説明

電源のためのDV/DT検出過電流保護回路

制御電極および2つの主電極を備えている電力切換トランジスタ用の過電流保護回路において、電力切換トランジスタの主電極の1つにおいて時間に対する電圧の変化率を検出し、変化率が所定値を上回った場合に、保護スイッチを制御して、電力切換トランジスタの制御電極に対する制御信号を取り除き、電力切換トランジスタをオフにする、保護スイッチを含む回路を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年6月10日に出願された"HIGH EFFICIENCY OFF-LINE LINEAR POWER SUPPLY"と題された米国出願第10/458,608号に関連しており、その全ての開示は、ここでの引用により本願明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、電気システム、例えば電源、特にオフライン高効率リニア電源用の過電流保護回路に関する。
【背景技術】
【0003】
上記で特定した米国特許出願第10/458,608号の中に、高効率オフラインリニア電源が記載されている。この電源は、電気ランプ用の調光器回路が電流を引き込んでいない期間の間、電子回路に電流を供給するように設計されている。特に、この電源は、調光器回路のトライアックがオフである期間の間、電子回路を駆動するための電流を引き込むように設計されている。
【0004】
図2を参照すると、この図は、電源電流引き込み波形(実線)と共に、AC波形(点線)を示している。調光器がオフのとき、トライアックは、半周期の全長の間、オフである。この場合、それは、上記で特定した特許出願の電源が電力を蓄電(storage)キャパシタに供給する期間1および3の間であり、これは、次に、リニアレギュレータによって安定化される。この電源は、期間2の間、電流を引き込まない。電源が蓄電キャパシタに充電電流を供給する特徴的な「ネコ耳」領域1および3のため、それは、時々「ネコ耳」電源と呼ばれる。調光器が最大強度または0%と100%の間の中間レベルにセットされるとき、トライアックは、各半周期のある部分の間、オフであり、半周期の残りの部分の間、オンである。ここで、この電源は、期間1の間だけ電力を蓄電キャパシタに供給し、期間2および3の間は電流を引き込まない。上記の両方の場合において、この電源は、トライアックがオフで、トライアックの両端間に蓄電キャパシタを充電するために利用可能な電圧があるときに、電流を引き込む。調光器は常にオフというわけではないので、この電源は、好ましくは、全ての場合において、期間1の間、電流を引き込むだけである。
【0005】
図1を参照すると、この図は、上記で特定した同時係属中の米国特許出願において開示されている高効率オフラインリニア電源と類似の電源を示している。電力は入力Iにおける交流電流源から加えられ、これはダイオードD1によって整流され、半波整流電圧レベルをバスV+上に供給する。あるいは、全波ブリッジからの全波整流電圧が、バスV+に供給されてもよい。電力切換トランジスタQ1が、バスと直列に設けられている。トランジスタQ1のソースは、安定化されていない電圧バスのキャパシタC4側に設けられている。レギュレータU1は、安定化された出力電圧Voを供給する。
【0006】
この電源は、抵抗R1、ダイオードD2、キャパシタC1、およびツェナーダイオードZ1を有するゲート電源を備えていて、これは、基本的に、上記で特定した同時係属中の特許出願の中で述べたような方法で動作して、抵抗R3、ダイオードD3および抵抗R5を介してトランジスタQ1に対してハード(hard)ゲート電圧ターンオンをもたらす。この回路によってトランジスタQ1のゲートに供給される電圧は、トランジスタQ1のハードターンオンをもたらし、トランジスタQ1がオンの時のトランジスタQ1における電力損失を減少させる。
【0007】
トランジスタQ2は、抵抗R1およびR2を含む分圧器によって決まる、そのベースでの電圧レベルが、トランジスタQ2をターンオンするための閾値に達したとき、トランジスタQ1をターンオフさせる。これは、バスV+上のバス電圧が所定値を上回っているとき、通常は、関連する調光器のトライアックがオンになっていて、バスV+の波形が図2の領域2の中にあるときに起こる。トランジスタQ2は、また、キャパシタC4上の電圧が、Z2によって設定される予め定められた値を上回るときにターンオンされ得る。トランジスタQ2がターンオンすると、トランジスタQ1に対するゲート駆動は取り除かれ、トランジスタQ1はターンオフされる。トランジスタQ2がターンオフすると、例えば、領域3において、トランジスタQ1はオンに戻される。
【0008】
図1の回路は、過電流保護回路100を備えている。その回路は、トランジスタQ3と、トランジスタQ1と直列の低抵抗の抵抗R6とを有している。抵抗R6は、全負荷電流を通し、従って、約3アンペアの電流レベルに対して約0.9ワットのオーダーの電力損失をもたらす。過電流保護回路100は、トランジスタQ1を通る電流レベルが予め定められた値を上回ったら、トランジスタQ3がターンオンされ、これによりトランジスタQ1に対するゲート駆動をターンオフし、トランジスタQ1に対する損傷を防止するように動作する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1の電源回路の過電流保護回路100は、直列抵抗R6の中で電力を浪費し、かつ安定化されていないバスに対して不必要な電圧降下をもたらす。
