説明

電源装置

【課題】本発明は、複数の異なる電力源から個別に供給された電力を合成して負荷に供給する電源装置に関し、負荷に供給されるべき電力の供給源に課された電力や電力量の制約の範囲でその負荷の広範な変化に柔軟に適応し、負荷の性能および機能を安定に維持できることを目的とする。
【解決手段】電力または電力量に制約がある第一の電力と、前記第一の電力の不足分の補充に供される第二の電力とを合成して負荷に供給する合成手段と、前記合成手段によって前記第一の電力と前記第二の電力とが合成される比率を前記制約の範囲で設定する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる電力源から個別に供給された電力を合成して負荷に供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、大規模の地震に適応した原子力発電所の停止や始動の見合わせおよび停止が図られつつあり、これに伴って供給可能な商用電源の電力量の著しい不足が生じ、大電力の需要家に対して節電の要求や使用制限が積極的に行われている。
【0003】
したがって、電力を消費する様々な電子機器やシステムにも、電力や電力量にかかわる制約の範囲を超えることなく、商用電源による駆動電力の供給を所望の比率で受けることが要求されている。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献11があった。
(1) 「電力系統内の複数の分散型電源2a,・・・2nの発電出力を調整して分散型電源の総発電出力と負荷電力との偏差を一定にする電力需給制御装置において、前記分散型電源の発電出力または前記負荷電力の予測値および予測値の信頼度を出力する予測手段11A,11B,12と、前記予測値および前記電力系統の任意箇所の電力潮流目標値を用いて前記総発電出力を求める発電総出力演算手段13と、前記予測値の信頼度に応じて前記複数の分散型電源の負荷配分を算出する負荷配分算出法を選択する負荷配分切替え手段15と、前記負荷配分切替え手段により選択された負荷配分算出法により前記総発電出力から前記各発電出力目標値を生成する負荷配分手段14とを備える」ことによって、「分散型電源を含む小規模電力系統と商用電源との間の電力需給制御を円滑かつ効率的に行う」点に特徴がある電力需給制御装置…特許文献1
【0005】
(2) 「出力に不規則性を有する電源である不規則電源を対象として、単位時間中に出力される電力量と前記単位時間中における電力変化の少なさを示す安定度を取得する計測部と、複数の不規則電源それぞれについて取得された電力量および安定度に基づいて、前記複数の不規則電源の利用配分率を変化させながら前記複数の不規則電源全体としての電力供給の安定性を示す指標である評価値を算出する最適配分探索部と、前記複数の不規則電源の利用配分率を、所定の条件に合致する評価値が算出されたときの利用配分率に設定する配分制御部とを備え、前記最適配分探索部は、利用配分率を変数として前記複数の不規則電源全体としての単位時間当たりの電力量および安定度を算出し、前記複数の不規則電源全体としての単位時間当たりの電力量および安定度の双方または一方が高いほど前記評価値が高くなるように定義された評価関数により、前記評価値を算出する」ことにより、「複数の電源から、全体としての安定的な電力供給を実現する」点に特徴がある複数電源統合装置…特許文献2
【0006】
(3) 「電力系統内に接続される複数の分散型電源のうち、発電出力の調整が可能な分散型電源の発電出力を調整して前記電力系統内の分散型電源の総発電出力と負荷電力との偏差を一定にする電力需給制御装置において、前記分散型電源毎の1日分の発電出力と、任意に設定した電力潮流測定箇所における電力潮流の目標を算出する発電計画部と、前記総発電出力計画と負荷電力との偏差を一定にするための制御信号を生成する第1の制御部と、前記総発電出力計画と負荷電力との偏差を一定にする制御を前記第1の制御部の制御周期よりも短い周期で行うための制御信号生成する第2の制御部とを具備し、前記第1の制御部は、前記分散型電源の総発電出力と前記電力系統内の負荷電力との偏差を解消し前記電力潮流測定箇所における一定時間の電力量の同時同量を確保するように前記発電計画部が算出した電力潮流の目標を補正する第1の同時同量制御部と、前記負荷電力を予測する負荷電力予測部と、前記電力系統内に設置される分散型電源のうち、発電出力の調整ができない出力不可変電源の発電出力を予測する出力不可変電源出力予測部と、前記第1の同時同量制御部で補正された電力潮流の目標値、前記負荷電力予測部で生成された負荷電力予測値、および、前記出力不可変電源出力予測部で生成された前記出力不可変電源の発電出力予測値から必要な総発電出力値を算出する必要発電量算出部と、前記