電波源識別装置
【課題】振幅対位相特性を過不足なく抽出して電波源の識別をする。
【解決手段】信号検出部12は未知電波源からの受信信号BSの信号諸元を検出し、記録保存装置16は受信機雑音の分散σn2及び既知の送信装置名と関連付けられた複数の振幅対位相特性APCrefを記録する。平均電力出力部13aは移動窓を用いて受信信号BSを部分的に抽出し、部分信号の平均電力PSを算出する。検定部13bは平均電力PSが受信機雑音の分布と合致するか否かの棄却検定を行い、受信信号の立ち上がり始点kus及び立下り終点kdeを抽出し、端点抽出部13cは受信信号の立ち上がり及び立下りの区間Γu,Γdを決定する。波形抽出部13dは区間Γu及びΓdに対応する振幅変化部分AF及び位相変化部分θFを抽出し、特徴量抽出部14は線形変換により振幅対位相特性APCを抽出し、照合部15は振幅対位相特性APC,APCrefを照合する。
【解決手段】信号検出部12は未知電波源からの受信信号BSの信号諸元を検出し、記録保存装置16は受信機雑音の分散σn2及び既知の送信装置名と関連付けられた複数の振幅対位相特性APCrefを記録する。平均電力出力部13aは移動窓を用いて受信信号BSを部分的に抽出し、部分信号の平均電力PSを算出する。検定部13bは平均電力PSが受信機雑音の分布と合致するか否かの棄却検定を行い、受信信号の立ち上がり始点kus及び立下り終点kdeを抽出し、端点抽出部13cは受信信号の立ち上がり及び立下りの区間Γu,Γdを決定する。波形抽出部13dは区間Γu及びΓdに対応する振幅変化部分AF及び位相変化部分θFを抽出し、特徴量抽出部14は線形変換により振幅対位相特性APCを抽出し、照合部15は振幅対位相特性APC,APCrefを照合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空間に放射された電波を受信してその諸元を分析し、電波送信源を識別する電波源識別装置に関する。この発明は、電波送信源の種類を識別するためにだけでなく、同一機種で異なる個体を識別するために使用される。
【背景技術】
【0002】
通信波又はレーダ波を放射する送信装置は、適用環境に応じて、振幅、位相、搬送波周波数、変調方式、パルス幅、及びパルス間隔等の信号諸元を付加して、電波を放射する。受信機は、送信装置から放射された電波を受信し、受信波に含まれる各種の信号諸元を分析することによって情報を得る。このとき、受信した信号の諸元を特徴量として、予め記録保存された送信装置の特徴量と照合することにより、その電波を放射した送信装置を特定することが出来る。
【0003】
従来の技術は、送信装置が放射する電波に付与する振幅、位相、搬送波周波数、パルス幅、及びパルス間隔等の意図した変調によって表れる特徴量を用いて、送信装置を識別している。しかし、意図した変調による特徴量により、送信装置の機種を識別することは出来ても、同一機種の送信装置を識別することは困難であるとされている。
【0004】
ところで、送信装置が放射する電波の立ち上がり部分及び立下り部分は、送信装置の意図しない変調による特徴を含んでいると、考えられている。
【0005】
例えば、特許文献1は、無線信号の同定装置を開示している。この無線信号の同定装置は、無線信号の立ち上がり時及び立下り時の振幅変化部分を抽出し、更に振幅変化部分に対応する位相特性を抽出する。そして、上記同定装置は、抽出した振幅変化部分と位相変化部分とから振幅対位相特性を抽出し、振幅対位相特性を無線信号の特徴量として予め記録保存した送信装置の特徴量と照合することで、無線信号を同定する。この無線信号の同定装置は、信号の立ち上がり時及び立下り時の振幅変化部分を信号振幅で決まる閾値によって抽出している。そして、上記同定装置は、抽出した振幅変化部分の正規化を逆正接曲線で以って行い、これに対応する位相変化部分によって振幅対位相特性を抽出する。
【0006】
【特許文献1】特開2007−132906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、信号振幅で決まる閾値は受信機により生ずるノイズの影響を受け易いため、信号の立ち上がり時及び立下り時の振幅部分の長さが、本来抽出されるべき長さよりも短くなったり、或いは、長くなったりすることがあり、抽出が安定して行われないという問題点がある。
【0008】
ところで、受信した電波から抽出した振幅特性の信号強度は、受信した電波の到来方向又はアンテナパターン等の影響により異なるため、独立に採取された信号データとリファレンスデータとを照合する際に振幅特性の最大値を1とした振幅特性の正規化が必要とされるが、上記の問題点に起因して、同一機種である送信装置の振幅特性対位相特性のバラツキが大きくなり、その結果、同一機種の識別精度が低下するという問題点が生じている。
【0009】
この発明は、上記の様な問題点を解決するために成されたものであり、信号の立ち上がり時の振幅部分(以下、「信号の立ち上がり部分」と言う。)及び信号の立下り時の振幅部分(以下、「信号の立下り部分」と言う。)を過不足なく精度良く抽出可能とし、振幅対位相特性を線形変換によって正規化することで特徴量の取得を容易にして送信装置の識別精度を高め得ることを、その主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における電波源識別装置は、未知の電波源から放射された電波をアンテナ及び受信機を介して得られた受信信号の振幅特性、位相特性及びパルス幅を含む信号諸元を検出する信号検出部と、受信機雑音の分散及びそれぞれが既知の送信装置名と関連付けられた既知の複数の振幅対位相特性を記録及び保存する記録保存装置と、1)時間軸上の移動窓を用いて前記受信信号を部分的に抽出し、前記移動窓により抽出された部分信号の平均電力を算出し、2)前記記録保存装置にアクセスして前記受信機雑音の前記分散を取得した上で、算出した前記部分信号の前記平均電力が前記分散で与えられる前記受信機雑音が従うべき分布と合致するか否かの棄却検定に基づいて前記受信信号の立ち上がり始点又は立下り終点を抽出し、3)前記受信信号の前記立ち上がり始点又は前記立下り終点及び前記パルス幅に基づいて前記受信信号の立ち上がり終点又は立下り始点を算出することで前記受信信号の立ち上がり区間又は立下り区間を決定すると共に、4)前記受信信号の前記立ち上がり区間又は前記立下り区間に基づいて、前記受信信号の前記振幅特性及び前記位相特性の内で前記受信信号の前記立ち上がり区間又は前記立下り区間に対応する部分である振幅変化部分及び位相変化部分を、前記受信信号の前記振幅特性及び前記位相特性より抽出する、過渡応答部抽出部と、前記受信信号の前記振幅変化部分及び前記位相変化部分の各々に対して線形変換による正規化を行うことで前記受信信号の振幅対位相特性を抽出する特徴量抽出部と、前記記録保存装置に順次アクセスして前記記録保存装置より読み出した前記既知の複数の振幅対位相特性の各々と抽出された前記受信信号の前記振幅対位相特性を順次に照合し、照合の結果、前記既知の複数の振幅対位相特性の内で前記受信信号の前記振幅対位相特性と一致する既知の振幅対位相特性が存在する場合には、当該既知の振幅対位相特性に関連付けられた前記既知の送信装置名を前記未知の電波源に特定付ける照合部とを、備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受信信号の立ち上がり部分又は立下り部分はノイズの電力を用いた棄却検定によって抽出されるので、ノイズの大きさに依らずに受信信号の立ち上がり部分及び立下り部分を抽出することが出来、受信信号の立ち上がり時刻の検出精度を向上させることが出来る。
【0012】
しかも、本発明によれば、受信信号の振幅対位相特性は線形変換されるため、未知の電波源の機種判別をより容易化することが出来る。
【0013】
以下、この発明の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に、詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る電波源識別装置10の構成例を示すブロック図である。図1に示す様に、電波源識別装置10は、大要、A/D変換器11と、信号検出部12と、過渡応答部抽出部13と、特徴量抽出部14と、照合部15と、記録保存装置16とを備えている。そして、過渡応答部抽出部13は、平均電力出力部13aと、検定部13bと、端点抽出部13cと、波形抽出部13dとを備えている。又、特徴量抽出部14は、線形近似特性抽出部14aと、特性変換部14bとを備えている。尚、電波源識別装置10の信号検出部12と過渡応答部抽出部13と特徴量抽出部14と照合部15とは、例えばコンピュータ又はDSPによってソフトウェア的に構成される。或いは、各部12〜15は、それぞれの機能を呈する回路装置としてハードウェア的に構成されていても良い。又、記録保存装置16は、例えば、コンピュータに内蔵又は付属されるメモリ若しくはハードディスクによって構成される。
【0015】
未知の電波源から放射された電波は、アンテナ(図示せず。)及び受信機(図示せず。)を介して受信されることで、受信信号SGとなる。受信信号SGは図1の電波源識別装置10に入力される。
【0016】
先ず、A/D変換器11は、受信信号SGをディジタル化(時間的な離散化及び量子化)する。ここで、図2は、ディジタル化された受信信号SGの時間軸に対する振幅波形の一例を示す。図2に示す様に、受信信号SGは、信号(振幅)の立ち上がり部分及び立下り部分を含んでいるものとする。尚、受信信号SGは、信号の立ち上がり部分のみを含むデータであっても良いし、或いは、信号の立下り部分のみを含むデータであっても良い。
