説明

電磁波検出器およびこれを備えた検査装置

【課題】 低いエネルギーのX線(電磁波)を照射して検査を行う場合でも、高感度でX線(電磁波)を検出し、高解像度の画像を作成して高精度な検査を実施することが可能な電磁波検査装置を提供する。
【解決手段】 X線検査装置10では、基板31と、フォトダイオード32と、蛍光体33とを有しており、X線照射器13側からみて、フォトダイオード32、蛍光体33の順に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象となる物品に対してX線等の電磁波を照射し、透過した電磁波の検出信号に基づいて形成される画像に基づいて物品に関する検査を行う電磁波検出器等に搭載されるX線検出器等の電磁波検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品などの商品の生産ラインにおいては、商品への異物混入や商品の割れ欠けがある場合にその不良商品が出荷されることを防止するために、X線検査装置を用いた商品不良検査が行われている。このX線検査装置では、搬送コンベアによって連続搬送されてくる物品に対してX線を照射し、そのX線の透過状態をX線検出部において検出して、物品中に異物が混入していないかを判別する。
【0003】
このようなX線検査装置において、検査対象となる商品に対して照射されたX線の透過光を検出する検出器では、フォトダイオードチップの直上に、X線を可視光に変換するシンチレータが設けられており、X線を変換した可視光をフォトダイオードにおいて検出する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2003−066149号公報(平成15年3月5日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の放射線検出器では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された放射線検出器においては、図9(a)に示すように、X線源からみてシンチレータ、フォトダイオードチップの順に配置されているため、波長領域が0.06nm〜0.01nm程度のエネルギーの低いX線が照射された場合には、図9(b)に示すように、シンチレータの表面で吸収されたX線が発光する。しかし、このような構成では、発光した光がシンチレータを通過する間に減衰、散乱等してフォトダイオードチップにおける隣接する画素に入射しやすくなるために画像の解像度が低下してしまう。この結果、低エネルギーのX線が照射された際には、高解像度のX線画像を作成することが困難になり、高効率、高精度な検査を実施することが困難になるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、低いエネルギーのX線(電磁波)を照射して検査を行う場合でも、高感度でX線(電磁波)を検出し、高解像度の画像を作成して高精度な検査を実施することが可能な電磁波検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る電磁波検出器は、物品に対して照射された電磁波のうち、物品を透過した電磁波を検出する電磁波検出器であって、照射器と、波長変換部と、検出部と、を備えている。照射器は、物品に対して第1電磁波を照射する。波長変換部は、物品を透過した第1電磁波を、第1電磁波よりも波長が長い第2電磁波に変換する。検出部は、第1電磁波を透過させるとともに、波長変換部において変換された第2電磁波を検出する。そして、検出部は、照射器と波長変換部との間に設けられている。
【0007】
ここでは、照射器から照射されたX線等の電磁波(第1電磁波)の波長を変換し、波長変換後の電磁波(第2電磁波)を検出する電磁波検出器において、照射器からみて、検出部を波長変換部よりも手前側、つまり照射器、検出部、波長変換部の順に配置している。
ここで、電磁波には、X線等の放射線の他、電子線や可視光等が含まれる。そして、波長変換部には、例えば、X線(波長0.03nm程度)を吸収して可視光(波長420〜900nm程度)を放出するシンチレータ等が含まれる。また、検出部には、例えば、波長変換部において変換された可視光を検出するフォトダイオード等が含まれる。また、検出部は、例えば、Si薄膜等で形成されており、第1電磁波を透過させる性質あるいは構造を有している。照射器から検査対象となる物品に対して照射された第1電磁波は、上記物品を透過した後、最初に検出部を透過する。そして、検出部を通過した第1電磁波は、波長変換部に到達してここで波長変換が行われる。波長変換された第2電磁波は、例えば、X線から可視光に変換され、先程通過した検出部において検出される。
【0008】
