説明

電磁弁制御

【課題】どのサイズの電磁弁においても、内部構成を変えずに、電磁弁開弁時の吸着音を低減する。
【解決手段】弁を開閉するプランジャー305と、プランジャー305を吸着する固定コア308と、固定コア308に吸引力を発生させるコイル307と、を備えた電磁弁のコイル307に電流を印加する電磁弁制御であって、電磁弁制御は、コイル307に印加する電流を小電流から大電流に可変させ、前記弁を開弁させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置に用いる電磁弁を開弁させる制御に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
通常、給水装置に用いる電磁弁においては、給水源の給水圧が高い場合においても電磁弁が確実に開弁するような電流値をコイルに印加して開弁させている。
【0003】
通常の電磁弁は、弁を開閉するプランジャーと、プランジャーを吸着する固定コアと、コイルとで構成されている。そのコイルに電流を印加することで、固定コアにプランジャーを吸着させ電磁弁が開弁する動作となる。本来、給水圧が低い時には、プランジャーにかかる力も小さいため、電磁弁を開弁させる際に必要な電流値も小電流でよいが、給水圧が高い時に確実に電磁弁が開弁するよう電流値を大電流で印加しているため、開弁時のプランジャーの吸着音が大きくなってしまう。
【0004】
この吸着音の発生に対して、プランジャーをオイルの中で動作させることによりオイルのダンパー効果によってプランジャーの吸引速度を低減させる機構に加え、プランジャー吸引開始時から吸着までの電流を、吸引開始時には大電流で吸引し、順次小電流へと可変させプランジャーを吸着させる制御を行い、固定コアの吸引力を順次減少させ、プランジャーの吸着音を減少させる方法が知られている。(特許文献1)
【0005】
また、電磁弁のプランジャーの吸着面に衝撃吸収材(防音シート)を配設し、電磁弁開時の吸着音を緩和させる構成も知られている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−172693号公報
【特許文献2】特開2001−49721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、プランジャー吸引速度低減のためのダンパーが必要となり、構造が複雑化しコストもかかり、電磁弁が大型化してしまう。また、プランジャーの吸引開始から吸着までの間に、コイルに印加する電流を大電流から小電流へ可変させる点についても、ストローク量が大きく、プランジャーが固定コアに吸着されるまでの時間が長いものに対しては有効だが、小型の電磁弁においては、ストローク量が小さく、プランジャーが固定コアに吸着されるまでの時間が短いため、コイルに印加する電流値を大電流から小電流へ可変させる制御の場合、吸引開始時に大電流を印加し、電流を小電流に可変する前に吸着が完了してしまう。そのため、固定コアの吸引力を減少できず小型の電磁弁の吸着音を低減することは困難である。
【0008】
また、特許文献2の構成では、衝撃吸収材を吸着面に配設することで、吸着力が低下してしまい、吸着力を確保するためにはコイルの巻き数を増やす必要があり、コストもかかり、電磁弁が大型化してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、どのサイズの電磁弁においても、内部構成を変えずに、電磁弁開弁時の吸着音の低減を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、弁を開閉するプランジャーと、前記プランジャーを吸着する固定コアと、前記固定コアに吸引力を発生させるコイルと、を備えた電磁弁の前記コイルに電流を印加する電磁弁制御であって、前記電磁弁制御は、前記コイルに印加する電流を小電流から大電流に可変させ、前記弁を開弁させることを特徴とする。
【0011】
この電磁弁制御によれば、小電流から大電流に可変させる途中で、コイルに印加する電流値が大電流まで達しなくても、給水源からの給水圧に対し、開弁に必要な電流値が印加された時点で開弁される。そのため、大電流で開弁させた時に比べ、固定コアの吸引力が小さくなることで、吸着音も抑えられるため、プランジャーのストローク量に関係なく、どのサイズの電磁弁においても吸着音の低減が提供できる。
