説明

電磁波シールドシート

【課題】保護シートを剥離する際に要する力も低減できるとともに、保護フィルムを剥離した際もメッシパターンを剥離させることなく、かつ、搬送中や保管中の保護フィルムの剥離も生じない電磁波シールドシートを提供する。
【解決手段】電磁波シールド部材と、前記電磁波シールド部材の表面に剥離可能に設けられた保護フィルムと、を備えた電磁波シールドシートであって、前記電磁波シールド部材は、透明基材と、前記透明基材上に設けられた線條のパターンで形成された導電性パターン層とを備え、前記保護フィルムは、基材と前記基材上に設けられた粘着層とを備え、前記導電性パターン層の線條は、その頂部両側端が突出し且つ頂部中央が凹陥しており、前記保護フィルムの粘着層に前記線條頂部の両側端の突出部分は埋没するが、前記頂部中央の凹陥の底と前記粘着層との間に隙間が形成されるように、前記導電性パターン層と前記粘着層とが密着していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルムを備えた電磁波シールドシートに関し、より詳細には、プラズマディスプレイパネル等の前面に貼着される電磁波シールド部材において、電磁波シールド部材の導電性層表面に剥離可能に保護フィルムが設けられている電磁波シールドシート関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の大型化、薄型化に伴い、プラズマディスプレイ(以下、PDPと略す場合がある。)が注目を集めている。PDPは、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)には、画像光の透過性は維持しながら、漏洩する電磁波のみを遮蔽(シールド)することができるフィルム状の電磁波シールド部材を設けるのが一般的である。
【0003】
上記の電磁波シールド部材は、銅箔をフォトリソグラフィー法でエッチングしてメッシュ形状としたもの他、透明基材上に無電解メッキ触媒ペーストをメッシュパターンでスクリーン印刷し、その上に金属層を無電解メッキしたものや(特許文献1)、導電性インキ組成物をメッシュパターンで透明基材に直接凹版印刷し、その透明基材上のメッシュパターンに金属層を電気メッキしたもの(特許文献2)などが知られている。
【0004】
上記したような構造の電磁波シールド部材はその表面が微細で傷つき易いため、製造されてから使用(すなわち画像表示装置等の製造時)までの間、電磁波シールド部材表面を保護するために通常は保護フィルム等で被覆された状態で搬送あるいは保管され、電磁波シールド部材を画像表示装置等に組み込む際に保護フィルムが剥離される。保護フィルムの剥離は、通常、人手で行われたりあるいは画像表示装置の連続する組み立てライン中で機械的に行われたりしている。
【0005】
近年、画像表示装置の大面積化が進み、それに伴って電磁波シールド部材も大型化(大面積化)している。電磁波シールド部材が大型化すると、保護シートを剥離する際に要する力も増大するため、人手で剥離を行う場合の作業負担になっていた。電磁波シールド部材と保護シートとの粘着力を弱くすれば、保護シートの剥離を容易に行うことができるものの、上記したように電磁波シールド部材の表面はメッシュパターン状の凹凸があるため、粘着力を弱めると電磁波シールド部材の搬送中や保管中に保護フィルムが剥がれてしまう可能性がある。
【0006】
また、電磁波シールド部材表面への密着性が高い保護フィルムを使用した場合、上記のような問題は生じないものの、保護フィルムを剥離する際に凸状のメッシュパターンの一部が保護フィルムとともに剥離してしまう場合があった。特に、メッシュパターン表面に微細な凹凸ないし微粒子状の黒化層を有する形態の場合に、上記のような問題が生じ易かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−102792号公報
【特許文献2】特開平11−174174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、電磁波シールド部材のメッシュパターン表面の金属層を特定の形状とし、このようなメッシュパターンを有する電磁波シールド部材を保護フィルムで覆った電磁波シールドシートとすることにより、保護シートを剥離する際に要する力も低減できるとともに、保護フィルムを剥離した際もメッシパターンを剥離させることなく、かつ、搬送中や保管中の保護フィルムの剥離も生じないことがわかった。本発明はかかる知見によるものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、保護シートを剥離する際に要する力も低減できるとともに、保護フィルムを剥離した際もメッシパターンを剥離させることなく、かつ、搬送中や保管中の保護フィルムの剥離も生じない電磁波シールドシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電磁波シールドシートは、電磁波シールド部材と、前記電磁波シールド部材の表面に剥離可能に設けられた保護フィルムと、を備えた電磁波シールドシートであって、
前記電磁波シールド部材は、透明基材と、前記透明基材上に設けられた線條のパターンで形成された導電性パターン層とを備え、
前記保護フィルムは、基材と前記基材上に設けられた粘着層とを備え、
