説明

電源瞬停発生装置

【課題】 CPUを搭載し、商用電源を使用する電子機器について、商用電源の瞬停(停電)時のデータの喪失、プログラムの破戒、電子機器の誤動作等を試験するため、様々な態様の瞬停状態を発生する電源瞬停発生装置を提供すること。
【解決手段】 商用電源11と電子機器13の間の給電線路には、IGBT等からなる交流スイッチ12を接続してある。交流スイッチ12は、制御回路15により制御されて給電線路を開閉して、模擬的に瞬停状態を発生する。制御回路15には、入力装置16により様々な瞬停態様条件、例えば瞬停回数、瞬停時間、瞬停間隔、瞬停開始位相等を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、CPUを搭載した家庭用、産業用、医療用等の電子機器の電源瞬停(瞬断)の影響を試験するための電源瞬停発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用、産業用、医療用等の多くの電子機器は、CPU(Control Processing Unit)を搭載し、そのCPUによって動作を制御している。それらの電子機器は、電源に商用電源(周波数50/60Hz)を使用しているものが多いが、商用電源が停電するとCPUの動作に必要なデータが喪失したり、プログラムが破壊されたりして誤動作することがある。そのため、例えばパーソナルコンピュータ(パソコン)は、電池等の補助電源を設けて商用電源が瞬停するとその補助電源から給電する方策が取られているものがある(例えば特許文献1参照)。また補助電源が所定の電圧を維持している間にパソコンのデータを外部メモリへ避難させる方策が取られているものもある(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−189504号公報
【特許文献2】特開平5−189099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CPUを搭載した電子機器が、例えば前記パソコンのように商用電源の瞬停時における誤動作の対策を講じている場合、商用電源から補助電源への切り替えに要する許容時間や、パソコンのデータを外部メモリへ避難させる許容時間等について試験する装置は、従来見当たらない。
本願発明は、この点に鑑み、CPUを搭載した電子機器における商用電源の瞬停時及び停電回復後の給電再開時の影響について試験するために、様々な態様の瞬停状態を模擬的に発生することのできる電源瞬停発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の電源瞬停発生装置は、商用電源と電子機器の間に接続した交流スイッチ、その交流スイッチの開閉を制御する制御回路、その制御回路に瞬停態様条件を設定する入力装置を備えていることを特徴とする。
請求項2に記載の電源瞬停発生装置は、請求項1に記載の電源瞬停発生装置において、前記交流スイッチは、2個のFET又はFETの複合素子を逆向きに直列に接続し、各FET又はFETの複合素子にダイオードを逆極性となるように並列に接続してあることを特徴とする。
請求項3に記載の電源瞬停発生装置は、請求項1に記載の電源瞬停発生装置において、前記交流スイッチは、2個のIGBTを逆向きに直列に接続し、各IGBTにダイオードを逆極性となるように並列に接続してあることを特徴とする。
請求項4に記載の電源瞬停発生装置は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の電源瞬停発生装置において、前記瞬停態様条件は、瞬停時間、瞬停間隔、瞬停回数、瞬停開始位相若しくは給電開始位相、又はそれらの2つ以上の組み合わせからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の電源瞬停発生装置は、商用電源と電子機器の間に交流スイッチを接続し、その交流スイッチの開閉を、制御回路に設定した商用電源の様々な瞬停態様条件にしたがって制御することにより、様々な態様の瞬停状態を発生できるから、電子機器の瞬停の影響について様々な態様の瞬停試験をすることができる。したがって本願発明の電源瞬停発生装置は、電子機器の設計、開発・試作の段階、或いは電子機器の設置時、保守点検時等に、電子機器の様々な瞬停態様について瞬停の影響をきめ細かく容易に試験することができる。
