説明

電磁コイル及び電磁弁

【課題】電磁コイルにおいて、コイル部材1の周囲にガイカン下2とガイカン上3を配置して磁気回路効率を上げるとともに小型化する。
【解決手段】ガイカン下2のフランジ部21の四隅に段部211を設ける。ガイカン上3の側板部32,32の四隅に爪部321を設ける。ガイカン上3の端板部31とガイカン下2のフランジ部21との間にコイル部材1を挟む。ガイカン下2をガイカン上3の側板部32,32の間に嵌め込む。側板部32,32の爪部321をガイカン下2の段部211の内面211aの上に折り曲げ、ガイカン下2とガイカン上3とでコイル部材1を圧着する方向に加圧して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のコイルを樹脂で封止するなどで構成したコイル部材の外周にヨーク部材を装着した電磁コイル、及びこの電磁コイルを備えた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁コイル及び電磁弁として、例えば特開2005−113991号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この電磁弁はパイロット弁として使用されるもので、弁体に連結されたプランジャ(可動鉄心)を内挿する円筒状のソレノイドチューブの回りに電磁コイルを備える。この電磁コイルは、中空ボビンの外周に巻線を巻回して形成されたコイル部材(ソレノイドコイル16)と、その外周に装着されたヨーク部材(フレーム40)とで構成されている。
【0003】
図8は従来の電磁コイルの一例を示す図であり、特許文献1の電磁コイルと同様な構成となっている。コイル部材10は、巻線を巻回したコイルを樹脂で封止したものである。このコイル部材10の外周にはヨーク部材20が装着されている。ヨーク部材20は、単一部品として形成されており、コイル部材10の中心軸線Lの両側において互いに対面するように配置された一対の側板部20a,20aと、一対の側板部20a,20aの一端部を一体的に結合させる端板部20bと、各側板部20a,20aの他端部からそれぞれ中心軸線Lに向けて延びる一対の延長部20c,20cとを有している。
【0004】
一対の延長部20c,20cの各先端面は間隙20dを隔てて互いに対面するようになっている。延長部20c,20cは、端板部20bに向かって傾斜して延びており、その弾性力によりコイル部材10を押圧するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−113991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記図8の従来の電磁コイルでは、その構造上、コイル部材10とヨーク部材20(一対の延長部20c,20c)との間に隙間Dが生じてしまう。この状態でコイル部材10を保持するため、ヨーク部材20(一対の延長部20c,20c)とコイル部材10との接触面積が小さくなり、コイル部材10に損傷を与える恐れがある。また、電磁コイル自体の体格が大きくなるという問題がある。さらには、この隙間Dが生じることで磁気回路効率が悪くなる分、コイル部材の駆動電力が増加し、電磁弁に適用した場合、電磁弁自体の大型化、重量増をまねくという問題がある。このことは特許文献1の電磁コイル及び電磁弁においても同様である。
【0007】
本発明は、円筒状のコイルを樹脂で封止するなどで構成したコイル部材の外周にヨーク部材を装着した電磁コイル及び電磁弁において、ヨーク部材を改良し、コイル部材の損傷を防止するとともに、小型化、軽量化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の電磁コイルは、コイル部材と、前記コイル部材の外周に装着された ガイカンと、を備えた電磁コイルであって、前記ガイカンは、前記コイル部材の前記コイルの中心軸と交差する両端面のうち、一方の端面に面接触する矩形の第1分割ガイカンと、前記コイル部材の他方の端面に面接触する矩形の端板部と該端板部の対向辺から前記中心軸と平行に同方向にそれぞれ延設された一対の側板部とを一体に形成した第2分割ガイカンと、から構成され、前記第2分割ガイカンの前記端板部に前記コイル部材の前記他方の端面を面接触させるとともに該コイル部材の前記一方の端面に前記第1分割ガイカンを面接触させて、前記ガイカン内に前記コイル部材を配置し、前記第1分割ガイカンの平行な一対の端部付近を前記第2分割ガイカンの前記側板部に面接触させ、該第1分割ガイカンの四隅と前記一対の側板部の四つの角部においてかしめ部を形成し、該かしめ部にて、前記第2分割ガイカンの前記端板部と前記第1分割ガイカンとが前記コイル部材を圧着する方向に加圧し、該ガイカンに前記コイル部材を固定するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の電磁コイルは、請求項1に記載の電磁コイルであって、前記かしめ部が、前記第2分割ガイカンの前記側板部の四つの隅部付近に形成した爪部を、前記第1分割ガイカンの四隅の面内になるように前記中心軸回りの内側に屈曲させることにより、該爪部が前記四隅を前記圧着方向に加圧するように形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の電磁コイルは、請求項1に記載の電磁コイルであって、前記かしめ部が、前記第1分割ガイカンの前記四隅に形成した爪部を、前記第2分割ガイカンの前記側板部の四つの隅部付近に形成した凹部内になるように前記中心軸回りの内側に曲げさせることにより、該凹部の内側面が前記爪部を前記圧着方向に加圧するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の電磁弁は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電磁コイルを電磁駆動部として備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態の電磁コイルの六面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の電磁コイルのかしめ部の拡大斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態の電磁コイルのかしめ部の作用を説明する図である。
【図4】本発明の第1実施形態の電磁コイルの分解正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の電磁コイルの四面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の電磁コイルのかしめ部の拡大斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の電磁弁の正面図である。
【図8】従来の電磁コイルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の電磁コイル及び電磁弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態の電磁コイルの六面図、図2は同電磁コイルのかしめ部の拡大斜視図、図3は同電磁コイルのかしめ部の作用を説明する図、図4は同電磁コイルの分解正面図である。
【0014】
この第1実施形態の電磁コイルは、円筒状のコイル11(図4参照)を樹脂で封止したコイル部材1と、コイル部材1の下部に装着される「第1分割ガイカン」としてのガイカン下1と、コイル部材1の外周に装着される「第2分割ガイカン」としてのガイカン上3とを備えている。図4において符号Lはコイル11の円柱の中心軸であり、コイル11への通電により中心に生じる磁界の方向は中心軸Lの方向となる。また、コイル部材1は中心軸Lと交差する平面状の両端面1a,1bを有している。また、コイル部材1は、その中央に電磁弁のプランジャケースを挿入する中心孔12を有している。
【0015】
ガイカン下2とガイカン上3は鉄板製であり、ガイカン下2は略矩形のフランジ部21と円筒状の開口部22とを有している。このガイカン下2のフランジ部21はコイル部材の両端面1a,1bのうち一方の端面1aに面接触する。
【0016】
ガイカン上3は、コイル部材1の他方の端面1bに面接触する矩形の端板部31と、この端板部31の対向辺31a,31aから中心軸Lと平行に同方向にそれぞれ延設された一対の側板部32,32とを一体に形成したものである。端板部31には電磁弁のプランジャケースをネジ止めするためのネジ穴31bが形成されている。
【0017】
コイル部材1は、ガイカン上3の側板部32,32の内側に配置され、ガイカン下2が側板部32,32の端部に固定されている。なお、側板部32,32は、図2の状態ではガイカン下2の幅がガイカン上3の幅より大きくなるように設定しており、ガイカン下2は側板部32,32の端部の間に嵌合され、この端部の内面32a(図4参照)にフランジ部21の端部の内面21a(図4参照)が当接される。また、この状態で、コイル部材1の端面1bが端板部31の内面に面接触させるとともに、端面1aにガイカン下2のフランジ部21の内面に面接触される。
【0018】
ガイカン下2の四隅と一対の側板部32,32の四つの角部において、かしめ部Aが形成されている。そして、このかしめ部Aにて、ガイカン上3の端板部31とガイカン下2とが、コイル部材1を圧着する方向に加圧されている。
【0019】
図2は一箇所のかしめ部Aを示しているが、その他のかしめ部Aも図2と同じ構成あるいは鏡映対象な同様な構成となっている。かしめ部Aにおいて、ガイカン下2のフランジ部21の四隅にそれぞれ、外側から窪んだ段部211が形成されている。また、ガイカン上3の側板部32,32の四つの隅部付近に爪部321がそれぞれ形成されている。爪部321は、ガイカン下2の段部211の内面211aに架かるように、中心軸L回りの内側に屈曲されている。これにより、爪部321が段部211(すなわち、ガイカン下2の四隅)を加圧している。この加圧力は、中心軸Lと平行な方向であり、ガイカン上3の端板部31とガイカン下2とがコイル部材1を圧着する方向である。
【0020】
図3は図2の矢印X方向から見た図であり、図3により上記作用を詳細に説明する。爪部321は、側板部32に楔状の溝322を切り欠くことにより形成したものであり、図に一点鎖線の円で示した部分で、爪部321の溝322側の縁321aが段部211の面211aと交差するようになっている。これにより、爪部321を内側に屈曲させることで爪部321の縁321aが段部211を前記圧着方向に加圧する。
【0021】