前記導電性パターン層の線條は、その頂部両側端が突出し且つ頂部中央が凹陥しており、前記保護フィルムの粘着層に前記線條頂部の両側端の突出部分は埋没するが、前記頂部中央の凹陥の底と前記粘着層との間に隙間が形成されるように、前記導電性パターン層と前記粘着層とが密着していることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の態様においては、前記導電性パターン層の表面に金属層が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の態様においては、前記金属層の表面が、針状金属からなる黒化層で被覆されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様においては、前記導電性パターン層が、導電性粒子と樹脂バインダーとを含む導電性組成物からなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の態様においては、前記透明基材と前記導電性パターン層との間に、プライマー層が設けられてなることが好ましい。
【0015】
また、本発明の態様においては、前記粘着層がアクリル系粘着剤からなることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の態様においては、前記線條の凹陥部分の金属層の表面に筋状の凹溝が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による電磁波シールドシートは、保護フィルムの粘着層に、電磁波シールドシートの導電性パターン層の線條頂部の両側端の突出部分は埋没するが、頂部の凹陥の底と粘着層との間に隙間が形成されるようにして、電磁波シールド部材と保護フィルムとが密着しているため、電磁波シールド部材を使用する際にも力を要することなく保護シートを剥離することができ、また、保護フィルムを剥離した際も導電性パターン層を剥離させてしまうことがなく、かつ、搬送中や保管中にも保護フィルムが剥離してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明において使用される電磁波シールド部材の線條パターンの走行方向(長手方向)と直交する断面(主切断面)の概略模式図である。
【図2】電磁波シールド部材と保護フィルムを密着させた状態での、線條パターンの走行方向(長手方向)と直交する断面(主切断面)の概略模式図である。
【図3】実施例で作製した導電性シールド部材の線條パターンの走査型電子顕微鏡写真である。図3(a)は、線條パターンを上側から観察した写真であり、図3(b)は、(a)の線條を拡大した写真であり、図3(c)は、図3(b)を更に拡大した写真である。
【図4】比較例1で得られた電磁波シールドシートの線條パターンの走行方向(長手方向)と直交する断面(主切断面)の概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による電磁波シールドシートは、電磁波シールド部材と、前記電磁波シールド部材の表面に剥離可能に設けられた保護フィルムと、を備えたものである。本願明細書において、「電磁波」とは、広義の電磁波の内、30MHz〜1GHzの範囲の波数帯域を中心としたkHzからGHz帯域の周波数のものを意味するものとし、可視光線、紫外線、赤外線等の他の周波数帯域の電磁波は、各々、可視光線、紫外線、赤外線等と称呼するものとする。以下、本発明による電磁波シールドシートを構成する電磁波シールド部材と保護フィルムとを、図面を参照しながら説明する。なお、図1、図2及び図4の概略模式図は、発明の理解を容易にするために、適宜、縦横の縮尺や各部材の寸法比を、実物と変えて又は誇張して、図示したものである。
【0020】
<電磁波シールド部材>
図1は、本発明において使用される電磁波シールド部材1の線條パターンの走行方向(長手方向)と直交する断面(以下、主切断面とも称呼する。)の概略模式図である。電磁波シールド部材1は、透明基材11の一方の面に、線條のパターンで導電性パターン層14が形成されている。導電性パターン層14を後記するような導電性粒子と樹脂バインダーとを含む導電性組成物から形成する場合には、透明基材と導電性パターン層との密着性を向上させるために、透明基材と導電性パターン層との間にプライマー層13を設けてもよい。また、導電性パターン層14の導電性をより向上させるために、導電性パターン層の表面に金属層15を設けてもよい。さらに、本発明において使用される電磁波シールド部材1は、PDP等の表示装置の前面に貼着して使用されるものであるが、いわゆる外光反射を低減される目的で、金属層15の表面を黒化層16で被覆しておいてもよい。以下、電磁波シールド部材を構成する各部材について説明する。
【0021】
<透明基材>
透明基材11は、可視領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、または樹脂板など板状体の剛直物でもよい。ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(またはシート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
【0022】
上記のような透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT等の透明セラミックス、石英等が挙げられる。また、樹脂フィルムや樹脂板の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体などのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムは、耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の観点から、好ましい透明基材である。
【0023】