【0017】
次に、信号検出部12は、ディジタル化された受信信号SGの変調方式M及び瞬時周波数fを抽出する。その上で、信号検出部12は、検出した瞬時周波数fを用いて、受信信号SGをダウンコンバートして、有効帯域幅で帯域制限をしたベースバンド信号BSを算出する。そして、信号検出部12は、ベースバンド信号BSの振幅特性A、位相特性θ、パルス幅PD、パルス間隔PI等の信号諸元を検出する。ここで、位相特性θは、信号観測時間内に於いて連続関数になっているものとする。図3は、ベースバンド信号BSの振幅特性Aを示す図であり、又、図4は、ベースバンド信号BSの位相特性θを示す図である。尚、上記の変調方式M、瞬時周波数f、振幅特性A、位相特性θ、パルス幅PD、及びパルス間隔PI等の信号諸元の抽出方法として、一般的な手法を用いても良い。
【0018】
平均電力出力部13aは、信号検出部12より出力されたベースバンド信号BSの振幅値及びパルス幅PDを与える情報信号を受信し、ベースバンド信号BSの振幅値に窓長Lである時間軸上の移動窓Wjを乗算して、時刻(切り取り開始時刻に相当。)kから時刻k+Lまでの区間のみに値を有する部分信号SWjを算出する(部分信号SWjの抽出ないしは切り出し。)。
【0019】
【数1】
【0020】
数1に於いて、kは離散時間(A/D変換での各サンプリング時刻)のインデックスを、j(j=1、・・・、J)は移動窓Wのインデックスを、Jはベースバンド信号長Nに含まれる移動窓の数を、・(ドット)は乗算記号を、各々示す。
【0021】
ここで、図5は、ベースバンド信号BS(k)の振幅特性Aと時間軸上の移動窓Wj(k)(j=1、・・・、J)との対応を示す。図5に示す様に、移動窓Wj(k)の切り取り開始時刻は時刻kであり、次の移動窓Wj+1(k)の切り取り開始時刻は時刻(k+τ)である。
【0022】
又、移動窓Wjの窓長Lは、2のべき乗で与えられ、且つ、図1の信号検出部12により抽出されたパルス幅PDの半分よりも小さな値となる様に設定される。即ち、窓長Lは、
【0023】
【数2】
【0024】
で与えられる関係式を満たす。但し、数2のpは自然数、PDはパルス幅に含まれる離散時間のインデックス数を表す。
【0025】
更に、平均電力出力部13aは、部分信号SWjの平均電力PSjを、
【0026】
【数3】
【0027】
で与えられる式より算出した上で、部分信号SWjの平均電力PSjを検定部13bへ出力する。
【0028】
次に、図1の検定部13bは、記録保存装置16にアクセスして、記録保存装置16内に予め記録・保存されている受信機雑音の分散σn2を記録保存装置16より読み出した上で、平均電力出力部13aより受信した部分信号SWjの平均電力PSjが分散σn2の受信機雑音が従う分布と合致するか否かの判定、即ち、棄却検定を実行する。
【0029】
ここで言う「棄却検定」とは、観測された分布がある特定の分布に一致しているといえるか否かを判定する手法を意味する。以下では、一例として、「カイ二乗検定」を用いた棄却検定の方法について記載する。
【0030】
先ず、受信機雑音は時間的にも空間的にも白色であるとし、受信機雑音は、平均値が0であり、分散がσn2である正規分布に従うものとする。
【0031】
ここで、「j番目の移動窓Wjによって切り出された部分信号SWjの平均電力PSjは、受信機雑音が従う分布に合致する」という仮説を、仮説H0と定義する一方、「j番目の移動窓Wjによって切り出された部分信号SWjの平均電力PSjは、受信機雑音が従う分布に合致しない」という仮説を、仮説H1と定義する。
【0032】
このとき、仮説H0が正しいならば、
【0033】
【数4】
【0034】
の式で与えられるカイ二乗値は、自由度が1のカイ二乗分布に従う。
【0035】
部分信号SWjの平均電力PSjが、受信機雑音が従う分布に合致しない場合には、数4の式の分子が大きくなるため、数4の式で与えられるカイ二乗値は大きくなる。これに対して、部分信号SWjの平均電力PSjが、受信機雑音の分散σn2に近い値の場合には、数4の式で与えられるカイ二乗値は小さくなる。
【0036】
ここで、有意水準をαとするとき、自由度1のカイ二乗分布に於いて、
【0037】
【数5】
【0038】
の関係式を満たす様なχ2(α)を求める。数5に於いて、Pr{ }は、{ }内の事象が起こる確率を表す。
【0039】
そこで、図1の検定部13bは、任意の有意水準αを設定した上で、以下の数6で与えられる式により、χ2(α)を算出する。
【0040】
【数6】
【0041】
ここで、
【0042】
【数7】
【0043】
である。
【0044】
今、部分信号SWjの平均電力PSjから数4の式により求められたχ2の値がχ02であるとき、(i)χ02>χ2(α)ならば、検定部13bは、仮説H0を棄却して仮説H1を採択する。他方、(ii)χ02<χ2(α)ならば、検定部13bは、仮説H0を採択することになる。例えば、自由度が1で有意水準αが5パーセントであるときには、カイ二乗値χ2(0.05)は3.84となる。観測値から得たカイ二乗値χ02が3.92であったとき、χ02>χ2(α)が成立するから、検定部13bは、仮説H0を棄却し、仮説H1を採択する。
【0045】
ここで、仮説H0の採択域EA及び棄却域ERの関係の一例を、図6に示す。
【0046】
部分信号SWjの平均電力PSjと、その分散がσn2である受信機雑音との棄却検定に於いて、仮説H0が採択された場合には、移動窓Wjに含まれる部分信号SWjはノイズのみであることがわかる。この場合、図1の検定部13bは、部分信号SWjにベースバンド信号が含まれていなかったことを、「信号未検出の通知」として、平均電力出力部13aに通知すると共に、記録保存装置16内に記録・保持されている受信機雑音の分散σn2を、部分信号SWjの平均電力PSjの値に更新する。
【0047】
その結果、平均電力出力部13aは、検出部13bからの信号未検出の通知の受信に応じて、ベースバンド信号BSの切り取り開始時刻を時刻kから時刻(k+τ)(τ>0)に変更した上で移動窓Wj+1を生成し、数1の式に従って算出した新たな部分信号SWj+1を抽出する。ここで、図7は、棄却検定のフローチャートを示す。又、図8は、移動窓Wの時間軸方向へのシフトを示す。
【0048】
図7に示す通り、図1の検定部13bは、平均電力出力部13aから部分信号SWjの平均電力PSjが入力される毎に、既述した棄却検定を行う。そして、仮説H0が棄却されて仮説H1が採択されるまで、即ち、部分信号SWjの平均電力PSjがベースバンド信号を含みうる値であると判定されるまで、検定部13bは棄却検定を繰り返す。ここで、移動窓Wm(図8参照。)で切り取った部分信号SWmに於いて検定部13bが上記棄却検定を終了した場合には、検定部13bは、移動窓Wmが値を持つ区間の終点の時刻(km+L)を、ベースバンド信号BSに於ける信号の立ち上がり始点の時刻kus(図8を参照。)、又は、同信号の立下り終点の時刻kdeと決定する。ここで、kus<kdeである。
【0049】
その後、端点抽出部13cは、信号検出部12より出力されるパルス幅PDを与える信号並びに検定部13bより出力された時刻kus及び時刻kdeを与える信号を受信する。そして、端点抽出部13cは、パルス幅PD/2に於ける信号の中点kcよりも時間的に前の信号の振幅部分を「ベースバンド信号BSの立ち上がり部分」とし、他方、信号の中点kcよりも時間的に後の信号の振幅部分を「ベースバンド信号BSの立下り部分」であると認識し、斯かる認識を前提として、以下の算出処理を行う。
【0050】
即ち、検定部13bが、ベースバンド信号BSの立ち上がり始点の時刻kusを与える信号を出力するときには、端点抽出部13cは、
【0051】
【数8】
【0052】
で与えられる式に基づき、ベースバンド信号BSの立ち上がり終点の時刻kueを算出・決定する。
【0053】
他方、検定部13bが、ベースバンド信号BSの立ち下がり終点の時刻kdeを出力するときには、端点抽出部13cは、
【0054】
【数9】
【0055】
で与えられる式に基づき、ベースバンド信号BSの立下り始点の時刻kdsを算出・決定する。
【0056】
ここで、数8及び数9の各式に表れるεは端点の調整シロであり、εは非負整数であるとする。
【0057】
以上の算出処理により得られた各時刻kus,kue,kds,kdeのデータより、端点抽出部13cは、ベースバンド信号BSの立ち上がり区間Γu[kus,kue]及びベースバンド信号BSの立下り区間Γd[kds,kde]を決定する。そして、同部13cは、ベースバンド信号BSの立ち上がり区間Γu[kus,kue]及び立下り区間Γd[kds,kde]の各々を与える信号を、波形抽出部13dへ出力する。
【0058】
波形抽出部13dは、信号検出部12より出力されるベースバンド信号BSの振幅特性A及び位相特性θを与える信号より、ベースバンド信号BSの立ち上がり区間Γu[kus,kue]及び立下り区間Γd[kds,kde]の各々に対応する区間を抜き出して、振幅変化部分AF及び位相変化部分θFを抽出する。ここで、図9は、立ち上がり区間Γu[kus,kue]に於いて抽出された振幅変化部分AFを示しており、又、図10は、立ち上がり区間Γu[kus,kue]に於いて抽出された位相変化部分θFを示している。その後、波形抽出部13dは、抽出した、立ち上がり区間Γu[kus,kue]及び立下り区間Γd[kds,kde]の各々に対応する振幅変化部分AF及び位相変化部分θFを、特徴量抽出部14の各部14a,14bに出力する。
