説明

電波受信システム,撮像システムおよび電波受信方法

【課題】ノイズ成分の影響を抑えて、アンテナにより受信された受信信号から取得すべき情報を適切に取得できるようにする。
【解決手段】アンテナ10により受信された受信信号で示される画像情報として、それぞれ電波受信装置20における伝送経路を伝送された受信信号および参考信号それぞれの信号レベルの差となる信号成分で示される情報が取得される。この信号成分は、常に参考信号に依存した成分となるが、参考信号の信号レベルが大きく変動しなければ、上記差となる信号成分に対する参考信号の影響は大きく異なることはなく、受信信号で示される情報を反映したものとなる。よって、この信号成分そのものを、画像情報を示す信号成分として取り扱うことにより、受信信号で示される画像情報として適切に取得できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを介して受信した受信信号で示される情報を取得する電波受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナを介して受信した受信信号で示される情報を取得する電波受信システム(画像センサシステム)においては、受信信号を中間波に変換してアンプ(増幅器15)で増幅した後で検波することにより、この受信信号で示される情報を取得するように構成されていることが一般的である(例えば、特許文献1など参照)。
【特許文献1】特開平7−191151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ただ、上述したような電波受信システムでは、受信信号を受信したアンテナ以降の伝送経路において、電波受信システムの温度に依存した信号レベルで所定の周波数成分を有するノイズ成分が発生するため、受信信号が検波される際には、このノイズ成分が重畳した状態の信号を検波してしまうことになる。
【0004】
このとき、受信信号の信号レベルがノイズ成分の信号レベルよりも十分に大きければ影響はないが、受信信号の信号レベルよりもノイズ成分の信号レベルの方が大きい場合、ノイズ成分の信号レベルが大きくなるほど、受信信号を適切に検波することができず、取得すべき情報を適切に取得できなくなってしまう。このことは、対象領域に電波を放射してその反射波を受信するアクティブ型のシステムよりも、撮像対象から放射される電波を受信するパッシブ型のシステムにおいて顕著な問題となる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ノイズ成分の影響を抑えて、アンテナにより受信された受信信号から取得すべき情報を適切に取得できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1に記載の電波受信システムは、アンテナを介して受信した受信信号で示される情報を取得する電波受信システムであって、参考発生手段が参考となる信号成分である参考信号を発生しており、選択出力手段が、アンテナにより受信された受信信号,および,参考発生手段により発生された参考信号それぞれを順に選択して伝送経路へ出力している。
【0007】
そして、情報取得手段が、選択出力手段により伝送経路へ出力される信号に基づいて、受信信号で示される情報を取得する。このとき、情報取得手段は、選択出力手段により選択された信号が受信信号および参考信号である場合にそれぞれ伝送経路へ出力された信号の信号レベルの差を示す信号成分を生成し、該信号成分で示される情報を、前記受信信号で示される情報として取得する。
【0008】
このような構成であれば、受信信号で示される情報として、伝送経路を伝送された受信信号および参考信号それぞれの信号レベルの差となる信号成分で示される情報が取得される。これら受信信号および参考信号は、いずれも伝送経路を伝送することから、その温度に依存した信号レベルで所定の周波数成分を有するノイズ成分が重畳されることとなるが、両者の信号レベルの差をとれば、それぞれに重畳しているノイズ成分が相殺され、そのノイズ成分を大幅に低減させる(または、除去する)ことができる。
【0009】
このとき、両信号の信号レベルの差となる信号成分は、ノイズ成分が相殺されたとしても、受信信号および参考信号それぞれの信号レベルの差であることから、常に参考信号に依存した信号成分となるが、参考発生手段により発生される参考信号の信号レベルが大きく変動しないようにすれば、上記差となる信号成分に対する参考信号の影響は大きく異ならない。そのため、こうして生成される信号成分は、参考信号の影響を除去しなくても、受信信号の信号レベルに応じてその信号レベルが変動する,つまり受信信号で示される情報を反映したものとなる。
【0010】
そのため、例えば、情報取得手段により情報を取得した以降、参考信号の影響があることを前提とした情報処理を行う構成とすることで、両信号の差となる信号成分を受信信号で示される情報として適切に取得することができる。また、両信号の差となる信号成分から参考信号の影響によるオフセット成分を除去することにより、受信信号で示される情報のみを適切に取得することができる。
【0011】
なお、この構成における選択出力手段は、受信信号および参考信号それぞれを選択的に伝送経路に出力する手段であるが、ここで、いずれの信号を出力するかについては、例えば、外部からの指令に従って受信信号および参考信号を伝送経路に出力する、といった構成が考えられる。
【0012】
このためには、選択出力手段を、伝送経路に出力する信号を受信信号および参考信号のいずれかに切り換えるスイッチで構成し、このスイッチに対して外部から切り換えの指示を繰り返し行う切換指示手段を備えるとよい。この構成における切換指示手段としては、選択出力手段をスイッチング素子で構成したとすれば、このスイッチング素子にHレベルとLレベルとが所定周波数で切り替わる信号を入力するように構成し、この信号におけるHレベル(またはLレベル)を切り換えの指示とすればよい。
【0013】
また、情報取得手段は、選択出力手段により選択された信号が受信信号および参考信号である場合にそれぞれ伝送経路へ出力された信号の信号レベルの差を示す信号成分を生成するが、このとき、伝送経路に出力された信号が受信信号であるか参考信号であるかについては、例えば、選択出力手段による選択結果(受信信号または参考信号)や、選択出力手段が受信信号または参考信号を選択するタイミングとしてあらかじめ定められたタイミングなどに基づいて判断するように構成すればよい。
【0014】
また、上述した参考発生手段は、参考となる信号成分を発生する手段であり、例えば、一定の信号レベルでホワイトノイズのような所定の帯域幅をもつ信号や、一定の信号レベルで特定周波数帯域の信号を発生する信号源などで構成することが考えられる。
【0015】
また、参考発生手段としては、請求項2に記載のように、所定の信号レベルとなる参考信号を発生する終端器により構成することも考えられる。
このように構成すれば、参考信号を発生させるために信号源を用いなくてもよいことから、信号源を用いた構成のように、周波数成分を持たせる(適切に発振させる)ためにある程度信号レベルを大きくしなければならないという制限はない。そのため、そのような構成よりも参考信号としての信号レベルを小さく抑えることができる。これにより、アンテナが小さい信号レベルの電波を受信する場合であっても、信号源を用いた構成と比べて、この受信信号の信号レベルと参考信号の信号レベルとの差を小さくすることができる。そのため、最終的に取得される情報における参考信号の影響を小さくすることができ、受信信号で示される信号が参考信号の影響を大きく受けて(例えば、埋もれてしまうなど)適切な情報が取得できなくなる、といったことを防止できる。
