説明

電波監視装置

【課題】 音声信号を高い精度で検出し、除去する電波監視装置を提供する。
【解決手段】 変換手段141が離散化された各受信信号を周波数領域の各信号に変換する。算出手段142が複数の変換された信号の大きさの最も大きい信号からm個(mは自然数:m=1,2,・・・)の信号のm個の周波数値を算出する。算出手段144が複数の変換された信号の大きさの最も大きい信号からn個(nは自然数かつn>m)の信号のn個の周波数値を算出する。統計値算出手段143、145、146がm個の周波数値を基にした第1の統計値とn個の周波数値を基にした第2の統計値を算出する。判定手段147が第2の統計値から第1の統計値を引いた値がある値よりも大きい場合に複数の変換された信号は音声信号であると判定する。分析手段が音声信号でないと判定された信号の分析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を監視する電波監視装置に関し、特に、受信したアナログ音声信号の検出及び除去を行う電波監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信需要の増大に伴い、無線通信装置(無線移動局及び無線基地局)が急速に普及している。このような状況のなかで秩序を保ち、かつ有効に電波を利用するためには、それぞれの無線通信装置を一定の条件のもとで使用する必要がある。しかしながら、無線通信装置の故障や違法な運用などにより、全ての無線通信装置が条件を満たして運用されているとは言えない状況にある。これらの無線通信装置を放置すると、正常に運用されている無線通信装置の運用に障害を及ぼす虞があるため、電波の利用状況を監視して異常電波の発生を防止することが重要になってきている。このような目的のためには各無線通信装置から送出される電波の諸元を推定することが必要であり、そのための信号処理装置が開発されてきている。
【0003】
無線通信で用いられる信号は、アナログ変調信号とデジタル変調信号に分類される。アナログ変調信号は、例えば、AM(Amplitude Modulation)やFM(Frequency Modulation)などが、デジタル変調信号は、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)やFSK(Frequency Shift Keying)などが挙げられる。これらの変調信号を特定するための方式としては、受信信号をI、Q成分に分配し、I、Q成分の時間変化から特徴を抽出する方式が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−262670公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、電波監視のための信号処理装置の更なる精度の向上が要望されている。高精度の信号解析には、信号処理量の増加が避けられない。そのため、観測対象外の信号を信号解析の前処理で取り除き、無駄な信号処理を行わないようにすることが望まれる。また、観測対象外の信号を見つけるための信号処理自体も、可能な限り簡易かつ高精度なことが望まれる。
【0005】
当然のことながら、電波帯域は、世界中であらゆる信号形式での運用が割り当てられている。そのため、アナログ信号(音声信号)とデジタル信号が混在するのは当然であり、そのような環境下で使用される電波監視装置では、観測対象外の信号が干渉することはある程度やむを得ない。しかし、アナログ信号(音声信号)とデジタル信号が混在している状態から所望の信号のみを検出できないと、上述したように無駄な信号処理をすることになり、膨大な処理量を必要とする電波監視装置にとって無駄な処理が増加すると、実用に耐えることができない虞がある。
【0006】
本発明は上記の事情によりなされたもので、その目的は、アナログ音声信号を高い精度で検出し、除去することが可能な電波監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電波監視装置によれば、受信した受信信号の分析を行う電波監視装置において、離散化された各受信信号を周波数領域の各信号に変換する変換手段と、複数の前記変換された信号の大きさの最も大きい信号からm個(mは自然数:m=1,2,・・・)の信号のm個の周波数値を算出する第1の算出手段と、複数の前記変換された信号の大きさの最も大きい信号からn個(nは自然数かつn>m)の信号のn個の周波数値を算出する第2の算出手段と、前記m個の周波数値を基にした第1の統計値と前記n個の周波数値を基にした第2の統計値を算出する統計値算出手段と、前記第2の統計値から前記第1の統計値を引いた値がある