通常、密度の低い物品について検査を行う場合には、検出部における検出結果に基づいて作成される2次元画像のコントラストを向上させるためにエネルギーの低い電磁波が用いられる場合がある。しかし、照射器から照射された電磁波のエネルギーが低い場合には、波長変換部における表面付近で波長変換が行われる。このため、従来のX線検出器のように、波長変換部が検出部よりも照射器側に設けられている構成では、波長変換部の照射器側の表面において波長変換された第2電磁波は、検出部に到達するまでの波長変換部内を通過する間に減衰、散乱して、検出部において正確に検出できない場合がある。この結果、例えば、検出部における第2電磁波の検出結果に基づいて作成される画像の解像度が低下して高精度な検査を実施することが困難になるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の電磁波検出器では、電磁波の波長変換が行われる波長変換部の照射器側の表面に対して検出部を近接配置している。
これにより、例えば、低密度の物品を検査対象として低エネルギーの電磁波が照射された場合でも、波長変換部における照射器側の表面において波長変換された第2電磁波を、その波長変換部における照射器側の表面に近接して配置された検出部において効率よく、正確に検出することができる。この結果、例えば、第2電磁波の検出結果に基づいて作成された画像によって異物検出等の検査を実施する場合でも、高解像度の画像を作成して高精度な検査を実施することが可能になる。
【0010】
第2の発明に係る電磁波検出器は、第1の発明に係る電磁波検出器であって、検出部を固定するための基板をさらに備えている。
ここでは、例えば、Si等で形成されたフォトダイオード等の検出部を、セラミック等で形成された基板に固定する。
これにより、検出部を安定して固定配置することができるため、検出部における検出を安定して行うことができる。
【0011】
第3の発明に係る電磁波検出器は、第1または第2の発明に係る電磁波検出器であって、電磁波は、X線である。
ここでは、検査対象となる物品に対して照射される電磁波としてX線を使用し、検出部において、物品に対して照射されたX線の透過光の波長を変換して得られる電磁波の量を検出する。
【0012】
これにより、検査装置に使用される電磁波として一般的なX線を使用することができ、例えば、低密度の物品についての検査を行う場合でもコントラストを向上させたX線画像を作成するために低エネルギーのX線を照射した場合でも、高解像度のX線画像を作成することができる。
第4の発明に係る電磁波検出器は、第3の発明に係る電磁波検出器であって、波長変換部は、X線を吸収して可視光を放出する。
【0013】
ここでは、検査対象となる物品に対してX線を照射してその透過光を検出するX線検出器において、波長変換部として、X線を吸収して可視光に変換するシンチレータ等を用いている。
ここで、X線の波長は、0.03nm程度であって、可視光の波長は420nm〜900nmである。
【0014】
これにより、波長変換部として機能するシンチレータにおいては、照射器から照射されたX線の波長を、0.03nmから420〜900nmへ変換することで可視光に変換することができる。
第5の発明に係る電磁波検出器は、第4の発明に係る電磁波検出器であって、検出部は、可視光を検出するフォトダイオードである。
【0015】
ここでは、第2電磁波(可視光)を検出する検出部として、フォトダイオードを用いている。
これにより、シンチレータ等の波長変換部においてX線の波長を変換して得られる可視光をフォトダイオードにおいて確実に検出することができる。
第6の発明に係る検査装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る電磁波検出器と、画像作成部と、検査部とを備えている。画像作成部は、電磁波検出器における検出結果に基づいて2次元画像を作成する。検査部は、画像作成部において作成された2次元画像に基づいて物品の検査を行う。
【0016】
ここでは、電磁波検出器における検出結果に基づいて作成された2次元画像を用いて物品の異物混入等の検査を行う検査装置において、上述した電磁波検出器を搭載している。
これにより、第2電磁波を高効率かつ高精度に検出して、解像度の高い2次元画像を作成することができる。この結果、解像度の高い2次元画像に基づいて各種検査を行うことで、高精度な検査を実施することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電磁波検出器によれば、例えば、低密度の物品を検査対象として低エネルギーの電磁波が照射された場合でも、波長変換部における照射器側の表面において波長変換された第2電磁波を、その波長変換部における照射器側の表面に近接して配置された検出部において、効率よくかつ正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るX線検出器(電磁波検出器)およびこれを搭載したX線検査装置(検査装置)について、図1〜図7を用いて説明すれば以下の通りである。
[X線検査装置10全体の構成]
本実施形態のX線検査装置10は、図1に示すように、食品等の商品の生産ラインにおいて品質検査を行う装置の1つである。X線検査装置10は、連続的に搬送されてくる商品に対してX線を照射し、商品を透過したX線量を検出して作成されるX線画像に基づいて商品に異物が混入しているか否かの検査を行う。
【0019】
