説明

電磁波イメージング装置

【課題】 被測定物の複数個所のイメージングを同時に行う。
【解決手段】 被測定物に照射された検出用電磁波が、電気光学結晶に入射する。検出用電磁波の波面に対して、プローブ波の波面を傾斜させて、プローブ波を電気光学結晶に照射する。 電気光学結晶を透過したプローブ波を撮像装置が検出する。検出用電磁波の波面とプローブ波の波面とに直交する第1の仮想平面内において、検出用電磁波またはプローブ波のビーム断面が、光路長の異なる複数の第1の単位領域に区分される。電気光学結晶の表面と第1の仮想平面との交線方向の複数個所で、検出用電磁波の波面とプローブ波の波面との位相ずれが補償される。第1の仮想平面と直交し、プローブ波の進行方向と平行な第2の仮想平面内において、プローブ波のビーム断面が複数の第2の単位領域に区分される。さらに、第2の単位領域の各々が、プローブ波の波面の遅延時間が異なる複数の領域に区分される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、2つの電磁波を用いる電磁波イメージング装置に関する。例えば、テラヘルツ電磁波を用いて対象物の非破壊検査を行う技術が知られている。
【背景技術】
【0002】
電磁波を用いて対象物を観察する方法が、種々知られている。例えば、可視光を用いて視認通りのデータを得る方法、X線を用いて視認できない内部の構造を観察する方法がある。
【0003】
テラヘルツ(THz)波は、周波数100GHz〜10THz、波長30μm〜3mmの領域に存在する電磁波であり、プラスチック、布、紙、半導体などを透過し、且つ物質固有の吸収スペクトルを有する。このため、テラヘルツ波を利用して、物性分析や検査、透視イメージングなどを行うことが可能であり、応用技術が開発されつつある。なお、テラヘルツ波領域に対しても、光軸、偏光子、検光子等、光に対する用語を用いることがある。
【0004】
非破壊で成分分析イメージングが可能なため、従来の内部透視手段(X線、超音波他)に替わる成分分析型内部透視手段として期待されている。最近のテロ対策や犯罪対策として、空港手荷物検査における爆発物(プラスチック爆弾、引火性液体他)、あるいは郵便封書内の禁止薬物(麻薬、覚醒剤他)、といった従来のX線検査では検出不可能であった測定対象に対して、特徴的なTHz吸収を利用したテラヘルツ分光イメージングの利用が提案されている。
【0005】
パルス状テラヘルツ波とプローブパルス光とを電気光学(EO)結晶に非共軸で入射し、プローブパルス光の像をデジタルカメラで撮像し、テラヘルツ時間波形をシングルショットで計測する手法が提案されている。
【0006】
また、パルス状テラヘルツ波とプローブパルス光とを電気光学(EO)結晶に共軸で入射させる手法も提案されている。この手法では、プローブパルス光の強度のピーク位置をつないだ面(パルス面)を、テラヘルツ波の波面に対して傾斜させている。プローブパルス光のパルス面をテラヘルツ波の波面に対して傾斜させることにより、非共軸の場合と同じ効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/085403号
【特許文献2】特開2008−96210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非共軸光学系を用い、検出用電磁波を線状に集光して被測定物に当て、イメージング用電磁波を非共軸で用いて測定する方法では、線状領域に直交する方向の情報を得るのに、走査が必要である。線状領域に直交する方向において、複数個所のイメージングを同時に行えれば、効率的となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によると、
電気光学結晶と、
パルス状の検出用電磁波を被測定物に照射し、透過、又は反射した前記検出用電磁波を前記電気光学結晶に入射する第1の光学系と、
前記検出用電磁波の波面に対して、パルス状のプローブ波の波面を傾斜させて、前記プローブ波を前記電気光学結晶に照射する第2の光学系と、
前記電気光学結晶を透過した前記プローブ波を検出する撮像装置と
を有し、
前記第1の光学系及び前記第2の光学系の一方は、前記検出用電磁波の波面と前記プローブ波の波面とに直交する第1の仮想平面内において、前記検出用電磁波または前記プローブ波のビーム断面を複数の第1の単位領域に区分し、前記第1の単位領域を通過するビームの光路長を、前記第1の単位領域ごとに異ならせる補償光学部材であって、前記電気光学結晶の表面と、前記第1の仮想平面との交線方向の複数個所で、前記検出用電磁波の波面と前記プローブ波の波面との位相ずれを補償する補償光学部材を含み、
前記第2の光学系は、前記第1の仮想平面と直交し、前記プローブ波の進行方向と平行な第2の仮想平面内において、前記プローブ波のビーム断面を複数の第2の単位領域に区分し、さらに、前記第2の単位領域の各々を、前記プローブ波の波面の遅延時間が異なる複数の領域に区分する時間遅延装置を含み、