【0059】
特徴量抽出部14の動作は、次の通りである。
【0060】
先ず、線形近似特性抽出部14aは、振幅変化部分AFの内で振幅が急激に増加する部分及び急激に減少する部分を線形近似して、近似直線の傾きβ及び切片γを抽出する。図9の一例によれば、振幅変化部分AFの内で振幅が急激に立ち上がる部分AFRに対して線形近似が成される。
【0061】
次に、特性変換部14bは、過渡応答部抽出部13からの振幅変化部分AF及び位相変化部分θFの各々を与える信号と、線形近似特性部14aからの傾きβ及び切片γを与える信号とを受信して、線形変換により正規化された振幅対位相特性APCの抽出処理を実行する。この線形変換による正規化は、
【0062】
【数10】
【0063】
により与えられる式に基づき、傾きβを含む回転行列及び切片γを含む行列による平行移動を行うことにより実行される。
【0064】
数10の式に於いて、A〜F(k)は時刻kに於ける振幅変化部分AFの線形変換後の値であり、θ〜F(k)は時刻kに於ける位相変化部分θFの線形変換後の値であり、μgは記録保存装置16内に記録・保存されている既知の電波源の近似直線の傾きの補正値であり、μinは記録保存装置16内に記録・保存されている既知の電波源の近似直線の切片の補正値である。
【0065】
そして、特性変換部14bは、上記の線形変換により正規化された後の振幅変化部分A〜F(k)及び位相変化部分θ〜F(k)を用いて、線形変換した後の振幅対位相特性APCを生成・出力する。図11は、特性変換部14bにより抽出された振幅対位相特性APCの一例を示す。
【0066】
照合部15は、特徴量抽出部14より、線形変換により正規化された振幅対位相特性APCを与える信号を受信して、受信した振幅対位相特性APCを、記録保存装置16内に記録・保存されている既知の電波源の特徴量である振幅対位相特性と照合する。この照合方法としては、一般的に知られている手法が用いられても良い。
【0067】
ここで、記録保存装置16は、既知の各電波源の機種名のデータと、当該機種名のデータに関連付けられた振幅対位相特性(特徴量)APCrefのデータ(照合信号)とを、ルックアップテーブルとして、予め記録されて保存している。
【0068】
そこで、照合部15は、未知の電波源の特徴量である振幅対位相特性APCが特徴量抽出部14から照合部15に入力されたタイミングに応じて、記録保存装置16にアクセスして、記録保存装置16に記録された既知の多数の照合信号の振幅対位相特性(特徴量)APCrefを順次に入力し、各振幅対位相特性(特徴量)APCrefが振幅対位相特性APCと一致するか否かの比較処理を行う。
【0069】
この比較処理に於いて、振幅対位相特性APCと一致する既知の照合信号の振幅対位相特性(特徴量)APCrefが見つかる場合には、照合部15は、入力された未知の電波源の特徴量APCは、その一致した既知の照合信号の特徴量であると判定し、その一致した既知の照合信号の特徴量に関係付けられた送信装置の機種名を、記録保存装置16の上記ルックアップテーブルの参照により、特定する。
【0070】
それに対して、未知の電波源の振幅対位相特性(特徴量)APCが記憶保存装置16内に記録されている全ての照合信号の振幅対位相特性(特徴量)APCrefと一致しない場合には、照合部15は、その未知の電波源の振幅対位相特性(特徴量)APCは記録保存装置16内には記録されていない振幅対位相特性(特徴量)であると識別した上で、その未知の電波源の振幅対位相特性(特徴量)APCを新たな照合信号の振幅対位相特性(特徴量)APCrefとして、記録保存装置16内に追加記録される。この場合、記録保存装置16内の上記ルックアップテーブルの送信装置の機種名の欄には、「unknown」と言うデータ信号が入力される。
【0071】
以上に記載した通り、本実施の形態では、未知の電波源から放射されてアンテナ及び受信機を介して受信された信号SGのベースバンド信号BSの振幅特性Aに対して、移動窓Wが適用されて部分信号SWが抽出され、部分信号SWの平均電力PSが既知の分散σn2を有する受信機雑音の分布に適合するか否かの棄却検定が実行されることで、ベースバンド信号BSの立ち上がり始点kusを含む移動窓Wm及びベースバンド信号BSの立下り終点kdeを含む移動窓Wmが特定される。そして、立ち上がり始点kusを含む移動窓Wmでベースバンド信号BSを切り取った区間の終点が立ち上がり終点kueとして算出され、且つ、立下り終点kdeを含む移動窓Wmでベースバンド信号BSを切り取った区間の始点が立下り始点kdsとして算出され、その結果、立ち上がり区間Γu[kus,kue]及び立下り区間Γd[kds,kde]が決定されるので、ベースバンド信号BSの立ち上がり部分及び立下り部分を過不足無く且つ高精度で抽出することが出来る。従って、受信機のノイズの影響により受信信号の振幅波形の立ち上がり部分及び立下り部分の抽出が安定して行われないと言う既述した問題点は解消される。
【0072】
又、本実施の形態では、位相窓Wを用いた棄却決定を通じてベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeが決定されるので、突発的なノイズが振幅変化部分AF及び位相変化部分θFに重畳する場合に於いても、ベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeの位置を精度良く特定することが出来る。
【0073】
更に、本実施の形態によれば、未知の電波源から放射される信号の受信待機中に、受信機よりパルス性のノイズが発生して信号SGに重畳する場合であっても、その様なパルス性ノイズを含む部分信号SWの平均電力PSは、時間軸上の移動窓Wの窓長Lによって平滑化されるので、検定部13bは、部分信号SWの平均電力PSは既知の分散σn2で与えられる受信機雑音の分布に適合すると判断する結果、雑音信号の誤検出を低減化することが出来る。
【0074】
尚、本実施の形態では、アンテナ(図示せず。)及びその後の受信機(図示せず。)を介して得られる信号SGを「受信信号」と記載していたが、広義の意味として、上記のベースバンド信号BSを「受信信号」と定義・解釈しても良い。この点は、後述する実施の形態2及び3に於いても同様である。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る電波源識別装置の全体構成は、後述する検定部及び記録保存装置を除いて、図1の電波源識別装置の全体構成と基本的には同じであるため、同一部分の記載は割愛する。
【0076】
図12は、本実施の形態に於ける過渡応答抽出部20及び記録保存装置25の構成を示すブロック図である。過渡応答抽出部20中の各部21,23,24の動作は、それぞれ実施の形態1に於ける過渡応答抽出部13の対応構成要素13a,13c,13dと同一である。
【0077】
過渡応答抽出部20の検定部22は、記録保存装置25にアクセスした上で、設定した特定の有意水準αを記録保存装置25に出力(通知)する。ここで、記憶保存装置25は、有意水準α毎に予め求められたカイ二乗値χ2(α)(参照値に該当。)が当該有意水準αに関連付けられて記録されているルックアップテーブルを備えている。その結果、検定部22は、記憶保存装置25から、記憶保存装置25に入力した有意水準αに対応するカイ二乗値χ2(α)を読み出して、読み出したカイ二乗値χ2(α)を検定部22内に取り込む(記憶保存装置25から検定部22への上記参照値の通知に該当。)。そして、検定部22は、記憶保存装置25から取り込んだ上記カイ二乗値χ2(α)を用いて、部分信号SWの平均電力PSの棄却検定を行う。ここでの棄却検定は、実施の形態1で記載した通りである。
【0078】
本実施の形態によれば、各有意水準αに対応するカイ二乗値χ2(α)のルックアップテーブルが予め記録保存装置25内に設けられているので、受信機の電源を入れた瞬間に未知の電波源から到来した信号を受信した場合に於いても、受信信号の立ち上がり部分及び立下り部分を確実に抽出することが出来る。
【0079】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る電波源識別装置の全体構成は、実施の形態1に於いて図1に示される電波源識別装置の全体構成と同様である。但し、図1の検定部13bの動作が以下に記載する様に修正されている。
【0080】
図13は、本実施の形態に係る検定部13bの処理手順を示すフローチャートである。
【0081】
図13に示す様に、検定部13bは、棄却検定に於いて、部分信号SWjの平均電力PSjが受信信号SG、従って、ベースバンド信号BSの立ち上がり部分及び立下り部分を含むと判定するときには(χ02>χ2(α)の判定がYESの場合)、そのときの部分信号SWjを部分信号前半部SWj1と部分信号後半部SWj2とに分割する。
【0082】
部分信号の2分割後に於いて、平均電力出力部13aは、部分信号前半部SWj1及び部分信号後半部SWj2を検定部13bより受信し、部分信号前半部SWj1及び部分信号後半部SWj2のそれぞれの平均電力PSj1及びPSj2を数3の式に基づき算出した上で、算出された部分信号前半部SWj1の平均電力PSj1及び部分信号後半部SWj2の平均電力PSj2を検定部13bに出力する。
【0083】
