説明

電磁場処理装置、自動飲料供給装置、加湿装置、切削油供給装置

【課題】水処理設備の水路となるパイプ内のスケールの付着防止、除去等を行う電磁場処理装置を省電力化する。
【解決手段】
流体や気体を扱う各種装置や設備に設置される電磁場処理装置1であって、前記パイプ18の外周に少なくとも1つのソレノイド状又はスパイラル状のコイル17を設け、このコイル17に印加する電流を、周波数変調器11によって周波数変調する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備の流体や水蒸気の流路に設置され、流体や気体を改質したり、その流路に付着するスケールを予防・除去したりする電磁場処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道設備、冷却設備、加湿設備、排水設備等の水を使用する設備(以下、各種水処理設備という)において、水中に含まれるカルシウムやマグネシウムのイオンにより、水の流路として使用される金属パイプの内壁にスケールや大量の沈殿物が生成されてパイプを詰まらせる場合がある。これを取り除く手段として、例えば、第1の方法として薬品を用いて化学的に処理する方法が開発されている。第2の方法として強力な固定磁界を生成する永久磁石を用いて物理的に処理する方法が開発されている。また、第3の方法として流体流路となる金属パイプにコイルを巻き、そのコイルに周波数が変化(周波数変調)する交流信号を加えて処理する変調電場方式が開発されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3247942号公報
【非特許文献1】平成17年度東北大学博士学位論文 東北大学大学院環境科学研究科 梅木 千真
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した薬品を用いて化学的に処理する第1の方法では、特殊な薬品を使用するため、パイプへの投入が面倒でありまた環境面でも好ましくないという問題があった。また、前述した強力な固定磁界を生成する永久磁石を用いて物理的に処理する第2の方法では水質によって効果が異なり、例えば、カルシウムやシリカ成分の多い日本の水には充分な効果を発揮しない等の問題があった。前述した第3の方法は、交流電場によって水中の微粒子や電磁的物質の界面電位をコントロールするのでスケール防止効果があり、また水だけでなく、油や油成分を含む流体等のスケール防止に関しても効果がある。しかし、コイルに所定の周波数の交流電場を与え続けなければならず、消費電力が大きくなり、既存の水処理設備等の電力容量では足りなくなってしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、斯かる事情に鑑み、変調電場方式において、消費電流を大幅に減少させることができる電磁場処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成する本発明は、流体又は気体の流路近傍に設けられて前記流体に電磁場を印加する電磁波処理装置であって、前記流路の外周に設けられる少なくとも1つのソレノイド状又はスパイラル状のコイルと、前記コイルに接続され、前記コイルに電流を流して電磁場を励起する電流発生器と、前記電流発生器における前記電流の周波数を変化させる周波数変調器と、を備えること、を特徴とする。
【0006】
(2)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記コイルに流れる前記電流を断続制御する断続制御器を備えることを特徴とする。
【0007】
(3)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記断続制御器は、前記周波数変調器から発生するキャリアを断続的にオン・オフすることを特徴とする。
【0008】
(4)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記周波数変調器は、前記周波数を離散的に変化させることを特徴とする。
【0009】
(5)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記周波数変調器は、前記周波数を離散的に変化させる際に、各離散点において該離散点を基準に前記周波数を変動させることを特徴とする。
【0010】
(6)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記周波数変調器は、前記離散点を基準として前記周波数をランダムに変動させることを特徴とする。
【0011】
(7)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記周波数変調器は、前記離散点を基準とした所定帯域幅内で前記周波数を決定することを特徴とする。
【0012】
(8)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記周波数発生器は、前記離散点を決定する第1設定値と、前記離散点に基づく所定帯域幅内で前記周波数を決定する第2設定値を有することを特徴とする。
【0013】
(9)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記周波数発生器は、上位ビット及び下位ビットを有するデジタル信号を変化させることで前記周波数を決定するプログラマブルカウンタと、前記デジタル信号の前記下位ビットにランダム値を挿入する乱数発生器と、を備え、前記周波数発生器は、前記上位ビットを適宜変更することで前記離散点を選定するとともに、前記下位ビットの前記ランダム値によって、前記離散点に基づいた最終的な前記周波数を決定することを特徴とする。
【0014】
(10)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記周波数変調器は、前記周波数を、複数の周波数帯域に分散するように変化させることを特徴とする。
【0015】
(11)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記周波数変調器は、5KHz〜7KHzの周波数帯の周波数の発生頻度を他の周波数の発生頻度より高くすることを特徴とする。
【0016】
(12)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記流路の中の流体又は気体の通過を検出する流路検出手段を備え、前記流路検出手段によって前記流体又は気体が検出された時に前記コイルによって電磁場を励起することを特徴とする。
