説明

電波推定方法、及び電波推定プログラム、並びに電波推定装置

【課題】発信点推定における推定精度を大きく向上する。
【解決手段】電波の発信点TPを推定する電波推定方法であって、建造物H内に位置する所定の受信点RPから、ビームフォーミングによりアレイアンテナ3の指向性を制御しつつ、所定の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信する第1処理段階G1と、この受信した全ての方向に含まれる複数の主要到来角それぞれに対し、受信点RPからレイトレーシング法により光を仮想的に仮想光線として放射し、建造物H内の仮想電波伝播経路を算出する経路図において、建造物Hの構造及び各構造材の材質を仮想電波伝播経路を算出するパラメータとして用いて、放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された2仮想光線がお互いに最も近づいた位置を経路図上の近接点として、近接点を全て抽出する第3処理段階G3及び第4処理段階G4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の受信側から発信元の位置を推定する電波推定方法及び電波推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や無線LANなどに代表される移動体通信の技術分野において、移動無線端末の位置推定を小規模かつ簡易に行えるよう、発信点を推定する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術においては、アレイアンテナで受信した観測データの解析結果として得た、到来波の入射角度と角度広がりとを求める。そして、これに加えて、観測地の高精度な地形データを用いたレイトレーシング解析に基づき、疑似送信点からの到来波の入射角度及び角度広がりを得る。そして、両者の解析結果をマッチングして、解析結果が一致した地点を電波の発信点位置として推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−274205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、電波反射時の散乱を考慮した角度広がりの演算を行っているため、レイトレーシング解析を行う上での光路数が増加して演算量が膨大となる。その演算の負担を軽減するために、予め複数の疑似送信点を送信点の選択候補として経路図データ上に設定入力する必要がある。このため、疑似送信点から外れる実際の送信点の位置をリアルタイムかつ高精度に推定することは難しく、特に常に移動する可能性のある移動体送信機の位置推定は難しかった。
【0006】
本発明の目的は、発信点推定における推定精度を大きく向上できる、電波推定方法及び電波推定プログラム並びに電波推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、電波の発信点を推定する電波推定方法であって、建造物内に位置する所定の測定地点から、ビームフォーミングにより複数のアンテナ素子の指向性を制御しつつ、所定の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信する第1手順と、前記第1手順で受信した前記全ての方向に含まれる複数の電波到達方向それぞれに対し、前記測定地点からレイトレーシング法により光を仮想的に仮想光線として放射し、前記建造物内の仮想電波伝搬経路を算出する経路図において、前記建造物の構造及び各構造材の材質を前記仮想電波伝搬経路を算出するパラメータとして用いて、前記放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された前記2仮想光線がお互いに最も近づいた位置を前記経路図上の近接点として、前記近接点を全て抽出する第2手順とを有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明の電波推定方法では、建造物内の所定の測定地点に設けられた、複数のアンテナ素子を備えたアンテナを用いて、電波の発信点の推定を行う。まず第1手順で、当該アンテナの複数のアンテナ素子の指向性をビームフォーミングにより制御しながら、所定の受信角範囲の全方向にわたり電波を受信する。その後、第2手順で、レイトレーシング法により、測定地点から、上記全方向に含まれる各電波到達方向に対し、仮想光を仮想的に放射する。このとき、予め、建造物の構造や各構造材の材質に関するパラメータが取得されており、レイトレーシング法を適用する際の各光線の減衰や反射の特性を含めて、上記パラメータを用いて仮想電波伝搬経路を算出し、その算出によって建造物内の仮想電波伝搬経路図が作成される。そして、放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2つの仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された2つの仮想光線がお互いに最も近づいた位置を近接点とし、その近接点の全てを抽出する。
【0009】
以上のように、複数のアンテナ素子の受信方向をビームフォーミングで制御することで電波到達方向を的確に把握する。そして、把握された各電波到達方向に対しレイトレーシング法により放射される仮想光線の挙動に建造物構造や材質を反映させた上で、所定範囲内における各仮想光線の全近接点を抽出する。これにより、当該近接点のいずれか、又はその近傍が電波の発信点であると特定することができるので、発信点推定における推定精度を大きく向上することができる。
【0010】
第2発明は、上記第1発明において、前記第1手順で各方向から受信した電波の到達角度ごとの受信レベルから、ピークサーチによって複数の電波到達方向を抽出する第3手順を有し、前記第2手順は、前記第3手順で抽出した前記複数の電波到達方向それぞれに対し、前記測定地点からレイトレーシング法により前記仮想光線を放射して前記近接点を抽出する手順であることを特徴とする。
