説明

電源制御システム及び電源制御方法

【課題】複数の機能回路ブロックを備えた半導体装置の回路規模を抑制しつつ、複数の機能回路ブロックに供給される電源電圧を個別に制御可能な電源制御システムを提供すること。
【解決手段】テスト制御部103は、アイドル状態の機能回路ブロックD109を検出した後、アドレス/データバス101を介して電源制御部104に電圧降圧指示を出す。電源ドメインD113の電源電圧降圧完了後、テスト制御部103は、アドレス/データバス101を介して機能回路ブロックD109にテストパターンを送信し、その結果を期待値と比較する。当該比較結果に基づいて、電圧差による遅延エラー等の異常が発生したと判別した場合、テスト制御部103は、機能回路ブロックD109を正常な状態に戻すために、電源制御部104に電源ドメインD113の電圧昇圧指示を出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を構成する複数の機能回路ブロックに供給される電源電圧を個別に制御する電源制御システム及び電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等のモバイル電子機器が広く一般に普及するにつれて、モバイル電子機器の機能に対する小型化及び高性能化が図られている。モバイル電子機器は、CPUによるプログラム制御とその用途に応じた各種機能モジュール及びインタフェースを有する。その中核を担うデバイスは、さらなる小型化及び低消費電力化を実現するために、各種機能をワンチップのLSIに搭載したシステムLSIとして提供される。
【0003】
一般に、システムLSIは、CPU、バス、各種機能モジュール及びメモリを搭載し、通信や撮影等の各種アプリケーション処理を実行する。近年は、高速通信処理や画素数の多い画像処理等といった処理量の増加に伴い、システムLSIは高速クロックで動作されている。しかし、システムLSIが高速クロックで動作されると、消費電力が増大する。モバイル電子機器は一般に電池で駆動されるため、消費電力の増大は電池の消耗を招く。その結果、頻繁な充電や電池交換が必要となり、ユーザに不便をもたらす。
【0004】
システムLSIの消費電力の増大を抑制するために、近年、さまざまな技術が提案されている。その一例として、動作状態を管理することで無駄なクロックの供給を停止して動作を抑制するクロックゲーティング技術がある。しかし、近年の半導体プロセスの微細化により、動作電流に対する待機時のリーク電流の比率が上昇している。このため、たとえクロックの供給を停止しても、リーク電流を削減することができない。
【0005】
モバイル電子機器においては、待受け状態における待機時のリーク電流の大きさが、その使用時間の長さを左右する。このため、最近では、使用しない回路の電源を落としたり、電圧を下げたりすることによって、リーク電流を削減することが実現されている。また、システムLSIにおいては、その状態に応じて、使用する回路と使用しない回路を分類してそれぞれの電源ドメインを分割し、電源供給を制御することによって、消費電力を低減することが実現されている。しかし、電源ドメインをまたいで伝播する信号については、信号の出し側と受け側で回路の駆動電源が異なるため、信号が不安定になる。
【0006】
この問題を解決するための技術として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された技術では、2つの電源ブロックにそれぞれ記憶回路と遅延回路を設け、それぞれの記憶回路間で信号が送受信される。このとき、それぞれの遅延回路を介して信号が送受信されるため、瞬間的な電源ノイズや電圧低下等により誤動作が生じ得る状態が発生すると、遅延回路の遅延量が正常に動作しているときよりも大きくなる。その結果、記憶回路間で送受信される信号のトグル状態がくずれ、誤動作が生じ得る状態の発生を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−311767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記説明した特許文献1の技術では、異なる電源ドメインに配置される各機能回路ブロック間の入出力信号に基づき、誤動作が生じ得る状態を判定し、エラー検出を行う。当該機能を実現するためには、2つの電源ドメイン間毎に記憶回路及び遅延回路を設ける必要がある。このため、複数の電源ドメインと電源ドメイン間通信を行う機能回路ブロックには、複数の記憶回路及び遅延回路を挿入する必要がある。したがって、複数の電源ドメインと電源ドメイン間通信を行う機能ブロックを含むシステムLSIの回路規模は大きくなる。
【0009】
また、アプリケーションの実行に関係なくエラー検出判定を行うため、本来動作しなくてもよい機能回路ブロックに対してもエラー検出判定を行ってしまう。このように、無駄なエラー検出や無駄なリカバリ動作を行うと、その分電力消費が増加してしまう。
