説明

電源装置

【課題】電池セルが増加しても部品点数や作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化を図ることができる電源装置を提供する。
【解決手段】積層された複数の電池セル2,3を有し、隣り合う電池セル2,3の互いの電極2b,3b同士が対向して配置された電池集合体1と、電池集合体1の電極2b,3bが突出された側に配置され、フラットケーブル30Aが配策されると共にその導体31を保持する絶縁ブロック体とを備え、隣り合う電池セル2の対向配置された一対の電極2b,3bとフラットケーブル30Aの導体31が直接接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数の電池セルを有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車には、電動モータの駆動源として電源装置が搭載される。この種の従来の電源装置として、特許文献1に開示されたものがある。この電源装置50は、図9及び図10に示すように、積層された複数の電池セル52が2列配列された電池集合体51を備えている。各電池セル52の上面には、一対の電極(プラス電極とマイナス電極)52a,52bが突設されている。隣接する電池セル52の一対の電極52a,52b間は、連結端子53と2つの挟持端子54,55によって接続されている。連結端子53は、バスバーより形成され、連結する電極52a,52bの向きに応じた一対の接触片部53a,53bを有する。2つの挟持端子54,55は、バスバーよりそれぞれ形成され、いずれか一方の電極52a,52bと連結端子53のいずれか一方の接触片部53a,53bをそれぞれ挟持する。一方の挟持部材54には、音叉端子54aが一体に設けられている。音叉端子54aには、電圧検出用電線Wが圧入によって接続される。連結端子53と2つの挟持端子54,55は、合成樹脂製の取付部材56によって一体に固定されている。
【0003】
上記従来例では、電池集合体51の各電池セル52は、連結端子53及び2つの挟持端子54,55を介して直列に接続される。そして、各電池セル52の電極位置における電圧情報が音叉端子54aに接続された電圧検出用電線Wを介して出力される。これにより、各電池セル52の出力状態を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−55885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来例では、隣接する電池セル52の電極間接続とその電極位置の電圧情報を得るのに、連結端子53と2つの挟持端子54,55と共に取付部材56が使用されている。連結端子53と2つの挟持端子54,55と取付部材56は、各電極接続箇所毎に必要であるため、電池セル52の増加に従って部品点数、作業工数等が増加する。又、電極間の接続箇所毎に連結端子53と2つの挟持端子54,55の設置スペースが必要であるため、電源装置50の大型化、重量化になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、電池セルが増加しても部品点数や作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化を図ることができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、積層された複数の電池セルを有し、隣り合う前記電池セルの互いの電極同士が対向して配置された電池集合体と、前記電池集合体の前記電極が突出された側に配置され、電圧検出用電線が配策されると共にその接続部を保持する絶縁ブロック体とを備え、隣り合う前記電池セルの対向配置された一対の電極と前記電圧検出用電線の前記接続部が直接接続されたことを特徴とする電源装置である。
【0008】
前記電圧検出用電線の前記接続部は、前記電圧検出用電線の導体自体であることが好ましい。
【0009】
前記電圧検出用電線の前記接続部は、一対の電極間に挟持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、絶縁ブロック体に保持された電圧検出用電線の接続部と、隣り合う電池セルの一対の電極間が直接接続されるため、一対の電極間の接続とその電極位置の電圧情報を得るのに、従来例に較べて少ない部品点数で行うことができる。従って、電池セルが増加しても部品点数、作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1一実施形態を示し、電源装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)は電源装置の要部平面図、(b)は電源装置の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、(a)はフラットケーブルと各電池セルの電極との接続状態を示す斜視図、(b)はフラットケーブルと電池セルの電極との接続状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、電池集合体の斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示し、(a)は第1電池セルの斜視図、(b)は第2電池セルの斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態を示し、一方の絶縁ブロック体の分解斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示し、一方の絶縁ブロック体の分解斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示し、フラットケーブルに接続された端子と電池セルの電極との接続状態を示す断面図である。
【図9】従来例の電源装置の分解斜視図である。
