電源体の接続構造、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置
【課題】電源体同士を接続する際に短絡の可能性を排除しつつ良好な作業性を確保し、かつ製造コストを抑制することができる電源体の接続構造、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置を提供する。
【解決手段】一の電源体2Aの第一電極7Aと、他の電源体2Bの第二電極6Aとを電気的に接続する電源体の接続構造であって、導電性の金属板材からなり、第一電極7Aに一端側が接続され、第二電極6Aに他端側が接続される接続部材20と、一の電源体2A側に設けられ、一の電源体2Aにおける第一電極7A以外の部分に対して接続部材20を絶縁する第一絶縁部材21と、他の電源体2B側に設けられ、他の電源体2Bにおける第二電極6A以外の部分に対して接続部材20を絶縁する第二絶縁部材22と、を備える。
【解決手段】一の電源体2Aの第一電極7Aと、他の電源体2Bの第二電極6Aとを電気的に接続する電源体の接続構造であって、導電性の金属板材からなり、第一電極7Aに一端側が接続され、第二電極6Aに他端側が接続される接続部材20と、一の電源体2A側に設けられ、一の電源体2Aにおける第一電極7A以外の部分に対して接続部材20を絶縁する第一絶縁部材21と、他の電源体2B側に設けられ、他の電源体2Bにおける第二電極6A以外の部分に対して接続部材20を絶縁する第二絶縁部材22と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などに用いられる電源装置における複数の電源体同士を電気的に接続する電源体の接続構造、電源装置を構成する電池集合体における電池同士を電気的に接続するバスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとを併用して走行するハイブリッド自動車などには、電動モータの駆動源としての電源装置が搭載されている。この電源装置は、一端に正の電極と他端に負の電極とが設けられた複数の電池から構成される電池集合体(電源体)を備え、所望の電圧を得るために複数の電池が直列に接続されている。これら複数の電池は、正の電極と負の電極とが互いに隣り合う状態で、一方向に沿って並べられている。
【0003】
前述した電源装置は、電池集合体の互いに隣り合う各電池の正の電極と負の電極とを接続する複数の接続部材(バスバー)を備え、それらの接続部材によって、電池集合体の複数の電池が直列に接続されている(例えば、特許文献1参照)。このような複数の接続部材は、絶縁性の合成樹脂などで構成された絶縁体枠に収容されたバスバーモジュールとして電池集合体に設置されることが一般的である。また、特許文献1記載の電源装置では、電池集合体が2列に分離され、各電池集合体における複数の電池の配列方向と直交した方向に並べて設置されている。
【0004】
一方、並べて設置された複数の電源体同士を電気的に接続する構造として、ワイヤハーネス(ケーブル)などを用いた接続構造が利用されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2記載の電源装置は、図11に示すように、互いに当接させずに並べた複数(2個)の電源体(バッテリ)Bを備え、互いの電源体Bにおける正負の電極端子C1,C2をワイヤハーネスWで接続している。ワイヤハーネスWは、導電性の芯線を絶縁体で被覆した電線部W1と、電線部W1の両端にて芯線に圧着された一対の端子(例えば、ちょうねじ端子や丸形端子等)W2と、芯線と端子W2との圧着部を覆って絶縁するターミナルカバーW3などを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−100619号公報
【特許文献2】特開2011−126396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献2に示されたような電源体の接続構造では、ワイヤハーネスWを用いて電源体Bの電極同士を接続することから、以下のような問題がある。
【0007】
先ず、ワイヤハーネスWが電線部W1や一対の端子W2、ターミナルカバーW3などで構成されるために、部品点数が多くなるとともに、圧着工程や絶縁工程などの工数が多くなって製作に手間が掛り、製造コストが高騰するという問題がある。
【0008】
次に、ワイヤハーネスWを電源体Bに接続する作業において、一方の端子W2を一方の電極端子C1に接続してから、他方の端子W2を他方の電極端子C2に接続することとなるが、この際、他方の端子W2が電源体Bの他の電極等に接触すると短絡の可能性がある。このため、ワイヤハーネスWの端子W2が電極端子C2以外に接触しないように適宜な対処を施しつつ接続作業を行う必要があり、作業手順の冗長化を招いて作業性が低下するという問題がある。ここで、短絡を防止するために、端子W2が絶縁性のハウジング等で覆われたコネクタを有したワイヤハーネスWを利用することが考えられる。しかしながら、そのようなワイヤハーネスWを用いる場合には、電源体Bの電極にもコネクタを設けなければならず、製造コストがさらに高騰するとともに、コネクタ同士を接続するためのスペースも必要となってしまう。
【0009】
一方、従来のワイヤハーネスWに替えて接続用のバスバーを用いた接続構造も考えられる。しかし、接続用のバスバーによって各電源体Bの電極端子C1,C2同士を接続する場合であっても、接続作業中にバスバーの一部が電極端子C2以外に接触して短絡する可能性を排除することができず、依然として前述したような作業性低下の問題を解決することが難しい。さらに、電極端子C1,C2同士を接続した状態では、バスバー中間の導電部が露出することから、この導電部を覆うために絶縁性を有した別体の保護キャップ等を用いた場合には、部品点数や作業工数が増大して製造や部品管理に要するコストが増加してしまうこととなる。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑み、電源体同士を接続する際に短絡の可能性を排除しつつ良好な作業性を確保し、かつ製造コストを抑制することができる電源体の接続構造、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された本発明の電源体の接続構造は、一の電源体の第一電極と、他の電源体の第二電極とを電気的に接続する電源体の接続構造であって、導電性の金属板材からなり、前記第一電極に一端側が接続され、前記第二電極に他端側が接続される接続部材と、前記一の電源体側に設けられ、該一の電源体における前記第一電極以外の部分に対して前記接続部材を絶縁する第一絶縁部材と、前記他の電源体側に設けられ、該他の電源体における前記第二電極以外の部分に対して前記接続部材を絶縁する第二絶縁部材と、を備え、前記第一絶縁部材に前記接続部材の一端側の少なくとも一部が保持された状態で該接続部材の他端側が前記第二電極に着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、一の電源体の第一電極と他の電源体の第二電極とを導電性の金属板材からなる接続部材で接続することで、従来のワイヤハーネスで接続した場合と比較して、接続部材の構造を簡単化することができる。また、一の電源体側に設けた第一絶縁部材によって接続部材と第一電極以外の部分とを絶縁するとともに、他の電源体側に設けた第二絶縁部材によって接続部材と第二電極以外の部分とを絶縁することで、接続部材を介した短絡を防止することができる。さらに、第一絶縁部材に接続部材の一端側が保持されることから、接続作業中における接続部材の不意な落下や移動を防いで短絡を確実に防止することができる。また、第一絶縁部材に一端側が保持された状態の接続部材を適宜に移動(回動やスライド)させて他端側を第二電極に接続することで、接続部材の移動範囲が限定されることから、電源体における接触を想定していない部分(以下、接触非許容部と記すことがある)への接続部材の接触を防止することができ、接続作業中の短絡をさらに確実に防止することができる。
【0013】
請求項2に記載された本発明のバスバーモジュールは、複数の電池が重ねられた一の電池集合体と複数の電池が重ねられた他の電池集合体とを電気的に接続するバスバーモジュールであって、前記一の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第一バスバー、及び該複数の第一バスバーを収容する第一絶縁体枠を有した第一接続体と、前記他の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第二バスバー、及び該複数の第二バスバーを収容する第二絶縁体枠を有した第二接続体と、前記一の電池集合体における所定電池の第一電極と、前記他の電池集合体における所定電池の第二電極とを接続する第三接続体と、を備え、前記第三接続体が、請求項1記載の接続構造を構成する前記接続部材、前記第一絶縁部材及び前記第二絶縁部材を有し、前記第一絶縁部材に前記接続部材の一端側の少なくとも一部が保持された状態で該接続部材の他端側が前記第二電極に着脱可能に構成されたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、前述した電源体の接続構造と同様に、第三接続体における接続部材の構造を簡単化することができるとともに、一及び他の電池集合体同士を接続部材で接続する作業中や接続後において、接続部材を介した短絡を確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に記載されたバスバーモジュールは、請求項2記載のバスバーモジュールにおいて、前記第一絶縁部材と前記第一絶縁体枠とが可撓性を有した連結部を介して連結されたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、第一接続体の第一絶縁体枠に第三接続体の第一絶縁部材を連結することで、これらを一体的に取り扱うことができるようになり、電池集合体へのバスバーモジュールの設置作業が容易にできるとともに、第一絶縁部材の脱落などを防止して接続部材と接触非許容部とを確実に絶縁することができる。また、連結部が可撓性を有していることで、一の電池集合体において、第一接続体を取り付ける電池(電極)と、第三接続体の接続部材を取り付ける電池(電極)と、の間に多少の位置ずれ(公差)があったとしても、この位置ずれを連結部の変形(撓み)によって吸収することができ、バスバーモジュールの設置作業性を高めることができる。さらに、バスバーモジュールの設置手順として、先ず、一の電池集合体に第一接続体を取り付け、第三接続体の接続部材は第一電極に固定しない状態としておき、一及び他の電池集合体を並列させてから、接続部材を第一及び第二の電極に接続する場合でも、固定された第一絶縁体枠に対して第三接続体の第一絶縁部材が連結部の撓みによって移動できるので、接続部材の接続作業を容易かつ確実に実施することができる。
【0017】
なお、前記バスバーモジュールにおいて、前記第二絶縁部材と前記第二絶縁体枠とが可撓性を有した連結部を介して連結されていてもよく、この場合にも、バスバーモジュールの設置作業が容易にできるとともに、他の電池集合体における電池の位置ずれを連結部で吸収することができる。
【0018】