必要発電量算出部が算出した必要な総発電出力値に基づき経済性が高くなる負荷配分を決定して複数の分散型電源の各発電出力指令値を生成するELD部とを備え、前記第2の制御部は、前記分散型電源の総発電出力と前記電力系統の負荷電力との偏差を解消して、前記第1の同時同量制御部で確保する同時同量時間よりも短い時間の同時同量を確保するために、前記第1の同時同量制御部が補正した電力潮流の目標を補正して出力する第2の同時同量制御部と、前記第2の同時同量制御部が要求する制御量を個々の出力調整可能な分散型電源に配分する短周期出力配分部とを備える」ことにより、「電力変動が大きい小規模電力系統においても任意の箇所の電力量の数十分程度の同時同量を確保する」点に特徴がある電力需給制御装置…特許文献3
【0007】
(4) 「コミュニティC内の複数の電力需要家3a〜3nのいずれかに具備されている分散型電源4に入力され、または出力されるエネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵設備6hと、電力売買装置により購入された所定の電力量とコミュニティC内全体の分散型電源4からの総発電電力量とをコミュニティC内の電力需要家に各々の電力需要に応じて配分し、その配分の際に、電力総需要量と総供給量とに差があるときは、その差を解消するように分散型電源4の運転を分散型電源制御装置を介して制御して電力の需給を調整する電力需要制御装置6dとを具備する」ことにより、「所定地域(コミュニティ)内の分散型電源を備えた電力需要家を含む複数の電力需要家への配電とこれら需要家間の電力需給を低コストで行なうことができると共に、電力系統を安定させる」点に特徴がある電力需要供給制御システム…特許文献4
【0008】
(5) 「配電系統に設置された一または二以上の分散電源と、この分散電源の電気データを伝送する伝送装置と、前記電気データを用いて各発電機の出力調整の演算を行う負荷変動監視制御装置を備えた電力安定供給システムであって、前記分散電源は、中間負荷帯に最高効率を有し、前記負荷変動監視制御装置は、前記分散電源が中間負荷帯で運転可能に出力調整を行う」ことにより、「電力系統の負荷変動に対して分散電源を効率よく利用でき、この分散電源を用いて安価な電力取引および系統安定化のための電力売買を可能とすること」点に特徴がある電力安定供給システム…特許文献5
【0009】
(6) 「電気事業者から供給される電力と需要家に備えられた分散型電源により発電された電力とを、上記分散型電源を備えた電力需要家を含み統合管理される複数の電力需要家に、各々の需要に応じて配分する電力供給制御システムにおいて、上記統合管理される複数の電力需要家間の電力需給を総括して調整し、その需給調整の際に、余剰電力を上記電気事業者に供給する一方、不足電力を上記電気事業者からの供給を受けて各電力需要家の需要に応じて配分する電力供給制御装置を具備する」ことにより、「統合管理される複数の電力需要家のグループ内の複数の需要家間の電力需給を当該グループ内全体で協調して調整することにより、その所定地域内の余剰電力を有効に活用する」点に特徴がある電力供給制御システム…特許文献6
【0010】
(7) 「負荷に電力を供給する主電源の給電系に補助電源装置を並列に接続すると共に、前記補助電源装置は、負荷消費電力の一部を供給するように供給電流を制御する」ことにより、「消費電力のピークカット、電力の平準化、電力貯蔵装置ECS等の補助電源装置の小型化を図る」点に特徴がある補助電源装置併用給電システム…特許文献7
【0011】
(8) 「商用電源を直流電力に変換して負荷に供給する主電源部と、商用電源から変換した直流電力あるいは上記主電源部からの一部の直流電力によって充電するバッテリと、バッテリを充電している直流電力を、あるいはバッテリの直流電力から変換された直流電力を負荷用の直流電力に変換するUPS電源部と、主電源部およびUPS電源部からそれぞれ負荷に供給する直流電力の比を所定値に制御、あるいはいずれか一方からの直流電力の供給が停止したときに他から全部の直流電力を負荷に供給するように制御する回路とを備える」ことにより、「主電源部およびUPS電源部の両者から所定比率で直流電力を負荷に並列供給し、効率を改善およびいずれか一方の故障や停電時に他方が即座に供給して信頼性を高める」点に特徴があるUPS内蔵電源装置…特許文献8
【0012】
(9) 「商用電源を整流する複数個の整流回路と、該整流回路の出力と接続される複数個のインバータ回路と、該インバータ回路の出力によって直流駆動化された複数個の家電品において、該複数個の整流回路と該複数個のインバータ回路の間に太陽光を受光して起電力を発生する太陽電池と、最適有効電力制御装置と、該複数個の家電品に最適有効電力を分配する」ことにより、「商用交流電源と併用して、太陽電池を補助電源として利用する場合の太陽電池エネルギーの有効利用を図る」点に特徴がある太陽電池システム…特許文献9
