説明

電源装置

【課題】 入出力電圧変換比が切り替え可能な直流電源回路を備えた電源装置において、交流電源電圧が該直流電源回路の入出力電圧変換比とマッチングしない場合でも、過電圧となる前に負荷への電源供給を停止することができるようにする。
【解決手段】 電源装置11は、入出力電圧変換比が切り替え可能な直流電源回路15と、直流電源回路15の交流入力側に設けられたトライアック14と、平滑コンデンサ17a及び17bの直列回路の端子間電圧を検出する電圧検出部19と、制御部20とを備えており、制御部20は、トライアック14がオンされた時点から電圧検出部19による検出電圧と予め設定された誤設定判定用基準電圧とを比較し、前記検出電圧が誤設定判定用基準電圧を超えたときにトライアック14をオフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入出力電圧変換比の切り替えが可能な直流電源回路を備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばロボットのサーボモータなどを駆動制御するロボットコントローラには、直流電源が与えられるようになっている。この場合、商用交流電源としてAC電源の100Vと200Vとのいずれでも使用可能な電源装置を備えているものがある。この電源装置としては、図5に示される構成のものがある。すなわち、交流電源1に接続される接続端子2a、2b間に、スイッチであるトライアック3を介して入出力電圧変換比切り替え可能な直流電源回路4を接続し、この直流電源回路4の直流出力電圧をロボットコントローラ5に与えるようになっている。
【0003】
上記直流電源回路3は、整流器6と平滑コンデンサで7a、7bとを備えると共に全波整流/全波倍電圧整流切り替え用のワイヤ8を備えた構成であり、交流電源1として100Vを使用する仕様とするときには、出荷時に前記ワイヤ8をオンして直流電源回路4を全波倍電圧整流回路構成とする。この全波倍電圧整流回路構成により、直流電源回路4の直流出力電圧は、ほぼ280Vとなる。
【0004】
また、交流電源1として200Vを使用する使用とするときには、出荷時に前記ワイヤ8を開放したままにして直流電源回路4を単なる全波整流回路構成とする。この場合、直流電源回路3の直流出力電圧はほぼ280Vとなる。
【0005】
なお、過電圧を検出して電源スイッチをオフする構成が特許文献1に記載されているが、これは電源装置の入力交流電源は異なる電圧の交流電源に選択されるものではなく、また、入出力電圧変換比が切り替えられる直流電源回路を備えたものでもなく、本発明とは直接関係がない。
【特許文献1】特開2002−218645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示した電源装置では、直流電源回路4のワイヤ8をオンした構成(倍電圧整流回路構成)とした場合に、誤って適正電圧(100V)より高い200Vの交流電源に接続されると、直流出力電圧がほぼ560V(過電圧)となってしまい、電源装置自身や負荷(ロボットコントローラ)の電気部品を破損するおそれがあった。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入出力電圧変換比が切り替え可能な直流電源回路を備えた電源装置において、交流電源電圧が該直流電源回路の入出力電圧変換比とマッチングしない場合でも、過電圧となる前に負荷への電源供給を停止することができる電源装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この請求項1の発明は次の点に着目してなされている。すなわち、直流電源回路の前記入出力電圧変換比を大きくした構成とした状態で、誤ってこの直流電源回路の入力側に高い交流電源を接続した場合、あるいは逆に、高い交流電源を使用する仕様であるにもかかわらず、誤って直流電源回路の前記変換比を大きくした構成とした場合、過電圧が出力されてしまう。ここで、電源装置自身や負荷の電気部品はある程度は高電圧に耐え得るものであり、前記直流出力電圧が過電圧に上昇するまでに入力側をオフすると良い。
【0009】
この点に着目した請求項1の発明は、整流器及び平滑コンデンサを有して交流電源を直流に変換し且つ入出力電圧変換比が切り替え可能な直流電源回路を備え、高い電圧の交流電源が接続されるときに前記直流電源回路の前記変換比を小さくするように切り替えられ、低い電圧の交流電源が接続されるときに前記変換比を大きくするように切り替えられる電源装置であって、前記直流電源回路の交流入力側に設けられたスイッチと、前記平滑コンデンサの端子間電圧を検出する電圧検出手段と、前記スイッチがオンされた時点から前記電圧検出手段による検出電圧と予め設定された誤設定判定用基準電圧とを比較し、前記検出電圧が誤設定判定用基準電圧を超えたときに前記スイッチをオフする保護手段とを備えている。
【0010】
この請求項1の発明によれば、前記誤設定判定用基準電圧を過電圧未満の安全な電圧に設定しておくことで、前記直流電源回路の前記変換比と入力交流電源電圧とがマッチングしない場合(過電圧が発生するような場合)において、前記保護手段が、前記スイッチのオン時点から前記電圧検出手段による検出電圧と誤設定判定用基準電圧とを比較したときに、過電圧となる前に、誤設定判定用基準値を超えることを判定することになる。そして、保護手段は、前記検出電圧が前記誤設定判定用基準値を超えたときに前記スイッチをオフする。従って、直流電源回路の入出力電圧変換比と入力交流電源電圧とがマッチングしない場合でも、過電圧となる前に、過電圧となる事態を予め検出できて、負荷への電源供給を停止することができる。