透明基材11の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。樹脂や透明無機物の板を利用する場合、例えば、500〜5000μm程度である。
【0024】
透明基材として樹脂フィルムや樹脂板を使用する場合、樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を添加してもよい。また、透明基材は、その表面に、コロナ放電処理、プライマー処理、下地処理などの公知の易接着処理を行ったものでもよい。
【0025】
<プライマー層>
導電性パターン層14を、後記するような導電性粒子と樹脂バインダーとを含む導電性組成物を透明基材の表面に印刷して線條のパターンで形成するような場合、版から被印刷物(透明基材)へのインキ(導電性組成物)転移性を向上させ、転移後の導電性組成物と被印刷物との密着性を向上させるため、透明基材11上にプライマー層13を設けておくことが好ましい。透明基材11及び導電性パターン層12の双方に密着性を改善するとともに、導電性パターン層14の開口部(導電性パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層でもある。
【0026】
プライマー層13を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線重合性化合物を含む電離放射線硬化性組成物を、透明基材上に塗工した後に、硬化(固体化)するような材料が好適に用いられる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
【0027】
上記のようなモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
【0028】
プレポリマー(オリゴマーともいう。)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
【0029】
これらモノマーまたはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、またはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いてもよい。
【0030】
上記したモノマーまたはプレポリマーを硬化させる電離放射線としては、紫外線や電子線が代表的なものであるが、この他にも、可視光線、X線、γ線等の電磁波、またはα線等の各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。電離放射線として、紫外線または可視光線を採用する場合、一般的に、光重合開始剤が併用される。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、又カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤の添加量は、モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度である。
【0031】
電離放射線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ)であることが好ましい。
【0032】
プライマー層13の厚さは特に限定されるものではないが、通常は、硬化後の厚さで1μm〜100μm程度となるように形成される。また、プライマー層の厚さは、通常は、導電性パターン層とプライマー層との合計値の1〜50%程度である。なお、後記するように、導電性パターン層の形成方法によっては、プライマー層の厚みが均一でなくなる場合がある。例えば、プライマー層の、導電性パターン層直下の厚みが、開口部(導電性パターン層非形成部)の厚みよりも大きい場合、プライマー層の厚みとは、導電体層非形成部の厚みを意味するものとする。
【0033】
<導電性パターン層>
本発明において使用される電磁波シールド部材1の導電性パターン層14(導電性パターン層が後記する金属層及び/又黒化層を含む場合はこれらの層をまとめて導電性パターン層12というものとする。)は、図1に示すように、線條のパターンとなるように形成されたものである。そして、この線條は、その頂部両側端17が突出し且つ頂部中央18が凹陥した断面形状を有するように形成される。この線條パターンの平面視形状としては、通常、メッシュ(格子ないし網目)形状が挙げられ、単位格子の形状は、正3角形等の3角形、正方形、長方形、台形等の4角形、5角形、6角形等の多角形とされるが、これら以外にも、平面視形状として、ストライプ(縞模様ないし平行線群)、螺旋(渦巻乃至スパイラル)等の形状とすることもできる。このような特定の形状を有する導電性パターン層は、従来公知の金属箔をエッチングする方法によっても形成することができるが、より線幅の細い線條となるようにパターニングするには、導電性粒子と樹脂バインダーとを含む導電性組成物を用いて印刷技術により形成することが好ましい。以下、導電性粒子と樹脂バインダーとを含む導電性組成物から導電性パターン層を形成する場合について説明する。
【0034】
導電性組成物を構成する導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子、または高抵抗率金属粒子、樹脂粒子、非金属無機粒子等の表面が金や銀などの低抵抗率金属で被覆された粒子等が挙げられる、粒子形状としては、特に限定されるものではなく、球状、回転楕円体状、正多面体状、截頭多面体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。導電性粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、例えば、多面体又は球状の銀粒子の場合には粒子の平均粒子径が0.1〜10μm程度のものを用いることができる。なお、平均粒子径とは、粒度分布計またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を意味するものとする。
