説明

電流制御型DC−DCコンバータ

【課題】他方の相のスイッチの影響によるピーク電流に制御系が反応しないようにすることができる電流制御型DC−DCコンバータ。
【解決手段】電流検出器3a(3b)の第1電流検出信号(第2電流検出信号)と、電圧検出器8の電圧検出信号と基準電圧との誤差電圧に基づく第1基準電流(第2基準電流)とを比較するコンパレータ31(32)と、第2電流検出信号が最小値になった時点から第2電流検出信号が第2基準電流に達する時点までの期間よりもオン期間が長いパルス信号p1を発生するパルス発生器34と、第1電流検出信号が最小値になった時点から第1電流検出信号が第1基準電流に達する時点までの期間よりもオン期間が長いパルス信号p2を、パルス信号p1に対して1/2周期後に発生するパルス発生器33と、パルス発生器34(33)のパルス信号とコンパレータ31(32)の出力信号とに基づき第1PWM信号(第2PWM信号)を生成してスイッチTr1(Tr2)をオン/オフさせるPWM回路36(35)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピーク電流モード制御の昇圧チョッパ回路からなる電流制御型DC−DCコンバータに関し、特に電気自動車に適用される電流制御型DC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来のDC−DCコンバータの回路構成図である。昇圧型のDC−DCコンバータは、直流電源Vdc1、トランスT3,T4、リアクトルL3、スイッチQ1,Q2、ダイオードD3,D4、平滑コンデンサC1及び制御回路100を有する。
【0003】
トランスT3は、1次巻線5a(巻数np)と、1次巻線5aに直列に接続された巻き上げ巻線5b(巻数np1)と、1次巻線5a及び巻き上げ巻線5bに電磁結合する2次巻線5c(巻数ns)とを有する。トランスT4は、トランスT3と同一に構成され、1次巻線6a(巻数np)と、1次巻線6aに直列に接続された巻き上げ巻線6b(巻数np1)と、1次巻線6a及び巻き上げ巻線6bに電磁結合する2次巻線6c(巻数ns)とを有する。
【0004】
直流電源Vdc1の両端にはトランスT3の1次巻線5aを介してMOSFET等からなるスイッチQ1のドレイン−ソース間が接続されている。直流電源Vdc1の両端にはトランスT4の1次巻線6aを介してMOSFET等からなるスイッチQ2のドレイン−ソース間が接続されている。トランスT3の1次巻線5aとスイッチQ1のドレインとの接続点とスイッチQ1のソースとには、トランスT3の巻き上げ巻線5bとダイオードD3と平滑コンデンサC1とからなる第1直列回路が接続されている。トランスT4の1次巻線6aとスイッチQ2のドレインとの接続点とスイッチQ2のソースとには、トランスT4の巻き上げ巻線6bとダイオードD4と平滑コンデンサC1とからなる第2直列回路が接続されている。
【0005】
トランスT3の2次巻線5cとトランスT4の2次巻線6cとの直列回路の両端には、リアクトルL3が接続されている。制御回路100は、平滑コンデンサC1の出力電圧Voに基づきスイッチQ1とスイッチQ2とを180°の位相差でオン/オフさせる。
【0006】
このように構成された従来のDC−DCコンバータによれば、制御回路100からのQ1制御信号Q1gによりスイッチQ1をオンさせると、電流は、Vdc1プラス→5a→Q1→Vdc1マイナスの経路で流れる。このため、スイッチQ1の電流Q1iは直線的に増加する。同時に、トランスT3の2次巻線5cにも電圧が発生し、5c→L3→6c→5cの経路でリアクトルL3に電流L3iが流れる。
【0007】
電流L3iは、トランスの等アンペアーターンの法則により流れて、リアクトルL3にエネルギーを蓄積すると共にトランスT4の2次巻線6cにも同一電流が流れる。このため、トランスT4の1次巻線6aと巻き上げ巻線6bには、巻数に応じた電圧が誘起される。
【0008】
また、トランスT4の巻き上げ比をA=(np+np1)/npとした場合に、ダイオードD4には、スイッチQ1の電流Q1iの1/Aの電流がVdc1プラス→6a→6b→D4→C1→Vdc1マイナスの経路で流れる。ダイオードD4の電流D4iはスイッチQ2をオンする時刻まで流れる。平滑コンデンサC1の出力電圧Voは、直流電源Vdc1の電圧(入力電圧)とトランスT4の1次巻線6aに発生する電圧とトランスT4の巻き上げ巻線6bに発生する電圧との和となる。