【0011】
この場合、前記交流電源は、100Vと200Vとのいずれかが選択されて接続され、前記直流電源回路は、全波整流回路構成と全波倍電圧整流回路構成とに切り替えられることにより入出力電圧変換比を切り替え可能としても良い(請求項2の発明)。また、ロボットの電源装置として用いるようにしても良い(請求項3の発明)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例につき図1ないし図4を参照して説明する。図1には、電源装置11が示されている。この電源装置11の出力側には負荷として、ロボットコントローラ12が接続されている。この電源装置11は、交流電源13に接続される接続端子11a、11b間にスイッチとしてのトライアック14を介して接続された入出力電圧変換比切り替え可能な直流電源回路15と、電圧検出手段としての電圧検出部19と、保護手段としての制御部20と、電源オンオフスイッチ21と、報知手段としての表示部22とを備えた構成である。前記直流電源回路15の直流出力電圧を前記ロボットコントローラ12に与えるようになっている。
【0013】
上記直流電源回路15は、ダイオードブリッジからなる全波整流回路構成の整流器16と平滑コンデンサ17a、17bとを備えると共に全波整流/全波倍電圧整流切り替え用のワイヤ18を備えた構成である。
交流電源13として200Vを使用する仕様とするときには、出荷時に前記ワイヤ8を開放したままにして直流電源回路15を単なる全波整流回路構成とする。この場合、直流電源回路15の直流出力電圧はほぼ280Vとなる。入出力電圧変換比は200V(AC):280V(DC)、つまり1:1.4となる。
【0014】
ま交流電源12として100Vを使用する仕様とするときには、出荷時に前記ワイヤ18をオンして直流電源回路14を全波倍電圧整流回路構成とする。この全波倍電圧整流回路構成により、直流電源回路4の直流出力電圧は、ほぼ280Vとなる。入出力電圧変換比は100V(AC):280V(DC)、つまり1:2.8となる。このようにワイヤ8のオフ、オンにより入出力電圧変換比が切り替えられる。
【0015】
前記電圧検出部19は、直列接続されたコンデンサ17a及び17bの両端子間電圧(平滑コンデンサの端子間電圧)を検出するためのものである。この電圧検出部19により検出された電圧は、前記制御部20に与えられるようになっている。制御部20は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイコンを含んで構成されている。また、電源オンオフスイッチ21は、前記スイッチ14をオンオフするためのスイッチ信号を手動操作により発生し、制御部21はスイッチ14オフ状態でこのスイッチ信号を受けるとスイッチ14をオンし、オフ状態ではオフする。表示部22は例えばLEDから構成されている。
【0016】
なお、前記ロボットコントローラ12は図2に示すロボット23の制御ユニット24内に収納されており、前述の電源装置11もこの制御ユニット24内に収容されている。また前記制御ユニット24にはティーチペンダント25が接続されている。そして前記ロボットコントローラ12は主としてロボット23の各アームを動作させるサーボモータを駆動制御する。
【0017】
さて、前記制御部20の保護手段としての機能について図3のフローチャートを参照して説明する。ロボットコントローラ12に電源を与えるべく、ユーザーが電源オンオフスイッチ21をオンすると、このフローチャートが開始される。ステップS1では、トライアック14にオン指令を出力してこれをオンさせ、ステップS2で1ms(1/1000[秒])ごとに電圧検出部19による検出電圧を読み込み、ステップS3でこの検出電圧と誤設定判定用基準値Kとを比較し、この検出電圧が誤設定判定用基準値Kを超えたかどうかを判断する。
上記1msごとに検出電圧を読み込むことにより、この読み込み(ステップS2)と比較(ステップS3)とが極めて微小周期の1msで行われることになり、コンデンサ電圧の充電開始時から逐次検出電圧と誤設定判定用基準値Kとの比較が実行されることになる。
【0018】
この誤設定判定用基準値Kは次のようにして設定したものである。すなわち、接続端子11a、11bに接続される交流電源13と、直流電源回路15の入出力電圧変換比とのマッチングが適正である場合と、不適正である場合とを予め調査して設定した。つまり、交流電源13と、直流電源回路15の入出力電圧変換比とのマッチングが適正であるケースとしては、次の(a)、(b)があり、不適正なケースとして(a´)、(b´)がある。
【0019】
(a)直流電源回路15が単なる全波整流回路構成(ワイヤ18オフ、入出力電圧変換比は1:1.4)のときは交流電源電圧200Vが適正マッチングである。そのときの出力電圧はDC280Vである(図4の特性線H参照)。
(b)直流電源回路15が全波倍電圧整流回路構成(ワイヤ18オン、入出力電圧変換比は1:2.8)のときは交流電源電圧100Vが適正マッチングである。そのときの出力電圧もDC280Vである(図4の特性線H参照)。
【0020】
(a´)直流電源回路15が単なる全波整流回路構成(ワイヤ18オフ、入出力電圧変換比は1:1.4)のときに、交流電源電圧100Vとするとマッチング不適正である。そのときの出力電圧はDC140Vである。
(b´)直流電源回路15が全波倍電圧整流回路構成(ワイヤ18オン、入出力電圧変換比は1:2.8)のときに、交流電源電圧200Vとするとマッチング不適正である。そのときの出力電圧はDC560Vである(図4の特性線Q参照)。