【0035】
導電性組成物中の導電性粒子の含有量は、導電性粒子の導電性や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、例えば導電性組成物の全固形分100質量部に対して、導電性粒子を40〜99質量部、好ましくは80〜97質量部の範囲で含有させることができる。
【0036】
導電性組成物を構成するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として上記した樹脂を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
【0037】
また、後記するように、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、バインダー樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤を使用できる。溶剤の含有量は通常、版凹部への供給時において10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
【0038】
導電性組成物の流動性や安定性を改善するために、導電性や、プライマー層との密着性に悪影響を与えない限りにおいて適宜充填剤や増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤、分散剤、沈降防止剤などを添加してもよい。
【0039】
線條パターン状の導電性パターン層は、上記したような導電性組成物を以下のようにして凹版印刷を行うことにより形成することができる。凹版印刷方法及びその結果物は、特定のプライマーを使用したものであり、本願出願人により、PCT/JP2008/060427として出願され、国際公開WO08/149969として公開されたものである。一例として、凹版の凹部のみにドクターブレードなどを利用して導電性組成物を充填し、これに液状プライマー層を片面に形成済みの透明基材を、該プライマー層が凹版に接する向きで加圧ローラで圧着するなどして該プライマー層を接触させて、接触している状態でプライマー層を液状から固体状に固化させた後、透明基材を凹版から離して離版させることで、透明基材上の固化したプライマー層上に導電性組成物を転移させて、印刷することができる。
【0040】
凹版印刷の際に使用する凹版として、版凹部の底部の中央が周縁よりも凹没するように製作した凹版を用いると、透明基材上に転移した導電性組成物は、凹版の底部の形状が賦形されて、線條頂部の両側端が突出し且つ頂部中央が凹陥した形状の導電性パターン層を形成することができる。
【0041】
印刷後、すなわち離版後、導電性組成物がまだ液状である場合は、乾燥操作、加熱操作、冷却操作、化学反応操作などを適宜行い、固化させることにより導電性パターン層を形成することができる。例えば、乾燥操作は、導電性組成物中の溶剤など不要な揮発成分を除去するため、加熱操作は、該乾燥や導電性組成物の熱硬化などの必要な化学反応を促進させるため、冷却操作は、加熱溶融した熱可塑性樹脂の導電性組成物やプライマー層の固化促進のため、化学反応操作は、加熱によらない電離放射線照射などのその他の手段による導電性組成物やプライマー層の化学反応を進行させるために行う。また、導電性組成物は、版上で半硬化固化させ離版後に完全硬化させてもよい。
【0042】
また、導電性組成物の固化は凹版接触中に行ってもよい。版接触中に導電性組成物を固化させるときは、凹版は導電性組成物に対しても賦形型として機能し、プライマー層も含めて凹版は完全な賦形型として用いることになる。この際、導電性組成物の固化方法はプライマー層で採用する固化方法と同じ方法でもよく、異なる方法でもよい。ただし、例えば電離放射線照射など同じ方法を採用すれば、プライマー層と導電性組成物とを版面上で同時に硬化可能な為、装置・工程的に簡素化でき、また類似の化学反応を採用すれば密着性の点でも有利である。
【0043】
本発明では、このようにして印刷することで、凹版凹部内に充填された導電性組成物の上部に窪み(凹み)が生じても、液状で流動性のプライマー層を介して印刷するので、印刷中にプライマー層を該窪みに流し込み隙間なく密着させた状態にでき、その後、プライマー層を固化させてから透明基材を凹版から離すので、透明基材上に固化したプライマー層を介して所定パターンの導電性パターン層を、線條の線幅が細い場合でも、転移不足による断線や形状不良、インキ密着性不足などの印刷不良の発生なく形成できる。凹版印刷工程において、凹版凹部内に充填されたインキの表面に生じる窪みに、プライマー層が流入、充填する結果、導電性パターン層が形成されている部分のプライマー層の厚みが、導電性パターン層が形成されていない部分(開口部)の厚みよりも厚くなる。勿論、このような、特有のプライマー層の厚みにおける導電性パターン層形成との関係が得られる方法であれば、上記したような特定の凹版印刷方法以外の方法によって導電性パターン層を形成してもよい。
【0044】
<金属層>
本発明において用いられる電磁波シールド部材1は、導電性パターン層12の導電性を更に向上させるために、導電性パターン層14の表面に金属層15が設けられていてもよい。金属層15は、上記した導電性パターン層12の表面に電解メッキ又は無電解メッキを施すことにより形成されるが、生産性や、導電性パターン層のみへの選択的メッキ適性等の観点から、電解メッキの方が好ましい。電解メッキの際に、導電性パターン層への給電は導電性パターン層が形成された面に接触させた通電ロール等の電極から行われるが、導電性パターン層が電解メッキ可能な程度の導電性(例えば、100Ω/□以下)を有するので、電解メッキを問題なく行うことができる。