その結果、検定部13bは、部分信号前半部SWj1の平均電力PSj1及び部分信号後半部SWj2の平均電力PSj2のそれぞれに対して、実施の形態1で既述した通りの棄却検定を実施し、部分信号前半部SWj1の平均電力PSj1及び部分信号後半部SWj2の平均電力PSj2に受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり部分又は立下り部分が含まれているか否かを判定する。例えば、図14に例示する様に、部分信号前半部SWj1の棄却検定の結果が仮説H0であり、部分信号後半部SWj2の棄却検定結果が仮説H1である場合には、部分信号SWjを2分割した位置に於いて、採用する仮説が変化したことになる。そこで、検定部13bは、移動窓Wjのシフトは不要と判定した上で、部分信号前半部SWj1の区間の終点を、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeに決定する。
【0084】
これに対して、部分信号前半部SWj1及び部分信号後半部SWj2の何れの棄却検定の結果が仮説H1である場合には、検定部13bは、部分信号前半部SWj1を、更に、部分信号前半部SWj11と部分信号前半部SWj12とに2分割して、部分信号前半部SWj11及び部分信号前半部SWj12の各々について、それぞれ棄却検定を実行する。若し、部分信号前半部SWj11に関して採択された仮説が仮説H0であり、部分信号前半部SWj12に関して採択された仮説が仮説H1である場合には、検定部13bは、移動窓Wjのシフトは不要と判定した上で、部分信号前半部SWj11の区間の終点を、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeに決定する。他方、部分信号前半部SWj11に関して採択された仮説が仮説H1であり、部分信号前半部SWj12に関して採択された仮説も仮説H1である場合には、検定部13bは、更に、部分信号前半部SWj11を2分割し、分割後のそれぞれの部分信号に対して棄却検定を行い、採択される仮説が互いに食い違うまで部分信号前半部の2分割を行った後、仮説H0を採択した部分信号前半部の方の終点を、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeに決定する。
【0085】
尚、コンピュータに搭載されるCPU又はコンピュータに内蔵或いは付属されているメモリの容量等により、部分信号の分割回数を任意に設定することが出来る。
【0086】
以上に記載した本実施の形態によれば、移動窓で切り取った部分信号SWを細分化して棄却検定を行っていくことにより、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点及び立下り終点の位置をより精度良く決定することが出来る。その結果、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点を、パルス到来時刻であるパルス間隔PIとして採用することも可能となる。
【0087】
(変形例)
実施の形態1〜3の各々に於いては、信号検出部12は受信信号SGよりベースバンド信号BSを算出した上で、既述した信号諸元を検出しているが、これに代えて、信号検出部12は、A/D変換した受信信号SGより直接に、受信信号SGの振幅特性A、位相特性θ、パルス幅PD、及びパルス間隔PI等の信号諸元を検出することとしても良い。この場合には、平均電力出力部13aは、受信信号SGの振幅値及びそのパルス幅PDに基づいて、部分信号の平均電力を算出することとなり、検定部13bも、受信信号SGより切り出された部分信号の平均電力に対して、既述した棄却検定を実行することとなる。その後の端点抽出部13c及び波形抽出部13dも、それぞれ、受信信号SGのパルス幅PD、及び、受信信号SGの振幅特性A、位相特性θを利用して、既述した処理を同様に実行することなる。
【0088】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【0089】
尚、「検定部が既述した棄却検定に基づいて受信信号の立ち上がり始点又は立下り終点を抽出する」とは、(1)棄却検定に基づいて受信信号の立ち上がり始点を抽出する場合、(2)棄却検定に基づいて受信信号の立下り終点を抽出する場合、及び、(3)棄却検定に基づいて受信信号の立ち上がり始点及び受信信号の立下り終点を抽出する場合の各々を含む概念として、本発明では用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施の形態1に係る電波源識別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明で識別される受信信号の時間波形の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1に於けるベースバンド信号の振幅特性の一例を示す図である。
【図4】実施の形態1に於けるベースバンド信号の位相特性の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1に於ける移動窓のシフトを示す図である。
【図6】実施の形態1に於ける棄却検定に関する図である。
【図7】実施の形態1に於ける検定部の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1に於ける移動窓と受信信号の立ち上がり始点との関係を示す図である。
【図9】実施の形態1に於いて、立ち上がり区間に於ける振幅変化部分の一例を示す図である。
【図10】実施の形態1に於いて、立ち上がり区間に於ける位相変化部分の一例を示す図である。
【図11】実施の形態1に於ける振幅対位相特性の一例を示す図である。
【図12】実施の形態2に係る過渡応答抽出部の構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態3に於ける受信信号の立ち上がり始点及び立下り終点を決定するための処理手順を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態3に於ける部分信号の分割方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0091】
10 電波源識別装置、11 A/D変換器、12 信号検出部、13,20 過渡応答部抽出部、13a 平均電力出力部、13b,22 検定部、13c,23 端点抽出部、13d,24 波形抽出部、14 特徴量抽出部、14a 線形近似特性抽出部、14b 特性変換部、15 照合部、16,25 記録保存装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、空間に放射された電波を受信してその諸元を分析し、電波送信源を識別する電波源識別装置に関する。この発明は、電波送信源の種類を識別するためにだけでなく、同一機種で異なる個体を識別するために使用される。
【背景技術】
【0002】
通信波又はレーダ波を放射する送信装置は、適用環境に応じて、振幅、位相、搬送波周波数、変調方式、パルス幅、及びパルス間隔等の信号諸元を付加して、電波を放射する。受信機は、送信装置から放射された電波を受信し、受信波に含まれる各種の信号諸元を分析することによって情報を得る。このとき、受信した信号の諸元を特徴量として、予め記録保存された送信装置の特徴量と照合することにより、その電波を放射した送信装置を特定することが出来る。
【0003】
従来の技術は、送信装置が放射する電波に付与する振幅、位相、搬送波周波数、パルス幅、及びパルス間隔等の意図した変調によって表れる特徴量を用いて、送信装置を識別している。しかし、意図した変調による特徴量により、送信装置の機種を識別することは出来ても、同一機種の送信装置を識別することは困難であるとされている。
【0004】
ところで、送信装置が放射する電波の立ち上がり部分及び立下り部分は、送信装置の意図しない変調による特徴を含んでいると、考えられている。
【0005】
例えば、特許文献1は、無線信号の同定装置を開示している。この無線信号の同定装置は、無線信号の立ち上がり時及び立下り時の振幅変化部分を抽出し、更に振幅変化部分に対応する位相特性を抽出する。そして、上記同定装置は、抽出した振幅変化部分と位相変化部分とから振幅対位相特性を抽出し、振幅対位相特性を無線信号の特徴量として予め記録保存した送信装置の特徴量と照合することで、無線信号を同定する。この無線信号の同定装置は、信号の立ち上がり時及び立下り時の振幅変化部分を信号振幅で決まる閾値によって抽出している。そして、上記同定装置は、抽出した振幅変化部分の正規化を逆正接曲線で以って行い、これに対応する位相変化部分によって振幅対位相特性を抽出する。
【0006】
【特許文献1】特開2007−132906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、信号振幅で決まる閾値は受信機により生ずるノイズの影響を受け易いため、信号の立ち上がり時及び立下り時の振幅部分の長さが、本来抽出されるべき長さよりも短くなったり、或いは、長くなったりすることがあり、抽出が安定して行われないという問題点がある。
【0008】
ところで、受信した電波から抽出した振幅特性の信号強度は、受信した電波の到来方向又はアンテナパターン等の影響により異なるため、独立に採取された信号データとリファレンスデータとを照合する際に振幅特性の最大値を1とした振幅特性の正規化が必要とされるが、上記の問題点に起因して、同一機種である送信装置の振幅特性対位相特性のバラツキが大きくなり、その結果、同一機種の識別精度が低下するという問題点が生じている。