また、連結部としては、第一絶縁体枠(第二絶縁体枠)及び第一絶縁部材(第二絶縁部材)と連結部とが合成樹脂の射出成形等によって一体成形されたものでもよいし、別体の弾性部材を取り付けて構成されるものでもよい。
【0019】
請求項4に記載されたバスバーモジュールは、請求項2又は3記載のバスバーモジュールにおいて、前記第一電極及び第二電極が各々円柱状に形成され、前記接続部材の一端側及び他端側には、それぞれ前記第一電極及び第二電極を挿通可能な挿通孔が形成され、前記一端側の挿通孔に前記第一電極を挿通させることで該接続部材が仮止めされ、前記第一電極を中心として他端側を前記第二電極に向かって回動させ、該第二電極を前記他端側の挿通孔に挿通させることで該接続部材が接続されることを特徴とする。
【0020】
上記構成により、接続部材の一端側の挿通孔に第一電極を挿通して接続部材を仮止めすることで、接続部材の脱落等を防止することができる。また、第一電極を中心として接続部材の他端側を回動させてから、その他端側の挿通孔に第二電極を挿通することで、接続部材を所定の軌跡範囲内で移動させ、その軌跡以外への接続部材の移動を規制することができる。従って、接続作業中における接続部材が意図せずに接触非許容部に接触することが防止できる。また、第一電極を中心として接続部材を回動させるだけの簡単な操作によって接続作業を行うことができるので、作業性を高めることができる。
【0021】
請求項5に記載されたバスバーモジュールは、請求項2〜4の何れか一項に記載のバスバーモジュールにおいて、前記第一絶縁部材には、保持した前記接続部材に当接可能な壁部と、該壁部から突出して設けられて前記接続部材を係止可能な係止部とが設けられたことを特徴とする。
【0022】
上記構成により、第一絶縁部材の壁部を当接させるとともに係止部で係止して接続部材を保持することで、接続部材を第一電極や第二電極に対して位置決めできるとともに、接続部材の脱落等を確実に防止することができる。
【0023】
請求項6に記載されたバスバーモジュールは、請求項2〜5の何れか一項に記載のバスバーモジュールにおいて、前記第一絶縁部材における前記第二絶縁部材側には、前記第二電極への前記接続部材の接続に際して該接続部材とともに変形する可撓壁部が形成されていることを特徴とする。
【0024】
上記構成により、接続部材とともに変形する可撓壁部を第一絶縁部材に形成したことで、接続作業中における接続部材の所定部分を可撓壁部で覆うことができ、短絡をさらに確実に防止することができる。
【0025】
一方、請求項7に記載された本発明の電源装置は、複数の電池が重ねられた一の電池集合体と、複数の電池が重ねられた他の電池集合体と、前記各電池集合体における複数の電池同士及び該一及び他の電池集合体の所定電池同士を接続する請求項2〜6の何れか一項に記載のバスバーモジュールと、を備えたことを特徴とする。
【0026】
上記構成により、前述したバスバーモジュールと同様に、接続部材の構造を簡単化することができるとともに、一及び他の電池集合体同士を接続部材で接続する作業中や接続後において、接続部材を介した短絡を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、接続部材の構造を簡単化することができるので、製造コストを抑制することができる。また、第一及び第二の絶縁部材によって接続部材と電源体の接触非許容部とが絶縁され、さらに、接続作業中の接続部材が接触非許容部に接触することも防止されるので、短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保することができる。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、前述と同様に接続部材の製造コストを抑制するとともに、接続部材を介した短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保することができる。さらに、第一及び第二接続体と接続部材を含む第三接続体とを備えたバスバーモジュールによって、一及び他の電池集合体の各々における電池同士を接続するとともに、各電池集合体の所定電池を接続することができる。従って、バスバーモジュール各部の構造や接続方法を共通化することができるので、異種の接続構造(例えば、ワイヤハーネス等を用いたもの)を併用する場合と比較して、各部構造や接続手順の標準化を図ることができ、製造コスト削減と作業効率向上とを一層促進させることができる。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、接続部材と接触非許容部とを確実に絶縁して短絡を防止するとともに、バスバーモジュールの設置作業性と、接続部材の接続作業性とを向上させることができる。
【0030】
請求項4記載の発明によれば、接続部材の脱落等を防止しつつ回動させるだけの簡単な操作によって接続作業を容易に行うことができる。さらに、接続部材が所定の軌跡上を回動するように案内できるので、接触非許容部への接触による短絡を確実に防止することができる。
【0031】
請求項5記載の発明によれば、接続部材の位置決め及び脱落防止を確実にして接続作業中の短絡の可能性を排除することができる。さらに、接続後においても、壁部によって接続部材を保護することができるので、別の導電体の接触による短絡も防止することができる。
【0032】
請求項6記載の発明によれば、接続部材の所定部分を可撓壁部で覆うことで接続作業中及び接続後において接続部材を保護することができ、接続部材を介した短絡を確実に防止することができる。
【0033】
請求項7記載の発明によれば、前述のバスバーモジュールと同様に、接続部材の製造コストを抑制するとともに、接続部材を介した短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保して、電源装置の製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置を分解して示す斜視図である。
【図2】前記電源装置の要部を拡大して示す平面図である。
【図3】図2にA−A線で示す前記電源装置の要部の断面図である。
【図4】前記電源装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】前記電源装置における接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図6】図5に続く前記接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図7】図6に続く前記接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図8】図7に続く前記接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図9】図8に続く前記接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図10】前記接続部材の作用を示す平面図である。
【図11】従来の電源装置の一形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態にかかる電源装置を、図1〜図10を参照して説明する。本実施形態の電源装置1は、電動モータの駆動力によって走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとの双方の駆動力で走行するハイブリッド車などに搭載され、電動モータに電力を供給するものである。
【0036】
電源装置1は、図1に示すように、複数(本実施形態では、2個)の電池集合体2(2A,2B)と、電池集合体2の上面に取り付けられるバスバーモジュール3と、を備えている。各電池集合体2A,2Bは、それぞれ一方向(図1中の矢印Xで示す方向)に並べて重ねられる複数の電池4を備え、これらの電池4が図示しない固定部材によって束ねられて固定されている。2個の電池集合体2A,2Bは、電池4を重ねた方向と直交する方向(図1中の矢印Yで示す方向)に並設されており、図示しない連結部材やベース枠などによって電池集合体2A,2B同士が連結されている。
【0037】
なお、以下、本明細書では、電池4同士が重ねられた方向(矢印Xの方向)を縦列方向Xと記し、この縦列方向Xに直交して電池集合体2A,2B同士が並設された方向(矢印Yの方向)を横列方向Yと記し、縦列方向X及び横列方向Yに直交する方向を高さ方向Zと記す。また、以下では、2個の電池集合体2A,2Bのうち、図1中の横列方向Yの左上側に示された電池集合体2Aを一の電池集合体(一の電源体)とし、図1中の横列方向Yの右下側に示された電池集合体2Bを他の電池集合体(他の電源体)として説明する。
【0038】
複数の電池4は、それぞれ方体状の電池本体5と、正の電極(以下、正極と記す)6と、負の電極(以下、負極と記す)7と、を備えている。正極6は、電池本体5の横列方向Yに沿った一端側に設けられ、負極7は、電池本体5の横列方向Yに沿った他端側に設けられている。これらの正極6及び負極7は、導電性の金属からなるボルト等によって構成され、円柱状の軸部を電池本体5から上方に突出させて設けられている。また、各々の正極6及び負極7には、導電性の金属からなるナット等によって構成された固定部材8が螺合可能になっている。また、図1に示すように、隣り合う電池4同士は、互いの正極6と負極7とが隣り合うように並べられている。即ち、複数の電池4は、正極6と負極7とが縦列方向Xに沿って交互に正負逆となる状態で重ねられている。
【0039】
ここで、以下の説明を簡明にするために、電池集合体2Aにおいて、図1中の左上側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第一電極列E1と記し、その右下側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第二電極列E2と記す。さらに、電池集合体2Bにおいて、図1中の左上側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第三電極列E3と記し、その右下側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第四電極列E4と記す。また、第二電極列E2のうち、図1中の縦列方向X右端の1個の負極7を第一電極としての接続用負極7Aとし、第三電極列E3のうち、図1中の縦列方向X右端の1個の正極6を第二電極としての接続用正極6Aとする。さらに、第一電極列E1のうち、図1中の縦列方向X左端の1個の正極6を出力用正極6Bとし、第四電極列E4のうち、図1中の縦列方向X左端の1個の負極7を出力用負極7Bとし、これらの出力用正極6B及び出力用負極7Bが前記電動モータに接続される。
【0040】
バスバーモジュール3は、図1に示すように、第一電極列E1に取り付けられる第一構成体3Aと、接続用負極7Aを除いた第二電極列E2に取り付けられる第一接続体としての第二構成体3Bと、接続用正極6Aを除いた第三電極列E3に取り付けられる第二接続体としての第三構成体3Cと、第四電極列E4に取り付けられる第四構成体3Dと、接続用負極7A及び接続用正極6Aに取り付けられる第三接続体としての第五構成体3Eとを備える。
【0041】