【0045】
金属層を構成する材料としては、導電性が高く容易にメッキ可能な、銅、銀、金、クロム、ニッケル等を挙げることができる。メッキ条件としては、浴温20〜60℃、電流密度0.001〜10A/dm、メッキ時間は1〜10分程度が好ましい。電流密度を高くすることによって、導電性パターン層14の端角部(線條頂部の両側端17)に電力集中が起こってメッキがつきやすく、表面が金属メッキされた導電性パターン層12(即ち、表面に金属層15を備えた導電性パターン層14)の表面は、線條頂部の両側端17が突出し且つ頂部中央18が凹陥した形状となる。また、電流密度が高いほど、線條頂部の両側端部分17と頂部中央部分18とのメッキ層成長速度に差がつき、相対的に線條頂部の両側端(端角部)17の電流密度が高くなって、線條中央18が凹陥した凹凸表面形状になり易い。そのため、金属層15を設ける場合は、金属層15を設ける前の導電性パターン層14の主切断面形状を、図1に示した台形の他にも、長方形又は正方形、あるいはこれら形状の端各部を0.5〜2μm程度突出させた形状とすることによって、線條頂部の両側端17の電流密度を頂部中央18に比べて相対的に高めることができ、その結果、金属層15を表面に設けた導電性パターン層12の表面は、線條頂部の両側端17が突出し且つ頂部中央18が凹陥した形状とすることができる。線條頂部の両側端部分17と頂部中央の凹陥部分18との高低差は1〜3μm程度である。
【0046】
メッキ処理の際に電流密度を高めると、さらに、線條の凹陥部分18の金属層15の表面に筋状の凹溝(具体的には、図3のような、分岐、蛇行またはこれらの両方の形態を有する溪谷状の凹溝)が生じ易くなる。このようにして形成される凹溝が導電性パターン層の線條表面に存在すると、凹溝内に入射した光線は凹溝内において複雑な経路で反射を多数回繰り返し、その結果、日光、電灯光等の外光の反射防止性の向上に寄与する。
【0047】
<黒化層>
本発明において用いられる電磁波シールド部材1は、導電性パターン層14の表面に黒化層16が設けられていてもよい。黒化層16は、上記した金属層15を形成した後に、黒化処理を行うことにより形成することができる。黒化処理は、例えば、硫酸銅5水和物と硫酸とを水に溶かした電解浴を用いて陰極電解して粗面化処理を施すことにより行うことができる。黒化処理によって、金属層15を備えた導電性パターン層12の表面には、銅からなる金属の針状結晶からなる黒化層16が形成される。
【0048】
このような粗面化処理(黒化処理)は、陰極電解により金属の粒状突起物を析出させ(1層目)、次いで、その突起物の脱落防止のために、その上に金属メッキを施して金属被覆(2層目)を形成させることにより行われる。このような粗面化処理条件としては、特に1層目の電流密度を高くすることにより、針状結晶が形成され易いので好ましい。
【0049】
このようにして形成された黒化層の針状結晶の長さは0.1〜1μm程度である。針状結晶は、入射した光線が、針間の面で多重反射されるうちに、吸収、散乱が多数回起こり、多くの光を減衰させ、反射光量を大幅に減少させる。その結果、線條幅方向に形成されている凹陥部と針状結晶の両者の入射光線減衰作用の相乗効果によって、より高い外光反射防止効果を得ることができる。
【0050】
<保護フィルム>
本発明において使用される保護フィルム2は、上記した電磁波シールド部材1を製造した後、使用されるまでの間に、線條のパターンで形成された導電性パターン層12が傷ついたりしないように保護しておくものである。したがって、電磁波シールド部材1が使用される際、即ち、PDP等に組み込まれる際には、保護フィルム2は剥離される。本発明においては、保護フィルム2が、図2に示すように、保護フィルム2の粘着層22に、導電性パターン層12の線條頂部の両側端17の突出部分は埋没するが、頂部中央の凹陥18の底と粘着層22との間には隙間が形成されるようにして、電磁波シールド部材1の表面に密着している。このように、電磁波シールド部材と保護シートの粘着層との粘着面積が、線條頂部の極一部のみとすることにより、電磁波シールド部材を使用する際にも力を要することなく保護シートを剥離することができ、また、保護フィルムを剥離した際も導電性パターン層を剥離させてしまうことがなく、また、導電パターン層表面が一部に剥離を生じた場合でも、剥離部分は、線條両側端部の突出部近傍のみの小面積且つ狭幅部分の表面近傍に限定されるため目立ち難く、しかも導電性(電磁波遮蔽性)への影響も無視し得る。さらに、導電性パターン層の線條両側端部のみが保護フィルムの粘着層に投錨效果で密着しているため、搬送中や保管中にも保護フィルムが剥離してしまうことがない。即ち、保管や搬送時の剥離に想定されるような低剪斷速度での剥離に対しては剥離力(粘着力)が強く、一方、剥離作業時に想定されるような高剪斷速度での剥離に対しては剥離力が強いという特性となる。
【0051】
保護フィルム1を構成する基材21としては、一般的な保護フィルムに使用される材料を制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の樹脂フィルムを挙げることができる。これら樹脂フィルムは、単層に限られず、多層の樹脂フィルムであってもよい。このような保護フィルム基材の厚みは、基材の材質にもよるが概ね20〜75μmである。
【0052】