【0017】
(13)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記流体検出手段は、前記流路近傍に設けられる検出用コイルと、前記検出用コイルのインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、を備え、前記インピーダンス測定手段による前記検出用コイルのインピーダンスの測定結果に基づいて、前記電磁場を励起するか否かを判断することを特徴とする。
【0018】
(14)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記流体の水流により発電する水力発電手段をさらに備え、前記電流発生器は、前記水力発電手段により発電された電力を利用して稼働することを特徴とする。
【0019】
(15)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、前記水力発電手段は、前記流体の流路の一部を構成可能なパイプと、前記パイプ内に設置されて前記水流により回転する水車と、前記水車の回転により発電する発電手段と、を備え、前記パイプの外周には前記コイルが設けられていることを特徴とする。
【0020】
(16)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、太陽光により発電する太陽光発電手段を備え、前記電流発生器は、前記太陽光発電手段により発電された電力を利用して稼働することを特徴とする。
【0021】
(17)上記目的を達成する電磁波処理装置は、上記発明において、太陽光により発電する太陽光発電手段と、前記太陽光発電手段による太陽光による発電量を測定する監視手段と、を備え、前記電流発生器は、前記太陽光発電手段により発電された電力を利用して稼働し、前記断続制御器は、前記監視手段の測定結果に基づいて、前記電流を断続制御するか否かを切り替えることを特徴とする。
【0022】
(18)上記目的を達成する本発明は、飲料水を貯留する飲料水貯留タンクと、前記飲料水貯留タンクから前記飲料水を導出する飲料水導出パイプと、前記飲料水導出パイプの設置される上記発明の電磁場処理装置と、を備えることを特徴とする、サーバー式の自動飲料供給装置である。
【0023】
(19)上記目的を達成する本発明は、加湿用の水を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクに貯留されている前記水を水蒸気にする水蒸気生成手段と、前記貯留タンクと前記水蒸気生成手段を連結する水導出パイプと、前記水導出パイプの設置される上記発明の電磁場処理装置と、を備えることを特徴とする加湿装置である。
【0024】
(20)上記目的を達成する本発明は、切削油を貯留する切削油貯留タンクと、前記切削油貯留タンクから前記切削油を導出する切削油導出パイプと、前記切削油導出パイプの設置される上記発明の電磁場処理装置と、を備えることを特徴とする切削油供給装置である。
【0025】
本発明者は、鋭意検討の結果、励起信号は常時印加する必要はなく、間欠的な信号の印加によっても、十分な効果を発揮することを確認した。そこで本発明では、FM変調された当該信号を断続的に発生させたりすることで、コイルの励起を断続的に行う手段を付加する。これらの手段を、例えば、各種水処理設備やその他各種流体を扱う設備に使用する変調電場方式のスケール防止装置に適用することで、電源容量を変更する必要を生じさずに、省電力化を達成することができる。さらに省電力化により、電源供給機能を持たない各種水処理設備などに使用する場合においても、太陽光発電や水道水等による水力発電を有効活用できるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、水処理設備での水路となる金属パイプ内部のスケールの付着防止、除去等を、極めて低消費電力で実現することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0028】
図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る電磁場処理装置1について説明する。同図は、第1実施形態に係る電磁場処理装置1の概略システム図である。
【0029】
電磁場処理装置1は、FM変調器11と、ゲート回路14と、ドライバー回路16と、ソレノイド状コイル17(以下、単にコイル17と言うことがある)から構成される。FM変調器11には、搬送波信号10と変調波信号12が入力される。ゲート回路14には、タイミング制御信号15が入力される。
【0030】
搬送波信号10は、矩形波形状のパルス信号であり、後述するFM変調器11に入力される搬送波である。なお、この搬送波信号10の波形形状は、矩形波に限定されるものではなく、正弦波やその他の信号波でも良いことは言うまでもない。
【0031】
変調波信号12は、FM変調器11に加えられるのこぎり波形状の信号である。なお、変調波信号12の波形形状は、のこぎり波形状に限定されるものではなく、必要な周波数推移を得られるものであれば、階段波形やその他の波形でも良いことは言うまでもない。FM変調器11は、前述した搬送波信号10の周期を、この変調波信号12のレベルに基づいて所定の周期に変調する。結果、のこぎり波形の一周期毎に、搬送波信号10の周波数が低周波から高周波まで上昇し、その後、低周波に戻るようになっている。
【0032】
搬送波出力信号13は、前述した搬送波信号10が周波数変調されたFM変調器11の出力波信号である。
【0033】
ゲート回路14及びタイミング制御信号15は、コイル17に流れる電流を断続制御する断続制御器であり、入力された搬送波出力信号13を、所定のタイミング信号(例えば、タイミング制御信号15)の入力に基づいて、出力したり停止したりすることができるように構成されている。
【0034】
なお、タイミング制御信号15は、矩形波形状のパルス信号であるが、サイン波やその他の波形でも好ましい。なお、本実施例では、このパルス状のタイミング制御信号15のハイレベルをON,ローレベルをOFFとしている。従って、ハイレベル(ON)の間は、ゲート回路14が搬送波出力信号13をドライバ16側に出力し、ローレベル(OFF)の間は、ゲート回路14が搬送波出力信号13をストップさせる。
【0035】
つまり、この搬送波出力信号13は、タイミング制御信号15に基づく所定のタイミングに基づきゲート回路14から出力されることになる。
