モジュールとして、特許文献1,2に示すものがある。
【特許文献1】特開2004−268677号公報
【特許文献2】特開2005−18808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の電波モジュールでは、例えば車両に取付けられた状態(通常の使用状態)では常に通信可能な状態にある必要があり、また、例えばユーザの誤操作や第三者の悪戯により電源オフされたりしないように、動作電力を供給する電池を含めて各種の電子部品が筐体内に封止される構造となっている。そのため、この種の電波モジュールでは、外部から電源のオンオフを制御するための機構を備えておらず、筐体を封止した後では常に通信可能な状態にあり、例えば製品出荷前の保管期間でも、電池が無駄に消耗したり誤通信したりするという問題があった。
【0004】
また、電波モジュールには当該電波モジュールが取付けられる車両に関する車両情報が記憶されることから、電波モジュールと車両とが1対1に対応する必要があり、例えば第三者の悪戯により電波モジュールが車両から取外された場合であっても、その取外された電波モジュールが悪用されることを回避する対策を講じる必要があった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池が無駄に消耗したり誤通信したりすることを未然に回避することができると共に、電波モジュールが取付対象物から取外された場合であっても、電波モジュールが悪用されることをも未然に回避することができ、セキュリティを高めることができる電波モジュール及びその動作モード切替方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した電波モジュールによれば、磁界が変化することに追従して状態を切替える切替手段が設けられ、部分通電動作モード及び通電動作モードのうち一方の動作モードで動作中に磁界が変化したことに追従して切替手段が状態を切替えると、他方の動作モードに移行するように構成したので、筐体内に電池を封止した後では、例えば製品出荷前の通信検査やデータ書込みなどの必要なときに限ってのみ通電動作モードで動作させ、一方、例えば製品出荷前の保管期間では部分通電動作モードで動作させることにより、電池が無駄に消耗したり誤通信したりすることを未然に回避することができる。
【0007】
また、通電動作モードで動作中に外部から通信起動信号を受信すると、通電動作モードから通信動作モードに移行すると共に切替手段が耐タンパ検出手段として機能し、通信動作モードで動作中に磁界が変化したことに追従して切替手段が状態を切替えて耐タンパ検出手段が作動すると、耐タンパ動作を実施するように構成したので、外部から通信起動信号を受信させることにより、通電動作モードから通信動作モードに移行させると共に切替手段を耐タンパ検出手段として機能させることができ、さらに、取付対象物から取外された場合であっても、磁界が変化すると、例えばメモリ情報を全体消去または一部退避したり通信機能を強制禁止したりする耐タンパ動作を実施することにより、悪用されることをも未然に回避することができ、セキュリティを高めることができる。
【0008】
請求項2に記載した電波モジュールによれば、切替手段が筐体内に封止されるように構成したので、切替手段を外部から保護すると共に隠蔽することができ、切替手段の存在を第三者に知られ難くすることができる。
請求項3に記載した電波モジュールによれば、耐タンパ動作を実施したときに異常と判断し、これ以降の運用を停止または制限するように構成したので、耐タンパ動作を実施した後に悪用されることを確実に回避することができる。
【0009】
請求項4に記載した電波モジュールによれば、外部に設けられた磁界を発生する外部磁界発生手段と切替手段との位置関係が変化することに追従して切替手段が状態を切替えるように構成したので、外部磁界発生手段に対して近付けたり遠ざけたりすることにより、動作モードを切替えることができる。
請求項5に記載した電波モジュールによれば、外部磁界発生手段を覆うように取付対象物に取付可能に構成したので、取付対象物に取付けられた状態で外部磁界発生手段の存在を第三者に知られ難くすることができ、切替手段の存在をも第三者に知られ難くすることができる。
【0010】
請求項6に記載した電波モジュールによれば、磁界を発生する内部磁界発生手段が設けられ、外部に設けられた強磁性体と内部磁界発生手段との位置関係が変化することに追従して切替手段が状態を切替えるように構成したので、強磁性体(例えば鉄板など)に対して近付けたり遠ざけたりすることにより、動作モードを切替えることができる。