【0013】
(10)「絶縁変圧器3の一次側に入力電流を検出する入力電流検出器2と、絶縁変圧器3の二次側に入力電流が一定となるように制御する制御整流回路4と、制御整流回路4と直列に接続したバッテリー装置5を備える」ことにより、「溶接に必要な電力を効果的に供給し、溶接電流が安定して溶接作業性を向上する」点に特徴があるバッテリーアーク溶接装置…特許文献10
【0014】
(11)「一棟または複数棟の建物において複数に区分される専有部分にそれぞれ設置される電力量計から各専有部分の電力量データを収集して、消費電力量に応じて案分した電気料金を算出する情報系システムと、予測デマンドが契約レベルを超えると予測される場合に補助電源から電力供給を受ける電源切換制御を行う電力系システムとの二つのシステムを備え、電力系システムにより電源切換制御を行ってデマンドが契約レベル内に収まるようにして基本料金を安価に維持し、かつ情報系システムにより各専有部分で消費電力量に応じた従量制の電気料金を算出して、安価な電気料金とする」ことにより、「デマンドが契約レベルを超えないようにして契約種別を維持するとともに、システムを有効活用して各種サービスを提供できるようにして、集合住宅の資産価値の向上に寄与する電力用供給管理システムを提供する」点に特徴がある電力用供給管理システム…特許文献11
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−271723号公報
【特許文献2】特開2010−220334号公報
【特許文献3】特開2009−284723号公報
【特許文献4】特開2002−010500号公報
【特許文献5】特開2005−295713号公報
【特許文献6】特開2002−010499号公報
【特許文献7】特開平10−336900号公報
【特許文献8】特開平9−322433号公報
【特許文献9】特開平7−281774号公報
【特許文献10】特開平6−182548号公報
【特許文献11】特開2006−158146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、既述の電子機器やシステムの内、例えば、ユーザーが与える指示に応じて送信が断続的に行われる無線送信機では、このような送信が行われる頻度や時間率が広範な値をとるために、駆動電力の供給源である商用電源に課された電力や電力量の制約を確度高く守ることは容易ではなかった。
さらに、上記送信が行われる頻度や時間率の広範な値に適した電力が商用電源によって確度高く供給されるためには、その商用電源との契約の形態は上記電力や電力量の制約に対する余裕度が十分に確保される形態に切り替える必要が生じ、このような商用電源によって供給される電力のコストが無用に増加する可能性が高かった。
【0017】
本発明は、負荷に供給されるべき電力の供給源に課された電力や電力量の制約の範囲でその負荷の広範な変化に柔軟に適応し、負荷の性能および機能を安定に維持できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明では、合成手段は、電力または電力量に制約がある第一の電力と、前記第一の電力の不足分の補充に供される第二の電力とを合成して負荷に供給する。制御手段は、前記合成手段によって前記第一の電力と前記第二の電力とが合成される比率を前記制約の範囲で設定する。
【0019】
すなわち、負荷に供給されるべき電力は、第一の電力が上記制約の範囲で第二の電力と合成され、その制約の下に起因する不足分が第二の電力で補われることによって確保される。
【0020】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電源装置において、前記制御手段は、前記第二の電力の一部または全てとして、前記第二の電力と前記制約の範囲内における前記第一の電力との双方もしくは何れか一方の余剰分の蓄積によって得られた第三の電力を前記第一の電力と合成する。
【0021】
すなわち、第一の電力にかかわる制約に起因する電力の不足分は、第一の電力または第二の電力の余剰分の蓄積によって補われる。
【0022】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の電源装置において、前記制御手段は、前記余剰分の蓄積に、電気自動車に備えられあるいは備えられ得る電池を供する。
【0023】
すなわち、第一の電力の電力値や電力量の制約に起因する電力の不足分は、電気自動車の動力源となる大容量かつ汎用の電池に蓄積された電力により安定に確度高く補われる。