X線検査装置10の検査対象である商品(物品)Gは、図2に示すように、前段コンベア60によりX線検査装置10に運ばれてくる。商品Gは、X線検査装置10において異物混入の有無が判断される。このX線検査装置10での判断結果は、X線検査装置10の下流側に配置される振分機構70に送信される。振分機構70は、商品GがX線検査装置10において異物混入の無い良品と判断された場合には商品Gをそのまま正規のラインコンベア80へと送る。一方、商品GがX線検査装置10において異物混入のある不良品と判断された場合には、下流側の端部を回転軸とするアーム70aが搬送路を遮るように回動する。これにより、不良品と判断された商品Gを、搬送路から外れた位置に配置された不良品回収箱90によって回収することができる。
【0020】
X線検査装置10は、図1に示すように、主として、シールドボックス11と、コンベア12と、遮蔽ノレン16と、タッチパネル機能付きのモニタ26と、を備えている。そして、その内部には、図3に示すように、X線照射器(照射器)13と、X線ラインセンサ(X線検出器、電磁波検出器)14と、制御コンピュータ(画像作成部、検査部)20(図5参照)とを備えている。
【0021】
[シールドボックス11]
シールドボックス11は、商品Gの入口側と出口側の双方の面に、商品を搬出入するための開口11aを有している。このシールドボックス11の中に、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御コンピュータ20などが収容されている。
また、開口11aは、図1に示すように、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン16によって塞がれている。この遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴム製のノレン部分を有しており、商品が搬出入される際に商品によって押しのけられる。
【0022】
また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ26の他、キーの差し込み口や電源スイッチ等が配置されている。
[コンベア12]
コンベア12は、シールドボックス11内において商品を搬送するものであって、図5の制御ブロックに含まれるコンベアモータ12fによって駆動される。コンベア12による搬送速度は、作業者が入力した設定速度になるように、制御コンピュータ20によるコンベアモータ12fのインバータ制御によって細かく制御される。
【0023】
また、コンベア12は、図3に示すように、コンベアベルト12a、コンベアフレーム12bを有しており、シールドボックス11に対して取り外し可能な状態で取り付けられている。これにより、食品等の検査を行う場合においてシールドボックス11内を清潔に保つために、コンベアを取り外して頻繁に洗浄することができる。
コンベアベルト12aは、無端状ベルトであって、ベルトの内側からコンベアフレーム12bによって支持されている。そして、コンベアモータ12fの駆動力を受けて回転することで、ベルト上に載置された物体を所定の方向に搬送する。
【0024】
コンベアフレーム12bは、無端状のベルトの内側からコンベアベルト12aを支持するとともに、図3に示すように、コンベアベルト12aの内側の面に対向する位置に、搬送方向に対して直角な方向に長く開口した開口部12cを有している。開口部12cは、コンベアフレーム12bにおける、X線照射器13とX線ラインセンサ14とを結ぶ線上に形成されている。換言すれば、開口部12cは、コンベアフレーム12bにおけるX線照射器13からのX線照射領域に、商品Gを透過したX線がコンベアフレーム12bによって遮蔽されないように形成されている。
【0025】
[X線照射器13]
X線照射器13は、図3に示すように、コンベア12の上方に配置されており、コンベアフレーム12bに形成された開口部12cを介して、コンベア12の下方に配置されたX線ラインセンサ14に向かって扇形形状にX線を照射する(図3の斜線部参照)。
[X線ラインセンサ14]
X線ラインセンサ14は、コンベア12(開口部12c)の下方に配置されており、商品Gやコンベアベルト12aを透過してくるX線(第1電磁波)を検出する。このX線ラインセンサ14は、図3および図4に示すように、コンベア12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置された複数の画素14aから構成されている。
【0026】
なお、図4には、X線検査装置10内におけるX線照射状態と、その時のラインセンサ14を構成する各画素14aにおいて検出されるX線量を示すグラフとがそれぞれ示されている。
また、本実施形態のX線ラインセンサ14は、図6(a)および図6(b)に示すように、基板31と、フォトダイオード(検出部)32と、蛍光体(波長変換部)33とを有している。
【0027】
基板31は、厚さ約1.6〜2.4mm程度のセラミック基板であって、フォトダイオード32を強固に固定してフォトダイオード32における可視光(第2電磁波)の検出を安定して行うために設けられている。そして、基板31には、開口31aが形成されており、開口31aの部分からフォトダイオード32が露出している。