【0016】
なお、この構成のように、参考発生手段を終端器により構成した場合、この終端器が温度に依存した信号レベルで参考信号を発生させるものであると、同一の受信信号であっても、温度が異なれば、最終的に異なる内容の情報が取得されてしまう虞がある。
【0017】
そこで、このように、終端器の温度に応じて取得される情報が異なってしまうことを防止するためには、例えば、請求項3に記載のように、前記参考発生手段における終端器の温度をモニタリングする温度モニタ手段と、前記情報取得手段により取得される情報を、前記温度モニタ手段によりモニタリングされている前記終端器の温度に応じて修正する温度修正手段と、を備えるとよい。
【0018】
このように構成すれば、参考信号が終端器の温度に応じて異なるものになったとしても、その温度に応じて最終的に取得される情報が修正されるため、同一の情報を示す受信信号について最終的に取得される情報が、終端器の温度によって異なるものとなってしまう、といったことを防止することができる。
【0019】
この構成における温度修正手段は、情報取得手段により取得される情報を終端器の温度に応じて修正する手段であり、例えば、上述したように、情報を取得した以降に一定のオフセット成分を前提とした情報処理を行う場合であれば、このオフセット成分を示すパラメータを終端器の温度に応じて修正(例えば、増減)するように構成すればよい。また、両信号の差となる信号成分から参考信号によるオフセット成分を除去する場合であれば、このとき除去するオフセット成分を終端器の温度に応じて修正(例えば、増減)するように構成すればよい。
【0020】
また、終端器の温度に応じて取得される情報が異なってしまうことを防止するための別の構成としては、請求項4に記載のように、前記参考発生手段における終端器の温度を一定に保つ恒温手段を備えてもよい。
【0021】
このように構成すれば、終端器の温度が一定に保たれるため、同一の情報を示す受信信号であれば、最終的に取得される情報を常に同一のものとすることができる。
この構成における恒温手段により、終端器の温度を一定に保つためには、例えば、請求項5に記載のように、前記参考発生手段における終端器の温度をモニタリングする温度モニタ手段を備え、前記恒温手段は、前記温度モニタ手段によりモニタリングされる温度が一定になるように、前記終端器を加熱または冷却することで、該終端器の温度を一定に保つように構成するとよい。
【0022】
このように構成すれば、モニタリングされる終端器の温度が一定になるようにフィードバック制御がなされ、これにより、終端器の温度を一定に保つことができる。
また、恒温手段により終端器の温度を一定に保つための別の構成として、請求項6に記載のように、前記終端器の周辺に冷媒となる気体または液体を滞留または循環させることにより、前記終端器の温度を一定に保つように構成することも考えられる。
【0023】
このように構成すれば、終端器が冷媒により冷却されることにより、終端器の温度を一定に保つことができる。
なお、この構成における冷媒としては、水冷のための水,液体窒素,液体ヘリウムなどを採用すること、空冷のために空気などのガスを採用することが考えられる。
【0024】
また、上述したように、参考発生手段における終端器を冷却する構成においては、この終端器が空気の流通経路を有している場合に、ここを流通する空気が結露したり凍結してしまい、終端器が発生する参考信号の周波数帯によっては、その参考信号の伝達が妨げられてしまう虞がある。
【0025】
そこで、このようなことを防止するためには、請求項7に記載のように、前記参考発生手段における終端器が空気の流通経路を有している場合において、該流通経路を、水分が含まれない気体で満たすと共に、該気体が外部と流通しないように封止した構成とするとよい。
【0026】
このように構成すれば、終端器の流通経路が水分を含まない気体で満たされた状態で封止さているため、終端器の冷却により結露や凍結が発生することはなく、これにより、参考信号の伝達が妨げられてしまうことを防止できる。
【0027】
この構成における「水分が含まれない気体」としては、例えば、窒素ガスやヘリウムガスなどを採用することができる。
また、上述したような流通経路が形成された終端器において、この流通経路が参考信号の伝達経路として機能させるために形成されている場合には、例えば、請求項8に記載のように、終端器における流通経路の封止部分は、前記参考信号が透過可能な部材により形成されているとよい。
【0028】
このように構成すれば、終端器における流通経路の封止が参考信号を透過する部材によりなされているため、この部分が参考信号の伝達を妨げることを防止することができる。
この構成における「参考信号を透過する部材」としては、参考信号と同じ周波数帯域の信号を透過させる部材であればよく、例えば、フッ素樹脂(具体的には、テフロン(登録商標)など)や発砲スチロールなどを採用することができる。
【0029】
また、上述したように、終端器の流通経路を、水分が含まれない気体で満たす構成においては、請求項9に記載のように、前記参考発生手段は、前記終端器における前記流通経路に形成された循環孔を介して、該流通経路と外部との間で気体を循環させるように構成するとよい。
【0030】
このように構成すれば、終端器の流通経路内には、水分が含まれない気体が内外で循環されるため、仮に内部に水分を含む気体(空気)が混入してしまったとしても、循環させて終端器外部に排出することができる。また、終端器に気体を導入させるにあたっては、この気体がある程度加圧されるため、外気圧より流通経路内の圧力の方が高くなり、外部の空気,つまり水分を含む気体が流通経路に混入してしまうことを防止できる。
【0031】
また、この構成における循環孔については、例えば、請求項10に記載のように、気体が外部との間で流通する際の流通方向と交差する面の直径が、前記参考信号の波長よりも十分に小さくなるように構成されている、または、請求項11に記載のように、前記終端器に形成された循環孔には、気体が外部との間で流通する際の流通方向と交差する面に沿って、前記参考信号の波長よりも十分に小さい編み目のメッシュ状部材が設けられている、ことが望ましい。
【0032】
これらのように構成すれば、循環孔またはメッシュの編み目が参考信号の波長よりも十分に小さいことから、参考信号が循環孔から外部に漏れてしまったり、その伝達を妨げられてしまうといったことを防止することができる。
【0033】
また、上述したように、参考発生手段における終端器を加熱または冷却する構成においては、請求項12に記載のように、前記参考発生手段は、前記終端器,および,該終端器により発生される参考信号を前記選択出力手段まで伝送させる導波管により構成され、該導波管によって、少なくとも前記恒温手段により加熱または冷却されている前記終端器の温度が前記選択出力手段にまで伝達しない距離だけ、前記終端器と前記選択出力手段とが離されている、といった構成とするとよい。
【0034】
このように構成すれば、終端器と選択出力手段との間が、終端器の温度が選択出力手段にまで伝達しない距離だけ離されているため、終端器の温度が選択出力手段に何らかの悪影響を与えてしまうことを防止することができる。具体的な例を挙げると、終端器を冷却する場合であれば、選択出力手段まで冷却されることで、周辺の空気による結露や凍結が発生し、これにより、選択出力手段の動作を妨げたり、選択出力手段を含めた周辺の構成要素を誤動作または故障させることが想定されるが、終端器と選択出力手段とが離されていれば、このようなことを防止することができる。