【0009】
この発明は、上記の様な問題点を解決するために成されたものであり、信号の立ち上がり時の振幅部分(以下、「信号の立ち上がり部分」と言う。)及び信号の立下り時の振幅部分(以下、「信号の立下り部分」と言う。)を過不足なく精度良く抽出可能とし、振幅対位相特性を線形変換によって正規化することで特徴量の取得を容易にして送信装置の識別精度を高め得ることを、その主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における電波源識別装置は、未知の電波源から放射された電波をアンテナ及び受信機を介して得られた受信信号の振幅特性、位相特性及びパルス幅を含む信号諸元を検出する信号検出部と、受信機雑音の分散及びそれぞれが既知の送信装置名と関連付けられた既知の複数の振幅対位相特性を記録及び保存する記録保存装置と、1)時間軸上の移動窓を用いて前記受信信号を部分的に抽出し、前記移動窓により抽出された部分信号の平均電力を算出し、2)前記記録保存装置にアクセスして前記受信機雑音の前記分散を取得した上で、算出した前記部分信号の前記平均電力が前記分散で与えられる前記受信機雑音が従うべき分布と合致するか否かの棄却検定に基づいて前記受信信号の立ち上がり始点又は立下り終点を抽出し、3)前記受信信号の前記立ち上がり始点又は前記立下り終点及び前記パルス幅に基づいて前記受信信号の立ち上がり終点又は立下り始点を算出することで前記受信信号の立ち上がり区間又は立下り区間を決定すると共に、4)前記受信信号の前記立ち上がり区間又は前記立下り区間に基づいて、前記受信信号の前記振幅特性及び前記位相特性の内で前記受信信号の前記立ち上がり区間又は前記立下り区間に対応する部分である振幅変化部分及び位相変化部分を、前記受信信号の前記振幅特性及び前記位相特性より抽出する、過渡応答部抽出部と、前記受信信号の前記振幅変化部分及び前記位相変化部分の各々に対して線形変換による正規化を行うことで前記受信信号の振幅対位相特性を抽出する特徴量抽出部と、前記記録保存装置に順次アクセスして前記記録保存装置より読み出した前記既知の複数の振幅対位相特性の各々と抽出された前記受信信号の前記振幅対位相特性を順次に照合し、照合の結果、前記既知の複数の振幅対位相特性の内で前記受信信号の前記振幅対位相特性と一致する既知の振幅対位相特性が存在する場合には、当該既知の振幅対位相特性に関連付けられた前記既知の送信装置名を前記未知の電波源に特定付ける照合部とを、備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受信信号の立ち上がり部分又は立下り部分はノイズの電力を用いた棄却検定によって抽出されるので、ノイズの大きさに依らずに受信信号の立ち上がり部分及び立下り部分を抽出することが出来、受信信号の立ち上がり時刻の検出精度を向上させることが出来る。
【0012】
しかも、本発明によれば、受信信号の振幅対位相特性は線形変換されるため、未知の電波源の機種判別をより容易化することが出来る。
【0013】
以下、この発明の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に、詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る電波源識別装置10の構成例を示すブロック図である。図1に示す様に、電波源識別装置10は、大要、A/D変換器11と、信号検出部12と、過渡応答部抽出部13と、特徴量抽出部14と、照合部15と、記録保存装置16とを備えている。そして、過渡応答部抽出部13は、平均電力出力部13aと、検定部13bと、端点抽出部13cと、波形抽出部13dとを備えている。又、特徴量抽出部14は、線形近似特性抽出部14aと、特性変換部14bとを備えている。尚、電波源識別装置10の信号検出部12と過渡応答部抽出部13と特徴量抽出部14と照合部15とは、例えばコンピュータ又はDSPによってソフトウェア的に構成される。或いは、各部12〜15は、それぞれの機能を呈する回路装置としてハードウェア的に構成されていても良い。又、記録保存装置16は、例えば、コンピュータに内蔵又は付属されるメモリ若しくはハードディスクによって構成される。
【0015】
未知の電波源から放射された電波は、アンテナ(図示せず。)及び受信機(図示せず。)を介して受信されることで、受信信号SGとなる。受信信号SGは図1の電波源識別装置10に入力される。
【0016】
先ず、A/D変換器11は、受信信号SGをディジタル化(時間的な離散化及び量子化)する。ここで、図2は、ディジタル化された受信信号SGの時間軸に対する振幅波形の一例を示す。図2に示す様に、受信信号SGは、信号(振幅)の立ち上がり部分及び立下り部分を含んでいるものとする。尚、受信信号SGは、信号の立ち上がり部分のみを含むデータであっても良いし、或いは、信号の立下り部分のみを含むデータであっても良い。
【0017】
次に、信号検出部12は、ディジタル化された受信信号SGの変調方式M及び瞬時周波数fを抽出する。その上で、信号検出部12は、検出した瞬時周波数fを用いて、受信信号SGをダウンコンバートして、有効帯域幅で帯域制限をしたベースバンド信号BSを算出する。そして、信号検出部12は、ベースバンド信号BSの振幅特性A、位相特性θ、パルス幅PD、パルス間隔PI等の信号諸元を検出する。ここで、位相特性θは、信号観測時間内に於いて連続関数になっているものとする。図3は、ベースバンド信号BSの振幅特性Aを示す図であり、又、図4は、ベースバンド信号BSの位相特性θを示す図である。尚、上記の変調方式M、瞬時周波数f、振幅特性A、位相特性θ、パルス幅PD、及びパルス間隔PI等の信号諸元の抽出方法として、一般的な手法を用いても良い。
【0018】
平均電力出力部13aは、信号検出部12より出力されたベースバンド信号BSの振幅値及びパルス幅PDを与える情報信号を受信し、ベースバンド信号BSの振幅値に窓長Lである時間軸上の移動窓Wjを乗算して、時刻(切り取り開始時刻に相当。)kから時刻k+Lまでの区間のみに値を有する部分信号SWjを算出する(部分信号SWjの抽出ないしは切り出し。)。
【0019】
【数1】
【0020】
数1に於いて、kは離散時間(A/D変換での各サンプリング時刻)のインデックスを、j(j=1、・・・、J)は移動窓Wのインデックスを、Jはベースバンド信号長Nに含まれる移動窓の数を、・(ドット)は乗算記号を、各々示す。
【0021】
ここで、図5は、ベースバンド信号BS(k)の振幅特性Aと時間軸上の移動窓Wj(k)(j=1、・・・、J)との対応を示す。図5に示す様に、移動窓Wj(k)の切り取り開始時刻は時刻kであり、次の移動窓Wj+1(k)の切り取り開始時刻は時刻(k+τ)である。
【0022】
又、移動窓Wjの窓長Lは、2のべき乗で与えられ、且つ、図1の信号検出部12により抽出されたパルス幅PDの半分よりも小さな値となる様に設定される。即ち、窓長Lは、
【0023】
【数2】
【0024】
で与えられる関係式を満たす。但し、数2のpは自然数、PDはパルス幅に含まれる離散時間のインデックス数を表す。
【0025】
更に、平均電力出力部13aは、部分信号SWjの平均電力PSjを、
【0026】
【数3】
【0027】
で与えられる式より算出した上で、部分信号SWjの平均電力PSjを検定部13bへ出力する。
【0028】
次に、図1の検定部13bは、記録保存装置16にアクセスして、記録保存装置16内に予め記録・保存されている受信機雑音の分散σn2を記録保存装置16より読み出した上で、平均電力出力部13aより受信した部分信号SWjの平均電力PSjが分散σn2の受信機雑音が従う分布と合致するか否かの判定、即ち、棄却検定を実行する。
【0029】
ここで言う「棄却検定」とは、観測された分布がある特定の分布に一致しているといえるか否かを判定する手法を意味する。以下では、一例として、「カイ二乗検定」を用いた棄却検定の方法について記載する。
【0030】
先ず、受信機雑音は時間的にも空間的にも白色であるとし、受信機雑音は、平均値が0であり、分散がσn2である正規分布に従うものとする。
【0031】
ここで、「j番目の移動窓Wjによって切り出された部分信号SWjの平均電力PSjは、受信機雑音が従う分布に合致する」という仮説を、仮説H0と定義する一方、「j番目の移動窓Wjによって切り出された部分信号SWjの平均電力PSjは、受信機雑音が従う分布に合致しない」という仮説を、仮説H1と定義する。
【0032】
このとき、仮説H0が正しいならば、
【0033】
【数4】
【0034】
の式で与えられるカイ二乗値は、自由度が1のカイ二乗分布に従う。
【0035】
部分信号SWjの平均電力PSjが、受信機雑音が従う分布に合致しない場合には、数4の式の分子が大きくなるため、数4の式で与えられるカイ二乗値は大きくなる。これに対して、部分信号SWjの平均電力PSjが、受信機雑音の分散σn2に近い値の場合には、数4の式で与えられるカイ二乗値は小さくなる。
【0036】
ここで、有意水準をαとするとき、自由度1のカイ二乗分布に於いて、
【0037】
【数5】
【0038】
の関係式を満たす様なχ2(α)を求める。数5に於いて、Pr{ }は、{ }内の事象が起こる確率を表す。
【0039】
そこで、図1の検定部13bは、任意の有意水準αを設定した上で、以下の数6で与えられる式により、χ2(α)を算出する。
