説明

電波指向性制御装置

【課題】一般ユーザが、無線LANにおける電子機器の使用状態に応じて、アンテナの指向性を簡単に制御することができる電波指向性制御装置を提供することを課題とする。
【解決手段】アンテナRaを有するルータRの周囲に設置される電波指向性制御装置1であって、電波遮蔽性および電波吸収性を有する背面部11とルーバ12とを備え、背面部11とルーバ12とは相対位置関係が変化可能に連結されているように構成した。具体的には、背面部11とルーバ12はヒンジHを介して回動可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等のアンテナにおいて、電波の指向性を制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各パソコンやプリンタを相互接続するネットワーク構築において、無線LAN(Local Aria Network)が急速に普及しつつある。無線LANは、無線通信でデータの送受信を行うLANであり、ケーブルによる配線等の制約がないため、特に注目されている。しかし、この無線LANに使用される電子機器の内蔵アンテナは、ほとんどが無指向性であるため、オフィスビルやマンションなど世帯数の多い所で無線LANを使用する場合、アンテナから放射される電波が近隣の部屋などにも漏洩する。このため、セキュリティ面から何らかの対策が必要となっている。従来、その指向性を制御する種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1では、その公報の図1に示される通り、キャビティ(15)の内部中央に、アンテナ素子(12)を配置するとともに、このアンテナ(12)の周りに、コ字型形状導体を配置したアンテナが記載されている。このアンテナでは、そのような構造により双指向性が得られている。
【0004】
特許文献2では、立設された無指向性のアンテナの周囲に反射器を配置したアンテナ装置が記載されている。反射器は、アンテナの上方に向けて延出する着脱自在な屋根部を有し、この屋根部を適宜装着することで、垂直面内の放射パターン(指向性)を斜め下向きにするものである。
【0005】
特許文献3では、エレメント部(アンテナ素子)に、筒状の反射器を差し込んで構成されるアンテナが記載されている。このアンテナでは、筒状の反射器を適宜回動させることで、特定方向への指向性を形成している。
【特許文献1】特開2002−305410号公報(請求項1、段落0044〜0047、図1)
【特許文献2】特開2004−282316号公報(請求項1、段落0018〜0023、図2)
【特許文献3】特開2002−325010号公報(請求項1、段落0030,0031、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来技術においては、電子機器の内蔵アンテナから放射される電波の指向性の変更を目的として、反射器を着脱したり反射器の向きを変えたりするには、電子機器の外装を取り外さなければ、作業をすることができなかった。したがって、一般ユーザが、個々の電子機器の使用状態に応じて、内蔵される電波の指向性を制御することは困難であった。
【0007】
そこで、このような問題を解決すべく、一般ユーザが、無線LANにおける電子機器の使用状態に応じて、電波の指向性を簡単に制御することができる電波指向性制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、請求項1に係る発明は、アンテナを有する電子機器の周囲に設置される電波指向性制御装置であって、電波遮蔽性を有する第1遮蔽部と第2遮蔽部とを備え、前記第1遮蔽部と前記第2遮蔽部とは相対位置関係が変化可能に連結されていることを特徴とする。
【0009】
このような電波指向性制御装置によれば、電子機器の周囲に設置されることで、その電子機器が有するアンテナは、放射する電波を第1遮蔽部と第2遮蔽部とにより遮蔽され、その指向性が変えられる。また、第1遮蔽部と第2遮蔽部の相対位置関係が変えられることで、アンテナから放射される電波は、遮蔽される方向や範囲が変えられ、所定の方向に向かう。これにより、電波の指向性を制御することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電波指向性制御装置において、前記第1遮蔽部と前記第2遮蔽部とは回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0011】
このような電波指向性制御装置によれば、第1遮蔽部に対し第2遮蔽部(またはその逆)を回動させるだけで、電子機器のアンテナから放射された電波を遮蔽する方向や範囲を変えられる。これにより、電波の指向性を制御することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の電波指向性制御装置において、前記第1遮蔽部または前記第2遮蔽部には、互いに連結された部位の反対側の端部に、電波遮蔽性を有する第3遮蔽部が回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、第3遮蔽部を回動することで、アンテナから放射される電波を遮蔽する方向や範囲の自由度が高められる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置において、前記第1遮蔽部および前記第2遮蔽部のうち少なくとも一方に、スライド可能な、かつ、電波遮蔽性を有するスライド部が取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、スライド部をスライドすることで、アンテナから放射される電波を遮蔽する方向や範囲の自由度が高められる。
【0016】
請求項5に係る発明は、アンテナを有する電子機器を内部に設置する遮蔽部本体を備えた電波指向性制御装置であって、前記遮蔽部本体は、電波遮蔽性を有するとともに、所定の方向が開口した開口部と、前記開口部の開口面積および開口位置を調整可能な、かつ、電波遮蔽性を有する開口部調整部とを備えることを特徴とする。
【0017】
このような電波指向性制御装置によれば、電子機器を遮蔽部本体の内部に設置することで、その電子機器が有するアンテナは、放射する電波を遮蔽部本体により遮蔽され、その指向性が変えられる。また、開口部調整部で開口部の開口面積および開口位置が調整されることで、アンテナから放射される電波は、遮蔽される方向や範囲が変えられ、所定の方向に向かう。これにより、電波の指向性を制御することができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の電波指向性制御装置において、前記開口部調整部は、スライド扉で構成されていることを特徴とする。