前記時間遅延装置は、高さの異なる2種類の反射表面が第1の方向に配列した段差ミラーと、前記段差ミラーに対向する対向ミラーとを含み、前記プローブ波が、前記段差ミラーの反射表面上において、反射位置を前記第1の方向にずらしながら、前記段差ミラーと前記対向ミラーとの間を複数回往復することにより、前記プローブ波の波面の遅延時間が異なる複数の領域に区分される電磁波イメージング装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
検出用電磁波の入射位置を、被測定物内で走査することなく、複数個所のメージングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1による電磁波イメージング装置の概略図である。
【図2】図2Aは、実施例1による電磁波イメージング装置の補償光学素子、電気光学結晶、検光子、及びプローブ波の経路の位置関係を示す概略図であり、図2Bは、撮像装置の撮像面上に画定されるセルを示す正面図である。
【図3】図3は、実施例1による電磁波イメージング装置の補償光学素子及び電気光学結晶の斜視図である。
【図4】図4Aは、実施例1で用いられる段差ミラーの正面図であり、図4B及び図4Cは、それぞれ図4Aの一点鎖線4B−4B、4C−4Cにおける断面図である。
【図5】図5は、段差ミラー、対向ミラー、及びプローブ波の1光線の斜視図である。
【図6】図6A及び図6Bは、段差ミラー、対向ミラー、及びプローブ波の1光線の斜視図である。
【図7−1】図7A及び図7Bは、段差ミラーとプローブ波のビーム断面との位置関係、及びビーム断面内の遅延時間の分布を示し線図である。
【図7−2】図7C及び図7Dは、段差ミラーとプローブ波のビーム断面との位置関係、及びビーム断面内の遅延時間の分布を示し線図である。
【図8】図8は、プローブ波のビーム断面の遅延時間の分布を示すグラフである。
【図9】図9は、プローブ波の波面の位置関係を示す線図である。
【図10】図10Aは、撮像装置の撮像面内のセルの区分を示す正面図であり、図10Bは、1つのセル内を遅延時間の異なる領域に区分した線図であり、図10Cは、検出用電磁波の検出された波形を繋ぎ合わせたグラフである。
【図11】図11は、実施例2による電磁波イメージング装置に用いられる段差ミラーの断面図である。
【図12】図12は、実施例3による電磁波イメージング装置の概略図である。
【図13】図13Aは、実施例4による電磁波イメージング装置に用いられる補償光学素子の概略図であり、図13Bは、補償光学素子の他の構成例を示す概略図である。
【図14】テラヘルツ波とプローブ波とを非共軸で電気光学結晶に入射させる電磁波イメージング装置の動作原理を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施例について説明する前に、テラヘルツ波とプローブ波とを非共軸で電気光学結晶に入射させるテラヘルツ波イメージング装置の動作原理について説明する。
【0013】
図14は、テラヘルツ波とプローブ波とを非共軸で電気光学結晶に入射させるテラヘルツイメージング装置の原理ダイアグラムである。z方向に進行するパルス状のテラヘルツ波101をシリンドリカルレンズ108によりx軸と平行な線状に集光し、被測定物110に入射させる。パルス状テラヘルツ波101が被測定物110のx軸方向に沿う線状領域の情報を担う。なお、パルス状テラヘルツ波を、被測定物中を透過させる代わりに、被測定物で反射させてもよい。深さのある被測定物110の線状領域を透過したテラヘルツ波をシリンドリカルレンズ109により、xy面内で広がりを有する平行光線束に戻す。x軸方向の線状領域の情報がy方向に拡げられる。
【0014】
被測定物110を透過したパルス状テラヘルツ波を電気光学結晶103に入射させる。電気光学結晶103は、対象物体を透過したパルス状テラヘルツ波101の電場による電気光学効果により複屈折変化を生じる。実線で示した波面(等位相面)は破線で示した波面(等位相面)より時間的に先行している。パルス状プローブ波102を、yz面内方向で、パルス状テラヘルツ波101とは非共軸の配置で、電気光学結晶103に入射させる。プローブ波102は、電気光学結晶103中で、パルス状テラヘルツ波101起因の複屈折変化の影響を受ける。
【0015】
非共軸であるため、パルス状テラヘルツ波101とプローブ波102の波面が重なるタイミングに時間差が生じ、時間変化がy軸方向に表れる。つまり、x軸方向の線状領域の経時変化情報がy軸方向に展開される。プローブ波102の光軸上に、電気光学結晶103を挟んで、偏光子104と検光子105とがクロスニコルの関係で配置される。パルス状テラヘルツ波101によって誘起された複屈折変化の影響を受けたプローブ波102を取り出し、結像レンズを含むCCDカメラ106で測定する。
【0016】
