説明

電源回路、電子機器及び制御方法

【課題】正常な回路動作上及び安全規格上の問題を生じさせることなく、起動時の消費電力及び突入電流を低減させる。
【解決手段】電源回路1は、電源から負荷への供給電流を平滑化する平滑コンデンサC1と、平滑コンデンサC1に対し並列に接続された蓄電コンデンサC2と、供給電流のオフ時に、平滑コンデンサC1に蓄えられた電荷の少なくとも一部を蓄電コンデンサC2上に移動させる第1移動手段と、供給電流の再度のオン時前に、第1移動手段によって蓄電コンデンサC2上に移動させた電荷の少なくとも一部を平滑コンデンサC1上に移動させる第2移動手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路、電子機器及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電源電圧を平滑化する平滑コンデンサを用いた電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。通常、電源ON時に電子機器の平滑コンデンサに蓄えられた電荷は、電源OFF時に放電ループで放電するようにしている。平滑コンデンサの残留(余剰)電荷は、正常な回路動作上、又は、安全規格上の問題となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−268324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如く、平滑コンデンサに電源ON時に蓄えられた電荷は電源OFF時に放電するようにしているため、電子機器を起動させる度に、放電分の電力が無駄になるという問題がある。また、放電回路の時定数が小さく、平滑コンデンサに蓄えられた電荷が仮に残留するような場合、電力消費に係る上記問題は軽減されるものの、上述の如く、正常な回路動作上、安全規格上の問題が生じることになる。更に、平滑コンデンサを用いると電源電圧を平滑化できる反面、電源ON時に、電源電圧と平滑コンデンサの蓄電電圧の差に応じた、大きな電流(突入電流)が流れてしまうという問題もある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、正常な回路動作上及び安全規格上の問題を生じさせることなく、起動時の消費電力及び突入電流を低減させる電源回路、電子機器及び制御方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様である電源回路は、電源から負荷への供給電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに対し並列に接続された蓄電コンデンサと、前記供給電流のオフ時に、前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷の少なくとも一部を前記蓄電コンデンサ上に移動させる第1移動手段と、前記供給電流の再度のオン時前に、前記第1移動手段によって前記蓄電コンデンサ上に移動させた電荷の少なくとも一部を前記平滑コンデンサ上に移動させる第2移動手段とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、正常な回路動作上及び安全規格上の問題を生じさせることなく、起動時の消費電力及び突入電流を低減させることができる。
つまり、第1移動手段が、電源オフ時に、平滑コンデンサ上の電荷の少なくとも一部を蓄電コンデンサ上に退避し、第2移動手段が、次回の電源オン時に実際に平滑コンデンサに電流を流すのに先立って、蓄電コンデンサ上に退避させた電荷の少なくとも一部を平滑コンデンサ上に戻すようにしたため、起動時の消費電力を低減させることができる。即ち、退避電荷を次回の電源ON時に利用するようにしたため、節電効果がある。
また、上述の如く、第1移動手段が平滑コンデンサ上の電荷の少なくとも一部を蓄電コンデンサ上に退避するようにしたため、平滑コンデンサ上に電荷が残留し難くなる。よって、正常な回路動作上及び安全規格上の問題が生じ難くなる。
また、上述の如く、第2移動手段によって、実際に平滑コンデンサに電流を流すときには平滑コンデンサは蓄電されているため、突入電流を低減させることができる。
【0007】
