説明

電磁波シールド用銅箔及び電磁波シールド用銅箔の製造方法

【課題】本発明は、電磁波シールド能に優れ、透過率が高く、かつ粉落ちのない電磁波シールド用の銅箔を提供することにあり、また、それを用いたPDPに好適に使用できる電磁波シールド体を提供することにある。
【解決手段】本発明の電磁波シールド用銅箔は、銅箔の少なくとも片面にCuからなる銅微細粗化粒子層の上にCu合金からなる銅合金微細粗化粒子層を積層した微細粗化粒子層が設けられ、該微細粗化粒子層上に、Co,Ni、In又はこれらの合金からなる平滑層が設けられている。なお、上記本発明銅箔の平滑層上に必要により防錆処理、シランカップリング剤処理を施し、銅箔表面を保護することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてディスプレイの電磁波シールド用として好適な銅箔に関するもので
あり、さらに詳しくはプラズマディスプレイパネル(以下PDPと云うことがある)用に好適に用いられる電磁波シールド体を作成する素材としての銅箔、並びに該銅箔で作成した電磁波シールド体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光エレクトロニクス関連部品等の電子機器が高度化するに従って、それらの機器は著しく進歩している。中でも、画像を表示するディスプレイは、テレビジョン受像器、コンピューターモニター装置用等としてめざましい普及を遂げている。近年、その中でもディスプレイの大型化及び薄型化に対する市場要求が高まり、最近では大型かつ薄型化を実現したPDPが注目されている。
【0003】
しかし、PDPは、原理上、強度の電磁波を装置外に放出する。電磁波は、各種計器に障害を及ぼす恐れがあり、最近では、電磁波が人体にも障害を及ぼすため、電磁波放出に関する法的規制が厳しくなってきている。例えば、電気用品取締法を始め、VCCI(Voluntary Control Council for Interference by data processing equipment electronic officemachine)、FCC(Federal Communication Commission)等の製品規制がある。
【0004】
電磁波シールド体は、シールド面全面に渡って導電性があり、しかも透明性に優れていることが必須要件である。この要求を満たし、実用化された電磁波シールド体として、透明導電性薄膜をPDP全面に配置したものがある。しかしこの製品は、電磁波シールド能として例えば、60dB以上の能力を得ようとすると透明導電層自体の透過率が減少し、透明性に課題を有している。
【0005】
上記課題を解決するために、金属繊維をメッシュ状に編んだものをフィルムや、ガラス、高分子基板に挟み電磁波シールド体とする方法が提案されている。しかしながら、金属繊維の編み物はよじれ等が発生しやすく、PDPと合わせるとモアレパターンが発生する等の外観上の問題が発生する。
そこで更に、金属箔、特に銅箔を透明な高分子フィルムに接着剤を用いて貼り合わせ、次にエッチングにより金属箔に網の目状のパターンを形成する方法が提案されているが、金属部分は実質的に不透明になるので透過率をどの様にして上げるかが難しい課題であった。
【0006】
一方、最近では金属箔を電磁波シールド体に加工する際に、金属箔からの粉落ちや、金属箔表面の色斑が問題視されてきている。
また、金属箔表面を黒色処理する電解工程において、砒素等の有毒物質を使用し、環境を害する電解液の使用も問題視されてきている。
銅箔からの粉落ちや有害物質を除いた電解液についても研究が進められており、プリント配線板用の銅箔については本願出願人が先に特許文献1に開示している。しかし、この特許文献1に開示した技術では、電磁波シールド体用として要求される色調や色斑、更なる粉落ち対策が充分とは云えない状況にある。
【特許文献1】特開平11−256389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、環境に悪影響を及ぼすことのないめっき液で、電磁波シールド用銅箔として黒色処理面の色調が均一で色斑がなく、粉落ちせず、電磁波シールド能に優れ、透過率が高い電磁波シールド体用として最適な銅箔を提供することにある。
本発明は、特にPDP用の電磁波シールド体を製作する素材として優れた銅箔と、該銅箔により製作されたPDPに好適に使用できる電磁波シールド体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明電磁波シールド用銅箔は、銅箔の少なくとも片面に、銅微細粗化粒子層とその上に形成された銅合金微細粗化粒子層とからなる微細粗化粒子層が設けられ、該微細粗化粒子層上にCo、Ni、In又はこれらの合金からなる平滑層が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
