説明

電源素子の状態計測装置及び直流電源の状態監視装置

【課題】電源素子の充電時と放電時における出力電圧や温度のような状態量を簡易かつ安価に計測できる状態計測装置を提供する。
【解決手段】セル計測回路11は、電池セルBの両端間に計測用コンピュータ12と、コンデンサC1とが互いに並列に接続されている。起動フォトカプラ14の出力側14bは、計測用コンピュータ12と、基準電圧発生IC15と、温度センサ16に接続されている。基準電圧発生IC15と温度センサ16の出力端子は計測用コンピュータ12の入力端子に接続されている。計測用コンピュータ12は、出力フォトカプラ18の入力側18aに接続されている。起動フォトカプラ14からの起動信号を受けて、計測用コンピュータ12は、各電池セルBnの出力電圧を検出し、温度センサ16から温度を読み込み、基準電圧発生ICから読み込んだ基準電圧に基づいて出力電圧と温度の大きさの演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池や電気二重層コンデンサのような2〜5.5v程度の範囲の電圧を蓄電し放電させる電源素子の出力電圧や温度のような状態量を検出する状態計測装置と、複数の電源素子を直列接続した電気自動車やハイブリッドカー等の電源として使用される直流電源の状態を監視する直流電源の状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池や電気二重層コンデンサのような電源素子を多数直列接続した直流電源については、個々の素子電圧にばらつきが生じやすく、そのために電源素子の寿命が低下するという問題があった。そのため、電源素子の充電時や放電時には、個々のセル単位で電圧や温度を監視し、セル電圧のばらつきを抑えることが必要となる。しかし、個々の電源素子の電圧を測定しようとした場合、測定のための配線が非常に複雑になり、測定が煩雑で測定コストが高価になり、また複数の電源素子を直列接続することにより取り扱い電圧が非常に高くなるという問題があった。これに対して、例えば特許文献1に示すように、フライングキャパシタを利用して個々のセル電圧を測定する装置があるが、この計測装置は切り替え回路が複雑になると共にリレー等多数の高価な部品が必要になるため、装置が非常に高価になるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−289263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、電源素子の充電時と放電時における出力電圧や温度のような状態量を簡易かつ安価に計測できる状態計測装置とを提供することを目的とする。また、本発明は、複数の電源素子を直列接続した直流電源における個々の電源素子の出力電圧や温度状態を簡易かつ安価に監視できる直流電源の状態監視装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために請求項1の発明の構成上の特徴は、電源素子から給電されて電源素子の充電時と放電時の状態を計測する状態計測装置であって、外部からの検出開始入力を受けて起動信号を出力する起動フォトカプラと、起動信号に応じて基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、起動信号に応じて電源素子の出力電圧を検出し、基準電圧発生手段から基準電圧を読み込み、基準電圧に基づいて出力電圧の大きさを演算することにより電圧演算信号として出力する計測制御手段と、計測制御手段からの電圧演算信号を受けて、電圧演算信号として出力する出力フォトカプラとを設けたことにある。ここで、電源素子としては、リチウムイオン電池のような二次電池や、電気二重層コンデンサ等のスーパーキャパシタである。また、電源素子の状態とは、出力電圧や温度である。
【0005】
本発明においては、電源素子の充電時と放電時に外部から検出開始入力が送信されると、起動フォトカプラがこれを受けて電源素子の状態の検出を開始するための起動信号を出力する。この起動信号に応じて基準電圧発生手段が基準電圧を発生し、計測制御手段が電源素子の出力電圧を検出し、さらに、計測制御手段が、基準電圧発生手段から基準電圧を読み込んでこの基準電圧に基づいて出力電圧の大きさを演算することにより電圧演算信号として出力する。計測制御手段からの電圧演算信号を受けて、出力フォトカプラが電圧演算信号として出力する。その結果、本発明においては、高速で電源素子の出力電圧を計測することができる。また、本発明においては、起動フォトカプラ、出力フォトカプラ、基準電圧発生装置、計測制御手段等の安価な部品のみで構成されるため、電源素子の状態計測装置が安価に提供される。