【0009】
トランスT4に発生する電圧は、スイッチQ1のオンデューティ(D=Ton/T)をDとした場合、A・Vdc1・Dである。TonはスイッチQ1のオン時間である。TはスイッチQ1をスイッチングさせる周期である。平滑コンデンサC1の出力電圧Voは、Vo=Vdc1(1+A・D)となり、オンデューティDを可変することにより、出力電圧Voを制御できる。
【0010】
次に、制御回路100からのQ1制御信号Q1gによりスイッチQ1をオフさせる。このとき、Vdc1プラス→5a→5b→D3→C1→Vdc1マイナスの経路で電流D3iが流れる。
【0011】
次に、制御回路100からのQ2制御信号Q2gによりスイッチQ2をオンさせる。このとき、電流は、Vdc1プラス→6a→Q2→Vdc1マイナスの経路で流れる。このため、スイッチQ2の電流Q2iは直線的に増加する。同時に、トランスT4の2次巻線6cにも電圧が発生し、6c→5c→L3→6cの経路でリアクトルL3に電流L3iが増加しながら流れる。
【0012】
電流L3iは、トランスの等アンペアーターンの法則により流れて、リアクトルL3にエネルギーを蓄積すると共にトランスT3の2次巻線5cにも同一電流が流れる。このため、トランスT3の1次巻線5aと巻き上げ巻線5bには、巻数に応じた電圧が誘起される。
【0013】
また、トランスT3の巻き上げ比をA=(np+np1)/npとした場合に、ダイオードD3には、スイッチQ2の電流Q2iの1/Aの電流がVdc1プラス→5a→5b→D3→C1→Vdc1マイナスの経路で流れる。ダイオードD3の電流D3iはスイッチQ1をオンする時刻まで流れる。平滑コンデンサC1の出力電圧Voは、直流電源Vdc1の電圧(入力電圧)とトランスT3の1次巻線5aに発生する電圧とトランスT3の巻き上げ巻線5bに発生する電圧との和となる。
【0014】
このように、図4に示すマルチフェーズ方式トランスリンク型の昇圧チョッパ回路では、独立していた2つの相をトランスで結合している。このようにすることで、2つ必要であったコアを1つのコアのみで昇圧動作させることができる。
【0015】
また、非特許文献1には、ピーク電流モード制御が記載されている。ピーク電流モード制御は、スイッチをオンし、昇圧リアクトルに流れる電流を検出し、検出された電流信号が制御電圧になるとスイッチをオフする制御を行う。即ち、昇圧チョッパ回路から検出した電流信号のピーク値を制限することで、電流を制御することができる。
【特許文献1】特開2006−262601号公報
【非特許文献1】トランジスタ技術2004年4月号p213−222
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、図4に示すDC−DCコンバータでは、1相目のスイッチQ1と2相目のスイッチQ2とが180°の位相差でオン/オフされ、2つの相のエネルギー蓄積要素をトランスを介してリンクさせることにより、一方の相の電流が他方の相の電流に直接、影響を及ぼす。このため、他方の相のスイッチの影響によるピーク電流に一方の相のスイッチ、即ち、制御系が反応してしまう。このため、DC−DCコンバータが正常に機能しない。
【0017】
本発明は、他方の相のスイッチの影響によるピーク電流に制御系が反応しないようにすることができる電流制御型DC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、直流電源の両端に第1トランスの1次巻線を介して接続される第1スイッチと、前記直流電源の両端に第2トランスの1次巻線を介して接続される第2スイッチと、前記第1トランスの1次巻線と前記第1スイッチの一端との接続点と前記第1スイッチの他端とに接続され、第1ダイオードと平滑コンデンサとからなる第1直列回路と、前記第2トランスの1次巻線と前記第2スイッチの一端との接続点と前記第2スイッチの他端とに接続され、第2ダイオードと前記平滑コンデンサとからなる第2直列回路と、前記第1トランスの2次巻線と前記第2トランスの2次巻線とが直