説明

電磁弁一体型膨張弁

【課題】膨張弁のパワーエレメントの作動を弁体に伝達する作動棒と作動棒が挿入される弁本体の挿入孔との間のシール構造を省略することができる電磁弁一体型膨張弁を提供する。
【解決手段】弁室150、弁室に連通するオリフィス134、弁室内に高圧冷媒を導入する入口通路102、オリフィスで減圧した冷媒を外部に導出する出口通路104を有する弁本体10と、弁室内に設けられ、オリフィスを開閉する弁体120と、弁本体に形成された挿入孔14に摺動自在に挿入されるとともに一端が弁体に当接する作動棒160と、作動棒の他端側に設けられ、作動棒を介して弁体を駆動するパワーエレメント20と、入口通路を開閉する電磁弁30とを備え、挿入孔は出口通路とパワーエレメントとの間に形成されており、作動棒と挿入孔との間のシールが作動棒と挿入孔との摺接面のみにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍・冷蔵ユニット等の冷凍システムに適用される電磁弁一体型膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍・冷蔵庫内の温度制御において、設定温度に達した場合には圧縮機を停止させ、設定温度より高くなった場合には再度圧縮機を運転する必要がある。圧縮機停止時に圧縮機手前に液冷媒が溜まり、圧縮機の再起動時に圧縮機が液冷媒の吸入により破損するのを防ぐため、膨張弁の手前に電磁弁が設けられる。また、複数の蒸発器への冷媒供給をそれぞれ制御する目的で膨張弁の手前に電磁弁が設けられることもある。そして、部品点数や設置スペースを削減することを目的として、電磁弁一体型膨張弁が提案されている。
【0003】
この種の電磁弁一体型膨張弁は、弁本体、弁体、作動棒、パワーエレメント及び電磁弁等で構成される。弁本体は、弁室、弁室に連通するオリフィス、弁室内に高圧冷媒を導入する入口通路、オリフィスで減圧した冷媒を外部に導出する出口通路を有している。弁体は弁室内に設けられ、オリフィスを開閉する。作動棒は弁本体に形成された挿入孔に摺動自在に挿入されるとともに一端が弁体に当接している。パワーエレメントは作動棒の他端側に設けられ、ダイアフラムにより上下に区画される圧力室を有し、これらの差圧によるダイアフラムの変位を作動棒により弁体に伝達し、オリフィスを通過する冷媒の量を調節する。
【0004】
作動棒は弁本体に形成される挿入孔内に摺動自在に挿入されるが、挿入孔と作動棒との間には作動棒が摺動するためのクリアランスが設けられる。このクリアランスを通って冷媒が弁本体の冷媒通路からパワーエレメントの圧力室にリークするのを防止するために、従来は作動棒と挿入孔との間にシール部材を装備する必要があり、これが部品点数や製造工数の増加をもたらす要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−151259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、弁本体の挿入孔と作動棒との間のクリアランスを通って冷媒がリークするのを防止するためのシール部材を別途設ける必要がなく、部品点数を低減して製造コストの低減を図ることができる簡素な構成の電磁弁一体型膨張弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電磁弁一体型膨張弁は、弁室、該弁室に連通するオリフィス、前記弁室内に高圧冷媒を導入する入口通路、前記オリフィスで減圧した冷媒を外部に導出する出口通路を有する弁本体と、前記弁室内に設けられ、前記オリフィスを開閉する弁体と、前記弁本体に形成された挿入孔に摺動自在に挿入されるとともに一端が前記弁体に当接する作動棒と、前記作動棒の他端側に設けられ、前記作動棒を介して前記弁体を駆動するパワーエレメントと、前記入口通路と前記弁室との間を連通・遮断する電磁弁とを備え、前記挿入孔は前記出口通路と前記パワーエレメントとの間に形成されており、前記作動棒と前記挿入孔との間のシールが前記作動棒と前記挿入孔との摺接面のみにより構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電磁弁一体型膨張弁は、弁本体の挿入孔と作動棒との間のクリアランスを通って冷媒がリークするのを防止するためのシール構造を別途設ける必要がなく、部品点数を低減して製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である電磁弁一体型膨張弁の断面図。
【図2】図1の電磁弁一体型膨張弁が組み込まれる冷凍サイクルの説明図。