値よりも大きい場合に前記複数の変換された信号は音声信号であると判定する判定手段と、音声信号でないと判定された信号の分析を行う分析手段を具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電波監視装置によれば、受信した受信信号の分析を行う電波監視装置において、複数の離散化された受信信号を、離散化されたある数量の受信信号ごとずつ離散化された各受信信号を周波数領域の各信号に変換する変換手段と、前記変換された前記数量の信号ごとに、該信号の大きさの最も大きい信号からm個(mは自然数:m=1,2,・・・)の信号のm個の周波数値を算出し、前記複数の離散化された受信信号に対するmの整数倍個の周波数値を得る第1の算出手段と、前記変換された前記数量の信号ごとに、該信号の大きさの最も大きい信号からn個(nは自然数かつn>m)の信号のn個の周波数値を算出し、前記複数の離散化された受信信号に対するnの整数倍個の周波数値を得る第2の算出手段と、前記mの整数倍個の周波数値を基にした第1の統計値と前記n個の周波数値を基にした第2の統計値を算出する統計値算出手段と、前記第2の統計値から前記第1の統計値を引いた値がある値よりも大きい場合に前記複数の変換された信号は音声信号であると判定する判定手段と、音声信号でないと判定された信号の分析を行う分析手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電波監視装置によれば、アナログ音声信号を高い精度で検出し、除去することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る電波監視装置について詳細に説明する。
本実施形態の電波監視装置は、図1に示すように、RF(radio frequency)部11、周波数変換部12、音声信号除去部13、音声信号検出部14、復調分析部15、表示部16、入力部17、及び、制御部18を備えている。
【0011】
RF部11は、図1に示していないアンテナより、信号を受信する。RF部11では、RF信号処理が行われる。RF部11の出力は、周波数変換部に入力される。
【0012】
周波数変換部12は、後段の信号処理部(音声信号除去部13、音声信号検出部14等)が使用する周波数帯域へ周波数変換を行う。周波数変換部12から出力された信号は、音声信号除去部13及び音声信号検出部14に入力される。
【0013】
音声信号検出部14は、周波数変換部12で周波数変換された信号を入力し、入力した信号が音声信号であるか否かを判定し、この判定結果を含む信号を音声信号除去部13に出力する。音声信号検出部14の具体的な一例は後に図2又は図7を参照して説明する。
【0014】
音声信号除去部13は、音声信号検出部14から出力される信号を元にして、受信した信号を後段の復調分析部15に導くか廃棄するかを選択する。ここで、廃棄するとは、受信信号を復調分析部15に出力しないことである。
【0015】
復調分析部15は、音声信号除去部13で音声信号が除去された信号を入力し、電波を監視するために、観測対象外の信号である音声信号が除去された信号(観測対象信号)の信号諸元を分析し、復調処理が施される。
【0016】
表示部16は、復調分析部15の分析結果を表示したり、その他には電波監視装置10のステータス等を表示する。電波監視装置10のユーザは表示部16を参照することにより、各無線通信装置から送出される信号異常電波の発生及び電波の利用状況を監視して、異常電波の発生を防止することができる。
【0017】
制御部18は、本実施形態の電波監視装置10を統括する制御を行う。制御部18が各部に与える指示は、例えば、RF部11のOn/Off、周波数変換部12に周波数変換を行う帯域の選択を指示、音声信号検出部14に音声信号検出処理のOn/Offを指示、音声信号除去部13に音声信号除去処理のOn/Offを指示、信号分析のための各種パラメータの設定、復調分析部15に復調のための各種パラメータを指示、表示部16に表示制御を指示、入力部17の制御を行う。
【0018】
入力部17は、電波監視装置10にユーザが指示を与えるために使用される。入力部17により入力される指示は、例えば、音声信号検出部14が音声信号であるか否かを判定するために使用する閾値、信号分析のための各種パラメータの設定がある。
【0019】
次に、図1の音声信号検出部14の一例を図2を参照して説明する。
音声信号検出部14は、t軸→f軸変換部141、Top−m算出部142、統計値算出部143、Top−n算出部144、統計値算出部145、差分検出部146、及び、判断部147を備えている。
【0020】