列に接続された直列回路の両端に接続されるリアクトルと、前記第1トランスの1次巻線に流れる電流を検出する第1電流検出器と、前記第2トランスの1次巻線に流れる電流を検出する第2電流検出器と、前記平滑コンデンサの出力電圧を検出する電圧検出器と、前記第1電流検出器からの第1電流検出信号と、前記電圧検出器からの電圧検出信号と基準電圧との誤差電圧に基づく第1基準電流とを比較する第1コンパレータと、前記第2電流検出器からの第2電流検出信号と、前記電圧検出器からの電圧検出信号と基準電圧との誤差電圧に基づく第2基準電流とを比較する第2コンパレータと、前記第2電流検出信号が最小値になった時点から前記第2電流検出信号が前記第2基準電流に達する時点までの期間よりもオン期間が長い第1パルス信号を発生する第1パルス発生器と、前記第1電流検出信号が最小値になった時点から前記第1電流検出信号が前記第1基準電流に達する時点までの期間よりもオン期間が長い第2パルス信号を、前記第1パルス信号に対して1/2周期後に発生する第2パルス発生器と、前記第1パルス発生器からの第1パルス信号と前記第1コンパレータからの出力信号とに基づき第1PWM信号を生成して前記第1スイッチをオン/オフさせる第1PWM回路と、前記第2パルス発生器からの第2パルス信号と前記第2コンパレータからの出力信号とに基づき第2PWM信号を生成して前記第2スイッチをオン/オフさせる第2PWM回路とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の電流制御型DC−DCコンバータにおいて、前記第2PWM信号は、前記第1PWM信号がオンである期間に、オンである期間を有することを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の電流制御型DC−DCコンバータにおいて、前記第1パルス信号及び第2パルス信号のオン期間は、前記第1パルス信号及び第2パルス信号の周期の40%から60%の間であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1パルス信号は、第2電流検出信号が最小値になった時点から第2電流検出信号が第2基準電流に達する時点までの期間よりもオン期間が長く、第2パルス信号は、第1電流検出信号が最小値になった時点から第1電流検出信号が第1基準電流に達する時点までの期間よりもオン期間が長いので、第1スイッチがオフすると同時に、第2スイッチがオフすることがなくなり、第2スイッチがオフすると同時に、第1スイッチがオフすることがなくなる。即ち、他方の相のスイッチの影響によるピーク電流(誤差電圧に基づく基準電流)に制御系が反応しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の電流制御型DC−DCコンバータの実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は実施例1の電流制御型DC−DCコンバータを示す回路構成図である。図1に示す電流制御型DC−DCコンバータは、ピーク電流制御のマルチフェーズ方式トランスリンク型昇圧チョッパ回路からなる。
【0024】
電流制御型DC−DCコンバータは、直流電源Vi、トランスT1,T2、リアクトルLT、スイッチTr1,Tr2、ダイオードD1,D2、平滑コンデンサCo、電流検出器3a,3b、電圧検出器8、誤差増幅回路10、スロープ補償回路20、コンパレータ31,32、パルス発生器33,34、フリップフロップ回路35,36を有する。誤差増幅器10、スロープ補償回路20、コンパレータ31,32、パルス発生器33,34、フリップフロップ回路35,36は、制御回路を構成する。
【0025】
トランスT1は、1次巻線1a(巻数n1)と、1次巻線1aに電磁結合する2次巻線1b(巻数n2)とを有する。トランスT2は、トランスT1と同一に構成され、1次巻線2a(巻数n4)と、1次巻線2aに電磁結合する2次巻線2b(巻数n3)とを有する。
【0026】