【0036】
ドライバー回路16は、コイル17に電流を流して電磁場を励起させる電流発生器であり、タイミング制御信号15の入力に基づいてゲート回路14から出力された搬送波出力信号13をインピーダンス変換して、所定の交流電流をコイル17に印加するものである。
【0037】
なお、ゲート回路14を開放する周期は、コイル17が巻かれたパイプ18内部を水等の流体が通過する速度(時間)によって決定される。具体的には、一般的に水処理設備等で使用される水の流速は2m/秒以下であり、この水がコイル17が巻かれたパイプ18内部を通過する間に、少なくとも1回以上電場の印加がなされるように、ゲート回路14を開放する周期を設定することが好ましい。
【0038】
例えば、同図に示すタイミング制御信号15のONの時間T1を10msec、OFFの時間T2を90msecとすると、タイミング制御信号の周期Sは100msec(0.1秒)となり、デューティ比は10%となる。仮に、ソレノイド状コイル17の長さL1が20cm(0.2m)、水の流速Vが、L1/S=2m/秒以下とすれば、この水が、コイル17内を通過する時間は100msec(0.1秒)以上かかる。従って、上記周期Sが100msec(0.1秒)であれば、必ず1回以上の電場を水に印加させることができる。しかも、デューティー比が10%であることから、従来の消費電力に比べて格段に消費電力を低減することができる。なお、上記関係から、コイル17の長さをL1、コイル17を断続制御する周期をS、内部の流体/気体の流速をVとした場合に、L1/S>=V となるように設定することが好ましいことが分かる。なお、本明細書では、このコイル17への断続的な通電状態を省電力モードと呼ぶことがある。
【0039】
なお、コイル17はスパイラルコイル等でも好ましい。
【0040】
次に、図2を用いて、本発明の第2実施形態に係る電磁場処理装置2について説明する。同図は、第2実施形態に係る電磁場処理装置2の概略システム図である。
【0041】
電磁場処理装置2は、ゲート回路14と、ドライバー回路16と、コイル17と、パイプ18と、タイミング発生器19と、のこぎり波発生器20と、電圧可変発信器21から構成されている。
【0042】
なお、同図の中で、ゲート回路14、タイミング制御信号15、ドライバー回路16、コイル17、パイプ18は、第1実施形態の電磁場処理装置1で説明したゲート回路14、タイミング制御信号15、ドライバー回路16、コイル17、パイプ18と機能、用途が略同じであるので、同一の番号を付し、機能、用途についての詳細な説明は省略する。
【0043】
同図に示すように、のこぎり波発生器20は、のこぎり波形状の信号を発生することができるパルスジェネレータや信号ジェネレータである。なお、のこぎり発生器20の発生波形は、のこぎり波形状に限定されるものではなく、サイン波形やパルス波形やその他の波形形状でも好ましい。
【0044】
電圧可変発信器21は、上述したのこぎり波信号を受信し、この受信したのこぎり波信号の電圧に基づいて所定の周波数変調を行う電圧―周波数変換装置である。この電圧可変発信器21によって、周波数が連続的に変調された出力信号は、後述するゲート回路14に入力される。
【0045】
ゲート回路14は、前述した電圧可変発生器21からの出力信号を受信する。このゲート回路14は、タイミング発生器19から出力されたタイミング制御信号15に基づいて、出力信号を断続的にドライバー回路16に出力する。
【0046】
ゲート回路14から断続的に出力された、出力信号は、ドライバー回路16でインピーダンス変換された後、コイル17を励起する。
【0047】
なお、電圧可変発信器21に入力される信号波は、のこぎり波信号に限定されず、図3に示すように、波型波信号23、正弦(サイン)波信号24、又は階段波信号25等でも好ましい。ほかにも、必要な周波数推移を得られるものであれば、これらの例に限定されず、いずれの波形でも良いことは言うまでもない。例えば、階段波信号25の場合、電圧可変発信器21の出力信号の周波数分布は離散的な値となる。
【0048】
次に、図4を用いて、本発明の第3実施形態に係る電磁場処理装置3について説明する。同図は、第3実施形態に係る電磁場処理装置3の概略システム図である。
【0049】
電磁場処理装置3は、ゲート回路14と、ドライバー回路16と、コイル17と、クロック信号発生器30と、プログラマブルダウンカウンタ31と、制御部32と、1/2カウンタ回路33から構成されている。
【0050】
なお、同図の中で、ゲート回路14、タイミング制御信号15、ドライバー回路16、ソレコイル17、パイプ18は、第1実施形態の電磁場処理装置1で説明したゲート回路14、タイミング制御信号15、ドライバー回路16、コイル17、パイプ18と機能、用途が略同じであるので、同一の番号を付し、機能、用途についての詳細な説明は省略する。
【0051】
この第3実施形態は、プログラマブルダウンカウンタ31を用いることにより周波数変換をデジタル方式で行うと共に、デジタル信号による柔軟な制御を行えるところに特徴がある。
【0052】
クロック信号発生器30は、パルス状のクロック信号を発生することができる一種のパルスジェネレータである。
【0053】
プログラマブルダウンカウンタ31は、クロック信号発生器30から出力されたクロック信号を受信すると共に、制御部32によってレジスタに初期値がセットされてレジスタのダウンカウントを開始する。
【0054】
プログラマブルダウンカウンタ31の出力信号は、1/2カウンタ回路33に入力される。この1/2カウンタ回路33は、ディレイドタイプのフリップフロップ回路で構成されており、出力信号波形のデューティサイクルを1/2(50%)になるように波形整形するように構成されている。例えば、クロック信号発生器30の周波数をf、制御部32が前述したプログラマブルダウンカウンタ31のレジスタにセットする値をNとすると、1/2カウンタ回路33から出力される周波数Fは、F=f/(N×2)として表される。
【0055】
プログラマブルダウンカウンタ31は、不連続でセット値Nをダウンカウントしていくため、上述した出力周波数Fの周波波数分布は、離散的な値をとる。つまり、出力周波数Fを決定する要因となるカウンタの値Nは、周波数Fの離散点を決定していることになる。なお、制御部32のプログラム制御を適宜実行することにより、出力周波数Fを自在に制御することも可能となる。
【0056】