【図3】図1の電磁弁一体型膨張弁の斜視図。
【図4】図1の電磁弁一体型膨張弁の正面図。
【図5】図1の電磁弁一体型膨張弁の背面図。
【図6】図1の電磁弁一体型膨張弁の右側面図。
【図7】図1の電磁弁一体型膨張弁の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面に基づいて、本発明による膨張弁の実施例を説明する。
図2は、本発明の膨張弁が組み込まれる冷凍サイクルの概要を示す説明図である。
圧縮機Cで加圧された冷媒は、ラインLを通って凝縮器Dに送られ、液化される。液冷媒はラインLを介して電磁弁一体型膨張弁1に送られ、電磁弁30が開くと、弁本体10の弁室へ送られる。弁本体10で減圧されて流量が制御された冷媒は、ラインLを通って蒸発器Eへ送られ、冷風等を発生させる。蒸発器Eを出た冷媒は、ラインLを介して圧縮機Cに戻る。
【0011】
本発明の電磁弁一体型膨張弁1にあっては、蒸発器Eの出口側に設けた感温筒Sにより蒸発器Eの出口の冷媒の温度を感知して、その温度情報をラインLを介して電磁弁一体型膨張弁1へ送るとともに、ラインLの冷媒の圧力を外均管となるラインLを介して電磁弁一体型膨張弁1へ送る構造を備える。
【0012】
図1は本発明の一実施形態である電磁弁一体型膨張弁の断面図、図3は斜視図、図4は正面図、図5は背面図、図6は右側面図、図7は平面図である。
【0013】
この電磁弁一体型膨張弁1は、角柱形状の弁本体10を備え、弁本体10の上部に弁本体10内に装備される弁体の駆動機構であるパワーエレメント20を備える。そして、弁本体10の側面には電磁弁30が装備される。弁本体10には、凝縮器D側からラインLを介して送られてくる高圧の冷媒が導入されるパイプPと、弁本体10内で減圧されるとともに流量が制御された冷媒を蒸発器E側へ送り出すパイプPが連結される。また、弁本体10には、外均管として機能するパイプPが設けられ、このパイプPには、図2に示すように、蒸発器Eを出て圧縮機C側へ戻る冷媒がラインLを介して導入される。さらに、パワーエレメント20の頂部にはパイプPが接続されており、このパイプPには、図2に示すように、蒸発器Eを出て圧縮機C側へ戻る冷媒の温度を伝達する感温ガスがラインLを介して導入される。
【0014】
図1に示すように、弁本体10は、その下端部から上方に向けて段付穴状に形成された弁室150とその上端に連通するオリフィス134とを有する。弁室150の上部は弁体収容室150aとなっており、その片側には、紙面に直交する方向に入口通路102が形成され、その一端はパイプPに連通し、他端は電磁弁30の弁室に連通している。また、オリフィス134の上方には出口通路140が水平に形成され、その一端はオリフィス134に連通し、他端はパイプPに連通している。さらに出口通路14の上方には上方に向けて挿入孔14が形成され、その下端は出口通路140に連通し、上端はパワーエレメント20の下部圧力室222(後述)に連通している。
【0015】
弁体収容室150aには弁体120が上下に摺動自在に挿入されている。弁体120の上端は円錐状に形成され、そのテーパ面122がオリフィス134の下端に形成された弁座132に接離することによりオリフィス134を開閉する。弁体120の下端はサポート152により支持され、このサポート152はスプリング154により上方に付勢されている。このスプリング154の下端部は有底筒状の調整ナット部材156により支持されている。調整ナット部材156はネジ部156bを介して弁本体10に螺着されており、その下端に形成されたスリット156aにドライバ等の工具を挿入して回転させることによりスプリング154の圧縮量を変更して弁体120への付勢力を調節する。なお、調整ナット部材156の上端外周部には、弁室150内の冷媒が外部へ漏れるのを防止するためのシール部材156cが嵌着されている。調整ナット部材156の下方には有底筒状のキャップ158が設けられており、このキャップ158はネジ部158aを介して弁本体10に螺着されている。
【0016】
挿入孔14にはステンレス等で形成される作動棒160が摺動自在に挿入されている。作動棒160の下端は弁体120に当接し、上端はパワーエレメント20のストッパ230(後述)に当接している。パワーエレメント20は、上蓋200と、下蓋202と、それらの間に挟み込まれるダイアフラム210とを有する。ダイアフラム210と上蓋200の間に形成される上部圧力室220内には、感温筒SからパイプP4を介して送られてくる感温ガスが充填される。ダイアフラム210と下蓋202の間には下部圧力室222が形成され、この下部圧力室222には、弁本体10に設けた外均通路12を介して、蒸発器Eを出た冷媒の圧力が伝達される。ダイアフラム210の下面が上下に移動自在のストッパ部材230を押圧することで、ストッパ部材230が作動棒160を介して弁体120を駆動する構成となっている。