直流電源Viの両端には電流検出器3aとトランスT1の1次巻線1aを介してIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)からなるスイッチTr1のコレクタ−エミッタ間が接続されている。直流電源Viの両端には電流検出器3bとトランスT2の1次巻線2aを介してIGBTからなるスイッチTr2のコレクタ−エミッタ間が接続されている。電流検出器3a,3bは、例えば、カレントトランスからなる。
【0027】
トランスT1の1次巻線1aとスイッチTr1のコレクタとの接続点とスイッチTr1のエミッタとには、ダイオードD1と平滑コンデンサCoとからなる第1直列回路が接続されている。トランスT2の1次巻線2aとスイッチTr2のコレクタとの接続点とスイッチTr2のエミッタとには、ダイオードD2と平滑コンデンサCoとからなる第2直列回路が接続されている。トランスT1の2次巻線1bとトランスT2の2次巻線2bとの直列回路の両端には、リアクトルLTが接続されている。
【0028】
電圧検出器8は、直列に接続された抵抗R1と抵抗R2とで構成され、平滑コンデンサCoの出力電圧Voを検出して、電圧検出信号を誤差増幅回路10に出力する。誤差増幅回路10は、抵抗R3、抵抗R4、基準電圧E1、誤差増幅器11で構成され、電圧検出回路8からの電圧検出信号と基準電圧E1との誤差電圧を増幅して加算器22,24に出力する。
【0029】
スロープ補償回路20は、三角波発生器21,23、加算器22,24で構成され、スイッチのオンの割合が50%を超えても電流波形がサブハーモニック発振を起こさないように誤差増幅回路10の出力に負の傾きの直線を加える補償を行なうものである。
【0030】
三角波発生器21は、三角波信号を発生し、三角波発生器23は、三角波発生器21で発生した三角波信号に対して1/2周期分ずれた三角波信号を発生する。
【0031】
加算器22は、誤差増幅回路10からの誤差電圧から三角波発生器21で発生した三角波信号の電圧を減算し、減算された誤差電圧に応じた電流iref2(第2基準電流)をコンパレータ32の反転端子に出力する。加算器24は、誤差増幅回路10からの誤差電圧から三角波発生器23で発生した三角波信号の電圧を減算し、減算された誤差電圧に応じた電流iref1(第1基準電流)をコンパレータ31の反転端子に出力する。
【0032】
電流検出器3aは、トランスT1の1次巻線1aに流れる電流を検出し、検出された電流ics1(第1電流検出信号)をコンパレータ31の非反転端子に出力する。電流検出器3bは、トランスT2の1次巻線2aに流れる電流を検出し、検出された電流ics2(第2電流検出信号)をコンパレータ32の非反転端子に出力する。
【0033】
コンパレータ31は、電流検出器3aからの電流ics1が加算器24からの電流iref1以上のときフリップフロップ回路36のリセット端子RにHレベルを出力し、電流ics1が電流iref1未満のときフリップフロップ回路36のリセット端子RにLレベルを出力する。
【0034】
パルス発生器33は、パルス信号を発生し、パルス発生器34は、パルス発生器33で発生したパルス信号に対して1/2周期分ずれたパルス信号を発生する。
【0035】
パルス発生器34は、電流ics2が最小値になった時点から電流ics2が電流iref2に達する時点までの期間よりもオン期間が長いパルス信号p1を発生し、そのオン期間は例えばパルス信号p1の周期の40%である。パルス発生器33は、電流ics1が最小値になった時点から電流ics1が電流iref1に達する時点までの期間よりもオン期間が長いパルス信号p2を、パルス信号p1に対して1/2周期後に発生する。そのオン期間は例えばパルス信号p2の周期の40%である。
【0036】
なお、パルス信号P1,P2のオン期間は、パルス信号P1,P2の周期の40%から60%の間であれば良い。
【0037】
フリップフロップ回路36(第1PWM回路)は、パルス発生器34からのパルス信号p1とコンパレータ31からの出力信号とに基づき第1PWM信号PWM1を生成してスイッチTr1をオン/オフさせる。フリップフロップ回路35(第2PWM回路)は、パルス発生器33からのパルス信号p2とコンパレータ32からの出力信号とに基づき第2PWM信号PWM2を生成してスイッチTr1と1/2周期の位相差でスイッチTr2をオン/オフさせる。PWM信号PWM1がオンであるときに、第2PWM信号PWM2がオンである期間を有する。