t軸→f軸変換部141は、周波数変換部12が出力した信号を時間領域信号から周波数領域信号に変換する。t軸→f軸変換部141は、例えば、FFT(fast Fourier transformation)変換器である。
【0021】
Top−m算出部142(mは自然数:m=1,2,3,・・・)は、制御部18が設定した絶対値検出期間中にt軸→f軸変換部141が出力した信号を入力し続け、信号の絶対値を検出し、入力した複数の信号のうちのその信号の絶対値が大きい順に信号をソートし、絶対値が大きい方からm番目の信号までの対応するm個の周波数を算出する。また、このmも制御部18に指定される。また、信号の絶対値を検出する場合に、入力した全ての信号の絶対値を検出するのではなく、ある周波数範囲のみを走査し信号の絶対値を決定してもよい。すなわち、例えば、絶対値検出期間中にK個の観測対象信号を入力した場合、周波数範囲内にあるL個(L<K)の観測対象信号から絶対値の大きい方からm番目の信号に対応するm個(m<L)の周波数を算出する。この周波数範囲は、比較的音声の特徴が現れやすい周波数領域(100Hz〜1kHzの周辺領域)を採用することが望ましい。また、ここでは、信号の絶対値を検出しているが、信号のパワー(絶対値の2乗)を検出し、このパワーの大きい方からm番目の信号までの対応するm個の周波数を算出してもよい。すなわち、信号の大きさを検出すればよい。
【0022】
統計値算出部143は、制御部18が設定した算出期間中にTop−m算出部142が算出したm個の周波数ごと入力し続け、入力したm×h個(hは自然数:h=1,2,3,・・・)の周波数に関して統計値を計算する。統計値は、例えば、平均値、分散値がある。ここで、hは制御部18が設定する算出期間で決定される。m×hはサンプル数に対応し、統計値算出部143が統計値を算出するために望ましいサンプル数にするためにhは調整される。例えば、mが小さい場合はhを大きくし、逆にmが大きい場合はhを小さくする。また、計算する統計値は、制御部18からの指示によって変更可能なように設定されてもよい。
【0023】
Top−n算出部144は、上述したTop−m算出部142の自然数mが自然数nに変更されたものと同一であり、統計値算出部145も統計値算出部143と同様である。m及びnは制御部18により個別に設定される。また、統計値算出部143の算出期間及び統計値算出部145の算出期間は同一である場合が多いが同一でなくてもよい。
【0024】
差分検出部146は、統計値算出部143が出力した第1の統計値と統計値算出部145が出力した第2の統計値とを入力し、これらの統計値の差分を計算する。例えば、第2の統計値から第1の統計値を引き算した値を求める。
【0025】
判断部147は、制御部18が設定した閾値と差分検出部146が計算した差分値を比較し、この差分値が閾値よりも大きいか否かに基づいて、差分検出部146が検出した統計値の元になった信号が音声信号であるか否かを判定する。統計値の元になった信号が音声信号ではなくデジタル信号である場合は、音声信号の場合に比較して、mの違いによって算出した統計値に違いは少ない。一方、音声信号のスペクトルは、音声信号特有の調波構造を有しており、スペクトルの大きさを観測することで、音声の調波構造の特徴が効率的に出現する。この調波構造のため、統計値の元になった信号が音声信号である場合は、デジタル信号である場合に比較して、mの違いによって算出した統計値に違いが大きくなる。
判断部147は、例えば、統計値を分散値として第2の統計値から第1の統計値を引き算した値が閾値よりも大きいか否かを判定する。統計値に平均値を採用した場合でも、判断部147は第2の統計値から第1の統計値を引き算した値が閾値よりも大きいか否かを判定する。この閾値は音声信号であるかをよい確率で正確に判定できるように調整され、制御部18によって設定される。
【0026】
次に、入力した信号が音声信号であるか否かを判定する場合の具体的な一例を図3、図4、図5、図6を参照して説明する。
図3及び図4は、それぞれ入力信号が多値FSK(frequency-shift keying)信号の場合のTop−m算出部142及びTop−n算出部144からの出力信号をプロットしたものであり、図5及び図6は、それぞれ入力信号が音声信号の場合のTop−m算出部142及びTop−n算出部144からの出力信号をプロットしたものである。すなわち、これらの図は、出力された時刻ごとに、Top−m算出部142又はTop−n算出部144で算出されたm個又はn個の周波数値をプロットしていったものである。
図3及び図5はTop−m算出部142でm=1とした場合のスペクトルの時間応答を示しており、図4及び図6はTop−n算出部144でn=8の場合のスペクトルの時間応答を示す。
