説明

電流センサ

【課題】 低コスト且つ安定した品質で,一方向のリード端子を持つ磁電変換素子を実装基板に対し垂直方向に実装した電流センサを提供する。
【解決手段】 一方向のリード端子を持つ磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて素子支持部を形成し、形成した前記素子支持部の先端部を更に実装基板側へ略直角に折り曲げ、実装基板に設けた実装用リード端子挿入孔に挿入して磁電変換素子の実装位置が固定できる位置決め用曲げ部を設けた。
また,磁電変換素子を実装基板に対し垂直方向に実装するため,磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて形成した素子支持部の両端を,実装基板面上にハの字状に成形し、磁電変換素子の自立安定性を持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,環状磁性体コアに設けたギャップ内に配置した磁電変換素子を用いて電流を検出する電流センサで、一方向のリード端子を持つ磁電変換素子を実装基板に対し垂直方向に実装する構造の電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一方向のリード端子を持つ磁電変換素子を実装基板に対し垂直方向に実装する従来の実装方法として,磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて素子支持部を形成し、その素子支持部を実装基板上に設けた実装用パッドに自立させ、表面実装でハンダ付け固定する方法が紹介されている。(例えば,特許文献1参照)
また,その他のよく知られている従来方法を図9に示す。この方法では,実装基板に磁電変換素子のリード端子を挿入するための挿入孔を形成し,その挿入孔にリード端子を挿入して、その挿入部分を表裏側からハンダ付けすることにより,磁電変換素子が実装基板に対して垂直方向に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−97760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている一方向のリード端子を持つ磁電変換素子は,その感磁面と磁界の方向とが垂直になるよう,磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて素子支持部を形成し,その素子支持部を実装基板上の実装用パッドに表面実装でハンダ付け固定している。
【0005】
また,図9に示す従来方法においては,実装基板に磁電変換素子のリード端子を挿入するための挿入孔を形成し,その挿入孔にリード端子を挿入し,その挿入部分を表裏側からハンダ付けすることにより,磁電変換素子を実装基板に対して垂直に固定する実装方法がとられている。
【0006】
特許文献1の方法においては、リフローハンダ付け工法等により実装基板表面に磁電変換素子を自立させハンダ付けを行うことになるが,磁電変換素子のリード端子の折り曲げの方向に対しては,自立安定性は確保できるものの,リード端子の折り曲げの方向に対し垂直の方向については,磁電変換素子のリード端子を折り曲げて形成された素子支持部と前記実装基板に設けられた実装用パッドとの接触面の平面度バラツキによって、磁電変換素子の自立安定性が失われ,最悪の場合ハンダが固着する前に素子が倒れてハンダ付けができなくなる恐れがある。更に構造的な位置決めが無いため,ハンダが溶融後固着する際の表面張力の作用により,実装基板への磁電変換素子の実装位置が狙いとする位置からずれ,実装後の組み立てや電気的性能に影響を及ぼす等の課題がある。
【0007】
また,実装基板に設けた挿入孔に磁電変換素子のリード端子を挿入し,その挿入部分を表裏側からハンダ付けする工法においては,前記磁電変換素子のリード端子を基板に挿入する工程,素子を実装基板面から決められた高さに固定する工程,素子挿入部分のハンダ付け工程等,製造工程が多くなりコストが高くなるという課題がある。
【0008】
本発明の目的は,一方向のリード端子を持つ磁電変換素子を安定した品質で低コストに実装基板に対し垂直方向に実装する構造の電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,請求項1記載の電流センサは、一方向のリード端子を持つ磁電変換素子を実装基板に対し垂直方向に実装する実装方法として,磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて素子支持部を形成し、形成した素子支持部の先端部を更に実装基板側へ略直角に折り曲げ、実装基板に設けた実装用リード端子挿入孔に挿入して磁電変換素子の実装位置が固定できる位置決め用曲げ部を設けたものである。
【0010】