上記問題を解決するために、本発明の一態様である電源回路は、電源と負荷の間に接続され、前記電源から供給される供給電流の流れをオン/オフする第1スイッチと、前記第1スイッチと前記負荷の間に、前記負荷に対し並列に接続された平滑コンデンサと、前記第1スイッチと前記負荷の間に、前記負荷に対し並列に接続された蓄電コンデンサと、前記平滑コンデンサと前記蓄電コンデンサとの間に接続され、前記平滑コンデンサから前記蓄電コンデンサへの整流電流の流れをオン/オフする第2スイッチと、前記平滑コンデンサと前記蓄電コンデンサとの間に接続され、前記蓄電コンデンサから前記平滑コンデンサへの整流電流の流れをオン/オフする第3スイッチと、前記第1スイッチのオフ時に、前記第2スイッチをオンして、前記第1スイッチのオン中に前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷の少なくとも一部を前記蓄電コンデンサに移動させるとともに、前記第1スイッチの再度のオン時前に、前記第2スイッチをオフしかつ前記第3スイッチをオンして、前記蓄電コンデンサに移動させた電荷の少なくとも一部を前記平滑コンデンサに移動させる制御部とを備えることを特徴とする。
上記構成によれば、上記と同様、正常な回路動作上及び安全規格上の問題を生じさせることなく、起動時の消費電力及び突入電流を低減させることができる。
つまり、制御部が、電源オフ時に、平滑コンデンサに蓄えられていた電荷の少なくとも一部を蓄電コンデンサに移動させるとともに、次回の電源オン時に実際に平滑コンデンサに電流を流すのに先立って蓄電コンデンサ上に退避させた電荷の少なくとも一部を平滑コンデンサ上に戻すようにしたため、起動時の消費電力を低減させることができる。
また、上述の如く、制御部が平滑コンデンサ上の電荷の少なくとも一部を蓄電コンデンサ上に退避するようにしたため、平滑コンデンサ上に電荷が残留し難くなる。よって、正常な回路動作上及び安全規格上の問題が生じ難くなる。
また、上述の如く、制御部によって、実際に平滑コンデンサに電流を流すときには平滑コンデンサは蓄電されているため、突入電流を低減させることができる。
【0008】
上記電源回路において、前記制御部は、前記第3スイッチのオン後であって前記蓄電コンデンサから前記平滑コンデンサへの電荷の移動が略完了した時に、前記第1スイッチを再度オンするようにしてもよい。
上記構成によれば、蓄電コンデンサから移動して蓄積された平滑コンデンサ上の電荷が、負荷抵抗などによって消費され目減りすることがなくなるため、起動時の消費電力及び突入電流を一層低減させることができる。
【0009】
上記電源回路において、前記蓄電コンデンサに残留する電荷の少なくとも一部を放電させる放電抵抗を更に備えるようにしてもよい。
上記構成によれば、蓄電コンデンサに残留する電荷を消費させるため、電荷退避用のコンデンサに電荷が残留することによる、正常な回路動作上及び安全規格上の問題が生じ難くなる。
【0010】
上記問題を解決するために、本発明の一態様である電子機器は、上述の電源回路を備えることを特徴とする。上記構成によれば、上記電源回路の上述の効果を有する電子機器を提供することができる。
【0011】
上記問題を解決するために、本発明の一態様である制御方法は、電源から負荷への供給電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに対し並列に接続された蓄電コンデンサとを備える電子機器における制御方法であって、前記供給電流のオフ時に、前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷の少なくとも一部を前記蓄電コンデンサ上に移動させるステップと、前記供給電流の再度のオン時前に、前記第1移動手段によって前記蓄電コンデンサ上に移動させた電荷の少なくとも一部を前記平滑コンデンサ上に移動させるステップとを有することを特徴とする。上記構成によれば、上記電源回路の上述の効果と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による電源回路の構成図の一例である。
【図2】本発明の一実施形態による電源回路の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電源回路1の構成図の一例である。
【0014】