【0035】
また、請求項13に記載の撮像システムは、対象領域における一部分から放射される電波をアンテナで受信し、該受信した受信信号で示される情報を、対象領域における一部分の画像情報として取得する電波受信装置と、前記アンテナを、それぞれ対象領域における異なる部分から放射される電波が受信可能となる複数の状態に変位させる状態変位装置と、前記アンテナが前記状態変位装置により複数の状態それぞれに変位させられる過程において、各状態のときに前記電波受信装置により取得された画像情報で示される画像それぞれを配置してなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する画像生成装置と、からなるものである。そして、前記電波受信装置が、請求項1から12のいずれかに記載の電波受信システムにより構成されている。
【0036】
このように構成された撮像システムにおいては、請求項1から12のいずれかに記載の電波受信システムにより得られるのと同様の作用効果を得つつ、電波受信装置により取得された複数の画像情報で示される画像それぞれについて、これら画像が配置されてなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成することができる。
【0037】
また、請求項14に記載の撮像システムは、それぞれ対象領域における異なる部分から放射される電波をアンテナで受信し、該受信した受信信号を検波してなる情報を、対象領域における該当部分の画像情報として取得する複数の電波受信装置と、該電波受信装置それぞれにより取得された画像情報で示される複数の画像それぞれを配列してなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する画像生成装置と、からなるものである。このシステムにおいて、前記電波受信装置は、請求項1から12のいずれかに記載の参考発生手段,選択出力手段および信号検波手段を備えている。そして、前記画像生成装置は、前記電波受信装置それぞれにおける前記選択出力手段に対し、アンテナにより受信された受信信号,および,前記参考発生手段により発生された参考信号のうち、伝送経路に出力させるべき信号の切り替えを指示する切替指示手段と、該切替指示手段により前記受信信号を出力させる旨の切り替えを指示した場合,および,前記参考信号を出力させる旨の切り替えを指示した場合に前記電波受信システムにより取得された信号それぞれについて、該信号における信号レベルの差となる信号レベルの信号成分で示される情報を、前記切替指示手段が切り替えを指示した前記電波受信装置により取得された画像情報として生成する部分画像生成手段と、該部分画像生成手段により生成された前記電波受信装置それぞれについての画像情報を、該電波受信装置が対象領域において電波を受信可能な部分それぞれの画像として配置してなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する全体画像生成手段と、を備えている。
【0038】
このように構成された撮像システムにおいては、請求項1から12のいずれかに記載の電波受信システムにより得られるのと同様の作用効果を得つつ、複数の電波受信装置により取得された画像情報で示される画像それぞれについて、これら画像が配置されてなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成することができる。
【0039】
また、請求項15に記載の電波受信方法は、アンテナにより受信された受信信号,および,参考となる信号成分である参考信号のいずれかを選択的に伝送経路へ出力し、該伝送経路に前記受信信号が出力された場合に該受信信号を検波してなる信号,および,前記伝送経路に前記参考信号が出力された場合に該参考信号を検波してなる信号それぞれの信号レベルの差となる信号成分を、前記受信信号で示される情報として取得する、といった方法である。
【0040】
このような方法による電波受信方法であれば、請求項1から12のいずれかに記載の電波受信システムと同様の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
・ 第1実施形態
(1)全体構成
撮像システム1は、撮像対象から放射される電波として霧中における透過率が可視光よりも高いミリ波帯の電波に基づいて、撮像対象の画像を示す画像情報を生成するシステムである。
【0042】
この撮像システム1は、図1に示すように、電波を受信するアンテナ10、アンテナ10により受信された受信信号(以降、単に「受信信号」という)で示される画像情報を取得する電波受信装置20、この電波受信装置20をアンテナ10の向きが異なる複数の状態に変位させる状態変位装置30、電波受信装置20が状態変位装置30にて変位させられる各状態において電波受信装置20により取得された画像情報に基づいて対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する画像生成装置40などを備えている。
【0043】
アンテナ10は、一次反射板および二次反射板にて反射された電波(本実施形態においてはミリ波帯の電波)をアンテナ素子で受信する単一指向性のカセグレンアンテナとして構成されており、その方向に存在する撮像対象から放射される電波を受信する。
【0044】
電波受信装置20は、所定の信号レベルで参考となる信号(以降、「参考信号」という)を発生する終端器21、アンテナ10により受信された受信信号または終端器21により発生された参考信号をパルスジェネレータ42からの同期信号に合わせて選択的に後段の伝送経路(後述の増幅部23以降の経路側)へ出力するスイッチ22、スイッチ22を介して出力された信号の信号レベルを増幅する増幅部23、増幅部23により増幅された信号における所定の周波数成分(本実施形態においては、ミリ波帯)のみを通過させるバンドパスフィルタ(BPF)24、バンドパスフィルタ24を通過した信号を検波する信号検波部(DET)25などからなる。
【0045】
状態変位装置30は、電波受信装置20における仰角方向(上下方向)の向きを変更するための仰角ステージ32、電波受信装置20における方位角方向(左右方向)の向きを変更するための方位角ステージ34などからなり、画像生成装置40からの指令を受けて、電波受信装置20の状態(向き)を、アンテナ10による電波の受信方向があらかじめ定められた領域(以降、「対象領域」という)全体を走査するように順次変化させることができるように構成されている。
【0046】
画像生成装置40は、所定周波数の同期信号を出力するパルスジェネレータ42、電波受信装置20にて取得された画像情報を示す信号成分から所望の情報を示す信号成分を抽出するロックインアンプ44、ロックインアンプ44により抽出された信号成分で示される画像情報に基づいて対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する画像生成部46などからなる。
【0047】
これらのうち、パルスジェネレータ42は、同期信号として、HレベルとLレベルとが所定の周波数(本実施形態においては、100kHz)で変化する信号を電波受信装置20のスイッチ22,および,ロックインアンプ44それぞれに供給する。こうして、同期信号が供給されたスイッチ22は、同期信号の信号レベルがHレベルとなったとき、後段の伝送経路に出力する信号がアンテナ10により受信された受信信号となるように切り替えを行う一方、同期信号の信号レベルがLレベルとなったとき、後段の伝送経路に出力する信号が終端器21により発生された参考信号となるように切り替えを行う。
【0048】
また、ロックインアンプ44は、電波受信装置20により生成された受信信号を、パルスジェネレータ42からの同期信号と混合させることで周波数変換し、そうして周波数変換した信号から所望の周波数成分のみをフィルタで抽出してなる信号を生成するように構成されたものである。
【0049】
また、画像生成部46は、周知のパーソナルコンピュータからなるものであり、以下に示すように、インストールされたプログラムに従って対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する。
(2)画像生成部46により実行されるプログラム
ここで、画像生成部46が自身にインストールされたプログラムに従って、対象領域全体の画像を示す画像情報を生成するための処理手順を図2に基づいて説明する。
【0050】
このプログラムにおいては、まず、画像生成部46によって、状態変位装置30への電波受信装置20の状態を変位させるための指令(以降、単に「指令」という)の出力を開始,つまりアンテナ10が電波を受信する方向を順次変更する動作が開始される(s110)。このとき、電波受信装置20に指令が出力される周期,つまりアンテナ10が電波を受信する方向を変更する周期は、パルスジェネレータ42によりスイッチ22が切り替えられる周期(T=1/100kHz)よりも、十分に長い周期(例えば、1s)となるように設定されている。
【0051】
次に、画像生成部46によって、電波受信装置20に指令が出力されてから次の指令が出力されるまでの間に、電波受信装置20からロックインアンプ44を介して出力される信号に基づいて、先に出力された指令により電波の受信方向を変更したアンテナ10に受信された受信信号で示される該当部分の画像(単位画像)を示す信号成分が生成される(s120)。ここでは、パルスジェネレータ42により切り替えられるスイッチ22の切替状態それぞれにおいて電波受信装置20から出力される信号(受信信号,参考信号)の信号レベルに基づいて、これら信号レベルの差となる信号成分が、アンテナ10に受信された受信信号で示される領域の画像情報を示す信号成分として生成され、その信号成分(または画像情報)が画像生成部46の内蔵メモリに記憶される。なお、電波受信装置20から出力される信号が、受信信号であるか参考信号であるかについては、スイッチ22が受信信号または参考信号を選択するタイミング,つまり同期信号の周期に基づいて定められたタイミングに従って判断されるように構成されている。
【0052】
このように、各信号の信号レベルの差となる信号成分を生成するのは、スイッチ22から後段の伝送経路において発生するノイズ成分を相殺することを目的としたものである。このノイズ成分は、スイッチ22から後段の伝送経路における温度に依存した信号レベルで発生するが、この伝送経路の温度が電波受信装置20の動作状態などで変動することに起因して信号レベルが不安定なものとなる。そのため、アンテナ10に受信された受信信号および参考信号それぞれの信号レベルの差を示す信号成分を、受信信号で示される領域の画像を示す信号成分とすることで、不安定なノイズ成分を相殺している。
【0053】
ここで、両信号の信号レベルの差となる信号成分は、ノイズ成分が相殺されたとしても、受信信号および参考信号それぞれの信号レベルの差であることから、常に参考信号に依存した信号成分となりうるが、終端器21として参考信号の信号レベルが大きく変動しないものを用いれば、上記差となる信号成分に対する参考信号の影響は大きく異ならない。そのため、こうして生成される信号成分は、参考信号の影響を除去しなくても、受信信号の信号レベルに応じてその信号レベルが変動したもの,つまり受信信号で示される画像情報を反映したものとなる。そのため、本実施形態においては、上記差となる信号成分そのものを、参考信号の影響を受けていることを前提に、該当部分の画像情報を示す信号成分として取り扱っている。
【0054】
そして、上述した単位画像を示す信号成分の生成は、s110で開始された状態変位装置30への指令の出力が終了,つまりアンテナ10による電波の受信方向が対象領域全体を走査するまで繰り返され(s130:NO)、電波受信装置20へ指令を出力する処理が終了したら(s130:YES)、ここまでにs120にて生成された信号成分に基づいて、対象領域全体の画像を示す画像情報が生成される(s140)。ここでは、s120にて順次生成された信号成分で示される画像情報それぞれを、この信号成分が生成された時点におけるアンテナ10による電波の受信方向に合わせて配置した画像を対象領域全体の画像とし、この画像を示す画像情報が生成される。
(3)作用,効果
この撮像システム1では、アンテナ10により受信された受信信号で示される画像情報として、それぞれ電波受信装置20における伝送経路を伝送された受信信号および参考信号それぞれの信号レベルの差となる信号成分で示される情報が取得される。これら受信信号および参考信号には、いずれも電波受信装置20の伝送経路を伝送することに起因して、その温度に依存した信号レベルで所定の周波数成分を有するノイズ成分が重畳されることとなるが、両者の信号レベルの差をとれば、それぞれに重畳しているノイズ成分が相殺され、そのノイズ成分を大幅に低減させる(または、除去する)ことができる。
【0055】
このとき、両信号の信号レベルの差となる信号成分は、ノイズ成分が相殺されたとしても、受信信号および参考信号それぞれの信号レベルの差であることから、常に参考信号に依存した信号成分となるが、参考信号の信号レベルが大きく変動しなければ、上記差となる信号成分に対する参考信号の影響は大きく異ならない。そのため、こうして生成される信号成分は、上述したように、受信信号で示される情報を反映したものとなる。
【0056】
よって、本実施形態においては、上記差となる信号成分そのものを、画像情報を示す信号成分として取り扱うことにより、このような両信号の差となる信号成分を受信信号で示される画像情報として適切に取得することができる。
【0057】
また、電波受信装置20においては、終端器21が所定の信号レベルで参考信号を発生するため、参考信号を発生させるために信号源を用いなくてもよい。そのため、信号源を用いた構成のように、周波数成分を持たせる(適切に発振させる)ためにある程度信号レベルを大きくしなければならないという制限はない。よって、そのような構成よりも参考信号としての信号レベルを小さく抑えることができる。これにより、アンテナ10が小さい信号レベルの電波を受信する場合であっても、信号源を用いた構成と比べて、この受信信号の信号レベルと参考信号の信号レベルとの差を小さくすることができる。そのため、最終的に取得される情報における参考信号の影響を小さくすることができ、受信信号で示される信号が参考信号の影響を大きく受けて(例えば、埋もれてしまうなど)適切な情報が取得できなくなる、といったことを防止できる。
(4)撮像の実例
以下に、上述した撮像システム1を用いて、実際に対象領域全体の画像を示す画像情報を生成した実例を示す。
(4−1)人体を撮像対象とした場合
まず、人体を撮像対象として撮像を行った実例を示す。
【0058】
ここでは、撮像システム1について、電波受信装置20のバンドパスフィルタ24を人体および背景空間から放射される周波数帯(76.5GHz±0.5GHz)の信号が通過するように構成すると共に、アンテナ10から撮像対象までの距離を2.3m,アンテナ10(アンテナ素子)の高さを0.9mとなるように設置した。