さらに1/2カウンタ回路33の出力信号は、ゲート回路14に加えられ、制御部32から出力されるタイミング制御信号15によってドライバー回路16に断続的に出力される。なお、この断続的に出力された出力信号は、ドライバー回路16によりインピーダンス変換された後、コイル17に通電される。これによりコイル17は電磁場を励起する。電磁場処理装置で使用する電力の多くはこのドライバー回路16で消費されているが、このドライバー回路16の動作を断続的に制御することにより、消費電力の大幅な低減が可能となる。
【0057】
図7には、この電磁場処理装置3においてコイル17に印加される電流(信号波)の周波数分布の状況が示されている。同図は、コイル17に印加される電流(信号波)の周波数スペクトラム図である。
【0058】
同図の横軸は、電流の周波数f、縦軸は電流の振幅Aを表している。同図に示すように、信号波の周波数分布は、f1〜f6の値で離散的である。これは、プログラマブルダウンカウンタ31におけるカウンタの値Nが、6段階の値を繰り返すからである。パイプ18へのスケール付着の防止又は、除去の効果は、この離散的に出力されるこの周波数の範囲(帯域幅)が広い方がより高い効果が得られる。
【0059】
次に、図5を用いて、本発明の第4実施形態に係る電磁場処理装置4および太陽光発電システムについて説明する。同図は、第4実施形態に係る電磁場処理装置4および太陽光発電システム100の概略システム図である。この第4実施形態は、太陽光発電システム100により発電された電力を利用して省電力化された電磁場処理装置4を駆動できるところに特徴がある。
【0060】
なお、同図の中で、電磁場処理装置4は第3実施形態で説明した電磁場処理装置3と機能、用途は略同じであるので、同一の番号を付し、機能、用途についての詳細な説明は省略する。
【0061】
太陽光発電システム100は、太陽電池110と、バッテリー120と、電圧モニタ130と、ダイオード140、142から構成される。
【0062】
太陽電池110は、結晶シリコン型の太陽電池である。この太陽電池110は、太陽光により発電出来るものであれば結晶シリコン型太陽電池に限定されないことは言うまでもない。
【0063】
バッテリー120は、キャパシター等の蓄電装置である。なお、バッテリー120の充電制御部分は省略する。
【0064】
電圧モニタ130は、本発明でいう監視手段であり、太陽電池110の出力電圧を測定し発電状態や発電量を監視する。この電圧モニタ130は、その検出状態を表す監視信号を電磁場処理装置4の制御部32に送信する。制御部32は、この監視信号に基づいて、太陽電池110が十分に充電されている場合には、電磁場処理装置3のドライバー回路16の動作を連続的に制御するようにタイミング制御信号15を送信し、太陽電池110が十分に充電されていない場合には、ゲート回路14を断続的に制御するようにタイミング制御信号15を送信する。つまり、制御部32は、電圧モニタ130の検出信号に基づいて、コイル17に流れる電流を断続制御するか、連続的に流すかを切り替えることが可能となている。勿論、このタイミング制御信号15のデューティー比を連続的に変更して、電圧モニタ130の検出信号に基づいて断続間隔を変化させることも可能である。具体的に充電量が少ない場合には、タイミング制御信号15のON期間を短くし、充電量が多い場合には、ON期間を長くすることが好ましい。
【0065】
なお、ダイオード140、142は、太陽電池110の出力電圧の逆流防止のために設けられたものである。また、太陽電池110で発電された出力電力は、GND端子144、電源端子146から出力され、電磁場処理装置4を駆動するための電源ラインに供給される。
【0066】
したがって、太陽電池110の発電量に応じてドライバー回路16を連続に制御するか、または断続的に制御するかを判断し、発電量が少ない場合には断続的に制御することにより大幅な省電力化を図ることができる(省電力モード)。
【0067】
次に、図6を用いて、本発明の第5実施形態に係る電磁場処理装置5の水力発電システム200について説明する。同図は、第5実施形態に係る水力発電システム200の概略システム図である。この第5実施形態は、パイプ210の内部に水車220を設けることで、水力発電により発電した電力を利用して省電力化を図っているところに特徴がある。
【0068】
なお、電磁場処理装置5は、前述した第3実施形態で説明した電磁場処理装置3と同じ構成、機能であるので、詳細な図示及び説明は省略する。
【0069】
水力発電システム200は、パイプ210と、水車220と、発電機230と、電源回路240から構成されている。
【0070】
パイプ210は、金属製または樹脂製の中空円筒パイプ部材であり、各種水処理設備で用いられる水の流路となる。このパイプ210の外周には、電磁場処理装置5のコイルも巻きつけられている。
【0071】
水車220は、パイプ210内部に一体的に配設され、パイプ内を流れる水の流体エネルギーによって回転するように構成されている。
【0072】
また、水車220には、発電機230が接続され、水車220の回転から発電することが出来るように構成されている。
【0073】
電源回路240は、バッテリーやキャパシター等の蓄電装置と、蓄電装置に蓄電した電圧を直流電圧に変換する電圧変換回路(図示省略)を備えている。この電源回路240は、発電機230に機械的、電気的に結合されており、発電機230により発電された電力を上述したキャパシター等の蓄電装置に蓄電する。
【0074】
なお、電源回路240は、電源端子242、GND端子244を備え、この電源端子242から直流電圧として電磁場処理装置5に供給する。
【0075】
この水力発電システム200を用いた電磁場処理装置5によれば、パイプ210内に水車220が予め設けられており、且つ、その周囲にコイルも巻きつけられているので、電源も含めたモジュール化が実現されている。従って、必要な流路において、パイプ210を含めて本装置を交換・設置するだけで、電源等の外部配線工事をすることなく、極めて簡便に電磁場処理装置を設置することが可能となる。なお、この水力発電システム200は、前述した第4実施形態と同様に、電圧モニタ130を備え、発電機230により発電された電圧を検出し、その検出電圧に基づいてゲート回路14を連続的に制御するか、断続的に制御するかを決定するための監視信号を制御部32に送信することが好ましい。
【0076】
次に、図8を用いて、第6実施形態に係る電磁場処理装置6の周波数生成部300について説明する。同図(A)は、周波数生成部300のブロック図である。この第6実施形態は、乱数発生器34を備え、プログラマブルダウンカウンタ31から出力する信号波の周波数を離散的に発生させると共に、その離散点において周波数に所定の帯域幅を持たせることによって、スケール防止及び除去の効果を向上させることができるところに特徴がある。