【0006】
また、請求項1の発明において、起動信号に応じて電源素子の温度を検出して温度検出値を出力する温度検出手段を設け、計測制御手段が、温度検出手段からの温度検出値を読み込み、基準電圧に基づいて温度検出値の大きさを演算することにより温度演算信号として出力し、温度演算信号を受けて、出力フォトカプラが温度演算信号として出力することができる。これにより、状態計測装置による電圧演算信号の演算出力に加えて、起動信号を受けて温度検出手段によって電源素子の温度が検出され、計測制御手段が温度検出手段からの温度検出値を読み込み、基準電圧に基づいて温度検出値の大きさを演算することにより温度演算信号として出力し、出力フォトカプラから温度演算信号として出力することができる。その結果、本発明によれば、電源素子の状態量として上記出力電圧に加えて温度を得ることができるので、電源素子の状態をより詳しく得ることができる。
【0007】
また、請求項3の発明の構成上の特徴は、直列接続された複数の電源素子からなる直流電源の状態を監視する状態監視装置であって、複数の電源素子のそれぞれに請求項1に記載の状態計測装置を接続し、直流電源の充電時あるいは放電時を検知して検知信号を出力する充放電検知手段と、充放電検知手段からの検知信号を受けて、起動フォトカプラに検出開始入力を送信し、複数の状態計測装置からの電圧演算信号を出力フォトカプラから受信する監視制御手段とを設けたことにある。
【0008】
上記請求項3の発明においては、直列接続された複数の電源素子のそれぞれに請求項1に記載の状態計測装置を接続した状態で、直流電源の充電時あるいは放電時に、充放電検知手段によって検知信号が出力される。充放電検知手段からの検知信号を受けて、監視制御手段から個々の状態計測装置の起動フォトカプラに検出開始入力が送信され、起動フォトカプラがこれを受けて電源素子の状態の検出を開始するための起動信号を出力する。この起動信号を受けて請求項1に記載の各状態計測装置において、検出した電源素子の出力電圧について基準電圧発生手段からの基準電圧に基づいて出力電圧の大きさを演算することにより電圧演算信号として出力され、出力フォトカプラが電圧演算信号として送信し、監視制御手段によって受信される。
【0009】
その結果、本発明においては、直流電源の各電源素子は直列接続されており、各電源素子間が絶縁されているため、状態計測装置による計測時に互いの電源素子が他から影響を受けることなく直流電源の各電源素子の状態を簡易かつ正確に監視することができる。また、本発明においては、状態監視装置は、状態計測手段、充放電検知手段、監視制御手段等の安価な部品のみで構成されるため、フライングキャパシタ等を用いた従来の監視装置に比べて大幅に安価に提供される。
【0010】
また、請求項3の発明において、複数の電源素子を複数組に分けて、各組ごとにそれぞれ1つの温度検出手段を設け、いずれかの状態計測装置の起動フォトカプラからの起動信号を受けて温度検出手段が温度検出信号を出力し、温度検出信号を受けた計測制御手段により基準電圧に基づいて演算された温度演算信号を、出力フォトカプラを通して監視制御手段により受信することができる。これにより、複数の電源素子を複数組に分けた各組から、それぞれ1つの温度検出手段に基づいて温度検出値が得られ、温度検出値と基準電圧に基づいて演算された温度演算信号が出力フォトカプラから送信され、監視制御手段により受信される。その結果、温度検出手段の数を減らしつつ、所定の温度情報が得られる。
【0011】
また、請求項5の発明の構成上の特徴は、直列接続された複数の電源素子からなる直流電源の状態を監視する状態監視装置であって、複数の電源素子のそれぞれに請求項2に記載の状態計測装置を接続し、直流電源の充電時あるいは放電時を検知して検知信号を出力する充放電検知手段と、充放電検知手段からの検知信号を受けて、起動フォトカプラに検出開始入力を送信し、複数の状態計測装置からの電圧演算信号と温度演算信号を出力フォトカプラから受信する監視制御手段とを設けたことにある。
【0012】
