説明

電流センサ

【課題】簡素な一体構造でもって高精度な検出を行うことができる上、多くの機能を付加した電流センサを提供する。
【解決手段】 磁性体コア22と、ホール素子23と、増幅器24と、帰還コイル22aと、帰還電流検出手段25と、マイクロコンピュータ27と、を一体に具備した磁気平衡式の電流センサであって、マイクロコンピュータ27を用いて消磁用交流減衰信号を生成し、該消磁用交流減衰信号を前記帰還コイル22aに供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホール素子を利用して電流を検出する電流センサに関し、詳しくは、磁気平衡式の電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発明には、被測定導体を挿入可能な略環状の磁性体コアと、前記被測定導体の電流によって前記磁性体コアに発生する磁束を検出し電圧信号として出力するホール素子と、該ホール素子の出力信号を増幅する増幅器と、該増幅器から電力供給され前記被測定導体の電流によって前記磁性体コアに生じる磁束を打ち消すように逆方向の磁束を発生する帰還コイルとを備え、前記帰還コイルの電流を電圧変換し、その電圧値を被測定導体の電流値として読み取るようにした、所謂磁気平衡式の電流センサがある。
このような磁気平衡式電流センサは、磁性体コア内部の磁気が常にゼロになるように回路を動作させるようにしているため、ホール素子の出力電圧を被測定導体の電流値として直接的に読み取るようにした所謂磁気比例式電流センサと比較して、被測定導体の電流値が比較的大きい場合でも磁気飽和せず測定レンジを広く確保でき、高精度でリニアな特性を得ることができる。
ところで、このような磁気平衡式電流センサであっても、回路の動作範囲を逸脱するような過大な電流が流れた場合等には、磁性体コアの残留磁気の影響により動作点が変化して測定誤差を生じるおそれがある。
そこで、特許文献1に記載される従来技術では、増幅回路の入力側に消磁用交流減衰信号を印加して、磁性体コアの残留磁気を消磁するようにしている。
【0003】
しかしながら、上記従来技術では、消磁用交流減衰信号を発生させるために別途大がかりな交流電源回路等を準備しなければならない。また、近年では、電流センサの出力に基づき、真の実効値、瞬時値、ピーク値等を算出したり、シリアル通信を可能にしたり等、多くの機能が要求されるようになってきており、このような場合には、他の制御回路やコンピュータ等を別途準備する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−110345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、簡素な一体構造でもって高精度な検出を行うことができる上、多くの機能を付加した電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための技術的手段は、被測定導体を挿入可能な磁性体コアと、該磁性体コアに発生する磁束を検出するホール素子と、該ホール素子の出力信号を増幅する増幅器と、該増幅器から電力供給されるとともに被測定導体の電流によって前記磁性体コアに生じる磁束を打ち消すように逆方向の磁束を発生する帰還コイルと、該帰還コイルに流れる電流を検出する帰還電流検出手段と、該帰還電流検出手段の出力信号を演算処理して被測定導体の電流値を算出するマイクロコンピュータと、を一体に具備した磁気平衡式の電流センサであって、前記マイクロコンピュータを用いて消磁用交流減衰信号を生成し、該消磁用交流減衰信号を前記帰還コイルに供給するようにしたことを特徴とする。
【0007】
更なる技術的手段では、前記消磁用交流減衰信号は、前記マイクロコンピュータによって徐々に出力を減衰するPWM減衰擬似正弦波を生成し、このPWM減衰擬似正弦波を波形変換回路により交流減衰正弦波に変換してなることを特徴とする。
【0008】
更なる技術的手段では、前記マイクロコンピュータが電源の投入直後に前記消磁用交流減衰信号を出力するようにしたことを特徴とする。
【0009】
更なる技術的手段では、前記マイクロコンピュータが、被測定導体の電流値が所定の閾値以下となったことを条件に、前記消磁用交流減衰信号を出力するようにしたことを特徴とする。
【0010】