【0077】
具体的にこの周波数生成部300は、クロック信号発生器30と、プログラマブルダウンカウンタ31と、制御部32と、1/2カウンタ回路33と、乱数発生器34から構成されている。なお、クロック信号発生器30、制御部32、1/2カウンタ回路33は、第3実施形態で説明したクロック信号発生器30、制御部32、1/2カウンタ回路33と略同一の機能、用途であるので、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0078】
クロック信号発生器30は、所定のクロック信号をプログラマブルダウンカウンタ31に送信する。
【0079】
プログラマブルダウンカウンタ31は、前述した信号を受信して、所定の信号を1/2カウンタ回路33に出力する。このプログラマブルダウンカウンタ31は、レジスタを備え、CPU(図示省略)が、そのレジスタに保存されているアドレス等を読み書きできるように構成されている。また、プログラマブルダウンカウンタ31から出力される信号は、上述したレジスタに保存されている数値(アドレス)によって決定される。
【0080】
図8(B)に示されるように、このレジスタは、上位ビットと下位ビットから構成され、下位ビットには、乱数発生器45から出力されるランダムな数値が設定され、上位ビットには、制御部32から送信されるセット値Nが設定される。更に、このプログラマブルダウンカウンタ31は、上位ビットについては、所定の間隔でセット値Nをダウンカウントしていき、N1、N2・・・N6までの6種類の値を繰り返すようになっている。一方、下位ビットについては、上位ビットのダウンカウントタイミングと同期して、乱数発生器45からランダムな数値を毎回入手してセットする。この結果、プログラマブルダウンカウンタ31は、レジスタの下位ビットにランダムな数値が設定されることにより、所定の離散点を基準に、所定の帯域幅を有する周波数信号、即ち離散的且つランダムな周波数信号を出力することができる。
【0081】
図9は、コイルに印加される電流の周波数スペクトラム図である。同図に示すように、本実施形態における周波数スペクトラムは、上位ビットとなるN1〜N6によって、f1〜f6の離散点を有するようになっており、且つ、その離散点において、下位ビットの乱数によって帯域幅(W)を有している。このように、周波数発生器において、離散点を決定する第1設定値(ここでは上位ビット)と、その離散点を基準として帯域幅を持たせる第2設定値(ここでは下位ビット)を有するようにして、スケール防止及び除去に対して、より高い効果が得られるようにしている。
【0082】
次に、図10を用いて、第7実施形態に係る電磁場処理装置7について説明する。同図は、第7実施形態に係る電磁場処理装置7の概略システム図である。この第7実施形態は、パイプ18の外周に流体検出用コイル45を巻き付け、その流体検出用コイル45のインピーダンスの変化を検出するための検出回路47を設けて、パイプ18の内部に流体が流れているか否かの検出結果に基づいて、コイル17に流れる電流をより効率的に制御できるところに特徴がある。
【0083】
なお、同図の中で、ゲート回路14、タイミング制御信号15、ドライバー回路16、コイル17、パイプ18、クロック信号発生器30、プログラマブルダウンカウンタ31、制御部32、1/2カウンタ回路33、は、第3実施形態の電磁場処理装置3で説明したゲート回路14、タイミング制御信号15、ドライバー回路16、コイル17、パイプ18、クロック信号発生器30、プログラマブルダウンカウンタ31、制御部32、1/2カウンタ回路33と機能、用途が略同じであるので、同一の番号を付し、機能、用途についての詳細な説明は省略する。
【0084】
まず、流体検出用コイル45は、パイプ18の外周に巻き付けられているソレノイド状コイルである。この、流体検出用コイル45は、隣接するコイル17に非常に短いデューティ比(例えば、1%程度)の周波数信号が印加されることによって、自身も励起されて起電力を生じさせ、検出回路47に出力するようになっている。
【0085】
更に流体検出用コイル45は、パイプ18に水等の流体が流れた場合、磁束密度が変化すると共に、インピーダンスが変化する。その結果として、流体検出用コイル45に流れる電流値が変化する。
【0086】
検出回路47は、上述した流体検出用コイル45に接続され、流体検出用コイル45の電流値を検出する。また検出回路47は、流体検出用コイル45の電流値の変化を検出し、パイプ18に水等の流体が流れているか否かを判断し、その判断結果に基づいて、制御部32に所定の制御信号を送信する。
【0087】
なお、検出回路47は、流体検出用コイル45の電流値ではなく、流体検出用コイル45の磁束密度を直接測定するように構成してもよく、またはインピーダンスを直接測定できるように構成しても好ましい。また、パイプ18内部に流体検出センサ(図示省略)を備え、流体の有無を検出できるようにしても良い。また、水蒸気等の気体がパイプ内を通過する場合には、温度検出センサー等によって気体の有無を検出することも可能である。
【0088】
制御部32は、上述した制御信号に基づき、パイプ18に流体が流れていると判断した場合には、プログラマブルダウンカウンタ31に対してコイル17に印加する信号波を出力するように所定の指示信号を送信すると共に、ゲート回路14に対してタイミング制御信号15を送信し、ゲート回路14からドライバー回路16に送信する周波数が所定のデューティ比になるように制御する。例えば、パイプ18内に流体が流れている場合は、ゲート回路14において断続制御(省力モード)を行うようにし、パイプ内18内に液体が流れている場合に限り、連続制御を行うようにしても良い。勿論、ゲート回路14のデューティー比を変化させることも可能である。
【0089】
このようにすることで、ドライバー回路16は、パイプ18に流体が流れている時に、コイル17を励起すればよく、電磁場処理装置7の消費電力を大幅に軽減することができる。
【0090】
<実験結果>
【0091】
次に、図面を用いて、本実施例の電磁場処理装置の実験結果について説明する。
【0092】
図11は、実験装置500を簡略化した概略システム図である。
【0093】
本実施例における実験装置500は、電磁場処理装置510と、パイプ18と、容液入り容器520から構成されている。
【0094】