上記請求項5の発明においては、直列接続された複数の電源素子のそれぞれに請求項2に記載の状態計測装置を接続した状態で、直流電源の充電時あるいは放電時に、充放電検知手段によって検知信号が出力される。充放電検知手段からの検知信号を受けて、監視制御手段から個々の状態計測装置の起動フォトカプラに検出開始入力が送信され、起動フォトカプラがこれを受けて電源素子の状態の検出を開始するための起動信号を出力する。この起動信号を受けて、請求項2に記載の各状態計測装置において、検出した電源素子の出力電圧と温度検出手段からの温度検出値について、基準電圧発生手段からの基準電圧に基づいて出力電圧と温度の大きさを演算することにより電圧演算信号と温度演算信号して出力され、出力フォトカプラが電圧演算信号と温度演算信号として送信し、各監視制御手段によって受信される。
【0013】
その結果、本発明においては、直流電源の各電源素子は直列接続されており、各電源素子間が絶縁されているため、状態計測装置による計測時に互いの電源素子が他から影響を受けることなく直流電源の各電源素子の状態を簡易かつ正確に監視することができる。また、本発明においては、状態監視装置が、状態計測手段、充放電検知手段、監視制御手段等の安価な部品のみで構成されるため、フライングキャパシタ等を用いた従来の監視装置に比べて大幅に安価に提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、状態計測装置により、高速で電源素子の出力電圧を計測することができる。また、本発明においては、起動フォトカプラ、出力フォトカプラ、基準電圧発生装置、計測制御手段等の安価な部品のみで構成されるため、電源素子の状態計測装置が安価に提供される。
【0015】
また、本発明においては、複数の電源素子を直列接続した直流電源の充放電時に、状態監視装置により直流電源の各電源素子の出力電圧や温度を、充放電時の電圧変動の影響を受けることなく計測することができ、各電源素子の状態を簡易かつ正確に監視することができる。また、状態監視装置は、状態計測装置、充放電検知手段、監視制御手段等の安価な部品のみで構成されるため、従来の状態監視装置に比べて大幅に安価に提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、実施例1であるリチウムイオン電池を多数直列接続した直流電源の状態監視装置を回路図により示し、図2は個々の電池に接続されて電池の出力電圧と温度を計測する状態計測装置であるセル計測回路を回路図により示したものである。直流電源の状態監視装置10は、多数の単一のリチウムイオン電池B1〜Bn(以下、電池セルBと記す。)を直列接続した直流電源1の各電池セルB毎にセル計測回路11(1)〜11(n)が接続されており、セル計測回路11(1)〜11(n)は直流電源1の状態の監視を行う監視用マイクロコンピュータ21(以下、監視用コンピュータと記す。)に接続されている。なお、セル計測回路11(1)〜11(n)はいずれも同一構成であり、以下、セル計測回路11として説明する。
【0017】
セル計測回路11は、電池セルBの両端に接続される図2の矢印X−X方向の部分であり、電池セルBの+端子に接続される(+)側リード線と−端子に接続される(−)側リード線を有し、両リード線間に計測制御手段である計測制御用マイクロコンピュータ12(以下、計測用コンピュータと記す)の給電端子12aと、電池セルBの電圧を計測用コンピュータ12に給電するためのコンデンサC1とが互いに並列に接続されている。(+)側ラインには起動フォトカプラ14の受光トランジスタである出力側14bの一端が接続されている。起動フォトカプラ14の発光ダイオードである入力側14aは監視用コンピュータ21の出力端子21aに接続されている。出力側14bの他方から延びたリード線は途中で分岐して、一方が抵抗r1を介して−側リード線に接続されると共に抵抗r1の前で計測用コンピュータ12の起動入力端子12bに接続されている。
【0018】
また、出力端子14bの他方から延びたリード線は途中で分岐し、一方は抵抗r2を介して基準電圧発生IC15の給電端子15aに接続され、他方は温度検出手段である温度センサ16の給電端子16aに接続され、基準電圧発生IC15と温度センサ16から(−)端子側リード線に接続されている。基準電圧発生IC15の出力端子15bは、計測用コンピュータ12の電圧入力端子12cに接続されると共に基準電圧供給用のコンデンサC2を介して−側リード線に接続されている。基準電圧発生IC15とコンデンサC2により基礎電圧発生手段が構成される。温度センサ16の出力端子16bは、計測用コンピュータ12の温度入力端子12dに接続されている。計測用コンピュータ12の出力端子12eは、出力フォトカプラ18の発光ダイオードである入力側18aに接続されている。入力側18aの他端は、抵抗r3を介して(−)側リード線に接続されている。出力フォトカプラ18の受光トランジスタである出力端子18bは、監視用コンピュータ21の入力端子21bに接続されている。
