説明

電波吸収体

【課題】マイクロ波帯において優れた電波吸収性能を有し、耐候性、不燃性、汚染回復性と高光拡散反射特性を備えた安価な電波吸収体を提供する。
【解決手段】表面層に磁器質の大型セラミック板、中間層に無機質パウダーを主体に導電性材料及び軟磁性材料、還元鉄及び、熱硬化性樹脂の混合分散後に熱プレス硬化して得られた板、裏面層に金属質からなる板、又は箔から構成された事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や道路、橋梁、トンネル等の構造物において使用される電波吸収体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ITS(Intelligent Transport Systems)構想のインフラ整備として、その通信には電波が用いられるが、道路環境において橋梁、トンネル、立体交差等、電波の反射する環境が多く、そのノイズの為、通信障害になるところが多い。その改善として電波吸収材が必要となってくる。その材料は、電波吸収性能だけでなく耐久性や安全性が必要条件であり、耐候性、不燃性、汚染回復性が特に求められている。
【0003】
道路沿いに用いる電波吸収体の設置には汚れが必然的に発生し、定期的に洗浄する工事が入るが、汚染物に道路粉塵物が多いことから、表面材に傷が付き易く、最も硬い磁器質のタイルに釉薬が施されたものが耐久性のある材料として用いられている。しかしながら、タイルは、長い間にその接着に異変が生じて、剥がれ等が起きる現象が出ている。 さらに、タイルは一般的に小型(100mm×200mm等)であるため繋ぎ目が多くなるが、その繋ぎ目の目地が汚れ、特に光の反射性が必要となるトンネル内壁では光反射にマイナスになってしまう。このようなことから、表面材が磁器質で大型のタイルのものであれば、従来の長所を生かしつつ、欠点を極力抑える事が可能になる。
【0004】
例えば特許公開公報「特開2004-132065号」には、電波吸収機能を発揮可能であると共に、不燃性で、光を多く反射し、且つ構造物に設けるのに適した電波吸収用タイルが示されている。しかしトンネル内壁では、このタイルは小型で目地が多くなるため、目地部の吸水、摩滅等で吸収性能が変化したり、光を反射する上で全体として性能が出しにくく、また、表面がホーローであるため、磁器質のタイル釉薬面より軟らかく傷が付きやすく、コスト面でも不利となることが予想される。
【0005】
また特許公開公報「特開2004-003272号」には、トンネル内壁に設置する耐火性能を備えた電波吸収体が示されている。これは表面がケイカル板、裏面が導電性酸化チタン等となっており、実用的には、ケイカル板が吸水によって電波吸収性能に変化をもたらす懸念、高価な導電性酸化チタン等、性能、コスト的にも合わない点が出てくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点を解決しようとするもので、マイクロ波帯における通信障害ノイズに対して優れた電波吸収性能を有し、耐候性、不燃性、汚染回復性と高光拡散反射特性を備えた安価な電波吸収体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電波吸収体は、表面層に釉薬を施した磁器質の大型セラミック板、中間層に無機質パウダーを主体に導電性材料及び軟磁性材料、還元鉄及び熱硬化性樹脂の混合分散後に熱プレス硬化して得られた板、裏面層に金属質からなる板、ネット又は箔、ラミネート紙、金属蒸着フィルム等の金属体を有する面材から構成することを特徴とする。
【0008】
前記表面層に釉薬を施した磁器質セラミック板は、比誘電率が5.0以下で、大きさとして、幅200mm以上、長さ600mm以上の大型で、JIS-A-5209に規定する陶磁器質タイルに相当する材料である。
【0009】
前記表面層に釉薬を施した磁器質セラミック板は、表面の光拡散反射率65%以上のものである。
【0010】
前記中間層は、無機質の重量が75%以上で、空隙率20%以下のものである。
【0011】
前記中間層の無機質パウダーは、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム等分散混合に適した材料の単体又は、複数混合体で構成されるもので粒径が20ミクロン以下の粒度分布が揃っている物が望ましい。
【0012】
前記導電性パウダーは、グラファイトに代表される導電性カーボンである。
【0013】
前記軟磁性パウダーは、ソフトフェライトで、Mn-Zn系、Ni-Zn系が代表例である。
【0014】
前記還元鉄パウダーは、Feが98WT%以上、Cが0.05WT%以下のものである。
【0015】
前記熱硬化性樹脂は、フェノール、エポキシ、ウレタン等でパウダー状または液状のものである。
【0016】