前記銅合金微細粗化粒子層はCo、Ni、Se、Sb、W、Te、Bi、Mo、Feの少なくとも何れか1種を含むCu合金で形成することが好ましい。
【0010】
前記平滑層の厚さは5nm以上、100nm以下であることが好ましい。
【0011】
前記平滑層はCu含有量が5%以下のCo合金であることが好ましい。
【0012】
前記銅箔は、その表面粗さRzが3μm以下の粒状結晶であることが好ましい。
【0013】
前記平滑層は、その表面粗さRzが3.5μm以下であることが好ましい。
【0014】
前記平滑層の上に防錆処理が施されていることが好ましい。
【0015】
前記平滑層の上にシランカップリング剤処理が施されていることが好ましい。
【0016】
本発明の電磁波シールド用銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも片面に銅微細粗化粒子層を設け、該銅微細化粒子層上にCu合金の銅合金微細粗化粒子層を設けて微細粗化粒子層を形成し、該微細粗化粒子層上に、Co、Ni、In又はこれらの合金からなる平滑層を設けてなることを特徴とする。
【0017】
前記微細粗化粒子層は硫酸銅浴でめっきすることが好ましい。
【0018】
前記平滑層はCu含有量が300ppm以下のCoめっき浴でめっきすることが好ましい。
【0019】
本発明の電磁波シールド体は、前記本発明電磁波シールド用銅箔、或いは本発明電磁波シールド用銅箔の製造方法で製造した電磁波シールド用銅箔を電磁波シールド体に加工した電磁波シールド体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明電磁波シールド用銅箔は、砒素等の環境を害する恐れのある電解液を使用せずに製膜でき、電磁波シールド能に優れ、透過率が高く、色調が均一で色斑がなく、かつ粉落ちがない、電磁波シールド用銅箔として好適に用いることができる電磁波シールド用銅箔であり、さらに、該銅箔を用いることにより、PDP等に使用できる良好な電磁波シールド体を提供しうる優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の電磁波シールド用銅箔は、本実施形態では主として圧延銅箔、電解銅箔を使用する。本発明の電磁波シールド用銅箔は、電解銅箔或いは圧延銅箔の少なくとも片方の表面に銅或いは銅合金の微細粗化粒子層を1乃至数層設け、或いは電解処理時間や電流密度
を調整することにより膜厚を調整し、次いで該微細粗化粒子層上にCo、Ni、Inまたはこれらの合金からなる平滑層を1乃至数層設け、或いは電解処理時間や電流密度を調整することにより膜厚を調整したものである。
【0022】
銅箔表面に銅または銅合金の微細粗化粒子層を設けるのは、銅箔表面を微細粒子とすることにより表面の乱反射をし易くし、反射率を低くするためである。
なお、前記微細粗化粒子層をCu−Co合金、Cu−Ni合金、Cu−Co−Ni合金で形成すると、微細粗化粒子層を微細粒子化し易く、好ましい。
Cu−Co合金で形成する微細粗化粒子層の厚みは電磁波シールド体として要求される色合いにより、色合いが濃い黒色を要求する場合には、Co等による平滑層の厚さにもよるが、微細粗化粒子層の堆積層の数を増やし、或いは電解時間を長くし(厚さを厚くし)、薄い黒色を要求される場合は1乃至3層程度とし、或いは電解時間を短くして薄くすると良い。
【0023】
最外層にCo等からなる平滑層を設けるのは、微細粗化粒子層が下工程の処理において器物等に触れると落下する、いわゆる粉落ち現象を防止するためである。
本発明の電磁波シールド用銅箔においては、明度(反射率)と粉落ち現象は平滑層の厚さに関連している。即ち、平滑層の厚さが厚いと明度は上がるが粉落ちは少なく、逆に厚さが薄いと明度は下がるが粉落ちは多くなる。
また、微細粗化粒子層上に設けるCo等からなる平滑層は銅箔表面の黒色の濃淡に影響する。そのため、平滑層の層数或いは電解時間(厚さ)を黒色の濃淡によって任意に選択し、黒色の色合いの要求に応じる膜厚を堆積する。
【0024】
上記本発明電磁波シールド用銅箔においては、銅箔の少なくとも片面に直接微細粗化粒子層を設けるが、銅箔表面の粗さによっては銅箔表面と微細粗化粒子層との間に銅めっきにより微細銅粒子層を更に設けることが好ましく、銅箔表面の表面粗さRzが3μm以下とすることが好ましい。
即ち、銅箔上に先ず銅めっきにより微細銅粒子層を施す。この微細銅粒子層は銅箔表面の粗度を一定にするとともに、一つにはその上に設ける銅微細粗化粒子層の厚さを薄くしても黒色の色合いが濃くなる効果も合わせて期待することができるためである。二つ目は、微細銅粒子層を設けることで黒色色合いを濃くできるために、微細粗化粒子層の厚さを薄くでき、しかも、微細銅粒子層は銅箔と同一金属であるために両者の接着力が強く、その上に設ける特に銅合金(例えばCu−Co合金、Cu−Ni合金、Cu−Co−Ni合金)微細粗化粒子層を薄くできることから粉落ち現象が少なくなり、平滑層をより薄くすることができるためである。