【0019】
監視用コンピュータ21は、セル計測回路11(1)〜11(n)から送信された各電池セルBa〜Bnの出力電圧や温度データを管理部門へ送信する送信端子21dと、管理部門からの指令信号等を受信する受信端子21eを設けている。直流電源1の充放電線には、直流電源1の充電時と放電時の電流を検出する充放電検知手段である充放電電流センサ22が接続されており、充放電電流センサ22の出力は監視用コンピュータ21の充放電入力端子21cに接続されている。直流電源1は、充電時には充電電源(図示しない)から給電され、放電時には負荷であるハイブリッド車等の駆動回路(図示しない)に放電される。
【0020】
上記構成の実施例1においては、監視用コンピュータ21は管理部門からの指令信号等を受信する受信端子21eよりの開始信号を受けて、監視用コンピュータ21から個々のセル計測回路装置11(1)〜11(n)の起動フォトカプラ14に検出開始入力が送信され、起動フォトカプラ14がこれを受けて電池セルBの状態の検出を開始するための起動信号を出力する。この起動信号を受けて各セル計測回路11の基準電圧発生IC15が基準電圧を発生して計測用コンピュータ12に入力する。計測用コンピュータ12は、各電池セルBnの出力電圧を検出し、基準電圧発生ICから読み込んだ基準電圧に基づいて出力電圧の大きさの演算を行う。計測用コンピュータ12は、基準電圧を読み込んでAD変換してデジタル信号とし、コンピュータの分解能に沿って処理を行い、電池セルBの出力電圧と比較演算することにより10msec程度の短時間で電圧演算信号を求めて出力フォトカプラ18に出力する。詳しくは、電池セルBの電圧は、AD変換の最大値を基準電圧をAD変換した読み取り値で割った値に基準電圧を掛けることにより求められる。電圧演算信号を受けて、出力フォトカプラ18が電圧演算信号として送信し、監視用コンピュータ21が受信する。
【0021】
また、起動信号を受けて温度センサ16が電池セルBの温度を検出して検出信号を計測用コンピュータ12に出力する。計測用コンピュータ12は、温度センサ16からの温度検出値を読み込み、基準電圧発生ICから読み込んだ基準電圧に基づいて電池温度の大きさの演算を行う。計測用コンピュータ12は、読み込んだ温度検出値とコンピュータの分解能に沿って処理された基準電圧と比較演算することにより10msec程度の短時間で温度検出値の大きさを表す温度演算信号を求めて出力フォトカプラ18に出力する。詳しくは、電池セルBの温度は、温度センサ16の電圧値をAD変換した読み取り値を基準電圧をAD変換した読み取り値で割った値に基準電圧を掛けることにより電圧値を求め、さらにこの電圧値に基づいて記憶装置に記憶された電圧と温度との関係から温度を求めることができる。出力フォトカプラ18から温度演算信号として監視用コンピュータ21に送信される。
【0022】
その結果、実施例1においては、計測用コンピュータ12の計測処理により、直列接続された各電池セルBの出力電圧と温度を高速で得ることができ、充放電時の電圧変動の影響を受けることはない。また、本実施例1においては、セル計測回路11は、計測用コンピュータ12、起動フォトカプラ14、出力フォトカプラ18、基準電圧発生IC15、温度センサ16、コンデンサ、抵抗のような安価な部品で構成されているので、非常に安価に提供される。そのため、この安価なセル計測回路11と、充放電電流センサ22と、監視用コンピュータ21を組み合わせた直流電源の状態監視装置10も、フライングキャパシタ等を用いた従来の電池監視装置に比べて大幅に安価に提供される。また、実施例1においては、各電池セルBは直列接続されており、各電池セルB間が絶縁されているため、セル計測回路11による計測制御時に、互いの電池セルBが他から影響を受けることがなく、直流電源1の各電池セルBの状態を簡易かつ正確に監視することができる。さらに、実施例1においては、計測用コンピュータ12、基準電圧発生IC15、温度センサ16を電池セルBの電圧で駆動できるため、電源を別途用意する必要がないので、セル計測回路11の価格がさらに低く抑えられる。
【0023】