電源回路1は、図1に示すように、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、平滑コンデンサC1、蓄電コンデンサC2、第1整流素子D1、第2整流素子D2、放電抵抗R1、制御回路10(制御部とも称する)を有して構成されている。制御回路10は、OFFタイマー回路16、入力検出回路12及び起動時遅延回路14から構成されている。なお、電源回路1は、図1に示すように、上記に加えて、電源を含む構成であってもよい。
【0015】
また、電源回路1は、電子機器(例えば、プロジェクター、プリンター)に用いられる。即ち、電源回路1を備える電子機器は、電子機器1と負荷(各電子機器に応じた負荷回路)とを備える。
【0016】
第1スイッチSW1は、電源と負荷(電源回路1を用いる電子機器に応じた負荷回路)の間に接続され、電源からの入力電流の流れをオン/オフする。なお、以下の説明において、第1スイッチSW1のオン時に負荷抵抗側に実際に流れる電流を供給電流という。
平滑コンデンサC1は、第1スイッチSW1と負荷の間に、負荷に対し並列に接続されている。平滑コンデンサC1は、電源から負荷への供給電流を平滑化する。
蓄電コンデンサC2は、第1スイッチSW1と負荷の間に、負荷に対し並列に接続されている。つまり、蓄電コンデンサC2は、平滑コンデンサC1に対し並列に接続されている。蓄電コンデンサC2は、平滑コンデンサC1に蓄えられていた電荷を一時的に退避させるためのコンデンサである。
【0017】
第1整流素子D1は、平滑コンデンサC1側から蓄電コンデンサC2側への整流作用を有する。第2整流素子D2は、蓄電コンデンサC2側から平滑コンデンサC1側への整流作用を有する。
第2スイッチSW2は、平滑コンデンサC1と蓄電コンデンサC2との間に接続されている。第2スイッチSW2は、第1整流素子D1によって形成される、平滑コンデンサC1から蓄電コンデンサC2への整流電流の流れをオン/オフする。
第3スイッチSW3は、平滑コンデンサC1と蓄電コンデンサC2との間に接続されている。第3スイッチSW3は、第2整流素子D2によって形成される、蓄電コンデンサC2から平滑コンデンサC1への整流電流の流れをオン/オフする。
【0018】
制御回路10は、各スイッチSW1、SW2、SW3のオンオフを制御する。つまり、制御回路10は、各スイッチSW1、SW2、SW3を適切なタイミングで制御し、平滑コンデンサC1に蓄えられていた電荷の少なくとも一部を蓄電コンデンサC2に移動させるとともに、蓄電コンデンサC2に一旦移動させた電荷の少なくとも一部を平滑コンデンサC1に再度移動させる。なお、制御回路10による上記制御の詳細は後述する。
【0019】
放電抵抗R1は、蓄電コンデンサC2に残留する電荷の少なくとも一部を放電させるための抵抗である。
【0020】
以下、制御回路10(OFFタイマー回路16、入力検出回路12及び起動時遅延回路14)の制御を詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態による電源回路1の動作例を示すタイミングチャートである。まず、図2上の各記号を概説する。「t0」〜「t11」は時刻を表している。「入力」は電源による入力電流、「SW1」は第1スイッチSW1のオン(ON)/オフ(OFF)、「SW2」は第2スイッチSW2のオン(ON)/オフ(OFF)、「SW3」は第3スイッチSW3のオン(ON)/オフ(OFF)、「C1」は平滑コンデンサC1上の電荷(例えば、q1、q2、q3、q4)、「C2」は蓄電コンデンサC2上の電荷(例えば、q5、q6)を表している。また、「di1」は時刻「t2」に平滑コンデンサC1を流れる電流、「di2」は時刻「t8」に平滑コンデンサC1を流れる電流を表している。
なお、説明の便宜上、時刻「t0」において、各スイッチSW1、SW2、SW3は何れもオフであり、平滑コンデンサC1及び蓄電コンデンサC2には電荷はないものとする(図1参照)。
【0021】
(電源回路1の最初の起動時)
時刻「t1」において、電源回路1の使用者が電源を入れると、入力検出回路12は、入力電流を検出する。入力電流を検出した入力検出回路12は、入力電流がオンになった旨の信号(以下、「入力電流オン信号」という)を起動時遅延回路14に出力する。
【0022】
入力電流オン信号を取得した起動時遅延回路14は、入力電流オン信号の取得タイミングから所定の時間遅延させて、第1スイッチSW1をオンにする。図2に示す例では、起動時遅延回路14は、所定の時間(略、時刻「t2」−時刻「t1」)遅延させて、時刻「t2」に第1スイッチSW1をオンにしている。即ち、時刻「t2」において、第1スイッチSW1は、オンになる。これにより、供給電流が流れる。