更なる技術的手段では、前記マイクロコンピュータが、被測定導体の電流値が所定の閾値を超えたことを条件に、所定の処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0011】
更なる技術的手段では、前記帰還電流検出手段の出力信号を増幅して前記マイクロコンピュータに入力するとともに前記マイクロコンピュータからの指令により増幅率を変化可能な可変増幅手段を備え、前記マイクロコンピュータが、算出した被測定導体の電流値に応じて前記可変増幅手段の増幅率を変化させる指令を発するようにしたことを特徴とする。
【0012】
更なる技術的手段では、前記可変増幅手段は、前記帰還電流検出手段の出力信号を非反転入力端子に入力するとともに出力信号を前記マイクロコンピュータに入力する増幅器と、該増幅器の出力端子と同増幅器の反転入力端子の間に設けられた負帰還抵抗と、前記反転入力端子とアースとの間に直列に設けられた入力抵抗及びスイッチ手段とを備え、前記スイッチ手段を、前記マイクロコンピュータからの指令に応じてオンオフするようにしたことを特徴とする。
【0013】
更なる技術的手段では、点灯及び/又は点滅により動作表示する表示手段を一体に備え、前記マイクロコンピュータが、被測定導体の電流に基づく入力信号に応じて前記表示手段を制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
一体に具備したマイクロコンピュータにより消磁用交流減衰信号を生成するようにしているため、大がかりな交流電源回路等を別途準備することなく、残留磁気の影響による測定誤差の増加を防ぐことができる。
しかも、検出データの処理にマイクロコンピュータを用いているため、例えば、真の実効値、瞬時値、ピーク値等を算出したり、シリアル通信を可能にしたり等も容易に行うことができる。
よって、簡素な一体構造でもって高精度な検出を行うことができる上、多くの機能を付加した電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電流センサの一例を示す斜視図である。
【図2】同電流センサを示す分解斜視図である。
【図3】同電流センサの電気回路を示すブロック図である。
【図4】LED動作表示を示す表である。
【図5】(a)は波形変換回路の出力波形の電圧変化を示す図であり、(b)は波形変換回路の入力波形の電圧変化を示す図である。
【図6】消磁用交流減衰信号の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る電流センサの一例について、マイクロコンピュータによる処理の前半部分を示すフローチャートである。
【図8】同処理の後半部分を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
電流センサ1は、図1に示すように、ケース本体10に設けられた略筒状の挿通部11に電線等の被測定導体pを挿通させて、被測定導体pに流れる直流又は交流の電流を検出し、その検出信号に基づいて処理された電気信号を、電線32及びコネクター33等を介して外部へ出力する磁気平衡式の電流センサである。
【0017】
この電流センサ1は、図2に示すように、ケース本体10内にLEDカバー12及び電気回路基板20を挿入し、電気回路基板20をケース本体10に挿通される略筒状の挿通部11によって固定し、ケース本体10の一端側の開口部10bを蓋部材13により塞ぐことで構成される。
【0018】
ケース本体10は、一端側に開口部10bを有する略矩形状の中空箱体であり、合成樹脂材料によって成形されている。このケース本体10の表裏面には、挿通部11を挿通し固定するための嵌合孔10aが設けられている。この嵌合孔10aは、内周面に設けられた複数の切欠部10a1により、その内径部分を弾性変形させることが可能であり、この弾性変形によって挿通部11の嵌合を容易にしている。
【0019】
ケース本体10における開口部10bと逆側の端部には、複数のスリット状に窓部10cが形成されている。この窓部10cには、ケース本体10内側から透明のLEDカバー12が重ね合わせられ、電気回路基板20の表示手段29(LED1,2)の光をケース本体10外へ放出する。LEDカバー12は、前記表示手段29を覆い保護するように設けられる。