【0010】
より少ない電力損失しかもたらさないが、依然として適切に電力切換トランジスタを保護する過電流保護回路を提供することは、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、上述した過電流保護回路より少ない電力損失しかもたらさない改良された過電流保護を提供することである。
【0012】
上記および他の本発明の目的は、制御電極および2つの主電極を備えている電力切換トランジスタ用の過電流保護回路において、以下の構成を備えているものによって達成される。
【0013】
電力切換トランジスタの主電極の1つにおいて時間に対する電圧の変化率を検出し、変化率が所定値を上回った場合に、保護スイッチを制御して、電力切換トランジスタの制御電極に対する制御信号を取り除き、電力切換トランジスタをオフにする、保護スイッチを含む回路。
【0014】
他の本発明の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
さて、図3を参照すると、本発明による新たな過電流保護回路300が設けられている。この過電流保護回路は、トランジスタQ4、キャパシタC8および抵抗R8を備えている。この回路は、以下のように動作する。通常動作の間、トランジスタQ4のベースとエミッタの間の電圧VBEは、キャパシタC4上でのリプル電圧の立上り(rise)時間によって決まる、トランジスタQ1のソースでの最大通常動作dV/dtに対応する約.3ボルト未満である。これは、トランジスタQ4をターンオンするには不十分である。回路は、通常発生するdV/dtの約2倍で、トランジスタQ4のVBEが約.6ボルトになるように設計される。これは、トランジスタQ4をターンオンするのに十分であり、これによりトランジスタQ1からゲート駆動を取り除き、パワートランジスタQ1をターンオフする。従って、dV/dtが過電流に対応する所定値を上回るとき、トランジスタQ4に対するベース駆動は、それをターンオンするのに十分である。
【0016】
トランジスタQ1の中の電流が所定の制限を上回ったら、キャパシタC4上でのリプル電圧のdV/dtすなわち変化率は、dV/dtのためキャパシタC8を通過するパルスが、約.6ボルトの抵抗R8の両端間の電圧降下を引き起こし、これによりトランジスタQ4をターンオンするようなものになるであろう。通常動作状態の下で、キャパシタC4上に存在するdV/dtは、抵抗R8の両端間に約.3ボルトを発生させるのみであり、トランジスタQ4をターンオンするには不十分である。
【0017】
キャパシタC8は、バスV+上に、半波整流電圧が供給されるか、または全波整流電圧が供給されるかに関わらず、各サイクルに対してリセットされなければならない。例示した回路は、半波整流器を用いているので、このキャパシタは、ACサイクルの各全波の終わりにリセットされなければならない。抵抗R8は、通常、キャパシタC8を放電するのに十分でなければならない。これにより、次のACサイクルの間、次のパルスを通過させる準備が整う。抵抗R8がキャパシタを放電するには不十分な場合、ダイオードを、トランジスタQ4のベースと接地点との間に、そのアノードを接地点に向けて設けて、次のサイクルの前にキャパシタを放電することができる。
【0018】
本発明によるdV/dt検出過電流保護回路は、図1に関連して述べた過電流保護回路を超える利益を提供する。特に、例えば図1の抵抗R6のような直列抵抗における電力浪費がないので、電力消費は減少する。例えば、3アンペアの電流レベルで、抵抗R6における電力浪費は約.9ワットである。
【0019】
更に、直列抵抗素子がないので、直列素子の電圧降下がなく、より高い電圧をキャパシタC4の両端間に発生させることを可能にし、これにより電力を節約する。電源は、より素早く充電され、かつピーク電流は、減少され得る。その結果、トランジスタQ1の両端間の電圧降下は、より少なくなり、これにより、トランジスタQ1の中での電力浪費も、より少なくなる。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、トランジスタQ4は、電界効果トランジスタによって置き換えられ得る。
【0021】
記載した回路の中で、キャパシタC8は約.01μFであり、抵抗R8は約3.3kΩである。
【0022】
本発明の過電流保護回路を、電源の電力切換トランジスタを保護することと関連して示してきたが、本発明は、目的が電力切換トランジスタまたは他の電気デバイスを過電流損傷から保護することである様々な回路の中で用いられ得る。例えば、本発明の過電流保護回路は、照明負荷にショートがある場合に調光器のトライアックを保護するために用いられ得る。
【0023】