【0027】
入力信号が多値FSK信号の場合は、図3と図4を参照すると周波数値のばらつきの程度は両者でほぼ同様であることが確認できる。つまり、多値FSK信号については、Top−m算出部142が出力する複数の周波数値の分散値と、Top−n算出部144が出力する複数の周波数値の分散値は、ほぼ同様の値となる。
【0028】
一方、入力信号が音声信号の場合は、図5と図6を参照すると周波数値のばらつきの程度は差があることが確認できる。つまり、音声信号については、m<nとした時に、Top−m算出部142が出力する分散値よりもTop−n算出部144が出力する分散値の方が大きいことがわかる。音声信号のスペクトルは、音声信号特有の調波構造を有している。図5では主に基底調波成分がプロットされており、第2高調波成分も僅かにプロットされている。一方、図6では、第6調波成分までプロットされている。入力信号が音声信号である場合は、このようにmの値が異なると調波構造により全く異なるデータが採取される。このような方法でスペクトルの大きさを観測することによって、音声の調波構造を効率的に捉えることができる。
【0029】
以上説明したように、例えば、分散値の違いを用いることで、効率的に、音声信号を検出することができる。本実施形態の電波監視装置10では、t軸→f軸変換部141が入力信号を時間領域から周波数領域への変換し、Top−m算出部142及びTop−n算出部144が周波数領域信号の大きさが大きい順にm個及びn個の周波数値を出力し、統計値算出部143及び統計値算出部145がこれらの周波数値の統計値を算出することによって、効率的に音声信号を検出することが出来るようになる。
【0030】
ここで、以上に説明した信号処理について、数式を使用して詳細に説明を行う。まず、電波監視装置10が入力する入力信号である観測対象信号をri(i=0,1,2,・・・)とする。riは、図示しないAD変換器(analog-to-digital converter)によって標本化された離散値となっている。つまり、
ri_k=r(t)
である。ここで、tは標本化時刻であり、上述した絶対値検出期間に含まれる時刻である。この絶対値検出期間は複数あり、互いに時刻が重なっていても良いし、重ならないようになっていてもよい。上式のk(=1,2,・・・)は絶対値検出期間に対応して付与されていて、例えば、k=1は第1の絶対値検出期間に対応し、r0_1は第1の絶対値検出期間中の1番目の受信信号を示す。この絶対値検出期間の数は上記の数量hに対応する。その後、観測対象信号は、t軸→f軸変換部141によって、FFTサイズ毎にFFT処理が施される。FFT処理後の観測対象信号をRj_k(j=0,1,2,・・・)、FFTサイズをNとすると、
r_matrix_k=[r0_k、r1_k、・・・、rN−1_k]
R_matrix_k=FFT[r_matrix_k]=[R0_k、R1_k、・・・、RN−1_k]
となり、このR_matrix_kがt軸→f軸変換部141からTop−m算出部142及びTop−n算出部144に出力される。また、これらrj_k及びRj_kは複素数である。
【0031】
周波数領域信号に変換された信号系列R_matrix_kは、次に、Top−m算出部142及びTop−n算出部144によって、絶対値|Rj_k|(若しくはこの2乗値|(Rj_k)|)が大きい信号サンプルが走査され、その周波数位置に関する情報が次段の統計値算出部143及び統計値算出部145に渡される。つまり、例えば、Top−m算出部142は、制御部18が設定した絶対値検出期間中に、絶対値が大きい方からm番目の信号までの対応するm個の周波数値(図3等では周波数インデックス)を算出する。すなわち、Top−m算出部142は、ある絶対値検出期間k中に、
P_matrix_k=[P0_k、P1_k、・・・、Pm−1_k]
を出力する。ここで、Pi_k(0≦i≦m−1)は、Top−mで検出された信号の周波数値つまり周波数インデックスを示す。
【0032】
Top−m算出部142の出力であるP_matrix_kは、統計値算出部143に入力され、統計値算出部143では、統計値を算出する期間長分(後述するhが関係する算出期間)だけ、Top−m算出部が出力する信号を集め、その集められた信号に対して、統計値が計算される。例えば、統計値として分散値σを用いる場合で期間長をhとすれば、
σ_m=Var[P_matrix_1、P_matrix_2、・・・、P_matrix_h]
となる。すなわち、
σ_m=Var[P0_1,P1_1,・・・,Pm−1_1,P0_2,P1_2,・・・,Pm−1_2,・・・,P0_h,・・・,Pm−1_h}]
となる。平均値aの場合には、