【0024】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の電源装置において、前記制御手段は、前記負荷によって消費された電力の実績に適した値に前記比率を設定する。
【0025】
すなわち、第一の電力と第二の電力とが合成される比率は、第一の電力の電力および電力にかかわる制約の範囲のみに基づくのではなく、負荷に消費された電力の実績に整合する値に設定される。
【0026】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電源装置において、前記合成手段は、前記第一の電力と前記第二の電力とを直流電力に揃えて合成する。前記制御手段は、前記第一の電力と前記第二の電力とに対応した前記直流電力の電圧の組み合わせとして前記比率を設定する。
【0027】
すなわち、負荷に供給されるべき電力の合成は、直流回路によって実現される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によって電力が供給される装置やシステムは、第一の電力に既述の制約がある場合であっても、電力が安定に供給され、所望の機能、性能および信頼性が確度高く達成される。
また、本発明によって電力が供給される装置やシステムは、第二の電力として供給され得る最大の電力や電力量に制約がある場合であっても、供給されるべき電力の不足分が確度高く補われる。
さらに、本発明が適用された電源装置、装置、システムは、何れも、第一の電力のみでは負荷に供給しきれない電力の不足分を補うために専用の電池が備えられる場合に比べて、構成の簡略化および信頼性の向上が図られる。
また、本発明によれば、第一の電力と第二の電力とが合成される比率が負荷の変動の実体に精度よく追従した値に設定され、このような比率が過度に大きくもしくは小さいことに起因する様々な支障の回避あるいは軽減が図られる。
さらに、本発明に係る電源装置は、負荷に供給されるべき電力が直流電力である場合には、構成の簡略化と無用な電力変換に伴う損失の軽減とが図られる。
したがって、本発明が適用された装置やシステムは、多様な電力事情に制約されることなく、確度高く安定に稼働することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
【0031】
図において、太陽電池11の出力は、縦続接続された最大電力点追従制御部(MPPT:Maximum Power Point Tracking)12および電圧変換部13を介してダイオード14sのアノードに接続される。電力変換部15および充電器16の入力には商用電源から交流電力(実効値=100ボルト)が与えられ、その電力変換部15の出力はダイオード14cのアノードに接続される。充電器16の出力は蓄電池17の端子に接続され、そのバッテリ17の端子は電圧変換部18の入力に接続される。電圧変換部18の出力は、ダイオード14bのアノードに接続される。上記ダイオード14s、14c、14bのカソードには、図示されない負荷(例えば、HF帯の無線機)に接続される。
【0032】
なお、蓄電池17は、例えば、負荷に供給されるべき電力と商用電源によって負荷に対する供給が許容される電力との差(以下、「不足電力」という。)と、その不足電力がその負荷に供給されるべき最大の時間との積以上の蓄電量を有する。
【0033】
電力変換部15の出力は監視制御部20の対応する入力ポートに接続され、その監視制御部20の第一および第二の出力ポートは、電圧変換部13、18の制御端子にそれぞれ接続される。
図2は、本実施形態の動作フローチャートである。
【0034】
以下、図1および図2を参照して本実施形態の動作を説明する。
本実施形態の特徴は、電圧変換部13、18によって行われる電圧変換の形態が監視制御部20の主導の下で、後述する通りに行われる点にある。
【0035】
以下、このような電圧変換の下で図1に示す各部が行う基本的な連係および動作を説明する。
電力変換部15は、既述の商用電源から供給される交流電力Pc_ACを所定の電圧Vcの直流電力Pcに変換し、ダイオード14cを介して負荷に供給する。
【0036】
また、充電器16は、蓄電池17の充電に好適な電圧の直流電力に上記商用電源を変換し、その蓄電池17に蓄積する。電圧変換部18は、このようにして蓄電池17に蓄積された直流電力を所定の電圧Vb(≒Vc)の直流電力Pbに変換し、ダイオード14bを介して負荷に供給する。
【0037】
一方、太陽電池11は、その太陽電池11に照射された太陽光を電力psに変換する。最大電力点追従制御部12は、このような電力psに以下の事項に応じて生じ得るMPP損失(MPPミスマッチ)を緩和しあるいは圧縮することにより、所定の電圧vsの直流電力ps′を生成する。
【0038】
(1) 太陽電池11の起電力および出力インピーダンス