請求項2記載の電流センサは、磁電変換素子を実装基板に対し垂直方向に実装するため,磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて形成した素子支持部のうち両端に位置する素子支持部を,実装基板面上にハの字状に成形し、実装基板上での自立安定性を持たせたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の電流センサによれば,一方向のリード端子を持つ磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて形成した素子支持部の先端部を、更に実装基板側へ略直角に折り曲げた位置決め用曲げ部を設け、実装基板に設けた実装用リード端子挿入孔に前記位置決め用曲げ部を挿入することにより,自立安定性が向上するとともに、機械的に位置ズレが生じない構造になることから,ハンダが溶融後固着する際の表面張力の作用による実装位置ズレが抑制できる。
【0012】
また,磁電変換素子の自立安定性が向上することにより、リフローハンダ付けが可能となるため,実装基板に設けた挿入孔に磁電変換素子のリード端子を挿入し,その挿入部分を表裏側からハンダ付けする従来の工法に比較し、製造コストを低減する効果がある。
【0013】
請求項2記載の電流センサによれば,一方向のリード端子を持つ磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて形成した素子支持部のうち、両端に位置する素子支持部を実装基板面上にハの字状に成形したので、磁電変換素子の自立安定性を維持することができ,ハンダが固着する前に実装基板上で該磁電変換素子が倒れてハンダ付けが出来なくなる事態を回避することができる。また,磁電変換素子の自立安定性が向上し、請求項1と同様にリフロー工程でハンダ付けすることが可能となるため,実装基板に設けた挿入孔にリード端子を挿入し,その挿入部分を表裏側からハンダ付けする従来の工法に比較し、製造コストを低減する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1による電流センサの構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態1による磁電変換素子の実装形態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態1による磁電変換素子の実装形態を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態1による磁電変換素子の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態1による磁電変換素子の実装方法を示す組立斜視図である。
【図6】本発明の実施形態2による磁電変換素子の実装形態を示す上面図である。
【図7】本発明の実施形態2による磁電変換素子の実装形態を示す正面図である。
【図8】本発明の実施形態3による磁電変換素子の斜視図である。
【図9】従来の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1
図1から図5は,この本発明の実施形態1による電流センサの構成例および電流センサの磁電変換素子を示す。図1は電流センサの構造を示す断面図,図2は磁電変換素子の実装形態を示す側面図,図3は磁電変換素子の実装形態を示す正面図,図4は磁電変換素子の斜視図,図5磁電変換素子の組立方法を示す斜視図はである。
図1に於いて,樹脂ケース13内には被測定電流が流れる一次導体8を取り囲むように、エアギャップ11を有する環状磁性体コア9が収納され、更に前記エアギャップ11内には,磁電変換素子1の感磁面12が一次導体8に流れる被測定電流によりエアギャップ11内に発生する磁界10の方向に対し垂直方向に配置されている。
【0016】
このように構成される電流センサにおいては,磁電変換素子1の駆動やその出力を所定の値に増幅するなどの目的で,磁電変換素子1は駆動回路や増幅回路が形成された実装基板6に実装されるが,前述の構成とするためには,図2〜図5に示すように一方向のリード端子を持つ磁電変換素子1は実装基板6に対し直角方向に実装することが必要となる。
【0017】
本発明の実施形態1による電流センサでは,一方向のリード端子を持つ磁電変換素子1のリード端子2を,所定の高さになる位置で略直角に折り曲げて素子支持部3が形成され,更に少なくとも一箇所以上の素子支持部の先端部分を実装基板6の側へ略直角に折り曲げて位置決め用曲げ部4が形成されている。
前記位置決め用曲げ部4を実装基板6の所定の位置に設けた実装用リード端子挿入孔7に挿入することにより,磁電変換素子1の実装位置が固定され,且つ自立安定性を維持した状態で素子支持部3を実装基板6に設けられた実装用パッド5にはんだ付け固定することができる。
尚,実装用リード端子挿入孔7はスルーホールでもキリ穴でも同様な効果が期待できる。
【0018】
実施の形態2