【0020】
また、電気回路基板20は、略板状の基板本体21に、磁性体コア22、ホール素子23、増幅器24、帰還コイル22a、帰還電流検出手段25、可変増幅手段26、マイクロコンピュータ27、インターフェース装置28、表示手段29、オンオフ信号出力手段30、波形変換回路31、電線32及びコネクター33等を一体に設け、これらを図3に示すように電気配線してなる。
【0021】
基板本体21は、貫通孔21aを有する板状に形成され、前記貫通孔21aに、ケース本体10と嵌合した挿通部11が挿入されることで、ケース本体10に対し不動に固定される。
【0022】
磁性体コア22は、ギャップ22bを有する略C字の環状に形成される。この磁性体コア22は、例えばパーマロイやその他の磁性材料を成形した態様や、多数の鋼板を積層してなる態様等とすることができる。
【0023】
前記ギャップ22bには、ホール素子23が設けられる。このホール素子23は、磁性体コア22に生じる磁束を、ギャップ22b内で検出し、その磁束に比例した電圧信号を出力する。そして、この電圧信号は、後述する増幅器24に入力される。
【0024】
増幅器24は、図示例によればオペアンプであり、ホール素子23の検出信号又は後述する波形変換回路31の出力信号(消磁用交流減衰信号)を増幅して、帰還コイル22aへ供給する。
【0025】
帰還コイル22aは、増幅器24から電力供給された際に被測定導体pの電流によって磁性体コア22に生じる磁束を打ち消す逆方向の磁束を発生するように、磁性体コア22に巻き付けられている。この帰還コイル22aの電流は、帰還電流検出手段25によって検出される。
【0026】
帰還電流検出手段25は、帰還コイル22aと直列に電気配線された電圧変換用の抵抗R1と、該抵抗R1の端子間に接続された増幅器25a(図示例によればオペアンプ)とから構成され、帰還コイル22aに流れる電流を電圧信号に変換して出力する。そして、この帰還電流検出手段25の出力信号は、可変増幅手段26に入力される。
【0027】
可変増幅手段26は、増幅器26a(図示例によればオペアンプ)と、負帰還抵抗R2と、入力抵抗R3と、スイッチ手段26bとを備え、帰還電流検出手段25から入力される電圧信号を増幅して出力する非反転増幅回路を構成している。
より詳細に説明すれば、前記増幅器26aの非反転入力端子には帰還電流検出手段25の出力信号が入力され、同増幅器26aの出力端子と反転入力端子との間に負帰還抵抗R2が接続され、同増幅器26aの反転入力端子とアースとの間に入力抵抗R3及びスイッチ手段26bが直列に接続される。スイッチ手段26bは、マイクロコンピュータ27からの指令に応じて開閉(ON/OFF)する素子であり、所謂アナログスイッチ等のICが用いられる。
【0028】
前記可変増幅手段26によれば、スイッチ手段26bがONの場合には、帰還電流検出手段25の出力信号が、(R2+R3)/R3倍に増幅されてマイクロコンピュータ27に入力される。また、スイッチ手段26bがOFFの場合には、入力抵抗R3が無限大であるのと等価になるため、増幅率が1倍になる。
【0029】
また、マイクロコンピュータ27は、一つのICチップ上にCPU、RAM、ROM(EEPROM及びその他のROMを含む)、各種入出力装置などを搭載した所謂ワンチップマイコンである。本実施の形態の一例では、可変増幅手段26から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路も、このマイクロコンピュータ27が具備している。
【0030】
このマイクロコンピュータ27は、帰還コイル22a、帰還電流検出手段25及び可変増幅手段26を介して入力された信号に基づき、被測定導体pの電流値、真の実効値、瞬時値、ピーク値等を算出する手段、後述する消磁用交流減衰信号(図6参照)の原信号であるPWM減衰擬似正弦波(図5(b)参照)を生成し所定の条件に応じて出力する手段、外部のホストコンピュータ(図示せず)とシリアル通信を行う手段、表示手段29やオンオフ信号出力手段30を作動させる手段等として機能する。
【0031】
インターフェース装置28は、例えばRS−232CやRS−485等のシリアル通信規格に基づいて、マイクロコンピュータ27と外部機器(例えば、図示しないホストコンピュータや他の制御機器等)とを接続し相互通信を可能にする機器である。
