説明

電磁弁

【課題】異物進入を抑制できる電磁弁を提供すること。
【解決手段】電磁弁の流路Rの内壁に当接する外縁枠体60aとその内側に張られたメッシュ60bとを備えるフィルタ部材60の上流側に近接して流路Rの内壁に配置され、外縁枠体60aに向かう流体をメッシュ60bに向かわせる縁堰部材50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体流路の開閉を行う電磁弁に関し、流路への異物進入を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、燃料タンクから発生する蒸発ガスのエンジン吸気管への供給を制御するための電磁弁の場合、異物の進入を抑制するために電磁弁の流路中にフィルタが装着されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の電磁弁の場合、図7、8に示すように、弁口103aと入力ポート102の間の流路に外縁枠体60aとメッシュ60bとからなるフィルタ部材60が取り付けられている。
【0004】
図7において、101は、負圧が印加される入力ポート102、出力ポート部103が設けられた樹脂製のハウジングである。104は、電磁コイル104aを内在させた円筒状のヨーク、105は、ヨーク104の下部に固定されたコア、106は、コア105の上部に可動支持されたプランジャー、107は、プランジャー106の上部に固定された弁体、108は、コア105に装着されたガイド110とプランジャー106との間に装着され弁体107を出力ポート部103の下端に位置する弁口103aに押しつけて塞ぐスプリングである。
【0005】
フィルタ部材60は、外縁枠体60aの横リムの下部に潰し代60cを、縦リムの上部に係合凸部60dを備えている(図5参照。)。フィルタ部材60が取り付けられる流路Rの側壁には縦リムを案内するガイド片109aが形成され(図4参照。)、出力ポート103のフランジ103bの下面には係合凸部60dと係合する係合凹部109bを備えている。
【0006】
フィルタ部材60の組み付けは以下のように行われる。出力ポート部103をハウジング101に固着させる前に、外縁枠体60aの縦リムをガイド片109aで案内させて横リムの下部の潰し代60cをハウジング101の底面に当接させる。次に、出力ポート部103をハウジング101に固着させると、潰し代60cが潰されてハウジング101の面一から出ていた横リムの上部がハウジング101内に収まり、係合凸部60dが係合凹部109bに係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−291916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来の電磁弁は、フィルタ部材60の外縁枠体60aの横リムがハウジング101の底面と出力ポート103のフランジ103bの下面とで挟持され、縦リムが流路側壁のガイド片109aで案内されているだけであるので、入力ポート102から入った異物がフィルタ部材60の外縁枠体60aと流路の内壁との間の隙間を通って弁口103aに進入することがある。
【0009】
本発明は、上記従来の電磁弁の問題に鑑みてなされたものであり、異物進入を抑制できる電磁弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するためになされた本発明の電磁弁は、流体の流路を形成するハウジングと、一端側が前記流路に開口し流体の供給を受ける入力ポートと、一端側に前記流路に開口する弁口を備え流体の排出を行う出力ポート部と、弁体を備え前記弁体を駆動して前記弁口を開閉する電磁駆動部と、前記流路に設けられ異物進入を抑制するシート状フィルタ部材と、を有し、前記フィルタ部材は、前記流路の内壁に当接する外縁枠体とその内側に張られたメッシュとを備え、前記フィルタ部材の上流側に近接して前記流路の内壁に配置され、前記外縁枠体に向かう流体を前記メッシュに向かわせる縁堰部材を有することを特徴とする。
【0011】
フィルタ部材の外縁枠体に向かう流体をメッシュに向かわせる縁堰部材を有しているので、異物が外縁枠体と流路の内壁との間の隙間を通って進入することが抑制される。
【0012】
上記の電磁弁において、前記フィルタ部材は、前記弁口と前記入力ポートとの間の流路に設けられるとよい。
【0013】
弁口の前で異物が濾過されるので、異物による弁口と弁体の開閉不良を抑制することができる。
【0014】
また、前記縁堰部材は前記内壁から内側に突出し、その突出高さが前記外縁枠体を構成するリムの幅より高いものとするとよい。
【0015】
外縁枠体に向かう流体が確実に阻止されるので異物が外縁枠体と流路の内壁との間の隙間を通って進入することが確実に抑制される。