図6および図7は,本発明の実施形態2による電流センサの磁電変換素子1の実装基板6への実装形態を示す上面図および正面図である。
実施形態2では、一方向のリード端子を持つ磁電変換素子1のリード端子2を,所定の高さになる位置で略直角に折り曲げて素子支持部3を形成し、更に形成した両端の素子支持部3a,3cを実装基板6の実装面にハの字状に成形し,磁電変換素子1の自立安定性を持たせたものである。
磁電変換素子1の外郭端面より外側に位置する程度に曲げてハの字状に成形した素子支持部3a,3c、並びに前記外郭の中央に位置するよう形成した素子支持部3bは、それぞれの成形形状に合わせ実装基板6に設けられた実装パッド5a,5cおよび5bに安定的に自立し,それぞれはんだ付け固定される。
上記のように素子支持部3a,3cを実装基板6の実装面にハの字状に形成することで,自立安定性の維持と実装時の位置ズレ抑制が期待できる。
【0019】
実施の形態3
図8は実施形態3による電流センサの磁電変換素子1の斜視図である。本実施形態に於いては,磁電変換素子1の外郭中央に位置する素子支持部3bの先端部分に位置決め用曲げ部4bを設け,実装基板6の所定の位置に設けた実装用リード端子挿入孔7に挿入することにより、磁電変換素子1の自立安定性と位置ズレを抑制している。
両側の素子支持部3a,3cには位置決め用曲げ部4を形成しないので,実施の形態1に比較し曲げ加工工数を減らすことができ,更に実装基板6の実装用リード端子挿入孔7への挿入箇所が1箇所だけなので容易に挿入することができ,位置決め効果を損なうことなく,より低コストで磁電変換素子1を実装基板6へ実装することが可能となる。
尚、実施の形態3は,磁電変換素子1の外郭中央に位置する素子支持部3bの一箇所のみ位置決め用曲げ部4bを設けたが,それに限るものではなく,素子支持部3a,3b,3cのいずれか一箇所または二箇所に位置決め用曲げ部4を設けても同様の効果が得られる。
【0020】
本発明による実施形態1,2および3の電流センサの磁電変換素子1は,リード端子2が全て3極の場合を示したが,3極以上の構成に於いても同様の考え方で具現化することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 磁電変換素子,2 リード端子,3 素子支持部,4 位置決め用曲げ部,5 実装用パッド,6 実装基板,7 実装用リード端子挿入孔,8 一次導体,9 環状磁性体コア,10 磁界,11 ギャップ,12 感磁面,13 樹脂ケース,14 ソルダレジスト,15 ハンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ケースに収納され,被測定電流が流れる一次導体を取り囲むように配置されたギャップを有する環状磁性体コアと,前記ギャップ内に配置された一方向のリード端子を持つ磁電変換素子と,磁電変換素子の駆動回路や出力増幅回路などの電気回路が形成された実装基板とを備えた電流センサにおいて,前記磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて素子支持部を形成し、形成した素子支持部のうち、少なくとも一箇所以上の素子支持部の先端部を更に前記実装基板側へ略直角に折り曲げて形成した位置決め用曲げ部を、実装基板に設けた実装用リード端子挿入孔に挿入して実装したことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
樹脂ケースに収納され,被測定電流が流れる一次導体を取り囲むように配置されたギャップを有する環状磁性体コアと,前記ギャップ内に配置された一方向のリード端子を持つ磁電変換素子と,磁電変換素子の駆動回路や出力増幅回路などの電気回路が形成された実装基板とを備えた電流センサにおいて,前記磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて形成した素子支持部のうち、両端に位置する素子支持部を前記実装基板面上にハの字状に成形して実装基板に実装したことを特徴とする電流センサ。
【請求項3】
磁電変換素子のリード端子を略直角に折り曲げて素子支持部を形成し、形成した素子支持部の先端部を更に前記実装基板側へ略直角に折り曲げて形成した位置決め用曲げ部が、少なくとも一箇所以上設けられていることを特徴とする請求項2記載の電流センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−24851(P2013−24851A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174350(P2011−174350)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(595176098)甲神電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】