【0011】
電波受信時における到達角度ごとの受信レベルに基づきピークサーチを実行することにより、レイトレーシング法での仮想光の放射対象となる電波到達方向を予め確実に絞り込むことができる。この結果、さらに発信点推定精度を向上することができる。
【0012】
第3発明は、上記第2発明において、前記仮想電波伝搬経路図の前記所定範囲において線密度計算により算出される前記近接点の数に基づき、前記電波の発信点を特定する第4手順を有することを特徴とする。
【0013】
線密度計算を行い、より多くの近接点が含まれることとなる所定範囲を見つけ出すことで、当該所定範囲に含まれる近接点のいずれかが電波の発信点であると確実に特定することができる。
【0014】
第4発明は、上記第3発明において、前記第4手順は、前記発信点に該当する複数の発信候補点のそれぞれに関し、所定の一つの発信候補点に関連する2つの近接点の位置ベクトルの差の絶対値と、当該発信候補点及び前記測定地点の間の電波伝播距離と、により評価値を算出し、評価値の値が最小となる1つの前記発信候補点を、前記電波の発信点として特定することを特徴とする。
【0015】
所定の一つの発信候補点に関連する2つの近接点の位置ベクトルの差の絶対値と、発信候補点及び測定地点の間の距離とに基づく評価値を用いて演算を行うことで、容易かつ迅速に1つの発信点を特定することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、第5の発明は、電波の発信点を推定する電波推定装置に備えられた演算手段に、建造物内に位置する所定の測定地点から、ビームフォーミングにより複数のアンテナ素子の指向性を制御しつつ、所定の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信する第1手順と、前記第1手順で受信した前記全ての方向に含まれる複数の電波到達方向それぞれに対し、前記測定地点からレイトレーシング法により光を仮想的に仮想光線として放射し、前記建造物内の仮想電波伝搬経路を算出する経路図において、前記建造物の構造及び各構造材の材質を前記仮想電波伝搬経路を算出するパラメータとして用いて、前記放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された前記2仮想光線がお互いに最も近づいた位置を前記経路図上の近接点として、前記近接点を全て抽出する第2手順とを実行させるための電波推定プログラムである。
【0017】
本願第5発明の電波推定プログラムが演算手段で実行される電波推定装置では、建造物内の所定の測定地点に設けられた、複数のアンテナ素子を備えたアンテナを用いて、電波の発信点の推定を行う。まず第1手順で、当該アンテナの複数のアンテナ素子の指向性をビームフォーミングにより制御しながら、所定の受信角範囲の全方向にわたり電波を受信する。その後、第2手順で、レイトレーシング法により、測定地点から、上記全方向に含まれる各電波到達方向に対し、仮想光を仮想的に放射する。このとき、予め、建造物の構造や各構造材の材質に関するパラメータが取得されており、レイトレーシング法を適用する際の各光線の減衰や反射の特性を含めて、上記パラメータを用いて仮想電波伝搬経路を算出し、その算出によって建造物内の仮想電波伝搬経路図が作成される。そして、放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2つの仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された2つの仮想光線がお互いに最も近づいた位置を近接点とし、その近接点の全てを抽出する。
【0018】
以上のように、複数のアンテナ素子の受信方向をビームフォーミングで制御することで電波到達方向を的確に把握する。そして、把握された各電波到達方向に対しレイトレーシング法により放射される仮想光線の挙動に建造物構造や材質を反映させた上で、所定範囲内における各仮想光線の全近接点を抽出する。これにより、当該近接点のいずれか、又はその近傍が電波の発信点であると特定することができるので、発信点推定における推定精度を大きく向上することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、第6の発明は、電波の発信点を推定する電波推定装置であって、建造物内に位置する所定の測定地点に設けられ、複数のアンテナ素子を備えた受信アンテナと、ビームフォーミングにより前記複数のアンテナ素子の指向性を制御しつつ、所定の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信する受信制御手段と、前記受信制御手段により受信された前記全ての方向に含まれる複数の電波到達方向それぞれに対し、前記測定地点からレイトレーシング法により光を仮想的に仮想光線として放射し、前記建造物内の仮想電波伝搬経路を算出する経路図において、前記建造物の構造及び各構造材の材質を前記仮想電波伝搬経路を算出するパラメータとして用いて、前記放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された前記2仮想光線がお互いに最も近づいた位置を前記経路図上の近接点として、前記近接点を全て抽出する近接点抽出手段とを有することを特徴とする。
【0020】
本願第6発明の電波推定装置では、建造物内の所定の測定地点に、複数のアンテナ素子を備えたアンテナを設けている。受信制御手段が、アンテナの複数のアンテナ素子の指向性をビームフォーミングにより制御しながら、所定の受信角範囲の全方向にわたり電波を受信する。そして、近接点抽出手段が、レイトレーシング法により、測定地点から、上記全方向に含まれる各電波到達方向に対し、仮想光を仮想的に放射する。このとき、予め、建造物の構造や各構造材の材質に関するパラメータが取得されており、レイトレーシング法を適用する際の各光線の減衰や反射の特性を含めて、上記パラメータを用いて仮想電波伝搬経路を算出し、その算出によって建造物内の仮想電波伝搬経路図が作成される。そして、近接点抽出手段は、放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2つの仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された2つの仮想光線がお互いに最も近づいた位置を近接点とし、その近接点の全てを抽出する。