(2) ダイオード14sを介して接続された負荷のインピーダンス等の変動
電圧変換部13は、その直流電力ps′を所定の電圧Vs(≒Vc)の直流電力Psに変換し、ダイオード14sを介して負荷に供給する。
【0039】
したがって、負荷には、太陽電池11によって発電された直流電力Psと、商用電源によって供給された直流電力Pcと、その商用電源から供給された電力が蓄電池に蓄積されることによって与えられる直流電力Pbとの何れもが、ダイオード14s、14c、14bを介して供給される。なお、負荷にこれらの直流電力Ps、Pc、Pb の和が供給される状態においてその負荷に印可されるべき電圧V0の公称値については、以下では、例えば、48ボルトであると仮定する。
【0040】
電圧変換部13、18によって行われる電圧変換の形態は、以下の通りに監視制御部20によって行われる処理の下で決定される。
【0041】
〔商用電源から供給される交流電力の電力値の上限値に制約がある場合〕
(1) 電力変換部15によってダイオード14cのアノードに印可される電圧Vcを所定の頻度(周期)で監視する(図3ステップS1)。
【0042】
(2) 上記電圧Vcと負荷に印可されている電圧V0(ここでは、一定の値であると仮定する。)との差として、ダイオード14cの順方向の電圧降下Δvcを求め(図3ステップS2)、その電圧効果Δvcに対応したダイオード14cの静特性(ここでは、既知であると仮定する。)に基づいて、「電力変換部15によって負荷に供給されている電流Ic」を推定する(図3ステップS3)。
【0043】
(3) 既述の電圧V0、電圧Vcおよび電流Icと、既述の電力変換部15で生じる損失Lc(ここでは、一定であって既知であると仮定する。)とに基づいて、下式で示される算術演算を行うことにより、商用電源から供給される交流電力Pc_ACを求める(図3ステップS4)。
Pc_AC=Vc・Ic+Lc
【0044】
(4) 商用電源からの供給が許容される電力の上限値Pc_UL(ここでは、既知であると仮定する。)に対する上記交流電力Pc_ACの偏差ε(=Pc_AC−Pc_UL)を算出する(図3ステップS5)。
【0045】
(5) 上記処理(1)〜(4)を既述の頻度(周期)で反復しつつ、「その処理の過程で算出された偏差εが圧縮される方向に対する既述の電圧Vs、Vbの変更」を電圧変換部13、18にそれぞれ指示する(図3ステップS6)。
【0046】
すなわち、負荷には商用電源の電力値の制約の範囲で直流電力Pcが供給され、その直流電力Pcでは足りない電力は、太陽電池11によって供給される電力と、蓄電池17に蓄積された電力との双方または何れか一方により並行してその負荷に供給される。
【0047】
また、本実施形態では、商用電源による電力の供給が途絶えた状態であっても、負荷には、その負荷に供給されるべき電力の全てが、太陽電池11と蓄電池17の残容量との範囲で、これらの太陽電池11および蓄電池17によって供給される。
【0048】
〔商用電源から供給される交流電力の電力量に制約がある場合〕
(1) 既述の通りに、電力変換部15によってダイオード14cのアノードに印可される電圧Vcを所定の頻度(周期)で監視する(図3ステップS1)ことにより、「電力変換部15によって負荷に供給されている電流Ic」を推定し(図3ステップS2,S3)、かつ商用電源から供給される交流電力Pc_AC(=Vc・Ic+Lc)を求める(図3ステップS4)
【0049】
(2) 所定の期間(例えば、商用電源を提供する電力会社等によって電力量の上限値が規定される期間)毎に上記交流電力Pc_AC(=Vc・Ic+Lc)を積分することにより、積算交流電力量ΣPc_ACを算出する(図3ステップS10)
【0050】
(3) 商用電源からの供給が許容される電力量の上限値ΣPc_UL(ここでは、既知であると仮定する。)に対する上記積算交流電力ΣPc_ACの偏差Σε(=ΣPc_AC−ΣPc_UL)を算出する(図3ステップS11)。
【0051】
(4) 上記処理(1)〜(3)を所定の頻度(周期)で反復しつつ、「その処理の過程で算出された偏差Σεが圧縮される方向に対する既述の電圧Vs、Vbの変更」を電圧変換部13、18にそれぞれ指示する(図3ステップS12)。
【0052】
すなわち、負荷には商用電源の電力量の制約の範囲で直流電力Pcが供給され、その直流電力Pcでは足りない電力は、太陽電池11によって供給される電力と、蓄電池17に蓄積された電力との双方または何れか一方によりその負荷に供給される。
【0053】
また、本実施形態では、商用電源による電力の供給が途絶えた状態であっても、負荷には、その負荷に供給されるべき電力の全てが、太陽電池11の発電量と蓄電池17の残容量との範囲でこれらの太陽電池11および蓄電池17によって供給される。