【図10】従来例の電源装置の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1〜図6は本発明の第1実施形態を示す。図1及び図2に示すように、電源装置Aは、積層された複数(12個)の電池セル2,3から成る電池集合体1と、この電池集合体1の両側に配置された一対の絶縁ブロック体10,20と、電圧電出用電線である2本のフラットケーブル30A,30Bとを備えている。
【0014】
電池集合体1は、図3及び図4(a)にも示すように、12個の電池セル2,3より構成されている。電池セル2,3としては、その電極2b,3bの配置が異なる2種類のもの、つまり、第1電池セル2と第2電池セル3が使用されている。
【0015】
第1電池セル2は、図5(a)に示すように、扁平長方形のセル本体2aと、その左右の側面より突出された一対の電極(プラス電極とマイナス電極)2bを有する。一対の電極2bは、一方がセル本体2aの表面側に、他方がセル本体2aの裏面側にそれぞれ突出し、且つ、中心線に対して同じ側で偏った位置に配置されている。表裏逆転配置すると、一対の電極2bは、平面視で共に同じ左右逆位置に位置する。各電極2bは、薄膜形状(板状)である。
【0016】
第2電池セル3は、図5(b)に示すように、扁平長方形のセル本体3aと、その左右の側面より突出された一対の電極(プラス電極とマイナス電極)3bを有する。一対の電極3bは、一方がセル本体3aの表面側に、他方がセル本体3aの裏面側にそれぞれ突出し、且つ、中心線に対して異なる側で偏った位置に配置されている。表裏逆転配置すると、一対の電極3bは、平面視でそれぞれが左右逆転した位置にそれぞれ位置する。各電極3bは、薄膜形状(板状)である。
【0017】
このように構成された第1電池セル2と第2電池セル3は、図3、図4(a)に示すように、交互で、且つ、隣り合う第1電池セル2と第2電池セル3の互いに異なる極の電極2b,3b同士が密着状態で対向されるように積層されている。これにより、電池集合体1は、12個の電池セル2,3が全て直列接続されている。
【0018】
一方の絶縁ブロック体10は、図6等に詳しく示すように、絶縁ケース本体11と絶縁カバー12を有する。絶縁ケース本体11には、電池集合体1の一方側より突出された電極2b、3b位置に対応する7つの位置に電極挿入孔13が開口されている。
【0019】
絶縁ケース本体11には、一対の出力端子14が固定されている。一対の出力端子14の一方がプラス側出力端子であり、他方がマイナス側出力端子である。各出力端子14は、バスバーより形成されている。各出力端子14は、ストレート形状である。各出力端子14は、その一部が各絶縁ケース本体11より露出し、この露出箇所が外部接続部14aである。各出力端子14の各絶縁ケース本体11内での露出箇所が電極接続部14bである。上方位置の出力端子14の電極接続部14bは、最上位置の電極挿入孔13の内部スペースに配置されている。下方位置の出力端子14の電極接続部14bは、最下位置の電極挿入孔13の内部スペースに配置されている。
【0020】
絶縁ケース本体11には、フラットケーブル30Aが配策されると共にその先端側が保持されている。フラットケーブル30Aの先端側は、6本の導体箇所がスリットによって分岐されている。この6本の分岐ケーブル部31は、各電極挿入孔13(最下段の電極挿入孔13を除く)の内部スペースを横方向に横切るように架設されている。各分岐ケーブル部31の架設箇所は、導体31a(図3(b)に示す)が露出されている。つまり、フラットケーブル30Aの導体31a自体が電圧検出用電線の接続部として構成されている。
【0021】
電池集合体1の一方側に突出された電極2b,3bは、一方の絶縁ブロック体10の各電極挿入孔13内に挿入されている(図1参照)。最上位置の電極挿入孔13内に挿入された電極2bは、出力端子14の電極接続部14bとの間で分岐ケーブル部31の導体31aを挟むようにして配置されている。出力端子14と電極2bと導体31aは、抵抗溶接等によって接続されている。最下位置の電極挿入孔13内に挿入された電極3bは、出力端子14の電極接続部14bの上面に密着されている。出力端子14と電極3bは、抵抗溶接等によって接続されている。
【0022】
中間位置の各電極挿入孔13内に挿入された各一対の電極2b,3bは、図3(b)に示すように、フラットケーブル30Aの導体31aを挟むようにして配置されている。各一対の電極2b,3bとフラットケーブル30Aの各導体31aは、抵抗溶接等によって接続されている。つまり、一対の電極2b、3bには、フラットケーブル30Aの導体31a自体が直接接続されている。
【0023】
絶縁カバー12は、絶縁ケース本体11の開口側を塞ぐようにして装着される。一方の絶縁ブロック体10は、電池集合体1の一方側に突出する電極2b,3bの絶縁を行っている。
【0024】
他方の絶縁ブロック体20は、図1及び図2に示すように、絶縁ケース本体21と絶縁カバー22を有する。絶縁ケース本体21には、前記一方の絶縁ブロック体10と同様に、他のフラットケーブル30Bが配策されると共にその先端側が保持されている。他のフラットケーブル30Bには、電池集合体1の他方側に突出された電極2b,3bが上記と同様な構造によって接続されている。他方の絶縁ブロック体20は、電池集合体1の他方側に突出する電極2b,3bの絶縁を行っている。
【0025】
又、絶縁ケース本体21には、制御基板23が固定されている。尚、図1は、絶縁ケース本体21が開位置である。制御基板23には、2本のフラットケーブル30A,30Bの他端が接続されている。これにより、各電極2b,3b位置における電圧情報が制御基板23に出力されている。制御基板23では、これら情報に基づいて各電池セル2,3の出力電圧に関する異常の有無を判断できるようになっている。
【0026】
以上説明したように、電池集合体1と絶縁ブロック体10,20とを備え、隣り合う電池セル2,3の対向配置された一対の電極2b、3bと電圧検出用電線であるフラットケーブル30A,30Bの導体31aが直接接続されている。つまり、絶縁ブロック体10,20に配策され、且つ、保持されたフラットケーブル30A,30Bの導体31aと、隣り合う電池セル2,3の一対の電極2b,3b間が直接接続されるため、一対の電極2b,3b間の接続とその電極位置の電圧情報を得るのに、従来例に較べて少ない部品点数で行うことができる。従って、電池セル2,3が増加しても部品点数、作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0027】