【0011】
また、外部磁界発生手段を必要としないので、切替手段の存在を第三者に知られ難くすることができ、また、取付対象物に強磁性体を取付ければ良いので、外部磁界発生手段を取付対象物に取付けることが困難な場合であっても、柔軟に対応することができる。さらに、取付対象物が強磁性体を材料として構成されるものであれば、取付対象物とは別体の強磁性体を不要とすることができ、取付構造を簡素化することができると共に、取付対象物から取外された場合であっても、切替手段の存在を第三者に知られ難くすることができる。
【0012】
請求項7に記載した電波モジュールによれば、内部磁界発生手段が筐体内に封止されているように構成したので、内部磁界発生手段を外部から保護すると共に隠蔽することができ、内部磁界発生手段の存在を第三者に知られ難くすることができ、切替手段の存在をも第三者に知られ難くすることができる。
請求項8に記載した電波モジュールによれば、通電動作モードまたは通信動作モードで動作中に外部から運用開始信号を受信すると、運用開始が可能となり、これ以降の路側機との無線通信を許可するよう構成したので、外部から運用開始信号を受信させることにより、運用を開始させて路側機との無線通信を許可することができる。
【0013】
請求項9に記載した電波モジュールの動作モード切替方法によれば、磁界が変化することに追従して状態を切替える切替手段を設け、部分通電動作モード及び通電動作モードのうち一方の動作モードで動作中に磁界を変化させることで切替手段の状態を切替えて他方の動作モードに移行させ、通電動作モードで動作中に外部から通信起動信号を受信させることで通電動作モードから通信動作モードに移行させると共に切替手段を耐タンパ検出手段として機能させ、通信動作モードで動作中に磁界が変化したことに追従して切替手段が状態を切替えて耐タンパ検出手段が作動したときに耐タンパ動作を実施させる。
【0014】
これにより、上記した請求項1に記載したものと同様にして、筐体内に電池を封止した後では、例えば製品出荷前の通信検査やデータ書込みなどの必要なときに限ってのみ通電動作モードで動作させ、一方、例えば製品出荷前の保管期間では部分通電動作モードで動作させることにより、電池が無駄に消耗したり誤通信したりすることを未然に回避することができる。
【0015】
また、外部から通信起動信号を受信させることにより、通電動作モードから通信動作モードに移行させると共に切替手段を耐タンパ検出手段として機能させることができ、さらに、取付対象物から取外された場合であっても、磁界が変化すると、例えばメモリ情報を全体消去または一部退避したり通信機能を強制禁止したりする耐タンパ動作を実施させることにより、悪用されることをも未然に回避することができ、セキュリティを高めることができる。
【0016】
請求項10に記載した電波モジュールの動作モード切替方法によれば、通電動作モードまたは通信動作モードで動作中に外部から運用開始信号を受信すると、運用開始が可能となり、これ以降の路側機との無線通信を許可するので、上記した請求項9に記載したものと同様にして、外部から運用開始信号を受信させることにより、運用を開始させて路側機との無線通信を許可することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を、車両に取付可能に構成されてなる電波モジュールに適用した第1の実施形態について、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、電波モジュールの横断平面図を示している。電波モジュール1の筐体2は、本体部材3と、この本体部材3に取付けられる蓋部材4とから構成され、その本体部材3は、各種の電子部品を収容する電子部品収容部5と車両に取付けるための取付部6とから構成されている。
【0018】
電子部品収容部5には凹部7が形成されており、その凹部7には回路基板8及び小型電池9(本発明でいう電池)が収容されている。回路基板8は、その表面側(図1では上側)にアンテナ10が形成されていると共に詳しくは後述する各機能ブロックを構成する回路素子11が実装されている。小型電池9は、ターミナル11a,11bを介して回路基板8に接続されている。
【0019】