次に、実施例1の変形例1であるセル計測回路11Aについて説明する。変形例1は、図3に示すように、実施例1のセル計測回路11において、温度センサ16を省いたものであり、他の構成は変わりない。これにより、変形例1においては、セル計測回路11Aにより電池セルBの出力電圧のみを計測するもので、温度は検知しないことになるが、出力電圧のみでも電池セルBの状態を把握することが可能なため、電池セルBの状態管理の用途に応じて採用することも可能である。変形例1においては、温度センサと温度処理に要するコストを削減できる。
【0024】
次に、実施例1の変形例2である直流電源の状態監視装置について説明する。変形例2は、図4に示すように、直列接続された電池セルを複数個ずつ(変形例2では3個ずつ)に分けて複数の組G1〜Gxとし、各組に1個ずつの温度センサ16(1)〜16(x)を配置し、状態監視装置30のセル計測回路31を変形例1に示したものとし、各組のうちの1つのセル計測回路31(変形例2では各組の2番目の回路とする)の計測用コンピュータ12に1個の温度センサ16を接続したものである。
【0025】
変形例2においては、個々の電池セルBについて出力電圧の計測は行われ、電池セルBの温度については、複数個の電池セルをまとめた組G1〜Gx毎に計測されるようになっている。その結果、変形例2においては、全ての電池セルBについて温度の計測は行われないが、電池セルの組G1〜Gx毎に温度計測が行われるため、温度センサのコストと計測の手間を減らしつつ、実施例1に比べて大まかではあるが電池セルBの温度情報も得られるので、直流電源の監視の用途に応じて使用することができ、変形例1より多くの情報が得られる。
【0026】
次に、実施例2の直流電源の状態監視装置について説明する。実施例2は、実施例1の直流電源の状態監視装置10において、セル計測回路を図5の回路図に示す構成にしたものである。実施例2の状態監視装置30の構成について、その他に変更はない。セル計測回路31は、(+)側リード線と(−)側リード線間に計測用コンピュータ32が給電端子32aにて接続されており、コンデンサC1、起動フォトカプラ14と抵抗r1、出力フォトカプラ18と抵抗r3の接続については実施例1と同様である。起動フォトカプラ14の出力端子14bの他方から延びたリード線は途中で分岐することなく抵抗r1を介して−側リード線に接続されると共に抵抗r1の前で計測用コンピュータ32の入力端子32bに接続されているのみである。
【0027】
さらに、計測用コンピュータ32の電圧供給端子32cから延びたリード線は途中で分岐し、一方は抵抗r2を介して基準電圧発生IC15の給電端子15aに他方は温度センサ16の給電端子16aにそれぞれ並列に接続され、基準電圧発生IC15と温度センサ16から−端子側リード線に接続されている。基準電圧発生IC15の出力端子15bは、計測用コンピュータ32の電圧入力端子32dに接続されると共に基準電圧供給用のコンデンサC2を介して−側リード線に接続されている。温度センサ16の出力端子16bは、計測用コンピュータ32の温度入力端子32eに接続されている。計測用コンピュータ32の出力端子32fは、出力フォトカプラ18の発光ダイオードである入力側18aに接続されている。実施例2では、計測用コンピュータ32は給電開始スイッチ機能を有しており、起動信号の入力を受けて、給電開始スイッチ機能により、未給電状態の基準電圧発生IC15と温度センサ16を電池セルBに接続させてセル電圧を給電させ、起動信号の入力停止により、基準電圧発生IC15と温度センサ16への電池セルBの接続を停止させるようになっている。そのため、基準電圧発生手段としては、基準電圧発生IC15とコンデンサC2に加えて計測用コンピュータ32の給電開始スイッチ機能を有する給電開始スイッチ部が含まれる。また、温度検出手段についても、温度センサ16に加えて計測用コンピュータ32の給電開始スイッチ部が含まれる。
【0028】
上記構成の実施例2においては、監視用コンピュータ21は管理部門からの指令信号等を受信する受信端子21eよりの開始信号を受けて、監視用コンピュータ21から個々のセル計測回路31(1)〜31(n)の起動フォトカプラ14に検出開始入力が送信され、起動フォトカプラ14がこれを受けて電池セルBの状態の検出を開始するための起動信号を出力する。この起動信号を受けて計測用コンピュータ32は、給電開始スイッチ機能により、未給電状態の基準電圧発生IC15と温度センサ16を電池セルBに接続させてセル電圧を給電させる。これにより、基準電圧発生IC15が基準電圧を発生して計測用コンピュータ32に入力し、温度センサ16が電池セルBの温度を検出して計測用コンピュータ32に入力する。