第一構成体3A及び第四構成体3Dは、互いに略同一構成とされ、それぞれ縦列方向Xに沿って長尺枠状に形成されたバスバー収容枠10と、このバスバー収容枠10に収容される複数のバスバー11とを備えている。第二構成体3B及び第三構成体3Cは、互いに略同一構成とされ、それぞれ縦列方向Xに沿って長尺枠状に形成されたバスバー収容枠12,13と、このバスバー収容枠12,13に収容される複数のバスバー14,15とを備えている。ここで、第二構成体3Bのバスバー収容枠12によって第一絶縁体枠が構成され、複数のバスバー14によって複数の第一バスバーが構成される。また、第三構成体3Cのバスバー収容枠13によって第二絶縁体枠が構成され、複数のバスバー15によって複数の第二バスバーが構成される。
【0042】
バスバー収容枠10,12,13は、それぞれポリプロピレン樹脂などの絶縁性の合成樹脂で構成され、バスバー11,14,15を保持して下方に露出させる開口を有した底面部16と、この底面部16の四周を囲んで立設された側壁部17とを備えて形成されている。バスバー11,14,15は、それぞれ導電性の金属板材で構成されている。出力用正極6Bに取り付けられるバスバー11Aと出力用負極7Bに取り付けられるバスバー11Bとを除き、他のバスバー11,14,15には、それぞれ挿通孔18が2つずつ形成され、各挿通孔18に正極6または負極7とが挿通され、これらの正極6と負極7とを直列に接続するように構成されている。一方、バスバー11A,11Bは、出力用正極6Bまたは出力用負極7Bを挿通させる挿通孔18が1つ形成され、図示しない出力端子やワイヤハーネス等を介して電動モータに接続されている。
【0043】
一方、バスバーモジュール3の第五構成体3Eは、図2〜図4にも示すように、接続部材としての接続用バスバー20と、第一絶縁部材としての第一カバー部材21と、第二絶縁部材としての第二カバー部材22とを備えている。この第五構成体3Eは、接続用バスバー20によって接続用負極7Aと接続用正極6Aとを接続することで、電池集合体2Aと電池集合体2Bとを電気的に直列に接続するものである。
【0044】
接続用バスバー20は、導電性の金属板材からなり、一端側である電池集合体2A側の第一直線部20Aと、他端側である電池集合体2B側の第二直線部20Bと、これらを略直角に連結する屈曲部20Cとを有し、平面視で全体略L字形に形成されている。第一直線部20Aの先端側には、接続用負極7Aを挿通させる挿通孔23が設けられ、第二直線部20Bの先端側には、接続用正極6Aを挿通させる挿通孔24が設けられている。この接続用バスバー20は、各挿通孔23,24に接続用負極7A及び接続用正極6Aを挿通させた状態で、屈曲部20Cが縦列方向Xの外側に向かって突出する向きで取り付けられる。
【0045】
第一カバー部材21及び第二カバー部材22は、それぞれポリプロピレン樹脂などの絶縁性の合成樹脂で構成されている。第一カバー部材21は、接続用バスバー20の挿通孔23周辺部分を除く第一直線部20A及び屈曲部20Cと電池集合体2Aとの間に位置し、これらを互いに絶縁するように設けられている。また、第二カバー部材22は、接続用バスバー20の挿通孔24周辺部分を除く第二直線部20Bと電池集合体2Bとの間に位置し、これらを互いに絶縁するように設けられている。
【0046】
第一カバー部材21は、接続用負極7A近傍に開口を有する底面部30と、接続用負極7Aよりも横列方向Yの第一構成体3A側にて縦列方向Xに沿って延びる壁部31と、壁部31の縦列方向X外側(図2中の右側)端部に連続して横列方向Yに沿って延びる壁部32と、第二構成体3Bのバスバー収容枠12に対向して横列方向Yに沿って延びる壁部33と、壁部33の横列方向Yに沿った第三構成体3C側に連続する可撓壁部34とを有して形成されている。また、第一カバー部材21は、壁部33から第二構成体3Bに向かって屈曲状に延びる連結部35を介してバスバー収容枠12と連結されている。この連結部35は、第一カバー部材21及びバスバー収容枠12と一体に成形されたものでもよいし、別体の連結部35が第一カバー部材21及びバスバー収容枠12に固定されたものでもよい。
【0047】
第一カバー部材21には、壁部33の内側面から突設された1個の係止部36Aと、壁部31の内側面から突設された2個の係止部36B,36Cと、壁部32の内側面から突設された1個の係止部36Dとが形成されている。これらの係止部36A〜36Dは、底面部30に載置された接続用バスバー20の端縁近傍の上面に当接することで、第一カバー部材21内部に接続用バスバー20を保持して脱落を防止するものである。また、可撓壁部34は、壁部33近傍に可撓部34Aを有し、後述する接続用バスバー20の保持位置と接続位置との間の回動に対応して、接続用バスバー20とともに回動可能に構成されている。
【0048】
第二カバー部材22は、接続用正極6A近傍に開口を有する底面部40と、接続用正極6Aよりも横列方向Yに沿った第四構成体3D側にて縦列方向Xに沿って延びる壁部41と、第三構成体3Cのバスバー収容枠13に対向して横列方向Yに沿って延びる壁部42とを有して形成されている。また、第二カバー部材22は、壁部42から第三構成体3Cに向かって屈曲状に延びる連結部43を介してバスバー収容枠13と連結されている。この連結部43は、第二カバー部材22及びバスバー収容枠13と一体に成形されたものでもよいし、別体の連結部43が第二カバー部材22及びバスバー収容枠13に固定されたものでもよい。また、壁部42の内側面には、1個の係止部44が突設されており、この係止部44によって接続用バスバー20の第二直線部20B先端を保持できるように構成されている。
【0049】
以上の第一カバー部材21及び第二カバー部材22において、連結部35,43は、図3(A)に示すように、薄肉帯状かつ波打ち状に屈曲されるとともに可撓性を有した合成樹脂で構成されている。従って、図3(B)に示すように、連結部35(連結部43)の屈曲が伸長することで、第一カバー部材21(第二カバー部材22)は、バスバー収容枠12(バスバー収容枠13)に対して高さ方向Zに相対移動可能に連結されている。これと同様に、連結部35,43が縦列方向Xや横列方向Yに撓むことで、第一カバー部材21及び第二カバー部材22は、それぞれバスバー収容枠12,13に対して水平方向にも相対移動可能となっている。
【0050】
また、第一カバー部材21における係止部36A〜36Dのうちの係止部36Aと、第二カバー部材22における係止部44とは、他の係止部36B〜36Dよりも大きな係り代で接続用バスバー20を係止する。これらの係止部36A,44は、壁部33,42から各カバー部材21,22の内方に向かって下がり勾配となる傾斜辺37,45を有して形成されている。従って、各カバー部材21,22に対して高さ方向Z上方から接続用バスバー20を保持させようとした場合は、傾斜辺37,45に当接した接続用バスバー20によって係止部36A,44が押圧され、壁部33,42が外側に変形することとなる。このような壁部33,42の変形も、前述した連結部35,43の撓みによって吸収されるようになっている。
【0051】
以下、前述した構成の電源装置1の組立方法について、図5〜図9も参照して説明する。
【0052】
先ず、予め、バスバーモジュール3のバスバー収容枠10,12,13、第一カバー部材21及び第二カバー部材22、バスバー11,14,15、接続用バスバー20などを別々に製造しておく。なお、ここでは、バスバー収容枠12と第一カバー部材21とが連結部35を含んで一体成形され、バスバー収容枠13と第二カバー部材22とが連結部43を含んで一体成形されたものとして説明する。一方、電池集合体2A,2Bを横列方向Yに並べて適宜な治具や固定部材で固定しておく。
【0053】
次に、2個のバスバー収容枠10内に各々複数のバスバー11を嵌め込み、バスバー収容枠12内に複数のバスバー14を嵌め込み、バスバー収容枠13内に複数のバスバー15を嵌め込むことで、第一〜第四の構成体3A〜3Dを構成するとともに、第一カバー部材21内に接続用バスバー20を保持させる。なお、各バスバー11,14,15は、バスバー収容枠10,12,13にインサート成形することによって一体的に設けられていてもよい。
【0054】
第一カバー部材21に保持された保持位置において、接続用バスバー20は、第一カバー部材21の底面部30に載置されるとともに、第一直線部20Aの先端縁が係止部36Aに係止され、第一直線部20Aの側端縁が2箇所の係止部36B,36Cに係止され、さらに第二直線部20Bの側端縁が係止部36Dに係止される。また、接続用バスバー20の屈曲部20C及び第二直線部20Bは、底面部30の上側に位置して、第一カバー部材21からはみ出さないようになっている。また、第一カバー部材21の壁部31の反対側において、第一直線部20Aは可撓壁部34に当接するとともに可撓壁部34で覆われ、この可撓壁部34の弾性力によって第一直線部20Aが壁部31に向かって付勢されており、これにより接続用バスバー20が第一カバー部材21から脱落しないようになっている。
【0055】
次に、第一構成体3A及び第四構成体3Dを、それぞれ電池集合体2A,2Bの第一電極列E1及び第四電極列E4に重ねて載置し、各々対応する位置の正極6及び負極7をバスバー11の挿通孔18に挿通させる。さらに、図5に示すように、第二構成体3Bを第一カバー部材21及び接続用バスバー20とともに、電池集合体2Aの第二電極列E2に重ねて載置し、各々対応する位置の正極6及び負極7をバスバー14の挿通孔18に挿通させ、接続用負極7Aを接続用バスバー20の挿通孔23に挿通させる。さらに、第三構成体3Cを第二カバー部材22とともに、電池集合体2Bの第三電極列E3に重ねて載置し、各々対応する位置の正極6及び負極7をバスバー15の挿通孔18に挿通させる。このとき、第二カバー部材22の底面部40の高さ方向Z上側に第一カバー部材21の底面部30が重なるように配置しておく。
【0056】
以上のようにしてバスバーモジュール3を電池集合体2A,2Bに載置したら、接続用正極6A及び接続用負極7A以外の正極6及び負極7に固定部材8を螺合し、固定部材8でバスバー11,14,15を挟み込むことで、第一〜第四の構成体3A〜3Dを電池集合体2A,2Bに固定する。
【0057】
次に、図6及び図3(B)に示すように、第一カバー部材21及び接続用バスバー20を高さ方向Z上方に持ち上げる。このとき、屈曲していた連結部35が伸長するように撓むことで、バスバー収容枠12との連結を維持したままで第一カバー部材21が相対移動され、挿通孔23に挿通した接続用負極7Aに沿って略直上方向へ第一カバー部材21及び接続用バスバー20が持ち上げられるようになっている。
【0058】
次に、図7に示すように、第一カバー部材21を持ち上げた状態のままで、接続用バスバー20の他端側(第二直線部20B側)を壁部32から電池集合体2Bに向かって、接続用負極7Aを中心として接続用バスバー20を回動させる。このとき、前述の保持位置における接続用バスバー20を係止していた係止部36C,36Dの係止が外れるものの、引き続き係止部36A,36Bが第一直線部20Aの先端縁を係止しているので、接続用バスバー20が脱落しないようになっている。また、接続用バスバー20の回動に伴って、第一直線部20Aに当接する可撓壁部34が第二カバー部材22に向かって回動する。
【0059】