プローブ波102の波面とパルス状テラヘルツ波101の波面とは、交差角θで交差している。プローブ波102の波面から見ると、図14において、上側でパルス状テラヘルツ波の実線の波面と合致している時、下側ではパルス状テラヘルツ波の破線の波面と合致している。つまり、上側から下側に時間が経過していることになる。
【0017】
パルス状テラヘルツ波1の進行方向(z軸方向)に展開していた経時変化情報が、電気光学結晶103における時間−空間変換により、x軸方向の1次元像と直交する方向(プローブ波102のビーム幅方向)に展開される。これを、2次元イメージングデバイスで検出することによって、時間軸(奥行き)方向の情報を得ることができる。干渉分光法と同様に、経時変化情報をフーリエ変換することによりスペクトルを得ることができる。
【0018】
2次元イメージングデバイスで得られた2次元イメージング画像の1軸が、テラヘルツパルスの時系列波形の計測用として用いられる。他方の1軸が、線集光(ラインビーム)の状態で透過したテラヘルツパルスの1次元イメージング(2次元平面内の一次元イメージング)用として用いている。実空間におけるy軸方向に関しては、被測定物110内の1ポイントのみの計測となってしまう。y方向に関する情報を得るには、線状集光領域を被測定物110内でy方向に走査する必要がある。本発明者は、波面を分解することにより、面内情報を同時に計測することを考えた。
【0019】
[実施例1]
図1に、実施例1による電磁波イメージング装置の概略図を示す。光源20からフェムト秒レーザが出射される。光源20として、例えば、スペクトラフィジックス株式会社製のフェムト秒レーザ発振器を用いることができる。このレーザ発振器は、パルスエネルギ1mJ、パルス幅100fs、中心波長800nm、繰り返し周波数1kHzのパルスレーザを出射する。
【0020】
光源20の出力がビームスプリッタ21で分岐される。分岐された一方のパルスレーザが、必要に応じてミラー22等で光路調整され、プローブ波2となる。他方のパルスレーザが、ZnTe電気光学結晶23を用いたテラヘルツ発生部に入射し、パルス状のテラヘルツ波(検出用電磁波)1が発生する。検出用電磁波1は、広い波長範囲のテラヘルツ波を含む。パルス状の検出用電磁波1の時間幅は、1〜2psecである。
【0021】
コリメートされた検出用電磁波1の光路上に、シリンドリカルレンズ列13、14が配置されている。シリンドリカルレンズ列13は、検出用電磁波1を、複数の平行な直線状の領域に集光する。集光された領域が被測定物8の内部に位置するように、被測定物8が配置されている。被測定物8を透過した検出用電磁波1が、シリンドリカルレンズ列14によって複数のコリメート光線束に戻される。コリメート光線束の各々は、幅方向の広がりを有するが、被測定物8の線状領域を透過した電磁波であり、幅方向のどの位置の光線も、被測定物8の同一の線状領域の情報を担っている。シリンドリカルレンズ列14を通過した検出用電磁波1が、電気光学結晶3に垂直入射する。検出用電磁波1の各コリメート光線束の波面(位相面)は、電気光学結晶3の表面と平行になる。
【0022】
プローブ波2が、偏光子4、時間遅延装置9、補償光学素子10を経由して、電気光学結晶3に、入射角θで斜め入射する。すなわち、検出用電磁波1とイメージング用のプローブ波2とは、電気光学結晶3に非共軸で入射する。補償光学素子10は、プローブ波2を、光路長差(位相差)を有する複数の単位光線束に分割する。プローブ波2の各単位光線束が、電気光学結晶3上で、検出用電磁波1の対応するコリメート光線束と交差する。従って、シリンドリカルレンズ列13、14によって生成されたコリメート光線束の数は、補償光学素子10によって生成された単位光線束の数と等しい。
【0023】
補償光学素子10には、階段状の透明ブロックが用いられる。階段状の透明ブロックの階段面(踏み面)の各々は、プローブ波2の進行方向に垂直(波面に平行)である。階段状の透明ブロックの踏み面と、プローブ波2の単位光線束とが、1対1に対応する。プローブ波2の単位光線束の波面と、検出用電磁波1のコリメート光線束の波面とは、角度θで交差する。
【0024】
被測定物8を透過して、被測定物8の影響を受けた検出用電磁波1の電場により、電気光学結晶3が電気光学効果による複屈折変化を生じる。直線偏光のプローブ波2は、電気光学結晶3の複屈折変化により、偏光状態を変化させる(一般的には、楕円偏光になる)。電気光学結晶3によって偏光状態が変化したプローブ波2が、検光子5を透過して、デジタルカメラ等の撮像装置6に入射する。偏光子4と検光子5とは、クロスニコルの関係で配置されている。このため、プローブ波2の偏光状態の変化成分のみが検光子5を透過する。検出用電磁波1の光路となる外気は必要に応じて窒素雰囲気または真空とする。
【0025】
電気光学結晶3は、例えば30mm×30mm×2mmのZnTe結晶で形成される。補償光学素子10は、例えば波長800nmで屈折率1.51のガラス(BK7)で形成される。他の種類のガラス、波長800nmで透明な有機樹脂等、他の透明材料を用いてもよい。撮像装置6には、例えば、結像レンズを含み、波長800nmに感度を有し、画素数512×512、画素ピッチ20μmのCCDカメラが用いられる。結像レンズの倍率は、例えば0.3倍である。
