説明

電磁弁および電磁弁の製造方法

本発明は、コアスリーブ(3)を備え、コアスリーブ(3)の内部に弁ニードル(4)を縦方向摺動可能に配置することができ、コアスリーブ(3)が周壁に少なくとも1つの半径方向開口(11)を備える電磁弁(1)に関する。コアスリーブ(3)が、第1部分スリーブ(13)と、第1部分スリーブ(13)に軸線方向に接続される第2部分スリーブ(14)とを備え、半径方向開口(11)が、接続領域(17)で、少なくとも一方の部分スリーブ(14)に端面の軸線方向切欠き(21)として構成されている。さらに本発明は、このような電磁弁(1)を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアスリーブを備え、コアスリーブの内部に弁ニードルを縦方向摺動可能に配置することができ、コアスリーブが周壁に少なくとも1つの半径方向開口を備える電磁弁に関する。
【0002】
さらに本発明は、コアスリーブを備え、コアスリーブの内部に弁ニードルを縦方向摺動可能に配置することができ、コアスリーブが周壁に少なくとも1つの半径方向開口を備える電磁弁を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で述べた形式の電磁弁ならびに電磁弁を製造するための方法は、従来技術により既知である。このような電磁弁は、例えば自動車のブレーキシステムで、液圧装置の制御弁および/または調整弁として使用される。このために、電磁弁は少なくとも1つのコアスリーブを備え、コアスリーブの内部には弁ニードルが縦方向摺動可能に配置もしくは支承されている。通常、コアスリーブの内部空間は制御もしくは調整すべき流体のための貫流通路としての役割を果たす。コアスリーブの周壁に、一般に横方向孔として構成された半径方向開口を介して、弁ニードルの操作によって分配された流体が流出することができる。一般に旋回部分として構成されたコアスリーブの切削加工により高い製造コストが生じる。
【発明の概要】
【0004】
本発明によれば、コアスリーブは第1部分スリーブと、第1部分スリーブに軸線方向に接続される第2部分スリーブとを備え、接続領域では、半径方向開口が、少なくとも一方の部分スリーブに端面の軸線方向切欠きとして構成されている。したがって、コアスリーブは2部分により構成され、2つの部分スリーブは軸線方向に互いに接続されている。接続領域、すなわち、2つの部分スリーブが互いに向かい合った端面によって互いに接続される領域に半径方向開口が設けられている。この場合、この半径方向開口は少なくとも一方の部分スリーブの端面に半径方向切欠きとして形成されており、半径方向開口は、最終的に2つの部分スリーブの協働によって規定される。したがって、軸線方向切欠きは、U字形縦断面を備え、軸線方向切欠きの自由端は、向かい合った部分スリーブの閉じられた端面によって閉鎖される。端面を軸線方向切欠きとした構成により、部分スリーブの一次成形時に既に半径方向開口を形成もしくは構成することが可能である。これにより、半径方向孔を製造するために不可欠となる手間のかかるコスト高な切削加工が不要となる。
【0005】
有利には、半径方向開口は軸線方向に配向された長孔として構成されている。したがって、半径方向開口の長さは幅よりも大きく、半径方向開口の縦軸線は、コアスリーブもしくは対応した部分スリーブに対して軸線方向に配向されている。これにより、半径方向開口は、上述のようにU字形の縦断面構成を得る。半径方向開口を半円形に構成するか、または角度を付けて構成することももちろん可能である。長孔は、好ましくは実質的にいずれか一方の部分スリーブによってのみ形成されており、これにより、他方の部分スリーブの閉じられた端面は長孔を軸線方向に閉鎖している。半径方向開口もしくは長孔をそれぞれいずれか一方の部分スリーブ内の向かい合った2つの軸線方向切欠きによって形成することも、もちろん可能である。
【0006】
好ましくは、部分スリーブは接続領域で塑性変形によって互いにかしめられている。かしめは、コアスリーブの2つの部分スリーブ間の摩擦接続的および形状接続的な結合を確保する。この場合、塑性変形によって、特に確実かつ信頼できる結合が簡単な形式で確保される。
【0007】
目的に応じて、このために第1部分スリーブは、接続領域に、第2部分スリーブが部分的に挿入される軸線方向収容部を端面に備える。したがって、第1部分スリーブは、第2部分スリーブに向いた端面に切欠きもしくは凹部を備え、この切欠きもしくは凹部の内径は、少なくとも実質的に第1部分スリーブに向いた端面における第2スリーブの外径に相当する。目的に応じて、軸線方向収容部は、部分スリーブもしくはコアスリーブに対して同軸的に構成されている。第2部分スリーブが部分的に軸線方向収容部に位置している場合、軸線方向収容部の領域における第1部分スリーブの塑性変形により、第2部分スリーブをそこでかしめることができる。好ましくは、ここでは、かしめは少なくとも実質的に半径方向の力を第1部分スリーブに加えることによって実施される。
【0008】