【0010】
さらに、実際に使用するデータや制御信号を用いずに専用回路でエラー検出を行うため、実際に使用するパスは正常であっても専用回路にエラーが発生すると、電力消費や性能劣化が懸念される。
【0011】
本発明の目的は、複数の機能回路ブロックを備えた半導体装置の回路規模を抑制しつつ、複数の機能回路ブロックに供給される電源電圧を個別に制御が可能な電源制御システム及び電源制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、半導体装置を構成する複数の機能回路ブロックに供給される電源部からの電源電圧を個別に制御する電源制御システムであって、第1の電源が供給される第1の電源領域で動作する第1の機能回路ブロックと、第2の電源が供給される第2の電源領域で動作する第2の機能回路ブロックと、前記第1の機能回路ブロック及び前記第2の機能回路ブロックに接続され、第3の電源が供給される第3の電源領域でデータを伝送するバスと、前記第3の電源領域で動作し、前記第1の機能回路ブロックの動作期間中、前記バスを介してテストデータを前記第2の機能回路ブロックに送信し、前記テストデータの送信により得られる値に基づいて前記第2の機能回路ブロックの動作状態を確認するテスト制御部と、を有する電源制御システムを提供する。
【0013】
上記電源制御システムでは、前記テスト制御部は、前記第2の機能回路ブロックのアイドル状態を検出する検出部と、アイドル状態が検出された前記第2の機能回路ブロックに供給される前記第2の電源の電圧を降圧するよう前記電源部に指示する降圧指示部と、を有する。
【0014】
上記電源制御システムでは、前記テスト制御部は、前記降圧指示部からの指示に応じて前記第2の電源の電圧が降圧された後、前記第2の機能回路ブロックに前記テストデータを送信する送信部と、前記テストデータの送信により得られる値と期待値とを比較し、この比較結果に基づいて前記第2の電源の電圧が降圧したことによる異常を検出する異常検出部と、を有する。
【0015】
上記電源制御システムでは、前記テスト制御部は、前記第2の電源の電圧を昇圧するよう前記電源部に指示する昇圧指示部を有し、前記異常検出部が前記異常を検出した場合、前記昇圧指示部からの指示に応じて前記第2の電源の電圧が昇圧された後、前記送信部が前記テストデータを再度送信し、前記異常検出部によって前記異常が検出されなくなることを確認する。
【0016】
上記電源制御システムは、前記テスト制御部は、前記降圧指示部からの指示に応じて降圧される前記第2の電源の電圧を記憶する記憶部を有し、前記昇圧指示部は、前記記憶部が記憶する電圧よりも高い電圧に前記第2の電源の電圧を昇圧するよう前記電源部に指示する。
【0017】
上記電源制御システムでは、前記テスト制御部は、前記バスを介し、前記第2の電源領域内の遅延回路を経由して戻るデータパスを選択する選択部と、前記選択部によって選択されたデータパスに前記テストデータを送信し、前記第2の電源領域から戻るテストデータを受信する受信部と、前記受信部が受信したテストデータと前記テスト制御部が送信したテストデータを比較して遅延状況を判別する判別部と、を有し、前記遅延状況に基づいて、前記第2の機能回路ブロックの動作状態を確認する。
【0018】
上記電源制御システムでは、前記遅延回路として前記第2の機能回路ブロックの一部の回路を用いる。
【0019】
本発明は、第1の電源が供給される第1の電源領域で動作する第1の機能回路ブロックと、第2の電源が供給される第2の電源領域で動作する第2の機能回路ブロックと、前記第1の機能回路ブロック及び前記第2の機能回路ブロックに接続され、第3の電源が供給される第3の電源領域でデータを伝送するバスと、前記第3の電源領域で動作するテスト制御部と、を有する半導体装置を構成する複数の機能回路ブロックに供給される電源電圧を個別に制御する電源制御方法であって、前記テスト制御部が、前記第1の機能回路ブロックの動作期間中、前記バスを介してテストデータを前記第2の機能回路ブロックに送信するステップと、前記テスト制御部が、前記テストデータの送信により得られる値に基づいて前記第2の機能回路ブロックの動作状態を確認するステップと、を有する電源制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電源制御システム及び電源制御方法によれば、半導体装置の回路規模を抑制しつつ、複数の機能回路ブロックに供給される電源電圧を個別に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態におけるシステムLSIの電源制御システムの構成を示すブロック図
【図2】常時電源ONドメイン114のテスト制御部103の電源制御動作を示すフローチャート