【0059】
そして、画像生成部46にインストールされたプログラムに対して、電波受信装置20における方位角方向に±10度,仰角方向に±10度の範囲を対象領域とし、状態変位装置30が、アンテナ10による電波の受信方向が対象領域全体を各方向に0.5度ステップで走査するように電波受信装置20の向きを順次変化させるべく、パラメータを設定した。
【0060】
このような条件に従って、画像生成部46が図2に示す処理を実行し、撮像システム1全体の動作を制御することにより、図3(a)に示す人体を撮像して得られた対象領域全体の画像を図3(b)に示す。なお、図3(b)では、色が濃くなるほど電波受信装置20から出力された信号成分の信号レベルが大きくなることを示している。
【0061】
本実施形態においては、受信信号の信号レベルよりも参考信号の信号レベルの方が高くなっていたため(図4参照)、受信信号の信号レベルが高くなるほど、参考信号の信号レベルとの差となる信号成分の信号レベルが小さくなり、結果として受信信号の信号レベルが高い,つまり放射される電波の信号レベルが高い領域ほど色が濃くなる。
【0062】
この結果からは、撮像対象である人体に対応する領域について、他の領域よりも信号レベルの高い信号が受信できており、本撮像システム1により人体の形状を検出できることが確認された。
(4−2)車両を撮像対象とした場合
次に、車両を撮像対象として撮像を行った実例を示す。
【0063】
ここでは、撮像システム1について、電波受信装置20のバンドパスフィルタ24を車両および背景空間から放射される周波数帯(76.5GHz±0.5GHz)の信号が通過するように構成すると共に、アンテナ10から撮像対象までの距離を7m,アンテナ10(アンテナ素子)の高さを0.73mとなるように設置した。
【0064】
そして、画像生成部46にインストールされたプログラムに対して、電波受信装置20における方位角方向に±10度,仰角方向に±10度の範囲を対象領域とし、状態変位装置30が、アンテナ10による電波の受信方向が対象領域全体を各方向に0.5度ステップで走査するように電波受信装置20の向きを順次変化させるべく、パラメータを設定した。
【0065】
このような条件に従って、画像生成部46が図2に示す処理を実行し、撮像システム1全体の動作を制御することにより、図5(a)に示す車両を撮像して得られた対象領域全体の画像を図5(b)に示す。なお、図5(b)では、色が濃くなるほど電波受信装置20から出力された信号成分の信号レベルが大きくなることは上述したとおりである。
【0066】
この結果からは、撮像対象である車両に対応する領域について、他の領域よりも信号レベルの低い信号が受信されており、本撮像システム1により車両におけるフロントガラス,ボンネットの形状を検出できることが確認された。
【0067】
なお、こうして、撮像された画像のうち、特定の仰角方向におけるフレーム(図6(a)におけるF参照)について、各単位画像に対応する位置(方位角)を横軸とし、各単位画像に対応する電波受信装置20からの出力信号の信号レベルを縦軸とした場合の信号レベルの変化を(図6(b)のa参照)、その横軸についての差分の絶対値に変換(つまり方位角について微分)すると、横軸方向に2カ所のピーク位置(図6(b)のp1,p2参照)が現れたグラフとなる(図6(b)のb参照)。このピーク位置の間隔は、10.5度となっており、アンテナ10と撮像対象との距離が7.4mであることを考えると、1.4m(≒2×7.4×tan(10.5/2))となり、車両における横幅の長さと一致する。
2.第2実施形態
(1)全体構成
撮像システム2は、第1実施形態における撮像システム1と同様の構成であるが、図7に示すように、電波受信装置20において、終端器21の温度を検出する温度検出部26が備えられている以外に、画像生成部46により実行されるプログラムの処理手順が一部異なっているだけであるため、この処理手順についてのみ詳述する。
(2)画像生成部46により実行されるプログラム
ここで、画像生成部46が自身にインストールされたプログラムに従って、対象領域全体の画像を示す画像情報を生成するための処理手順を図8に基づいて説明する。
【0068】
このプログラムにおいては、まず、画像生成部46によって、状態変位装置30への電波受信装置20の状態を変位させるための指令の出力を開始,つまりアンテナ10が電波を受信する方向を順次変更する動作が開始される(s210)。この処理は、図2におけるs110と同様の処理である。
【0069】
次に、画像生成部46によって、電波受信装置20に指令が出力されてから次の指令が出力されるまでの間に、電波受信装置20からロックインアンプ44を介して出力される信号に基づいて、先に出力させた指令により電波の受信方向を変更したアンテナ10に受信された受信信号で示される該当部分の画像(単位画像)を示す信号成分が生成される(s220)。この処理は、図2におけるs120と同様の処理である。
【0070】
次に、温度検出部26により検出される終端器21の温度に応じて、直前のs120にて生成された信号成分を修正する(s222)。終端器21の温度は,装置内部発熱の影響,外気温の変化の影響により変化し,その結果,終端器21により発生される参考信号の信号レベルは変化する。その結果,同一の受信信号であっても最終的に異なる画像情報が取得されることとなってしまう虞がある。そこで、このような温度に応じた信号レベルの変動を補償できるように、このs222では、直前に行われたs220にて生成された信号成分の信号レベルが、温度検出部26により検出される終端器21の温度が高くなるほど低くなるように修正される。
【0071】
そして、上述した単位画像を示す信号成分の生成および修正は、s210で開始された状態変位装置30への指令の出力が終了,つまりアンテナ10による電波の受信方向が対象領域全体を走査するまで繰り返され(s230:NO)、電波受信装置20へ指令を出力する処理が終了したら(s230:YES)、ここまでにs120にて生成された信号成分に基づいて、対象領域全体の画像を示す画像情報が生成される(s240)。この処理は、図2におけるs140と同様の処理である。
(3)作用,効果
このように構成された撮像システム2によれば、第1実施形態と同様の構成により得られる作用,効果の他、以下に示すような作用,効果を得ることができる。
【0072】
例えば、この撮像システム2においては、終端器21から出力される参考信号が終端器21の温度に応じて異なるものになったとしても、その温度に応じて、図8のs220にて生成された信号成分が、同図s222にて修正されるため、終端器21の温度によって、同一の画像情報を示す受信信号について最終的に取得される画像情報が異なるものとなってしまう、といったことを防止することができる。
3.第3実施形態
(1)全体構成
撮像システム3は、第1実施形態の撮像システム1と同様、撮像対象の画像を示す画像情報を生成するシステムである。
【0073】
この撮像システム3は、図9に示すように、それぞれ対象領域における異なる部分から放射される電波を受信する複数のアンテナ12、各アンテナ12に受信された受信信号で示される画像情報をそのアンテナ12に対応する部分の画像情報として取得する複数の電波受信装置50、これら電波受信装置50それぞれにより取得された画像情報で示される複数の画像それぞれを配列してなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する画像生成装置60などを備えている。
【0074】