【0026】
プローブ波2の進行方向逆向きをz軸の正方向、幅方向(プローブ波2の単位光線束が配列する方向)をy軸方向、紙面垂直(高さ)方向をx軸方向とするxyz直交座標系を定義する。検出用電磁波1の進行方向とプローブ波2の進行方向とは、yz面に平行である。すなわち、検出用電磁波1の波面及びプローブ波2の波面の双方に垂直な平面が、yz面となる。
【0027】
実施例1においては、プローブ波2の光路上で、電気光学結晶3より上流側に、補償光学素子10が配置されている。補償光学素子10は、屈折率1.0の外気より高い屈折率を有する。図1において、補償光学素子10は、y軸の負の側で、光路に沿うz方向の寸法が最も大きく、y軸の正の向きに向かって、z方向の寸法が階段的に小さくなる。xy面に平行な踏み面がx軸方向に延在する。プローブ波2のビーム断面が、ビーム幅方向(y方向)に関して、光路長が相互に異なる複数の領域(y分割単位領域)12に区分される。1つのy分割単位領域12内では、光路長は均一である。具体的には、y軸の負の方向に向かって光路長が階段状に長くなるように、複数のy分割単位領域12が画定される。1つのy分割単位領域12が、プローブ波2の1つの単位光線束に対応する。
【0028】
図2Aに、補償光学素子10、電気光学結晶3、及び検光子5の断面図を示す。補償光学素子10は、xz面に平行な表面10Aと、xy面に平行な表面(底面)10Bを有し、底面10Bとは反対側にxy面と平行な複数の踏み面10Cを有する。踏み面10Cの段数は、例えば5段である。踏み面10Cの間を、xz面と平行な蹴上げ面10Dが接続する。従って、プローブ波2のビーム断面内に、ビーム幅方向(y軸方向)関して光路長が相互に異なる5個のy分割単位領域12が形成される。
【0029】
補償光学素子10の高い踏み面10C(y軸の負の側)を通るほど、光路長が長くなり、波面は遅れる。これにより、相対的にy軸の正の側に位置する単位光線束の波面が、負の側に位置する単位光線束の波面より進んだ5段の波面WF1〜WF5が形成される。電気光学結晶3の表面は、プローブ波2の進行方向に垂直な面から角度θ傾いている。補償光学素子10の各段のz方向の段差(蹴上げ面10Dの高さ)は、波面WF1〜WF5が、同時に電気光学結晶3に到達するように設計される。これにより、電気光学結晶3の表面とyz面との交線方向の複数個所(5個所)で、検出用電磁波1の波面とプローブ波2の波面とが一致する(位相ずれが補償される)。
【0030】
次に、時間遅延装置9が配置されていないものとして、実施例1による電磁波イメージング装置の動作について説明する。
【0031】
図2Aは、各波面WF1〜WF5の下端(y軸負側の端部)が同時に電気光学結晶3に達した状態を示している。波面が進行すると、次第に各波面WF1〜WF5の上側部分が電気光学結晶3に到達するようになる。即ち、各y分割単位領域12内においては、図14を参照して説明したように、y軸方向に時間情報が展開されることになる。階段の段数分、ここでは5段分、実空間のy軸方向に関する位置の情報を測定することができる。
【0032】
図2Bは、撮像装置6の撮像面を概略的に示す。撮像面が、y分割単位領域12に対応するx方向に長い5つの矩形領域に区分される。各矩形領域を、y分割セルCLy1〜CLy5と呼ぶこととする。y分割セルCLy1〜CLy5の各々の幅方向(y軸方向)に90画素が配置される。y分割セルCLy1〜CLy5の各々のy軸方向に並ぶ画素列が、検出用電磁波1の時間波形の時間軸に対応する。y分割セルCLy1〜CLy5の各々において、y軸の正の向きに向かって時間が経過する。
【0033】
図3に、検出用電磁波1、プローブ波2、電気光学結晶3、撮像装置6、及び補償光学素子10の斜視図を示す。波長800nmのプローブ波2に対して、光路長差を形成する補償光学素子10を、ガラス(BK7)で形成する。分光イメージングを行う上で、分解能が0.15psec、時間幅が13.5psecの時間波形と、分解能が0.07THz、帯域が3.33THzのスペクトルを得るため、電気光学結晶3に対するプローブ波2の入射角θは、42.45°とする。補償光学素子10の屈折率は1.51、y軸方向の寸法は22.13mm、x軸方向の寸法は30mm、底面から最も高い踏み面までのz軸方向の距離は39.71mm、踏み面のy軸方向の寸法は4.43mm、光路方向の段差(蹴上げ面の高さ)は7.94mmである。波長800nmのプローブ波2の光路に、このような階段状の補償光学素子10を配置することにより、被測定物8の幅方向(検出用電磁波1の進行方向及びx軸方向の双方と垂直な方向)の5点において、同時に、検出用電磁波1の時間波形を測定することができる。
【0034】