また、制御のみでの対応が可能なため、電磁弁の内部構成を変えることなく簡素な構成で電磁弁の吸着音の低減を提供できる。
【0012】
また、第2の発明は、前記電磁弁制御において、前記コイルに印加する電流を小電流から大電流にステップ状に可変させ、前記弁を開弁させることを特徴とする。
【0013】
この電磁弁制御によれば、コイルに印加する電流値を小電流から大電流にステップ状に可変させることで、プランジャーが吸引されて固定コアに吸着されるまでの間の電流値を一定にでき、プランジャーの吸引開始時から吸着までの間に電流値が増加することを防げるため、より吸着音の低減が提供できる。
また、制御のみでの対応が可能なため、電磁弁の内部構成を変えることなく簡素な構成で電磁弁の吸着音の低減を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、どのサイズの電磁弁においても、内部構成を変えずに、電磁弁開弁時の吸着音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る電磁弁を備えた衛生洗浄装置を備えたトイレ装置の外観図である。
【図2】本実施形態に係る電磁弁を備えた衛生洗浄装置の内部構成を表す透視図である。
【図3】本実施形態に係る電磁弁を備えた衛生洗浄装置の要部構成を例示するブロック図である。
【図4】本実施形態に係る電磁弁を備えるバルブユニットの外観図である。
【図5】本実施形態に係る電磁弁の開閉弁状態を表す断面図である。
【図6】本実施形態における給水圧に対する電磁弁を開弁するのに必要な電流値グラフである。
【図7】本実施形態における電磁弁の開弁に発生する吸引力とその時に必要な電流値グラフである。
【図8】本実施形態における電磁弁の開弁に必要な電流値とその際に発生する吸着音(騒音)のグラフである。
【図9】本実施形態における電磁弁に印加する電流値のDUTY比グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電磁弁を備えた衛生洗浄装置を備えたトイレ装置10の外観図である。
【0017】
本実施形態の衛生洗浄装置100は、大便器200の後部上方に設けられた本体部110を備え、本体部110と蓋130によって覆われる図示されない便座が、本体部110に回動自在に軸支されている。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る電磁弁を備えた衛生洗浄装置100の内部構成を表す透視図である。
【0019】
ケーシング120(図1参照)は、ケースカバー121とケースプレート122とを有する。ケースプレート122は平板状に形成されて大便器200上に載置されており、その前方には吐水ノズル131が配設されている。このほか、ケースプレート122上には、脱臭ユニット140、熱交換器150、制御装置160、リモコン受信部161、着座スイッチ162、バルブユニット170など、衛生洗浄を行うために必要となる種々の要素が配設されている。また、ケースカバー121の側方には、水道管から水の供給を受ける給水部190が設けられている。
【0020】
吐水ノズル131は、大便器200のボウル部内に進退自在であり、大便器200に着座した使用者の「おしり」などに水を吐出して洗浄する機能を備える。この吐水ノズル131は、大便器200のボウル部内に進出した状態で、通水/止水を切り替える電磁弁を内蔵したバルブユニット170を通過した水を吐出する。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る電磁弁を備えた衛生洗浄装置の要部構成を例示するブロック図である。
【0022】
熱交換器150は、吐水ノズル131から温水を吐出するため、バルブユニット170から供給される水の加熱を行う。後述するように熱交換器150の内部には、通電により発熱するヒーター221が設けられている。制御装置160は、リモコン受信部161で受信した図示しないリモコンからの信号に基づいて、吐水ノズル131の進退や水の吐出量、熱交換器150の加熱量などを制御する。
【0023】
本発明の電磁弁は、給水源からの給水を受けるバルブユニット170に構成されており、バルブユニット170からヒーター221にて水を温水に変える熱交換器と、その温水を吐水洗浄させる吐水ノズル131とそれらを動作させるための制御装置160で構成される衛生洗浄装置に搭載されている。
【0024】