【0025】
更に、前記平滑層上に、各種表面処理を施すと良い。具体的には、クロメート処理、酸洗処理、ジンク・クロメート処理等の防錆処理、或いはシランカップリング剤処理等である。
【0026】
銅箔の厚さは、3μm〜30μmが好ましく、より好ましくは5〜20μm、更に好ましくは7〜12μmである。この厚さより厚いとエッチングに時間を要し、また、この厚さよりも薄いと銅箔の取り扱いが極めて困難になるからである。
【0027】
銅箔を電磁波シールド用として使用するときの光透過部分の開口率は60%以上、97%以下が好ましく、より好ましくは70%以上であり、開口率は大きい方が好ましい。
開口部の形状は、特に限定されるものではないが、正三角形、正四角形、正六角形、円形、長方形、菱形等に形がそろっており、面内に均一に並んでいる形状が好まれる。光透過部分の開口部の代表的な大きさは一辺もしくは直径が100〜300μmの範囲である。この値が大きすぎると電磁波シールド能が低下し、また、小さすぎるとディスプレイの画像に好ましくない影響を与えるためである。
【0028】
また、開口部を形成しない部分の銅箔の幅は5〜50μmが好ましい。すなわちピッチが100〜350μmであることが好ましい。この幅よりも細いとエッチング加工が極めて困難となり、この幅よりも太いと画像に好ましくない影響を与えるからである。
【0029】
光透過部分を有する銅箔の実質的なシート抵抗は、上記パターンよりも5倍以上大きな電極を用いて、上記パターンの繰り返し単位よりも5倍以上の電極間隔をもつ4端子法により測定することができる。例えば、開口部の形状が一辺100μmの正方形で金属層の幅が20μmをもって規則的に正方形が並べられたものであれば、φ1mmの電極を1mm間隔で並べて測定することができる。あるいは、パターンを形成したフィルムを短冊状に加工し、その、長手方向の両端に電極を設けて、その抵抗を計り(R)、長手方向の長さをa、短手方向の長さをbとすると、実質的なシート抵抗は、抵抗=R×b/aで求めることができる。このように測定された値は、0.005/□以上、0.5/□以下が好ましく、より好ましくは0.01/□以上、0.3/□以下である。この値よりも小さな値を得ようとすると膜が厚くなり過ぎ、かつ、開口部が充分取れなくなり、一方、これ以上大きな値にすると充分な電磁波シールド能を得ることができなくなる。
【0030】
本発明銅箔に接着する樹脂基板としては適度な耐熱性と透明性を有している透明高分子フィルムが好ましく、耐熱性についてはガラス転位温度が少なくとも40℃以上、透明性に関しては550nmの光の透過率が少なくとも80%以上であるものが好ましい。
【0031】
透明高分子フィルムとしては、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。
【0032】
電磁波シールド用銅箔に光透過部分を形成する方法としては、印刷法やフォトレジスト法を用いる。印刷法ではマスク層を印刷レジスト材料でスクリーン印刷してパターンを形成する。フォトレジスト材料を用いる方法では、ロールコーティング法、スピンコーティング法、全面印刷法、転写法などで、金属箔上にフォトレジスト材料を形成し、フォトマスクを用いて露光現像してレジストのパターニングを行う。レジストのパターンニングを完成させた後、開口部とする銅箔部分をエッチングで除去し、所望の開口形状と開口率の光透過部分を有する銅箔層を設ける。
【0033】
電磁波シールド用銅箔の表面光反射率は1%以上、50%以下とすることが望ましい。これは、電磁波シールド用銅箔を透光性の電磁波シールド体として用いる場合に、光の反射が視認性を阻害するからである。反射率は一般的には400nmから600nmの平均的な反射率であるが、ここでの反射率は波長依存性がないとして、波長550nmの光の反射率で代表して決めている。
【0034】
上記平滑層としては、Co、Ni、Inまたはこれらの合金からなる平滑めっき層である。電磁波シールド用銅箔の反射率は微細粗化粒子層と平滑層の厚さに左右されが、反射率:1%〜50%を得るための平滑層の層数(厚さ)は、特に厚い必要はなく、実質的には5nm以上、100nm以下が適当な範囲である。これ以上薄いと粉落ちを防げず、これ以上の厚みでは反射率が高くなり、材料の無駄でもある。
【0035】
上記銅箔の平滑層を設けていない側の表面にも反射を防止する処置として黒色処理を行い、両面を黒化した銅箔とすることも好ましい例である。反射防止処理としては、上記と同様に銅、Co、Ni、その合金等の微細粗化粒子層を設けることで達成でき、或いは通
常の黒化処理方法で黒色層を設けても良い。
【0036】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定を受けるものではない。
【0037】
〔実施例1〕
厚さ10μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 65g/l