【0016】
また、前記縁堰部材は前記入力ポート側から前記弁口側に傾斜する斜面を有するとよい。
【0017】
外縁枠体に向かう流体が斜面に沿って流れてメッシュに向かうので、異物が外縁枠体と流路の内壁との間の隙間を通って進入することが確実に抑制される。
【0018】
また、前記ハウジングは上部が開口する有底の容器であり、前記出力ポート部は前記上部の開口を覆って前記流路を形成するフランジを備え、前記縁堰部材は前記フランジの内面に設けられるものとするとよい。
【0019】
ハウジングは上部が開口する有底の容器であり、出力ポート部は前記上部の開口を覆って前記流路を形成するフランジを備えていると、フィルタ部材の外縁枠体とフランジ下面との間の隙間から異物が進入しやすい。異物が進入しやすいフランジの内面に縁堰部材が設けられているので、異物の進入を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
フィルタ部材の外縁枠体に向かう流体をメッシュに向かわせる縁堰部材を有しているので、異物が外縁枠体と流路の内壁との間の隙間を通って進入することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1に係る電磁弁の上面視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】出力ポート部103の下面視図(a)と側方視図(b)である。
【図4】図1に示す実施形態1に係る電磁弁の出力ポート部103を取り外した状態の上面視図である。
【図5】図1に示す実施形態1に係る電磁弁のフィルタ部材108の斜視図である。
【図6】実施形態2に係る電磁弁の断面図である。
【図7】従来の電磁弁の断面図である。
【図8】図7に示す従来の電磁弁の出力ポート部の下面視図(a)と側方視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態の電磁弁は、図1〜図5に示すように、流体の流路Rを形成するハウジング101と、一端側が流路Rに開口し流体の供給を受ける入力ポート102と、一端側に流路Rに開口する弁口103aを備え且つハウジング101の上部開口を覆うフランジ103bを備える出力ポート部103と、弁体107を備え弁体107を駆動して弁口103aを開閉する電磁駆動部120と、を有している。
【0024】
弁口103aと入力ポート102の間の流路Rに図5に示す外縁枠体60aとその内側に張られたメッシュ60bとからなるフィルタ部材60が取り付けられている。
【0025】
フィルタ部材60は、外縁枠体60aの下横リムの下部に潰し代60cを、縦リムの上部に係合凸部60dを備えている。フィルタ部材60が取り付けられる流路Rの側壁には縦リムを案内するガイド片109aが形成されている(図4参照。)。出力ポート103のフランジ103bの下面には図3に示すように、点線で示すフィルタ部材60の係合凸部60dと係合する係合凹部109bと、フィルタ部材60の上流側に近接して配置される縁堰部材50と、を備えている。
【0026】
縁堰部材50は、フランジ103bの下面に沿って流れる流体を前記下面から離間させる斜面50aを備えている。また、縁堰部材50は前記下面から下方に突出し、その突出高さは、外縁枠体60aを構成する上横リムの幅より高い。
【0027】
電磁駆動部120は、コイル104aを内在させた円筒状のヨーク104と、ヨーク104の下部に固定されたコア105と、コア105の上部に可動支持されたプランジャー106と、プランジャー106の上部に固定された弁体107と、コア105に装着されたガイド110とプランジャー106との間に装着され弁体107を上方に付勢するスプリング108と、を有している。
【0028】
次に、動作について説明する。まず、図示しない外部の電源からコイル104aが通電されていない場合は、プランジャー106の弁体107は、スプリング108の付勢力によって弁口103aに押し付けられ、入力ポート102と出力ポート部103の弁口103aの連通を閉じている。
【0029】
次に、外部の電源からコイル104aが通電されると、コイル104aに磁界が発生し、コア105とプランジャー106とが引きつけ合う力が発生する。そのため、プランジャー106は、スプリング108の付勢力に抗して下方に移動する。すると、弁体107は、弁口103aから離れ、入力ポート102から供給される流体がフィルタ部材60を通り出力ポート部103から排出される。
【0030】
入力ポート102から供給される流体のうちフランジ103bに当接する外縁枠体60aに向かう流体は、縁堰部材50の斜面50aに案内されてメッシュ60bに向かって流れる。したがって、外縁枠体60aとフランジ103bの下面との間の隙間を通って異物がフィルタ部材60の下流側に流れることが抑制される。