【0021】
以上のように、複数のアンテナ素子の受信方向をビームフォーミングで制御することで電波到達方向を的確に把握する。そして、把握された各電波到達方向に対しレイトレーシング法により放射される仮想光線の挙動に建造物構造や材質を反映させた上で、所定範囲内における各仮想光線の全近接点を抽出する。これにより、当該近接点のいずれか、又はその近傍が電波の発信点であると特定することができるので、発信点推定における推定精度を大きく向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発信点推定における推定精度を大きく向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る電波推定方法を実行する電波推定システムを配置した建造物の全体を透視して示す斜視図である。
【図2】受信機の概略的なシステムブロック図である。
【図3】送信端末の位置を推定する際に演算処理部が行う処理手順を概略的に示した説明図である。
【図4】到来角を抽出した分布を示す図である。
【図5】建造物における構造データを可視化して示した図である。
【図6】仮想光路の透過を示す図、及び、仮想光路の反射を説明する説明図である。
【図7】単位方向ベクトルの方位角と仰角を説明する図である。
【図8】図1に対応した仮想電波伝搬経路図の例を示す側面図である。
【図9】2つの仮想光路上における最近接点の配置関係を示す図である。
【図10】発信点と最も近接する探索範囲との配置関係を示す図である。
【図11】演算処理部のCPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図12】図11中のステップS100において実行される到来角候補絞り込み処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の電波推定方法を実行する電波推定システムを配置した建造物の全体を透視して示す斜視図である。
【0026】
図1において、本実施形態の電波推定システムSは、建造物Hの内部を移動可能な送信端末1が電波を発信し、同じ建造物Hの内部で基本的に固定して配置される受信機(電波推定装置)2が上記電波の受信状況に基づいて上記送信端末1の発信点位置を推定するものでる。
【0027】
ここで、本実施形態による電波推定システムSを実施するにあたっては、以下の条件を満たす環境が前提となっている。
(1)送信端末1及び受信機2は一対である。
(2)送信端末1及び受信機2は、外部から閉じた同一の屋内空間に存在する。
(3)上記屋内空間を形成するそれぞれの壁の位置、形状、大きさ、及び電波に対する性質が全て既知である。
【0028】
図1に示す例では、建造物Hの全体が6面の外壁12,13,14,15,16で略直方体に形成されており、その内部空間が2階床面21によって1階と2階に上下方向に仕切られている。さらに、各階の内部空間は内壁22,23によって水平方向に2つの部屋に仕切られている。このような建造物Hの内部で、送信端末1が2階に位置し、受信機2が1階に位置している。なお図中では、図示の便宜上、手前側の外壁が省略されている。また、図示する例では、各階の内壁22,23に人が通過可能な出入口24が形成されている。以下においては、このような配置モデルにおいて受信機2が送信端末1の位置を推定する場合を説明する。
【0029】
図2は、受信機2の概略的なシステムブロック図である。この図2において、受信機2は、アレイアンテナ(受信アンテナ)3、高周波処理部4、A/D処理部5、DSP処理部6、演算処理部(演算手段)7、及び記憶部8を有している。
【0030】
アレイアンテナ3は、複数のアンテナ素子3aを備えており、受信時にはアンテナ素子3aごとの位相差をずらすことで全体の指向性を制御するビームフォーミングを行い、受信電波の到来方向を検出することができる。本実施形態の例では、受信点の位置をほぼ変えることなく、その周囲の360°(ほぼ立体球面範囲)にわたって受信電波の到来方向を検出できるよう、向きの異なる複数のアレイアンテナを備えるか、又は向きを変更できる首振り機構を備える。
【0031】
高周波処理部4は、上記アレイアンテナ3の各アンテナ素子3aが受信した高周波信号を低周波信号にダウンコンバートして出力する。
【0032】
A/D処理部5は、上記高周波処理部4から出力された低周波のアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0033】
DSP処理部6は、上記A/D処理部5から出力されたデジタル受信信号に対して所定の信号処理を行い、解析可能な情報信号として出力する。
【0034】
演算処理部7は、CPU、RAM、及びROMなどを備えている。そして、予めROMなどに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことで、後述の記憶部8に記憶されている各種情報を参照しつつ、上記DSP処理部6から出力された情報信号の解析を行うとともに、受信機2全体の制御を行う。
【0035】
記憶部8は、例えばハードディスクドライブなどの大容量記憶装置からなり、上記演算処理部7が各種の演算及び解析を行う際に必要な情報を記憶する。本実施形態では、記憶する情報の例として、上記建造物Hを構成する各外壁12〜16及び各内壁21,22,23に関する構造データとともに、上記アレイアンテナ3のアンテナ特性も記憶している。
【0036】
図3は、送信端末1の位置を推定する際に上記演算処理部7が行う処理手順を概略的に示した図である。
【0037】