リモコンRは、使用者が衛生洗浄装置100を操作するためのユーザーインターフェースであり、衛生洗浄装置100の運転を停止させる停止スイッチS1と、衛生洗浄装置100が有する複数の洗浄モードのそれぞれに対応させた運転モードスイッチが設けられている。具体的には、「おしり」スイッチS2、「ビデ」スイッチS3、「やわらか」スイッチS4、の3つの運転モードスイッチが設けられており、使用者は衛生洗浄装置100に実行させたい運転モードに対応した運転モードスイッチを操作する。
【0025】
使用者の操作に基づいて、リモコンRは制御装置160に操作信号を送る。制御装置160はその操作信号をリモコン受信部161によって受信し、給水バルブユニットの電磁弁242の閉弁/開弁の切り替えや、切替弁222による水の供給先の切り替え、脱臭ファン227、ヒーター221、ノズル駆動装置223の駆動を制御する。また、制御装置160は、着座スイッチ162から発信された検知信号を受信するよう構成されており、受信した検知信号に基づいて制御内容を適宜決定する。
【0026】
図4は、本発明の本実施形態の電磁弁を備えるバルブユニットの外観図である。
バルブユニット170は、給水口240、給水フィルター付水抜き栓241、本発明の電磁弁242、安全弁243、調圧弁244からの構成となっている。給水源と給水口240は、図示されないホースで連結されており、リモコンRの信号を受け、制御装置160からの通電により電磁弁242が開弁し、給水口240から給水される。給水口240から給水された水は、給水フィルター付水抜栓241を通り、ここで異物がろ過される。給水源からの給水圧が高い場合、調圧弁244にて一定の圧力に調整され、主流経路246より、熱交換器150へ送られる。調圧弁244が故障した場合には、高い圧力を逃がすために安全弁243を設けており、副流経路245から水を逃がすことで、バルブユニット170より下流のユニットの破損を回避できる。
【0027】
図5は、本実施形態の電磁弁の開閉弁状態を表す断面図である。
【0028】
本実施形態の電磁弁242は、弁と弁を端部に組み付けたプランジャー305と、図3の制御装置160からの通電により磁気を発生するコイル307と、その磁気を受けてプランジャー305を吸引・吸着する固定コア308と、低い給水圧の時にも、弁を閉状態にさせるために、弁を給水口へ押し付ける方向に付勢するばね309とで構成されている。
【0029】
電磁弁242が開弁している場合、給水源からの給水圧とばね309の力により、プランジャー305は電磁弁242の給水口310をふさぐ方向に押し付けられ、弁が給水口をふさぎ、電磁弁は閉弁(止水)状態(図5(a))となっている。
電磁弁が開弁している場合は、制御装置160から電磁弁242に通電され、コイル307に電流が印加されることで固定コア308が磁化され、プランジャー305を吸引・吸着し、弁が給水口310からはなれ、電磁弁は開弁(通水)状態(図5(b))となり、電磁弁の下流に給水される。
【0030】
図6は、本実施形態における給水圧に対する電磁弁を開弁するのに必要な電流値グラフである。
【0031】
一般家庭の給水圧はおよそ0.05MPa〜0.75MPaである。そのため、本実施形態における電磁弁制御の電流値は、確実に電磁弁が開弁するために、プランジャーの吸引力のバラつきなどを考慮して、大電流を印加する設定となっている(図6グラフの電流値C)。しかし、実際には給水圧により電磁弁の開弁に必要な電流値は異なるため、開弁時に常に大電流を必要とはしない。例えば、給水圧が0.2MPaの時、電磁弁の開弁に必要な電流値はAとなり、給水圧が0.75MPaの時はBとなる。給水圧が低いときに電磁弁の開弁に必要な電流値は小さく、給水圧が高くなると、必要な電流値も大きくなることがわかる。
【0032】
また、図7は本実施形態における電磁弁を開弁するのに必要な電流値と固定コア308がプランジャー305を吸引するのに必要な吸着力のグラフである。(本グラフの電流値A、B、Cは、図6グラフ電流値A、B、Cと同値である。)
A値の電流値で電磁弁の開弁が可能なとき、固定コア308にプランジャー305が吸着されるまでの吸引力は2Nとなる。また、電流値B値のときの吸引力は4Nとなる。吸引力が低いとき、給水圧も低く、小さい電流値で電磁弁を開弁できる。反対に、吸引力が高く、給水圧も高いとき、電磁弁を開弁させるには大きい電流値が必要となる。
【0033】