このように本実施形態では、商用電源にかかわる電力や電力量の制限の範囲でその商用電源による電力の供給が自動的に図られ、このような電力の不足の補充が安定にかつ確度高く図られる。
【0054】
したがって、本発明が適用された装置やシステムは、商用電源の制約の範囲でその商用電源による駆動電力の供給が図られ、このような駆動電力の不足に起因する性能の低下等の支障の回避が図られる。
【0055】
なお、本実施形態では、上記交流電力Pc_ACまたは積算交流電力量ΣPc_ACについては、既述の手順に基づいて算出されなくてもよく、例えば、電圧Vcと電流Icとの双方もしくは何れか一方が実測されることによって、該当する処理の手順の簡略化が図られ、あるいは電力変換部15の稼働状態等に整合した換算や推定に基づいて求められてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、偏差ε(Σε)の圧縮のために、電圧Vs、Vbの双方または何れか一方が適宜可変されている。
しかし、このような圧縮は、例えば、上記電圧Vs、Vbに併せて(に代えて)電力変換部15によって行われる電力変換の形態が監視制御部20の主導の下で可変されることによって実現されてもよい。
【0057】
さらに、本実施形態では、商用電源の制約は、電力と電力量との何れか一方のみについて課されている。
しかし、本発明は、このような制約に限定されず、例えば、商用電源の電力および電力量の双方に制約が課される場合にも、同様に適用可能である。
【0058】
また、本実施形態では、負荷に供給されるべき電力の内、既述の商用電源の電力や電力量の制約の下で不足となる電力の供給源は、太陽電池11や蓄電池17に限定されず、例えば、以下に列記する多様な電力源(以下、「代替電力源」という。)(発電量の変動分の補償を実現する蓄電系が含まれてもよい。)の如何なる組み合わせで代替されてもよい。
【0059】
(1) 上記商用電源と異なる商用電源(複数あってもよい。)
(2) 地熱発電によって電力を供給する電力源
(3) 海流発電によって電力を供給する電力源
(4) 波力発電によって電力を供給する電力源
【0060】
(5) 潮力発電によって電力を供給する電力源
(6) 太陽光発電によって電力を供給する電力源
(7) 太陽熱発電によって電力を供給する電力源
(8) 風力発電(陸上風力発電、洋上風力発電、浮体式洋上風力発電、凧型風力発電を含む。)によって電力を供給する電力源
【0061】
(9) 熱電発電(海洋温度差発電を含む。)によって電力を供給する電力源
(10)炉頂圧発電によって電力を供給する電力源
(11)冷熱発電によって電力を供給する電力源
(12)人力発電によって電力を供給する電力源
【0062】
(13)水素発電によって電力を供給する電力源
(14)燃料電池発電によって電力を供給する電力源
(15)MHD(Magneto-Hydro-Dynamics)発電によって電力を供給する電力源
(16)振動発電によって電力を供給する電力源
(17)内燃機関(ディーゼルエンジン、ガスタービンエンジン、自動車等に搭載されたエンジン)によって駆動されることによって発電を行う電力源
(18)コジェネレーション(内燃機関や外燃機関等の排熱(余熱)のエネルギー変換等)により電力を供給する電力源
【0063】
さらに、上記代替電力源によって供給される電力が負荷に対して配分される比率は、例えば、以下に示すように、これらの供給源または負荷の状態や属性等の組み合わせに応じて適宜変更され、あるいは最適に設定されてもよい。
【0064】
(1) 自然エネルギーに基づいて発電を行う電力源によって供給される電力の比率が可能な限り高く設定され、かつ商用電源の比率が最小となる。
(2) 負荷に対する電力の供給のために要するコストが総合的に最小となる。
(3) 本発明が適用された電子装置やシステムの信頼性や安全性が高められる。
(4) 上記商用電源と代替電力源との双方または何れか一方に課された電力(電力量)の先頭値の時間軸上における分散が実現される。
【0065】
また、上記組み合わせにより構成される電力源の何れによって生成(発電)された電力も、一旦蓄電された後に上記電力の不足分の補充に供され、反対に、負荷に供給されるべき電力の不足分が何らかの他の電力源(該当する組み合わせに含まれない電力源であってもよい。)によって補われることが確実である場合には、蓄電されることなく負荷に供給されてもよい。
【0066】
さらに、このような蓄電は、例えば、以下に例示するように、如何なる期間に行われてもよい。
(1) 該当する電力源が供給可能な電力に余裕度が高い夜間や昼間等の期間
(2) 該当する電力源が安価に電力を供給可能な期間
【0067】
(3) 該当する電力源が発電可能な期間