【0038】
次にこのように構成された実施例1の電流制御型DC−DCコンバータの動作を図2に示すタイミングチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0039】
なお、図1に示す昇圧チョッパ回路の動作は、図4に示す昇圧チョッパ回路の動作と略同様であるので、ここでは、その説明は省略する。ここでは、電流モード制御の動作のみを説明する。
【0040】
まず、時刻t1において、パルス発生器34からの1相目のパルス信号(セットパルス)p1がHレベルとなると、フリップフロップ回路36からの第1PWM信号PWM1により1相目のスイッチTr1がターンオンする。スイッチTr1がターンオンすると、トランスT1,T2に電流が流れるので、電流検出器3a,3bにより検出された電流ics1,ics2は上昇する。
【0041】
次に、時刻t2において、2相目の電流ics2と誤差電圧に基づく加算器22からの2相目の電流ピーク値iref2とが一致する。すると、コンパレータ32からフリップフロップ回路35のリセット端子RにHレベルが入力される。このため、フリップフロップ回路35は、Lレベルの第2PWM信号PWM2を2相目のスイッチTr2に出力し、フリップフロップ回路35からの第2PWM信号PWM2により2相目のスイッチTr2がターンオフする。
【0042】
次に、時刻t3において、パルス発生器33からの2相目のパルス信号(セットパルス)p2がHレベルとなると、フリップフロップ回路35からの第2PWM信号PWM2により2相目のスイッチTr2がターンオンする。
【0043】
次に、時刻t4において、1相目の電流ics1と誤差電圧に基づく加算器24からの1相目の電流ピーク値iref1とが一致する。すると、コンパレータ31からフリップフロップ回路36のリセット端子RにHレベルが入力される。このため、フリップフロップ回路36は、Lレベルの第1PWM信号PWM1を1相目のスイッチTr1に出力すると、フリップフロップ回路36からの第1PWM信号PWM1により1相目のスイッチTr1がターンオフする。
【0044】
このように実施例1の電流制御型DC−DCコンバータによれば、パルス発生器34は、電流ics2が最小値imin2になった時点t1から電流ics2が電流iref2(電流ピーク値)に達する時点t2までの期間よりもオン期間が長いパルス信号p1を発生するので、時刻t2において、スイッチTr2がオフする。これと同時に、スイッチTr1はオフしない。即ち、スイッチTr2の影響によるピーク電流にスイッチTr1が反応しないようにすることができる。
【0045】
また、パルス発生器33は、電流ics1が最小値imin1になった時点t3から電流ics1が電流iref1(電流ピーク値)に達する時点t4までの期間よりもオン期間が長いパルス信号p2を、パルス信号p1に対して1/2周期後に発生するので、時刻t4において、スイッチTr1がオフする。これと同時に、スイッチTr2はオフしない。即ち、スイッチTr1の影響によるピーク電流にスイッチTr2が反応しないようにすることができる。
【0046】
なお、図3に従来の電流制御型DC−DCコンバータの各部のタイミングチャートを示した。図3に示すように、例えば、パルス発生器34のパルス信号(セットパルス)SPは、電流検出信号が最小値になった時点から電流検出信号が電流ピーク値に達する時点までの期間(時刻t11〜t12)よりもオン期間が十分に短いので、時刻t12において、スイッチTr2がオフすると、セットパルスがLレベルであるため、スイッチTr1がオフしてしまう。
【0047】
これに対して、実施例1の電流制御型DC−DCコンバータでは、パルス信号のオン期間を、パルス信号の周期(スイッチング周期)の40%から60%の間としたので、1/2周期分ずれたスイッチの影響によるピーク電流に制御系が反応しないようにすることができる。従って、電流制御型DC−DCコンバータを正常に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1の電流制御型DC−DCコンバータを示す回路構成図である。
【図2】実施例1の電流制御型DC−DCコンバータの各部のタイミングチャートである。