【図3】常時電源ONドメイン114の電源制御部104の動作を示すフローチャート
【図4】第2の実施形態のシステムLSIの電源制御システムにおけるテスト制御部周辺の構成を示すブロック図
【図5】テスト制御部203の電源制御動作を示すフローチャート
【図6】バス230に接続された複数の機能回路ブロックを順番にテストする場合のテスト制御部周辺の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明の実施の形態における電源制御システム及び電源制御方法について、図面を参照しながら説明する。以下説明する実施形態の電源制御システムは、システムLSIの電源制御システムに適用される。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるシステムLSIの電源制御システムの構成を示すブロック図である。図1に示す電源制御システムは、システムLSI100及び電源IC105から構成される低消費電力システムである。
【0025】
システムLSI100は、それぞれ異なる電源供給が可能である複数の電源ドメインを有する。図1に示すように、複数の電源ドメインには、常時電源ONドメイン114、電源ドメインA110、電源ドメインB111、電源ドメインC112及び電源ドメインD113が含まれる。なお、常時電源ONドメイン114には、電源IC105から常に電源が供給される。
【0026】
常時電源ONドメイン114には、後述する各機能回路ブロック間のデータを伝送する汎用的なアドレス/データバス101、電源制御部104、テスト制御部103及びバス調停部102が含まれる。電源ドメインA110には、CPU106が設けられている。電源ドメインB111には、機能回路ブロックB107が設けられている。電源ドメインC112には、機能回路ブロックC108が設けられている。電源ドメインD113には、機能回路ブロックD109が設けられている。
【0027】
常時電源ONドメイン114の電源制御部104は、各電源ドメインの電源を個別に制御可能な電源部として機能する。電源制御部104は、テスト制御部103から各電源ドメインの電圧変更指示を受けると、電源IC105を制御し、電源ライン116を介して各電源ドメイン110〜113の電源電圧の昇圧又は降圧を行う。
【0028】
常時電源ONドメイン114のテスト制御部103は、後述するプログラムを実行するプロセッサ(CPU)を主体に構成される制御回路であり、内部にメモリ103aを有する。テスト制御部103は、バス調停部102から、どの機能回路ブロックにアクセスが発生し、どの機能回路ブロックがアイドルであるかを通知するアイドルモニタ信号117を受けると、CPU106又は各機能回路ブロック107〜109のアイドル状態を検出する。また、テスト制御部103は、アドレス/データバス101を介して電源制御部104に対し、電圧変更制御を行うよう指示する。このとき、テスト制御部103は、電圧変更制御される電源ドメインの電源電圧を示す情報を、内蔵のメモリ103aに格納する。さらに、テスト制御部103は、アドレス/データバス101を介して、電源ドメインA110のCPU106とデータのやり取りを行うと共に、各機能回路ブロック107〜109との間でテストパターンを送受信し、各機能回路ブロックの動作状態を確認する。
【0029】
システムLSI100の電源制御システムの動作について説明する。図2は、常時電源ONドメイン114のテスト制御部103の電源制御動作を示すフローチャートである。この動作は所定期間毎に繰り返し行われる。図3は、常時電源ONドメイン114の電源制御部104の動作を示すフローチャートである。以下、一例として、CPU106がアドレス/データバス101を介して機能回路ブロックC108へアクセス中であり、かつ、その間、機能回路ブロックD109がどこにもアクセスしていない場合を想定して説明する。
【0030】
まず、テスト制御部103は、アイドルモニタ信号117に基づいてCPU106又は各機能回路ブロック107〜109の状態を判別し、アイドル状態の機能回路ブロックが検出したか否かを判別する(ステップS1)。アイドル状態の機能回路ブロックが検出されなかった場合、テスト制御部103は本動作を終了する。本例では、機能回路ブロックC108の動作期間中、機能回路ブロックD109がアイドル状態であることが検出される。
【0031】
機能回路ブロックD109がアイドル状態であることが検出された後、テスト制御部103は、機能回路ブロックD109が属する電源ドメインD113の電源電圧を下げるために、アドレス/データバス101を介して電源制御部104に電源ドメインD113の電圧降圧指示を出す(ステップS2)。このとき、テスト制御部103は、機能回路ブロックD109に対する通常のアクセスが発生しないように、テストステータス信号118をバス調停部102に送る。テストステータス信号118を受け取ったバス調停部102は、機能回路ブロックD109に対する通常のアクセスを発生させない。また、前述したように、テスト制御部103内のメモリ103aには、電圧降圧指示によって示される電源電圧を示す情報が格納される。