(4) 既述の電力や電力量にかかわる制約に対する商用電源の余裕度が高い期間(蓄電された電力が負荷に供給されなくても、その負荷に供給されるべき電力に不足が生じ難い期間)
【0068】
また、上記蓄電は、例えば、電気自動車に備えられたバッテリのように、本発明が適用された装置やシステムとは別体に構成された蓄電池に対して行われてもよい。
【0069】
さらに、本実施形態では、太陽電池11、商用電源および蓄電池17によって負荷に供給される電力の比率は、電圧変換部13、18によってダイオード14s、14bにそれぞれ印可される電圧が監視制御部20の配下で切り替えられることによって設定されている。
【0070】
しかし、本発明は、負荷に供給されるべき電力の合成は、既述のダイオード14s、14c、14bによる電流加算に限定されず、例えば、負荷に供給されるべき電力が交流電力(相数は如何なるものであってもよい。)であり、あるいは商用電源以外の電力源によって生成される電力の大半が交流電力(相数は如何なるものであってもよい。)である場合には、合成の対象となるべき交流電力の選択および流通角の設定(ゼロクロススイッチ等を介して行われる場合を含む。)によって実現されてもよい。
【0071】
なお、このように負荷に供給されるべき電力の合成が交流電力の選択や流通角の設定によって実現される場合には、個々の電力源によって生成される交流電力が、互いに位相同期し、かつ周波数が共通に設定されることにより、位相や周波数の偏差を圧縮するために必要となる無用なハードウェアの省略が図られてもよい。
【0072】
また、上述したように負荷に供給されるべき電力が直流電力であるにもかかわらず、このような電力を得るために行われる電力合成が交流電力の選択や流通角の設定によって実現される場合には、その電力合成が行われた後に整流・平滑等による直流電力への変換が行われてもよい。
【0073】
さらに、監視制御部20によって電圧変換部13、18に与えられる電圧Vs、Vbの変更の指示は、既述の処理手順に基づく自動制御としてだけではなく、例えば、負荷の変動が広範であって予測できない場合であっても追従可能な適応制御として実現されてもよい。
【0074】
また、このような電圧Vs、Vbは、以下に示す値の何れによって指示されてもよい。
(1) 負荷の変動の実績に整合した値
(2) 負荷の変動の実績との相関性が高い値
【0075】
さらに、本実施形態では、蓄電池17は、商用電源から供給される電力だけではなく、例えば、昼間に太陽電池11によって発電された電力と、夜間に商用電源から供給される電力との蓄積に併用されてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、負荷に印可される電圧V0が一定であると見なされている。
しかし、本発明は、このような場合に限定されず、例えば、負荷が広範に、あるいはランダムに変動する場合には、その電圧V0が別途計測されると共に、監視制御部20に引き渡されてもよい。なお、このような負荷の変動については、上記電圧V0や電流Icとして評価されなくてもよく、例えば、負荷がとり得る個々の状態毎に予め計測された既知の値として監視制御部20によって識別されてもよい。
【0077】
さらに、本実施形態では、電力変換部15で生じる損失Lcが一定と見なされ、その損失Lcが無視されることなく交流電力Pc_ACや積算交流電力量ΣPc_ACに加味されている。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、上記電力Pc_ACは、電力変換器15に対して商用電源から直接供給される電力の実測により求められてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、太陽電池11によって供給される電力と、蓄電池17に蓄積された電力との双方もしくは一方は、電力や電力量に制限が課された商用電源が供給可能な電力の不足分を補う電力源として用いられている。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、上記太陽電池11によって供給される電力と、蓄電池17に蓄積された電力との双方もしくは一方が、負荷に対して供給されるべき電力より多い電力を供給可能である場合には、例えば、以下の通りに構成されてもよい。
(1) 商用電源による電力変換部15や充電器16の駆動が規制される。
(2) これらの太陽電池11と蓄電池17との双方もしくは何れか一方が供給可能な電力の余剰分が商用電源に対する回生や売電が可能である。
【0079】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0080】