以上の回動により、挿通孔24が接続用正極6Aの上方に位置する接続位置まで接続用バスバー20を略45°だけ回動させたら、図8に示すように、第一カバー部材21及び接続用バスバー20を高さ方向Z下方に押し下げ、接続用正極6Aを挿通孔24に挿通させる。このとき、接続用バスバー20は、その第二直線部20B先端が係止部44の傾斜辺45に摺接しつつ押し下げられる。一方、係止部44を介して接続用バスバー20に押圧された壁部42が外側(第三構成体3C側)に変形するものの、この変形を連結部43が吸収する。さらに、第二直線部20B先端が係止部44を乗り越えると、押圧が解除されて壁部42が初期位置に戻り、これにより第二直線部20B先端が係止部44に係止される。
【0060】
接続位置で押し下げられた接続用バスバー20は、その一端側の挿通孔23に接続用負極7Aが挿通されるとともに、第一直線部20A先端縁が第一カバー部材21の係止部36A,36Bに係止され、他端側の挿通孔24に接続用正極6Aが挿通されるとともに、第二直線部20B先端縁が第二カバー部材22の係止部44に係止される。従って、接続用バスバー20が第一カバー部材21及び第二カバー部材22から脱落しないようになっている。また、接続位置における接続用バスバー20の屈曲部20Cは、第一カバー部材21の底面部30の上側に位置し、第二直線部20Bは、第二カバー部材22の底面部40の上側に位置することから、電池集合体2A,2Bにおける接続用正極6A及び接続用負極7A以外の部分と、接続用バスバー20とが接触しないようになっている。
【0061】
次に、図9に示すように、接続用正極6A及び接続用負極7Aのそれぞれに固定部材8を螺合し、固定部材8で接続用バスバー20を挟み込むことで、第五構成体3Eを電池集合体2A,2Bに固定する。以上によりバスバーモジュール3の全体が電池集合体2A,2Bに取り付けられ、電源装置1が組み立てられる。また、接続用バスバー20を接続した後に、バスバーモジュール3の全体、あるいは第一〜第五の構成体3A〜3Eの各々の上側を覆うように、図示しない絶縁カバーなどを取り付けてもよい。
【0062】
なお、並設される電池集合体2A,2B間において、重ねて並べた各電池4ごとの厚み寸法の誤差や重ね合わせる際の誤差の積算などにより、電池集合体2A,2Bの縦列方向Xの長さに差異が生じて、接続用正極6Aと接続用負極7Aとが位置ずれした場合であっても、図10に示すように、接続用バスバー20の回動角度を適宜に調整することで、位置ずれを吸収することができる。具体的には、接続用負極7Aに対して接続用正極6Aが縦列方向Xの外側(図10中の右側)に位置ずれ(例えば、L=5mm程度の誤差)が生じた場合には、図10中の一点鎖線で示すように、接続用バスバー20の回動角度を前述した略45°よりも若干小さくすればよい。一方、接続用負極7Aに対して接続用正極6Aが縦列方向Xの内側(図10中の左側)に位置ずれ(例えば、L=−5mm程度の誤差)が生じた場合には、図10中の二点鎖線で示すように、接続用バスバー20の回動角度を前述した略45°よりも若干大きくすればよい。
【0063】
本実施形態によれば、並設される電池集合体2A,2Bを直列に接続する際に、導電性の金属板材からなる接続用バスバー20を用いることで、従来のワイヤハーネスを用いた接続構造と比較して接続部材の製造コストを低減させることができる。また、第一カバー部材21及び第二カバー部材22によって、接続用バスバー20と電池集合体2A,2Bとが絶縁されているので、接続用正極6Aや接続用負極7A以外の接触非許容部に対して接続用バスバー20が接触することによる短絡が防止できる。さらに、第一カバー部材21に保持された接続用バスバー20を、第一カバー部材21とともに持ち上げてから接続用負極7Aを中心に平面内で回動させ、その後に下降させて接続用正極6Aに接続することで、短絡を確実に防止しつつ接続作業性を向上させることができる。従って、簡単な構造の接続用バスバー20による製造コストの抑制とともに、接続作業中の短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保可能な電源装置1を提供することができる。
【0064】
また、第一カバー部材21が可撓性を有した連結部35を介してバスバー収容枠12と連結されているので、第一カバー部材21を持ち上げる際の高さ方向Zの移動を連結部35によって吸収することができる。さらに、電池集合体2Aにおいて隣り合う正極6に対して接続用負極7Aが縦列方向Xや横列方向Y、高さ方向Zに位置ずれした場合でも、この位置ずれを連結部35によって吸収することができる。一方、電池集合体2Bにおいても、第二カバー部材22が可撓性を有した連結部43を介してバスバー収容枠13と連結されているので、隣り合う正極6に対して接続用正極6Aが縦列方向Xや横列方向Y、高さ方向Zに位置ずれした場合でも、この位置ずれを連結部43によって吸収することができる。
【0065】
また、第一カバー部材21及び第二カバー部材22がそれぞれバスバー収容枠12,13に連結された状態で一体成形されているので、部品製造や部品管理に要するコストを低減させることができる。さらに、バスバー収容枠12,13のバスバー14,15を正極6や負極7に固定してから、前述した手順で接続用バスバー20の接続作業を実施することで、電池集合体2A,2B同士の位置公差を接続用バスバー20によって吸収することができる。即ち、電池集合体2A,2B間の公差により接続用正極6Aと接続用負極7Aとが縦列方向Xや横列方向Yに位置ずれしていた場合でも、接続用バスバー20の回動角度を適宜に調整することで、位置ずれを吸収することができる。一方、電池集合体2A,2B間の位置ずれが大きい場合には、金属板材からなる接続用バスバー20によって位置ずれを矯正し、所定の公差内に電池集合体2A,2Bを位置させることができる。
【0066】
なお、前記実施形態では、電池集合体2A,2Bによって一及び他の電源体を構成したが、電源体としては単体の電池で構成されるものであってもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、電源体(電池集合体2A,2B)同士を電気的に直列に接続した電源装置1を説明したが、電源体同士を電気的に並列に接続する場合にも本発明の接続構造を適用することができる。
【0068】
さらに、本発明の接続構造は、バスバーモジュール3として利用されるものに限らず、前記実施形態における接続用バスバー20、第一カバー部材21及び第二カバー部材22を備えた第五構成体3E(第三接続体)の部分が独立して構成されたものでもよい。
【0069】
また、前記実施形態では、接続部材としての接続用バスバー20を平面視L字形の金属板材から構成したが、接続部材の形状や素材は任意に選択可能である。このような接続部材の形状などに伴い、第一絶縁部材(第一カバー部材21)や第二絶縁部材(第二カバー部材22)の形状なども適宜に変更することができる。
【0070】
また、前記実施形態では、接続部材(接続用バスバー20)を水平面内で回動させて他端側を第二電極(接続用正極6A)に接続したが、接続部材の接続方法としては、水平面内での回動に限らず、鉛直面内あるいは適宜な傾斜面内で接続部材を回動させてもよいし、直線あるいは適宜な曲線に沿って接続部材をスライドさせてもよく、接続部材の移動方向や移動量(回動角度やスライド量)などは適宜に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る電源体の接続構造、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などに用いられる電動モータに電力を供給する駆動源として利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 電源装置
2,2A,2B 電池集合体(電源体)
3 バスバーモジュール
3B 第二構成体(第一接続体)
3C 第三構成体(第二接続体)
3E 第五構成体(第三接続体)
4 電池
6A 接続用正極(第二電極)
7A 接続用負極(第一電極)
12 バスバー収容枠(第一絶縁体枠)
13 バスバー収容枠(第二絶縁体枠)
14 バスバー(第一バスバー)
15 バスバー(第二バスバー)
20 接続用バスバー(接続部材)
21 第一カバー部材(第一絶縁部材)
22 第二カバー部材(第二絶縁部材)
23,24 挿通孔
31,32 壁部
34 可撓壁部
35 連結部
36A,36B,36C,36D 係止部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などに用いられる電源装置における複数の電源体同士を電気的に接続する電源体の接続構造、電源装置を構成する電池集合体における電池同士を電気的に接続するバスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを用いて走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとを併用して走行するハイブリッド自動車などには、電動モータの駆動源としての電源装置が搭載されている。この電源装置は、一端に正の電極と他端に負の電極とが設けられた複数の電池から構成される電池集合体(電源体)を備え、所望の電圧を得るために複数の電池が直列に接続されている。これら複数の電池は、正の電極と負の電極とが互いに隣り合う状態で、一方向に沿って並べられている。
【0003】
前述した電源装置は、電池集合体の互いに隣り合う各電池の正の電極と負の電極とを接続する複数の接続部材(バスバー)を備え、それらの接続部材によって、電池集合体の複数の電池が直列に接続されている(例えば、特許文献1参照)。このような複数の接続部材は、絶縁性の合成樹脂などで構成された絶縁体枠に収容されたバスバーモジュールとして電池集合体に設置されることが一般的である。また、特許文献1記載の電源装置では、電池集合体が2列に分離され、各電池集合体における複数の電池の配列方向と直交した方向に並べて設置されている。
【0004】
一方、並べて設置された複数の電源体同士を電気的に接続する構造として、ワイヤハーネス(ケーブル)などを用いた接続構造が利用されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2記載の電源装置は、図11に示すように、互いに当接させずに並べた複数(2個)の電源体(バッテリ)Bを備え、互いの電源体Bにおける正負の電極端子C1,C2をワイヤハーネスWで接続している。ワイヤハーネスWは、導電性の芯線を絶縁体で被覆した電線部W1と、電線部W1の両端にて芯線に圧着された一対の端子(例えば、ちょうねじ端子や丸形端子等)W2と、芯線と端子W2との圧着部を覆って絶縁するターミナルカバーW3などを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−100619号公報
【特許文献2】特開2011−126396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献2に示されたような電源体の接続構造では、ワイヤハーネスWを用いて電源体Bの電極同士を接続することから、以下のような問題がある。
【0007】
先ず、ワイヤハーネスWが電線部W1や一対の端子W2、ターミナルカバーW3などで構成されるために、部品点数が多くなるとともに、圧着工程や絶縁工程などの工数が多くなって製作に手間が掛り、製造コストが高騰するという問題がある。