まず最初に、受信機2は、第1処理段階G1で、アレイアンテナ3の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信し、その受信レベルを全周での到来角分布で測定する。次に、第2処理段階G2で、当該到来角分布で測定された受信レベルのうち、所定のレベル以上に対応する到来角候補(到達角度)をピークサーチによって抽出し、さらにそれら到来角候補のうちで所定以上に離間したものを主要到来角(電波到達方向)として絞り込む。なお、以上の2つの処理段階G1,G2のいずれにおいても、演算処理部7は記憶部8からアレイアンテナ3のアンテナ特性を読み出し、参照することで適切な演算を行う。
【0038】
次に、第3処理段階G3で、受信機2の受信点から上記主要到来角に向けてそれぞれ光を仮想的に放射し、それらの反射経路を解析するレイトレーシング解析を行う。この第3処理段階G3において、演算処理部7は記憶部8から建造物Hの構造データを読み出し、参照することで適切な解析を行う。
【0039】
次に、第4処理段階G4で、上記レイトレーシング解析により生成された複数の仮想光路のうちの任意の組み合わせで、互いに最も近接する最近接点を抽出する。次に、第5処理段階G5で、抽出された多数の最近接点の配置に基づいて、それぞれに対応する線密度と評価値を算出する。そして、最後の第6処理段階G6で、それら線密度及び評価値に基づいて、どの最近接点(又は対応する近接位置)が最も発信点つまり送信端末1に近接しているか、を判定する。
【0040】
上述した各処理段階G1〜G6について、それぞれ順に詳細に説明する。
【0041】
まず、上記第1処理段階G1においてアレイアンテナ3の全周方向にわたって受信した電波の受信レベルのうち、所定のレベル以上となる到来角を到来角候補として抽出した結果の一例が図4である。この図4において、アレイアンテナ3の受信点(測定地点)RPを原点としたRx軸−Ry軸−Rz軸の3次元直交座標が設定されており、受信点RPを中心として複数の到来角候補に向けた放射状に受信レベルに対応した長さの線分が示されている。つまり、当該アレイアンテナ3は、図示するそれぞれの到来角候補の角度で所定レベル以上の電波を受信している。なお、このような到来角候補の測定には、公知のいわゆるMUSICアルゴリズム(MUltiple Signal Classificationアルゴリズム)によるピークサーチを行うことで、精度の高い測定が可能となる。
【0042】
しかし、これら抽出した到来角候補は、受信電波の伝達経路における反射時の散乱の影響により、同じくらいの受信レベルにある到来角候補が密集して分布する傾向が強い。一方、本実施形態による電波推定方法において、レイトレーシング解析に用いる到来角は、受信レベルが高いとともにできるだけ伝達経路が異なる(つまりマルチパス経路が離間している)受信電波の到来角を適用することが望ましい。したがって第2処理段階G2では、さらにこれら抽出した到来角候補のうちから次のレイトレーシング解析に用いる主要到来角を絞り込む。
【0043】
具体的には、本実施形態では、互いに立体角で半値角/2(図中のθh/2)だけ離間する到来角候補のうち最も受信レベルの大きいものから順に必要数(図示する例では5つ)の主要到来角を選択する。このようにすることで、各主要到来角をメインローブ方向としてビームフォーミングしたアレイアンテナ3の仮想上の通信範囲が、それぞれ互いに立体角で半値角/2以上に重なることがなく、すなわち各主要到来角は、相互に異なるマルチパス経路で伝達した受信電波に対応した到来角とみなすことができる。
【0044】
次に、上記第3処理段階G3で行うレイトレーシング解析について説明する。本実施形態におけるレイトレーシング解析は、受信機2が受信点で電波を受信した主な方向、つまり主要到来角に対し、逆に、電波にみなした仮想的な光を各主要到来角の方向に放射して、それらの建造物H内における反射通過経路(光線;以下、仮想光路という)を解析することで、元の受信電波が伝達してきたマルチパス経路を逆行して可視化する解析手法である。
【0045】
このレイトレーシング解析を行う上で、上述した第3の前提条件、つまり上記屋内空間を形成するそれぞれの壁の位置、形状、大きさ、及び電波に対する性質が全て構造データとして既知であることが必要となる。図5は、上記図1に対応して、建造物Hにおける構造データを可視化して示した図である。図示する例では、6面の外壁12〜16(ただし手前側の外壁は省略)は全て電波を反射する材質の材料(後述の図6(b)参照)からなり、2階床面21と各階の内壁22,23は全て電波を透過する材質の材料(後述の図6(a)参照)からなっている。また、建造物H全体を包括するX軸−Y軸−Z軸の3次元直交座標が設定されており、各壁面はこのXYZ軸絶対座標における平面方程式としてデータ化されている。また、固定的に配置される受信機2の受信点についても、このXYZ軸絶対座標における座標位置が予め既知となっている。また、特に図示しないが、壁面以外にも電波の伝搬に影響を及ぼす可能性のある構造材については全てデータ化されている必要がある。
【0046】
本実施形態では、建造物Hの内部空間だけを計算範囲として取り扱うことで、各壁面の平面方程式を一般化して取り扱いながらも無限の広さとならず、有限の大きさを有する壁面として取り扱うことができる。また、外壁12〜16における電波の反射についても、その減衰率などがパラメータとしてデータ化されている。記憶部8には以上の構造データが予め入力され、記憶している。
【0047】
ここで、本実施形態でのレイトレーシング解析においては、仮想光路は、図6(a)に示すような内壁22,23(又は2階床面21)の透過を何度も可能とする。一方、図6(b)に示すような外壁12〜16に対する反射は1回だけとし、2回目の外壁12〜16との交点をその仮想光路の終点とする。つまり、一つの仮想光路は、受信点RPから出発して最初の外壁12〜16との交点を反射点RePiとして反射し、次の外壁12〜16(図示省略)との交点を終点EPiとして途絶する。以下において、第i番目の主要到来角に向けて放射した仮想光路を