前記裏面層の金属板として、アルミニウム、ステンレス、銅、又は亜鉛鍍金鋼板、亜鉛アルミ合金鍍金鋼板、その他金属の汎用の板である。
【0017】
前記裏面層の金属体を有する面材として、アルミニウム箔、アルミ箔ラミネート紙、アルミ蒸着紙・フィルム等金属の箔や、蒸着膜を有するものである。
【0018】
表面層と中間層、中間層と裏面層の間は、自己接着又は、接着剤を用いてなすものであり、接着剤には両面テープ又は、シート、熱融着を含む。
その接着層は、厚さが0..5mm以下のものである。
【0019】
表面層、中間層、裏面層の3層をなした時、表面層への入射角度が0〜45度の範囲内において、周波数5.8GHzで円偏波の電波に対する反射量が−20dB以下であるもの、また、45〜80度において−15dB以下であるものである。これは、図1、図2からわかる。図1は円偏波アンテナで角度を10度ずつずらして測定したときの周波数と反射量との関係グラフで、角度が増す毎にその最大吸収ピークが高い周波数側にずれて行くことがわかる。図2は、図1の結果から、5.8GHzにおける反射量を読み取って角度毎の反射量のグラフにした斜入射特性である。これは中日本高速道路株式会社の規定するトンネル内装用基準[0〜45度まで]ー20dB以下、[45度〜]ー15dB以下を十分満足する結果となっている。
【0020】
表面層、中間層、裏面層の3層構造において燃焼性試験機(コーンカロリーメーター発熱性試験機)において不燃材料ランクに合格するものである。試験結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【発明の効果】
【0022】
本発明の3層の構成からなる電波吸収体は、できるだけ汎用の材料を用いてその構成により電波吸収性能を得ることができたものであるため、安価な電波吸収体を提供できる。
本発明の電波吸収体は、表面が大型のセラミック板であるため、小型タイルのような電波吸収性能と高光拡散反射性能を不利にする目地部割合が極力抑えられ、優れた吸収性能を発揮出来るとともに、トンネル内壁で利用される場合、表面が汚れた後の洗浄により高光拡散反射性能を回復でき、耐久性のあるものとなり、より実用性の高いものとなる。 また大型化によって施工の効率化も図れる。
本発明の電波吸収体は、不燃性、汚染回復性、対候性、耐久性に優れ、大型であるため、電波吸収が必要で、不燃性が求められる建物や構造物においてもその利点から大いに利用が見込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の表面層に使われる表面材は、トンネル内部壁の曲面に対応出来る幅と施工効率を考慮して、幅200mm以上、長さ600mm以上の大型セラミック板を条件に用い、JIS-A-5209(陶磁器質タイル)に適合する磁器質のもので、光拡散反射率65%以上とする。
【0024】
中間層は、無機質成分が75WT%以上で構成され、その中に導電性粉末密度として0.1〜0.3、軟磁性粉末0.05〜0.3、還元鉄0.15〜0.45が入る。それ以外の無機質成分は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム等の一般的な安価で安定無機粉末であれば、どれでも良い。
【0025】
中間層の無機質成分以外は、フェノール、ウレタン、エポキシ等の熱硬化タイプの有機質樹脂粉末で構成する。
【0026】
製造には、無機質成分、有機質成分を正確に秤り取り、ボールミル等で十分に混合処理後に、その計算量を再度秤り取り、金型に均一になるように充填し、熱プレス成形する。その成型板の空隙率は20%以下の物を条件とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】入射角度と反射量の周波数特性を示したグラフ。
【図2】周波数5.8GHzにおける入射角度と反射量の関係を示したグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層に釉薬を施した大型磁器質セラミック板、中間層に無機質パウダーを主体に導電性材料パウダー、軟磁性パウダー、還元鉄パウダー及び熱硬化性樹脂の構成物からなるものを分散混合後に熱プレス硬化した板、裏面層に金属板又は金属体を有する面材で構成された3層の物で、板状をなし、電波吸収性能、耐候性、不燃性、汚染回復性、高光拡散反射性能を具備する電波吸収体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−217929(P2007−217929A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38569(P2006−38569)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000126333)株式会社アイジー技術研究所 (138)
【Fターム(参考)】