なお、電磁場処理装置510のコイル17や、パイプ18は、第1実施形態で説明したコイル17、パイプ18と同様の機能、用途を有しているもので、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0095】
電磁場処理装置510は、第3実施形態で説明したデジタル方式により、所定の周波数信号を出力できるものであり、第3実施形態の電磁場処理装置3と略同様の機能、用途を有しているものである。
【0096】
容液入り容器520は、CaCoを溶媒(精製水+電解液)に懸濁させた溶液を入れた容器である。
【0097】
本実験では、コイル17を巻き付けたパイプ18内部に容液入り容器520を挿入し、変調電場装置510によりコイル17に所定の周波数信号を印加し、印加後の溶液を乾燥させて光学顕微鏡で確認した。
【0098】
図12は、電磁場処理装置510において、コイル17に印加する信号波の一例である。この信号波は、経時的に周波数が階段状に変化(例えば、周波数3、000Hz〜10、000Hzまで変化)する信号波であり、FM波ということがある。
【0099】
同図は、t1〜t8まで、時間軸(横軸)を8分割に分け、この分割した時間軸に3,000Hz〜10,000Hzの間で所定の周波数(f1〜f8)を対応させたものである。したがって、所定の時間間隔ごとに一定の周波数が割り当てられた階段状の周波数変動となっている。
【0100】
また図13は、図12で説明した階段状のFM波を上段に、同実施形態で説明したタイミング制御信号T1、T2を下段に示した図である。
【0101】
タイミング制御信号T1は、ゲート回路14から信号波を出力する(コイル17に印加する)タイミングを決定するものである。従って、この出力タイミングT1のオン時間を8分割したものが、上記時間区分t1〜t8となる。また、タイミング制御信号T2は、ゲート回路14から信号波を出力をしない(コイル17に電流を印加しない)タイミングを表している。ここでは、このタイミング制御信号T1、T2の割合を変化させてデューティー比を変更し、スケール防止、除去の効果確認実験を行った。
【0102】
まず、電磁場処理装置510によって電磁場処理をしていない溶液(以下、未処理サンプルと言うことがある)について調べた。図14は、この未処理サンプルの光学顕微鏡写真である。この光学顕微鏡写真は、未処理サンプルをスライドガラスに一滴取り、そのまま自然乾燥したものを光学顕微鏡530で撮影したものである。
【0103】
未処理サンプルは、大きな沈殿物600が水滴界面部650に数多く集合しているのが分かる。水滴界面部650の幅も大きいことが分かる。この沈殿物600が集積して成長すると、水道管や水処理設備で水の流路となるパイプ18を詰まらせるスケールとなる。
【0104】
次に、電磁場処理装置510から出力するFM波のタイミング制御信号T1及びT2を様々に変化させて溶液を電磁波処理し、溶液入り容器520内の溶液の界面状態を光学顕微鏡530により確認した。実験の確認は未処理サンプルと同様に、各条件のFM波をコイル17に印加後、容液入り容器520内の容液をスライドガラスに一滴取り、自然乾燥させたものを光学顕微鏡530により撮影した。
【0105】
図15は、FM波のタイミング制御信号T1=10msec、T2=0msec(デューティ比100%)にした場合の溶液の光学顕微鏡写真である。つまり、タイミング制御信号15のON、OFFを行わずに、ソレノイド状コイル17にFM波を連続的に印加した場合の水滴界面の状態である。図14で現れたような沈殿物600は、ほとんど消滅し、界面の幅も狭くなっていることがわかる。
【0106】
図16は、タイミング制御信号T1=10msec、T2=40msec(デューティ比20%)にした場合の界面の状態である。前述した図15の場合と同様に界面周辺に沈殿物はほとんど無く、界面の幅も狭くなっていることが分かる。したがって、コイル17に信号波を連続的に印加した(デューティ比100%)の場合と略同等の効果が得られることが分かる。
【0107】
図17は、タイミング制御信号T1=10msec、T2=90msec(デューティ比10%)にした場合の界面の状態である。前述したデューティ比20%の場合と同様に、界面周辺に沈殿物は無く、界面の幅も狭くなっている。したがって、コイル17に信号波を連続的に印加した(デューティ比100%)の場合と略同等の効果が得られることが分かる。
【0108】
上記の結果から、コイル17への印加は連続的に行う必要はなく、図15〜図17で説明したように、信号波の断続的な印加でも十分に効果があることが確認できた。
【0109】
また、図18は、上記で実験例において、コイル17にデューティ比100%(連続)、20%(断続)、10%(断続)のFM波を印加した場合の消費電流を測定した測定結果である。この測定は、コイル17に流す電流値を約100mA(ピーク値)とし、電源電圧はDC5.0Vを使用し、この時のドライバー回路16及び制御部32の消費電力を測定することにより行った。
【0110】
結果から明らかなように、デューティ比を20%にすることにより、デューティ比100%の場合に比べて消費電流は65%程度低減でき、また、デューティ比を10%にすることによりデューティ比100%の場合に比べて消費電流は75%程度低減できることが分かった。
【0111】
なお、この消費電流は、制御部32の代わりにマイクロコンピュータを使用したり、電源電圧を下げることにより、さらに減少させることができる。この場合、太陽光発電や水力発電による電力を利用して動作させることも可能となる。
【0112】
以上、これらの実施形態では、流体を扱う各種装置や設備における、流体の流路となるパイプ18の内部に付着したスケールを除去し、又は付着を予防することを実現する。例えば、パイプ18の外周に少なくとも1つのソレノイド状又はスパイラル状のコイル18を設け、コイル17に周波数変調器(例えば、FM変調器11)を接続して、所定の周波数範囲(例えば、3〜10kHz)で変調する周波数を加えてコイルを励起する構成としているので、各種水処理設の電源容量に余裕がなく、当該変調電場方式によるスケール防止装置の装着には電源系統の設計変更を余儀なくされる場合において、もしくは屋外等で商用電源の利用が困難なケースにおいてでも本発明の省電力機能の効果により当該変調電場方式によるスケール防止装置を付加することができるという効果がある。
【0113】
また更に、この周波数の発生を断続制御する断続制御手段(例えば、ゲート回路14)を備えているので、屋外等で商用電源の利用が困難なケースにおいても、本発明の省電力機能の効果により、当該変調電場方式によるスケール防止装置を設置できるという効果がある。