【0019】
このような電波指向性制御装置によれば、スライド扉を開閉するだけで、アンテナから放射される電波は、遮蔽される方向や範囲が変えられ、所定の方向に向かう。これにより、所定の範囲内で電波の指向性を制御することができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項5に記載の電波指向性制御装置において、前記遮蔽部本体と前記開口部調整部とは、それぞれ略半円筒状に形成されるとともに、前記開口部調整部が前記開口部を覆う状態にあるとき、略円筒状に組み合わされるように構成され、前記開口部調整部は、前記遮蔽部本体の曲面に沿ってスライド可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】
このような電波指向性制御装置によれば、開口部調整部をスライドするだけで、アンテナから放射される電波は、遮蔽される方向や範囲が変えられ、所定の方向に向かう。これにより、所定の範囲内で電波の指向性を制御することができる。
【0022】
請求項8に係る発明は、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置において、前記開口部の縁部の少なくとも一部に導電性を有するフランジを備えたことを特徴とする。
【0023】
このような電波指向性制御装置によれば、アンテナから放射された電波が、開口部の縁部で回折する現象を防止することができ、電波の指向性を所定の範囲内でより確実に制御することができる。
【0024】
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置において、前記電子機器に対向する部位の少なくとも一部に、前記アンテナから放射される電波を吸収する電波吸収性を有することを特徴とする。
【0025】
このような電波指向性制御装置によれば、アンテナから放射される電波のうち、各部位(第1遮蔽部、第2遮蔽部、第3遮蔽部、遮蔽部本体、開口部調整部)の電波吸収体に向けて放射された電波は減衰される。これにより、アンテナから放射された電波と、各部位から反射される電波の干渉現象や共振現象を防止することができる。
【0026】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の電波指向性制御装置であって、前記電波吸収性は、λ/4型電波吸収体を有することで達成されることを特徴とする。
【0027】
このような電波指向性制御装置によれば、特定周波数帯の電波に対して対応容易になる。
【0028】
請求項11に係る発明は、請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置において、前記遮蔽部本体は、磁性体シートを備えたことを特徴とする。
【0029】
このような電波指向性制御装置によれば、アンテナから放射された電波によって導電性板内部に発生する渦電流を効果的に防止することができる。これにより、電波が、遮蔽部本体の背後に回り込む現象を防止することができる。特に、開口部と反対側の背面の導電性板に磁性体シートを貼り付けることが好ましい。
【0030】
請求項12に係る発明は、請求項9に記載の電波指向性制御装置において、前記電波吸収性は、広帯域電波吸収体を有することで達成されることを特徴とする。
【0031】
このような電波指向性制御装置によれば、吸収可能な周波数帯域が広いので、多様な種類の前記電子機器を選択することが可能となる。広帯域電波吸収体とは、例えば、電波の入射する側から、抵抗膜シート(インピーダンス1088Ω)、スペーサ(38mm)、抵抗膜シート(インピーダンス280Ω)、スペーサ(38mm)、保護膜(アルミニウム板(箔)))の順で配置する構成などが挙げられる。
【0032】
請求項13に係る発明は、請求項5から請求項12のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置において、前記遮蔽部本体は、電波遮蔽性を有する金属製の筐体を備えたことを特徴とする。
【0033】
このような電波指向性制御装置によれば、アンテナから放射された電波のうち筐体に向けて放射された電波が遮蔽部本体内部から漏洩することを確実に防止することができ、特定方向への電波の放射を効果的に防止できる。
【0034】
請求項14に係る発明は、請求項13に記載の電波指向性制御装置において、前記筐体は、複数の金属部材を組み付けて構成されており、これらの複数の金属部材が溶接によって接合されていることを特徴とする。
【0035】
このような電波指向性制御装置によれば、アンテナから放射された電波のうち筐体に向けて放射された電波が金属部材の接合部から漏洩することを確実に防止することができ、特定方向への電波の放射を効果的に防止できる。
【0036】
請求項15に係る発明は、請求項13または請求項14に記載の電波指向性制御装置において、前記筐体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されたことを特徴とする。
【0037】
このような電波指向性制御装置によれば、筐体の軽量化を図ることができ、表面を陽極酸化被膜などで処理することが可能となり、外観の美しい電波指向性制御装置を提供することができる。
【0038】
請求項16に係る発明は、請求項5から請求項15のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置において、前記遮蔽部本体は、電波妨害を防止しつつ、前記遮蔽部本体の外部から内部にケーブルを配線可能とするEMIダクトを備えたことを特徴とする。
【0039】
このような電波指向性制御装置によれば、電波妨害を防止しつつ、外部から内部にケーブルを配線することができる。EMI(Electro Magnetic Interference:電磁妨害または電磁干渉)ダクトとは、磁性体テープなどに代表されるノイズ抑制シートをケーブルに巻きつけ、このケーブルの一部を遮蔽部本体に配設したダクトに通したものであり、絶縁抵抗性を有するガスケットを介して、遮蔽部本体に設けられている。このEMIダクトによると、ケーブルの所定長さ(例えば、100mm以上)がEMIダクト内を通るように、ケーブルを配線することによって、電磁妨害を好適に防止できる。