また、保護フィルム2を電磁波シールド部材1の表面に、剥離可能に密着させることができる粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル樹脂系、ポリビニルエーテル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系等が挙げられる。合成ゴム系の具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、イソブチレン− イソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体が挙げられる。シリコーン樹脂系の具体例としては、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。アクリル樹脂系の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの1種又は2種以上からなる単独又は共重合体、これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー1種以上と(メタ)アクリル酸アルキルエステルと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)メタクリル酸アルキルエステルモノマー1種以上との共重合体、これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー1種以上と(メタ)アクリル酸、フタル酸、マレイン酸等のカルボン酸、エチレン、プロピレン等のオレフィン等のモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの粘着剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。これら粘着剤は市販されているものを使用してもよく、例えば、サイビノールATR−340(サイデン化学社製)等が挙げられる。
【0053】
粘着層22は、保護フィルム用基材21上に、上記した粘着剤を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。粘着層の厚みは5〜30μm程度であり、粘着剤の塗布量によって粘着層の厚みを上記範囲となるように調整することができる。
【0054】
<電磁波シールドシート>
本発明による電磁波シールドシートは、上記した電磁波シールド部材1と、その表面に剥離可能に設けられた保護フィルム2とを備えた構成であるが、電磁波シールド部材1の透明基材11側には、各種の機能層(図示せず)をさらに設けてもよい。このような機能層としては、近赤外線吸收層、ネオン光吸收層、調色層、紫外線吸収層、反射防止層、防眩層、特開2007−272161号公報等に記載のいわゆる薄膜ミクロルーバ層等の光学機能層(光学フィルタ層)、ハードコート層、耐衝撃層(衝撃吸收層)、防汚層、帯電防止層、抗菌層、防黴層等が挙げられ、これらの機能層は単層としてもよくまた複数層としてもよい。
【0055】
本発明による電磁波シールドシートは、保護フィルムを剥離した状態で各種用途に使用可能である。特に、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管ディスプレイ(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)などの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にプラズマディスプレイ用として好適である。また、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輌、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジの窓等の等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【実施例】
【0056】
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により何ら限定されるものではない。
【0057】
実施例1
<電磁波シールド部材の作製>
まず、凹版を用意した。凹版を以下のようにして作製した。中空の鉄の円筒表面に銅メッキ層を被覆した円筒版材表面を機械的に切削加工し、その後、前面にクロム膜を電解メッキして、円筒版材表面に、深さ20μm、線幅20μm、縦横線の繰返し周期300μmの正方格子のメッシュパターン状凹部を形成し、印刷用の凹版を得た。凹版の凹部の線條パターンの主切断面形状は底部(円筒中心に近い側)の幅がせばまった台形形状であり、底部の角の両底角が各々75度、円筒表面部に露出する角の両底角が各々105度であり、該台形の高さが20μm、台形の円筒表面部に露出する底辺の長さが20μmであった。 また、台形状主切断面の凹部の底部(導電性パターン層では頂部に対応)には中央部が端角部よりも2μm湾曲して突出(導電性パターン層では線條頂部の中央部が頂部両側端部よりも2μm湾曲して凹陥することに対応)する形状とした。
【0058】