アンテナ12および電波受信装置50は、図10に示すように、基板14の表面にパターンアンテナとしてアンテナ12が形成され、基板14の裏面に各アンテナ12に対応する電波受信装置50となる回路構成が形成されたモジュールとして構成されており、このモジュールにおける基板14の表面側には、それぞれ対象領域における異なる部分から放射される電波を各アンテナ12へと導くためのレンズ(本実施形態においては、ミリ波レンズ)16が設けられている。
【0075】
電波受信装置50は、第1実施形態における電波受信装置20と同様の構成要素が形成されてなるものである。
画像生成装置60は、第1実施形態と同様のパルスジェネレータ62、各電波受信装置50にて取得された信号に基づいて対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する画像生成部66などからなる。
【0076】
これらのうち、パルスジェネレータ62は、第1実施形態と同様の同期信号を各電波受信装置50(のスイッチ)に供給する。
また、画像生成部66は、周知のパーソナルコンピュータからなるものであり、以下に示すように、インストールされたプログラムに従って対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する。
(2)画像生成部46により実行されるプログラム
ここで、画像生成部66が自身にインストールされたプログラムに従って、対象領域全体の画像を示す画像情報を生成するための処理手順について説明する。
【0077】
このプログラムにおいては、まず、画像生成部66において、対象領域の撮像を行うタイミングとなる(例えば、画像生成部66に対するユーザの操作がある,画像生成部66が外部からの指令を受ける)まで待機状態となる。
【0078】
その後、対象領域の撮像を行うタイミングとなったら、複数の電波受信装置50それぞれから出力される信号に基づいて、各アンテナ12に受信された受信信号で示される画像情報を示す複数の信号成分が生成される。ここでは、図2におけるs120と同様、パルスジェネレータ42により切り替えられるスイッチの切替状態それぞれにおいて電波受信装置50から出力される信号(受信信号,参考信号)の信号レベルに基づいて、これら信号レベルの差となる信号成分が、その電波受信装置50に対応するアンテナ12に受信された受信信号で示される領域の画像情報を示す信号成分として生成される。この信号成分(または画像情報)は、その電波受信装置50に対応するアンテナ12に対応づけられた状態で、画像生成部66の内蔵メモリに記憶される。
【0079】
そして、上述したように生成された信号成分それぞれに基づいて、対象領域全体の画像を示す画像情報が生成される。ここでは、図2におけるs240と同様、各信号成分で示される画像情報それぞれを、その信号成分に対応するアンテナ12に受信された受信信号で示される領域の画像として配置した画像が、対象領域全体の画像を示す画像情報として生成される。
(3)作用,効果
このように構成された撮像システム3によれば、第1実施形態と同様の構成により得られる作用,効果の他、以下に示すような作用,効果を得ることができる。
【0080】
例えば、この撮像システム3においては、複数の電波受信装置50により取得された画像情報で示される画像それぞれについて、これら画像が配置されてなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成することができる。
4.その他の実施形態
その他の実施形態として、例えば、第1実施形態の撮像システム1において、終端器21の温度変化を抑制するために、終端器21の温度をモニタリングする構成要素(第2実施形態の温度検出部26など)、および、この構成要素によりモニタリングされる終端器21の温度が一定となるように、終端器21を冷却または加熱する恒温装置を備え、この恒温装置により終端器21の温度をフィードバック制御するように構成してもよい。
【0081】
このように構成すれば、モニタリングされる終端器21の温度が一定になるようにフィードバック制御がなされ、これにより、終端器21の温度を一定に保つことができる。
また、終端器21の温度変化を抑制するための別の構成として、図11に示すように、終端器21に巻き付けた管(本実施形態では、銅パイプ)72の内部に冷却または加熱した媒体を循環させることにより、終端器21を媒体の温度まで冷却または加熱する恒温装置を備えた構成が考えられる。
【0082】
この構成であれば、第1実施形態における撮像システム1と同様の構成から得られる作用,効果の他、管72を循環する媒体により終端器21の温度が媒体により一定に保たれるため、同一の画像情報を示す受信信号から最終的に取得される画像情報が、終端器21の温度により大きく異なってしまうことがない、といった効果を得ることができる。
【0083】
また、終端器21の温度変化を抑制するための別の構成として、図12に示すように、終端器21を、空気および参考信号の流通経路となる導波管74により、電波受信装置20から離すと共に、この終端器21を冷媒(例えば、水冷のための水,液体窒素,液体ヘリウムなど、空冷のために空気などのガスなど)で満たされたデュアー76に浸け、終端器21の周辺に冷媒を滞留または循環させることにより、終端器21の温度を一定に保つように構成することも考えられる。
【0084】
このように構成すれば、第1実施形態における撮像システム1と同様の構成から得られる作用,効果の他、終端器21が冷媒により冷却されることにより、終端器21の温度を冷媒の温度で一定に保つことができる、といった効果を得ることができる。
【0085】
なお、この構成においては、少なくともデュアー76により冷却されている終端器21の温度が電波受信装置20本体にまで伝達しない距離だけ、終端器21と電波受信装置20本体とが離されていることが望ましく、これであれば、終端器21の温度が電波受信装置20本体の動作に何らかの悪影響を与えてしまうことを防止することができる。具体的な例を挙げると、電波受信装置20本体まで冷却されると、周辺の空気による結露や凍結が発生し、これにより、その動作を妨げたり、誤動作または故障させることが想定されるが、終端器21と電波受信装置20本体とが上述しただけ離されていれば、このようなことを防止することができる。
【0086】
また、この構成においては、上記導波管74を、水分が含まれない気体(例えば、窒素ガスやヘリウムガスなど)で満たすと共に、この気体が外部と流通しないように封止した構成とするとよい。
【0087】
このように構成すれば、終端器21の流通経路が水分を含まない気体で満たされた状態で封止されるため、終端器21の冷却により結露や凍結が発生することはなく、これにより、参考信号の伝達が妨げられてしまうことを防止できる。
【0088】
また、このように導波管74を封止する封止部分は、参考信号が透過可能な透過部材78により形成されているとよい。ここでいう、透過部材78は、参考信号と同じ周波数帯域の信号を透過させる部材であればよく、例えば、フッ素樹脂(具体的には、テフロン(登録商標)など)や発砲スチロールなどを採用することができる。
【0089】
このように構成すれば、導波管74の封止が参考信号を透過する透過部材78によりなされているため、この部分が参考信号の伝達を妨げることを防止することができる。
さらに、上述したように、導波管74を、水分が含まれない気体で満たす構成においては、この導波管74に形成された循環孔を介して、導波管74と外部との間で気体を循環させるように構成するとよい。
【0090】