【0040】
請求項17に係る発明は、請求項16に記載の電波指向性制御装置において、前記EMIダクトを介して、前記遮蔽部本体の外部から内部にケーブルが配設されており、前記ケーブルは、ノイズを吸収するノイズ吸収体に被覆されたことを特徴とする。
【0041】
このような電波指向性制御装置によれば、ケーブルからのノイズ発生を確実に防止することができ、電子機器の誤動作などを確実に防止できる。
【0042】
請求項18に係る発明は、請求項5から請求項17のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置において、前記遮蔽部本体は、その内部に照明を備えることを特徴とする。
【0043】
このような電波指向性制御装置によれば、遮蔽部本体の内部を明るく照明することができる。なお、照明としては、白熱球やLEDランプ(Light Emitting Diode Lump)などが挙げられるが、特に、LEDランプが好ましい。LEDランプは蛍光灯と異なり、点滅時にノイズが殆ど発生しないからである。
【0044】
請求項19に係る発明は、請求項5から請求項18のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置において、遮蔽部本体は、建物内部に設置された前記電子機器を覆うように配設されていることを特徴とする。
【0045】
このような電波指向性制御装置によれば、建物内部に設置されている電子機器についても、遮蔽部本体の開口部を調整するだけで、電波の指向性を所定の範囲内で制御することができる。また、遮蔽部本体は、電波の遮蔽性および電波吸収性を有するため、電子機器から放射された電波のうち開口部以外の方向へ放射された電波は、遮蔽部本体内部において減衰するため干渉・共振現象を防止できる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、一般ユーザが、電子機器の使用状態に応じて、電波の指向性を簡単に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施の形態においては、対象の電子機器として無線LANのルータに適用した場合について説明する。
【0048】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る電波指向性制御装置が使用される環境を示す図、図2は、第1の実施の形態に係る電波指向性制御装置の斜視図である。
【0049】
図1に示すように、オフィスビルやマンション等の各部屋A1,A2には、無線LANのルータRが設置される。ルータRは、ネットワーク間の通信を中継する装置であり、電波を送受信するアンテナRaを有する。本実施形態に係る電波指向性制御装置1は、このルータRの周囲に設置され、ルータRのアンテナRaの電波が各部屋A1,A2に互いに漏洩しないように、その電波の指向性を制御する装置である。
【0050】
図2に示すように、電波指向性制御装置1は、背面部(第1遮蔽部)11と、この背面部11の上端部に連結されるルーバ(第2遮蔽部)12と、背面部11の下端部に固定される載置台13と、を備えている。
【0051】
背面部11は、電波を反射する矩形状の金属板11aを有しており、この金属板11aの正面側(電波入射面側)に、この金属板11aとほぼ同一形状の電波吸収体14をさらに有している。金属板11aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等である。電波吸収体14の詳細については後記する。
【0052】
ルーバ12は、背面部11の上端部にヒンジHを介して連結されており、背面部11に対して回動可能になっている。ルーバ12は、背面部11と同様に、電波を反射する矩形状の金属板12aを有しており、この金属板12aの正面側(電波入射側)に、金属板12aとほぼ同一形状の電波吸収体14をさらに有している。金属板12aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等である。なお、ルーバ12における電波吸収体14の構造は、背面部11における電波吸収体14の構造と同一であるため、その詳細な説明については、後記する背面部11における電波吸収体14の説明を以って省略する。
【0053】
載置台13は、ルータRを載置する台であり、背面部11の下端部に直交するように固定され、各部屋A1,A2(図1参照)の室内に設置される際は水平に保持される。載置台13は、載置台本体13aと、この載置台本体13aの上面に設けられ、電波吸収性を有する電波吸収シート13bとを有している。これにより、ルータRのアンテナRaから放射された電波が、電波吸収シート13bで吸収され、反射による電波の共振が抑えられるようになっている。
【0054】
電波吸収シート13bとしては、例えば、双極子型と称される電波吸収シートを使用することができる。双極子型の電波吸収シートとは、(1)カーボン粉末、酸化チタンなどの化合物から形成され、この化合物が有する電界を利用(例えば、電子配置の変化)することで電波を吸収するシートや、(2)例えば特許第3040953号公報に記載されるように、Mn−Zn系フェライト粉やカルボニル鉄などと、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマ)系ゴムとの化合物から形成され、この化合物が有する磁界を利用(例えば、磁界が変化)することで電波を吸収するシートや、(3)樹脂(例えば、ポリウレタン)と磁性体とが複合化されたシートである。具体的には、電波吸収シートとして、例えば、東洋サービス社製のルミディオン(登録商標)、日立金属社製のHTD−101などを使用することができる。なお、このような電波吸収シートは、広いバンドで電波を吸収するため、広帯域吸収体と称される場合もある。
【0055】
図3は、背面部の側面の断面拡大図である。
図3に示すように、電波吸収体14は、λ/4型電波吸収体であり、金属板11a側から順に、スペーサ14aと、電波の1/2を透過させる機能を有する抵抗膜シート14bと、この抵抗膜シート14bを保護する保護膜14cとを備えて構成されている。金属板11aと電波吸収体14とは、背面部11(またはルーバ12)における電波遮蔽性および電波吸収性の機能を担う。
【0056】