さらに、第2部分スリーブは接続領域に少なくとも1つの半径方向突出部、特に全周にわたって延在する半径方向ウェブを備える。半径方向突出部または半径方向ウェブは、第1部分スリーブの塑性変形された材料のための保持手段としての役割を果たす。
【0009】
最後に、半径方向突出部の軸線方向長さは、軸線方向収容部の軸線方向長さよりも短く設けられている。換言すれば、半径方向突出部の高さは軸線方向収容部の深さよりも小さく、したがって、第2部分スリーブが第1部分スリーブの軸線方向収容部に挿入された場合に、半径方向突出部は第1部分スリーブによって完全に覆われて係合される。塑性変形により、かしめ時に第1部分スリーブの材料が、有利には半径方向突出部の後方に押し込まれ、第1部分スリーブは第2部分スリーブの半径方向突出部に係合し、これにより、第1部分スリーブと第2部分スリーブとの間に軸線方向に形状接続的な結合が確保される。したがって、最終的に第1部分スリーブは第2部分スリーブの半径方向突出部または半径方向ウェブを包囲係合する。
【0010】
電磁弁を製造するための本発明による方法は、コアスリーブが、第1部分スリーブと、第1スリーブに接続する第2部分スリーブとから形成され、接続領域で、少なくともいずれか一方の部分スリーブの半径方向開口が端面の軸線方向切欠きとして形成されることにより優れている。これにより、上記利点が生じる。
【0011】
好ましくは、軸線方向切欠きは一次成形プロセスで形成される。このことは、例えば適切な注型成形または射出成形を行うことにより簡単かつ安価な形式で実施することができる。半径方向開口を形成するためにコアスリーブを後から切削加工することは不要である。
【0012】
次に本発明を図面に基づき詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有利な電磁面の縦方向断面図である。
【図2】電磁弁の部分スリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、電磁弁1の概略的な縦断面図を示す。電磁弁1は、いわゆる非通電時に開放された弁2として、自動車の液圧系、特に、例えば、ESP、ABSまたはTSCシステムなどのブレーキシステムのために構成されている。電磁弁1はコアスリーブ3を備え、コアスリーブ3の内部には、弁ニードル4が縦方向に摺動可能すなわち軸線方向に変位可能に配置されている。弁ニードル4は、弁先端とは反対側の端部に磁気アンカ5を備える。弁ニードル4は弁先端によって、コアスリーブ3の内部に保持された弁体7に構成された弁座8と協働する。一端が弁体7に当接し、他端が弁ニードル4の軸線方向ストッパに当接するコイルばね9は、非動作状態で電磁弁1の流れ横断面が開放されるように弁ニードル4を弁座8から押し離す。電磁弁1の開放時に、流体は電磁弁1の軸線方向の流入通路10を通って流入し、半径方向開口11を通って電磁弁1から再び流出することができる。ここには詳述しない磁気アクチュエータによって、弁ニードル4を弁座8に対して変位することもできる。
【0015】
外部に対してシールするために、電磁弁1はハウジングキャップ12によって包囲されており、ハウジングギャップ12は磁気アンカ5を完全に包囲し、コアスリーブ3を部分的に包囲している。
【0016】
コアスリーブ3は2つの部分から構成されており、すなわち軸線方向に前後に配置された第1部分スリーブ13と第2部分スリーブ14とを備え、第1部分スリーブ13の端面15は第2部分スリーブ14の端面16に接続されている。
【0017】
第1部分スリーブ13は接続範囲17に軸線方向収容部18を備え、軸線方向収容部18には第2部分スリーブ14が部分的に挿入されている。第2部分スリーブ14は、端面16に、第2部分スリーブ14の全周にわたって延在し、半径方向ウェブ20を形成する半径方向突出部19を備える。この場合、半径方向突出部19の外径は、実質的に軸線方向収容部18の内径に相当し、したがって、第2部分スリーブ14は接続領域で少なくとも実質的に半径方向に形状接続的に軸線方向収容部18で保持されている。この場合、半径方向突出部19の縦方向もしくは軸線方向長さは、軸線方向収容部18の縦方向もしくは軸線方向長さよりも短く構成されており、これにより、半径方向突出部19は完全に軸線方向収容部18の内部に位置している。
【0018】
接続領域17に配置された半径方向開口11は、端面の軸線方向切欠き21として第2部分スリーブ14の内部に形成されている。図2から最も良くわかるように、第2部分スリーブ14は、端面16に成形された3つの軸線方向切欠きを備え、これらの軸線方向切欠きは、第2部分スリーブ14の周囲にわたって一様に分配して配置されている。ここでは、軸線方向切欠き21は、第2部分スリーブ14の周壁の全幅を通って延在するU字形縦断面を備える。軸線方向切欠き21として形成された半径方向開口11は端面16に向かって縁部が開かれた状態で構成されている。製造時に、半径方向切欠き11は、好ましくは形状を付与する適宜な注型成形および/または射出成形による一次成形時に既に考慮されている。これにより、特に簡単かつ安価に半径方向孔11を実現することができる。図1に示すような組付け状態で、軸線方向切欠き21の開かれた端部は、閉じられた端面15もしくは軸線方向収容部18の閉じられた底部22によって閉鎖される。したがって、半径方向開口11は、第1及び第2部分スリーブ13および14によって形成もしく規定される。有利には、半径方向開口11は、上述のように、軸線方向に整列された長孔23として構成されている。