フォトダイオード32は、基板31と蛍光体33とに挟まれるような位置に配置されており、裏面側に貼り付けられた蛍光体33において発光した可視光(第2電磁波)を検出する。また、フォトダイオード32は、厚さ約0.1mm程度のSi薄膜によって形成されており、X線を透過させる性質を有する。なお、このフォトダイオード32に含まれる複数の画素32aは、上述した画素14aに相当する。
【0028】
蛍光体33は、X線照射器13から見て、フォトダイオード32の下方に貼り付けられるようにしてフォトダイオード32に対して近接配置されている。そして、蛍光体33は、商品Gを透過した後で開口31aから露出したフォトダイオード31を透過して到達したX線を吸収して発光し、可視光を放出する。このとき、蛍光体33では、吸収したX線の波長(約0.03nm)を、約420〜900nmに変換する。これにより、蛍光体33は、波長約0.03nmのX線(第1電磁波)を波長約420〜900nmの可視光(第2電磁波)に変換する波長変換部として機能する。なお、蛍光体33においては、吸収するX線のエネルギーが高い場合には、比較的深層部まで到達して発光する一方、X線のエネルギーが低い場合(例えば、X線の波長領域が0.06nm〜0.01nmの場合)には、深層部までは到達することなく表面付近において発光する。
【0029】
そして、本実施形態では、上述した各構成が、X線照射器13側から、基板31、フォトダイオード32、蛍光体33という順番で配置されている。このため、X線照射器13から照射されたX線は、搬送中の商品Gを透過した後、基板31の開口31aの部分からフォトダイオード32の部分に照射される。そして、このX線は、図7に示すように、Si薄膜によって形成されるフォトダイオード32を透過して蛍光体33へ到達する。このとき、蛍光体33では、X線のエネルギーに応じて変動するX線が吸収された深さ位置において、可視光を発光する。具体的には、照射されるX線のエネルギーが低い場合(例えば、X線の波長領域が0.06nm〜0.01nmの場合)には、蛍光体33の表層付近において発光する一方、X線のエネルギーが高い場合には、蛍光体33の深層部付近で発光する。フォトダイオード32では、蛍光体33において発光して放出される可視光を、その直上に近接するように配置されたフォトダイオード32に含まれる各画素32aにおいて検出することでX線の検出を行う。
【0030】
[モニタ26]
モニタ26は、フルドット表示の液晶ディスプレイである。また、モニタ26は、タッチパネル機能を有しており、初期設定や異物検出の判定等に関するパラメータ入力などを促す画面を表示する。
また、モニタ26は、X線ラインセンサ14における検出結果に基づいて作成された後、画像処理が施されたX線画像を表示する。これにより、商品Gに含まれる異物の有無、場所、大きさ等を、ユーザに対して視覚的に認識させることができる。
【0031】
[制御コンピュータ20]
制御コンピュータ20は、CPU21において、制御プログラムに含まれる画像処理ルーチン、検査判定処理ルーチンなどを実行する。また、制御コンピュータ20は、CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)25等の記憶部に、不良商品に対応するX線画像や検査結果、X線画像の補正用データ等を保存蓄積する。
【0032】
具体的な構成として、制御コンピュータ20は、図5に示すように、CPU21を搭載するとともに、このCPU21が制御する主記憶部としてROM22、RAM23、およびCF25を搭載している。
CF25には、各種プログラムや異物混入検査の対象となるX線画像に関する情報、検出された異物の位置等に関する情報が格納されている。
【0033】
さらに、制御コンピュータ20は、モニタ26に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ26のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、外部接続端子としてのUSB24等を備えている。
そして、CPU21、ROM22、RAM23、CF25等は、アドレスバスやデータバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0034】
さらに、制御コンピュータ20は、コンベアモータ12f、ロータリーエンコーダ12g、X線照射器13、X線ラインセンサ14、光電センサ15等と接続されている。
制御コンピュータ20では、コンベアモータ12fに装着されたロータリーエンコーダ12gにおいて検出されたコンベア12の搬送速度を受信する。
また、制御コンピュータ20は、コンベアを挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成される同期センサとしての光電センサ15からの信号を受信して、被検査物である商品GがX線ラインセンサ14の位置にくるタイミングを検出する。
【0035】
<制御コンピュータ20による異物混入の判定>
[X線画像作成]