スペーサ14aは、ルータRから放射される電波の波長をλとした場合、金属板11aと抵抗膜シート14bとの間隔をλ/4に設定するためのものであり、λ/4の厚みT1を有している。スペーサ14aは、電波の透過性を有しており、例えば、発泡スチロールなどの発泡プラスチックから形成される。このように発泡スチロールから形成される場合、スペーサ14aの厚みT1を容易に調整可能となる。
【0057】
抵抗膜シート14bは、その表面抵抗値が自由空間のインピーダンス(376.6Ω)に略等しくなるように調整された薄いシートである。このような抵抗膜シート14bとしては、炭素導電性塗料を適宜なベースシートに塗布したものや、ITO膜の抵抗値を調整して成膜したものなどを使用することができる。
【0058】
保護膜14cは、抵抗膜シート14bの表面に積層されており、抵抗膜シート14bの表面を保護するようになっている。
【0059】
そして、このような電波吸収体14の表面は、平坦となっている。これにより、例えば、複数の凸状の電波吸収体を備える場合と比較して、全体としてその外形を小さくすることができる。
【0060】
ここで、電波吸収体14による電波吸収のメカニズムについて説明する。
ルータRのアンテナRa(図1参照)から放射された電波W1が、保護膜14cの垂直方向から入射した場合、保護膜14cを通過した後、その1/2が抵抗膜シート14bを通過し、1/2が抵抗膜シート14bで反射する。ここで、抵抗膜シート14bを通過した電波を電波W2、反射した電波を電波W3とする。電波W2は、スペーサ14a内を進んだ後、金属板11aで反射し、電波W4となる。なお、抵抗膜シート14b、金属板11aでの反射の際に、電波の位相はそれぞれ反転する。
【0061】
そうすると、金属板11aでの反射後、抵抗膜シート14bに到達した電波W4は、抵抗膜シート14bで反射した電波W3に対して、スペーサ14aの厚みT1の2倍、つまり、「λ/4×2=λ/2」進んでおり、電波W3と電波W4の位相が反転することになる。したがって、電波W3と電波W4とは相互に打ち消し合い、その結果として、抵抗膜シート14bに入射した電波W1は擬似的に吸収されるようになっている。
【0062】
以上のように構成された電波指向性制御装置1の作用について、図4を参照しながら説明する。図4は、電波指向性制御装置の作用について説明する側面図である。
【0063】
図4に示すように、電波指向性制御装置1は、載置台13上にルータRを載置した状態で、背面部11が各部屋A1,A2の壁などに取り付けられている(図1参照)。この電波指向性制御装置1では、ルータRのアンテナRaから放射される電波が背面部11により吸収され、背面側に隣接する部屋への漏洩が防止される。
【0064】
電波指向性制御装置1では、ルーバ12を背面部11に対して回動させることで、ルータRのアンテナRaから放射される電波の指向性を制御する。つまり、背面部11に対するルーバ12の角度が大きい場合には、アンテナRaから放射される電波が何の干渉もなく上方に向かい、例えば、図1に示す部屋A2から階上の部屋A1に電波が漏洩してしまうが、図4に示すように、背面部11に対するルーバ12の角度を小さくすれば、アンテナRaから放射される電波をルーバ12に反射させて、上方に向かう電波を遮蔽し、下方に向かうように制御することができる。なお、この角度は適宜設定することができるものである。
【0065】
以上によれば、本実施の形態において以下の効果を得ることができる。
このような電波指向性制御装置1によれば、ルータRの周囲に設置されることで、そのルータRが有するアンテナRaは、放射する電波を背面部11とルーバ12とにより遮蔽される。
【0066】
また、ルーバ12を適宜回動させることで、アンテナRaから放射される電波は、遮蔽される方向や範囲が変えられ、所定の方向に向かう。これにより、アンテナRaの指向性を制御することができる。
【0067】
さらに、背面部11とルーバ12とは、電波吸収性を有するため、ルータRのアンテナRaから放射された電波のうち背面部11とルーバ12に向けて放射された電波は減衰される。これにより、アンテナRaから放射された電波と、背面部11とルーバ12から反射される電波の干渉現象や共振現象を防止することができる。
【0068】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
【0069】
図5は、第1の実施の形態の変形例に係る電波指向性制御装置の側面図である。
図5に示すように、変形例に係る電波指向性制御装置1Aにおいて、前記した電波指向性制御装置1のルーバ12に(図4参照)、スライド部15を設けてもよい。スライド部15は、前記背面部11と同一の構造を有するスライド体15aと、スライド体ケース15bとから構成し、スライド体ケース15bからスライド体15aを出没自在に構成する。この電波指向性制御装置1では、スライド体15aをスライド体ケース15bから引き出すことで、アンテナRaから上方に放射される電波が反射する範囲を広く確保することができ、その指向性をよりよく制御することができる。
【0070】
前記実施形態では、電波吸収体14を、λ/4型電波吸収体としたが、この電波吸収体は特に限定されるものではない。例えば、前記した電波吸収シート13bの広帯域電波吸収体、つまり、金属板11a(または12a)側から、抵抗膜シート(インピーダンス1088Ω)、スペーサ(38mm)、抵抗膜シート(インピーダンス280Ω)、スペーサ(38mm)、保護膜(アルミニウム板(箔))の順で配置する構成としてもよい。このような構成によれば、880MHz周辺および2050MHz周辺の2種の電波を吸収することができる。
【0071】
また、金属板11a,12aの材質は、アルミニウム等に限られるものではなく、導電性を有していれば、スチール、ステンレスや銅など他の材質であってもよい。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る電波指向性制御装置について説明する。
図6は、第2の実施の形態に係る電波指向性制御装置の斜視図である。なお、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
図6に示すように、第2の実施の形態に係る電波指向性制御装置2は、アンテナRaを有するルータRの周囲に設置される。そして、電波指向性制御装置2は、第1の実施の形態と同様に、アンテナRaの電波が所定の方向に漏洩しないように、その電波の指向性を制御する。
【0074】
