説明

電磁式ロック装置

【課題】引き出し家具用ロック装置を電磁式にロックすることにより、キーの携帯・保管が不要で、キーの紛失や偽造を未然に防止できる引き出し家具用の電磁式ロック装置を提供する。
【解決手段】ロック装置をロック/アンロックする操作を行うレバー操作部と、レバー操作部のロック状態及びアンロック状態を切り替える電磁作動部とを備え、レバー操作部は、取っ手とその背面に延在する回動軸とを有するレバーと、回動軸とそれを支持する軸結合部とを固定又は分離させる軸固定手段と、一端が回動軸の端部に固定され、ロック装置をロック/アンロックする操作バーとを備え、軸固定手段は、キー穴内を往復動する固定キー部材と、固定キー部材をキー穴内で支持する弾性部材とを備え、軸結合部はキー案内スリットを有し、キー案内スリットとキー穴とが整合したときに固定キー部材はキー案内スリット内に進入し、もってロック状態に切り替わることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引き出し用電磁式ロック装置に関し、特に机、ロッカー、たんす等の引き出し用の機械式ロック装置を電磁式にロックすることができ、もってキーを携帯したり保管したりする必要がない引き出し用電磁式ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に引き出しを有するたんす、机,ロッカー等は、水平方向に開閉される引き出しを多段に有し、内部に様々な物品を収納可能である。このような引き出し付き家具のうち、例えば机の引き出しには、各種の備品または書類や帳簿などが保管されている。引き出し中の収納帳簿等を安全に保管するために、ロック装置が設けられている。
【0003】
図1は従来のロック装置を有するキャビネットと呼ばれる机の構造を示す斜視図である。この多段引き出しキャビネット2の上端部には、キーを用いてロック/アンロックするロック装置1が設けられている。ロック装置1は、キーの回転によって垂直方向に往復する掛金(図示せず)を有し、この掛金は上下動して、引き出しの下端に設けられた係止溝(図示せず)に挿入又は離脱する。掛金が係止溝に挿入されると、引き出しの水平方向への移動は阻止されるが、掛金が係止溝から離脱すると、引き出しは開放自在となる。
【0004】
しかしながら、このような従来技術によるロック装置1では、ロック/アンロックのためにユーザは必ずキーを携帯または保管していなければならないという不便さがあった。またキーを紛失したり他の場所にある場合、ロック装置1が付いたキャビネット2の引き出しを開くことができないという問題点があった。またロック装置1を開くためのキー構造が簡単であるため、キーの偽造が容易であり、従って盗難等の危険が大きかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、キーを携帯したり保管したりする必要がなく、またキーの紛失により引き出し家具が使用できなくなったり、キーが偽造されたりすることもない電磁式ロック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁式ロック装置は、ロック装置をロック/アンロックする操作を行うレバー操作部と、前記レバー操作部のロック状態及びアンロック状態を切り替える電磁作動部と、前記電磁作動部を制御するための信号入力部と、前記信号入力部及び前記電磁作動部に電流を供給する電源手段とを備え、
前記レバー操作部は、取っ手とその背面に一定の長さだけ延在する回動軸とを有するレバーと、前記回動軸を回動自在に支持する軸結合部と、前記軸結合部と前記回動軸とを固定または分離させる軸固定手段と、一端が前記回動軸の端部に固定され、他端が前記ロック装置にロック/アンロックするように係合する操作バーとを備え、
前記軸固定手段は、前記レバーの回動軸に設けたキー穴内を往復動する固定キー部材と、前記固定キー部材を前記キー穴内で弾性的に支持する弾性部材とを備え、
前記軸結合部はキー案内スリットを有し、前記キー案内スリットと前記回動軸のキー穴とが整合したときに前記固定キー部材は前記キー案内スリット内に進入し、もってロック状態に切り替わる
ことを特徴とする電磁式ロック装置。
【0007】
前記電磁作動部は、電気的極性の変換に応じて直線往復動を行わせる電磁駆動手段と、前記電磁駆動手段の直線運動部に係合した自由端を有するとともに、固定端を中心として枢動し得る回動部材と、上端が前記回動部材の中央部にピンで固定され、下端が前記軸結合部のキー案内スリット内を上下動し、もって前記固定キー部材が前記キー案内スリットに進入するのを制御するキー押圧部材とを備えるのが好ましい。