【0008】
次に、ワイヤハーネスWを電源体Bに接続する作業において、一方の端子W2を一方の電極端子C1に接続してから、他方の端子W2を他方の電極端子C2に接続することとなるが、この際、他方の端子W2が電源体Bの他の電極等に接触すると短絡の可能性がある。このため、ワイヤハーネスWの端子W2が電極端子C2以外に接触しないように適宜な対処を施しつつ接続作業を行う必要があり、作業手順の冗長化を招いて作業性が低下するという問題がある。ここで、短絡を防止するために、端子W2が絶縁性のハウジング等で覆われたコネクタを有したワイヤハーネスWを利用することが考えられる。しかしながら、そのようなワイヤハーネスWを用いる場合には、電源体Bの電極にもコネクタを設けなければならず、製造コストがさらに高騰するとともに、コネクタ同士を接続するためのスペースも必要となってしまう。
【0009】
一方、従来のワイヤハーネスWに替えて接続用のバスバーを用いた接続構造も考えられる。しかし、接続用のバスバーによって各電源体Bの電極端子C1,C2同士を接続する場合であっても、接続作業中にバスバーの一部が電極端子C2以外に接触して短絡する可能性を排除することができず、依然として前述したような作業性低下の問題を解決することが難しい。さらに、電極端子C1,C2同士を接続した状態では、バスバー中間の導電部が露出することから、この導電部を覆うために絶縁性を有した別体の保護キャップ等を用いた場合には、部品点数や作業工数が増大して製造や部品管理に要するコストが増加してしまうこととなる。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑み、電源体同士を接続する際に短絡の可能性を排除しつつ良好な作業性を確保し、かつ製造コストを抑制することができる電源体の接続構造、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された本発明の電源体の接続構造は、一の電源体の第一電極と、他の電源体の第二電極とを電気的に接続する電源体の接続構造であって、導電性の金属板材からなり、前記第一電極に一端側が接続され、前記第二電極に他端側が接続される接続部材と、前記一の電源体側に設けられ、該一の電源体における前記第一電極以外の部分に対して前記接続部材を絶縁する第一絶縁部材と、前記他の電源体側に設けられ、該他の電源体における前記第二電極以外の部分に対して前記接続部材を絶縁する第二絶縁部材と、を備え、前記第一絶縁部材に前記接続部材の一端側の少なくとも一部が保持された状態で該接続部材の他端側が前記第二電極に着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、一の電源体の第一電極と他の電源体の第二電極とを導電性の金属板材からなる接続部材で接続することで、従来のワイヤハーネスで接続した場合と比較して、接続部材の構造を簡単化することができる。また、一の電源体側に設けた第一絶縁部材によって接続部材と第一電極以外の部分とを絶縁するとともに、他の電源体側に設けた第二絶縁部材によって接続部材と第二電極以外の部分とを絶縁することで、接続部材を介した短絡を防止することができる。さらに、第一絶縁部材に接続部材の一端側が保持されることから、接続作業中における接続部材の不意な落下や移動を防いで短絡を確実に防止することができる。また、第一絶縁部材に一端側が保持された状態の接続部材を適宜に移動(回動やスライド)させて他端側を第二電極に接続することで、接続部材の移動範囲が限定されることから、電源体における接触を想定していない部分(以下、接触非許容部と記すことがある)への接続部材の接触を防止することができ、接続作業中の短絡をさらに確実に防止することができる。
【0013】
請求項2に記載された本発明のバスバーモジュールは、複数の電池が重ねられた一の電池集合体と複数の電池が重ねられた他の電池集合体とを電気的に接続するバスバーモジュールであって、前記一の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第一バスバー、及び該複数の第一バスバーを収容する第一絶縁体枠を有した第一接続体と、前記他の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第二バスバー、及び該複数の第二バスバーを収容する第二絶縁体枠を有した第二接続体と、前記一の電池集合体における所定電池の第一電極と、前記他の電池集合体における所定電池の第二電極とを接続する第三接続体と、を備え、前記第三接続体が、請求項1記載の接続構造を構成する前記接続部材、前記第一絶縁部材及び前記第二絶縁部材を有し、前記第一絶縁部材に前記接続部材の一端側の少なくとも一部が保持された状態で該接続部材の他端側が前記第二電極に着脱可能に構成されたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、前述した電源体の接続構造と同様に、第三接続体における接続部材の構造を簡単化することができるとともに、一及び他の電池集合体同士を接続部材で接続する作業中や接続後において、接続部材を介した短絡を確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に記載されたバスバーモジュールは、請求項2記載のバスバーモジュールにおいて、前記第一絶縁部材と前記第一絶縁体枠とが可撓性を有した連結部を介して連結されたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、第一接続体の第一絶縁体枠に第三接続体の第一絶縁部材を連結することで、これらを一体的に取り扱うことができるようになり、電池集合体へのバスバーモジュールの設置作業が容易にできるとともに、第一絶縁部材の脱落などを防止して接続部材と接触非許容部とを確実に絶縁することができる。また、連結部が可撓性を有していることで、一の電池集合体において、第一接続体を取り付ける電池(電極)と、第三接続体の接続部材を取り付ける電池(電極)と、の間に多少の位置ずれ(公差)があったとしても、この位置ずれを連結部の変形(撓み)によって吸収することができ、バスバーモジュールの設置作業性を高めることができる。さらに、バスバーモジュールの設置手順として、先ず、一の電池集合体に第一接続体を取り付け、第三接続体の接続部材は第一電極に固定しない状態としておき、一及び他の電池集合体を並列させてから、接続部材を第一及び第二の電極に接続する場合でも、固定された第一絶縁体枠に対して第三接続体の第一絶縁部材が連結部の撓みによって移動できるので、接続部材の接続作業を容易かつ確実に実施することができる。
【0017】
なお、前記バスバーモジュールにおいて、前記第二絶縁部材と前記第二絶縁体枠とが可撓性を有した連結部を介して連結されていてもよく、この場合にも、バスバーモジュールの設置作業が容易にできるとともに、他の電池集合体における電池の位置ずれを連結部で吸収することができる。
【0018】
また、連結部としては、第一絶縁体枠(第二絶縁体枠)及び第一絶縁部材(第二絶縁部材)と連結部とが合成樹脂の射出成形等によって一体成形されたものでもよいし、別体の弾性部材を取り付けて構成されるものでもよい。
【0019】
請求項4に記載されたバスバーモジュールは、請求項2又は3記載のバスバーモジュールにおいて、前記第一電極及び第二電極が各々円柱状に形成され、前記接続部材の一端側及び他端側には、それぞれ前記第一電極及び第二電極を挿通可能な挿通孔が形成され、前記一端側の挿通孔に前記第一電極を挿通させることで該接続部材が仮止めされ、前記第一電極を中心として他端側を前記第二電極に向かって回動させ、該第二電極を前記他端側の挿通孔に挿通させることで該接続部材が接続されることを特徴とする。
【0020】
上記構成により、接続部材の一端側の挿通孔に第一電極を挿通して接続部材を仮止めすることで、接続部材の脱落等を防止することができる。また、第一電極を中心として接続部材の他端側を回動させてから、その他端側の挿通孔に第二電極を挿通することで、接続部材を所定の軌跡範囲内で移動させ、その軌跡以外への接続部材の移動を規制することができる。従って、接続作業中における接続部材が意図せずに接触非許容部に接触することが防止できる。また、第一電極を中心として接続部材を回動させるだけの簡単な操作によって接続作業を行うことができるので、作業性を高めることができる。
【0021】
請求項5に記載されたバスバーモジュールは、請求項2〜4の何れか一項に記載のバスバーモジュールにおいて、前記第一絶縁部材には、保持した前記接続部材に当接可能な壁部と、該壁部から突出して設けられて前記接続部材を係止可能な係止部とが設けられたことを特徴とする。
【0022】
上記構成により、第一絶縁部材の壁部を当接させるとともに係止部で係止して接続部材を保持することで、接続部材を第一電極や第二電極に対して位置決めできるとともに、接続部材の脱落等を確実に防止することができる。
【0023】
請求項6に記載されたバスバーモジュールは、請求項2〜5の何れか一項に記載のバスバーモジュールにおいて、前記第一絶縁部材における前記第二絶縁部材側には、前記第二電極への前記接続部材の接続に際して該接続部材とともに変形する可撓壁部が形成されていることを特徴とする。
【0024】
上記構成により、接続部材とともに変形する可撓壁部を第一絶縁部材に形成したことで、接続作業中における接続部材の所定部分を可撓壁部で覆うことができ、短絡をさらに確実に防止することができる。
【0025】
一方、請求項7に記載された本発明の電源装置は、複数の電池が重ねられた一の電池集合体と、複数の電池が重ねられた他の電池集合体と、前記各電池集合体における複数の電池同士及び該一及び他の電池集合体の所定電池同士を接続する請求項2〜6の何れか一項に記載のバスバーモジュールと、を備えたことを特徴とする。
【0026】
上記構成により、前述したバスバーモジュールと同様に、接続部材の構造を簡単化することができるとともに、一及び他の電池集合体同士を接続部材で接続する作業中や接続後において、接続部材を介した短絡を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、接続部材の構造を簡単化することができるので、製造コストを抑制することができる。また、第一及び第二の絶縁部材によって接続部材と電源体の接触非許容部とが絶縁され、さらに、接続作業中の接続部材が接触非許容部に接触することも防止されるので、短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保することができる。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、前述と同様に接続部材の製造コストを抑制するとともに、接続部材を介した短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保することができる。さらに、第一及び第二接続体と接続部材を含む第三接続体とを備えたバスバーモジュールによって、一及び他の電池集合体の各々における電池同士を接続するとともに、各電池集合体の所定電池を接続することができる。従って、バスバーモジュール各部の構造や接続方法を共通化することができるので、異種の接続構造(例えば、ワイヤハーネス等を用いたもの)を併用する場合と比較して、各部構造や接続手順の標準化を図ることができ、製造コスト削減と作業効率向上とを一層促進させることができる。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、接続部材と接触非許容部とを確実に絶縁して短絡を防止するとともに、バスバーモジュールの設置作業性と、接続部材の接続作業性とを向上させることができる。