【図3】従来の電流制御型DC−DCコンバータの各部のタイミングチャートである。
【図4】従来のDC−DCコンバータの回路構成図である。
【符号の説明】
【0049】
Vi 直流電源
Co 平滑コンデンサ
T1,T2 トランス
Tr1,Tr2 スイッチ
D1〜D4 ダイオード
Ro 負荷抵抗
R1,R2,R3,R4 抵抗
1a,2a 1次巻線
1b,2b 2次巻線
3a,3b 電流検出器
8 電圧検出器
10 誤差増幅回路
20 スロープ補償回路
21,23 三角波発生器
22,24 加算器
31,32 コンパレータ
33,34 パルス発生器
35,36 フリップフロップ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の両端に第1トランスの1次巻線を介して接続される第1スイッチと、
前記直流電源の両端に第2トランスの1次巻線を介して接続される第2スイッチと、
前記第1トランスの1次巻線と前記第1スイッチの一端との接続点と前記第1スイッチの他端とに接続され、第1ダイオードと平滑コンデンサとからなる第1直列回路と、
前記第2トランスの1次巻線と前記第2スイッチの一端との接続点と前記第2スイッチの他端とに接続され、第2ダイオードと前記平滑コンデンサとからなる第2直列回路と、
前記第1トランスの2次巻線と前記第2トランスの2次巻線とが直列に接続された直列回路の両端に接続されるリアクトルと、
前記第1トランスの1次巻線に流れる電流を検出する第1電流検出器と、
前記第2トランスの1次巻線に流れる電流を検出する第2電流検出器と、
前記平滑コンデンサの出力電圧を検出する電圧検出器と、
前記第1電流検出器からの第1電流検出信号と、前記電圧検出器からの電圧検出信号と基準電圧との誤差電圧に基づく第1基準電流とを比較する第1コンパレータと、
前記第2電流検出器からの第2電流検出信号と、前記電圧検出器からの電圧検出信号と基準電圧との誤差電圧に基づく第2基準電流とを比較する第2コンパレータと、
前記第2電流検出信号が最小値になった時点から前記第2電流検出信号が前記第2基準電流に達する時点までの期間よりもオン期間が長い第1パルス信号を発生する第1パルス発生器と、
前記第1電流検出信号が最小値になった時点から前記第1電流検出信号が前記第1基準電流に達する時点までの期間よりもオン期間が長い第2パルス信号を、前記第1パルス信号に対して1/2周期後に発生する第2パルス発生器と、
前記第1パルス発生器からの第1パルス信号と前記第1コンパレータからの出力信号とに基づき第1PWM信号を生成して前記第1スイッチをオン/オフさせる第1PWM回路と、
前記第2パルス発生器からの第2パルス信号と前記第2コンパレータからの出力信号とに基づき第2PWM信号を生成して前記第2スイッチをオン/オフさせる第2PWM回路と、
を有することを特徴とする電流制御型DC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記第2PWM信号は、前記第1PWM信号がオンである期間に、オンである期間を有することを特徴とする請求項1記載の電流制御型DC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1パルス信号及び第2パルス信号のオン期間は、前記第1パルス信号及び第2パルス信号の周期の40%から60%の間であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電流制御型DC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−261135(P2009−261135A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107207(P2008−107207)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年10月20日社団法人電気学会中国支部発行の「平成19年度電気・情報関連学会中国支部 第58回連合大会講演論文集」に発表
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【Fターム(参考)】