説明

電磁弁

【課題】 電磁力を発生するために必要十分な磁束を流すことができ、流体が流れる際の抵抗を小さくことにより吸引力特性を向上させる電磁弁を提供する。
【解決手段】 電磁弁10はケース12、ヨーク14、コア15、プランジャ18、コイル21等を有する。ケース12は、プランジャ18を軸心方向に往復動自在に収容するヨーク14と、プランジャ18をスプール側に吸引する磁力を発生するコア15と、フランジ部19とを、備え一体成形されている。プランジャ18はヨーク14の内壁面に摺動自在に支持されている。プランジャ18のスプール側端面から反スプール側端面に至るまで軸心方向に流体通路としての貫通孔20が形成されている。貫通孔20は、その孔径をスプール端面側を孔20aに形成し、反スプール端面側を孔20bに形成して孔20aの孔径が孔20bより小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁弁に関し、さらに詳細には吸引力特性を向上させる電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁弁1は、円筒壁に複数の流体流路32〜35を有するハウジング31と、該ハウジング31内を往復移動することにより前記流体流路32〜35を切り換えるスプール30を有し、該スプール30の軸方向に直列に配設されたプランジャ18と、
該プランジャ18を保持する円筒形状のヨーク、固定鉄心であるステ−タコア15、電磁力を付与するコイル21及び樹脂成形体であるケース22を有している。前記プランジャ18には、
スプール側端面から反スプール側端面に至るまで軸心方向に偏心して貫通孔20が形成されている。この貫通孔20は、プランジャ18の移動に伴い作動油が移動するのに十分な通路断面積を確保するための呼吸通路としての機能を有する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−243057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている電磁弁では、固定鉄心側端面のスプールの当接部を回避して貫通孔を設ける必要があるため、十分に大きな孔を設けることができず、低温などの流体の粘度が高い場合に、十分に流体を流すことができず応答性が悪くなるという不具合があった。
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、電磁力を発生するために必要十分な磁束を流すことができ、流体が流れる際の抵抗を小さくことにより吸引力特性を向上させる電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、円筒壁に複数の流体流路を有するスリーブと、
前記スリーブ内を往復動することにより前記流体流路を切り換えるスプールと、
前記スプールの軸心方向に直列に配置されたプランジャと、
前記プランジャを支持する円筒形状のコア及び電磁力を付与するコイルを保持するケースと、
を備え、
前記プランジャは前記スプール側端面及び反スプール側面を貫通する油路を形成することを特徴とする。
本発明によれば、電磁力に影響を与えずプランジャの動きを良好にし、応答性を向上させることができる。コア側は該コアに磁束を集中して流す必要があるため、油路の孔径は小さいほうがよい。
請求項2記載の発明では、前記油路は、その孔径を前記スプール端面側が反スプール端面側の孔径よりも大きく形成するので、スプール当接部に平面を確保すると同時に、プランジャのスプール側端面に磁束を集中させることができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、電磁力に影響を与えずプランジャの動きを良好にし、応答性を向上させることができる。コア側は該コアに磁束を集中して流す必要があるため、油路の孔径は小さいほうがよい。コア側は小径にすることで、スプール当接部に平面を確保すると同時に、電磁力を発生するために必要十分な磁束を流すことができる。
一方、反コア側を大径にすることで、圧力流体が流れる抵抗を小さくすることができ、かつ反コア側は磁束密度が比較的低いため、電磁力への影響は殆んどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の形態に係る電磁弁について図面により詳細に説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態に係る電磁弁10の概略構造を示す縦断面図である。
図1に示すように、電磁弁10はケース12、コア15、ヨーク14、プランジャ18、コイル21等を有する。この場合、ケース12、コア15、ヨーク14、プランジャ18は、磁性体材料で形成されている。なお、ソレノイド11は、ケース12、コア13、ヨーク14、プランジャ18、コイル21等より形成されている。