【0040】
【数6】
【0041】
ここで、
【0042】
【数7】
【0043】
である。
【0044】
今、部分信号SWjの平均電力PSjから数4の式により求められたχ2の値がχ02であるとき、(i)χ02>χ2(α)ならば、検定部13bは、仮説H0を棄却して仮説H1を採択する。他方、(ii)χ02<χ2(α)ならば、検定部13bは、仮説H0を採択することになる。例えば、自由度が1で有意水準αが5パーセントであるときには、カイ二乗値χ2(0.05)は3.84となる。観測値から得たカイ二乗値χ02が3.92であったとき、χ02>χ2(α)が成立するから、検定部13bは、仮説H0を棄却し、仮説H1を採択する。
【0045】
ここで、仮説H0の採択域EA及び棄却域ERの関係の一例を、図6に示す。
【0046】
部分信号SWjの平均電力PSjと、その分散がσn2である受信機雑音との棄却検定に於いて、仮説H0が採択された場合には、移動窓Wjに含まれる部分信号SWjはノイズのみであることがわかる。この場合、図1の検定部13bは、部分信号SWjにベースバンド信号が含まれていなかったことを、「信号未検出の通知」として、平均電力出力部13aに通知すると共に、記録保存装置16内に記録・保持されている受信機雑音の分散σn2を、部分信号SWjの平均電力PSjの値に更新する。
【0047】
その結果、平均電力出力部13aは、検出部13bからの信号未検出の通知の受信に応じて、ベースバンド信号BSの切り取り開始時刻を時刻kから時刻(k+τ)(τ>0)に変更した上で移動窓Wj+1を生成し、数1の式に従って算出した新たな部分信号SWj+1を抽出する。ここで、図7は、棄却検定のフローチャートを示す。又、図8は、移動窓Wの時間軸方向へのシフトを示す。
【0048】
図7に示す通り、図1の検定部13bは、平均電力出力部13aから部分信号SWjの平均電力PSjが入力される毎に、既述した棄却検定を行う。そして、仮説H0が棄却されて仮説H1が採択されるまで、即ち、部分信号SWjの平均電力PSjがベースバンド信号を含みうる値であると判定されるまで、検定部13bは棄却検定を繰り返す。ここで、移動窓Wm(図8参照。)で切り取った部分信号SWmに於いて検定部13bが上記棄却検定を終了した場合には、検定部13bは、移動窓Wmが値を持つ区間の終点の時刻(km+L)を、ベースバンド信号BSに於ける信号の立ち上がり始点の時刻kus(図8を参照。)、又は、同信号の立下り終点の時刻kdeと決定する。ここで、kus<kdeである。
【0049】
その後、端点抽出部13cは、信号検出部12より出力されるパルス幅PDを与える信号並びに検定部13bより出力された時刻kus及び時刻kdeを与える信号を受信する。そして、端点抽出部13cは、パルス幅PD/2に於ける信号の中点kcよりも時間的に前の信号の振幅部分を「ベースバンド信号BSの立ち上がり部分」とし、他方、信号の中点kcよりも時間的に後の信号の振幅部分を「ベースバンド信号BSの立下り部分」であると認識し、斯かる認識を前提として、以下の算出処理を行う。
【0050】
即ち、検定部13bが、ベースバンド信号BSの立ち上がり始点の時刻kusを与える信号を出力するときには、端点抽出部13cは、
【0051】
【数8】
【0052】
で与えられる式に基づき、ベースバンド信号BSの立ち上がり終点の時刻kueを算出・決定する。
【0053】
他方、検定部13bが、ベースバンド信号BSの立ち下がり終点の時刻kdeを出力するときには、端点抽出部13cは、
【0054】
【数9】
【0055】
で与えられる式に基づき、ベースバンド信号BSの立下り始点の時刻kdsを算出・決定する。
【0056】
ここで、数8及び数9の各式に表れるεは端点の調整シロであり、εは非負整数であるとする。
【0057】
以上の算出処理により得られた各時刻kus,kue,kds,kdeのデータより、端点抽出部13cは、ベースバンド信号BSの立ち上がり区間Γu[kus,kue]及びベースバンド信号BSの立下り区間Γd[kds,kde]を決定する。そして、同部13cは、ベースバンド信号BSの立ち上がり区間Γu[kus,kue]及び立下り区間Γd[kds,kde]の各々を与える信号を、波形抽出部13dへ出力する。
【0058】
波形抽出部13dは、信号検出部12より出力されるベースバンド信号BSの振幅特性A及び位相特性θを与える信号より、ベースバンド信号BSの立ち上がり区間Γu[kus,kue]及び立下り区間Γd[kds,kde]の各々に対応する区間を抜き出して、振幅変化部分AF及び位相変化部分θFを抽出する。ここで、図9は、立ち上がり区間Γu[kus,kue]に於いて抽出された振幅変化部分AFを示しており、又、図10は、立ち上がり区間Γu[kus,kue]に於いて抽出された位相変化部分θFを示している。その後、波形抽出部13dは、抽出した、立ち上がり区間Γu[kus,kue]及び立下り区間Γd[kds,kde]の各々に対応する振幅変化部分AF及び位相変化部分θFを、特徴量抽出部14の各部14a,14bに出力する。
【0059】
特徴量抽出部14の動作は、次の通りである。
【0060】
先ず、線形近似特性抽出部14aは、振幅変化部分AFの内で振幅が急激に増加する部分及び急激に減少する部分を線形近似して、近似直線の傾きβ及び切片γを抽出する。図9の一例によれば、振幅変化部分AFの内で振幅が急激に立ち上がる部分AFRに対して線形近似が成される。
【0061】
次に、特性変換部14bは、過渡応答部抽出部13からの振幅変化部分AF及び位相変化部分θFの各々を与える信号と、線形近似特性部14aからの傾きβ及び切片γを与える信号とを受信して、線形変換により正規化された振幅対位相特性APCの抽出処理を実行する。この線形変換による正規化は、
【0062】
【数10】
【0063】
により与えられる式に基づき、傾きβを含む回転行列及び切片γを含む行列による平行移動を行うことにより実行される。
【0064】
数10の式に於いて、A〜F(k)は時刻kに於ける振幅変化部分AFの線形変換後の値であり、θ〜F(k)は時刻kに於ける位相変化部分θFの線形変換後の値であり、μgは記録保存装置16内に記録・保存されている既知の電波源の近似直線の傾きの補正値であり、μinは記録保存装置16内に記録・保存されている既知の電波源の近似直線の切片の補正値である。
【0065】
そして、特性変換部14bは、上記の線形変換により正規化された後の振幅変化部分A〜F(k)及び位相変化部分θ〜F(k)を用いて、線形変換した後の振幅対位相特性APCを生成・出力する。図11は、特性変換部14bにより抽出された振幅対位相特性APCの一例を示す。
【0066】
照合部15は、特徴量抽出部14より、線形変換により正規化された振幅対位相特性APCを与える信号を受信して、受信した振幅対位相特性APCを、記録保存装置16内に記録・保存されている既知の電波源の特徴量である振幅対位相特性と照合する。この照合方法としては、一般的に知られている手法が用いられても良い。
【0067】
ここで、記録保存装置16は、既知の各電波源の機種名のデータと、当該機種名のデータに関連付けられた振幅対位相特性(特徴量)APCrefのデータ(照合信号)とを、ルックアップテーブルとして、予め記録されて保存している。
【0068】
そこで、照合部15は、未知の電波源の特徴量である振幅対位相特性APCが特徴量抽出部14から照合部15に入力されたタイミングに応じて、記録保存装置16にアクセスして、記録保存装置16に記録された既知の多数の照合信号の振幅対位相特性(特徴量)APCrefを順次に入力し、各振幅対位相特性(特徴量)APCrefが振幅対位相特性APCと一致するか否かの比較処理を行う。
【0069】
この比較処理に於いて、振幅対位相特性APCと一致する既知の照合信号の振幅対位相特性(特徴量)APCrefが見つかる場合には、照合部15は、入力された未知の電波源の特徴量APCは、その一致した既知の照合信号の特徴量であると判定し、その一致した既知の照合信号の特徴量に関係付けられた送信装置の機種名を、記録保存装置16の上記ルックアップテーブルの参照により、特定する。
【0070】
それに対して、未知の電波源の振幅対位相特性(特徴量)APCが記憶保存装置16内に記録されている全ての照合信号の振幅対位相特性(特徴量)APCrefと一致しない場合には、照合部15は、その未知の電波源の振幅対位相特性(特徴量)APCは記録保存装置16内には記録されていない振幅対位相特性(特徴量)であると識別した上で、その未知の電波源の振幅対位相特性(特徴量)APCを新たな照合信号の振幅対位相特性(特徴量)APCrefとして、記録保存装置16内に追加記録される。この場合、記録保存装置16内の上記ルックアップテーブルの送信装置の機種名の欄には、「unknown」と言うデータ信号が入力される。
【0071】
以上に記載した通り、本実施の形態では、未知の電波源から放射されてアンテナ及び受信機を介して受信された信号SGのベースバンド信号BSの振幅特性Aに対して、移動窓Wが適用されて部分信号SWが抽出され、部分信号SWの平均電力PSが既知の分散σn2を有する受信機雑音の分布に適合するか否かの棄却検定が実行されることで、ベースバンド信号BSの立ち上がり始点kusを含む移動窓Wm及びベースバンド信号BSの立下り終点kdeを含む移動窓Wmが特定される。そして、立ち上がり始点kusを含む移動窓Wmでベースバンド信号BSを切り取った区間の終点が立ち上がり終点kueとして算出され、且つ、立下り終点kdeを含む移動窓Wmでベースバンド信号BSを切り取った区間の始点が立下り始点kdsとして算出され、その結果、立ち上がり区間Γu[kus,kue]及び立下り区間Γd[kds,kde]が決定されるので、ベースバンド信号BSの立ち上がり部分及び立下り部分を過不足無く且つ高精度で抽出することが出来る。従って、受信機のノイズの影響により受信信号の振幅波形の立ち上がり部分及び立下り部分の抽出が安定して行われないと言う既述した問題点は解消される。