硫酸 :120g/l
めっき条件
温度:50℃
電流密度 :65A/dm2
処理時間 :1.2秒
上記条件によりめっきした銅微細粗化粒子の銅箔への付着量は218.8mg/dmであった。
次いで、上記銅微細粗化粒子層の上に銅合金からなる銅合金微細粗化粒子層のめっきを行なった。
めっき浴組成
Cu(金属として) : 1g/l
Co(金属として) : 8g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
pH :3.8
めっき条件
温度 :40℃
電流密度 :15A/dm2
処理時間 : 3秒
上記条件によりめっきした銅合金微細粗化粒子の付着量はCu:3.5mg/dm、Co:5.0mg/dmであった。
次いで上記銅合金微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCoからなる平滑層のめっきを行った。
平滑層形成条件
めっき浴組成
Co(金属として) :10g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
pH :2.5
めっき条件
温度 :40℃
電流密度 : 3A/dm2
処理時間 :30秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅合金微細粗化粒子層への付着量は24.2mg/dmであった。
【0038】
〔実施例2〕
厚さ10μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 65g/l
硫酸 :120g/l
めっき条件
温度:50℃
電流密度 :65A/dm2
処理時間 :1.2秒
上記条件によりめっきした銅微細粗化粒子の銅箔への付着量は218.8mg/dmであった。
次いで、上記銅微細粗化粒子層の上に銅合金からなる銅合金微細粗化粒子層のめっきを行なった。
めっき浴組成
Cu(金属として) :10g/l
Fe(金属として) : 4g/l
Mo(金属として) :0.3g/l
W(金属として) :0.3ppm
pH : 2.5
めっき条件
温度:20℃
電流密度 :50A/dm2
処理時間 :1.2秒
上記条件によりめっきした銅合金微細粗化粒子の付着量は5.6mg/dmであった。
次いで上記銅合金微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCoからなる平滑層のめっきを行った。
平滑層形成条件
めっき浴組成
Co(金属として) :10g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
pH :2.5
めっき条件
温度:40℃
電流密度 : 3A/dm2
処理時間 :30秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅合金微細粗化粒子層への付着量は24.2mg/dmであった。
【0039】
〔参考例1〕
厚さ10μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 15g/l
硫酸 :160g/l
亜セレン酸ナトリウム :0.015g/l
めっき条件
温度 :20℃
電流密度 :20A/dm2
処理時間 :1.5秒
上記条件によりめっきした銅微細粗化粒子の銅箔への付着量は5.4mg/dmであった。
【0040】
次いで上記銅微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCoからなる平滑層のめっきを行った。
平滑層形成条件
めっき浴組成
硫酸Co(Co金属として) :10g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
めっき条件
温度:50℃
電流密度 : 6A/dm2
処理時間 :30秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅微細粗化粒子層への付着量は37mg/dmであった。
【0041】
〔参考例2〕
厚さ10μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅合金微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 15g/l
Fe(金属として) : 4g/l
Mo(金属として) : 0.3g/l
W(金属として) : 0.3ppm
硫酸 :160g/l
めっき条件
温度:20℃
電流密度 :50A/dm2
処理時間 :4.5秒
上記条件によりめっきした銅合金微細粗化粒子の銅箔への付着量は21.1mg/dmであった。
次いで上記銅微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でInからなる平滑層のめっきを行った。