【0114】
また、本実施形態では、水流により発電する水力発電手段(例えば、水力発電システム200)をさらに備えるのでで、処理対象である水路を利用して、水力発電手段により発電を行い、この電力を利用して稼働する構成としているので、消費電力を格段に低減できるという効果がある。
【0115】
なお、この水力発電手段は、水流により回転する水車(例えば、水車220)と、水車の回転により発電する発電手段(例えば、発電装置230)と、を備え、発電手段により発電された電力を利用して稼働する構成としているので、消費電力を格段に低減できるという効果がある。
【0116】
更に、太陽光により発電する太陽光発電手段(例えば、太陽光発電システム100)を備え、太陽光発電手段により発電された電力を利用して稼働する構成としているので、消費電力を格段に低減できるという効果がある。
【0117】
太陽光発電手段は、太陽光による発電量を測定する監視手段(例えば、電圧モニター130)を備え、監視手段により測定された発電量が所定の値以下の場合に、断続制御器(ゲート回路や制御部)が、この信号出力を断続制御するので、消費電力を更に低減できるという効果がある。
【0118】
更に、周波数変調器は、この周波数を所定周波数帯(例えば、3kHz〜10kHz)で分散させて発生させるので、スケールを効率的に防止、除去できるという効果がある。また、周波数変調器は、この周波数を離散化させると同時に、その離散点においてそれぞれ帯域幅を持たせて周波数を設定するようにしているので、周波数自体の広がり(離散化)と、様々な周波数の印加(帯域幅)を両立させているので、スケールの防止・除去効果を一層高めることが可能となっている。具体的に周波数変調器は、乱数発生手段(例えば、乱数発生器30)をさらに備え、乱数発生手段は、周波数変調器の周波数制御に用いられるプログラムカウンタ(例えば、プログラマブルダウンカウンタ31)の下位ビットを所定の乱数値に基づいて決定する。この結果、離散化と帯域の確保が両立され、全体として、所定の周波数帯幅(例えば、3kHz〜10kHz)を持った周波数を発生させることができ、スケールを効率的に防止、除去できるという効果がある。
【0119】
特に、周波数変調器は、5KHz〜7KHzの周波数帯の周波数の発生頻度を他の周波数帯の周波数の発生頻度よりも高い構成としているので、スケールを効率的に防止、除去できるという効果がある。
【0120】
更にこれらの実施形態では、コイル(例えば、流体検出用コイル45)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段(例えば、検出回路47)を備え、インピーダンス測定手段による測定結果に基づいて、周波数変調器よりコイルを励起するか否かを判断する構成としているので、消費電力を格段に低減できるという効果がある。
【0121】
また、本実施形態では特に図示しないが、この電磁場処理装置を、サーバ式の自動飲料供給装置に用いることが好ましい。例えば、飲料水を貯留する飲料水貯留タンクと、飲料水貯留タンクから飲料水を導出する飲料水導出パイプと、前記飲料水導出パイプから飲料水を供給する開放弁と、を備える構成の際に、この飲料水導出パイプに電磁場処理装置を設置する。この結果、サーバ式の自動飲料供給装置で用いられる液体の流路となるパイプのスケールを効率的に防止、除去できるという効果がある。
【0122】
また、本実施形態では特に図示しないが、この電磁場処理装置を、加湿装置に用いることが好ましい。例えば、加湿用の水を貯留する貯留タンクと、貯留タンクに貯留されている水を水蒸気にする水蒸気生成手段と、を備える構成の際に、この貯留タンクと水蒸気生成手段を連結するパイプに電磁場処理装置を設置する。この結果、加湿装置で用いられる液体の流路となるパイプのスケールを効率的に防止、除去できるという効果がある。
【0123】
また、本実施形態では特に図示しないが、この電磁場処理装置を、切削油供給装置に用いることが好ましい。例えば、切削油を貯留する切削油貯留タンクと、切削油貯留タンクから切削油を導出する切削油導出手段と、切削油導出手段により導出された前記切削油を供給する供給ノズルを備えた構成の際に、この切削油導出手段に電磁場処理装置を設置する。この結果、切削油供給装置で用いられる切削油の流路となるパイプのスケールを効率的に防止、除去できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0124】
水道水の給水設備、水処理設備、空調設備の冷却装置、加湿装置、サーバー式の飲料の自動販売機、切削加工機の切削油供給装置等、水やその他液体の水路となるパイプ内部のスケールの付着防止、除去を行う電磁場処理装置の分野で幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】第1実施形態に係る電磁場処理装置1の概略システム図である。
【図2】第2実施形態に係る電磁場処理装置2の概略システム図である。
【図3】電圧可変発信器21へ入力する信号波の一例である。
【図4】第3実施形態に係る電磁場処理装置3の概略システム図である。
【図5】第4実施形態に係る電磁場処理装置4の概略システム図である。
【図6】第5実施形態に係る水力発電システム200の概略システム図である。
【図7】コイル17に印加される信号波の周波数スペクトラム図である。
【図8】周波数生成部300のブロック図である。
【図9】プログラマブルダウンカウンタ31から出力される信号の周波数スペクトラム図である。
【図10】第7実施形態に係る電磁場処理装置7の概略システム図である。
【図11】実験装置500を簡略化した概略システム図である。
【図12】変調電場装置510から出力し、ソレノイド状コイル17に印加する信号波の一例である。
【図13】図11のFM波と一緒に前述の実施例で説明したタイミング制御信号15を下段に示した図である。
【図14】変調電場処理装置510による処理をしていない溶液の顕微鏡写真である。
【図15】FM波のタイミング制御信号T1=10msec、T2=0msecデューティ比100%)にした場合の溶液の顕微鏡写真である。
【図16】タイミング制御信号T1=10msec、T2=40msec(デューティ比20%)にした場合の界面の状態である。
【図17】タイミング制御信号T1=10msec、T2=90msec(デューティ比10%)とした場合の界面の状態である。
【図18】ソレノイド状コイル17にデューティ比100%、20%、10%のFM波を印加した場合の消費電流の測定結果である。