次いで、透明基材として厚みが100μmで、1080mm幅×2000m巻の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)の帯状フィルム(東洋紡績(株)製A4300)を用意した。この透明基材上の一方の面上にプライマー層用の 紫外線硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚が厚さ10μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバースロールコート法を採用し、紫外線硬化性樹脂組成物としては、エポキシアクリレートプレポリマー35質量部、ウレタンアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレート44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート9質量部、さらに光重合開始剤としてイルガキュア184(物質名;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、製造元;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)3質量部添加したものを使用した。このときの粘度は約1300cps(25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。
【0059】
上記のようにして得られた円筒状の凹版の版面に、下記組成のペースト状の導電性組成物をピックアップロールで塗布し、鋼鉄製ドクターブレードで凹部内以外の導電性組成物を掻き取って凹部内のみに導電性組成物を充填させた。次いで、導電性組成物を凹部内に充填させた状態のロール状凹版と、ニップロールとの間に、流動状態のプライマー層が形成されたPETフィルムを供し、ロール状凹版に対するニップロールの押圧力(付勢力)によって、流動状態のプライマー層を凹部内に存在する導電性組成物の凹みに流入させ、導電性ペーストと流動性保持状態のプライマー層とを隙間なく密着させると共に、プライマーの一部を凹部内の導電性組成物内に浸透させた。
【0060】
導電性組成物は、下記の成分を配合し、十分に攪拌混合した後、3本ロールで混練りすることにより調製した。
平均粒径2μmの銀粉末 93質量部
熱可塑性ポリエステルウレタン樹脂 7質量部
溶剤としてブチルカルビトールアセテート 25質量部
【0061】
続いて、凹版ロールを回転させながら高圧水銀燈によって紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂組成物からなる流動状態のプライマー層を硬化させた。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電性ペーストは、硬化したプライマー層と密着し、その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、プライマー層上には導電性組成物層が転写形成された。このようにして得られたフィルムを、130℃の乾燥ゾーンを通過させて、60秒熱風乾燥させ、導電性組成物中の溶剤を蒸発させ、プライマー層上に、導電性導電性組成物からなる、厚さ19μm、線幅20μm、縦横線の繰返周期300μmの正方格子の導電性パターン層を形成した。得られた導電性パターン層は、頂部の中央部が端角部よりも1.5μm湾曲して凹陥する形状であった。
【0062】
PETフィルム上に、上記のようにして形成されたメッシュパターンの表面に金属層を形成した。金属層の形成に使用したメッキ液としては、溶媒として水(3000L)を用い、硫酸銅5水和物(75g/L)と、硫酸(180g/L)、塩酸(60mg/L)、配向性調節成分として炭化水素系高分子系メッキ添加剤(40mL/L)を混合してメッキ液を調製した。メッキ条件は、浴量(500mL)、攪拌(エアー攪拌)、浴温(25℃)、電流密度(2A/dm2)、メッキ時間(5min)で行って、膜厚は2.0μmであった。メッキ処理により堆積した被膜を120℃、60分間アニール処理して、銅メッキ層を得た。このようにして形成された金属層(銅メッキ層)は、導電性パターン層の線條の幅方向の主切断面が略台形形状であり、その上辺(線條頂部)の両側端が、上辺(線條頂部)中央の凹陥部の底部よりも3μm突出した形状であった。
【0063】
このようにして形成された金属層の表面に黒化処理を実施した。黒化処理は、以下の浴組成の電解浴を用いて陰極電解し粗面化処理を施すことにより行った。
第1層目
硫酸銅五水和物 70g/L
硫酸 100g/L
液温 40℃
電流密度 40A/dm2
電解時間 5秒
陽極 白金
第2層目
硫酸銅五水和物 250g/L
硫酸 100g/L
液温 45℃
電流密度 20A/dm2
電解時間 30秒
陽極 白金
【0064】
上記した条件で行った粗面化処理により、導電性パターン層の線條の主切断面が略台形形状であり、その上辺(線條頂部)の両側端が、上辺(線條頂部)中央の凹陥部の底部よりも3μm突出した形状であり、さらに、その凹陥の表面には、分岐し且つ蛇行する溪谷状の凹溝が多数形成された、長さ0.1〜0.8μmの範囲で分布した針状結晶からなる黒化層が形成されていた。
【0065】
このようにして得られた導電性シールド部材の線條を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図3に示されるよう形状であった。
【0066】
<保護フィルムの準備>
保護フィルム用基材として、PETセパレーター(セラピールBX9A(RX)、膜厚38μm、東レフィルム加工社製)を用い、その基材の一方の面に、下記成分を混合・分散させたアクリル系粘着層形成用塗工液を、乾燥時の膜厚が20g/mとなるように塗工し、十分に乾燥させることにより、保護フィルム用基材の表面に粘着層を形成した。
アクリル系粘着剤
(サイビノールATR−340,固形分42%,サイデン化学社製) 100質量部
硬化剤(K−200,固形分1%,サイデン化学社製) 2.38質量部
シランカップリング剤
(M−2,固形分0.25%,サイデン化学社製) 0.60質量部
トルエン 25質量部