とし、そのうちの受信点RPと最初の交点である反射点RePiとの間の仮想光路を第1仮想光路節

とし、反射点RePiと終点EPiとの間の仮想光路を第2仮想光路節

とする。
【0048】
第1仮想光路節

と、第2仮想光路節

とは、外壁12〜16の表面に垂直な面、及び入射面に垂直な面に関して、面対称の関係にあり、それぞれの単位方向ベクトルを

、外壁12〜16の表面の法線ベクトルを

(ただし入射面とは逆向き)とすると、以下の関係が成り立つ。



ただし、上記

は外壁12〜16の表面の法線ベクトルあって、
後述する、壁面の位置ベクトル

とは異なるベクトルである。
ここで、






であり、

は入射側単位方向ベクトル

の方位角(いわゆるアジマス;図7参照)、

は入射側単位方向ベクトル

の仰角(いわゆるエレベーション;図7参照)、

は反射側単位方向ベクトル

の方位角(いわゆるアジマス)、

は反射側単位方向ベクトル

の仰角(いわゆるエレベーション)である。
【0049】
また、第1仮想光路節

上の任意の点を示す位置ベクトル、また第2仮想光路節

上の任意の点を示す位置ベクトルは、それぞれ以下の式で示される。









【0050】
一方、各壁面と仮想光路は、






を満たす

が、

又は

を満たすとき交点を有する。ここで、

は壁面の頂点の位置ベクトルであり、

は上記第1仮想光路節

の単位方向ベクトルである。
【0051】
以上のようなレイトレーシング解析を、上記第2処理段階G2で選択した5つの主要到来角に対してそれぞれ行うことにより、図1に対応する図8に示すような建造物H内の仮想電波伝搬経路を算出する経路図が作成される。なお、この図8は図示の便宜上、建造物Hを側面から見た側面図で示している。そして、図中において各仮想光路が集中する範囲内に発信点TP(図5参照)が存在すると推定される。この仮想光路の集中度合いの具体的な指標が線密度であり、さらにこの線密度の有効性を示す指標が評価値である。次の第4処理段階G4では、これら線密度及び評価値を算出するのに必要な最近接点を抽出する。
【0052】
第4処理段階G4では、任意の組み合わせの2つの仮想光路



に対して、図9に示すように互いに最も近接する最近接点Pi、Pj(各請求項記載の近接点)の位置座標を算出する。なお、受信点RPを原点としたRx軸−Ry軸−Rz軸の3次元直交座標は、XYZ軸絶対座標を平行移動した配置関係にある。図示する例では2つの第2仮想光路節