【0072】
又、本実施の形態では、位相窓Wを用いた棄却決定を通じてベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeが決定されるので、突発的なノイズが振幅変化部分AF及び位相変化部分θFに重畳する場合に於いても、ベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeの位置を精度良く特定することが出来る。
【0073】
更に、本実施の形態によれば、未知の電波源から放射される信号の受信待機中に、受信機よりパルス性のノイズが発生して信号SGに重畳する場合であっても、その様なパルス性ノイズを含む部分信号SWの平均電力PSは、時間軸上の移動窓Wの窓長Lによって平滑化されるので、検定部13bは、部分信号SWの平均電力PSは既知の分散σn2で与えられる受信機雑音の分布に適合すると判断する結果、雑音信号の誤検出を低減化することが出来る。
【0074】
尚、本実施の形態では、アンテナ(図示せず。)及びその後の受信機(図示せず。)を介して得られる信号SGを「受信信号」と記載していたが、広義の意味として、上記のベースバンド信号BSを「受信信号」と定義・解釈しても良い。この点は、後述する実施の形態2及び3に於いても同様である。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る電波源識別装置の全体構成は、後述する検定部及び記録保存装置を除いて、図1の電波源識別装置の全体構成と基本的には同じであるため、同一部分の記載は割愛する。
【0076】
図12は、本実施の形態に於ける過渡応答抽出部20及び記録保存装置25の構成を示すブロック図である。過渡応答抽出部20中の各部21,23,24の動作は、それぞれ実施の形態1に於ける過渡応答抽出部13の対応構成要素13a,13c,13dと同一である。
【0077】
過渡応答抽出部20の検定部22は、記録保存装置25にアクセスした上で、設定した特定の有意水準αを記録保存装置25に出力(通知)する。ここで、記憶保存装置25は、有意水準α毎に予め求められたカイ二乗値χ2(α)(参照値に該当。)が当該有意水準αに関連付けられて記録されているルックアップテーブルを備えている。その結果、検定部22は、記憶保存装置25から、記憶保存装置25に入力した有意水準αに対応するカイ二乗値χ2(α)を読み出して、読み出したカイ二乗値χ2(α)を検定部22内に取り込む(記憶保存装置25から検定部22への上記参照値の通知に該当。)。そして、検定部22は、記憶保存装置25から取り込んだ上記カイ二乗値χ2(α)を用いて、部分信号SWの平均電力PSの棄却検定を行う。ここでの棄却検定は、実施の形態1で記載した通りである。
【0078】
本実施の形態によれば、各有意水準αに対応するカイ二乗値χ2(α)のルックアップテーブルが予め記録保存装置25内に設けられているので、受信機の電源を入れた瞬間に未知の電波源から到来した信号を受信した場合に於いても、受信信号の立ち上がり部分及び立下り部分を確実に抽出することが出来る。
【0079】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る電波源識別装置の全体構成は、実施の形態1に於いて図1に示される電波源識別装置の全体構成と同様である。但し、図1の検定部13bの動作が以下に記載する様に修正されている。
【0080】
図13は、本実施の形態に係る検定部13bの処理手順を示すフローチャートである。
【0081】
図13に示す様に、検定部13bは、棄却検定に於いて、部分信号SWjの平均電力PSjが受信信号SG、従って、ベースバンド信号BSの立ち上がり部分及び立下り部分を含むと判定するときには(χ02>χ2(α)の判定がYESの場合)、そのときの部分信号SWjを部分信号前半部SWj1と部分信号後半部SWj2とに分割する。
【0082】
部分信号の2分割後に於いて、平均電力出力部13aは、部分信号前半部SWj1及び部分信号後半部SWj2を検定部13bより受信し、部分信号前半部SWj1及び部分信号後半部SWj2のそれぞれの平均電力PSj1及びPSj2を数3の式に基づき算出した上で、算出された部分信号前半部SWj1の平均電力PSj1及び部分信号後半部SWj2の平均電力PSj2を検定部13bに出力する。
【0083】
その結果、検定部13bは、部分信号前半部SWj1の平均電力PSj1及び部分信号後半部SWj2の平均電力PSj2のそれぞれに対して、実施の形態1で既述した通りの棄却検定を実施し、部分信号前半部SWj1の平均電力PSj1及び部分信号後半部SWj2の平均電力PSj2に受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり部分又は立下り部分が含まれているか否かを判定する。例えば、図14に例示する様に、部分信号前半部SWj1の棄却検定の結果が仮説H0であり、部分信号後半部SWj2の棄却検定結果が仮説H1である場合には、部分信号SWjを2分割した位置に於いて、採用する仮説が変化したことになる。そこで、検定部13bは、移動窓Wjのシフトは不要と判定した上で、部分信号前半部SWj1の区間の終点を、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeに決定する。
【0084】
これに対して、部分信号前半部SWj1及び部分信号後半部SWj2の何れの棄却検定の結果が仮説H1である場合には、検定部13bは、部分信号前半部SWj1を、更に、部分信号前半部SWj11と部分信号前半部SWj12とに2分割して、部分信号前半部SWj11及び部分信号前半部SWj12の各々について、それぞれ棄却検定を実行する。若し、部分信号前半部SWj11に関して採択された仮説が仮説H0であり、部分信号前半部SWj12に関して採択された仮説が仮説H1である場合には、検定部13bは、移動窓Wjのシフトは不要と判定した上で、部分信号前半部SWj11の区間の終点を、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeに決定する。他方、部分信号前半部SWj11に関して採択された仮説が仮説H1であり、部分信号前半部SWj12に関して採択された仮説も仮説H1である場合には、検定部13bは、更に、部分信号前半部SWj11を2分割し、分割後のそれぞれの部分信号に対して棄却検定を行い、採択される仮説が互いに食い違うまで部分信号前半部の2分割を行った後、仮説H0を採択した部分信号前半部の方の終点を、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点kus又は立下り終点kdeに決定する。
【0085】
尚、コンピュータに搭載されるCPU又はコンピュータに内蔵或いは付属されているメモリの容量等により、部分信号の分割回数を任意に設定することが出来る。
【0086】
以上に記載した本実施の形態によれば、移動窓で切り取った部分信号SWを細分化して棄却検定を行っていくことにより、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点及び立下り終点の位置をより精度良く決定することが出来る。その結果、受信信号SGないしはベースバンド信号BSの立ち上がり始点を、パルス到来時刻であるパルス間隔PIとして採用することも可能となる。
【0087】
(変形例)
実施の形態1〜3の各々に於いては、信号検出部12は受信信号SGよりベースバンド信号BSを算出した上で、既述した信号諸元を検出しているが、これに代えて、信号検出部12は、A/D変換した受信信号SGより直接に、受信信号SGの振幅特性A、位相特性θ、パルス幅PD、及びパルス間隔PI等の信号諸元を検出することとしても良い。この場合には、平均電力出力部13aは、受信信号SGの振幅値及びそのパルス幅PDに基づいて、部分信号の平均電力を算出することとなり、検定部13bも、受信信号SGより切り出された部分信号の平均電力に対して、既述した棄却検定を実行することとなる。その後の端点抽出部13c及び波形抽出部13dも、それぞれ、受信信号SGのパルス幅PD、及び、受信信号SGの振幅特性A、位相特性θを利用して、既述した処理を同様に実行することなる。
【0088】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【0089】
尚、「検定部が既述した棄却検定に基づいて受信信号の立ち上がり始点又は立下り終点を抽出する」とは、(1)棄却検定に基づいて受信信号の立ち上がり始点を抽出する場合、(2)棄却検定に基づいて受信信号の立下り終点を抽出する場合、及び、(3)棄却検定に基づいて受信信号の立ち上がり始点及び受信信号の立下り終点を抽出する場合の各々を含む概念として、本発明では用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施の形態1に係る電波源識別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明で識別される受信信号の時間波形の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1に於けるベースバンド信号の振幅特性の一例を示す図である。