【0067】
<電磁波シールドシートの作製>
準備した保護フィルムを、上記のようにして得られた電磁波シールド部材の導電性パターン層が設けられた面に貼着し、保護フィルムの粘着層に導電性パターン層の線條頂部の両側端の突出部分は埋没するが、頂部中央の凹陥の底と粘着層との間に隙間が形成されるようにして、導電性パターン層と粘着層とを密着させることにより電磁波シールドシートを作製した。
【0068】
比較例1
実施例1において、使用した凹版に代えて、中空の鉄の円筒表面に銅メッキ層を被覆してなる円筒版材の表面にネガ型感光性レジスト膜を塗工し、実施例1と同じ線幅及び繰返周期の正方格子パターンをArイオンレーザで露光し、該円筒版材表面の未露光部を洗浄除去して銅層を露出させ、正方格子の開口部(線條部分以外の部分)のみにレジスト膜が残留する状態で、塩化第2鉄水溶液にてレジスト非形成部の銅層を腐蝕して、円筒版材表面に、深さ20μm、線幅20μm、縦横線の繰返し周期300μmの正方格子のメッシュパターン状凹部を形成した凹版を使用した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0069】
上記のような凹版を用いて形成された電磁波シールド部材は、導電性パターン層の線條パターンの主切断面形状は、表面凹凸の少ない綺麗な半円形状となり、頂部は端部よりも中央部の方が突出した形状となった。それにメッキ加工を施しても下地形状がそのまま影響し綺麗な丸みを持ったメッキ層形状となった。また、導電性シールド部材の線條近傍を走査型電子顕微鏡で観察したところ、頂部付近に凹溝も形成されていなかった。
【0070】
上記のようにして得られた電磁波シールド部材の表面に、実施例1と同様にして保護フィルムを貼着して電磁波シールドシートを形成した。導電性シールド部材の線條近傍の主切断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図4に示すように、導電性パターン層の線條頂部全体が粘着層に埋没し、線條のない部分(開口部)の底と粘着層との間に隙間が形成されていた。
【0071】
<評価>
上記のようにして得られた実施例1及び比較例1の電磁波シールドシートを、平板上に40℃の環境下で48時間放置した後、保護フィルムに浮き(気泡の混入)がないか目視にて確認した。その結果、実施例1及び比較例1の何れの電磁波シールドシートにも浮きは見られなかった。
【0072】
次に、電磁波シールドシートから保護フィルムを勢いよく剥離し、保護フィルム剥離後の電磁波シールド部材の表面状態及び、剥離した保護フィルムの粘着層表面の状態を目視にて確認した。その結果、実施例1の電磁波シールドシートでは、電磁波シールド部材の線條パターンに損傷は見られなかった。また、剥離した保護フィルムの粘着層の表面にも、残存物の付着は見られなかった。一方、比較例1の電磁波シールドシートでは、電磁波シールド部材の線條パターンの一部が損傷していた。また、剥離した保護フィルムの粘着層の表面にも、黒化層の一部と思われる針状金属が残存していることが確認できた。
【符号の説明】
【0073】
1 電磁波シールド部材
2 保護フィルム
11 透明基材
12 導電性パターン層
17 線條頂部の突出部
18 線條頂部の凹陥部
21 保護フィルム用基材
22 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波シールド部材と、前記電磁波シールド部材の表面に剥離可能に設けられた保護フィルムと、を備えた電磁波シールドシートであって、
前記電磁波シールド部材は、透明基材と、前記透明基材上に設けられた線條のパターンで形成された導電性パターン層とを備え、
前記保護フィルムは、基材と前記基材上に設けられた粘着層とを備え、
前記導電性パターン層の線條は、その頂部両側端が突出し且つ頂部中央が凹陥しており、前記保護フィルムの粘着層に前記線條頂部の両側端の突出部分は埋没するが、前記頂部中央の凹陥の底と前記粘着層との間に隙間が形成されるように、前記導電性パターン層と前記粘着層とが密着していることを特徴とする、電磁波シールドシート。
【請求項2】
前記導電性パターン層の表面に金属層が形成されている、請求項1に記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
前記金属層の表面が、針状金属からなる黒化層で被覆されている、請求項2に記載の電磁波シールドシート。
【請求項4】
前記導電性パターン層が、導電性粒子と樹脂バインダーとを含む導電性組成物からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁波シールドシート。
【請求項5】
前記透明基材と前記導電性パターン層との間に、プライマー層が設けられてなる、請求項4に記載の電磁波シールドシート。
【請求項6】
前記粘着層がアクリル系粘着剤からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁波シールドシート。
【請求項7】
前記線條の凹陥部分の金属層の表面に筋状の凹溝が形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁波シールドシート。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204731(P2012−204731A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69597(P2011−69597)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】