以上のように、かしめ部Aによりガイカン下2とガイカン上3とがコイル部材1を圧着するように固定されているので、前記図8で説明した従来の電磁コイルにおける隙間Dなどが生じず、この実施形態の電磁コイルは最小限の大きさとすることができる。また、ガイカン全体がコイル部材1の端面1a,1bに密着しているので磁気回路効率が高くなる。さらに、かしめ部Aは中心軸L方向から見て、コイル部材1の無い位置にあり、かしめは中心軸に対し垂直方向に曲げるので、このかしめ部Aの応力がコイル部材1に直接加わることなく、ガイカン下2の弾性を持ちながらコイル部材1を保持できる。
【0022】
図5は本発明の第2実施形態の電磁コイルの四面図、図6は同電磁コイルのかしめ部の拡大斜視図である。第1実施形態と第2実施形態の違いは、第1実施形態におけるかしめ部Aと第2実施形態におけるかしめ部Bの部分であり、第2実施形態において第1実施形態と同じ要素には同符号を付記してその詳細な説明は省略する。なお、図6は一箇所のかしめ部Bを示しているが、その他のかしめ部Bも図6同じ構成あるいは鏡映対象な同様な構成となっている。
【0023】
この第2実施形態におけるかしめ部Bにおいて、ガイカン上3の側板部32,32の四つの隅部付近にそれぞれ、外側から窪んだ凹部323が形成されている。また、ガイカン下2のフランジ部21の四隅に爪部212がそれぞれ形成されている。爪部212は、ガイカン上3の凹部323の内側に架かるように、中心軸L回りの内側に曲げられている。これにより、凹部323の内側面323aが爪部212(すなわち、ガイカン下2の四隅)を加圧している。この加圧力は、中心軸Lと平行な方向であり、ガイカン上3の端板部31とガイカン下2とがコイル部材1を圧着する方向である。なお、図5(A) 、図5(C) においては、爪部212を折り曲げていない状態をしめしている。
【0024】
この第2実施形態でも、かしめ部Bによりガイカン下2とガイカン上3とがコイル部材1を圧着するように固定されているので、前記隙間Dなどが生じず、電磁コイルは最小限の大きさとすることができ、かつ、磁気回路効率の高くなる。また、かしめ部Bは前記同様にコイル部材1の無い位置にあるので、かしめ部Bの応力がコイル部材1に直接加わることなく、ガイカン下2の弾性を持ちながらコイル部材1を保持できる。
【0025】
図7は実施形態の電磁コイルを用いた電磁弁の正面図である。この電磁弁は、実施形態の電磁コイルに、ガイカン下2の前記開口部22にプランジャケース4を挿入し、ガイカン上3のネジ穴31bで、ボルトネジ5によりネジ止めされている。プランジャケース4の内部には図示しない弁室を構成するハウジングがあり、継手管6,7が接続されている。また、プランジャケース4内には、図示しない吸引子、プランジャ、弁体、弁座部材等が収容されており、電磁コイルを駆動部として動作する。なお、ボルト5は吸引子にねじ込まれる。
【符号の説明】
【0026】
1 コイル部材
2 ガイカン下(第1分割ガイカン)
21 フランジ部
211 段部
211a 段部の面
3 ガイカン上(第2分割ガイカン)
31 端板部
32 側板部
321 爪部
A かしめ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部材と、
前記コイル部材の外周に装着された ガイカンと、
を備えた電磁コイルであって、
前記ガイカンは、前記コイル部材の前記コイルの中心軸と交差する両端面のうち、一方の端面に面接触する矩形の第1分割ガイカンと、前記コイル部材の他方の端面に面接触する矩形の端板部と該端板部の対向辺から前記中心軸と平行に同方向にそれぞれ延設された一対の側板部とを一体に形成した第2分割ガイカンと、から構成され、
前記第2分割ガイカンの前記端板部に前記コイル部材の前記他方の端面を面接触させるとともに該コイル部材の前記一方の端面に前記第1分割ガイカンを面接触させて、前記ガイカン内に前記コイル部材を配置し、
前記第1分割ガイカンの平行な一対の端部付近を前記第2分割ガイカンの前記側板部に面接触させ、該第1分割ガイカンの四隅と前記一対の側板部の四つの角部においてかしめ部を形成し、該かしめ部にて、前記第2分割ガイカンの前記端板部と前記第1分割ガイカンとが前記コイル部材を圧着する方向に加圧し、該ガイカンに前記コイル部材を固定するようにしたことを特徴とする電磁コイル。
【請求項2】
前記かしめ部が、前記第2分割ガイカンの前記側板部の四つの隅部付近に形成した爪部を、前記第1分割ガイカンの四隅の面内になるように前記中心軸回りの内側に屈曲させることにより、該爪部が前記四隅を前記圧着方向に加圧するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁コイル。
【請求項3】
前記かしめ部が、前記第1分割ガイカンの前記四隅に形成した爪部を、前記第2分割ガイカンの前記側板部の四つの隅部付近に形成した凹部内になるように前記中心軸回りの内側に曲げさせることにより、該凹部の内側面が前記爪部を前記圧着方向に加圧するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁コイル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電磁コイルを電磁駆動部として備えたことを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−58667(P2013−58667A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196872(P2011−196872)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】