平滑層形成条件
めっき浴組成
In(金属として) : 8g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
pH :2.5
めっき条件
温度:40℃
電流密度 : 3A/dm2
処理時間 :15秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅微細粗化粒子層への付着量は9.5mg/dmであった。
【0042】
〔参考例3〕
厚さ12μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 2g/l
Co(金属として) : 8g/l
Ni(金属として) : 8g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
pH :3.5〜4.0
めっき条件
温度:40℃
電流密度 :40A/dm2
処理時間 :2.4秒
上記条件によりめっきした合金微細粗化粒子層の組成は、分析した結果、実組成mg/dm箔として、Cu:4.7、Co:9.56、Ni:8.4であった。
平滑層形成条件
次いで上記銅微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCoからなる平滑層のめっきを行った。
めっき浴組成
Co(金属として) :10g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
めっき条件
温度:50℃
電流密度 : 4A/dm2
処理時間 :30秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅微細粗化粒子層への付着量は32.2mg/dmであった。
【0043】
〔参考例4〕
厚さ12μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 15g/l
硫酸 :160g/l
Sb :0.2g/l
W : 4ppm
めっき条件
温度:20℃
電流密度 :20A/dm2
処理時間 :2.5秒
上記条件によりめっきした銅微細粗化粒子の銅箔への付着量は9.7mg/dmであった。
平滑層形成条件
次いで上記銅微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCoからなる平滑層のめっきを行った。
めっき浴組成
Co(金属として) :10g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
めっき条件
温度:50℃
電流密度 : 3A/dm2
処理時間 :30秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅微細粗化粒子層への付着量は24.2mg/dmであった。
【0044】
〔参考例5〕
厚さ12μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 15g/l
硫酸 :160g/l
Te :0.02g/l
めっき条件
温度:50℃
電流密度 :30A/dm2
処理時間 : 2秒
上記条件によりめっきした銅微細粗化粒子の銅箔への付着量は13.1mg/dmであった。
平滑層形成条件
次いで上記銅微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCoからなる平滑層のめっきを行った。
めっき浴組成
Co(金属として) :10g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸:20g/l
めっき条件
温度:50℃
電流密度 : 4A/dm2
処理時間 :30秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅微細粗化粒子層への付着量は32.2mg/dmであった。
【0045】
〔参考例6〕
厚さ10μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 15g/l
硫酸 :160g/l
Bi :0.02g/l
W : 4ppm
めっき条件
温度:50℃
電流密度:20A/dm2
処理時間:2秒
上記条件によりめっきした銅微細粗化粒子の銅箔への付着量は13.9mg/dmであった。
平滑層形成条件
次いで上記銅微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCoからなる平滑層のめっきを行った。
めっき浴組成
Co(金属として) :10g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸:20g/l
めっき条件
温度:50℃
電流密度:4A/dm2
処理時間:30秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅微細粗化粒子層への付着量は32.2mg/dmであった。