リードスイッチ12(本発明でいう切替手段、耐タンパ検出手段)は、2個の接点端子12a,12bを有しており、それら2個の接点端子12a,12bがリード線13a,13bを介して回路基板8に接続されている。このリードスイッチ12は、磁気センサから構成されているもので、図1(a)に示すように、磁石14(本発明でいう外部磁界発生手段)が近付けられていなく磁界が存在しない状態(磁界が存在していたとしても弱い状態)では2個の接点端子12a,12bが離間してオフ状態となり、一方、図1(b)に示すように、磁石14が近付けられて強い磁界が存在している状態では2個の接点端子12a,12bが当接してオン状態となるように構成されている。
【0020】
そして、これら回路基板8、小型電池9及びリードスイッチ12などが凹部7に収容された状態で蓋部材4が本体部材3に開封不可の状態で取付られていることにより、これら回路基板8、小型電池9及びリードスイッチ12などが筐体2内に封止されている。蓋部材4には、詳しくは後述するように、電波モジュール1が車両に取付けられるときに、予め車両に取付けられている磁石を収容するための磁石収容部15が形成されている。また、本体部材3の取付部6には、取付けボルトの軸が挿通される挿通穴16が形成されている。
【0021】
尚、上記した構成において、例えば本体部材3と回路基板8との間や小型電池9とリードスイッチ12との間などには、衝撃を緩和するための緩和部材(クッション部材)が介在されていても良い。
【0022】
次に、上記した電波モジュール1の電気的な構成について、図3を参照して説明する。電波モジュール1は、機能ブロックとして、制御部21、スイッチ部22、RF部23、高周波発振部24、不揮発性メモリ25、ウェイクアップ部26、判定部27、低周波発振部28、揮発性メモリ29及び電源部30を備えて構成されている。これら各機能ブロックは、上記した回路素子11により実現されている。
【0023】
電源部30は、小型電池9の電力を各機能ブロックへ動作電力として供給可能に構成されている。判定部27は、電力供給切替信号を電源部30に出力することにより、電源部30から各機能ブロックへの動作電力の供給状態を切替え、電波モジュール1の動作モードを部分通電動作モード、通電動作モード及び通信動作モードの間で切替える。
【0024】
具体的に説明すると、判定部27は、電源部30からリードスイッチ12、判定部27及び揮発性メモリ29のみに動作電力を供給させることにより、電波モジュール1を部分通電動作モードで動作させる(図3中「a」参照)。また、判定部27は、電源部30からリードスイッチ12、判定部27及び揮発性メモリ29に動作電力を供給させることに加えて、電源部30からスイッチ部22、ウェイクアップ部26及び低周波発振部28にも動作電力を供給させることにより、電波モジュール1を通電動作モードで動作させる(図3中「b」参照)。さらに、判定部27は、電源部30からリードスイッチ12、判定部27、揮発性メモリ29、スイッチ部22、ウェイクアップ部26及び低周波発振部28に動作電力を供給させることに加えて、電源部30からRF部23、制御部21、高周波発振部24及び不揮発性メモリ25にも動作電力を供給させることにより、電波モジュール1を通信動作モードで動作させる(図3中「c」参照)。このようにして各機能ブロックに動作電力が供給されることで、電波モジュール1全体の消費電力は、部分通電動作モード、通電動作モード、通信動作モードの順序で大きくなるように設計されている。
【0025】
次に、上記した各機能ブロックの処理について、
(1)電波モジュール1が部分通電動作モードで動作しているとき
(2)電波モジュール1が通電動作モードで動作しているとき
(3)電波モジュール1が通信動作モードで動作しているとき
に分けて順次説明する。尚、揮発性メモリ29は、不揮発性メモリ25に記憶されているメモリ情報をバックアップしたバックアップ情報やセキュリティ情報などをメモリ情報として記憶しておくためのメモリである。
【0026】
(1)電波モジュール1が部分通電動作モードで動作しているとき
リードスイッチ12は、電波モジュール1に磁石14が近付けられると、オフ状態からオン状態に切替わり、オン信号を判定部27に出力する。判定部27は、リードスイッチ12からオン信号を入力すると、電力供給切替信号を電源部30に出力し、電源部30からリードスイッチ12、判定部27、揮発性メモリ29、スイッチ部22、ウェイクアップ部26及び低周波発振部28に動作電力を供給させることにより、電波モジュール1の動作モードを部分通電動作モードから通電動作モードに移行させる。そして、判定部27は、このようにして電波モジュール1の動作モードを部分通電動作モードから通電動作モードに移行させた後に、低周波発振部28から供給される低周波クロックを動作クロックとして動作する。