以下、本願に開示された発明を整理し、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成、作用および効果を「特許請求の範囲」、「課題を解決するための手段」および「発明の効果」の各欄の記載に準じた様式により列記する。
【0081】
[請求項6] 請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の電源装置において、
前記合成手段は、
前記第一の電力と前記第二の電力とを交流電力に揃えて合成し、
前記制御手段は、
前記第一の電力と前記第二の電力とに対応した前記交流電力の流通角の組み合わせとして前記比率を設定する
ことを特徴とする電源装置。
【0082】
このような構成の電源装置では、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の電源装置において、前記合成手段は、前記第一の電力と前記第二の電力とを交流電力に揃えて合成する。前記制御手段は、前記第一の電力と前記第二の電力とに対応した前記交流電力の流通角の組み合わせとして前記比率を設定する。
【0083】
すなわち、負荷に供給されるべき電力の合成は、スイッチング回路によって実現される。
したがって、負荷に供給されるべき電力が交流電力である場合には、構成の簡略化に併せて、無用な電力変換に伴う損失の軽減が図られる。
【0084】
[請求項7] 請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の電源装置において、
前記第二の電力の全てまたは一部に電力または電力量の制約があり、
前記制御手段は、
前記第二の電力の全てまたは一部にかかわる電力または電力量の制約の範囲で、前記比率を設定する
ことを特徴とする電源装置。
【0085】
このような構成の電源装置では、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の電源装置において、前記第二の電力の全てまたは一部に電力または電力量の制約がある。前記制御手段は、前記第二の電力の全てまたは一部にかかわる電力または電力量の制約の範囲で、前記比率を設定する。
【0086】
すなわち、負荷に供給されるべき電力は、その電力を得るために合成の対象となる第一の電力に併せて、第二の電力の全てまたは一部にも電力や電力量にかかわる制約がある場合であっても、これらの制約の下で確度高く確保される。
したがって、負荷に供給されるべき電力は、その電力を得るために合成される電力の内、複数または全ての電力に制約がある場合であっても、確度高く確保される。
【符号の説明】
【0087】
11 太陽電池
12 最大電力点追従制御部(MPPT)
13,18 電圧変換部
14s,14c,14b ダイオード
15 電力変換部
16 充電器
17 蓄電池
20 監視制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力または電力量に制約がある第一の電力と、前記第一の電力の不足分の補充に供される第二の電力とを合成して負荷に供給する合成手段と、
前記合成手段によって前記第一の電力と前記第二の電力とが合成される比率を前記制約の範囲で設定する制御手段と
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記制御手段は、
前記第二の電力の一部または全てとして、前記第二の電力と、前記制約の範囲内における前記第一の電力との双方もしくは何れか一方の余剰分の蓄積によって得られた第三の電力を前記第一の電力と合成する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置において、
前記余剰分の蓄積に、
電気自動車に備えられあるいは備えられ得る電池が供される
ことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の電源装置において、
前記制御手段は、
前記負荷によって消費された電力の実績に適した値に前記比率を設定する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電源装置において、
前記合成手段は、
前記第一の電力と前記第二の電力とを直流電力に揃えて合成し、
前記制御手段は、
前記第一の電力と前記第二の電力とに対応した前記直流電力の電圧の組み合わせとして前記比率を設定する
ことを特徴とする電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−38966(P2013−38966A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174203(P2011−174203)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】