【0046】
〔参考例7〕
厚さ10μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) : 10g/l
Fe(金属として) : 4g/l
Mo(金属として) :0.3g/l
W(金属として) :0.3ppm
硫酸 :160g/l
めっき条件
温度:20℃
電流密度 :50A/dm2
処理時間 :4.5秒
上記条件によりめっきした銅微細粗化粒子の銅箔への付着量は21.1mg/dmであった。
次いで上記微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCo、Niからなる平滑層のめっきを行った。
平滑層形成条件
めっき浴組成
Co(金属として) : 8g/l
Ni(金属として) :0.5g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
pH : 4.5
めっき条件
温度:40℃
電流密度 : 3A/dm2
処理時間 :20秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅合金微細粗化粒子層への付着量はCo:20.1mg/dm、Ni:0.42mg/dmであった。
【0047】
〔参考例8〕
厚さ10μmの電解銅箔の片面に先ず微細粗化粒子を銅めっきにより設ける。
銅微細粗化粒子層のめっき条件
めっき浴組成
Cu(金属として) :10g/l
Fe(金属として) : 4g/l
Mo(金属として) :0.3g/l
W(金属として) :0.3ppm
硫酸 :160g/l
めっき条件
温度:20℃
電流密度 :50A/dm2
処理時間 :4.5秒
上記条件によりめっきした銅微細粗化粒子の銅箔への付着量は21.1mg/dmであった。
次いで上記微細粗化粒子層の上に次のめっき条件でCu、Coからなる平滑層のめっきを行った。
平滑層形成条件
めっき浴組成
Co(金属として) : 8g/l
Cu(金属として) :0.5g/l
硫酸アンモニウム :40g/l
硼酸 :20g/l
pH :4.5
めっき条件
温度:40℃
電流密度 : 3A/dm2
処理時間 :20秒
上記条件によりめっきした平滑層の銅合金微細粗化粒子層への付着量はCo:18.2mg/dm、Cu:0.61mg/dmであった。
【0048】
実施例1、2及び参考例1乃至8で作成した銅箔の平滑層上に、必要により防錆処理、シランカップリング剤処理を施した。防錆処理、シランカップリング剤処理方法は従来一般に行われている処理方法を適用した。
【0049】
〔比較例〕
参考例1,3、8と同一条件で電解銅箔の片面に微細粗化粒子を銅めっきし、平滑層を設けずに直接防錆処理、シランカップリング処理を施した。これを比較例1,2,3とした。
【0050】
評価1;粉落ち特性
実施例1、2及び参考例1、2、3で作成した銅箔の黒色処理面を上にして平らな台の上に置き、水でぬらした濾紙(東洋濾紙 No.2)を乗せ、その上に重り(底部直径 15mmφの円形で重さ250g)を置き、濾紙を15cm移動させた後、濾紙への銅粉付着有無を見た結果、全ての実施例について粉落ちの発生は見られなかった。
これに対し、比較例1,2,3では、ともに多くの粉落ちが見られた。
【0051】
評価2;シールド特性1
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)の上に、実施例1、2及び参考例1、2、3の黒色処理を施した銅箔を架橋剤を含むポリエステル系の接着剤を10μmに塗布し両者を接着した。次に、熱硬化型のインキを用いて、スクリーン印刷にて銅箔上に格子幅20μm、目の大きさ150μm×150μmの格子模様を印刷した。90□×5分の加熱によりインキを硬化させた後、塩化第二鉄水溶液によりインキにより保護されていない部分の金属層を除去し、次に、溶剤でインキを除去した。かくして、開口率75%の電磁波シールド体となる積層体を作成した。この積層体の可視光線の平均透過率を測定したところ67%以上であった。シート抵抗を測定したところ、0.11Ω/□以上で、優れた電磁波シールド体を得ることができた。
【0052】
評価3;シールド特性2
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)の上に、フッ素樹脂のコーティングにより反射防止フィルムを作製した。このフィルムのフッ素樹脂をコーティングし
ていない面に、アクリル系の接着剤で、実施例1、2及び参考例1乃至8で作成の銅箔をラミネートした。次に、アルカリ現像型のフォトレジストを銅箔の上にロールコーティング法でコーティングし、プレベーク後にフォトマスクを用いて露光、現像して格子幅25μm、目の大きさ125μm×125μmの格子パターンを設けた後、塩化第二鉄溶液によりレジストにより保護されていない部分の金属層をエッチングし、次にアルカリ溶液中でレジストを除去した。かくして、開口率69%以上の積層体を作成することができた。可視光線の平均透過率を測定したところ65%以上を得た。シート抵抗を測定したところ0.07/□以上で優れた電磁波遮蔽シートであった。