どうしの最近接点を求める場合を示しており、このとき最近接点を求める2つの第2仮想光路節



上に存在する最近接点Pi、Pjの位置ベクトル



はそれぞれ以下のように示される。






ただし

である。これら2つの第2仮想光路節の最近接点Pi,Pjを






より求める。
【0053】
なお、図9に示した上記演算例は第2仮想光路節



どうしでの組み合わせにおける最近接点の求め方であるが、これ以外にも第1仮想光路節

と第2仮想光路節

との組み合わせにおける最近接点も同じ算出方法で求めることができる。なお、同一の仮想光路における仮想光路節どうしの組み合わせ(2回以上の反射を許容した場合でも)や、第1仮想光路節どうしの組み合わせでは、最近接点を求める必要はない。
【0054】
そして上記2つの対応する最近接点Pi、Pjの間の中間点を探索中心点(発信候補点)Pcとし、この探索中心点Pcを中心とする所定の半径rの球内に存在する最近接点の個数が線密度である。つまりこの球形の探索範囲(各請求項記載の所定範囲)30内に存在する最近接点の個数が多いほど、仮想光路節が集中していることになり、当該探索範囲30内に発信点TPが存在する可能性が高くなる。しかし、大きく離間した2つの仮想光路節の組み合わせでも2つの最近接点Pi、Pjとその間の探索中心点Pcを算出できる場合があり、さらにこの探索中心点Pcを中心とした探索範囲30内で他の関係の薄い最近接点が検出される可能性もある。このような場合を排除するために、最近接点間のベクトル

の距離Dを、受信点RPと最近接点Pi,Pjの中点との間の電波伝搬距離で除して求められる評価値

により、線密度の妥当性を評価する。
【0055】
これにより、2つの対応する最近接点Pi,Pjが近接しているほど評価値

の値は小さくなり、受信点RPから最近接点Pi,Pjとの間の電波伝播距離が長いほど評価値

の値は小さくなる。第5処理段階G5では、以上のようにして各探索中心点Pcを中心としたそれぞれの探索範囲30における線密度と評価値を求める。ここで、線密度の算出にあたって探索範囲30内に計数する対象の最近接点は、当該探索中心点Pcを求めた際の元となる2つの仮想光路節にそれぞれ近接する他の仮想光路節との組み合わせで求められる最近接点が望ましい。
【0056】
そして、第6処理段階G6で、上記第5処理段階G5で求められた各探索範囲30での線密度と評価値に基づいて、どの探索範囲30の探索中心点Pcが最も発信点TPに近接しているかを判定する。ここで、線密度が大きい探索範囲30ほど順位が高く、さらに同じ線密度の場合に評価値が小さい探索範囲30ほど順位が高くなる。このような発信点判定を行うことにより、図10に示すような実際の発信点TPに近い探索中心点Pcを判定し、発信点TPを推定することができる。また、前述したように、レイトレーシング解析に用いられた主要到来角は、図示するように明確にマルチパス経路が離間しているものが選択されているため、受信電波の散乱反射の影響を受けることなく高い精度で発信点TPを推定することができる。
【0057】
図11は、以上説明した内容の処理を実行するために、演算処理部7のCPU(特に図示せず)によって実行される制御手順を表すフローチャートである。なお、受信機2が送信端末1から電波を受信した際、又は所定の操作が行われた際にこのフローが開始される。
【0058】
まず、ステップS5で、CPUは、半値角θhなどアレイアンテナ3に関するアンテナ特性を記憶部8から読み出して取得する。その後、CPUは、ステップS10において建造物Hに関する構造データを記憶部8から読み出して取得する。
【0059】
そして、ステップS15へ移り、CPUは、主要到来角選択数の変数Nの値を5に設定する。
【0060】
その後、ステップS20へ移り、CPUは、アレイアンテナ3の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信し、その受信レベルを全周での到来角分布で測定する。つまり、上記第1処理段階G1に対応する制御を行う。
【0061】
そして、ステップS25へ移り、CPUは、到来角分布で測定された受信レベルのうち、所定のレベル以上に対応する到来角候補を上記MUSIC法などに基づくピークサーチによって取得する。
【0062】
その後、ステップS30へ移り、CPUは、上記ステップS25で到来角候補が一つも取得できなかったか否かを判定する。到来角候補の取得数が0である場合、ステップS30の判定が満たされる。つまり、CPUは、この時点で送信端末1からの電波の発信がない、若しくは電波の受信が困難であるとみなし、このままこのフローを終了する。一方、到来角候補が一つでも取得されていた場合、ステップS30の判定は満たされず、ステップS100の到来角候補絞り込み処理へ移る。
【0063】
ステップS100の到来角候補絞り込み処理では、CPUは、上記ステップS25で取得された到来角候補のうち、半値角θh/2以上離間して最も受信レベルの大きい5つの主要到来角を選択する(詳細は後述の図12参照)。なお、上記ステップS25と当該ステップS100とで、上記第2処理段階G2に対応する制御が行われる。
【0064】
その後、ステップS35へ移り、CPUは、上記ステップS100で選択された主要到来角に対するレイトレーシング解析を行う。つまり、上記第3処理段階G3に対応する制御を行う。
【0065】
そして、ステップS40へ移り、CPUは、上記ステップS35で解析された各仮想光路節どうしの最近接点を全て抽出する。つまり、上記第4処理段階G4に対応する制御を行う。
【0066】
その後、ステップS45へ移り、CPUは、上記ステップS40で求められた全ての最近接点に対応する探索中心点Pcを求め、それぞれの探索範囲30の球半径を一律に設定する。
【0067】
そして、ステップS50へ移り、CPUは、上記ステップS45で設定した各探索範囲30のそれぞれにおける線密度を算出する。
【0068】
その後、ステップS55へ移り、CPUは、上記ステップS45で設定した各探索範囲30のそれぞれにおける評価値