【0029】
計測用コンピュータ32は、実施例1と同様、基準電圧を読み込んでAD変換してデジタル信号とし、コンピュータの分解能に沿って処理を行い、検出した電池セルBの出力電圧と比較演算することにより10msec程度の短時間で電圧演算信号を求めて出力フォトカプラ18に出力する。電圧演算信号を受けて、出力フォトカプラ18が電圧演算信号として送信し、監視用コンピュータ21に受信される。また、計測用コンピュータ32は、温度センサ16からの温度検出値を読み込み、基準電圧発生ICから読み込んだ基準電圧に基づいて電池温度の大きさの演算を行う。計測用コンピュータ32は、実施例1と同様、読み込んだ温度検出値とコンピュータのAD変換の分解能に沿って処理された基準電圧と比較演算することにより10msec程度の短時間で温度検出値の大きさを表す温度演算信号を求めて出力フォトカプラ18に出力する。温度演算信号を受けて、出力フォトカプラ18が温度演算信号として送信し、監視用コンピュータ21に受信される。
【0030】
その結果、実施例2においても、実施例1と同様、状態監視装置30にセル計測回路31を採用したことにより、電池セルBの充電時と放電時における各電池セルBの出力電圧と温度を簡易かつ正確に計測し監視することができる。また、実施例2においては、計測用コンピュータ32の給電開始スイッチ機能により、電池セルBの基準電圧発生IC15と温度センサ16へ接続を制御しているので、計測制御時間が実施例1に比べて長くなるが、充電時と放電時以外は基準電圧発生IC15、温度センサ16が電池セルBから切り離された非通電の待機状態となるため、消費電流がμAオーダーの低い値に抑えられ、状態監視装置30の省エネルギー効果が高められる。
【0031】
さらに、実施例2においては、計測用コンピュータ32、起動フォトカプラ14、出力フォトカプラ18、基準電圧発生装置15、温度センサ16等の安価な部品のみで構成されるため、電池セルBのセル計測回路31が安価に提供される。そのため、安価なセル計測回路31と、充放電電流センサ22と、監視用コンピュータ21を組み合わせた直流電源の状態監視装置30も、フライングキャパシタとを用いた従来の電池監視装置に比べて非常に安価に提供される。また、実施例2においては、各電池セルBは直列接続されており、各電池セルB間が絶縁されているため、セル計測回路11による計測制御時に、互いの電池セルBが他から影響を受けることがなく、直流電源1の各電池セルBの状態を簡易かつ正確に監視することができる。さらに、実施例2においては、計測用コンピュータ32、基準電圧発生IC15、温度センサ16を電池セルBの電圧で駆動できるため、電源を別途用意する必要がないので、セル計測回路31の価格がさらに低く抑えられる。
【0032】
次に、実施例2の変形例であるセル計測回路31Aについて説明する。変形例は、図6に示すように、実施例2のセル計測回路31において、温度センサ16を省いたものであり、他の構成は変わりない。これにより、変形例においては、セル計測回路31Aにより電池セルBの出力電圧のみを計測し温度は検知しないことになるが、出力電圧のみでも電池セルBの状態を把握することが可能なため、電池セルBの状態管理の用途に応じて採用することも可能である。また、変形例においては、温度センサと温度処理に要するコストを削減できる。
【0033】
なお、変形例のように各セル計測回路31から温度センサ16を省いた場合に、上記実施例1の変形例2のように、多数の電池セルBを複数の組に分けて、組毎に温度センサを設けて温度管理することも可能である。また、各実施例においては、電源素子としてリチウムイオン電池を用いているが、これに代えて他の二次電池、あるいは電気二重層コンデンサ等を用いることができる。その他、上記各実施例に示したものは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の電源素子の状態計測装置は、高速で電源素子の出力電圧や温度を計測することができ、起動フォトカプラ、出力フォトカプラ、基準電圧発生装置、計測制御手段等の安価な部品のみで構成されるため、安価に提供される。また、本発明の直流電源の状態監視装置は、複数の電源素子を直列接続した直流電源の各電源素子の出力電圧や温度を得ることができ、充放電時の電圧変動の影響を受けることなく各電源素子の状態を簡易かつ正確に監視することができ、安価な状態計測装置と、充放電検知手段と、監視制御手段等の安価な部品のみで構成されるため、従来の電池電圧等の監視装置に比べて安価に提供される。従って、本発明は有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1である直流電源の状態監視装置の概略構成を示す回路図である。