【0032】
電源制御部104は、テスト制御部103から電源ドメインD113の電圧降圧指示を受けたか否かを判別する(ステップS11)。電圧降圧指示を受けた場合、電源制御部104は、制御信号115を電源IC105に送り、アイドル状態の機能回路ブロックD109が属する電源ドメインD113の電源電圧を下げる(ステップS12)。一方、電圧降圧指示を受けていない場合、後述するステップS13の動作に移行する。
【0033】
電源ドメインD113の電源電圧降圧完了後、テスト制御部103は、アドレス/データバス101を介して機能回路ブロックD109にテストパターンを送信し、その結果を期待値と比較する(ステップS3)。テストパターンは、機能回路ブロックD109を動作させるパターンであれば任意のパターンで良い。例えば、テストパターンは、値を変更しても問題が生じない特定レジスタへのアクセス等といった簡単なもので良い。
【0034】
具体的に、テスト制御部103は、機能回路ブロックD109の適当なレジスタに任意の値を書き込み、このレジスタから値を読み出すパターンを発行する。テスト制御部103は、このパターンによって読み出された値が期待値と等しいか否かを判別する。
【0035】
テスト制御部103は、ステップS3での比較結果に基づいて、電圧差による遅延エラー等の異常が発生したか否かを判別する(ステップS4)。異常が発生していない場合、テスト制御部103は、電源ドメインD113に対して何も行わずに本動作を終える。一方、異常が発生している場合、テスト制御部103は、機能回路ブロックD109を正常な状態に戻すために、電源制御部104に電源ドメインD113の電圧昇圧指示を出す(ステップS5)。テスト制御部103内のメモリ103aには、この電圧昇圧指示によって示される電源電圧を示す情報が格納される。電圧昇圧指示は、それまでメモリ103aに記憶された電圧より高い電圧を出力するように行われる。
【0036】
電源制御部104は、ステップS12で電源ドメインD113の電圧を下げた後、テスト制御部103から電源ドメインD113の電圧昇圧指示を受けたか否かを判別する(ステップS13)。電圧昇圧指示を受けていない場合、電源制御部104は、本動作を終了し、テスト制御部103から次の指示があるまで何も行わない。一方、電圧昇圧指示を受けた場合、電源制御部104は、電源IC105を制御して電源ドメインD113の電源電圧を上げる(ステップS14)。この後、電源制御部104は、テスト制御部103から次の指示があるまで何も行わない。
【0037】
電源ドメインD113の電源電圧昇圧完了後、テスト制御部103は、降圧時と同様、アドレス/データバス101を介して機能回路ブロックD109にテストパターンを送信し、その結果を期待値と比較する(ステップS6)。テスト制御部103は、ステップS6での比較結果に基づいて、電圧差による遅延エラー等の異常が発生したか否かを判別する(ステップS7)。異常が発生していない場合、テスト制御部103は、電源ドメインD113に対して何も行わずに本動作を終える。一方、異常が発生している場合はステップS5に戻り、テスト制御部103は、機能回路ブロックD109を正常な状態に戻すために、電源制御部104に電源ドメインD113の電圧昇圧指示を再度出す。上記説明した電圧昇圧指示は段階的に行われる。
【0038】
以上説明したように、第1の実施形態のシステムLSI100の電源制御システムによれば、汎用的なアドレス/データバス101を利用してCPU106及び機能回路ブロック107〜109の状態を判別するため、システムLSIの回路規模を大きくすることなく、システムLSI100の消費電力を低減するための電源電圧の制御が可能である。また、電源ドメイン間毎にテスト回路を設けずに、さらに、テスト回路を常時動作させることなく、電圧差による遅延エラー等の異常の発生を判別可能である。したがって、回路規模の増加が抑えられ、かつ、消費電力を低減できる。さらに、各機能回路ブロックの動作をテスト時に停止させないため、システムの低速化を防いだ上でCPU106及び各機能回路ブロックの状態を判別することができる。
【0039】
また、通常のアプリケーションの実行中に、バックグラウンドで動作していない機能回路ブロックのデータ通信確認を行い、電源ドメインの電源電圧制御を行うため、実動作への影響を与えずに低消費電力化が図られる。さらに、システムLSI内部で、他のソフトウェアを介在させることなく低消費電力化が行われるため、電力制御が複雑ではない。
【0040】