本願発明の電源瞬停発生装置は、交流スイッチにFET、或いはIGBT等のFETの複合素子を用い、2個のFET等を逆向きに直列に接続し、各FET等にダイオードを逆極性となるように並列に接続した回路を用いるから、容易に商用電源電流(交流電流)を所定時間流したり、所定時間遮断したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図4により本願発明の実施例を説明する。なお各図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
【実施例1】
【0008】
図1は、本願発明の実施例1の電源瞬停発生装置の構成を示し、商用電源が単相の場合の例である。
図1において、1は電源瞬停発生装置、11は商用電源(周波数50/60Hz)、12は給電線路遮断用の交流スイッチ、13はCPUを搭載した電子機器、14は商用電源電圧の0Vを検出するゼロクロス検出センサ、15はCPUからなる制御回路、16は入力装置(例えばパソコン)である。Se1は給電線路の地絡検出用の電流センサ、Se2は給電線路の短絡検出用の電流センサである。
電源瞬停発生装置1は、商用電源11と電子機器13の間に接続してあり、交流スイッチ12は、商用電源11と電子機器13の給電線路に接続してある。交流スイッチ12は、制御回路15によって制御され、給電線路を開路して電子機器13への給電を遮断して商用電源11の瞬停(瞬断即ち停電)状態を模擬的に作り出すとともに、給電線路を閉路して給電の再開状態を作り出す。制御回路15は、入力装置16により設定された様々な態様の瞬停状態を作り出す条件、即ち瞬停態様条件に対応した制御信号を発生して交流スイッチ12の開閉を制御する。
なお地絡検出用の電流センサSe1と短絡検出用の電流センサSe2は、給電線路に地絡や短絡が発生したとき、例えば制御回路15によって交流スイッチ12を制御して給電線路を開路し、電子機器13への給電を遮断する。
【0009】
ここで図3により入力装置16によって設定する瞬停態様条件について説明する。
まず図3(a)について説明する。図3(a)は、商用電源11の様々な瞬停態様を示す図で、縦軸は電圧を示し、横軸は時間(位相)を示す。
T11,T12,T13は、夫々瞬停時間(停電時間)を示し、T21,T22は、瞬停間隔(停電間隔)を示す。例えば、瞬停時間T11,T12,T13の瞬停が、瞬停間隔T21,T22で3回発生する態様の瞬停を模擬する場合には、入力装置16によって前記瞬停時間と瞬停間隔を制御回路15に設定する。その設定後電源瞬停発生装置1のスタートボタン(図示せず)を押すと、制御回路15は、その瞬停態様条件に対応する制御信号を発生して、交流スイッチ12を開閉する。
【0010】
次に図3(b)より商用電源11の瞬停が発生するときの位相例について説明する。
図3(b)は、商用電源11の瞬停が、電圧波形の位相θが0,θ1,θ2,・・,θ8のいずれかにおいて発生する瞬停態様を模擬する例である。制御回路15には、図3(a)の瞬停態様条件と同時に図3(b)の瞬停態様条件、すなわち瞬停開始位相を設定する。この瞬停開始位相の設定は、瞬停が回復して電子機器16への給電を再開するときの給電開始位相の設定にも適用できる。その際、商用電源11の電圧の0点(ゼロクロス点)は、ゼロクロス検出センサ14によって検出する。
【0011】
以上のように制御回路15には、入力装置16により瞬停時間、瞬停間隔、瞬停回数、瞬停発生位相、給電開始位相等の瞬停態様条件を、各別に或いは2以上組み合わせて設定することができる。したがって電源瞬停発生装置1は、制御回路15に設定した瞬停態様条件に対応して交流スイッチ12を開閉することにより、様々な態様の瞬停状態を模擬的に発生することができる。
商用電源11の瞬停によって発生する電子機器13の制御に必要なデータの喪失やプログラムの破戒の有無、電子機器13の誤動作有無等の試験は、電源瞬停発生装置1により電子機器13に様々な態様の瞬停状態を発生して行う。電子機器13の誤動作有無等の判定は、瞬停回復後の電子機器13の動作状態を確認することにより行ってもよいし、図示しない判定手段によって自動的に行ってもよい。
【0012】
ここで瞬停態様条件の具体的設定例について説明する。
例えば、瞬停時間は、1mS〜1000mS(1mS単位)、瞬停間隔は、1S〜120S(1S単位)、瞬停回数は、1〜1000回、瞬停発生位相は、0〜360度(2π)(1度単位)で設定する。
【実施例2】
【0013】
図2は、本願発明の実施例2の電源瞬停発生装置の構成を示し、商用電源が3相の場合の例である。