【0027】
(2)電波モジュール1が通電動作モードで動作しているとき
ウェイクアップ部26は、外部から電波信号をアンテナ10で受信してスイッチ部22を介して入力すると、その入力した電波信号を包絡線検波して検波信号を判定部27に出力する。判定部27は、低周波発振部28から供給される低周波クロックを動作クロックとして動作し、ウェイクアップ部26から検波信号を入力すると、その入力した検波信号を処理して電波モジュール1(制御部21)を起動させるための条件が成立したか否かを判定する。
【0028】
この場合、判定部27は、外部から受信した電波信号が予め規定された信号レベルや信号パターンである旨を検出し、外部から通信起動信号を受信した旨を検出すると、電力供給切替信号を電源部30に出力し、電源部30からリードスイッチ12、判定部27、揮発性メモリ29、スイッチ部22、ウェイクアップ部26、低周波発振部28、RF部23、制御部21、高周波発振部24及び不揮発性メモリ25に動作電力を供給させることにより、電波モジュール1の動作モードを通電動作モードから通信動作モードに移行させる。このとき、判定部27は、電波モジュール1を起動させるための起動信号を制御部21に出力する。
【0029】
これに対して、判定部27は、電波モジュール1を起動させるための条件が成立することなく、リードスイッチ12からオフ信号を入力すると、電力供給切替信号を電源部30に出力し、電源部30からリードスイッチ12、判定部27及び揮発性メモリ29への動作電力の供給を継続させる一方で、電源部30からスイッチ部22、ウェイクアップ部26及び低周波発振部28への動作電力の供給を停止させることにより、電波モジュール1の動作モードを通電動作モードから部分通電動作モードに移行させる(復帰させる)。
【0030】
また、判定部27は、外部から受信した電波信号が予め規定された信号レベルや信号パターンである旨を検出し、外部から運用開始信号を受信した旨を検出すると、運用を開始し、これ以降に路側機との無線通信を許可する。
【0031】
(3)電波モジュール1が通信動作モードで動作しているとき
制御部21は、判定部27から起動信号を入力すると、起動して高周波発振部24から供給される高周波クロックを動作クロックとして動作し、RF部23の通信動作を制御すると共に不揮発性メモリ25に対してメモリ情報(例えば車検証情報など)のデータ読出し・データ書込みを制御する。
【0032】
また、判定部27は、これ以降、リードスイッチ12からオフ信号を入力すると、異常検知信号を制御部21に出力し、制御部21は、判定部27から異常検知信号を入力すると、耐タンパ動作を実施する。具体的には、制御部21は、不揮発性メモリ25や揮発性メモリ29に記憶されているメモリ情報を全体消去または一部退避したり、RF部23の通信機能を強制禁止したりし、これ以降の運用を停止または制限する。また、判定部27は、電波モジュール1の動作モードを通信動作モードから通電動作モードに移行させる旨を禁止するように構成されている。
【0033】
以上に説明した動作により、電波モジュール1は、車両31に取付けられていない単体の状態では、図1に示すように、磁石14が近付けられたり遠ざけられたりすることにより、部分通電動作モードから通電動作モードに移行したり通電動作モードから部分通電動作モードに移行したりして部分通電動作モードと通電動作モードとを切替えて動作する。この場合、外部から通信起動信号を受信する以前では、部分通電動作モードと通電動作モードとを何度でも切替えて動作する。
【0034】
また、電波モジュール1は、図2(a)に示すように、予め車両31(本発明でいう取付対象物)に取付られている磁石32(本発明でいう外部磁界発生手段)を覆うように車両31に取付けられている状態では、外部から通信起動信号を受信することにより、通電動作モードから通信動作モードに移行して通信動作モードで動作する。
【0035】
さらに、電波モジュール1は、図2(b)に示すように、通信動作モードで動作中に車両31から取外されると(車両31に取付けられていない状態では)、耐タンパ動作を実施する。尚、上記した構成では、電波モジュール1は、例えば取付けボルト33の軸33aが本体部材3の挿通穴16及び車両31の挿通穴34に挿通されることにより、車両31に取付けられる。