なお、本実施形態では、電源制御部104は、単に、各電源ドメインの電圧の降圧又は昇圧を行うだけであるため、ハードウェア回路で構成されるが、ソフトウェアにより電源IC105を制御して各電源ドメインの電圧の降圧又は昇圧を行っても良い。さらに、電源電圧を複数段設けて、電源電圧の降圧又は昇圧を段階的に制御したり、電源電圧の上限値や下限値を任意に決定して任意の段階制御を行っても良い。
【0041】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態のシステムLSIの電源制御システムにおけるテスト制御部周辺の構成を示すブロック図である。システムLSI200は、それぞれ異なる電源供給が可能な複数の電源ドメインを有する。図4には、第2の実施形態のシステムLSIの電源制御システムを構成する常時電源ONドメイン201、電源ドメインX202及び電源IC215が示される。
【0042】
常時電源ONドメイン201は、動作確認を実施する側の電源ドメインである。常時電源ONドメイン201には、バスアービタ204、テスト制御部203、電源制御部205及びノーマル/テストセレクタ210Aが設けられている。なお、図4ではバスが省略されている。
【0043】
電源ドメインX202は、テスト対象となる側の電源ドメインである。電源ドメインX202には、ハードウェア機能を実現する処理ブロックである機能回路ブロックX206、遅延回路213及びノーマル/テストセレクタ210Bが設けられている。
【0044】
常時電源ONドメイン201のテスト制御部203は、パターン発生回路207、遅延回路208及び比較回路209を有する。テスト制御部203は、常時電源ONドメイン201のバスアービタ204と電源ドメインX202の機能回路ブロックX206の間の信号を用いて動作テストを行う。また、常時電源ONドメイン201の電源制御部205は、電源IC215を制御し、電源ドメインX202の電源電圧の昇圧又は降圧を行う。
【0045】
また、テスト制御部203は、バスアービタ204から、機能回路ブロックX206がアイドル状態であることを通知するアイドルモニタ信号211を受信すると、テストモードへの移行を制御し、テスト制御信号212によりノーマル/テストセレクタ210A,210Bを切り替える。
【0046】
テストモードへの切り替え後、テスト制御部203のパターン発生回路207は、固定長のランダムパターンを発生するテストパターンを生成し、当該テストパターンをノーマル/テストセレクタ210Aに送る。このとき、ノーマル/テストセレクタ210Aが切り替えられたことにより、当該テストパターンは電源ドメインX202の機能回路ブロックX206及び遅延回路213に入力される。遅延回路213で一定量の遅延が付加されたテストパターンは、ノーマル/テストセレクタ210Bを通って常時電源ONドメイン201のテスト制御部203に戻されることによりループバックされ、テスト制御部203の比較回路209に入力される。
【0047】
このように、ノーマル/テストセレクタ210A,210Bを切り替えることで、常時電源ONドメイン201のテスト制御部203から送信されるテストパターンが電源ドメインX202の遅延回路213を経由してテスト制御部203に戻るデータパスが形成(選択)される。
【0048】
また同様に、テスト制御部203は、パターン発生回路207により比較用のリファレンスパターンを生成する。パターン発生回路207で生成されたリファレンスパターンは、テスト制御部203の遅延回路208に入力される。ここで、遅延回路208は、遅延回路213と同一の回路構成を有する。したがって、リファレンスパターンは、同一の電源ドメイン内で遅延が付加された信号となる。
【0049】
電源ドメインX202の遅延回路213で遅延が付加されたテストパターン及び常時電源ONドメイン201の遅延回路208で遅延が付加されたリファレンスパターンは、それぞれ比較回路209に入力される。比較回路209は、これらの信号変化のタイミングを比較して遅延状況を判別する。ここで、この比較を行う開始時間及び終了時間は、パターン発生回路207でパターンを生成した時刻及びパターン長、さらに遅延回路208で付加された遅延値から決定される。
【0050】
比較回路209において、信号変化のタイミングに差分がある場合、比較回路209はフラグを立てる。比較回路209でフラグが立てられた場合、常時電源ONドメイン201と電源ドメインX202の間に想定外の遅延要因が存在することになる。このとき、電源制御部205は、電源IC215を制御し、電源ドメインX202の昇圧を行う。逆に、比較回路209でフラグが立たなかった場合、常時電源ONドメイン201と電源ドメインX202の間では通信が問題なく行われるため、電源制御部205は、電源ドメインX202に対して何も行わない。
【0051】