【0032】
表示手段29は、マイクロコンピュータ27の出力端子に接続された単数もしくは複数のLED及び抵抗からなり、図示例によれば、LED1及びR7と、LED2及びR8との二組を具備している。これらLEDは、当該電流センサ1の動作状況に応じて点滅及び/又は点灯するようになっている。
【0033】
オンオフ信号出力手段30は、抵抗Rとフォトカプラ30aを直列接続した回路であり、マイクロコンピュータ27の出力信号により作動してON/OFF信号を出力する。このオンオフ信号出力手段30から出力されるON/OFF信号は、当該電流センサ1により電流測定が正常に行われたか否かを示す信号等として、外部機器によって利用される。
【0034】
波形変換回路31は、マイクロコンピュータ27から出力されるPWM減衰擬似正弦波(図5(b)参照)を、交流減衰正弦波(図5(a)及び図6参照)に変換する電気回路である。
この波形変換回路31は、矩形波であるPWM減衰擬似正弦波を正弦波に変換する積分回路(抵抗R5及びコンデンサC1)と、この積分回路から交流成分を注出する回路(コンデンサC2及び抵抗R6)とからなる。
【0035】
前記PWM減衰擬似正弦波は、マイクロコンピュータ27に予め記憶されたプログラムを機能させることによって形成される。すなわち、マイクロコンピュータ27は、所謂PWM(パルス幅変調)制御によって、パルス波のデューティー比を変化させてなる擬似正弦波(等価正弦波や近似正弦波等ともいう)を生成するとともに、この擬似正弦波を電圧が徐々に減衰するように形成することで、図5(b)の(1)〜(3)に示すPWM減衰擬似正弦波を形成する。
【0036】
そして、マイクロコンピュータ27から出力される前記PWM減衰擬似正弦波は、波形変換回路31に入力され波形変換されることで、図5(a)の(1)〜(3)及び図6に示すように、電圧を徐々に減衰する交流減衰正弦波となって出力される。この交流減衰正弦波は、消磁用交流減衰信号として増幅器24の非反転入力端子に印加される。
【0037】
次に、上記構成の電流センサ1の動作について、図7及び図8に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
先ず、電流センサ1の挿通部11に被測定導体pが挿通され、電流センサ1に対し電線32及びコネクター33を介して電源が供給される。すると、マイクロコンピュータ27が、所定の記憶領域に記憶された各種の変数及びデータ等を初期状態にする(ステップ1)。具体的には、後述する測定レンジを初期状態としてA(増幅率小)にする処理や、過負荷入力があったことを示す変数を0にする処理等を行う。
【0038】
次のステップ2では、消磁動作が行われる。詳細には、当該電流センサ1への電源の投入直後に、マイクロコンピュータ27からPWM減衰擬似正弦波が出力され、該PWM減衰擬似正弦波が波形変換回路31を介して消磁用交流減衰信号に変換され、この消磁用交流減衰信号が帰還コイル22aに供給される。
前記消磁動作によれば、被測定導体pが非通電状態(例えば、被測定導体p側の機器に電源が投入されていない状態)の場合に、磁性体コア22の残留磁気が前記消磁用交流減衰信号によって消磁されることになる。なお、被測定導体pが最初から通電状態であった場合には、帰還コイル22aに前記消磁用交流減衰信号が供給されても、磁性体コア22の消磁は行われない。
【0039】
次のステップ3では、マイクロコンピュータ27が、可変増幅手段26の出力信号を取り込んで、該信号を演算処理することにより、被測定導体pの電流値を算出する。すなわち、帰還コイル22aの帰還電流に応じた電圧信号に基づき、被測定導体pの電流値が算出される。
【0040】
次のステップ4では、現在の測定レンジがAとBの何れであるのかを判断し、測定レンジAの場合にはステップ5aへ、測定レンジBの場合にはステップ5bへ処理を移行する。
ここで、現在の測定レンジがAであるかBであるかは、マイクロコンピュータ27の記憶領域に所定の変数として記憶され、初期状態では測定レンジAとなるように予め設定されている。
【0041】
ステップ5aでは、測定値が所定の閾値xよりも小さいか否かが判断され、閾値xよりも小さければステップ6aへ処理を移行して測定レンジをBにセットし、そうでなければ現測定レンジAを維持したままステップ7へ処理をジャンプする。