【0031】
縁堰部材50のフランジ103b下面から下方への突出高さが外縁枠体60aを構成する上横リムの幅より高いので、縁堰部材50の斜面50aの反対側に回り込んで外縁枠体60aとフランジ103bの下面との間の隙間に流れ込む流体は殆どなく、異物がフィルタ部材60の下流側に漏れ出すことが殆どなくなる。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態の電磁弁は、縁堰部材をハウジングの底面に取り付けた以外は実施形態1の電磁弁と同じである。同じ構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0033】
ハウジング101の底面には図6に示すように、フィルタ部材60の上流側に近接して配置される縁堰部材50Aが固定されている。
【0034】
縁堰部材50Aは、外縁枠体60aの下横リムの方向に流れる流体をメッシュ60aの方向に向かわせる斜面50Aaを備えている。また、縁堰部材50Aはハウジング101の底面から上方に突出し、その突出高さは、外縁枠体60aを構成する下横リムの幅より高い。
【0035】
ハウジング101の底面にフィルタ部材60の上流側に近接して縁堰部材50Aが配置されているので、潰し代60cを潰してハウジング101の底面と接しているフィルタ部材60の外縁枠体60aとハウジング101の底面との間の隙間を通って異物がフィルタ部材60の下流側に流れることが抑制される。
【0036】
上記の実施形態1では、縁堰部材50をフランジ103bの下面に設け、実施形態2では、縁堰部材50Aをハウジング101の底面に設けたが、実施形態1と実施形態2とを組み合わせても良い。縁堰部材50と縁堰部材50Aの両方を備えることで、どちらか一方を備える電磁弁より異物進入を阻止する能力が向上する。
【0037】
縁堰部材50と縁堰部材50Aの両方を備え、さらにハウジング101の流路Rの側壁に外縁枠体60aの縦リム方向に流れる流体をメッシュ60b方向に向かわせる縁堰部材を備える電磁弁が更に望ましい。
【符号の説明】
【0038】
50、50A・・・・・・縁堰部材
50a、50Aa・・・斜面
60・・・・・・・・・・フィルタ部材
60a・・・・・・・・外縁枠体
60b・・・・・・・・メッシュ
101・・・・・・・・・ハウジング
102・・・・・・・・・入力ポート
103・・・・・・・・・出力ポート部
103a・・・・・・・弁口
103b・・・・・・・フランジ
120・・・・・・・・・電磁駆動部
R・・・・・・・・・・・流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路を形成するハウジングと、一端側が前記流路に開口し流体の供給を受ける入力ポートと、一端側に前記流路に開口する弁口を備え流体の排出を行う出力ポート部と、弁体を備え前記弁体を駆動して前記弁口を開閉する電磁駆動部と、前記流路に設けられ異物進入を抑制するシート状フィルタ部材と、を有する電磁弁であって、
前記フィルタ部材は、前記流路の内壁に当接する外縁枠体とその内側に張られたメッシュとを備え、
前記フィルタ部材の上流側に近接して前記流路の内壁に配置され、前記外縁枠体に向かう流体を前記メッシュに向かわせる縁堰部材を有することを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記フィルタ部材は、前記弁口と前記入力ポートとの間の流路に設けられる請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記縁堰部材は前記内壁から内側に突出し、その突出高さが前記外縁枠体を構成するリムの幅より高い請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記縁堰部材は前記流路の内壁に沿って流れる流体を前記内壁から離間させる斜面を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記ハウジングは上部が開口する有底の容器であり、前記出力ポート部は前記上部の開口を覆って前記流路を形成するフランジを備え、前記縁堰部材は前記フランジの内面に設けられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−24326(P2013−24326A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159648(P2011−159648)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(592056908)浜名湖電装株式会社 (59)
【Fターム(参考)】