【0008】
前記電磁駆動手段は、直線運動部を往復動させるモータ又はソレノイドであるのが好ましい。
【0009】
前記信号入力部はキーパッドと、外部情報を感知するセンサ部とを有するのが好ましい。
【0010】
前記電源手段は、内部電源及び/又は外部電源接続用端子であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
引き出し家具用の機械式ロック装置を電磁式ロックを用いて制御するという構成を有する本発明の電磁式ロック装置を用いれば、、キーを携帯したり保管したりする必要がなく、キーを携帯又は保管しなければならないという不便さなしに、キーの偽造による犯罪を防止し、引き出し家具に貴重品を安全に保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面に基づいて以下詳しく説明する。図2は、本発明に係る多端式引き出し家具(キャビネット)の構造を示す斜視図である。多端式引き出し家具20において、引き出しとして用いられない上端部の右側には、本発明の電磁式ロック装置10が設けられている。なお電磁式ロック装置10の設置方向はどちらか一方に限定されるものではなく、引き出し家具の構造に応じて様々な設置形態に変更し得ることは言うまでもない。
【0013】
図3は本発明に係る家具の引き出し用電磁式ロック装置を示す斜視図であり、図4は本発明に係る電磁式ロック装置を引き出し家具に取り付ける様子を示す背面斜視図であり、図5〜7は本発明の電磁式ロック装置の各部を示す断面図である。本発明に係る家具の引き出し用電磁式ロック装置は、引き出し家具の各引き出しの中央ロック装置をロック/アンロックする操作を行うレバー操作部100と、レバー操作部100のロック状態及びアンロック状態を切り替える電磁作動部200と、電磁作動部200を制御するための信号入力部300と、信号入力部300及び電磁作動部200に電流を供給する電源手段(図示せず)と、電源手段、信号入力部300、電磁作動部200及びレバー操作部100を収容するケース500と、ケース500を引き出し家具の内側から固定するための固定板600及び固定部材700とで構成されている。
【0014】
ケース500は、図4に示すように、前面ケース部510と、前面ケース部510の背面を覆う背面ケース部520とからなり、前面ケース部510は、電源手段、信号入力部300、電磁作動部200及びレバー操作部100を引き出しと整合するように機構的に収納する収納部511と、収納部511の全面にフレーム513aを形成するパネル部513とからなる。前面ケース510の収納部511の周りには、固定部材700を締め付けるための複数のボス511aが設けられている。
【0015】
図5は、本発明に係る電磁式ロック装置のレバー操作部の構造を示す部分拡大断面図である。レバー操作部100は、取っ手111及びその背面から一定の長さだけ延在する回動軸113を有するレバー110と、レバー110の回動軸113を回動可能に支持する軸結合部120と、軸結合部120と回動軸113を固定または分離させる軸固定手段130とを有する。操作バー140の一端は回動軸113の端部に固定され、他端は家具の引き出しの中央ロック装置(図示せず)に係合する。従って、レバー110の回転とともに操作バー140は回動し、操作バー140の他端は中央ロック装置をロック又はアンロックする。
【0016】
軸固定手段130は、レバー110の回動軸113に設けたキー穴113a内に挿入されて往復動する固定キー部材131と、固定キー部材131をキー穴113a内で弾性的に支持する弾性部材133とで構成される。軸結合部120には、回動軸113のキー穴113aと一致する位置にキー案内スリット121が形成されている。ロック状態のとき、固定キー部材131はキー穴113a内に進入する。回動軸113の端部における円筒面の一部を図4に示すように平坦化し、操作バー140に回動力を伝達しやすい構造とするのが好ましい。
【0017】
図6及び図7は、本発明に係る電磁式ロック装置のレバー操作部及び電磁作動部の構造を示す部分拡大断面図である。電磁作動部200は、電気的な極性の変換に応じて直線往復動を行わせる電磁駆動手段210と、電磁駆動手段210の直線運動部211と自由端221が係合するとともに、固定端223を中心として枢動し得る回動部材220と、回動部材220の中央部に上端がピン231で枢動自在に係合するとともに、下端が軸結合部120のキー案内スリット121に挿入されたキー押圧部材230とを有する。枢動自在な回動部材220の自由端221が電磁駆動手段210の直線運動部211に係合しており、かつキー押圧部材230の上端が回動部材220の中央部に枢動自在に係合しているので、直線運動部211の上下動によりキー押圧部材230もキー案内スリット121内で上下動し、もって軸固定手段130の固定キー部材131をキー案内スリット121及びキー穴113a内で上下動させる。この例では、電磁駆動手段210はモータにより直線運動部211を往復動させる構造を有するが、これに限定されず、例えばソレノイドを用いてもよい。