a_m=Ave[P_matrix_1、P_matrix_2、・・・、P_matrix_h]
となる。ここまでTop−m算出部142について説明したことはmをnに変更すればTop−n算出部144についても同様である。
【0033】
ここで、Top−m算出部142から出力された信号系列を元に算出された統計値を添え字のmで、Top−n算出部144から出力された信号系列を元に算出された統計値を添え字のnで表すこととする。
【0034】
得られた2つの統計値は、次に差が求められ、制御部18から設定された閾値Uthと比較され、観測対象信号が音声信号であるか否かが判別される。つまり、統計値として分散値を用いる場合、m<nとして、
σ_n − σ_m > Uth
が成り立つかどうかを検査し、成り立った場合に、観測対象信号が音声信号であると判断する。
また、統計値算出部143及び統計値算出部145で平均値が算出された場合も同様であり、m<nとして、制御部18が閾値をU’thと設定した場合は
a_n − a_m > U’th
が成り立つかどうかを検査し、成り立った場合に、観測対象信号が音声信号であると判断する。
また、電波監視装置10に入力される信号は、無線伝搬路の種々の歪の影響を受けている。マルチパス伝搬路を経た信号には、例えば、フェージングの影響を受けている。そのため、例えば、RF部11で信号の大きさを監視し信号強度が小さい場合には、音声信号検出部14における統計値の算出を休止する。このように入力信号が音声信号か否かを判断する評価尺度から除外するように制御部18が制御することにより、音声信号の検出特性を向上することが出来る。
【0035】
次に、音声信号検出部14の変形例を図7を参照して説明する。図7は、音声信号検出部の別の構成を示した図である。図2で示した信号処理とは、統計値算出部、差分検出部の構成が異なっている。
図2で示した統計値算出部143及び統計値算出部145では、上述したように、Top−m算出部142若しくはTop−n算出部144から出力された信号系列に対して、統計値が算出され、差分が求められる。これに対し、図7に示した構成では、2つの統計値算出部143及び統計値算出部145が一体化されている。このため、Top−n算出部144が出力した信号から統計量を求める際に、Top−m算出部142が出力した信号も用いることができるようになっている。例えば、Top−m算出部142が出力した信号系列を用い、Top−n算出部144が出力した信号系列が、Top−m検出部が出力した信号よりも、どれだけ差があるかを観測することができる。
【0036】
また、上述したように、電波監視装置10に入力される信号は、無線伝搬路の種々の歪の影響を受けている。仮に、周波数選択性フェージングの影響を受けているとすると、観測対象信号の周波数成分は、ある特定の周波数に関して、電力の低下が起こる。このような状況下でTop−m検出を行うと、周波数選択性フェージングの影響を受けない状況下で求めたTop−mの検出とは、結果が異なってしまう。これは、本来、大きな電力値を有する周波数が、周波数選択性フェージングの影響によって、小さな値となり、Top−mの検出の際に、見逃されてしまうためである。
【0037】
この場合、一方の統計量を求める際に、他方の結果も用いて、計算を行えば、種々の劣化要因を補正することが可能となるため、特性を改善することが出来る。図7に示した音声信号検出部14では、2つの統計量算出部が一体化されて統計値算出部148としているため、このような演算を行うことが可能となる。
例えば、f(x)を平均値を変数とする補正関数とすると、n>mとして、上記のσ_n − σ_m > Uthは、以下の式のように補正される。すなわち、
σ_n f(a_m)− σ_m f(a_n) > Uth
のように表現することができる。f(a_m)によってσ_nの値が補正され、f(a_n)によってσ_mの値が補正される。補正関数は、上式が正しい判定式になるように調整されて決定される。
また、同様に、上記のa_n − a_m > U’thも以下の式のように補正することができる。すなわち、g(x)を分散値を変数とする補正関数として、
a_n g(σ_m)− a_m g(σ_n) > U’th
のように表現することができる。判定部149は、これらの判定式によって入力信号が音声信号であるか否かを判定する。周波数選択性フェージングの影響を受けた信号に対しても、高精度に音声信号を特定することができる。
【0038】