【0053】
上述したように銅箔を電磁波シールド用として使用するときの光透過部分の開口率は70%以上が好ましい。本実施例で製作した電磁波シールド用銅箔にて一辺もしくは直径が200μmの正三角形、正四角形、正六角形、円形、菱形の開口窓を面内に均一にエッチングで開口したところ、全て光透過部分が70%以上の開口率にエッチングすることができた。
また、上記で開口した光透過部分を有する銅箔の実質的なシート抵抗を、4端子法により測定した結果、0.01/□以上と0.3/□との間のシート抵抗値が得られ、充分な電磁波シールド能を有するものであった。
【0054】
評価4;色斑
表面の色調と黒色色斑につき、目視で評価した。その結果、本実施例の箔表面の色調は何れも均一で、色むらの存在も発見できなかった。
【0055】
本発明の電磁シールド用銅箔は、電解液組成に有害物質を使用しないので環境に優しい製造方法で製造でき、製造された銅箔は電磁波シールド能に優れ、透過率が高く、かつ粉落ち、表面の色斑がなく、電磁波シールド用銅箔として好適に用いることができる優れた効果を有し、さらに、該銅箔を用いることにより、PDPに使用できる良好な電磁波シールド体を提供することが可能となる等の優れた効果を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔の少なくとも片面に、銅微細粗化粒子層とその上に形成された銅合金微細粗化粒子層とからなる微細粗化粒子層が設けられ、
該微細粗化粒子層上にCo、Ni、In又はこれらの合金からなる平滑層が設けられている
電磁波シールド用銅箔。
【請求項2】
前記銅合金微細粗化粒子層はCo、Ni、Se、Sb、W、Te、Bi、Mo、Feの少なくとも何れか1種を含むCu合金で形成されている請求項1に記載の電磁波シールド用銅箔。
【請求項3】
前記平滑層の厚さが5nm以上、100nm以下である請求項1に記載の電磁波シールド用銅箔。
【請求項4】
前記平滑層はCu含有量が5%以下のCo合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波シールド用銅箔。
【請求項5】
前記銅箔の表面粗さRzが3μm以下の粒状結晶であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁波シールド用銅箔。
【請求項6】
前記平滑層の表面粗さRzが3.5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電磁波シールド用銅箔。
【請求項7】
前記平滑層の上に防錆処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電磁波シールド用銅箔。
【請求項8】
前記平滑層の上にシランカップリング剤処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電磁波シールド用銅箔。
【請求項9】
銅箔の少なくとも片面に銅微細粗化粒子層を設け、該銅微細化粒子層上にCu合金の銅合金微細粗化粒子層を設けて微細粗化粒子層を形成し、該微細粗化粒子層上に、Co、Ni、In又はこれらの合金からなる平滑層を設けてなることを特徴とする電磁波シールド用銅箔の製造方法。
【請求項10】
前記微細粗化粒子層は硫酸銅浴でめっきすることを特徴とする請求項9に記載の電磁波シールド用銅箔の製造方法。
【請求項11】
前記平滑層はCu含有量が300ppm以下のCoめっき浴でめっきすることを特徴とする請求項9に記載の電磁波シールド用銅箔の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の電磁波シールド用銅箔を電磁波シールド体に加工したことを特徴とする電磁波シールド体。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれかに記載の電磁波シールド用銅箔の製造方法で製造した銅箔を電磁波シールド体に加工したことを特徴とする電磁波シールド体。

【公開番号】特開2008−199051(P2008−199051A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100445(P2008−100445)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【分割の表示】特願2003−381398(P2003−381398)の分割
【原出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【出願人】(591056710)古河サーキットフォイル株式会社 (43)
【Fターム(参考)】