【0036】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、電波モジュール1において、車両31に取付けられていない単体の状態では、磁石14が近付けられたり遠ざけられたりすることにより、リードスイッチ12が状態を切替え、部分通電動作モードと通電動作モードとを切替えるように構成したので、筐体2内に小型電池9を封止した後では、例えば製品出荷前の通信検査やデータ書込みなどの必要なときに限ってのみ通電動作モードで動作させ、一方、例えば製品出荷前の保管期間では部分通電動作モードで動作させることにより、小型電池9が無駄に消耗したり誤通信したりすることを未然に回避することができる。
【0037】
また、車両31に取付けられている状態では、外部から通信起動信号を受信すると、通電動作モードから通信動作モードに移行すると共にリードスイッチ12が耐タンパスイッチとして機能し、車両31から取外されて耐タンパスイッチが作動すると、例えばメモリ情報を全体消去または一部退避したり通信機能を強制禁止したりする耐タンパ動作を実施するように構成したので、車両31から取外された場合であっても、耐タンパ動作を実施することにより、悪用されることをも未然に回避することができ、セキュリティを高めることができる。
【0038】
また、リードスイッチ12が筐体2内に封止されるように構成したので、リードスイッチ12を外部から保護すると共に隠蔽することができ、リードスイッチ12の存在を第三者に知られ難くすることができる。また、通信動作モードから通電動作モードへの移行を禁止するように構成したので、通信動作モードで一度動作した後に悪用されることを確実に回避することができる。また、磁石32を覆うように車両31に取付けられるように構成したので、車両31に取付けられた状態で磁石32の存在を第三者に知られ難くすることができ、このように磁石32の存在を第三者に知られ難くすることによっても、リードスイッチ12の存在を第三者に知られ難くすることができる。
【0039】
さらに、部分通電動作モード、通電動作モード及び通信動作モードで動作する判定部27が低周波発振部28から供給される低周波クロックを動作クロックとして動作し、一方、通信動作モードのみで動作する制御部21が高周波発振部24から供給される高周波クロックを動作クロックとして動作するように構成したので、部分通電動作モード及び通電動作モードでは低消費電力化を図ることができると共に、通信動作モードでは高速処理を実現することができ、低消費電力化と高速処理とを両立することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図4を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。この第2の実施形態は、筐体内に磁石が封止されている構成である。
すなわち、電波モジュール41の筐体42は、本体部材43と、この本体部材43に取付けられる蓋部材44とから構成され、蓋部材44は、磁石45(本発明でいう内部磁界発生手段)及び継鉄46,47が設けられて構成されている。この場合、リードスイッチ12と蓋部材44との間に磁石45が介在されている。
【0041】
この第2の実施形態では、電波モジュール41は、図4(a)に示すように、車両31に取付けられていない単体の状態では、リードスイッチ12が磁石45からの磁界の影響を受けてオン状態となり、一方、図4(b)に示すように、継鉄46,47が予め車両31に取付られている強磁性体48に当接するように車両31に取付けられている状態では、磁石45、継鉄46,47及び強磁性体48が磁気回路を形成することにより、リードスイッチ12が磁石45からの磁界の影響を受けないオフ状態となる。
【0042】
この場合、判定部27は、上記した第1の実施形態とは反対に、電波モジュール41が部分通電動作モードで動作中にリードスイッチ12からオフ信号を入力すると、電力供給切替信号を電源部30に出力し、電源部30からリードスイッチ12、判定部27、揮発性メモリ29、スイッチ部22、ウェイクアップ部26及び低周波発振部28に動作電力を供給させることにより、電波モジュール41の動作モードを部分通電動作モードから通電動作モードに移行させる。
【0043】