【0042】
また、ステップ5bでは、測定値が所定の閾値yよりも大きいか否かが判断され、閾値yよりも大きければステップ6bへ処理を移行して測定レンジをAにセットし、そうでなければ現測定レンジBを維持したままステップ7へ処理をジャンプする。
ここで、閾値yは、閾値xよりも大きな電流値を示すように設定された閾値である。
【0043】
また、測定レンジAは、比較的大きな電流を測定するために小さい増幅率をセットするレンジであり、この測定レンジAがセットされると、マイクロコンピュータ27の指令によりスイッチ手段26bがOFF状態(非通電状態)となり、可変増幅手段26の増幅率として1が適用される。
【0044】
また、測定レンジBは、比較的小さな電流を測定するために大きい増幅率をセットするレンジであり、この測定レンジBがセットされると、マイクロコンピュータ27の指令によりスイッチ手段26bがON状態(通電状態)となり、可変増幅手段26の増幅率として(R2+R3)/R3が適用される。
【0045】
そして、ステップ7では、マイクロコンピュータ27で算出された電流測定値が、所定の過負荷閾値を超えたか否かを判断し、超えた場合にはその電流測定値(以下、過負荷測定値と称する)を所定の記憶領域(具体的にはEEPROM)に記憶し(ステップ7a)、そうでなければ次のステップ8へ処理をジャンプする。
【0046】
ステップ8では、前記ステップ7aで用いた記憶領域に、過負荷測定値の記録があるか否かを判断し、ある場合には次のステップ9へ処理を以降し、そうでなければステップ10へ処理をジャンプする。
【0047】
ステップ9では、インターフェース装置28を介して外部出力する送信データに、過負荷測定値の記録があることを示す信号(以下、過負荷アラームと称する)を付加する。
【0048】
そして、次のステップ10(図8参照)では、測定電流値が、所定のON/OFF出力用閾値を超えたか否かを判断し、超えた場合にはステップ11aへ処理を移行し、そうでなければステップ11bへ処理を移行する。
ステップ11aでは、マイクロコンピュータ27の出力によりオンオフ信号出力手段30をON状態にする。
ステップ11bでは、マイクロコンピュータ27の前記出力を停止することによりオンオフ信号出力手段30をOFF状態にする。
【0049】
次のステップ12では、可変増幅手段26から入力される測定値信号に応じて、マイクロコンピュータ27が、表示手段29による異なる動作表示を行う。
その具定例について詳細に説明すれば、図4に示すように、前記測定値信号により被測定導体pの電流が順方向電流であると判断した場合には、一方のLED1を点灯(又は点滅)する。
前記測定値信号により被測定導体pの電流が逆方向電流であると判断した場合には、他方のLED2を点灯(又は点滅)する。
前記測定値信号により被測定導体pの電流が交流であると判断した場合には、双方のLED1,2を点灯(又は点滅)する。
前記測定値信号により被測定導体pの電流が比較的小電流(より具体的は所定値よりも小さい電流)であると判断した場合には、LED1,2の一方又は双方を比較的ゆっくり点滅する。
前記測定値信号により被測定導体pの電流が比較的大電流(より具体的は所定値よりも大きい電流)であると判断した場合には、LED1,2の一方又は双方を比較的速く点滅する。
前記測定値信号により被測定導体pの電流が前記大電流よりも更に大きい過電流(より具体的は所定の過負荷閾値よりも大きい電流)であると判断した場合には、LED1,2の一方又は双方を点灯(又は交互に点灯)する。
【0050】
次のステップ13では、インターフェース装置28を介して外部のホストコンピュータ等(図示せず)とデータの送受信を行う。
この際の送信データの一例としては、前記ステップ9の過負荷アラームや、前記測定値信号に基づき算出された電流値、真の実効値、瞬時値、ピーク値等を示す信号、測定電流が直流か交流かを示す信号、測定電流が直流である場合にその方向を示す信号等、が挙げられる。
また、この際の受信データの一例としては、前記ステップ7aによる過負荷測定値の記録をクリアする指令、強制的な消磁動作を行う指令、前記ステップ9による過負荷アラームをクリアする指令、各種閾値(例えば、ステップ5a,5bにおける閾値x,yや、ステップ7の過負荷閾値、ステップ10のON/OFF出力用閾値、後述するステップ18の消磁閾値など)のデータ、これら閾値を変更する指令等、が挙げられる。