【0018】
図3に示すように、信号入力部300は、アラビア数字又は特殊文字の組合せからなるキーパッド310と外部情報を感知するセンサ部320により構成することができる。また図3及び図4に示すように、電源手段としては、ケース500の背面に設けた入力端子410に接続する1つ以上の蓄電池からなる内部電源か、ケース500の前面に設けた入力端子430に接続する外部電源を用いることができる。
【0019】
上記構成を有する本発明の電磁式ロック装置により、引き出し家具の中央ロック装置をロック/アンロックする様子を、以下詳述する。まず信号入力部300のキーパッド310より暗号番号を入力するか、センサ部320により設定情報を感知させる。入力情報と格納情報値とが一致すると、電磁作動部200は作動し、電磁作動部200の電磁駆動手段210に印加される電流の極性を変換させて、電磁駆動手段210の直線運動部211を直線往復動させる。図6のロック状態で上昇していた直線運動部211は、図7のアンロック状態への切り替えにより下降する。直線運動部211の移動に従い、直線運動部211に自由端221が係合した回動部材220は、固定端223を中心にして回動する。
【0020】
回動部材220の中央部に上端がピン231で枢動自在に係合したキー押圧部材230は、軸結合部120のキー案内スリット121内を下降し、キー押圧部材230の下端はキー案内スリット121内に進入していた固定キー部材131を降下させる。キー押圧部材230が、軸結合部120の内面と回動軸113の外面との境界に到達すると、固定キー部材131とスリット121との係合が解除され(アンロック状態となり)、レバー110は回転自在となる。すなわち、軸固定手段130の固定キー部材131が軸結合部120の内面に沿って回転可能となる。このため、固定キー部材131の先端部(軸結合部120側の端部)は、軸結合部120の内面と相補的な曲面を有するのが好ましい。
【0021】
アンロック状態でレバー110を開方向へ回転させると、回動軸113の端部に固定された操作バー140も一緒に回転する。操作バー140は、家具の各引き出しの中央ロック装置をアンロック状態にする。中央ロック装置自体は公知のもので良く、例えば、各引き出しの底面に設けられた係止溝を有し、操作バー140に連結した掛金が係止溝に係合すると各引き出しの水平方向の移動が阻止されるもので良い。このようなロック装置は周知技術であるので、図面による説明を省略する。
【0022】
一定の時間が経過すると(例えば中央ロック装置がアンロック状態になった直後に)、自動的に電磁駆動手段210が作動して、直線運動部211が上方に移動する。すると、回動部材220の上方への回動によりキー押圧部材230はキー案内スリット121内を上昇し、スリット121に自由空間が確保される。ここでレバー110を閉方向へ回転させると、回動軸113のバー結合部113bに固定された操作バー140は回動し、中央ロック装置の掛金(図示せず)を垂直方向に移動させ、掛金は各引き出しの底面に設けられた係止溝と係合する。さらにレバー110を閉方向に回動すると、回動軸113のキー穴113aと軸結合部120のキー案内スリット121が一致する地点に到達し、弾性部材133の弾発力により固定キー部材131はキー案内スリット121の自由空間に進入する。
【0023】
固定キー部材131がキー案内スリット121に進入した状態では、レバー110の回転操作は不可能でなり、中央ロック装置の操作も行うことができない。このように引き出し家具はロック状態に維持される。
【0024】
以上、本発明の電磁式ロック装置を引き出し家具に用いた場合について説明したが、本発明の電磁式ロック装置はその他の家具または施設にも勿論使用可能である。上記構成を有する本発明は、勿論その技術思想を逸脱しない範囲内で様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の引き出し机の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る引き出し机の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る引き出し家具に用いる電磁式ロック装置を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る電磁式ロック装置を引き出し家具に取り付ける様子を示す背面斜視図である。