【0017】
電磁弁30は、入口通路102から導入される高圧の液冷媒を弁室150に導入する通路を開閉するものであり、非通電時には入口通路102と弁室150との間を遮断し、通電時には入口通路102と弁室150とを連通させるように構成されている。
【0018】
上記のように構成された電磁弁一体型膨張弁において、パイプPから電磁弁30を通って弁室150に導入される液冷媒(圧力Pr1とする)は、オリフィス134を通過する際に膨張して減圧され(圧力Pr2とする)、パイプPからラインLを通って蒸発器Eへ送られる。蒸発器Eを出た冷媒(圧力Pr3とする)の圧力は、ラインLから外均通路12を介してパワーエレメントの下部圧力室222に伝達される。このように構成することで、蒸発器Eへ向かう出口通路140内の冷媒の圧力Pr2と、蒸発器Eから出てパワーエレメントの下部圧力室222に作用する冷媒の圧力Pr3との圧力差は極めて小さくなる。
【0019】
そこで、本発明の電磁弁一体型膨張弁にあっては、従来の電磁弁一体型膨張弁において、弁本体10の挿入孔14と作動棒160との間のクリアランスから冷媒が下部圧力室222にリークするのを防止するべく、挿入孔14と作動棒160との間に設けられているシール部材を省略することができる。すなわち、作動棒160と挿入孔14との間のシールが作動棒160と挿入孔14との摺接面のみにより構成されているのである。この構成により、シール部材とその取付部の加工を省略してコストの低減と電磁弁一体型膨張弁全体の軽量化を図ることができる。
【0020】
なお、上記の実施形態では、蒸発器から圧縮機へ戻る冷媒をパワーエレメント20の下部圧力室222に流入させ、挿入孔14の一端を下部圧力室222に連通させることで、挿入孔14の両端の差圧を小さくする構造となっているが、本発明は、このような構造を有する電磁弁一体型膨張弁に限定されるものではない。すなわち、挿入孔14を出口通路140とパワーエレメント20との間に形成することで、挿入孔14と作動棒160との間のクリアランスには、オリフィス134で減圧された冷媒の圧力が作用するため、上記構造を有さない場合でも、挿入孔14と作動棒160との間のクリアランスから冷媒が下部圧力室222にリークするのを防止するシール部材を省略することができる場合がある。
【符号の説明】
【0021】
10 弁本体
12 外均通路
14 挿入孔
20 パワーエレメント
30 電磁弁
102 入口通路
120 弁体
134 オリフィス
140 出口通路
150 弁室
160 作動棒
210 ダイアフラム
220 上部圧力室
222 下部圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室、該弁室に連通するオリフィス、前記弁室内に高圧冷媒を導入する入口通路、前記オリフィスで減圧した冷媒を外部に導出する出口通路を有する弁本体と、前記弁室内に設けられ、前記オリフィスを開閉する弁体と、前記弁本体に形成された挿入孔に摺動自在に挿入されるとともに一端が前記弁体に当接する作動棒と、前記作動棒の他端側に設けられ、前記作動棒を介して前記弁体を駆動するパワーエレメントと、前記入口通路と前記弁室との間を連通・遮断する電磁弁とを備え、前記挿入孔は前記出口通路と前記パワーエレメントとの間に形成されており、前記作動棒と前記挿入孔との間のシールが前記作動棒と前記挿入孔との摺接面のみにより構成されていることを特徴とする電磁弁一体型膨張弁。
【請求項2】
前記パワーエレメントは、上蓋と、下蓋と、これらの間に挟み込まれるダイアフラムとを備え、前記上蓋と前記ダイアフラムとの間に感温ガスが充填される上部圧力室が形成され、前記下蓋と前記ダイアフラムとの間に蒸発器から圧縮機側へ戻る冷媒の圧力が作用する下部圧力室が形成され、前記挿入孔の一端が前記下部圧力室に連通していることを特徴とする請求項1記載の電磁弁一体型膨張弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−42081(P2012−42081A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182386(P2010−182386)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】