本発明を、特定の実施形態に関連して述べてきたが、他の多くの変形および修正および他の用途は、当業者にとって明らかである。従って、本発明は、ここでの特定の開示によってではなく、添付の請求項によってのみ、限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】過電流保護回路を組み込んでいる従来の高効率オフラインリニア電源回路を示している。
【図2】図1の回路の動作を説明するための波形を示している。
【図3】本発明の過電流保護回路を組み込んでいる電源を示している。
【符号の説明】
【0025】
Q1 トランジスタ
300 過電流保護回路
Q4 トランジスタ
C8 キャパシタ
R8 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電極および2つの主電極を備えている電力切換トランジスタ用の過電流保護回路において、
電力切換トランジスタの主電極の1つにおいて時間に対する電圧の変化率を検出し、変化率が所定値を上回った場合に、保護スイッチを制御して、電力切換トランジスタの制御電極に対する制御信号を取り除き、電力切換トランジスタをオフにする、保護スイッチを含む回路を備えていることを特徴とする過電流保護回路。
【請求項2】
前記検出回路は、電力切換トランジスタの主電極に接続されたキャパシタと、前記キャパシタからパルスを受信して、両端間に電圧を発生させて、両端間の電圧が所定値を上回った場合に、保護スイッチをターンオンするように接続された抵抗とを有していることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記保護スイッチは、トランジスタであることを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記保護スイッチは、バイポーラ接合トランジスタであることを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記抵抗は、保護トランジスタのベース−エミッタ接合間に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の回路。
【請求項6】
保護トランジスタのベース−エミッタ接合間に接続された、キャパシタを放電するためのダイオードを更に備えていることを特徴とする請求項4に記載の回路。
【請求項7】
前記保護スイッチは、電界効果トランジスタ(FET)であることを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項8】
前記電力切換トランジスタは、電界効果トランジスタ(FET)であることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項9】
制御電極および2つの主電極を備えている電力切換トランジスタ用の過電流保護回路において、
保護トランジスタを含む回路を備えていて、この回路は、電力切換トランジスタの主電極の1つにおいて時間に対する電圧の変化率を検出し、変化率が所定値を上回った場合に、保護トランジスタを制御して、電力切換トランジスタの制御電極に対する制御信号を取り除き、電力切換トランジスタをオフにする、R−C回路を含んでいることを特徴とする過電流保護回路。
【請求項10】
前記R−C回路は、電力切換トランジスタの主電極に接続されたキャパシタと、前記キャパシタからパルスを受信して、両端間に電圧を発生させて、両端間の電圧が所定値を上回った場合に、保護トランジスタをオンにするように接続された抵抗とを有していることを特徴とする請求項9に記載の回路。
【請求項11】
前記保護トランジスタは、バイポーラ接合トランジスタであることを特徴とする請求項10に記載の回路。
【請求項12】
前記抵抗は、保護トランジスタのベース−エミッタ接合間に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の回路。
【請求項13】
前記保護トランジスタは、電界効果トランジスタ(FET)であることを特徴とする請求項10に記載の回路。
【請求項14】
前記電力切換トランジスタは、電界効果トランジスタ(FET)であることを特徴とする請求項9に記載の回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−518389(P2007−518389A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549578(P2006−549578)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/001036
【国際公開番号】WO2005/074137
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(592161833)ルートロン エレクトロニクス カンパニー インコーポレイテッド (29)
【氏名又は名称原語表記】LUTRONELECTRONICS COMPANY INCORPORATED
【Fターム(参考)】