【0023】
第1スイッチSW1のオンにより、平滑コンデンサC1に電荷が蓄えられ始め、時刻「t2」から時刻「t3」迄の間に、平滑コンデンサC1上の電荷は、ゼロから容量一杯「q1」になる。
【0024】
時刻「t4」において、電源回路1の使用者が電源を落とすと、入力検出回路12は、入力電流を検出しなくなる。入力電流を検出しなくなった入力検出回路12は、入力電流がオフになった旨の信号(以下、「入力電流オフ信号」という)を起動時遅延回路14に出力するとともに、第2スイッチSW2をオンにする。
【0025】
入力電流オフ信号を取得した起動時遅延回路14は、直ちに第1スイッチSW1をオフにする。即ち、時刻「t4」において、第1スイッチSW1は、オフになる。なお、第1スイッチSW1をオフする前の入力検出回路12が入力電流を検出しなくなった時点で、供給電流は流れなくなっている。
【0026】
第1スイッチSW1のオフ、及び、第2スイッチSW2のオンにより、平滑コンデンサC1に蓄電されていた電荷「q1」が放電し、時刻「t4」から時刻「t5」迄の間に、電荷「q1」の少なくとも一部が蓄電コンデンサC2に移動する。具体的には、平滑コンデンサC1の静電容量をc1、蓄電コンデンサC2の静電容量をc2とするとき、時刻「t5」において、平滑コンデンサC1と蓄電コンデンサC2の両端の電圧は等しくなるから、負荷抵抗などによる電力消費を無視すれば、下記式(1)が成立する。
【0027】
c1*(q1―q4)=c2*q5 …(1)
【0028】
蓄電コンデンサC2へ移動しなかった平滑コンデンサC1上の残留電荷「q4」は、負荷抵抗などによって消費される。即ち、時刻「t5」における残留電荷「q4」は、漸次、放電し、平滑コンデンサC1上の電荷はゼロになる。
つまり、次回の起動時迄に負荷抵抗などによって消費されるべき電荷は、平滑コンデンサC1上に蓄えられていた電荷の全部「q1」ではなく一部「q4」であるため、平滑コンデンサC1上に電荷が残留し難くなる。よって、電源回路1における、正常な回路動作上、安全規格上の問題が生じ難くなる。
【0029】
(電源回路1の2度目以降の起動時)
時刻「t6」において、電源回路1の使用者が再度電源を入れると、入力検出回路12は、入力電流を検出する。入力電流を検出した入力検出回路12は、入力電流オン信号をOFFタイマー回路16及び起動時遅延回路14に出力するとともに、第2スイッチSW2をオフにする。
【0030】
入力電流オン信号を取得したOFFタイマー回路16は、直ちに第3スイッチSW3をオンにする。即ち、時刻「t6」において、第3スイッチSW3は、オンになる。なお、OFFタイマー回路16は、所定の時間の経過後、第3スイッチSW3をオフにしている。図2に示す例では、OFFタイマー回路16は、所定の時間(略、時刻「t9」−時刻「t6」)経過後、時刻「t9」に第3スイッチSW3をオフにしている。
【0031】
また、入力電流オン信号を取得した起動時遅延回路14は、入力電流オン信号の取得タイミングから所定の時間遅延させて、第1スイッチSW1をオンにする。図2に示す例では、起動時遅延回路14は、所定の時間(略、時刻「t8」−時刻「t6」)遅延させて、時刻「t8」に第1スイッチSW1をオンにしている。即ち、時刻「t8」において、第1スイッチSW1は、オンになる。これにより、再度、供給電流が流れる。
なお、遅延時間(時刻「t8」−時刻「t6」)は、遅延時間(時刻「t2」−時刻「t1」)と同じである。
【0032】
第2スイッチSW2のオフ、及び、第3スイッチSW3のオンにより、蓄電コンデンサC2に蓄電されていた電荷「q5」が放電し、時刻「t6」から時刻「t7」迄の間に、電荷「q5」の少なくとも一部が平滑コンデンサC1に移動する。具体的には、平滑コンデンサC1の静電容量をc1、蓄電コンデンサC2の静電容量をc2とするとき、時刻「t7」において、平滑コンデンサC1と蓄電コンデンサC2の両端の電圧は等しくなるから、放電抵抗R1、負荷抵抗などによる電力消費を無視すれば、下記式(2)が成立する。
【0033】
c1*(q2)=c2*(q5−q6) …(2)
【0034】
平滑コンデンサC1へ移動しなかった蓄電コンデンサC2上の残留電荷「q6」は、放電抵抗R1などによって消費される。即ち、時刻「t7」における残留電荷「q6」は、漸次、放電し、蓄電コンデンサC2上の電荷はゼロになる。