電波指向性制御装置2は、背面部(第1遮蔽部)21と、この背面部21の両端部にヒンジHを介して取り付けられるルーバ(第2,第3遮蔽部)22,22と、を備えている。換言すると、背面部21の一方の端部にルーバ22が取り付けられ、その反対側の端部にルーバ22が取り付けられている。
【0075】
背面部21は、電波を反射する矩形状の金属板21aを有しており、この金属板21aの正面側(電波入射面側)に、この金属板21aとほぼ同一形状の電波吸収体14をさらに有している。金属板21aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等である。
【0076】
ルーバ22,22は、背面部21の両側部にヒンジHを介して連結されており、背面部21に対して回動可能になっている。ルーバ22は、背面部21と同様に、電波を反射する矩形状の金属板22aを有しており、この金属板22aの正面側(電波入射側)に、金属板22aとほぼ同一形状の電波吸収体14をさらに有している。金属板22aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等である。なお、ルーバ22と背面部21の電波吸収のメカニズムについては、第1の実施の形態と同様である。
【0077】
以上のように構成された電波指向性制御装置2の作用について、図7を参照しながら説明する。図7は、電波指向性制御装置の作用について説明する平面図である。
【0078】
図7に示すように、電波指向性制御装置2は、図示しない各部屋において、ルータRの周囲に設置される。この電波指向性制御装置2では、ルータRのアンテナRaから放射される電波を背面部21により吸収させ、背面側への電波の漏洩を防止する。
【0079】
また、電波指向性制御装置2では、ルーバ22,22を背面部21に対して回動させることで、ルータRのアンテナRaから放射される電波の指向性を制御する。つまり、背面部21に対するルーバ22,22の角度が大きい場合には、アンテナRaからの電波が何の干渉もなく、広い範囲に放射され、左右方向にも電波が漏洩してしまうが、図7に示すように、背面部21に対するルーバ22の角度を小さくすれば、アンテナRaから放射される電波をルーバ22に反射させて、左右に向かう電波を遮蔽し、狭い範囲に放射されるように制御することができる。なお、この角度は適宜設定することができるものである。
【0080】
以上によれば、本実施の形態において以下の効果を得ることができる。
このような電波指向性制御装置2によれば、ルータRの周囲に設置されることで、そのルータRが有するアンテナRaは、放射する電波を背面部21とルーバ22とにより遮蔽される。
【0081】
また、ルーバ22を適宜回動させることで、アンテナRaから放射される電波は、遮蔽される方向や範囲が変えられ、所定の方向に向かう。これにより、アンテナRaの指向性を制御することができる。
【0082】
さらに、背面部21とルーバ22とは、電波吸収性を有するため、ルータRのアンテナRaから放射された電波のうち背面部11とルーバ12に向けて放射された電波は減衰される。これにより、アンテナRaから放射された電波と、背面部11とルーバ12から反射される電波の干渉現象や共振現象を防止することができる。
【0083】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
【0084】
例えば、ルーバ22に用いられる電波吸収体14の厚みを、基端側から先端側に向けて(電波の放射する方向に合わせて)徐々に小さくなるように設定してもよい。ルータRのアンテナRaから放射された電波のルーバ22への入射角度は、先端側ほど小さくなるため、前記した構成によれば電波を効果的に吸収することができる。なお、予め使用される電波の周波数、入射角度を考慮して電波吸収体14を設計しておくことで、電波吸収特性を効果的に発揮させることができる。
【0085】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係る電波指向性制御装置について説明する。
図8は、第3の実施の形態に係る電波指向性制御装置の斜視図であり、図9(a)は、電波指向性制御装置の作用を説明する平面断面図、(b)は(a)のスライド扉の要部拡大図である。なお、第3の実施の形態においては、第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
図8に示すように、第3の実施の形態に係る電波指向性制御装置3は、アンテナRaを有するルータRを内部に設置する。そして、電波指向性制御装置3は、第1の実施の形態と同様に、アンテナRaの電波が所定の方向に漏洩しないように、その電波の指向性を制御する。
【0087】
電波指向性制御装置3は、遮蔽部本体31と、この遮蔽部本体31に設けられた一対のスライド扉(開口部調整部)32,32と、このスライド扉32,32の相対向する端部に設けられるフランジ部33,33と、を備えている。
【0088】
遮蔽部本体31は、例えば、アルミニウム、または、アルミニウム合金等の金属から断面略コの字状に形成された本体部(筐体)31aと、この本体部31aの内面側に設けられる電波吸収体14と、を有している。この遮蔽部本体31の天板と底板の相対向する面には、それぞれ、その外周縁に沿うように、レール31bが設けられている。このレール31bの両端部は、図9(a)に示すように、背面側では交差しないように平行に伸びている。本体部31aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属から形成される。
【0089】
図9(b)に示すように、スライド扉32,32は、細長い矩形状の複数の金属部材32aと、この金属部材32aの内面側に設けられる電波吸収体16と、を有している。
【0090】
金属部材32aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の押出材からなるもので、長手方向に沿って両端部が屈曲した形状に形成され、その内側に嵌まり込むように電波吸収体16が配設されている。この電波吸収体16は、電波を吸収する機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、前記した電波吸収体14と同一のものでもよい。また、金属部材32aの先端部には、球状の嵌合部K1と、この嵌合部K1に外嵌可能な断面C字状の嵌合部K2とが形成されている。複数の金属部材32aは、互いに隣接する金属部材32aの嵌合部K1に嵌合部K2を外嵌し、それぞれが連結される。