この実施形態では、電圧検出用電線であるフラットケーブル30A,30Bの接続部は、フラットケーブル30A,30Bの導体31a自体である。従って、一対の電極2b,3b間の接続とその電極位置の電圧情報を得るのに、付属部品が一切必要ないため、電池セル2,3が増加した場合でも部品点数、作業工数の増加を最大限抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化を十分に図ることができる。
【0028】
前記フラットケーブル30A,30Bの導体31aは、一対の電極2b,3b間に挟持された状態で直接接続されている。従って、電極2b,3bとフラットケーブル30A,30B間の接続信頼性が向上する。
【0029】
電圧検出用電線は、フラットケーブル30A,30Bである。従って、電池集合体1の電池セル2,3の数が増大してもフラットケーブル30A,30Bを重ねた状態で配策することにより電圧検出用電線の配策スペースの増大を抑制できる。
【0030】
(第2実施形態)
図7及び図8は、本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態では、電圧検出用電電であるフラットケーブル30Aは、接続部である端子32を介して一対の電極2b,3bに直接接続されている。以下、説明する。
【0031】
図7に示すように、フラットケーブル30Aの先端側の各導体には、接続部としての端子32がそれぞれ接続されている。各端子32は、電池集合体2の各一対の電極2b、3bが突出する位置で一方の絶縁ケース本体11に固定されている。端子32は、バスバーより形成されている。端子32は、フラットな板形状である。各一対の電極2b、3bは、図8に示すように、端子32を挟み込むように配置されている。各一対の電極2b,3bとフラットケーブル30Aの各端子32は、抵抗溶接等によって接続されている。
【0032】
他方の絶縁ブロック体の絶縁ケース本体側でも同様に構成されている。
【0033】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。図面の同一構成箇所には、同一符号を付して明確化を図る。
【0034】
この第2実施形態においても、絶縁ブロック体10に保持されたフラットケーブル30Aの端子32と、隣り合う電池セル2,3の一対の電極2b,3b間が直接接続されるため、一対の電極2b,3b間の接続とその電極位置の電圧情報を得るのに、従来例に較べて少ない部品点数、具体的には端子32のみを使用して行うことができる。従って、電池セル2,3が増加しても部品点数、作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0035】
(その他)
前記各実施形態の変形例としては、次の構成が考えられる。絶縁ブロック体10,20が電池集合体1に設置される前の状態では、隣り合う電池セル2,3の一対の電極2b,3b間が間隔を空けた状態とする。絶縁ブロック体10,20の絶縁ケース本体11,21には、各電極挿入孔13に挿入された一対の電極2b,3bの間隔を狭める方向に規制する電極ガイド部を設ける。
【0036】
各絶縁ブロック体10,20を電池集合体1の電極突出側に配置するべく近づけると、各一対の電極2b,3bが電極挿入孔13が挿入される。すると、各一対の電極2b,3b間のスペースにフラットケーブル30A,30Bの導体31や端子32が挿入されると共に、挿入が進むに従って各一対の電極2b,3bの間隔が電極ガイド部によって徐々に狭められる。そして、各一対の電極2b,3bが挿入完了位置まで挿入されると、フラットケーブル30A,30Bの導体31や端子32が一対の電極2b,3bに挟持された状態とされる。
【0037】
この変形例では、絶縁ブロック体10,20の電池集合体1への組み付け作業過程で、フラットケーブル30A,30Bの導体31や端子32が一対の電極2b,3b間に自動的に挟持される状態にされるため、作業性が向上する。
【0038】
フラットケーブル30A,30Bは、扁平な帯状のケーブルであり、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキシブルプリント基板(FPC)である。
【符号の説明】
【0039】
A 電源装置
1 電池集合体
2,3 電池セル
2b、3b 電極
10,20 絶縁ブロック体
30A,30B フラットケーブル(電圧検出用電線)
31a 導体(接続部)
32 端子(接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電池セルを有し、隣り合う前記電池セルの互いの電極同士が対向して配置された電池集合体と、
前記電池集合体の前記電極が突出された側に配置され、電圧検出用電線が配策されると共にその接続部を保持する絶縁ブロック体とを備え、
隣り合う前記電池セルの対向配置された一対の電極と前記電圧検出用電線の接続部が直接接続されたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記電圧検出用電線の接続部は、前記電圧検出用電線の導体自体であることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の電源装置であって、
前記電圧検出用電線の接続部は、一対の電極間に挟持されていることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−89488(P2013−89488A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229803(P2011−229803)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】