図1に戻って、時間遅延装置9の構成について説明する。偏光子4を透過したプローブ波2のビーム断面が、ビーム整形器31により、x軸方向に長い形状に整形される。ビーム整形器31を透過したプローブ波2が、対向配置された段差ミラー34と対向ミラー35との間を複数回往復した後、ビーム整形器32に入射する。ビーム整形器31、32には、それぞれ2本のシリンドリカルレンズを含むアフォーカル光学系が用いられる。ビーム整形器32は、プローブ波2のビーム断面を、y軸方向に引き伸ばすことにより、元の形状に戻す。ビーム整形器32を透過したプローブ波2が、補償光学素子10に入射する。
【0035】
図4Aに、段差ミラー34の正面図を示す。図4B及び図4Cに、それぞれ図4Aの一点鎖線4B−4B、4C−4Cにおける断面図を示す。相対的に高い反射表面34Hと、相対的に低い反射表面34Lとが、x軸方向に交互に配列されている。高い反射表面34Hと低い反射表面34Lとの高さの差はHである。高い反射表面34Hと低い反射表面34Lの形状及び寸法は、すべて同一である。実施例1においては、高い反射表面34H及び低い反射表面34Lが、3個ずつ配置されている。対向ミラー35の反射表面は、平面である。
【0036】
図5に、段差ミラー34、対向ミラー35、及びプローブ波2の経路の概略斜視図を示す。段差ミラー34の高い反射表面34H及び低い反射表面34Lの法線は、入射するプローブ波2の進行方向と逆向きの方向(z軸の正の向き)から、x軸の正の向き及びy軸の正の向きに、やや傾いている。対向ミラー35の平坦な反射表面は、段差ミラー34の高い反射表面34H及び低い反射表面34Lと平行である。
【0037】
プローブ波2のある光線に着目すると、段差ミラー34と対向ミラー35との間で反射を繰り返すに従って、段差ミラー34の表面における反射位置Pが、y軸の正の向きに移動するとともに、x軸の正の向きにも移動する。実施例1においては、段差ミラー34及び対向ミラー35で、それぞれ6回反射した後、ビーム整形器32(図1)に入射する。図5では、段差ミラー34の反射表面上の反射位置Pが、すべて高い反射表面34H内に位置する例を示している。
【0038】
図6Aに、段差ミラー34の反射表面上の1回〜5回目の反射位置Pが、高い反射表面34Hに位置し、6回目の反射位置Pが、低い反射表面34Lに位置する光線を示す。この光線の光路長は、図5に示した光線の光路長よりも2×Hだけ長くなる。プローブ波2が光路長2×Hを伝搬する時間をtdとする。図6Bに、段差ミラー34の反射表面上の1回〜2回目の反射位置Pが、高い反射表面34Hに位置し、3回〜6回目の反射位置Pが、低い反射表面34Lに位置する光線を示している。この光線の光路長は、図5に示した光線の光路長よりも8×Hだけ長くなる。高い反射表面34H及び低い反射表面34Lで反射する回数は、プローブ波2のビーム断面38内の、x方向の位置に依存する。
【0039】
低い反射表面34Lで反射した光線は、高い反射表面34Hで反射した光線に比べて、長い経路を伝搬する。このため、時間遅延が生ずる。低い反射表面34Lで反射した回数が多い光線ほど、遅延時間が長くなる。
【0040】
図7A〜図7Dを参照して、ビーム断面38内における遅延時間の分布について説明する。
【0041】
図7Aに、プローブ波2の1回目の入射領域38Aを実線で示し、2回目〜6回目の入射領域38B〜38Fを破線で示す。入射領域38A〜38Fは、x方向に長い形状を有する。1回目の反射領域38Aは、図7Aにおいて最も下の低い反射表面34Lから、最も上の低い反射表面34Lまで達する。これにより、ビーム断面38内が、高い反射表面34Hで反射された領域A0と、低い反射表面34Lで反射された領域A1とに区分される。
【0042】
6回とも高い反射表面34Hで反射された光線を、遅延時間の基準とする。1回反射時点で、領域A0を通過する光線の遅延時間は0であり、領域A1を通過する光線の遅延時間はtdである。
【0043】
2回目〜6回目の入射領域38B〜38Fは、反射回数が増加するに従って、y軸の正の方向に移動するとともに、x軸の正の方向にずれる。反射回数1回あたりのx軸方向へのずれ量は、高い反射表面34H及び低い反射表面34Lの各々のx軸方向の寸法の1/7である。
【0044】
図7Bに、プローブ波2の2回目の入射領域38B、及び2回反射した後のビーム断面38内の遅延時間の分布を示す。高い反射表面34Hでの反射回数が2回で、遅延時間が0の領域A0と、低い反射表面34Lでの反射回数が2回で、遅延時間が2tdの領域A2との間に、高い反射領域34H及び低い反射領域34Lでの反射回数が1回ずつで、遅延時間がtdの領域A1が画定される。領域A1のx軸方向の寸法は、反射回数1回あたりに、プローブ波2の入射領域がx軸方向へずれる距離に等しい。
【0045】
図7Cに、プローブ波2の3回目の入射領域38C、及び3回反射した後のビーム断面38内の遅延時間の分布を示す。遅延時間が0、td、2td、3tdの領域A0、A1、A2、A3が画定される。