【0091】
フランジ部33,33は、矩形状の金属板33で構成されており、連結された前記複数の金属部材32bのうち、両端の金属部材32a,32aに、ヒンジHを介して、取り付けられている。なお、遮蔽部本体31、スライド扉32の電波吸収のメカニズムについては、第1の実施の形態と同様である。
【0092】
このように構成されたスライド扉32,32は、さらに、その上側端面または下側端面に図示しないローラを有し、このローラが遮蔽部本体31のレール31b(図9(a)参照)に嵌め込まれる。そして、各フランジ部33同士が対面して当接した状態で、スライド扉32,32のフランジ部33,33と反対側の端部側が、遮蔽部本体31の背面側まで延び、遮蔽部本体31の開口部を全て覆うようになっている。また、スライド扉32,32は、レール31bに沿って、それぞれ移動可能になっており、適宜移動させることで、遮蔽部本体31とスライド扉32によって形成される開口部31c(図9(a)参照)の面積および位置を調整可能になっている。
【0093】
以上のように構成された電波指向性制御装置3の作用について、説明する。
図9(a)に示すように、電波指向性制御装置3は、ルータRを内部に設置している。この電波指向性制御装置3では、ルータRのアンテナRaから放射される電波を遮蔽部本体31により吸収させ、背面側、上面側、および、下面側の所定の方向への電波の漏洩を防止する。
【0094】
また、電波指向性制御装置3では、スライド扉32,32をレール31bに沿って適宜移動させることで、ルータRのアンテナRaから放射される電波の指向性を制御する。具体的には、スライド扉32,32のフランジ部33,33側を互いに離間する方向に移動させることで、開口部31cの面積を大きくすることができ、アンテナRaからの電波を広い範囲に放射させることができる。また、スライド扉32,32のフランジ部33,33側を互いに近接する方向に移動させることで、開口部31cの面積を小さくすることができ、アンテナRaからの電波をある所定の狭い範囲の方向にのみ放射されるように制御することができる。
【0095】
また、スライド扉32,32の開き方をそれぞれ変えることで、開口部31cの位置を変えることができる。例えば、スライド扉32,32のうち、一方のみを開くことで、その一方側に開口部31cの位置を寄せることができる。これにより、電波が放射される開口部31cの面積および位置を適宜設定することができる。
【0096】
さらに、フランジ部33,33を適宜回動させることができるので、例えば、フランジ部33,33を開口部31cに対して直交するように立てることで、アンテナRaから放射された電波が、開口部31cの縁部で回折する現象を防止することができ、電波の指向性を所定の範囲内でより確実に制御することができる。
【0097】
以上によれば、本実施の形態において以下の効果を得ることができる。
このような電波指向性制御装置3によれば、ルータRを内部に設置することで、そのルータRが有するアンテナRaは、放射する電波を遮蔽部本体31とスライド扉32,32とにより遮蔽される。
【0098】
また、スライド扉32,32を適宜移動させることで、アンテナRaから放射される電波は、遮蔽される方向や範囲が変えられ、換言すると、開口部31cの面積および位置が変えられ、所定の方向に向かう。これにより、アンテナRaの指向性を制御することができる。
【0099】
さらに、遮蔽部本体31とスライド扉32,32とは、電波吸収性を有するため、ルータRのアンテナRaから放射された電波のうち遮蔽部本体31とスライド扉32,32に向けて放射された電波は減衰される。これにより、アンテナRaから放射された電波と、遮蔽部本体31とスライド扉32,32から反射される電波の干渉現象や共振現象を防止することができる。
【0100】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
【0101】
前記実施形態では、フランジ部33をスライド扉32に回動可能に取り付けたが、このフランジ部33は省略してもよいし、フランジ部33をスライド扉32に固定してもよい。
【0102】
前記実施形態では、スライド扉32の金属部材32aにそのまま電波吸収体14を設ける構成としたが、例えば、金属部材32aに磁性体のコーティングをしてもよい。
【0103】
前記実施形態では、遮蔽部本体31を断面略コの字状に形成したが、遮蔽部本体31の形状は限定されるものではなく、直方体のある一面のみが開口した箱型等に形成するものであってもよい。
【0104】
図10は、第3の実施の形態の変形例に係る電波指向性制御装置の平面断面図である。
図10に示すように、電波指向性制御装置3Aは、一面のみが開口した箱型の遮蔽部本体35と、この遮蔽部本体35の開口端部にヒンジHを介して回動可能に取り付けられた一対の扉部36,36とで構成することもできる。
【0105】
遮蔽部本体35は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成された5枚の金属板35aを箱型に組み立てた状態で溶接し、これらの各金属板35aの内面側に電波吸収体14を設けている。また、遮蔽部本体35の内側にはLEDランプ(照明)37を設けて内部を照らすことができるようになっている。LEDランプ37は、点滅時にノイズが殆ど発生しないので好適である。さらに、遮蔽部本体35の外側には、EMIダクト38を設けている。ルータRのケーブルCにはノイズ吸収体を被覆し、このケーブルCをEMIダクト38の内部に挿通して、遮蔽部本体35内に配線可能になっている。これにより、電磁妨害を好適に防止できる。なお、遮蔽部本体35の金属板35aには、磁性体シートを設けることもできる。磁性体シートを設けることで、金属板35aに発生する渦電流を防止することができる。
【0106】
磁性体シートは、磁性体粒子のフィラーをバインダに溶かして、PETなどの基材に印刷または塗布するなどして、基材の一方の面に磁性体粒子を薄層として形成したシートである。この磁性体粒子を形成した面を金属板35aの内面に貼り付ける。このように磁性体シートを貼り付けると磁性体粒子の薄層が金属板35aの内面に密着する配置となる。金属板35aの界面では電磁波の磁界強度が高くなるが、磁性体シートを貼り付けると、磁性体粒子の薄層が金属板35aの内面に密着されて効果的に電磁波吸収特性が発揮される。
【0107】