を算出する。なお、上記ステップS45、上記ステップS50、及び当該ステップS55とで、上記第5処理段階G5に対応する制御が行われる。
【0069】
そして、ステップS60へ移り、CPUは、上記ステップS50で算出した線密度と、上記ステップS55で算出した評価値

とに基づいて、いずれか一つの探索中心点を発信点TPとして判定する。つまり、上記第6処理段階G6に対応する制御を行う。そして、このフローを終了する。
【0070】
図12は、上記図11中のステップS100において実行される到来角候補絞り込み処理の詳細手順を表すフローチャートである。
【0071】
ステップS105で、CPUは、到来角候補選択数の変数nの値を0にリセットする。
【0072】
その後、ステップS110へ移り、CPUは、この時点での選択範囲内に到来角候補が一つでも存在しているか否かを判定する。一つも存在していない場合、判定が満たされ、そのままこのフローを終了する。ここで到来角候補選択数nの値が5未満である場合でも、前述のステップS35ではそのままn本の主要到来角に対してレイトレーシング解析が行われる。
【0073】
また一方、この時点での選択範囲内に到来角候補が一つでも存在している場合、ステップS110の判定は満たされず、ステップS115へ移る。
【0074】
ステップS115では、CPUは、この時点の選択範囲内で受信レベルが最大である到来角候補を選択し、ステップS120で到来角候補選択数nの値を1増加する。
【0075】
その後、ステップS125へ移り、CPUは、上記ステップS115で選択した到来角候補の方位角及び仰角のそれぞれ±半値角θh/2の範囲を選択範囲から除外する。なお、この場合には、受信点RPを頂点とし、半値角θhを頂角とした略四角錐の範囲で選択範囲の除外を行うことになる。これ以外に、選択した到来角候補を中心とした立体角で±半値角θh/2の範囲を選択範囲から除外してもよい。この場合には、受信点RPを頂点とし、半値角θhを頂角とした略円錐の範囲で選択範囲の除外を行うことになる。
【0076】
そして、ステップS130へ移り、CPUは、この時点での到来角候補選択数nの値が、主要到来角選択数Nの値(=5;上記ステップS15参照)以上となったか否かを判定する。到来角候補選択数nが主要到来角選択数N未満である場合、つまりn<5である場合、判定は満たされず、上記ステップS110へ戻って同様の手順を繰り返す。一方、n≧5である場合、ステップS130の判定が満たされ、このフローを終了する。
【0077】
以上において、上記第1処理段階G1が各請求項記載の第1手順に相当し、上記第3処理段階G3及び第4処理段階G4が第2手順に相当し、上記第2処理段階G2が第3手順に相当し、上記第5処理段階G5及び第6処理段階G6が第4手順に相当する。また、上記第1処理段階G1が各請求項記載の受信制御手段として機能し、第3処理段階G3及び第4処理段階G4が近接点抽出手段として機能する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態においては、複数のアンテナ素子3aの受信方向をビームフォーミングで制御することで受信電波の主要到来角を的確に把握する。そして、把握された各主要到来角に対しレイトレーシング法により放射される仮想光線の挙動に建造物構造や材質を反映させた上で、探索範囲30内における各光線の最近接点を抽出する。これにより、当該最近接点のいずれか、又はその近傍が電波の発信点TPであると特定することができるので、発信点推定における推定精度を大きく向上することができる。
【0079】
また、この実施形態では特に、電波受信時における受信レベルでの到来角分布に基づきMUSIC法などによるピークサーチを実行することにより、レイトレーシング法での仮想光の放射対象となる主要到来角を予め確実に絞り込むことができる。この結果、さらに発信点推定精度を向上することができる。
【0080】
また、この実施形態では特に、線密度計算を行い、より多くの最近接点が含まれることとなる探索範囲30を見つけ出すことで、当該探索範囲30に含まれる最近接点のいずれか、又はその近傍が電波の発信点TPであると確実に特定することができる。
【0081】
また、この実施形態では特に、所定の一つの探索中心点に関連する2つの最近接点の位置ベクトルの差の絶対値と、当該探索中心点及び前記測定地点の間の電波伝播距離とに基づく評価値を用いて演算を行うことで、容易かつ迅速に1つの発信点TPを特定することができる。
【0082】
なお、球形状である探索範囲30の半径の大きさについては、上記実施形態では一律に設定したが、本発明はこれに限られない。例えば、いずれの探索範囲30においても初期的に半径を小さく設定し、内部に最近接点が検出されるまで所定幅で徐々に増加させるようにしてもよい。この場合に、もし半径が極端に大きくなってもそれだけ評価値の値が大きくなるので当該探索範囲30の順位が低くなり選択されることはなくなる。
【0083】
なお、以上において、図2等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0084】