また、判定部27は、電波モジュール41が通電動作モードで動作中に外部から通信起動信号を入力すると、電波モジュール41の動作モードを通電動作モードから通信動作モードに移行させ、さらに、電波モジュール41が通信動作モードで動作中にリードスイッチ12からオン信号を入力すると、異常検知信号を制御部21に出力し、制御部21に耐タンパ動作を実施させる。
【0044】
以上に説明したように第2の実施形態によれば、電波モジュール41において、車両31に取付けられていない単体の状態では、強磁性体が近付けられたり遠ざけられたりすることにより、リードスイッチ12が状態を切替え、部分通電動作モードと通電動作モードとを切替えるように構成したので、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、筐体42内に小型電池9を封止した後では、例えば製品出荷前の通信検査やデータ書込みなどの必要なときに限ってのみ通電動作モードで動作させ、一方、例えば製品出荷前の保管期間では部分通電動作モードで動作させることにより、小型電池9が無駄に消耗したり誤通信したりすることを未然に回避することができる。
【0045】
また、車両31に取付けられている状態では、外部から通信起動信号を受信すると、通電動作モードから通信動作モードに移行すると共にリードスイッチ12が耐タンパスイッチとして機能し、車両31から取外されて耐タンパスイッチが作動すると、耐タンパ動作を実施するように構成したので、上記した第1の実施形態に記載したものと同様にして、車両31から取外された場合であっても、耐タンパ動作を実施することにより、悪用されることをも未然に回避することができ、セキュリティを高めることができる。
【0046】
また、上記した第1の実施形態で説明した磁石14,32を必要としないので、リードスイッチ12の存在を第三者に知られ難くすることができ、また、車両31に強磁性体48を取付ければ良いので、磁石32を車両31に取付けることが困難な場合であっても、柔軟に対応することができる。また、車両31が強磁性体を材料として構成されるものであれば、車両31とは別体の強磁性体48を不要とすることができ、取付構造を簡素化することができると共に、車両31から取外された場合であっても、リードスイッチ12の存在を第三者に知られ難くすることができる。さらに、磁石45が筐体2内に封止されているように構成したので、磁石45を外部から保護すると共に隠蔽することができ、磁石45の存在を第三者に知られ難くすることができ、このように磁石45の存在を第三者に知られ難くすることによっても、リードスイッチ12の存在を第三者に知られ難くすることができる。
【0047】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、図5を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。この第3の実施形態は、筐体内に2個の磁石が封止されている構成である。
すなわち、電波モジュール51の筐体52は、本体部材53と、この本体部材53に取付けられる蓋部材54とから構成され、蓋部材54は、磁石55(本発明でいう内部磁界発生手段)及び継鉄56,57が設けられて構成されている。この場合、リードスイッチ12は、磁石55からの磁界と磁石58(本発明でいう内部磁界発生手段)からの磁界とが互いに相殺されて磁界の影響を受けないような位置に配置されている。
【0048】
この第3の実施形態では、電波モジュール51は、図5(a)に示すように、車両31に取付けられていない単体の状態では、リードスイッチ12が磁石55からの磁界と磁石58からの磁界との影響を受けないオフ状態となり、一方、図5(b)に示すように、継鉄56,57が予め車両31に取付られている強磁性体59に当接するように車両31に取付けられている状態では、磁石55、継鉄56,57及び強磁性体59が磁気回路を形成することにより、リードスイッチ12が磁石58からの磁界の影響を受けてオン状態となる。
【0049】
この場合、判定部27は、上記した第1の実施形態と同様に、電波モジュール51が部分通電動作モードで動作中にリードスイッチ12からオン信号を入力すると、電力供給切替信号を電源部30に出力し、電源部30からリードスイッチ12、判定部27、揮発性メモリ29、スイッチ部22、ウェイクアップ部26及び低周波発振部28に動作電力を供給させることにより、電波モジュール51の動作モードを部分通電動作モードから通電動作モードに移行させる。
【0050】