【0035】
一方、蓄電コンデンサC2から移動して蓄積された平滑コンデンサC1上の電荷「q2」もまた、負荷抵抗などによって消費されるが、起動時遅延回路14によって、時刻「t8」には、第1スイッチSW1がオンになるため、平滑コンデンサC1上には、電荷「q2」と略同量の「q3」が残留する。
【0036】
第1スイッチSW1のオンにより、平滑コンデンサC1に電荷が蓄えられ始め、時刻「t8」から時刻「t9」迄の間に、平滑コンデンサC1上の電荷は、上述の「q3」から「q1」になる。
つまり、平滑コンデンサC1上に電荷(「q3」)が残留しているため、何も蓄電されていない場合に比べ、残留分(「q3」)の電力消費が少なくなる。また、平滑コンデンサC1上に電荷(「q3」)が残留しているため、何も蓄電されていない場合に比べ、突入電流「di2」は、突入電流「di1」よりも小さくなる。
【0037】
続く、時刻「t10」の動きは時刻「t4」と同一、時刻「t11」の動きは時刻「t5」と同一である。つまり、時刻「t10」以降は、時刻「t4」から時刻「t10」迄の動き繰り返す。
【0038】
以上、タイミングチャートを用いて説明したが、換言すれば、制御回路10は、電荷を移動させる下記の2つの移動手段(第1移動手段、第2移動手段)を備える。
【0039】
即ち、第1移動手段は、供給電流のオフ時、即ち、第1スイッチSW1のオフ時に、平滑コンデンサC1上の電荷の少なくとも一部を蓄電コンデンサC2上に移動させる。図2に示す例で言えば、第1移動手段は、時刻「t4」に、平滑コンデンサC1上の電荷「q1」の少なくとも一部(「q1」−「q4」)を蓄電コンデンサC2上に移動させる。但し、上記式(1)に示すように、平滑コンデンサC1の静電容量c1、蓄電コンデンサC2の静電容量c2の関係から、実際に、蓄電コンデンサC2上には電荷「q5」が蓄えられる。なお、第1移動手段は、入力検出回路12及び起動時遅延回路14に相当する。
【0040】
また、第2移動手段は、供給電流の再度のオン時、即ち、第1スイッチSW1のオン時よりも前に、第1移動手段によって蓄電コンデンサC2上に移動させた電荷の少なくとも一部を平滑コンデンサC1上に再度移動させる。図2に示す例で言えば、第2移動手段は、時刻「t8」よりも前の時刻「t6」に、第1移動手段によって蓄電コンデンサC2上に移動させた電荷「q5」の少なくとも一部(「q5−q6」)を平滑コンデンサC1上に再度移動させる。但し、上記式(2)に示すように、平滑コンデンサC1の静電容量c1、蓄電コンデンサC2の静電容量c2の関係から、実際に、平滑コンデンサC1上には電荷「q2」が蓄えられる。なお、第2移動手段は、入力検出回路12及びOFFタイマー回路16に相当に相当する。
【0041】
以上、本発明の一実施形態による電源回路1によれば、正常な回路動作上及び安全規格上の問題を生じさせることなく、起動時の消費電力及び突入電流を低減させることができるようになる。
【0042】
なお、制御回路10は、第3スイッチSW3のオン後であって蓄電コンデンサC2から平滑コンデンサC1への電荷の移動が略完了した時に、第1スイッチSW1を再度オンすることが好ましい。図2に示す例で言えば、時刻「t7」と時刻「t8」の間の時間をゼロにすることが好ましい。これにより、蓄電コンデンサC2から移動して蓄積された平滑コンデンサC1上の電荷が、負荷抵抗などによって消費され目減りすることがなくなるため、起動時の消費電力及び突入電流を一層低減さることができる。
【0043】
なお、本発明の実施形態による電源回路1の制御回路10の各処理を実行するためのプログラムをコンピューター読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピューターシステムに読み込ませ、実行することにより、上記制御回路10に係る上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピューターシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリー等の書き込み可能な不揮発性メモリー、CD−ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0044】
さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリー(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0045】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…電源回路、10…制御回路、12…入力検出回路、14…起動時遅延回路、16…OFFタイマー回路、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、SW3…第3スイッチ、C1…平滑コンデンサ、C2…蓄電コンデンサ、D1…第1整流素子、D2…第2整流素子、R1…放電抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷への供給電流を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサに対し並列に接続された蓄電コンデンサと、
前記供給電流のオフ時に、前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷の少なくとも一部を前記蓄電コンデンサ上に移動させる第1移動手段と、
前記供給電流の再度のオン時前に、前記第1移動手段によって前記蓄電コンデンサ上に移動させた電荷の少なくとも一部を前記平滑コンデンサ上に移動させる第2移動手段と
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
電源と負荷の間に接続され、前記電源から供給される供給電流の流れをオン/オフする第1スイッチと、
前記第1スイッチと前記負荷の間に、前記負荷に対し並列に接続された平滑コンデンサと、
前記第1スイッチと前記負荷の間に、前記負荷に対し並列に接続された蓄電コンデンサと、
前記平滑コンデンサと前記蓄電コンデンサとの間に接続され、前記平滑コンデンサから前記蓄電コンデンサへの整流電流の流れをオン/オフする第2スイッチと、
前記平滑コンデンサと前記蓄電コンデンサとの間に接続され、前記蓄電コンデンサから前記平滑コンデンサへの整流電流の流れをオン/オフする第3スイッチと、
前記第1スイッチのオフ時に、前記第2スイッチをオンして、前記第1スイッチのオン中に前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷の少なくとも一部を前記蓄電コンデンサに移動させるとともに、前記第1スイッチの再度のオン時前に、前記第2スイッチをオフしかつ前記第3スイッチをオンして、前記蓄電コンデンサに移動させた電荷の少なくとも一部を前記平滑コンデンサに移動させる制御部と
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第3スイッチのオン後であって前記蓄電コンデンサから前記平滑コンデンサへの電荷の移動が略完了した時に、前記第1スイッチを再度オンすることを特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記蓄電コンデンサに残留する電荷の少なくとも一部を放電させる放電抵抗を更に備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電源回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電源回路を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
電源から負荷への供給電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに対し並列に接続された蓄電コンデンサとを備える電子機器における制御方法であって、
前記供給電流のオフ時に、前記平滑コンデンサに蓄えられた電荷の少なくとも一部を前記蓄電コンデンサ上に移動させるステップと、
前記供給電流の再度のオン時前に、前記第1移動手段によって前記蓄電コンデンサ上に移動させた電荷の少なくとも一部を前記平滑コンデンサ上に移動させるステップと
を有することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−147521(P2012−147521A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2093(P2011−2093)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】