【0030】
請求項4記載の発明によれば、接続部材の脱落等を防止しつつ回動させるだけの簡単な操作によって接続作業を容易に行うことができる。さらに、接続部材が所定の軌跡上を回動するように案内できるので、接触非許容部への接触による短絡を確実に防止することができる。
【0031】
請求項5記載の発明によれば、接続部材の位置決め及び脱落防止を確実にして接続作業中の短絡の可能性を排除することができる。さらに、接続後においても、壁部によって接続部材を保護することができるので、別の導電体の接触による短絡も防止することができる。
【0032】
請求項6記載の発明によれば、接続部材の所定部分を可撓壁部で覆うことで接続作業中及び接続後において接続部材を保護することができ、接続部材を介した短絡を確実に防止することができる。
【0033】
請求項7記載の発明によれば、前述のバスバーモジュールと同様に、接続部材の製造コストを抑制するとともに、接続部材を介した短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保して、電源装置の製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置を分解して示す斜視図である。
【図2】前記電源装置の要部を拡大して示す平面図である。
【図3】図2にA−A線で示す前記電源装置の要部の断面図である。
【図4】前記電源装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】前記電源装置における接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図6】図5に続く前記接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図7】図6に続く前記接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図8】図7に続く前記接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図9】図8に続く前記接続部材の接続手順を示す斜視図である。
【図10】前記接続部材の作用を示す平面図である。
【図11】従来の電源装置の一形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態にかかる電源装置を、図1〜図10を参照して説明する。本実施形態の電源装置1は、電動モータの駆動力によって走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとの双方の駆動力で走行するハイブリッド車などに搭載され、電動モータに電力を供給するものである。
【0036】
電源装置1は、図1に示すように、複数(本実施形態では、2個)の電池集合体2(2A,2B)と、電池集合体2の上面に取り付けられるバスバーモジュール3と、を備えている。各電池集合体2A,2Bは、それぞれ一方向(図1中の矢印Xで示す方向)に並べて重ねられる複数の電池4を備え、これらの電池4が図示しない固定部材によって束ねられて固定されている。2個の電池集合体2A,2Bは、電池4を重ねた方向と直交する方向(図1中の矢印Yで示す方向)に並設されており、図示しない連結部材やベース枠などによって電池集合体2A,2B同士が連結されている。
【0037】
なお、以下、本明細書では、電池4同士が重ねられた方向(矢印Xの方向)を縦列方向Xと記し、この縦列方向Xに直交して電池集合体2A,2B同士が並設された方向(矢印Yの方向)を横列方向Yと記し、縦列方向X及び横列方向Yに直交する方向を高さ方向Zと記す。また、以下では、2個の電池集合体2A,2Bのうち、図1中の横列方向Yの左上側に示された電池集合体2Aを一の電池集合体(一の電源体)とし、図1中の横列方向Yの右下側に示された電池集合体2Bを他の電池集合体(他の電源体)として説明する。
【0038】
複数の電池4は、それぞれ方体状の電池本体5と、正の電極(以下、正極と記す)6と、負の電極(以下、負極と記す)7と、を備えている。正極6は、電池本体5の横列方向Yに沿った一端側に設けられ、負極7は、電池本体5の横列方向Yに沿った他端側に設けられている。これらの正極6及び負極7は、導電性の金属からなるボルト等によって構成され、円柱状の軸部を電池本体5から上方に突出させて設けられている。また、各々の正極6及び負極7には、導電性の金属からなるナット等によって構成された固定部材8が螺合可能になっている。また、図1に示すように、隣り合う電池4同士は、互いの正極6と負極7とが隣り合うように並べられている。即ち、複数の電池4は、正極6と負極7とが縦列方向Xに沿って交互に正負逆となる状態で重ねられている。
【0039】
ここで、以下の説明を簡明にするために、電池集合体2Aにおいて、図1中の左上側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第一電極列E1と記し、その右下側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第二電極列E2と記す。さらに、電池集合体2Bにおいて、図1中の左上側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第三電極列E3と記し、その右下側にて縦列方向Xに沿って一列に並ぶ正極6及び負極7を第四電極列E4と記す。また、第二電極列E2のうち、図1中の縦列方向X右端の1個の負極7を第一電極としての接続用負極7Aとし、第三電極列E3のうち、図1中の縦列方向X右端の1個の正極6を第二電極としての接続用正極6Aとする。さらに、第一電極列E1のうち、図1中の縦列方向X左端の1個の正極6を出力用正極6Bとし、第四電極列E4のうち、図1中の縦列方向X左端の1個の負極7を出力用負極7Bとし、これらの出力用正極6B及び出力用負極7Bが前記電動モータに接続される。
【0040】
バスバーモジュール3は、図1に示すように、第一電極列E1に取り付けられる第一構成体3Aと、接続用負極7Aを除いた第二電極列E2に取り付けられる第一接続体としての第二構成体3Bと、接続用正極6Aを除いた第三電極列E3に取り付けられる第二接続体としての第三構成体3Cと、第四電極列E4に取り付けられる第四構成体3Dと、接続用負極7A及び接続用正極6Aに取り付けられる第三接続体としての第五構成体3Eとを備える。
【0041】
第一構成体3A及び第四構成体3Dは、互いに略同一構成とされ、それぞれ縦列方向Xに沿って長尺枠状に形成されたバスバー収容枠10と、このバスバー収容枠10に収容される複数のバスバー11とを備えている。第二構成体3B及び第三構成体3Cは、互いに略同一構成とされ、それぞれ縦列方向Xに沿って長尺枠状に形成されたバスバー収容枠12,13と、このバスバー収容枠12,13に収容される複数のバスバー14,15とを備えている。ここで、第二構成体3Bのバスバー収容枠12によって第一絶縁体枠が構成され、複数のバスバー14によって複数の第一バスバーが構成される。また、第三構成体3Cのバスバー収容枠13によって第二絶縁体枠が構成され、複数のバスバー15によって複数の第二バスバーが構成される。
【0042】
バスバー収容枠10,12,13は、それぞれポリプロピレン樹脂などの絶縁性の合成樹脂で構成され、バスバー11,14,15を保持して下方に露出させる開口を有した底面部16と、この底面部16の四周を囲んで立設された側壁部17とを備えて形成されている。バスバー11,14,15は、それぞれ導電性の金属板材で構成されている。出力用正極6Bに取り付けられるバスバー11Aと出力用負極7Bに取り付けられるバスバー11Bとを除き、他のバスバー11,14,15には、それぞれ挿通孔18が2つずつ形成され、各挿通孔18に正極6または負極7とが挿通され、これらの正極6と負極7とを直列に接続するように構成されている。一方、バスバー11A,11Bは、出力用正極6Bまたは出力用負極7Bを挿通させる挿通孔18が1つ形成され、図示しない出力端子やワイヤハーネス等を介して電動モータに接続されている。
【0043】
一方、バスバーモジュール3の第五構成体3Eは、図2〜図4にも示すように、接続部材としての接続用バスバー20と、第一絶縁部材としての第一カバー部材21と、第二絶縁部材としての第二カバー部材22とを備えている。この第五構成体3Eは、接続用バスバー20によって接続用負極7Aと接続用正極6Aとを接続することで、電池集合体2Aと電池集合体2Bとを電気的に直列に接続するものである。
【0044】
接続用バスバー20は、導電性の金属板材からなり、一端側である電池集合体2A側の第一直線部20Aと、他端側である電池集合体2B側の第二直線部20Bと、これらを略直角に連結する屈曲部20Cとを有し、平面視で全体略L字形に形成されている。第一直線部20Aの先端側には、接続用負極7Aを挿通させる挿通孔23が設けられ、第二直線部20Bの先端側には、接続用正極6Aを挿通させる挿通孔24が設けられている。この接続用バスバー20は、各挿通孔23,24に接続用負極7A及び接続用正極6Aを挿通させた状態で、屈曲部20Cが縦列方向Xの外側に向かって突出する向きで取り付けられる。
【0045】
第一カバー部材21及び第二カバー部材22は、それぞれポリプロピレン樹脂などの絶縁性の合成樹脂で構成されている。第一カバー部材21は、接続用バスバー20の挿通孔23周辺部分を除く第一直線部20A及び屈曲部20Cと電池集合体2Aとの間に位置し、これらを互いに絶縁するように設けられている。また、第二カバー部材22は、接続用バスバー20の挿通孔24周辺部分を除く第二直線部20Bと電池集合体2Bとの間に位置し、これらを互いに絶縁するように設けられている。
【0046】
第一カバー部材21は、接続用負極7A近傍に開口を有する底面部30と、接続用負極7Aよりも横列方向Yの第一構成体3A側にて縦列方向Xに沿って延びる壁部31と、壁部31の縦列方向X外側(図2中の右側)端部に連続して横列方向Yに沿って延びる壁部32と、第二構成体3Bのバスバー収容枠12に対向して横列方向Yに沿って延びる壁部33と、壁部33の横列方向Yに沿った第三構成体3C側に連続する可撓壁部34とを有して形成されている。また、第一カバー部材21は、壁部33から第二構成体3Bに向かって屈曲状に延びる連結部35を介してバスバー収容枠12と連結されている。この連結部35は、第一カバー部材21及びバスバー収容枠12と一体に成形されたものでもよいし、別体の連結部35が第一カバー部材21及びバスバー収容枠12に固定されたものでもよい。
【0047】
第一カバー部材21には、壁部33の内側面から突設された1個の係止部36Aと、壁部31の内側面から突設された2個の係止部36B,36Cと、壁部32の内側面から突設された1個の係止部36Dとが形成されている。これらの係止部36A〜36Dは、底面部30に載置された接続用バスバー20の端縁近傍の上面に当接することで、第一カバー部材21内部に接続用バスバー20を保持して脱落を防止するものである。また、可撓壁部34は、壁部33近傍に可撓部34Aを有し、後述する接続用バスバー20の保持位置と接続位置との間の回動に対応して、接続用バスバー20とともに回動可能に構成されている。