図5は、テスト制御部203の電源制御動作を示すフローチャートである。この動作は、テスト制御部203によって所定期間毎に繰り返し行われる。テスト制御部203は、バスアービタ204からアイドル信号211を受信したか否かを判別する(ステップS21)。アイドル信号を受信していない場合、テスト制御部203は、本動作を終了する。一方、アイドル信号を受信した場合、テスト制御部203は、電源制御部205に対し、このアイドル信号に該当する電源ドメイン、例えば電源ドメインX202の電圧を降圧するよう指示する(ステップS22)。
【0052】
テスト制御部203は、ノーマル/テストセレクタ210A,210Bをテスト用に切り替える(ステップS23)。次に、テスト制御部203のパターン発生回路207は、テストパターンを生成してノーマル/テストセレクタ210Aに送る(ステップS24)。また、パターン発生回路207は、リファレンスパターンを生成して遅延回路208に送る(ステップS25)。なお、テストパターン及びリファレンスパターンを別々に生成して送っているが、これらのパターンが同じパターンである場合、1つを生成して同時に送信しても良い。テスト制御部203の比較回路209は、テストパターン及びリファレンスパターンにおける信号変化のタイミングを比較する(ステップS26)。
【0053】
テスト制御部203は、テストパターン及びリファレンスパターンにおける信号変化のタイミングから、電源ドメイン間で想定外の遅延があったか否かを判別する(ステップS27)。想定外の遅延があった場合、テスト制御部203は、電源制御部205に対し、電源ドメインX202の電圧を昇圧するように指示し(ステップS28)、ステップS24に戻る。一方、想定外の遅延がなかった場合、テスト制御部203は本動作を終了する。
【0054】
なお、上記動作は、バスに接続される機能回路ブロックの全てに適用可能である。図6は、バス230に接続された複数の機能回路ブロックを順番にテストする場合のテスト制御部周辺の構成を示すブロック図である。テスト制御部203は、バスアービタ204からのアイドル信号211を受け取ることで、バス230に接続された複数の電源ドメインを順次テストする。図6では、電源ドメインX202及び電源ドメインY222にそれぞれ設けられた機能回路ブロックX206及び機能回路ブロックY226がバス230に接続される場合を示したが、3つ以上の電源ドメインにそれぞれ設けられた3つ以上の機能回路ブロックがバス230に接続される場合も同様である。各機能回路ブロックのテストは、前述した動作と同じである。なお、この場合、予め各電源ドメインに優先順位をつけ、順位の高い順にテストを実行するようにしても良い。
【0055】
以上説明したように、第2の実施形態の電源制御システムによれば、電源ドメイン間毎にテスト回路を設けずに、さらに、テスト回路を常時動作させることなく、電位差による遅延エラー等の以上の発生を判別可能である。したがって、回路規模の増加が抑えられ、かつ消費電力を低減できる。さらに、各機能回路ブロックの動作をテスト時に停止させないため、システムの低速化を防いだ上で各機能回路ブロックの状態を判別することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、又は本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。例えば、上記実施形態では、遅延回路213は、機能回路ブロックX206とは別に設けられていたが、機能回路ブロックX206の一部を遅延回路として用いても良い。これにより、システムLSIにおける回路規模の増大を一層抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る電源制御システムは、半導体装置を構成する複数の機能回路ブロックに供給される電源を個別に制御する電源制御システム等として有用である。
【符号の説明】
【0058】
100 システムLSI
102 バス調停部
103 テスト制御部
104 電源制御部
105 電源IC
106 CPU
107 機能回路ブロックB
108 機能回路ブロックC
109 機能回路ブロックD
110 電源ドメインA
111 電源ドメインB
112 電源ドメインC
113 電源ドメインD
114 常時電源ONドメイン
115 制御信号
116 電源ライン
117 アイドルモニタ信号
118 テストステータス信号
200 システムLSI
201 常時電源ONドメイン
202 電源ドメインX
203 テスト制御部
204 バスアービタ
205 電源制御部
206 機能回路ブロックX
207 パターン発生回路
208 遅延回路
209 比較回路
210A、210B ノーマル/テストセレクタ
211 アイドルモニタ信号
212 テスト制御信号
213 遅延回路
215 電源IC
222 電源ドメインY
226 機能回路ブロックY