【0019】
第1部分スリーブ13および第2部分スリーブ14は、さらに接続領域17で塑性変形により相互にかしめられている。このために、少なくとも実質的に半径方向の力作用によって、第1部分スリーブ13は軸線方向収容部18の領域で適宜な工具によって力を加えられ、これにより、第1部分スリーブ13の材料は、半径方向突出部19の周囲で押しのけられるか、もしくは塑性変形され、最終的に第1部分スリーブ13は第2部分スリーブ14の半径方向突出部19に摩擦接続的および形状接続的に包囲係合する。軸線方向切欠き18は半径方向突出部19の高さもしくは幅よりも深く形成されているので、第1部分スリーブ13の材料は半径方向突出部19の後方でもアンダカットに押し込まれ、これにより、コアスリーブ3の第1及び第2部分スリーブ13および14の間で軸線方向の形状接続が確保される。かしめによって、電磁弁1、特に閉じられた電磁弁1に高圧を提供し、保持することができる。冷間成形であるかしめによって、安価かつ簡単に、コアスリーブ3を形成するための2つの部分スリーブ13および14を相互に、もしくは互いに対して固定することができる。これにより、例えば電磁弁1を通過する280barまでの圧力を保持することができる。
【0020】
したがって、全体として簡単かつ安価に製造可能であり、しかも高圧にも耐える電磁弁が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアスリーブ(3)を備え、該コアスリーブ(3)の内部に弁ニードル(4)が縦方向摺動可能に配置され、前記コアスリーブ(3)が周壁に少なくとも1つの半径方向開口(11)を備える電磁弁において、
前記コアスリーブ(3)が、第1部分スリーブ(13)と、該第1部分スリーブ(13)に軸線方向に接続された第2部分スリーブ(14)とを備え、前記半径方向開口(11)が、接続領域(17)で、少なくともいずれか一方の部分スリーブ(14)に端面の軸線方向切欠き(21)として構成されていることを特徴とする、電磁弁。
【請求項2】
前記半径方向開口(11)が、軸線方向に配向された長孔(23)として構成されている、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記第1及び第2部分スリーブ(13,14)が、前記接続領域(17)で塑性変形によって互いにかしめられている、請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記第1部分スリーブ(13)が、前記接続領域(17)に、前記第2部分スリーブ(14)が部分的に挿入される軸線方向収容部(18)を端面に備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記第2部分スリーブ(14)が、前記接続領域(17)に、少なくとも1つの半径方向突出部、特に前記第2部分スリーブ(14)の周囲にわたって延在する半径方向ウェブ(20)を備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記半径方向突出部(19)の軸線方向長さが、前記軸線方向収容部(18)の軸線方向長さよりも短い、請求項1から5までのいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項7】
コアスリーブ(3)を備え、該コアスリーブ(3)の内部に弁ニードル(4)が縦方向摺動可能に配置され、前記コアスリーブ(3)が周壁に少なくとも1つの半径方向開口(11)を備える電磁弁を製造するための方法において、
第1部分スリーブ(13)と、該第1部分スリーブ(13)に軸線方向に接続される第2部分スリーブ(14)とから前記コアスリーブ(3)を形成し、接続領域(17)で、少なくともいずれか一方の部分スリーブ(14)に端面の軸線方向切欠き(21)として前記半径方向開口(11)を形成することを特徴とする、電磁弁を製造するための方法。
【請求項8】
前記軸線方向切欠き(21)を、一次成形プロセスにより形成する、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−515933(P2013−515933A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546396(P2012−546396)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066875
【国際公開番号】WO2011/079994
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】