【0048】
第二カバー部材22は、接続用正極6A近傍に開口を有する底面部40と、接続用正極6Aよりも横列方向Yに沿った第四構成体3D側にて縦列方向Xに沿って延びる壁部41と、第三構成体3Cのバスバー収容枠13に対向して横列方向Yに沿って延びる壁部42とを有して形成されている。また、第二カバー部材22は、壁部42から第三構成体3Cに向かって屈曲状に延びる連結部43を介してバスバー収容枠13と連結されている。この連結部43は、第二カバー部材22及びバスバー収容枠13と一体に成形されたものでもよいし、別体の連結部43が第二カバー部材22及びバスバー収容枠13に固定されたものでもよい。また、壁部42の内側面には、1個の係止部44が突設されており、この係止部44によって接続用バスバー20の第二直線部20B先端を保持できるように構成されている。
【0049】
以上の第一カバー部材21及び第二カバー部材22において、連結部35,43は、図3(A)に示すように、薄肉帯状かつ波打ち状に屈曲されるとともに可撓性を有した合成樹脂で構成されている。従って、図3(B)に示すように、連結部35(連結部43)の屈曲が伸長することで、第一カバー部材21(第二カバー部材22)は、バスバー収容枠12(バスバー収容枠13)に対して高さ方向Zに相対移動可能に連結されている。これと同様に、連結部35,43が縦列方向Xや横列方向Yに撓むことで、第一カバー部材21及び第二カバー部材22は、それぞれバスバー収容枠12,13に対して水平方向にも相対移動可能となっている。
【0050】
また、第一カバー部材21における係止部36A〜36Dのうちの係止部36Aと、第二カバー部材22における係止部44とは、他の係止部36B〜36Dよりも大きな係り代で接続用バスバー20を係止する。これらの係止部36A,44は、壁部33,42から各カバー部材21,22の内方に向かって下がり勾配となる傾斜辺37,45を有して形成されている。従って、各カバー部材21,22に対して高さ方向Z上方から接続用バスバー20を保持させようとした場合は、傾斜辺37,45に当接した接続用バスバー20によって係止部36A,44が押圧され、壁部33,42が外側に変形することとなる。このような壁部33,42の変形も、前述した連結部35,43の撓みによって吸収されるようになっている。
【0051】
以下、前述した構成の電源装置1の組立方法について、図5〜図9も参照して説明する。
【0052】
先ず、予め、バスバーモジュール3のバスバー収容枠10,12,13、第一カバー部材21及び第二カバー部材22、バスバー11,14,15、接続用バスバー20などを別々に製造しておく。なお、ここでは、バスバー収容枠12と第一カバー部材21とが連結部35を含んで一体成形され、バスバー収容枠13と第二カバー部材22とが連結部43を含んで一体成形されたものとして説明する。一方、電池集合体2A,2Bを横列方向Yに並べて適宜な治具や固定部材で固定しておく。
【0053】
次に、2個のバスバー収容枠10内に各々複数のバスバー11を嵌め込み、バスバー収容枠12内に複数のバスバー14を嵌め込み、バスバー収容枠13内に複数のバスバー15を嵌め込むことで、第一〜第四の構成体3A〜3Dを構成するとともに、第一カバー部材21内に接続用バスバー20を保持させる。なお、各バスバー11,14,15は、バスバー収容枠10,12,13にインサート成形することによって一体的に設けられていてもよい。
【0054】
第一カバー部材21に保持された保持位置において、接続用バスバー20は、第一カバー部材21の底面部30に載置されるとともに、第一直線部20Aの先端縁が係止部36Aに係止され、第一直線部20Aの側端縁が2箇所の係止部36B,36Cに係止され、さらに第二直線部20Bの側端縁が係止部36Dに係止される。また、接続用バスバー20の屈曲部20C及び第二直線部20Bは、底面部30の上側に位置して、第一カバー部材21からはみ出さないようになっている。また、第一カバー部材21の壁部31の反対側において、第一直線部20Aは可撓壁部34に当接するとともに可撓壁部34で覆われ、この可撓壁部34の弾性力によって第一直線部20Aが壁部31に向かって付勢されており、これにより接続用バスバー20が第一カバー部材21から脱落しないようになっている。
【0055】
次に、第一構成体3A及び第四構成体3Dを、それぞれ電池集合体2A,2Bの第一電極列E1及び第四電極列E4に重ねて載置し、各々対応する位置の正極6及び負極7をバスバー11の挿通孔18に挿通させる。さらに、図5に示すように、第二構成体3Bを第一カバー部材21及び接続用バスバー20とともに、電池集合体2Aの第二電極列E2に重ねて載置し、各々対応する位置の正極6及び負極7をバスバー14の挿通孔18に挿通させ、接続用負極7Aを接続用バスバー20の挿通孔23に挿通させる。さらに、第三構成体3Cを第二カバー部材22とともに、電池集合体2Bの第三電極列E3に重ねて載置し、各々対応する位置の正極6及び負極7をバスバー15の挿通孔18に挿通させる。このとき、第二カバー部材22の底面部40の高さ方向Z上側に第一カバー部材21の底面部30が重なるように配置しておく。
【0056】
以上のようにしてバスバーモジュール3を電池集合体2A,2Bに載置したら、接続用正極6A及び接続用負極7A以外の正極6及び負極7に固定部材8を螺合し、固定部材8でバスバー11,14,15を挟み込むことで、第一〜第四の構成体3A〜3Dを電池集合体2A,2Bに固定する。
【0057】
次に、図6及び図3(B)に示すように、第一カバー部材21及び接続用バスバー20を高さ方向Z上方に持ち上げる。このとき、屈曲していた連結部35が伸長するように撓むことで、バスバー収容枠12との連結を維持したままで第一カバー部材21が相対移動され、挿通孔23に挿通した接続用負極7Aに沿って略直上方向へ第一カバー部材21及び接続用バスバー20が持ち上げられるようになっている。
【0058】
次に、図7に示すように、第一カバー部材21を持ち上げた状態のままで、接続用バスバー20の他端側(第二直線部20B側)を壁部32から電池集合体2Bに向かって、接続用負極7Aを中心として接続用バスバー20を回動させる。このとき、前述の保持位置における接続用バスバー20を係止していた係止部36C,36Dの係止が外れるものの、引き続き係止部36A,36Bが第一直線部20Aの先端縁を係止しているので、接続用バスバー20が脱落しないようになっている。また、接続用バスバー20の回動に伴って、第一直線部20Aに当接する可撓壁部34が第二カバー部材22に向かって回動する。
【0059】
以上の回動により、挿通孔24が接続用正極6Aの上方に位置する接続位置まで接続用バスバー20を略45°だけ回動させたら、図8に示すように、第一カバー部材21及び接続用バスバー20を高さ方向Z下方に押し下げ、接続用正極6Aを挿通孔24に挿通させる。このとき、接続用バスバー20は、その第二直線部20B先端が係止部44の傾斜辺45に摺接しつつ押し下げられる。一方、係止部44を介して接続用バスバー20に押圧された壁部42が外側(第三構成体3C側)に変形するものの、この変形を連結部43が吸収する。さらに、第二直線部20B先端が係止部44を乗り越えると、押圧が解除されて壁部42が初期位置に戻り、これにより第二直線部20B先端が係止部44に係止される。
【0060】
接続位置で押し下げられた接続用バスバー20は、その一端側の挿通孔23に接続用負極7Aが挿通されるとともに、第一直線部20A先端縁が第一カバー部材21の係止部36A,36Bに係止され、他端側の挿通孔24に接続用正極6Aが挿通されるとともに、第二直線部20B先端縁が第二カバー部材22の係止部44に係止される。従って、接続用バスバー20が第一カバー部材21及び第二カバー部材22から脱落しないようになっている。また、接続位置における接続用バスバー20の屈曲部20Cは、第一カバー部材21の底面部30の上側に位置し、第二直線部20Bは、第二カバー部材22の底面部40の上側に位置することから、電池集合体2A,2Bにおける接続用正極6A及び接続用負極7A以外の部分と、接続用バスバー20とが接触しないようになっている。
【0061】
次に、図9に示すように、接続用正極6A及び接続用負極7Aのそれぞれに固定部材8を螺合し、固定部材8で接続用バスバー20を挟み込むことで、第五構成体3Eを電池集合体2A,2Bに固定する。以上によりバスバーモジュール3の全体が電池集合体2A,2Bに取り付けられ、電源装置1が組み立てられる。また、接続用バスバー20を接続した後に、バスバーモジュール3の全体、あるいは第一〜第五の構成体3A〜3Eの各々の上側を覆うように、図示しない絶縁カバーなどを取り付けてもよい。
【0062】
なお、並設される電池集合体2A,2B間において、重ねて並べた各電池4ごとの厚み寸法の誤差や重ね合わせる際の誤差の積算などにより、電池集合体2A,2Bの縦列方向Xの長さに差異が生じて、接続用正極6Aと接続用負極7Aとが位置ずれした場合であっても、図10に示すように、接続用バスバー20の回動角度を適宜に調整することで、位置ずれを吸収することができる。具体的には、接続用負極7Aに対して接続用正極6Aが縦列方向Xの外側(図10中の右側)に位置ずれ(例えば、L=5mm程度の誤差)が生じた場合には、図10中の一点鎖線で示すように、接続用バスバー20の回動角度を前述した略45°よりも若干小さくすればよい。一方、接続用負極7Aに対して接続用正極6Aが縦列方向Xの内側(図10中の左側)に位置ずれ(例えば、L=−5mm程度の誤差)が生じた場合には、図10中の二点鎖線で示すように、接続用バスバー20の回動角度を前述した略45°よりも若干大きくすればよい。
【0063】
本実施形態によれば、並設される電池集合体2A,2Bを直列に接続する際に、導電性の金属板材からなる接続用バスバー20を用いることで、従来のワイヤハーネスを用いた接続構造と比較して接続部材の製造コストを低減させることができる。また、第一カバー部材21及び第二カバー部材22によって、接続用バスバー20と電池集合体2A,2Bとが絶縁されているので、接続用正極6Aや接続用負極7A以外の接触非許容部に対して接続用バスバー20が接触することによる短絡が防止できる。さらに、第一カバー部材21に保持された接続用バスバー20を、第一カバー部材21とともに持ち上げてから接続用負極7Aを中心に平面内で回動させ、その後に下降させて接続用正極6Aに接続することで、短絡を確実に防止しつつ接続作業性を向上させることができる。従って、簡単な構造の接続用バスバー20による製造コストの抑制とともに、接続作業中の短絡の可能性を確実に排除しつつ良好な接続作業性を確保可能な電源装置1を提供することができる。
【0064】
また、第一カバー部材21が可撓性を有した連結部35を介してバスバー収容枠12と連結されているので、第一カバー部材21を持ち上げる際の高さ方向Zの移動を連結部35によって吸収することができる。さらに、電池集合体2Aにおいて隣り合う正極6に対して接続用負極7Aが縦列方向Xや横列方向Y、高さ方向Zに位置ずれした場合でも、この位置ずれを連結部35によって吸収することができる。一方、電池集合体2Bにおいても、第二カバー部材22が可撓性を有した連結部43を介してバスバー収容枠13と連結されているので、隣り合う正極6に対して接続用正極6Aが縦列方向Xや横列方向Y、高さ方向Zに位置ずれした場合でも、この位置ずれを連結部43によって吸収することができる。