また、判定部27は、電波モジュール51が通電動作モードで動作中に外部から通信起動信号を入力すると、電波モジュール51の動作モードを通電動作モードから通信動作モードに移行させ、さらに、電波モジュール51が通信動作モードで動作中にリードスイッチ12からオフ信号を入力すると、異常検知信号を制御部21に出力し、制御部21に耐タンパ動作を実施させる。
【0051】
以上に説明したように第3の実施形態によれば、電波モジュール51において、車両31に取付けられていない単体の状態では、強磁性体が近付けられたり遠ざけられたりすることにより、リードスイッチ12が状態を切替え、部分通電動作モードと通電動作モードとを切替えるように構成したので、上記した第1の実施形態や第2の実施形態に記載したものと同様にして、筐体2内に小型電池9を封止した後では、例えば製品出荷前の通信検査やデータ書込みなどの必要なときに限ってのみ通電動作モードで動作させ、一方、例えば製品出荷前の保管期間では部分通電動作モードで動作させることにより、小型電池9が無駄に消耗したり誤通信したりすることを未然に回避することができる。
【0052】
また、車両31に取付けられている状態では、外部から通信起動信号を受信すると、通電動作モードから通信動作モードに移行すると共にリードスイッチ12が耐タンパスイッチとして機能し、車両31から取外されて耐タンパスイッチが作動すると、耐タンパ動作を実施するように構成したので、上記した第1の実施形態や第2の実施形態に記載したものと同様にして、車両31から取外された場合であっても、耐タンパ動作を実施することにより、悪用されることをも未然に回避することができ、セキュリティを高めることができる。
【0053】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。
筐体が封止される構成に限らず、例えばメモリ情報の重要度が高くなければ、筐体が封止されない構成であっても良く、また、磁気センサからなるリードスイッチに限らず、他のセンサからなるスイッチや接点スイッチであっても良い。
【0054】
複数のリードスイッチを設ける構成であっても良く、そのように構成すれば、耐タンパ機能を複雑化することができ、セキュリティをより高めることができる。
電波モジュールを通電動作モードから通信動作モードに移行させるトリガとなる通信起動信号と運用を開始するトリガとなる運用開始信号とが同じ1つの信号であっても良く、そのように構成すれば、通信可能に移行すると同時に運用を開始することができ、運用を開始する前に電波モジュールが悪用(いわゆる成りすましなど)されることを未然に回避することができ、また、運用を開始する前であれば、例えば取替えなどの事情により取付対象物から取外す必要が発生した場合でも、何ら問題なく対応することができる。
電波モジュールが取付けられる取付対象物は、車両に限らず、例えば車両(トラック)などで配送される荷物などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、電波モジュールに磁石が近付けられていない状態を示す図(a)、電波モジュールに磁石が近付けられている状態を示す図(b)
【図2】電波モジュールが車両に取付けられている状態を示す図(a)、電波モジュールが車両に取付けられていない状態を示す図(b)
【図3】電気的な構成を示す機能ブロック図
【図4】本発明の第2の実施形態を示すもので、電波モジュールが車両に取付けられていない状態を示す図(a)、電波モジュールが車両に取付けられている状態を示す図(b)
【図5】本発明の第3の実施形態を示すもので、電波モジュールが車両に取付けられていない状態を示す図(a)、電波モジュールが車両に取付けられている状態を示す図(b)
【符号の説明】
【0056】
図面中、1は電波モジュール、2は筐体、9は小型電池(電池)、12はリードスイッチ(切替手段、耐タンパ検出手段)、14は磁石(外部磁界発生手段)、31は車両(取付対象物)、32は磁石(外部磁界発生手段)、41は電波モジュール、42は筐体、45は磁石(内部磁界発生手段)、48は強磁性体、51は電波モジュール、52は筐体、55,58は磁石(内部磁界発生手段)、59は強磁性体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に封止されている電池から供給される電力を動作電力として、低消費電力動作を行う部分通電動作モード、外部と無線通信が可能となる通電動作モード及び外部と無線通信が可能となると共に耐タンパ機能が有効となる通信動作モードを切替えて動作する電波モジュールであって、