このように構成すれば、導波管74内には、水分が含まれない気体が内外で循環されるため、仮に内部に水分を含む気体(空気)が混入してしまったとしても、循環させて終端器21および導波管74の外部に排出することができる。また、終端器21に気体を導入させるにあたっては、この気体がある程度加圧されるため、外気圧より導波管74内の圧力の方が高くなり、外部の空気,つまり水分を含む気体が導波管74内部に混入してしまうことを防止できる。
【0091】
なお、この構成における循環孔としては、例えば、気体が外部との間で流通する際の流通方向と交差する面の直径が、参考信号の波長よりも十分に小さくなるように形成された孔とすればよい。また、その循環孔に、気体が外部との間で流通する際の流通方向と交差する面に沿って、参考信号の波長よりも十分に小さい編み目のメッシュ状部材を被せた構成とするとよい。
【0092】
これらのように構成すれば、循環孔またはメッシュの編み目が参考信号の波長よりも十分に小さいことから、参考信号が循環孔から外部に漏れてしまったり、その伝達を妨げられてしまうといったことを防止することができる。
5.変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0093】
例えば、上記実施形態においては、ミリ波帯の電波に基づいて撮像を行うように構成されたものを例示したが、撮像に用いる電波の周波数帯は、ミリ波帯に限られない。
また、上記第1実施形態においては、図2のs120で、受信信号および参考信号それぞれの信号成分の差を示す信号成分そのものを、対象領域における一部分の画像(単位画像)として取り扱うように構成されたものを例示した。しかし、上記差を示す信号成分については、ここから参考信号の影響によるオフセット成分を除去することにより、受信信号で示される情報のみを適切に取得するように構成してもよい。
【0094】
また、上記第1,第2実施形態においては、図2のs120で、電波受信装置20から出力される信号が、受信信号であるか参考信号であるかを判断するにあたり、同期信号の周期に基づいて定められたタイミングに従って判断されるように構成されたものを例示した。しかし、画像生成部46がパルスジェネレータ42からの同期信号を入力し、この同期信号の信号レベルに基づいて、電波受信装置20から出力される信号が受信信号であるか参考信号であるかを判断するように構成してもよい。
【0095】
また、上記第1,第2実施形態においては、アンテナ10が電波受信装置20と一体化された構成とされ、これを状態変位装置30により変位させるように構成されたものを例示した。しかし、アンテナ10そのものを状態変位装置30により変位させるように構成してもよい。
【0096】
また、上記第1,第2実施形態においては、電波受信装置20からロックインアンプ44を介して出力された信号成分に基づいて、画像生成部46側で受信信号および参考信号それぞれの信号レベルの差となる信号成分を生成するように構成されたものを例示した。しかし、このような差となる信号成分を電波受信装置20側で生成するように構成し、このような信号成分に基づいて、画像生成部46側で、単位画像を配列してなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成するように構成してもよい。
【0097】
また、上記第2実施形態においては、図8のs220で、受信信号および参考信号それぞれの信号成分の差を示す信号成分そのものを、終端器21の温度に応じて修正した上で、対象領域における一部分の画像(単位画像)として取り扱うように構成されたものを例示した。しかし、上記差を示す信号成分については、ここから参考信号の影響によるオフセット成分を除去することにより、受信信号で示される情報のみを取得することとし、同図s222では、終端器21の温度に応じて除去すべきオフセット成分を修正(例えば、増減)するように構成してもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、電波受信装置20の終端器21が参考信号を発生するように構成されたものを例示した。しかし、参考信号を発生する構成としては、例えば、一定の信号レベルでホワイトノイズのような所定の帯域幅をもつ信号や、一定の信号レベルとで特定周波数帯域の信号を発生する信号源そのもので構成してもよい。
【0099】
また、上記その他の実施形態においては、終端器21の温度変化を抑制するために、終端器21を冷媒で満たされたデュアー76に浸ける構成を例示した。しかし、終端器21の温度変化を抑制するための構成としては、例えば、終端器21にヒートシンクを取り付けるように構成してもよい。
6.本発明との対応関係
以上説明した実施形態において、電波受信装置20および画像生成装置40は、本発明における電波受信システムおよび撮像システムである。
【0100】
また、電波受信装置20,50の終端器21は、本発明における参考発生手段であり、スイッチ22は、本発明における選択出力手段であり、温度検出部26は、本発明における温度モニタ手段である。
【0101】
また、画像生成装置40,60の画像生成部46,60は、本発明における情報取得手段および部分画像生成手段,全体画像生成手段であり、パルスジェネレータ42,62は、切替指示手段である。
【0102】
また、図2,図8のs120,s220は、本発明における部分画像生成手段であり、同図s140,s240は、本発明における全体画像生成手段である。
また、図8におけるs222は、本発明における温度修正手段である。
【0103】
また、上述した恒温装置および管72(図11参照),デュアー76(図12参照)は、本願発明における恒温手段である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】第1実施形態における撮像システムを示すブロック図
【図2】第1実施形態において画像生成部により実行される処理手順を示すフローチャート
【図3】撮像対象および撮像対象を撮像した結果を示す図(その1)
【図4】受信信号,参考信号それぞれの信号レベルを示す図
【図5】撮像対象および撮像対象を撮像した結果を示す図(その2)
【図6】撮像結果を示す図および撮像結果を分析したグラフ
【図7】第2実施形態における撮像システムを示すブロック図
【図8】第2実施形態において画像生成部により実行される処理手順を示すフローチャート
【図9】第3実施形態における撮像システムを示すブロック図
【図10】第3実施形態における撮像システムの一部分を示す図
【図11】終端器の温度変化を抑制するため構成(その1)
【図12】終端器の温度変化を抑制するため構成(その2)
【符号の説明】
【0105】
1…撮像システム、2…撮像システム、3…撮像システム、10…アンテナ、12…アンテナ、14…基板、15…増幅器、20…電波受信装置、21…終端器、22…スイッチ、23…増幅部、24…バンドパスフィルタ、26…温度検出部、30…状態変位装置、32…仰角ステージ、34…方位角ステージ、40…画像生成装置、42…パルスジェネレータ、44…ロックインアンプ、46…画像生成部、50…電波受信装置、60…画像生成装置、62…パルスジェネレータ、66…画像生成部、72…管、74…導波管、76…デュアー、78…透過部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを介して受信した受信信号で示される情報を取得する電波受信システムであって、
参考となる信号成分である参考信号を発生する参考発生手段と、
アンテナにより受信された受信信号,および,前記参考発生手段により発生された参考信号それぞれを順に選択して伝送経路へ出力する選択出力手段と、