【0046】
図7Dに、プローブ波2の6回目の入射領域38F、及び6回反射した後のビーム断面38内の遅延時間の分布を示す。遅延時間が0、td、2td、3td、4td、5td、6tdの領域A0、A1、A2、A3、A4、A5、A6が画定される。
【0047】
図8に示すように、ビーム断面38内がx方向に区分され、4つのx分割単位領域39が画定される。x分割単位領域39の各々は、遅延時間が0、td、2td、3td、4td、5td、6tdとなる7つの領域A0〜A6を含む。すなわち、7つの領域A0〜A6内のプローブ波2の波面の遅延時間の刻み幅はtdである。ビーム断面38内のx軸の正の側の端部に、遅延時間がtd、2td、3td、4td、5td、6tdとなる6つの領域A1〜A6が画定されている。この領域には、遅延時間が0となる領域A0が含まれないため、x分割単位領域39を構成しない。
【0048】
相互に隣り合う2つのx分割単位領域39に着目すると、両者の境界線に関して、領域A0〜A6が線対称の関係に配列する。すなわち、x分割単位領域39の境界線の両側に領域A0が配置され、境界線から遠ざかる向きに領域A0からA6まで順番に配列するか、または境界線の両側に領域A6が配置され、境界線から遠ざかる向きに領域A6からA0まで順番に配列する。
【0049】
図9に、プローブ波2の波面の位置関係を示す。図9においては、図2Aに示した複数のy分割単位領域12のうち1つのy分割単位領域12内の波面を示す。x分割単位領域39の各々において、領域A0の波面が最も進んでおり、領域A6の波面が最も遅れている。このため、波面が電気光学結晶3に到達する時刻は、領域A0において最も早く、領域A6において最も遅い。相互に隣り合う領域間の波面の遅延時間はtdに等しい。
【0050】
図10Aに、撮像装置6(図1)の撮像面の正面図を示す。図2Bに示したように、撮像面は、y方向に関してy分割セルCLy1〜CLy5に区分されている。また、撮像面は、x分割単位領域39(図8)に対応して、4つのx分割セルCLx1〜CLx4に区分されている。y分割セルCLyjと、x分割セルCLxiとの交差する領域が、1つのセルCL(i,j)を構成する。ここで、iは1以上4以下の整数であり、jは1以上5以下の整数である。
【0051】
図10Bに示すように、1つのセルCL(i,j)内が、遅延時間の異なる領域A0〜A6(図8)に対応して、7個の領域A0〜A6に区分されている。領域A0〜A6の各々においては、図2Bで説明したように、y軸が、検出用電磁波1の時間波形の時間軸に対応する。具体的には、y軸の正の向きに向かって、時間が経過する。
【0052】
図9に示したように、領域A0から領域A6に向かってプローブ波2の波面が遅れているため、領域A1内で検出された検出用電磁波1の時間波形は、領域A0内で検出された検出用電磁波1の時間波形よりも、時間的に後のものである。領域A0〜A6の間の遅延時間tdを調整することにより、領域A0内のy軸の正側の端部に対応する時刻と、領域A1内のy軸の負側の端部に対応する時刻とを一致させることができる。具体的には、図2Aに示したプローブ波2のy分割単位領域12内の波面WF1〜WF5のうち1つの波面の一端が電気光学結晶3に入射した後、他端が電気光学結晶3に入射するまでの時間と、時間遅延装置9による遅延時間の刻み幅tdとを等しくすればよい。
【0053】
このとき、領域A0内で検出された検出用電磁波1の時間波形と、領域A1内で検出された検出用電磁波1の時間波形とを、時間軸上で繋ぎ合せることにより、検出用電磁波1の連続した時間波形を得ることができる。遅延時間tdは、図4Bに示した高い反射表面34Hと低い反射表面34Lとの高さの差Hにより調整することができる。
【0054】
図10Cに示すように、領域A0〜A6で検出された検出用電磁波1の時間波形を繋ぎ合せることにより、1つの領域A0で検出可能な検出用電磁波1の時間幅を、7倍に引き伸ばすことができる。
【0055】
実施例1では、y分割単位領域12(図2A)を5個、x分割単位領域39(図8)を4個としたが、これらの分割数は、その他の個数としてもよい。y分割単位領域12の個数は、補償光学素子10(図2A)の段数によって決定される。x分割単位領域39の個数は、プローブ波2のビーム断面38(図7A)内の高い反射表面34Hと低い反射表面34Lとの個数によって決定される。例えば、x分割単位領域39の個数を14に設定したい場合には、段差ミラー34の高い反射表面34H及び低い反射表面34Lの面数を、それぞれ8面とし、ビーム断面38のx方向の寸法を、高い反射表面34H及び低い反射表面34Lの合計で14面分の大きさにすればよい。
【0056】
また、実施例1では、x分割単位領域39内を、遅延時間の異なる7個の領域A0〜A6に区分したが、区分数を7個以外にしてもよい。例えば、段差ミラー34と対向ミラー35(図1)との間でプローブ波2を7往復させると、遅延時間の異なる領域の数を、8個にすることができる。
【0057】