【図5】本発明に係る電磁式ロック装置のレバー操作部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明に係る電磁式ロック装置のレバー操作部及び電磁作動部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明に係る電磁式ロック装置のレバー操作部及び電磁作動部の構造を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0026】
100 レバー操作部
110 レバー
111 取っ手
113 回動軸
113a キー穴
113b バー結合部
120 軸結合部
121 キー案内スリット
130 軸固定手段
131 固定キー部材
133 弾性部材
140 操作バー
200 電磁作動部
210 電磁駆動手段
211 直線運動部
220 回動部材
221 自由端
223 固定端
230 キー押圧部材
231 ピン
300 信号入力部
310 キーパッド
320 センサ部
410 内部電源入力端子
430 外部電源入力端子
500 ケース
510 前面ケース部
511 収納部
511a ボス
513 パネル部
513a フレーム
520 背面ケース部
600 固定板
700 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック装置をロック/アンロックする操作を行うレバー操作部と、前記レバー操作部のロック状態及びアンロック状態を切り替える電磁作動部と、前記電磁作動部を制御するための信号入力部と、前記信号入力部及び前記電磁作動部に電流を供給する電源手段とを備えた電磁式ロック装置において、
前記レバー操作部は、取っ手とその背面に一定の長さだけ延在する回動軸とを有するレバーと、前記回動軸を回動自在に支持する軸結合部と、前記軸結合部と前記回動軸とを固定または分離させる軸固定手段と、一端が前記回動軸の端部に固定され、他端が前記ロック装置にロック/アンロックするように係合する操作バーとを備え、
前記軸固定手段は、前記レバーの回動軸に設けたキー穴内を往復動する固定キー部材と、前記固定キー部材を前記キー穴内で弾性的に支持する弾性部材とを備え、
前記軸結合部はキー案内スリットを有し、前記キー案内スリットと前記回動軸のキー穴とが整合したときに前記固定キー部材は前記キー案内スリット内に進入し、もってロック状態に切り替わる
ことを特徴とする電磁式ロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁式ロック装置において、前記電磁作動部は、電気的極性の変換に応じて直線往復動を行わせる電磁駆動手段と、前記電磁駆動手段の直線運動部に係合した自由端を有するとともに、固定端を中心として枢動し得る回動部材と、上端が前記回動部材の中央部にピンで固定され、下端が前記軸結合部のキー案内スリット内を上下動し、もって前記固定キー部材が前記キー案内スリットに進入するのを制御するキー押圧部材とを備えることを特徴とする電磁式ロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁式ロック装置において、前記電磁駆動手段は、直線運動部を往復動させるモータ又はソレノイドであることを特徴とする電磁式ロック装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電磁式ロック装置において、前記信号入力部はキーパッドと、外部情報を感知するセンサ部とを有することを特徴とする電磁式ロック装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の電磁式ロック装置において、前記電源手段は、内部電源及び/又は外部電源接続用端子であることを特徴とする電磁式ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−118348(P2006−118348A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306209(P2005−306209)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(505393050)
【Fターム(参考)】