該選択出力手段により前記伝送経路へ出力される信号に基づいて、前記受信信号で示される情報を取得する情報取得手段と、を備えており、
該情報取得手段は、前記選択出力手段により選択された信号が前記受信信号および前記参考信号である場合に前記伝送経路に出力された信号それぞれの信号レベルの差を示す信号成分を生成し、該信号成分で示される情報を、前記受信信号で示される情報として取得する、ように構成されている
ことを特徴とする電波受信システム。
【請求項2】
前記参考発生手段は、所定の信号レベルとなる参考信号を発生する終端器により構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電波受信システム。
【請求項3】
前記参考発生手段における終端器の温度をモニタリングする温度モニタ手段と、
前記情報取得手段により取得される情報を、前記温度モニタ手段によりモニタリングされている前記終端器の温度に応じて修正する温度修正手段と、を備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の電波受信システム。
【請求項4】
前記参考発生手段における終端器の温度を一定に保つ恒温手段を備えている
ことを特徴とする請求項2に記載の電波受信システム。
【請求項5】
前記参考発生手段における終端器の温度をモニタリングする温度モニタ手段を備え、
前記恒温手段は、前記温度モニタ手段によりモニタリングされる温度が一定になるように、前記終端器を加熱または冷却することで、該終端器の温度を一定に保つように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電波受信システム。
【請求項6】
前記恒温手段は、前記終端器の周辺に冷媒となる気体または液体を滞留または循環させることにより、前記終端器の温度を一定に保つように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電波受信システム。
【請求項7】
前記参考発生手段における終端器が空気の流通経路を有している場合において、該流通経路を、水分が含まれない気体で満たすと共に、該気体が外部と流通しないように封止した構成とされている
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電波受信システム。
【請求項8】
前記終端器における流通経路の封止部分は、前記参考信号が透過可能な部材により形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の電波受信システム。
【請求項9】
前記参考発生手段は、前記終端器における前記流通経路に形成された循環孔を介して、該流通経路と外部との間で気体を循環させるように構成されている
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の電波受信システム。
【請求項10】
前記終端器に形成された循環孔は、気体が外部との間で流通する際の流通方向と交差する面の直径が、前記参考信号の波長よりも十分に小さくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の電波受信システム。
【請求項11】
前記終端器に形成された循環孔には、気体が外部との間で流通する際の流通方向と交差する面に沿って、前記参考信号の波長よりも十分に小さい編み目のメッシュ状部材が設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載の電波受信システム。
【請求項12】
前記参考発生手段は、前記終端器,および,該終端器により発生される参考信号を前記選択出力手段まで伝送させる導波管により構成され、該導波管によって、少なくとも前記恒温手段により加熱または冷却されている前記終端器の温度が前記選択出力手段にまで伝達しない距離だけ、前記終端器と前記選択出力手段とが離されている
ことを特徴等する請求項5から11のいずれかに記載の電波受信システム。
【請求項13】
対象領域における一部分から放射される電波をアンテナで受信し、該受信した受信信号で示される情報を、対象領域における一部分の画像情報として取得する電波受信装置と、
前記アンテナを、それぞれ対象領域における異なる部分から放射される電波が受信可能となる複数の状態に変位させる状態変位装置と、
前記アンテナが前記状態変位装置により複数の状態それぞれに変位させられる過程において、各状態のときに前記電波受信装置により取得された画像情報で示される画像それぞれを配置してなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する画像生成装置と、からなり、
前記電波受信装置が、請求項1から12のいずれかに記載の電波受信システムにより構成されている
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項14】
それぞれ対象領域における異なる部分から放射される電波をアンテナで受信し、該受信した受信信号を検波してなる情報を、対象領域における該当部分の画像情報として取得する複数の電波受信装置と、
該電波受信装置それぞれにより取得された画像情報で示される複数の画像それぞれを配列してなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する画像生成装置と、からなり、
前記電波受信装置は、請求項1から12のいずれかに記載の参考発生手段,選択出力手段および信号検波手段を備えており、
前記画像生成装置は、
前記電波受信装置それぞれにおける前記選択出力手段に対し、アンテナにより受信された受信信号,および,前記参考発生手段により発生された参考信号のうち、伝送経路に出力させるべき信号の切り替えを指示する切替指示手段と、
該切替指示手段により前記受信信号を出力させる旨の切り替えを指示した場合,および,前記参考信号を出力させる旨の切り替えを指示した場合に前記電波受信システムにより取得された信号それぞれについて、該信号における信号レベルの差となる信号レベルの信号成分で示される情報を、前記切替指示手段が切り替えを指示した前記電波受信装置により取得された画像情報として生成する部分画像生成手段と、
該部分画像生成手段により生成された前記電波受信装置それぞれについての画像情報を、該電波受信装置が対象領域において電波を受信可能な部分それぞれの画像として配置してなる対象領域全体の画像を示す画像情報を生成する全体画像生成手段と、を備えている
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項15】
アンテナにより受信された受信信号,および,参考となる信号成分である参考信号のいずれかを選択的に伝送経路へ出力し、
該伝送経路に前記受信信号が出力された場合に該受信信号を検波してなる信号,および,前記伝送経路に前記参考信号が出力された場合に該参考信号を検波してなる信号それぞれの信号レベルの差となる信号成分を、前記受信信号で示される情報として取得する
ことを特徴とする電波受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−322833(P2006−322833A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146757(P2005−146757)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】