また、図11、図12等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0085】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0086】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0087】
1 送信端末
2 受信機(電波推定装置)
3 アレイアンテナ(受信アンテナ)
3a アンテナ素子
4 高周波処理部
5 A/D処理部
6 DSP処理部
7 演算処理部(演算手段)
8 記憶部
12,13,14 外壁
15,16 外壁
21 2階床面
22,23 内壁
24 出入口
30 探索範囲(所定範囲)
101 無線端末
S 電波推定システム
H 建造物
RP 受信点(測定地点)
Pc 探索中心点(発信候補点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の発信点を推定する電波推定方法であって、
建造物内に位置する所定の測定地点から、ビームフォーミングにより複数のアンテナ素子の指向性を制御しつつ、所定の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信する第1手順と、
前記第1手順で受信した前記全ての方向に含まれる複数の電波到達方向それぞれに対し、前記測定地点からレイトレーシング法により光を仮想的に仮想光線として放射し、前記建造物内の仮想電波伝播経路を算出する経路図において、前記建造物の構造及び各構造材の材質を前記仮想電波伝播経路を算出するパラメータとして用いて、前記放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された前記2仮想光線がお互いに最も近づいた位置を前記経路図上の近接点として、前記近接点を全て抽出する第2手順と
を有することを特徴とする電波推定方法。
【請求項2】
請求項1記載の電波推定方法において、
前記第1手順で各方向から受信した電波の到達角度ごとの受信レベルから、ピークサーチによって複数の電波到達方向を抽出する第3手順を有し、
前記第2手順は、
前記第3手順で抽出した前記複数の電波到達方向それぞれに対し、前記測定地点からレイトレーシング法により前記仮想光線を放射して前記近接点を抽出する手順である
ことを特徴とする電波推定方法。
【請求項3】
請求項2記載の電波推定方法において
前記仮想電波伝播経路図の前記所定範囲において線密度計算により算出される前記近接点の数に基づき、前記電波の発信点を特定する第4手順を有する
ことを特徴とする電波推定方法。
【請求項4】
請求項3記載の電波推定方法において、
前記第4手順は、
前記発信点に該当する複数の発信候補点のそれぞれに関し、所定の一つの発信候補点に関連する2つの近接点の位置ベクトルの差の絶対値と、当該発信候補点及び前記測定地点の間の電波伝播距離と、により評価値を算出し、評価値の値が最小となる1つの前記発信候補点を、前記電波の発信点として特定する
ことを特徴とする電波推定方法。
【請求項5】
電波の発信点を推定する電波推定装置に備えられた演算手段に、
建造物内に位置する所定の測定地点から、ビームフォーミングにより複数のアンテナ素子の指向性を制御しつつ、所定の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信する第1手順と、
前記第1手順で受信した前記全ての方向に含まれる複数の電波到達方向それぞれに対し、前記測定地点からレイトレーシング法により光を仮想的に仮想光線として放射し、前記建造物内の仮想電波伝播経路を算出する経路図において、前記建造物の構造及び各構造材の材質を前記仮想電波伝播経路を算出するパラメータとして用いて、前記放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された前記2仮想光線がお互いに最も近づいた位置を前記経路図上の近接点として、前記近接点を全て抽出する第2手順と
を実行させるための電波推定プログラム。
【請求項6】
電波の発信点を推定する電波推定装置であって、
建造物内に位置する所定の測定地点に設けられ、複数のアンテナ素子を備えた受信アンテナと、
ビームフォーミングにより前記複数のアンテナ素子の指向性を制御しつつ、所定の受信角範囲における全ての方向にわたって電波を受信する受信制御手段と、
前記受信制御手段により受信された前記全ての方向に含まれる複数の電波到達方向それぞれに対し、前記測定地点からレイトレーシング法により光を仮想的に仮想光線として放射し、前記建造物内の仮想電波伝播経路を算出する経路図において、前記建造物の構造及び各構造材の材質を前記仮想電波伝播経路を算出するパラメータとして用いて、前記放射した複数の仮想光線の中から異なる任意の2仮想光線を選択する組み合わせによって抽出された前記2仮想光線がお互いに最も近づいた位置を前記経路図上の近接点として、前記近接点を全て抽出する近接点抽出手段と
を有することを特徴とする電波推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−118024(P2012−118024A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270685(P2010−270685)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】