磁性体シートの厚さは、100〜500μmが好ましい。厚さが100μm未満の場合、磁性体粒子が電磁界に対して充分に機能しない厚さであるため好ましくない。厚さが500μmを超える場合、磁性体粒子が発揮する効果が薄れる領域の厚さであるため好ましくない。磁性体の平均粒径は、5〜30μmが好ましい。平均粒径が5μm未満の場合、磁性体粒子同士が凝集してしまい均一な薄層を形成できないため好ましくない。磁性体の平均粒径が30μm未満を超える場合、電波吸収特性が低下するため好ましくない。磁性体の形状は、扁平状または針状であることが好ましい。扁平磁性体の場合では扁平度が10以上が好ましい。扁平度が10未満の場合、薄層を形成するために平均粒径を非常に小さくする必要があり効率的に薄層を形成することが困難になる。磁性体の透磁率は高いほうがよく、透磁率1000[NA−2]以上であることが好ましく、さらに好ましくは、5000[NA−2]以上である。
【0108】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態に係る電波指向性制御装置について説明する。
図11は、第4の実施の形態に係る電波指向性制御装置の斜視図であり、図12は、電波指向性制御装置の作用を説明する平面断面図である。なお、第4の実施の形態においては、第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0109】
図11に示すように、第3の実施の形態に係る電波指向性制御装置4は、アンテナRaを有するルータRを内部に設置する。そして、電波指向性制御装置4は、第1の実施の形態と同様に、アンテナRaの電波が各部屋に互いに漏洩しないように、その電波の指向性を制御する。
【0110】
電波指向性制御装置4は、遮蔽部本体41と、この遮蔽部本体41に設けられたスライド扉(開口部調整部)42と、を備えている。
【0111】
遮蔽部本体41は、全体として半円筒状に形成されており、上面は大きな半円と小さな半円が対向したような形状に形成されている。また、遮蔽部本体41の開口端部の一方には上下方向に沿ってフランジ部43Aが設けられている。このような遮蔽部本体41は、例えば、アルミニウム、または、アルミニウム合金等の金属から前記した形状に形成された本体部(筐体)41aと、この本体部41aの内面側に設けられる電波吸収体14と、を有している。
【0112】
スライド扉42は、遮蔽部本体41よりも一回り小さい半円筒状に形成されており、遮蔽部本体41の内部に収容されるようになっている。スライド扉42の上面は遮蔽部本体41の上面にピンPを介して取り付けられることで、遮蔽部本体41に対して回動可能に構成されている。スライド扉42が遮蔽部本体41と組み合わされた状態では、略円筒状になっている。そして、スライド扉42の回動により遮蔽部本体41の開口部41cの面積を適宜調整することができる。また、スライド扉42の底面はルータRが設置可能なように円形に形成されている。スライド扉42の開口端部の一方には上下方向に沿ってフランジ部43Bが形成されている。このように構成されたスライド扉42は、例えば、アルミニウム、または、アルミニウム合金等の金属から前記した形状に形成された本体部42aと、この本体部41aの内面側に設けられる電波吸収体14と、を有している。なお、遮蔽部本体41、および、スライド扉42の電波吸収のメカニズムについては、第1の実施の形態と同様である。
【0113】
以上のように構成された電波指向性制御装置4の作用について、説明する。
図12に示すように、電波指向性制御装置4は、図示しない各部屋において、ルータRを内部に設置して載置される。この電波指向性制御装置4では、ルータRのアンテナRaから放射される電波を遮蔽部本体41により吸収させ、背面側、上面側、および、下面側の所定の方向への電波の漏洩を防止する。
【0114】
また、電波指向性制御装置4では、スライド扉42を適宜回動させることで、ルータRのアンテナRaから放射される電波の指向性を制御する。具体的には、スライド扉42のフランジ部43B側を、フランジ部43A側から離間する方向に回動させることで、開口部41cの面積を大きくすることができ、アンテナRaからの電波を広い範囲に放射させることができる。また、スライド扉42のフランジ部43B側をフランジ部43A側に近接する方向に回動させることで、開口部41cの面積を小さくすることができ、アンテナRaからの電波をある所定の狭い範囲の方向にのみ放射されるように制御することができる。
【0115】
以上によれば、本実施の形態において以下の効果を得ることができる。
このような電波指向性制御装置4によれば、ルータRを内部に設置することで、そのルータRが有するアンテナRaは、放射する電波を遮蔽部本体41とスライド扉42とにより遮蔽される。
【0116】
また、スライド扉42を適宜回動させることで、アンテナRaから放射される電波は、遮蔽される方向や範囲が変えられ、換言すると、開口部41cの面積および位置が変えられ、所定の方向に向かう。これにより、アンテナRaの指向性を制御することができる。
【0117】
さらに、遮蔽部本体41とスライド扉42とは、電波吸収性を有するため、ルータRのアンテナRaから放射された電波のうち遮蔽部本体41とスライド扉42に向けて放射された電波は減衰される。これにより、アンテナRaから放射された電波と、遮蔽部本体41とスライド扉42から反射される電波の干渉現象や共振現象を防止することができる。
【0118】
そして、フランジ部43A,43Bで、アンテナRaから放射された電波が、開口部41cの縁部で回折する現象を防止することができ、電波の指向性を所定の範囲内でより確実に制御することができる。
【0119】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
【0120】
前記実施形態では、フランジ部43A,43Bを、遮蔽部本体41やスライド扉42の一部として構成したが、別途取付可能に構成するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】第1の実施の形態に係る電波指向性制御装置が使用される環境を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る電波指向性制御装置の斜視図である。
【図3】背面部の側面の断面拡大図である。