実施例1では、高さの異なる2種類の反射表面34H、34Lを持つ段差ミラー34を用いることにより、遅延時間の異なる領域A0〜A6を3個以上設けることができる。3段以上の多段の反射ミラーを用い、プローブ波2を1回のみ反射させることによっても、遅延時間の異なる3個以上の領域を設けることができる。ただし、段数が多くなるに従って、段差ミラーの製造が困難になる。実施例1で用いた段差ミラー34は、3段以上の多段ミラーに比べて、製造が容易である。
【0058】
[実施例2]
図11に、実施例2による電磁波イメージング装置に用いられる段差ミラー34の断面図を示す。段差ミラー34以外の構成は、実施例1による電磁波イメージング装置の構成と同一である。
【0059】
複数のガラス板40の光学研磨された端面に、金(Au)、銀(Ag)、誘電体多層膜等の反射膜41が形成されている。この反射膜41が、高い反射表面34H及び低い反射表面34Lとなる。高い反射表面34Hを画定するガラス板40は、反射膜41の高さが揃うように、母体36に固定されている。低い反射表面34Lを画定するガラス板40は、反射膜41の高さが揃うように相互に位置合わせされ、段差調整機構37を介して母体36に取り付けられている。段差調整機構37には、例えば圧電素子が用いられる。
【0060】
段差調整機構37は、低い反射表面34Lを画定するガラス板40を、反射表面の高さ方向に変位させることができる。このため、高い反射表面34Hと低い反射表面34Lとの高さの差Hを変化させることができる。これにより、x分割単位領域39(図8)内の遅延時間の異なる複数の領域A0〜A6の間の遅延時間tdを変化させることができる。
【0061】
遅延時間tdを変化させることにより、検出用電磁波1の測定条件を変更することが可能になる。
【0062】
[実施例3]
図12に、実施例3による電磁波イメージング装置の概略図を示す。以下、図1に示した実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0063】
実施例1では、プローブ波2の光路上に補償光学素子10を配置したが、実施例3においては、検出用電磁波1の光路上に補償光学素子10が配置される。このため、検出用電磁波1のビーム断面が、複数のy分割単位領域12に区分される。電気光学結晶3に、プローブ波2が垂直入射し、検出用電磁波1が斜め入射する。プローブ波2の波面は、電気光学結晶3の表面と平行である。
【0064】
y分割単位領域12内の検出用電磁波1の波面WFtは、図2Aに示したプローブ波2の波面WF1〜WF5と同様に、同時に電気光学結晶3に入射する。すなわち、電気光学結晶3の表面と、yz面との交線方向の複数個所で、検出用電磁波1の波面とプローブ波2の波面との位相ずれが補償される。従って、実施例3においても、実施例1と同様の測定を行うことができる。
【0065】
[実施例4]
図13Aに、実施例4による電磁波イメージング装置に用いられる補償光学部材10の概略図を示す。実施例1では、補償光学部材10として階段状の透明ブロックが用いられていたが、実施例4では、ビームスプリッタ10Jと、階段状ミラー10Iが用いられる。その他の構成は、実施例1による電磁波イメージング装置の構成と同一である。
【0066】
階段状ミラー10Iは、高さの異なる階段状の複数の反射表面を有する。ビームスプリッタ10Jには、例えばハーフミラーが用いられる。波長800nmのプローブ波に対するハーフミラーは、例えば、ガラス等の透明材料の板材の上に形成した、Al、Ag、Au等の反射性金属の薄膜、または一部反射鏡(ストライプ等)で構成できる。階段状ミラー10Iは、階段状の表面を形成する構造材の表面に反射性金属ミラーを形成することにより作製される。構造材の材質は物理的支持を与えられ、鏡面を形成できるものであれば、特に制限を受けない。
【0067】
プローブ波2の一部が、ビームスプリッタ10Jにより反射されて、階段状ミラー10Iに向かう。プローブ波2は、階段状ミラー10Iの各反射表面で反射されて、ビームスプリッタ10Jに向かう。ビームスプリッタ10Jを透過したプローブ波2が、電気光学結晶3(図1)に入射する。相互に隣り合う反射表面で反射したプローブ波2に、階段状ミラー10Iの段差の2倍に相当する光路長差が生じる。
【0068】
図12に示した実施例3による補償光学部材10の位置に、図13Aに示したビームスプリッタ10Jと階段状ミラー10Iとを配置してもよい。
【0069】
図13Bに、補償光学部材10の他の構成例を示す。図13Bに示した補償光学部材10においては、階段状ミラー10M、10Nが斜め入射で用いられる。段差の蹴上げ面がビームを蹴らないように、蹴上げ面は入射波、又は反射波に平行に配置される。反射面への入射角が45°で、電磁波の進行方向の変化が90°である場合を例にとって説明する。図13Bに示した構成の場合、階段状ミラー10Mは、入射波に平行な蹴上げ面を有し、階段状ミラー10Nは反射波に平行な蹴上げ面を有する。階段状ミラー10Mの複数の反射面で反射された複数の反射光束の間には、蹴上げ面の奥行き(高さ)に対応して、ギャップが生じている。階段状ミラー10Nの各反射面で反射された複数の反射光束ではギャップが消滅している。階段状ミラー10M、10Nの複数の反射面で反射された複数の光束間には、所望の光路長差(位相差)が形成される。