【0007】
ヨーク14及びコア15は、筒状の周壁面を有しこの順序で反スプール側からスプール側に向かって同軸上に形成されている。フランジ部19は、ボビン13のスプール側管端部において吸引部15の外周に形成され、ケース12とスリーブ30により挟持されている。
コイル21は、樹脂成形体22に封止され、ボビン13の外周壁とケース12の内周壁により形成される空間に収容されている。コイル21と電気的に接続している図示しない端子から該コイル21に電流が供給されると、ケース12、プランジャ18、ボビン13によって形成される磁気回路に磁束が流れ、コア15とプランジャ18との間に磁気吸引力が発生する。これにより、プランジャ18及びスプール31は矢印Y方向に変位する。
【0008】
プランジャ18はヨーク14の内壁面に摺動自在に支持されている。プランジャ18のスプール側端面から反スプール側端面に至るまで軸心方向に流体通路としての貫通孔(油路)20が形成されている。前記貫通孔20は、その孔径をスプール端面側を孔20aに形成し、反スプール端面側を孔20bに形成して孔20aの孔径が孔20bより小さくなっている。これにより、プランジャ18のスプール側端面に磁束を集中させることができる。さらに反スプール端面側に孔20aより大きい孔20bを形成することで、流体が流れる抵抗を小さくすることができる。
【0009】
スリーブ30は、円筒状であってスプール31を往復動自在に嵌挿している。スリーブ30には、入力ポート(流体流路)32、出力ポート(流体流路)33、フィードバックポート(流体流路)34及びドレーンポート(流体流路)35がこの順序で形成されている。
入力ポート32は、図示しないタンクからポンプによって供給される圧力流体が流入する機能を有する。出力ポート33は、図示しない自動変速機等の作動装置に圧力流体を供給するポートである。出力ポート33及びフィードバッグポート34は電磁弁10の外部
(図示しない)で連通しており、該出力ポート33から流出する圧力流体の一部がフィードバッグポート34に流入する。フィードバッグ室36はフィードバッグポート34と連通している。ドレーンポート35は、図示しないタンクに圧力流体を排出する機能を有する。
【0010】
スプール31には、反プランジャ側からランド37,38,39がこの順序で形成されている。ここで、ランド39は外径がランド37,38よりも小さい。スプール31の両端部には、ランド37〜39の外径よりも小さく小径のシャフト40及び41が形成されている。前記シャフト40はコア13の吸引部15側に突出し、先端部がプランジャ18の端面中心部に当接している。一方、シャフト41は、スリーブ31の空間部42に突出している。
【0011】
シャフト41に巻装され空間部42に収納されたばね部材43は、スリーブ30の端面に螺着されたアジャスタ44の締め込み量により調整される弾発力によりスプール31をプランジャ側へ付勢している。これにより、スプール31は、プランジャ18により矢印X方向に付勢され、ばね部材43の弾発力によりプランジャ18と共に矢印X方向に付勢されることにより、該プランジャ18と協動してスリーブ30内を矢印X及びY方向に変位する。
フィードバッグ室36はランド38とランド39との間に形成されており、該ランド38と39との外径差によりフィードバッグされた圧力流体が作用する受圧面積が異なる。よって、フィードバッグ室36の流体は矢印Y方向(反ソレノイド方向)にスプール31を押圧するように作用する。この場合、電磁弁10において出力される流体の一部をフィードバッグするのは、供給される流体の圧力、すなわち入力圧の変動により出力圧が変動することを防止するためである。
【0012】
スプール31は、ばね部材43の弾発力と、コイル21に供給される電流によりコア13に発生する電磁力によってプランジャ18がスプール31を押す力と、フィードバック室36の流体からのスプール31が受ける力とが釣り合う位置で静止する。
入力ポート32から出力ポート33に流入する圧力流体の流量は、スリーブ30の内周壁31aとランド38の外周壁との重合部分のシール長によって決定される。すなわち、シール長が短くなると入力ポート32から出力ポート33へ流れる流体の流量が増大し、シール長が長くなると入力ポート32から出力ポート33へ流れる流体の流量が減少する。同様に、出力ポート33からドレーンポート35へ流れる流体の流量は、スリーブ30の内周壁31bとランド37の外周壁とのシール長によって決定される。
【0013】
コイル21に電流が印加されると、該コイル21の励磁力によりスプール31が矢印Y方向に変位して、内周壁31aとランド38とのシール長が短くなり、内周壁31bとランド37とのシール長が長くなる。これにより、入力ポート32から出力ポート33へ流れる圧力流体の流量が減少する。よって、出力ポート33から流出する圧力流体の圧力が上昇する。