次に、図8にプランジャー305と固定コア308の吸着時に発生する騒音と、開弁時にコイル307に流す電流値の関係を示す。(本グラフの電流値A、B、Cは、図6および図7グラフの電流値A、B、Cと同値である。)
電磁弁を開弁させる時にプランジャー305が固定コア308に吸着するときに吸着音が発生するが、電流値が小さいと騒音は小さく、電流値が大きいと騒音は大きくなる。電流値が小さいということは、給水圧が低く、吸着力も低い、と言える。給水圧が低いと、電磁弁を開弁させるためにコイル307に印加する電流値は小さくてよく、固定コア308にプランジャー305が吸着(衝突)するときの吸着音(騒音)も小さくなる。
電流値が大きいときには、給水圧も吸着力も高く、固定コア308にプランジャー305が吸着(衝突)するときの吸着音(騒音)も大きくなる。
【0034】
つまり、給水圧が低い場合、電磁弁を開弁させるために必要な電流値は小さくてよく、コイル307に印加する電流値が小さいと、固定コア308にプランジャー305が吸着されるときに発生する吸着音も小さくなる。
【0035】
図9の本実施形態における電磁弁に印加する電流値のDUTY比グラフにより、給水圧と開弁に必要なコイルに流す電流値の関係を示す。
給水源から給水される水圧が低い場合、プランジャー305が給水口310側に押し付けられる力は低くなるため、コイル307には小電流を印加すればよい。逆に、給水される水圧が高い場合には、プランジャー305が給水口310側に押し付けられる力も高くなり、固定コア308がプランジャー305を吸着するには、コイル307に、より大きい電流の印加が必要となる。そのため、コイル307に印加する電流値をDUTY比制御し、小電流から大電流にステップ状に可変させることで、給水圧に応じた電流値の印加で電磁弁を開弁されることができるため、開弁の際の吸着音を低減できる。また高い水圧においても、確実に電磁弁を開弁させるため、コイル307の吸引力のバラつきを考慮して、プランジャー305が確実に吸着するため、DUTY比大電流を流すように設定する必要がある。
【0036】
加えて、コイル307に印加する電流値を、小電流から大電流に可変させる際、固定コア308に吸着するプランジャー305の吸引開始から吸着までの時間より、可変させる電流値のステップ領域を長くすることで、プランジャー305の動作中にコイル307に流す電流値を一定にでき、吸引力を増加させずにプランジャー305を吸着できるため、プランジャー305の吸着音を低減することができる。
【0037】
この制御により、小電流から大電流に可変させる途中で、コイル307に印加する電流値が大電流まで達しなくても、給水源からの給水圧に対し、開弁に必要な電流値が印加された時点で開弁され、常に大電流で開弁させた時に比べ、固定コア308の吸引力が小さくなることで、吸着音も抑えられるため、プランジャー305のストローク量に関係なく、どのサイズの電磁弁においても吸着音の低減が提供できる。また、制御のみでの対応が可能なため、電磁弁の内部構成を変えることなく簡素な構成で電磁弁の吸着音の低減を提供できる。
【0038】
なお、電流値をステップ状に可変させる方法として、制御装置からの出力をデューティー制御し、パルスのON時間を増加させることで、電流値を可変してもよい。
【符号の説明】
【0039】
305 プランジャー、307 コイル、308 固定コア、309 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁を開閉するプランジャーと、
前記プランジャーを吸着する固定コアと、
前記固定コアに吸引力を発生させるコイルと、
を備えた電磁弁の前記コイルに電流を印加する電磁弁制御であって、
前記電磁弁制御は、
前記コイルに印加する電流を小電流から大電流に可変させ、前記弁を開弁させることを特徴とする電磁弁制御。
【請求項2】
前記電磁弁制御は、
前記コイルに印加する電流を小電流から大電流にステップ状に可変させ、前記弁を開弁させることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁制御。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−202462(P2012−202462A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66862(P2011−66862)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】