【0070】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0071】
1 検出用電磁波(テラヘルツ波)
2 プローブ波
3 電気光学結晶
4 偏光子
5 検光子
6 撮像装置
8 被測定物
9 時間遅延装置
10 補償光学素子
10A 表面
10B 底面
10C 踏み面
10D 蹴上げ面
10I 階段状ミラー
10J ビームスプリッタ
10M、10N 階段状ミラー
12 y分割単位領域
13、14 シリンドリカルレンズ列
20 光源
21 ビームスプリッタ
22 ミラー
23 電気光学結晶
31、32 ビーム整形器
34 段差ミラー
34H 高い反射表面
34L 低い反射表面
35 対向ミラー
36 母体
37 段差調整機構
38 プローブ波のビーム断面
39 x分割単位領域
40 ガラス板
41 反射膜
101 テラへツル波
102 プローブ波
103 電気光学結晶
104 偏光子
105 検光子
106 CCDカメラ
108、109 シリンドリカルレンズ
110 被測定物
CLx1〜CLx4 x分割セル
CLy1〜CLy5 y分割セル
WF1〜WF5 プローブ波の単位光線束の波面
WFt 検出用電磁波のy分割単位領域内の波面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学結晶と、
パルス状の検出用電磁波を被測定物に照射し、透過、又は反射した前記検出用電磁波を前記電気光学結晶に入射する第1の光学系と、
前記検出用電磁波の波面に対して、パルス状のプローブ波の波面を傾斜させて、前記プローブ波を前記電気光学結晶に照射する第2の光学系と、
前記電気光学結晶を透過した前記プローブ波を検出する撮像装置と
を有し、
前記第1の光学系及び前記第2の光学系の一方は、前記検出用電磁波の波面と前記プローブ波の波面とに直交する第1の仮想平面内において、前記検出用電磁波または前記プローブ波のビーム断面を複数の第1の単位領域に区分し、前記第1の単位領域を通過するビームの光路長を、前記第1の単位領域ごとに異ならせる補償光学部材であって、前記電気光学結晶の表面と、前記第1の仮想平面との交線方向の複数個所で、前記検出用電磁波の波面と前記プローブ波の波面との位相ずれを補償する補償光学部材を含み、
前記第2の光学系は、前記第1の仮想平面と直交し、前記プローブ波の進行方向と平行な第2の仮想平面内において、前記プローブ波のビーム断面を複数の第2の単位領域に区分し、さらに、前記第2の単位領域の各々を、前記プローブ波の波面の遅延時間が異なる複数の領域に区分する時間遅延装置を含み、
前記時間遅延装置は、高さの異なる2種類の反射表面が第1の方向に配列した段差ミラーと、前記段差ミラーに対向する対向ミラーとを含み、前記プローブ波が、前記段差ミラーの反射表面上において、反射位置を前記第1の方向にずらしながら、前記段差ミラーと前記対向ミラーとの間を複数回往復することにより、前記プローブ波の波面の遅延時間が異なる複数の領域に区分される電磁波イメージング装置。
【請求項2】
前記第2の光学系は、
前記プローブ波のビーム断面を前記第1の方向に長い形状に整形し、整形後のプローブ波を前記段差ミラーに入射させる第1のビーム整形器と、
前記段差ミラーと前記対向ミラーとの間を往復したプローブ波のビーム断面を、前記第1の方向と直交する方向に広げる第2のビーム整形器と
をさらに含む請求項1に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項3】
前記段差ミラーは、高さの異なる2種類の反射表面の高さの差を調整する段差調整機構を含む請求項1または2に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項4】
前記第1の仮想平面内において、前記第1の単位領域内の波面の一端が前記電気光学結晶に到達した後、他端が前記電気光学結晶に到達するまでの時間が、前記時間遅延装置による前記プローブ波の波面の遅延時間の刻み幅と等しい請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電磁波イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−44727(P2013−44727A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185155(P2011−185155)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】