【0051】
次のステップ14では、前記ステップ13にて新たな受信データがあった場合にステップ15へ処理を進め、そうでなければステップ3へ処理を戻して再度測定動作を行う。
【0052】
次のステップ15では、前記受信データ中に前記ステップ7aによる過負荷測定値の記録をクリアする指令があるか否かを判断し、ある場合には次のステップ16にて過負荷測定値の記録を消去し、そうでなければステップ17へ処理をジャンプする。
【0053】
ステップ17では、前記受信データとしてステップ9による過負荷アラームをクリアする指令があった場合に該過負荷アラームをクリアする処理や、前記受信データとして各種閾値についての変更指令及び更新データがあった場合に各種閾値を前記更新データに変更する処理、その他の外部指令に基づく処理等が実行される。
【0054】
ステップ18では、前記ステップ13で受信した指令に強制的な消磁動作を行う指令があり、且つ測定電流値が所定の消磁閾値よりも小さいことを条件に、ステップ19を実効し、そうでなければ上記ステップ3へ処理を戻して再度測定動作を行う。
【0055】
ステップ19では、マイクロコンピュータ27からPWM減衰擬似正弦波を出力することで、消磁用交流減衰信号を帰還コイル22aに供給する。
すなわち、測定電流値がある程度小さい場合には、被測定導体pの電流によって発生する磁性体コア22の磁束の影響を受けないので、効果的な消磁動作を行うことができる。ステップ19は、このような場合に消磁動作を行うステップである。
【0056】
よって、上記構成の電流センサ1によれば、電源投入時や、被測定導体pに電流が流れていない時等に、効果的な消磁動作を行うことができ、ひいては、残留磁気の影響による測定誤差の増加を防止することができる。しかも、前記消磁のために別途交流回路等を設ける必要がなく、簡素な構成とすることができる。
また、一体に具備するマイクロコンピュータ27によって測定値を演算処理し出力するようにしているため、真の実効値や、瞬時値、ピーク値、過負荷アラーム等、多種類のデータを送信したり、各種設定値を受信して演算処理に反映したり等、多くの機能を具備することができ、これによって、別途のコンピュータや制御回路を準備する等のユーザーの負担を軽減することができる。
さらに、マイクロコンピュータ27の指令によって増幅率を変える可変増幅手段26を具備しているため、簡素な回路構成によって測定レンジを自動的に変更でき、ひいては高精度な電流測定を行うことができる。
また、被測定導体pの電流に基づく入力信号に応じて表示手段29及びオンオフ信号出力手段30を作動させるようにしたため、当該電流センサ1の動作状況の把握が容易であり、特にLED1,2の点滅/点灯パターンによって、電流の方向や大小等を即時に把握することができる。
【0057】
なお、波形変換回路31は、マイクロコンピュータ27の出力信号を消磁用交流減衰信号に変換する回路であればよく、図示例以外の他の回路を用いることが可能である。
例えば、より簡素な態様として、図示例の波形変換回路31から積分回路(抵抗R5及びコンデンサC1)を省いて、前記PWM減衰擬似正弦波の交流成分を消磁用交流減衰信号として直接用いるようにしてもよい。
【0058】
また、図示例の可変増幅手段26によれば、二種類のレンジ(増幅率)を切り替える構成としたが、他例としては、3以上のレンジ(増幅率)を切り替える構成とすることも可能であり、この場合には、例えば、抵抗値の異なる複数の入力抵抗とこれら入力抵抗を切り替える複数のスイッチ手段(例えばアナログスイッチ等)とを備え、マイクロコンピュータ27の指令によって前記スイッチ手段を作動させればよい。
【0059】
また、図示例によれば、前記ステップ18にて消磁指令があり且つ測定値が消磁閾値よりも小さい場合に消磁動作が行われるようにしたが、他例としては、測定値が消磁閾値よりも小さいことを条件に、マイクロコンピュータ27がPWM減衰擬似正弦波を出力して自動的に消磁動作が行われるようにしてもよい。
【0060】
また、図示例によれば、当該電流センサ1の動作を視覚的に表示する表示手段29を具備したが、他例としては、当該電流センサ1の動作を聴覚的に報知する手段(例えばブザー等)を具備することも可能である。
【0061】