【図4】実施の形態1に於けるベースバンド信号の位相特性の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1に於ける移動窓のシフトを示す図である。
【図6】実施の形態1に於ける棄却検定に関する図である。
【図7】実施の形態1に於ける検定部の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1に於ける移動窓と受信信号の立ち上がり始点との関係を示す図である。
【図9】実施の形態1に於いて、立ち上がり区間に於ける振幅変化部分の一例を示す図である。
【図10】実施の形態1に於いて、立ち上がり区間に於ける位相変化部分の一例を示す図である。
【図11】実施の形態1に於ける振幅対位相特性の一例を示す図である。
【図12】実施の形態2に係る過渡応答抽出部の構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態3に於ける受信信号の立ち上がり始点及び立下り終点を決定するための処理手順を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態3に於ける部分信号の分割方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0091】
10 電波源識別装置、11 A/D変換器、12 信号検出部、13,20 過渡応答部抽出部、13a 平均電力出力部、13b,22 検定部、13c,23 端点抽出部、13d,24 波形抽出部、14 特徴量抽出部、14a 線形近似特性抽出部、14b 特性変換部、15 照合部、16,25 記録保存装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未知の電波源から放射された電波をアンテナ及び受信機を介して得られた受信信号の振幅特性、位相特性及びパルス幅を含む信号諸元を検出する信号検出部と、
受信機雑音の分散及びそれぞれが既知の送信装置名と関連付けられた既知の複数の振幅対位相特性を記録及び保存する記録保存装置と、
1)時間軸上の移動窓を用いて前記受信信号を部分的に抽出し、前記移動窓により抽出された部分信号の平均電力を算出し、2)前記記録保存装置にアクセスして前記受信機雑音の分散を取得した上で、算出した前記部分信号の前記平均電力が前記分散で与えられる前記受信機雑音が従うべき分布と合致するか否かの棄却検定に基づいて前記受信信号の立ち上がり始点又は立下り終点を抽出し、3)前記受信信号の前記立ち上がり始点又は前記立下り終点及び前記パルス幅に基づいて前記受信信号の立ち上がり終点又は立下り始点を算出することで前記受信信号の立ち上がり区間又は立下り区間を決定すると共に、4)前記受信信号の前記立ち上がり区間又は前記立下り区間に基づいて、前記受信信号の前記振幅特性及び前記位相特性の内で前記受信信号の前記立ち上がり区間又は前記立下り区間に対応する部分である振幅変化部分及び位相変化部分を、前記受信信号の前記振幅特性及び前記位相特性より抽出する、過渡応答部抽出部と、
前記受信信号の前記振幅変化部分及び前記位相変化部分の各々に対して線形変換による正規化を行うことで前記受信信号の振幅対位相特性を抽出する特徴量抽出部と、
抽出された前記受信信号の前記振幅対位相特性と、前記記録保存装置に順次にアクセスして前記記録保存装置より読み出した前記既知の複数の振幅対位相特性の各々とを順次に照合し、照合の結果、前記既知の複数の振幅対位相特性の内で前記受信信号の前記振幅対位相特性と一致する既知の振幅対位相特性が存在する場合には、当該既知の振幅対位相特性に関連付けられた前記既知の送信装置名を前記未知の電波源に特定付ける照合部とを、備えたことを特徴とする、
電波源識別装置。
【請求項2】
請求項1記載の電波源識別装置であって、
前記過渡応答部抽出部は、特定の有意水準を前記記録保存装置に通知し、
前記記憶保存装置は、有意水準毎に参照値を記録及び保存しているルックアップテーブルから、前記過渡応答部抽出部より通知を受けた前記特定の有意水準に対応する参照値を取り出して前記過渡応答部抽出部に通知し、
前記過渡応答部抽出部は、前記記録保存装置から通知された前記対応する参照値を用いて、前記部分信号の前記平均電力に対する前記棄却検定を実行することを特徴とする、
電波源識別装置。
【請求項3】
請求項1記載の電波源識別装置であって、
前記過渡応答部抽出部は、
2−1)前記棄却検定に於いて、前記部分信号の前記平均電力が前記受信機雑音の前記分布と合致しないとの判定結果を得た場合には、前記部分信号を前半部分信号と後半部分信号とに2分割して、前記前半部分信号及び前記後半部分信号の各々に対して前記棄却検定を実行し、
2−2)前記前半部分信号及び前記後半部分信号の各々の棄却検定結果が互いに食い違うまで前記2−1)の処理を繰り返し実行し続け、その結果、前記前半部分信号及び前記後半部分信号の各々の棄却検定結果が互いに食い違った場合に、前記前半部分信号及び前記後半部分信号の各々の棄却検定結果の内で当該部分信号の平均電力が前記受信機雑音の前記分布と合致するとの判定結果を得た方の部分信号の終点により前記受信信号の前記立ち上がり始点又は前記立下り終点を抽出することを特徴とする、
電波源識別装置。
【請求項1】
未知の電波源から放射された電波をアンテナ及び受信機を介して得られた受信信号の振幅特性、位相特性及びパルス幅を含む信号諸元を検出する信号検出部と、
受信機雑音の分散及びそれぞれが既知の送信装置名と関連付けられた既知の複数の振幅対位相特性を記録及び保存する記録保存装置と、
1)時間軸上の移動窓を用いて前記受信信号を部分的に抽出し、前記移動窓により抽出された部分信号の平均電力を算出し、2)前記記録保存装置にアクセスして前記受信機雑音の分散を取得した上で、算出した前記部分信号の前記平均電力が前記分散で与えられる前記受信機雑音が従うべき分布と合致するか否かの棄却検定に基づいて前記受信信号の立ち上がり始点又は立下り終点を抽出し、3)前記受信信号の前記立ち上がり始点又は前記立下り終点及び前記パルス幅に基づいて前記受信信号の立ち上がり終点又は立下り始点を算出することで前記受信信号の立ち上がり区間又は立下り区間を決定すると共に、4)前記受信信号の前記立ち上がり区間又は前記立下り区間に基づいて、前記受信信号の前記振幅特性及び前記位相特性の内で前記受信信号の前記立ち上がり区間又は前記立下り区間に対応する部分である振幅変化部分及び位相変化部分を、前記受信信号の前記振幅特性及び前記位相特性より抽出する、過渡応答部抽出部と、
前記受信信号の前記振幅変化部分及び前記位相変化部分の各々に対して線形変換による正規化を行うことで前記受信信号の振幅対位相特性を抽出する特徴量抽出部と、
抽出された前記受信信号の前記振幅対位相特性と、前記記録保存装置に順次にアクセスして前記記録保存装置より読み出した前記既知の複数の振幅対位相特性の各々とを順次に照合し、照合の結果、前記既知の複数の振幅対位相特性の内で前記受信信号の前記振幅対位相特性と一致する既知の振幅対位相特性が存在する場合には、当該既知の振幅対位相特性に関連付けられた前記既知の送信装置名を前記未知の電波源に特定付ける照合部とを、備えたことを特徴とする、
電波源識別装置。
【請求項2】
請求項1記載の電波源識別装置であって、
前記過渡応答部抽出部は、特定の有意水準を前記記録保存装置に通知し、
前記記憶保存装置は、有意水準毎に参照値を記録及び保存しているルックアップテーブルから、前記過渡応答部抽出部より通知を受けた前記特定の有意水準に対応する参照値を取り出して前記過渡応答部抽出部に通知し、
前記過渡応答部抽出部は、前記記録保存装置から通知された前記対応する参照値を用いて、前記部分信号の前記平均電力に対する前記棄却検定を実行することを特徴とする、
電波源識別装置。
【請求項3】
請求項1記載の電波源識別装置であって、
前記過渡応答部抽出部は、
2−1)前記棄却検定に於いて、前記部分信号の前記平均電力が前記受信機雑音の前記分布と合致しないとの判定結果を得た場合には、前記部分信号を前半部分信号と後半部分信号とに2分割して、前記前半部分信号及び前記後半部分信号の各々に対して前記棄却検定を実行し、
2−2)前記前半部分信号及び前記後半部分信号の各々の棄却検定結果が互いに食い違うまで前記2−1)の処理を繰り返し実行し続け、その結果、前記前半部分信号及び前記後半部分信号の各々の棄却検定結果が互いに食い違った場合に、前記前半部分信号及び前記後半部分信号の各々の棄却検定結果の内で当該部分信号の平均電力が前記受信機雑音の前記分布と合致するとの判定結果を得た方の部分信号の終点により前記受信信号の前記立ち上がり始点又は前記立下り終点を抽出することを特徴とする、
電波源識別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−127833(P2010−127833A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304637(P2008−304637)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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