230 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を構成する複数の機能回路ブロックに供給される電源部からの電源電圧を個別に制御する電源制御システムであって、
第1の電源が供給される第1の電源領域で動作する第1の機能回路ブロックと、
第2の電源が供給される第2の電源領域で動作する第2の機能回路ブロックと、
前記第1の機能回路ブロック及び前記第2の機能回路ブロックに接続され、第3の電源が供給される第3の電源領域でデータを伝送するバスと、
前記第3の電源領域で動作し、前記第1の機能回路ブロックの動作期間中、前記バスを介してテストデータを前記第2の機能回路ブロックに送信し、前記テストデータの送信により得られる値に基づいて前記第2の機能回路ブロックの動作状態を確認するテスト制御部と、
を有する電源制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電源制御システムであって、
前記テスト制御部は、
前記第2の機能回路ブロックのアイドル状態を検出する検出部と、
アイドル状態が検出された前記第2の機能回路ブロックに供給される前記第2の電源の電圧を降圧するよう前記電源部に指示する降圧指示部と、
を有する電源制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電源制御システムであって、
前記テスト制御部は、
前記降圧指示部からの指示に応じて前記第2の電源の電圧が降圧された後、前記第2の機能回路ブロックに前記テストデータを送信する送信部と、
前記テストデータの送信により得られる値と期待値を比較し、この比較結果に基づいて前記第2の電源の電圧が降圧したことによる異常を検出する異常検出部と、
を有する電源制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電源制御システムであって、
前記テスト制御部は、
前記第2の電源の電圧を昇圧するよう前記電源部に指示する昇圧指示部を有し、
前記異常検出部が前記異常を検出した場合、前記昇圧指示部からの指示に応じて前記第2の電源の電圧が昇圧された後、前記送信部が前記テストデータを再度送信し、前記異常検出部によって前記異常が検出されなくなることを確認する電源制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電源制御システムであって、
前記テスト制御部は、
前記降圧指示部からの指示に応じて降圧される前記第2の電源の電圧を記憶する記憶部を有し、
前記昇圧指示部は、
前記記憶部が記憶する電圧よりも高い電圧に前記第2の電源の電圧を昇圧するよう前記電源部に指示する電源制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の電源制御システムであって、
前記テスト制御部は、
前記バスを介し、前記第2の電源領域内の遅延回路を経由して戻るデータパスを選択する選択部と、
前記選択部によって選択されたデータパスに前記テストデータを送信し、前記第2の電源領域から戻るテストデータを受信する受信部と、
前記受信部が受信したテストデータと前記テスト制御部が送信したテストデータを比較して遅延状況を判別する判別部と、を有し、
前記遅延状況に基づいて、前記第2の機能回路ブロックの動作状態を確認する電源制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電源制御システムであって、
前記遅延回路として前記第2の機能回路ブロックの一部の回路を用いる電源制御システム。
【請求項8】
第1の電源が供給される第1の電源領域で動作する第1の機能回路ブロックと、第2の電源が供給される第2の電源領域で動作する第2の機能回路ブロックと、前記第1の機能回路ブロック及び前記第2の機能回路ブロックに接続され、第3の電源が供給される第3の電源領域でデータを伝送するバスと、前記第3の電源領域で動作するテスト制御部と、を有する半導体装置を構成する複数の機能回路ブロックに供給される電源電圧を個別に制御する電源制御方法であって、
前記テスト制御部が、前記第1の機能回路ブロックの動作期間中、前記バスを介してテストデータを前記第2の機能回路ブロックに送信するステップと、
前記テスト制御部が、前記テストデータの送信により得られる値に基づいて前記第2の機能回路ブロックの動作状態を確認するステップと、
を有する電源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−113593(P2012−113593A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263316(P2010−263316)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】