また、図示例によれば、マイクロコンピュータ27が外部機器に対し有線通信する態様としたが、他例としては、無線通信手段(無線送受信機等)を備えて、該無線通信手段によってマイクロコンピュータ27が各種データを送受信する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:電流センサ 10:ケース本体
20:電気回路基板 22:磁性体コア
22a:帰還コイル 23:ホール素子
24:増幅器 25:帰還電流検出手段
26:可変増幅手段 27:マイクロコンピュータ
28:インターフェース装置 29:表示手段
30:オンオフ信号出力手段 31:波形変換回路
p:被測定導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定導体を挿入可能な磁性体コアと、該磁性体コアに発生する磁束を検出するホール素子と、該ホール素子の出力信号を増幅する増幅器と、該増幅器から電力供給されるとともに被測定導体の電流によって前記磁性体コアに生じる磁束を打ち消すように逆方向の磁束を発生する帰還コイルと、該帰還コイルに流れる電流を検出する帰還電流検出手段と、該帰還電流検出手段の出力信号を演算処理して被測定導体の電流値を算出するマイクロコンピュータと、を一体に具備した磁気平衡式の電流センサであって、
前記マイクロコンピュータを用いて消磁用交流減衰信号を生成し、該消磁用交流減衰信号を前記帰還コイルに供給するようにしたことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記消磁用交流減衰信号は、前記マイクロコンピュータによって徐々に出力を減衰するPWM減衰擬似正弦波を生成し、このPWM減衰擬似正弦波を波形変換回路により交流減衰正弦波に変換してなることを特徴とする請求項1記載の電流センサ。
【請求項3】
前記マイクロコンピュータが電源の投入直後に前記消磁用交流減衰信号を出力するようにしたことを特徴とする請求項1記載の電流センサ。
【請求項4】
前記マイクロコンピュータが、被測定導体の電流値が所定の閾値以下となったことを条件に、前記消磁用交流減衰信号を出力するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の電流センサ。
【請求項5】
前記マイクロコンピュータが、被測定導体の電流値が所定の閾値を超えたことを条件に、所定の処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の電流センサ。
【請求項6】
前記帰還電流検出手段の出力信号を増幅して前記マイクロコンピュータに入力するとともに前記マイクロコンピュータからの指令により増幅率を変化可能な可変増幅手段を備え、
前記マイクロコンピュータが、算出した被測定導体の電流値に応じて前記可変増幅手段の増幅率を変化させる指令を発するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の電流センサ。
【請求項7】
前記可変増幅手段は、前記帰還電流検出手段の出力信号を非反転入力端子に入力するとともに出力信号を前記マイクロコンピュータに入力する増幅器と、該増幅器の出力端子と同増幅器の反転入力端子の間に設けられた負帰還抵抗と、前記反転入力端子とアースとの間に直列に設けられた入力抵抗及びスイッチ手段とを備え、前記スイッチ手段を、前記マイクロコンピュータからの指令に応じてオンオフするようにしたことを特徴とする請求項6記載の電流センサ。
【請求項8】
点灯及び/又は点滅により動作表示する表示手段を一体に備え、
前記マイクロコンピュータが、被測定導体の電流に基づく入力信号に応じて前記表示手段を制御するようにしたことを特徴とする請求項1乃至7何れか1項記載の電流センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112842(P2012−112842A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262776(P2010−262776)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(390021186)株式会社秩父富士 (54)
【Fターム(参考)】