磁界が変化することに追従して状態を切替える切替手段が設けられ、部分通電動作モード及び通電動作モードのうち一方の動作モードで動作中に磁界が変化したことに追従して前記切替手段が状態を切替えたときに他方の動作モードに移行し、通電動作モードで動作中に外部から通信起動信号を受信したときに通電動作モードから通信動作モードに移行すると共に前記切替手段が耐タンパ検出手段として機能し、通信動作モードで動作中に磁界が変化したことに追従して前記切替手段が状態を切替えて前記耐タンパ検出手段が作動したときに耐タンパ動作を実施することを特徴とする電波モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載した電波モジュールにおいて、
前記切替手段が前記筐体内に封止されていることを特徴とする電波モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電波モジュールにおいて、
耐タンパ動作を実施したときに異常と判断し、これ以降の運用を停止または制限することを特徴とする電波モジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載した電波モジュールにおいて、
外部に設けられた磁界を発生する外部磁界発生手段と前記切替手段との位置関係が変化することに追従して前記切替手段が状態を切替えることを特徴とする電波モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載した電波モジュールにおいて、
前記外部磁界発生手段を覆うように取付対象物に取付可能であることを特徴とする電波モジュール。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載した電波モジュールにおいて、
磁界を発生する内部磁界発生手段が設けられ、外部に設けられた強磁性体と前記内部磁界発生手段との位置関係が変化することに追従して前記切替手段が状態を切替えることを特徴とする電波モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載した電波モジュールにおいて、
前記内部磁界発生手段が前記筐体内に封止されていることを特徴とする電波モジュール。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載した電波モジュールにおいて、
通電動作モードまたは通信動作モードで動作中に外部から運用開始信号を受信したときに運用開始が可能となり、これ以降の路側機との無線通信を許可することを特徴とする電波モジュール。
【請求項9】
筐体内に封止されている電池から供給される電力を動作電力として、低消費電力動作を行う部分通電動作モード、外部と無線通信が可能となる通電動作モード及び外部と無線通信が可能となると共に耐タンパ機能が有効となる通信動作モードのいずれかの動作モードを切替えて動作する電波モジュールの動作モードを切替える方法であって、
磁界が変化することに追従して状態を切替える切替手段を設け、部分通電動作モード及び通電動作モードのうち一方の動作モードで動作中に磁界を変化させることで前記切替手段の状態を切替えて他方の動作モードに移行させ、通電動作モードで動作中に外部から通信起動信号を受信させることで通電動作モードから通信動作モードに移行させると共に前記切替手段を耐タンパ検出手段として機能させ、通信動作モードで動作中に磁界が変化したことに追従して前記切替手段が状態を切替えて前記耐タンパ検出手段が作動したときに耐タンパ動作を実施させることを特徴とする電波モジュールの動作モード切替方法。
【請求項10】
請求項9に記載した電波モジュールの動作モード切替方法において、
通電動作モードまたは通信動作モードで動作中に外部から運用開始信号を受信したときに運用開始が可能となり、これ以降の路側機との無線通信を許可することを特徴とする電波モジュールの動作モード切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−241957(P2007−241957A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67492(P2006−67492)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】