【図2】状態監視装置を構成するセル計測回路を示す回路図である。
【図3】変形例1であるセル計測回路を示す回路図である。
【図4】変形例2である直流電源の状態監視装置の概略構成を示す回路図である。
【図5】実施例2である直流電源の状態監視装置の概略構成を示す回路図である。
【図6】実施例2の変形例であるセル計測回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0036】
10,30…直流電源の状態監視装置、11,11A,31…セル計測回路、12,32…計測制御用マイクロコンピュータ、14…起動フォトカプラ、15…基準電圧発生IC、16…温度センサ、18…出力フォトカプラ、21…監視用マイクロコンピュータ、22…充放電電流センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源素子から給電されて該電源素子の充電時と放電時の状態を計測する状態計測装置であって、
外部からの検出開始入力を受けて起動信号を出力する起動フォトカプラと、
前記起動信号に応じて基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、
前記起動信号に応じて電源素子の出力電圧を検出し、前記基準電圧発生手段から基準電圧を読み込み、該基準電圧に基づいて該出力電圧の大きさを演算することにより電圧演算信号として出力する計測制御手段と、
該計測制御手段からの電圧演算信号を受けて、該電圧演算信号として出力する出力フォトカプラと
を設けたことを特徴とする電源素子の状態計測装置。
【請求項2】
前記起動信号に応じて電源素子の温度を検出して温度検出値を出力する温度検出手段を設け、
前記計測制御手段が、前記温度検出手段からの温度検出値を読み込み、前記基準電圧に基づいて該温度検出値の大きさを演算することにより温度演算信号として出力し、
該温度演算信号を受けて、前記出力フォトカプラが温度演算信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の電源素子の状態計測装置。
【請求項3】
直列接続された複数の電源素子からなる直流電源の状態を監視する状態監視装置であって、
前記複数の電源素子のそれぞれに請求項1に記載の状態計測装置を接続し、
前記直流電源の充電時あるいは放電時を検知して検知信号を出力する充放電検知手段と、
該充放電検知手段からの検知信号を受けて、前記起動フォトカプラに検出開始入力を送信し、前記複数の状態計測装置からの電圧演算信号を前記出力フォトカプラから受信する監視制御手段とを設けたことを特徴とする直流電源の状態監視装置。
【請求項4】
前記複数の電源素子を複数組に分けて、各組ごとにそれぞれ1つの温度検出手段を設け、いずれかの前記状態計測装置の起動フォトカプラからの起動信号を受けて該温度検出手段が温度検出信号を出力し、該温度検出信号を受けた前記計測制御手段により前記基準電圧に基づいて演算された温度演算信号を、前記出力フォトカプラを通して前記監視制御手段により受信することを特徴とする請求項3に記載の直流電源の状態監視装置。
【請求項5】
直列接続された複数の電源素子からなる直流電源の状態を監視する状態監視装置であって、
前記複数の電源素子のそれぞれに請求項2に記載の状態計測装置を接続し、
前記直流電源の充電時あるいは放電時を検知して検知信号を出力する充放電検知手段と、
該充放電検知手段からの検知信号を受けて、前記起動フォトカプラに検出開始入力を送信し、前記複数の状態計測装置からの電圧演算信号と温度演算信号を前記出力フォトカプラから受信する監視制御手段とを設けたことを特徴とする直流電源の状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−156625(P2010−156625A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335640(P2008−335640)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(508362310)八和エレック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】