以上に示した実施形態の電波監視装置によれば、周波数領域に変換された入力信号の絶対値の大きな方から異なる番目の信号に基づいて異なる番目ごとに対応する周波数に関して各統計値を計測して、それらの統計値を比較することにより、アナログ音声信号を高い精度で検出し、除去することが可能になる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る電波監視装置のブロック図。
【図2】図1の音声信号検出部のブロック図。
【図3】入力信号がデジタル信号でm=1の場合、図2の統計値算出部から出力される信号をプロットした図。
【図4】入力信号がデジタル信号でn=8の場合、図2の統計値算出部から出力される信号をプロットした図。
【図5】入力信号が音声信号でm=1の場合、図2の統計値算出部から出力される信号をプロットした図。
【図6】入力信号が音声信号でn=8の場合、図2の統計値算出部から出力される信号をプロットした図。
【図7】図2の音声信号検出部の変形例のブロック図。
【符号の説明】
【0041】
10・・・電波監視装置、11・・・RF部、12・・・周波数変換部、13・・・音声信号除去部、14・・・音声信号検出部、15・・・復調分析部、16・・・表示部、17・・・入力部、18・・・制御部、141・・・t軸→f軸変換部、142・・・Top−m算出部、143・・・統計値算出部、144・・・Top−n算出部、145・・・統計値算出部、146・・・差分検出部、147・・・判断部、148・・・統計値算出部、149・・・判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した受信信号の分析を行う電波監視装置において、
離散化された各受信信号を周波数領域の各信号に変換する変換手段と、
複数の前記変換された信号の大きさの最も大きい信号からm個(mは自然数:m=1,2,・・・)の信号のm個の周波数値を算出する第1の算出手段と、
複数の前記変換された信号の大きさの最も大きい信号からn個(nは自然数かつn>m)の信号のn個の周波数値を算出する第2の算出手段と、
前記m個の周波数値を基にした第1の統計値と前記n個の周波数値を基にした第2の統計値を算出する統計値算出手段と、
前記第2の統計値から前記第1の統計値を引いた値がある値よりも大きい場合に前記複数の変換された信号は音声信号であると判定する判定手段と、
音声信号でないと判定された信号の分析を行う分析手段を具備することを特徴とする電波監視装置。
【請求項2】
受信した受信信号の分析を行う電波監視装置において、
複数の離散化された受信信号を、離散化されたある数量の受信信号ごとずつ離散化された各受信信号を周波数領域の各信号に変換する変換手段と、
前記変換された前記数量の信号ごとに、該信号の大きさの最も大きい信号からm個(mは自然数:m=1,2,・・・)の信号のm個の周波数値を算出し、前記複数の離散化された受信信号に対するmの整数倍個の周波数値を得る第1の算出手段と、
前記変換された前記数量の信号ごとに、該信号の大きさの最も大きい信号からn個(nは自然数かつn>m)の信号のn個の周波数値を算出し、前記複数の離散化された受信信号に対するnの整数倍個の周波数値を得る第2の算出手段と、
前記mの整数倍個の周波数値を基にした第1の統計値と前記n個の周波数値を基にした第2の統計値を算出する統計値算出手段と、
前記第2の統計値から前記第1の統計値を引いた値がある値よりも大きい場合に前記複数の変換された信号は音声信号であると判定する判定手段と、
音声信号でないと判定された信号の分析を行う分析手段を具備することを特徴とする電波監視装置。
【請求項3】
前記統計値算出手段は、
前記第1の統計値を前記n個の周波数値を基にして補正する第1の補正手段と、
前記第2の統計値を前記m個の周波数値を基にして補正する第2の補正手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電波監視装置。
【請求項4】
前記統計値算出手段は、分散及び平均のいずれかにより統計値を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電波監視装置。
【請求項5】
前記変換手段は、FFT(fast Fourier transformation)によって受信信号を変換することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電波監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−10333(P2006−10333A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183799(P2004−183799)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】