【符号の説明】
【0126】
1 電磁場処理装置
11 FM変調器
12 のこぎり信号波
13 出力搬送波信号
14 ゲート回路
15 タイミング制御信号15
16 ドライバー回路
17 ソレノイド状コイル
18 パイプ
30 クロック信号発生器
31 プログラマブルダウンカウンタ
32 制御部
33 1/2カウンタ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体又は気体の流路近傍に設けられて前記流体に電磁場を印加する電磁波処理装置であって、前記流路の外周に設けられる少なくとも1つのソレノイド状又はスパイラル状のコイルと、前記コイルに接続され、前記コイルに電流を流して電磁場を励起する電流発生器と、前記電流発生器における前記電流の周波数を変化させる周波数変調器と、を備えること、を特徴とする電磁場処理装置。
【請求項2】
前記コイルに流れる前記電流を断続制御する断続制御器を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の電磁場処理装置。
【請求項3】
前記断続制御器は、前記周波数変調器から発生するキャリアを断続的にオン・オフすることを特徴とする、
請求項2に記載の電磁場処理装置。
【請求項4】
前記周波数変調器は、前記周波数を離散的に変化させることを特徴とする、
請求項1、2又は3に記載の電磁場処理装置。
【請求項5】
前記周波数変調器は、前記周波数を離散的に変化させる際に、各離散点において該離散点を基準に前記周波数を変動させることを特徴とする、
請求項4に記載の電磁場処理装置。
【請求項6】
前記周波数変調器は、前記離散点を基準として前記周波数をランダムに変動させることを特徴とする、
請求項5に記載の電磁場処理装置。
【請求項7】
前記周波数変調器は、前記離散点を基準とした所定帯域幅内で前記周波数を決定することを特徴とする、
請求項5又は6に記載の電磁場処理装置。
【請求項8】
前記周波数発生器は、前記離散点を決定する第1設定値と、前記離散点に基づく所定帯域幅内で前記周波数を決定する第2設定値を有することを特徴とする、
請求項7に記載の電磁場処理装置。
【請求項9】
前記周波数発生器は、
上位ビット及び下位ビットを有するデジタル信号を変化させることで前記周波数を決定するプログラマブルカウンタと、
前記デジタル信号の前記下位ビットにランダム値を挿入する乱数発生器と、を備え、
前記周波数発生器は、前記上位ビットを適宜変更することで前記離散点を選定するとともに、前記下位ビットの前記ランダム値によって、前記離散点に基づいた最終的な前記周波数を決定することを特徴とする、
請求項5乃至8のいずれかに記載の電磁場処理装置。
【請求項10】
前記周波数変調器は、前記周波数を、複数の周波数帯域に分散するように変化させることを特徴とする、
請求項1乃至9のいずれかに記載の電磁場処理装置。
【請求項11】
前記周波数変調器は、5KHz〜7KHzの周波数帯の周波数の発生頻度を他の周波数の発生頻度より高くすることを特徴とする、
請求項1乃至10のいずれかに記載の電磁場処理装置。
【請求項12】
前記流路の中の流体又は気体の通過を検出する流路検出手段を備え、
前記流路検出手段によって前記流体又は気体が検出された時に前記コイルによって電磁場を励起することを特徴とする、
請求項1乃至11のいずれかに記載の電磁場処理装置。
【請求項13】
前記流体検出手段は、
前記流路近傍に設けられる検出用コイルと、
前記検出用コイルのインピーダンスを測定するインピーダンス測定手段と、を備え、
前記インピーダンス測定手段による前記検出用コイルのインピーダンスの測定結果に基づいて、前記電磁場を励起するか否かを判断することを特徴とする、
請求項12に記載の電磁場処理装置。
【請求項14】
前記流体の水流により発電する水力発電手段をさらに備え、
前記電流発生器は、前記水力発電手段により発電された電力を利用して稼働することを特徴とする、
請求項1乃至13のいずれかに記載の電磁場処理装置。
【請求項15】
前記水力発電手段は、
前記流体の流路の一部を構成可能なパイプと、
前記パイプ内に設置されて前記水流により回転する水車と、
前記水車の回転により発電する発電手段と、
を備え、
前記パイプの外周には前記コイルが設けられていることを特徴とする、
請求項14に記載の電磁場処理装置。
【請求項16】
太陽光により発電する太陽光発電手段を備え、
前記電流発生器は、前記太陽光発電手段により発電された電力を利用して稼働することを特徴とする、
請求項1乃至15のいずれかに記載の電磁場処理装置。
【請求項17】
太陽光により発電する太陽光発電手段と、
前記太陽光発電手段による太陽光による発電量を測定する監視手段と、を備え、
前記電流発生器は、前記太陽光発電手段により発電された電力を利用して稼働し、
前記断続制御器は、前記監視手段の測定結果に基づいて、前記電流を断続制御するか否かを切り替えることを特徴とする、
請求項2に記載の電磁場処理装置。
【請求項18】
飲料水を貯留する飲料水貯留タンクと、
前記飲料水貯留タンクから前記飲料水を導出する飲料水導出パイプと、
前記飲料水導出パイプの設置される請求項1乃至17のいずれかに記載の電磁場処理装置と、
を備えることを特徴とする、サーバー式の自動飲料供給装置。
【請求項19】
加湿用の水を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクに貯留されている前記水を水蒸気にする水蒸気生成手段と、
前記貯留タンクと前記水蒸気生成手段を連結する水導出パイプと、
前記水導出パイプの設置される請求項1乃至17のいずれかに記載の電磁場処理装置と、
を備えることを特徴とする加湿装置。
【請求項20】
切削油を貯留する切削油貯留タンクと、
前記切削油貯留タンクから前記切削油を導出する切削油導出パイプと、
前記切削油導出パイプの設置される請求項1乃至17のいずれかに記載の電磁場処理装置と、
を備えることを特徴とする切削油供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−262042(P2009−262042A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113884(P2008−113884)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508126561)有限会社共栄電子研究所 (2)
【Fターム(参考)】