電磁弁10は、コイル21に通電する電流値を制御することでソレノイド11がスプール31を反ソレノイド11の方向に押圧力を調整し、出力ポート33から流出する流体の油圧を調整する。コイル21に通電する電流値を増大させると、電流値に比例してコア15の電磁力が増大し、シャフト40がスプール31を反ソレノイド11方向(矢印Y方向)に押す力が増大する。この電磁力によりプランジャ18からスプール31に作用する力、ばね部材40の弾発力、フィードバッグされる流体の圧力によってスプール31が反リニアソレノド方向(矢印Y方向)へ押される力が釣り合う位置でスプール31は停止する。したがって、コイル21に通電する電流値に比例して出力ポート33ら流出する圧力流体の油圧が低下する。
【0014】
図1に示す電磁弁10において、プランジャ18はスプール側端面から反スプール側端面に貫通している貫通孔20を有し、かつ孔20a,20bが形成されている。すなわち、プランジャ18の孔径はコア13側を小径とし、反コア13側を大径として、径変化を有する段付孔に形成している。これにより、電磁力に影響を与えず、プランジャ18の動きが良好になり、応答性を向上させることができる。電磁弁10はコア15に磁束を集中して流す必要があるため、貫通孔20の孔径は小さいほうがよい。
このため、図1に示す電磁弁10では、コア15側を小径することでスプール31の当接部に平面を確保することができ、電磁力を発生するために必要十分な磁束を流すことができる。一方、反コア15側は大径にすることで圧力流体が流れる抵抗を小さくすることができ、かつ反コア15側は磁束密度が比較的低いため、電磁力への影響は殆んどない。
この第一の実施の形態に係る電磁弁10において、貫通孔20はプランジャ18に1個設けたが、複数個、例えば2個をプランジャ18の端面に直径方向の対称位置に配設してもよい。これにより、応答性を一層向上させることができる。
【0015】
図2は、本発明の第二の実施の形態に係る電磁弁50の縦断面で、図2中、図1の構成要素と同一の構成要素は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
この電磁弁50は、プランジャ51にロッド52を嵌挿し、該ロッド52を固定鉄心機能を有するコア53に嵌入した軸受機構54に摺動自在に支持し、その先端部をスプール31のシャフト40に当接させていることを特徴とする。
図3に示されるように、プランジャ51には、軸心方向に一対の貫通孔55、56が軸心に対して対称位置に形成されている。スペーサ57は、プランジャ51の端面とロッド52との係合部に設けられており、該プランジャ51が変位した際、コア13の端面に密に接触して離脱不能を防止する機能を有する。なお、スペーサ57の代わりに、プランジャ51が係合する部位に該プランジャ51の外径よりも拡大する突起部を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る電磁弁の概略縦断面図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係る電磁弁の概略縦断面図である。
【図3】図2のプランジャとロッドとの係合状態を示す縦断面である。
【符号の説明】
【0017】
10、50 電磁弁 11 ソレノイド
12 ケース 15、53 コア
18、50 プランジャ 20、54,55 貫通孔
21 コイル 13、22 ボビン(もしくは樹脂成形体)
30 スリーブ 31 スプール
32 入力ポート 33 出力ポート
34 フィードバックポート 35 ドレーンポート
36 フィードバック室 37〜39 ランド
40、41 シャフト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒壁に複数の流体流路を有するスリーブと、
前記スリーブ内を往復動することにより前記流体流路を切り換えるスプールと、
前記スプールの軸心方向に直列に配置されたプランジャと、
前記プランジャを支持する円筒形状のコア及び電磁力を付与するコイルを保持するケースと、
を備え、
前記プランジャは前記スプール側端面及び反スプール側面を貫通する油路を形成することを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1記載の電磁弁において、
前記油路は、その孔径を前記スプール端面側が反スプール端面側の孔径よりも大きく形成することを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−32783(P2007−32783A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220247(P2005−220247)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】