図2の電源瞬停発生装置は、図1の電源瞬停発生装置と、交流スイッチ121,122をR相の給電線路とT相の給電線路に接続してある点と、短絡検出用の電流センサSe21,Se22をR相の給電線路とT相の給電線路に配置してある点で相違するが、他は、図1と同じである。
【実施例3】
【0014】
図4は、図1の交流スイッチ12、及び図2の交流スイッチ121,122の実施例である。
なお図4は、交流スイッチ12について記載してあるが、交流スイッチ121,122も同様の構成である。
交流スイッチ12は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)1,2、ダイオードD1,D2によって構成し、両IGBTは、逆向きに直列に接続し(エミッタとエミッタを接続する)、両IGBTのゲートは、共通に接続して制御回路15に接続してある。またIGBT1,2には、夫々ダイオードD1,D2を逆極性となるように並列に接続してある(IGBT1とダイオードD1は導通方向が逆になり、IGBT2とダイオードD2も導通方向が逆になる)。IGBT1,2は、ゲート電圧が、制御回路15からゲートGへ送られている間導通し、ゲート電圧が停止すると非導通になる。IGBT1,2が導通すると、交流スイッチ12は給電線路を閉路して、電子機器13への給電を開始する。またIGBT1,2が非導通になると、交流スイッチ12は給電線路を開路して、電子機器13への給電を遮断する。
交流スイッチ12は、IGBTに限らず、FET(電界効果トランジスタ)或はIGBT等のFETの複合素子であってもよい。
【0015】
ここで図4の交流スイッチ12の動作を説明する。
交流スイッチ12のゲートGにゲート電圧が印加されると、IGBT1,2は導通する。この状態で、例えば給電線路のW1側が正、W2側が負になると、電流は、W1―IGBT1―ダイオードD2―W2を通って流れ、W1側が負、W2側が正になると、電流は、W2―IGBT2―ダイオードD1―W1を通って流れる。即ち給電線路の電流は、一方のダイオードと他方のIGBT、及び一方のIGBTと他方のダイオードを介してW1からW2へ、及びW2からW1へ流れる。したがって交流スイッチ12は、商用電源の電流(交流電流)を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の実施例1の電源瞬停発生装置を示す。
【図2】本願発明の実施例2の電源瞬停発生装置を示す。
【図3】商用電源の瞬停の態様を示す。
【図4】本願発明の交流スイッチの実施例を示す。
【符号の説明】
【0017】
1 電源瞬停発生装置
11 商用電源
12,121,122 交流スイッチ
13 電子機器
14 ゼロクロス検出センサ
15 制御回路
16 入力装置
Se1,Se2,Se21,Se22 電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源と電子機器の間に接続した交流スイッチ、その交流スイッチの開閉を制御する制御回路、その制御回路に瞬停態様条件を設定する入力装置を備えていることを特徴とする電源瞬停発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源瞬停発生装置において、前記交流スイッチは、2個のFET又はFETの複合素子を逆向きに直列に接続し、各FET又はFETの複合素子にダイオードを逆極性となるように並列に接続してあることを特徴とする電源瞬停発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電源瞬停発生装置において、前記交流スイッチは、2個のIGBTを逆向きに直列に接続し、各IGBTにダイオードを逆極性となるように並列に接続してあることを特徴とする電源瞬停発生装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の電源瞬停発生装置において、前記瞬停態様条件は、瞬停時間、瞬停間隔、瞬停回数、瞬停開始位相若しくは給電開始位相、又はそれらの2つ以上の組み合わせからなることを特徴とする電源瞬停発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−304437(P2006−304437A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120412(P2005−120412)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(592026473)株式会社昭和電業社 (6)
【出願人】(595106947)
【Fターム(参考)】