【図4】電波指向性制御装置の作用について説明する側面図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例に係る電波指向性制御装置の側面図である。
【図6】第2の実施の形態に係る電波指向性制御装置の斜視図である。
【図7】電波指向性制御装置の作用について説明する平面図である。
【図8】第3の実施の形態に係る電波指向性制御装置の斜視図である。
【図9】(a)は、電波指向性制御装置の作用を説明する平面断面図、(b)は(a)のスライド扉の要部拡大図である。
【図10】第3の実施の形態の変形例に係る電波指向性制御装置の平面断面図である。
【図11】第4の実施の形態に係る電波指向性制御装置の斜視図である。
【図12】電波指向性制御装置の作用を説明する平面断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1,1A,2,3,3A,4 電波指向性制御装置
11 背面部
12 ルーバ
14 電波吸収体
15 スライド部
21 背面部
22 ルーバ
31 遮蔽部本体
31c 開口部
32 スライド扉
33 フランジ部
35 遮蔽部本体
36 扉部
37 LEDランプ
38 EMIダクト
41 遮蔽部本体
41c 開口部
42 スライド扉
43A,43B フランジ部
H ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを有する電子機器の周囲に設置される電波指向性制御装置であって、
電波遮蔽性を有する第1遮蔽部と第2遮蔽部とを備え、
前記第1遮蔽部と前記第2遮蔽部とは相対位置関係が変化可能に連結されていることを特徴とする電波指向性制御装置。
【請求項2】
前記第1遮蔽部と前記第2遮蔽部とは回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の電波指向性制御装置。
【請求項3】
前記第1遮蔽部または前記第2遮蔽部には、互いに連結された部位の反対側の端部に、電波遮蔽性を有する第3遮蔽部が回動可能に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の電波指向性制御装置。
【請求項4】
前記第1遮蔽部および前記第2遮蔽部のうち少なくとも一方に、スライド可能な、かつ、電波遮蔽性を有するスライド部が取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置。
【請求項5】
アンテナを有する電子機器を内部に設置する遮蔽部本体を備えた電波指向性制御装置であって、
前記遮蔽部本体は、電波遮蔽性を有するとともに、
所定の方向が開口した開口部と、
前記開口部の開口面積および開口位置を調整可能な、かつ、電波遮蔽性を有する開口部調整部と
を備えることを特徴とする電波指向性制御装置。
【請求項6】
前記開口部調整部は、スライド扉で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の電波指向性制御装置。
【請求項7】
前記遮蔽部本体と前記開口部調整部とは、それぞれ略半円筒状に形成されるとともに、前記開口部調整部が前記開口部を覆う状態にあるとき、略円筒状に組み合わされるように構成され、
前記開口部調整部は、前記遮蔽部本体の曲面に沿ってスライド可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の電波指向性制御装置。
【請求項8】
前記開口部の縁部の少なくとも一部に導電性を有するフランジを備えたことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置。
【請求項9】
前記電子機器に対向する部位の少なくとも一部に、前記アンテナから放射される電波を吸収する電波吸収性を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置。
【請求項10】
前記電波吸収性は、λ/4型電波吸収体を有することで達成されることを特徴とする請求項9に記載の電波指向性制御装置。
【請求項11】
前記遮蔽部本体は、磁性体シートを備えたことを特徴とする請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置。
【請求項12】
前記電波吸収性は、広帯域電波吸収体を有することで達成されることを特徴とする請求項9に記載の電波指向性制御装置。
【請求項13】
前記遮蔽部本体は、電波遮蔽性を有する金属製の筐体を備えたことを特徴とする請求項5から請求項12のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置。
【請求項14】
前記筐体は、複数の金属部材を組み付けて構成されており、これらの複数の金属部材が溶接によって接合されていることを特徴とする請求項13に記載の電波指向性制御装置。
【請求項15】
前記筐体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されたことを特徴とする請求項13または請求項14に記載の電波指向性制御装置。
【請求項16】
前記遮蔽部本体は、電波妨害を防止しつつ、前記遮蔽部本体の外部から内部にケーブルを配線可能とするEMIダクトを備えたことを特徴とする請求項5から請求項15のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置。
【請求項17】
前記EMIダクトを介して、前記遮蔽部本体の外部から内部にケーブルが配設されており、前記ケーブルは、ノイズを吸収するノイズ吸収体に被覆されたことを特徴とする請求項16に記載の電波指向性制御装置。
【請求項18】
前記遮蔽部本体は、その内部に照明を備えることを特徴とする請求項5から請求項17のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置。
【請求項19】
遮蔽部本体は、建物内部に設置された前記電子機器を覆うように配設されていることを特徴とする請求項5から請求項18のいずれか1項に記載の電波指向性制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−336356(P2007−336356A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167492(P2006−167492)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】