【0065】
また、第一カバー部材21及び第二カバー部材22がそれぞれバスバー収容枠12,13に連結された状態で一体成形されているので、部品製造や部品管理に要するコストを低減させることができる。さらに、バスバー収容枠12,13のバスバー14,15を正極6や負極7に固定してから、前述した手順で接続用バスバー20の接続作業を実施することで、電池集合体2A,2B同士の位置公差を接続用バスバー20によって吸収することができる。即ち、電池集合体2A,2B間の公差により接続用正極6Aと接続用負極7Aとが縦列方向Xや横列方向Yに位置ずれしていた場合でも、接続用バスバー20の回動角度を適宜に調整することで、位置ずれを吸収することができる。一方、電池集合体2A,2B間の位置ずれが大きい場合には、金属板材からなる接続用バスバー20によって位置ずれを矯正し、所定の公差内に電池集合体2A,2Bを位置させることができる。
【0066】
なお、前記実施形態では、電池集合体2A,2Bによって一及び他の電源体を構成したが、電源体としては単体の電池で構成されるものであってもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、電源体(電池集合体2A,2B)同士を電気的に直列に接続した電源装置1を説明したが、電源体同士を電気的に並列に接続する場合にも本発明の接続構造を適用することができる。
【0068】
さらに、本発明の接続構造は、バスバーモジュール3として利用されるものに限らず、前記実施形態における接続用バスバー20、第一カバー部材21及び第二カバー部材22を備えた第五構成体3E(第三接続体)の部分が独立して構成されたものでもよい。
【0069】
また、前記実施形態では、接続部材としての接続用バスバー20を平面視L字形の金属板材から構成したが、接続部材の形状や素材は任意に選択可能である。このような接続部材の形状などに伴い、第一絶縁部材(第一カバー部材21)や第二絶縁部材(第二カバー部材22)の形状なども適宜に変更することができる。
【0070】
また、前記実施形態では、接続部材(接続用バスバー20)を水平面内で回動させて他端側を第二電極(接続用正極6A)に接続したが、接続部材の接続方法としては、水平面内での回動に限らず、鉛直面内あるいは適宜な傾斜面内で接続部材を回動させてもよいし、直線あるいは適宜な曲線に沿って接続部材をスライドさせてもよく、接続部材の移動方向や移動量(回動角度やスライド量)などは適宜に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る電源体の接続構造、バスバーモジュール及び該バスバーモジュールを備えた電源装置は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などに用いられる電動モータに電力を供給する駆動源として利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 電源装置
2,2A,2B 電池集合体(電源体)
3 バスバーモジュール
3B 第二構成体(第一接続体)
3C 第三構成体(第二接続体)
3E 第五構成体(第三接続体)
4 電池
6A 接続用正極(第二電極)
7A 接続用負極(第一電極)
12 バスバー収容枠(第一絶縁体枠)
13 バスバー収容枠(第二絶縁体枠)
14 バスバー(第一バスバー)
15 バスバー(第二バスバー)
20 接続用バスバー(接続部材)
21 第一カバー部材(第一絶縁部材)
22 第二カバー部材(第二絶縁部材)
23,24 挿通孔
31,32 壁部
34 可撓壁部
35 連結部
36A,36B,36C,36D 係止部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の電源体の第一電極と、他の電源体の第二電極とを電気的に接続する電源体の接続構造であって、
導電性の金属板材からなり、前記第一電極に一端側が接続され、前記第二電極に他端側が接続される接続部材と、
前記一の電源体側に設けられ、該一の電源体における前記第一電極以外の部分に対して前記接続部材を絶縁する第一絶縁部材と、
前記他の電源体側に設けられ、該他の電源体における前記第二電極以外の部分に対して前記接続部材を絶縁する第二絶縁部材と、を備え、
前記第一絶縁部材に前記接続部材の一端側の少なくとも一部が保持された状態で該接続部材の他端側が前記第二電極に着脱可能に構成されていることを特徴とする電源体の接続構造。
【請求項2】
複数の電池が重ねられた一の電池集合体と複数の電池が重ねられた他の電池集合体とを電気的に接続するバスバーモジュールであって、
前記一の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第一バスバー、及び該複数の第一バスバーを収容する第一絶縁体枠を有した第一接続体と、
前記他の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第二バスバー、及び該複数の第二バスバーを収容する第二絶縁体枠を有した第二接続体と、
前記一の電池集合体における所定電池の第一電極と、前記他の電池集合体における所定電池の第二電極とを接続する第三接続体と、を備え、
前記第三接続体が、請求項1記載の接続構造を構成する前記接続部材、前記第一絶縁部材及び前記第二絶縁部材を有し、前記第一絶縁部材に前記接続部材の一端側の少なくとも一部が保持された状態で該接続部材の他端側が前記第二電極に着脱可能に構成されたことを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項3】
前記第一絶縁部材と前記第一絶縁体枠とが可撓性を有した連結部を介して連結されたことを特徴とする請求項2記載のバスバーモジュール。
【請求項4】
前記第一電極及び第二電極が各々円柱状に形成され、前記接続部材の一端側及び他端側には、それぞれ前記第一電極及び第二電極を挿通可能な挿通孔が形成され、前記一端側の挿通孔に前記第一電極を挿通させることで該接続部材が仮止めされ、前記第一電極を中心として他端側を前記第二電極に向かって回動させ、該第二電極を前記他端側の挿通孔に挿通させることで該接続部材が接続されることを特徴とする請求項2又は3記載のバスバーモジュール。
【請求項5】
前記第一絶縁部材には、保持した前記接続部材に当接可能な壁部と、該壁部から突出して設けられて前記接続部材を係止可能な係止部とが設けられたことを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載のバスバーモジュール。
【請求項6】
前記第一絶縁部材における前記第二絶縁部材側には、前記第二電極への前記接続部材の接続に際して該接続部材とともに変形する可撓壁部が形成されていることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載のバスバーモジュール。
【請求項7】
複数の電池が重ねられた一の電池集合体と、複数の電池が重ねられた他の電池集合体と、前記各電池集合体における複数の電池同士及び該一及び他の電池集合体の所定電池同士を接続する請求項2〜6の何れか一項に記載のバスバーモジュールと、を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項1】
一の電源体の第一電極と、他の電源体の第二電極とを電気的に接続する電源体の接続構造であって、
導電性の金属板材からなり、前記第一電極に一端側が接続され、前記第二電極に他端側が接続される接続部材と、
前記一の電源体側に設けられ、該一の電源体における前記第一電極以外の部分に対して前記接続部材を絶縁する第一絶縁部材と、
前記他の電源体側に設けられ、該他の電源体における前記第二電極以外の部分に対して前記接続部材を絶縁する第二絶縁部材と、を備え、
前記第一絶縁部材に前記接続部材の一端側の少なくとも一部が保持された状態で該接続部材の他端側が前記第二電極に着脱可能に構成されていることを特徴とする電源体の接続構造。
【請求項2】
複数の電池が重ねられた一の電池集合体と複数の電池が重ねられた他の電池集合体とを電気的に接続するバスバーモジュールであって、
前記一の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第一バスバー、及び該複数の第一バスバーを収容する第一絶縁体枠を有した第一接続体と、
前記他の電池集合体において互いに隣り合う電池の電極同士を接続する複数の第二バスバー、及び該複数の第二バスバーを収容する第二絶縁体枠を有した第二接続体と、
前記一の電池集合体における所定電池の第一電極と、前記他の電池集合体における所定電池の第二電極とを接続する第三接続体と、を備え、
前記第三接続体が、請求項1記載の接続構造を構成する前記接続部材、前記第一絶縁部材及び前記第二絶縁部材を有し、前記第一絶縁部材に前記接続部材の一端側の少なくとも一部が保持された状態で該接続部材の他端側が前記第二電極に着脱可能に構成されたことを特徴とするバスバーモジュール。
【請求項3】
前記第一絶縁部材と前記第一絶縁体枠とが可撓性を有した連結部を介して連結されたことを特徴とする請求項2記載のバスバーモジュール。
【請求項4】
前記第一電極及び第二電極が各々円柱状に形成され、前記接続部材の一端側及び他端側には、それぞれ前記第一電極及び第二電極を挿通可能な挿通孔が形成され、前記一端側の挿通孔に前記第一電極を挿通させることで該接続部材が仮止めされ、前記第一電極を中心として他端側を前記第二電極に向かって回動させ、該第二電極を前記他端側の挿通孔に挿通させることで該接続部材が接続されることを特徴とする請求項2又は3記載のバスバーモジュール。
【請求項5】
前記第一絶縁部材には、保持した前記接続部材に当接可能な壁部と、該壁部から突出して設けられて前記接続部材を係止可能な係止部とが設けられたことを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載のバスバーモジュール。
【請求項6】
前記第一絶縁部材における前記第二絶縁部材側には、前記第二電極への前記接続部材の接続に際して該接続部材とともに変形する可撓壁部が形成されていることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載のバスバーモジュール。
【請求項7】
複数の電池が重ねられた一の電池集合体と、複数の電池が重ねられた他の電池集合体と、前記各電池集合体における複数の電池同士及び該一及び他の電池集合体の所定電池同士を接続する請求項2〜6の何れか一項に記載のバスバーモジュールと、を備えたことを特徴とする電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−62102(P2013−62102A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199069(P2011−199069)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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