【0021】
本実施例においては、部品破損防止が所期の目的であるので、上記(b´)のマッチング不適正のときにこれを検出すべく、図4に示すように前記適正マッチングの場合の出力電圧280Vより高く、そして、本実施例において使用する電気部品の許容最大電圧(例えば440V)より低いところに前記誤設定判定用基準値Kを設定している。
前記ステップS3で、検出電圧が誤設定判定用基準値Kを超えていないと判断されると、ステップS4で所定検査時間Tが経過していなければ(ステップS4の「NO」)、前記ステップS2に戻る。前記所定検査時間Tは図4に示すように、マッチング不適正の場合に検出電圧が誤設定判定用基準値Kを超えるに十分な時間である。
【0022】
上記ステップS4でこの所定検査時間Tが経過した場合には、ステップS5で表示部22に正常の旨の表示例えばLEDの連続点灯を行う。
前記ステップS3で、検出電圧が誤設定判定用基準値Kを超えると、マッチング不適正が検出されることになり、ステップS6に移行し、トライアック14に対するオフ指令を出力してこれをオフさせ、ステップS7で前記表示部22に異常有りの旨の表示例えばLEDの点滅点灯を行う。
【0023】
このような本実施例によれば、トライアック14のオン時点から電圧検出部19による検出電圧をと誤設定判定用基準電圧Kとを比較し、検出電圧が誤設定判定用基準電圧Kを超えたときに前記トライアック14をオフするようにしたから、前記直流電源回路15の入出力電圧変換比と入力交流電源電圧とがマッチングしない場合(過電圧が発生するような場合)に、過電圧となる前に、検出電圧が誤設定判定用基準値Kを超えることを判断でき、もって、過電圧となる前に、過電圧となる事態を予め検出できて、ロボットコントローラ12への電源供給を停止することができる。従って、前記直流電源回路15の入出力電圧変換比と入力交流電源電圧とがマッチングしないことがあっても、電源装置11自身や負荷であるロボットコントローラ12の電気部品の破損を防止できる。
【0024】
また、本実施例によれば、前記交流電源として、100Vと200Vとのいずれかが選択されて接続される仕様であり、直流電源回路15が、全波整流回路構成と全波倍電圧整流回路構成とに切り替えられることにより入出力電圧変換比を切り替え可能とした構成であるから、使用頻度の高い100V交流電源及び200V交流電源の仕様に対応できるものである。
また、本実施例の電源装置11をロボットの電源装置として用いるようにしたから、交流電源100V及び200Vでの使用頻度が高いロボットにおいて過電圧発生を防止できるものである。
【0025】
なお本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、前記(a´)のマッチング不適正の場合を検出する手段を追加するようにしても良い。また、直流電源回路15の入出力電圧変換比は前記実施例以外の変換比としても良い。また、スイッチとしてトライアック14に限られず、有接点リレースイッチなどでも良い。さらに、負荷としてはロボットコントローラ以外にも広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例を示す電源装置の電気回路図
【図2】ロボットを示す斜視図
【図3】制御部の制御内容を示すフローチャート
【図4】検出電圧の変化を示す図
【図5】従来例を示す図1相当図
【符号の説明】
【0027】
図面中、11は電源装置、12はロボットコントローラ、13は交流電源、14はトライアック(スイッチ)、15は直流電源回路、16は整流器、17a、17bは平滑コンデンサ、18はワイヤ、19は電圧検出部(電圧検出手段)、20は制御部(保護手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器及び平滑コンデンサを有して交流電源を直流に変換し且つ入出力電圧変換比が切り替え可能な直流電源回路を備え、高い電圧の交流電源が接続されるときに前記直流電源回路の前記変換比を小さくするように切り替えられ、低い電圧の交流電源が接続されるときに前記変換比を大きくするように切り替えられる電源装置であって、
前記直流電源回路の交流入力側に設けられたスイッチと、
前記平滑コンデンサの端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記スイッチがオンされた時点から前記電圧検出手段による検出電圧と予め設定された誤設定判定用基準電圧とを比較し、前記検出電圧が誤設定判定用基準電圧を超えたときに前記スイッチをオフする保護手段と
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記交流電源は、100Vと200Vとのいずれかが選択されて接続され、
前記直流電源回路は、全波整流回路構成と全波倍電圧整流回路構成とに切り替えられることにより入出力電圧変換比を切り替え可能としたことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置において、
ロボットに用いられることを特徴とする電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−37302(P2007−37302A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217414(P2005−217414)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】