制御コンピュータ20は、光電センサ15からの信号を受けて、X線照射器13から照射された扇状のX線照射部分(図3に示す斜線部分参照)を商品Gが通過するときに、X線ラインセンサ14によるX線透視像信号を細かい時間間隔で取得する。そして、制御コンピュータ20は、それらのX線透視像信号に基づいて、X線ラインセンサ14の1ラインごとに商品Gとその背景部分とを含む2次元のX線画像を作成する。すなわち、X線ラインセンサ14の各画素14a(画素32a)から細かい時間間隔をあけて各時刻のデータを得て、それぞれのデータからX線画像が作成される。そして、これら複数のX線画像を時間経過順に組み合わせることで、商品Gの全体とその背景部分とを含む全体の2次元画像が形成される。
【0036】
[マスク領域の設定]
本実施形態のX線検査装置10では、制御コンピュータ20によって形成された2次元画像に対して検査領域から除外する領域を指定するためのマスク領域の設定を行う。
具体的には、各画素における明るさに基づいて作成されたヒストグラムを利用して抽出された背景部分を、マスク領域として設定する。
【0037】
[異物検出]
制御コンピュータ20では、上述したマスク領域が被せられて設定された商品Gに相当する領域について、異物が含まれているか否かの検査を行う。
具体的な検出方法としては、X線画像に含まれる画素を、所定の濃度を閾値として2値化することで所定濃度よりも暗い画素を異物として検出する2値化処理による検出方法や、ある画素についてその周囲の画素の濃度の平均値との差をとることで孤立した濃度の濃い領域を抽出して異物を検出する微分処理による検出方法等を用いることができる。
【0038】
これにより、物品に相当する領域に存在する異物を検出することができる。
[本X線検査装置10の特徴]
(1)
本実施形態のX線検査装置10では、図6(a)および図6(b)、図7に示すように、X線照射器13側からみて、フォトダイオード32、蛍光体33の順に配置している。
【0039】
従来のX線検査装置では、フォトダイオードを強固に基板に対して固定するという必要性等を考慮して、図9(a)に示すように、X線が照射される側から、蛍光体、フォトダイオードの順に配置された構成が一般的であり、蛍光体において発光した可視光をフォトダイオードにおいて検出した検出結果を電気信号として制御部等へ送信している。このような構成では、比較的高いエネルギーのX線が照射された場合には、図9(b)に示すように、蛍光体の深層部において発光して可視光を発するため、この可視光を比較的効率よくフォトダイオードにおいて検出することができる。一方、例えば、低い密度の商品Gの検査を行うときには、コントラストの高いX線画像を作成するために、波長領域が0.06nm〜0.01nm程度の低いエネルギーのX線が照射される場合がある。この場合には、同じく図9(b)に示すように、蛍光体における発光位置は表層に近い部分となるため、可視光は発光位置からフォトダイオードに到達するまでに蛍光体内部を透過する間に減衰、散乱して、効率よくフォトダイオードにおいて検出されなくなるおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態のX線検査装置10では、図9(a)等に示す従来の構成と比較して、蛍光体33とフォトダイオード32の配置順を反対にしている。すなわち、図6(a)および図7等に示すように、X線照射器13側からみて、フォトダイオード32、蛍光体33の順に配置して、X線ラインセンサ14を構成している。
これにより、低いエネルギーのX線(第1電磁波)を照射して検査を行う場合でも、蛍光体33の表面付近で発光した可視光(第2電磁波)が蛍光体33内を通過することなくフォトダイオード32において検出されるため、蛍光体33を通過するまでの可視光の減衰、散乱を防止することができる。そして、蛍光体33における可視光の発光位置とフォトダイオード32における可視光の検出位置とが近くなるため、透過X線が本来入射すべきフォトダイオード32の画素の隣接する画素へ入射してしまう、いわゆるクロストークの発生を防止することができる。この結果、商品Gを透過したX線を効率よく検出することができるため、S/N比が向上し、解像度の高いX線画像を作成して高精度な検査を実施することが可能になる。
【0041】
(2)
本実施形態のX線検査装置10では、図6(a)および図6(b)に示すように、Si薄膜によって形成されるフォトダイオード32のチップを固定するための基板31を備えている。
これにより、フォトダイオード32が、厚さ約0.1mmのSi薄膜によって形成されている場合でも、基板31に対して貼り付けるようにして固定することで、安定した状態で可視光の検出を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態のX線検査装置10では、従来のX線検出器と比較して、フォトダイオードと蛍光体との配置順を入れ替えているが、図6(a)等に示すように、基板31に開口31aを形成する等の構成とすることにより、基板31に対してフォトダイオード32を強固に固定することができる。
(3)
本実施形態のX線検査装置10では、検査対象となる商品Gに対して照射する電磁波としてX線を用いている。
【0043】
これにより、非破壊検査に一般的に使用されるX線を用いることで、検査時における使い勝手がよく、低エネルギーのX線を照射した場合でも高効率な検出を行うことが可能な検出器を提供できる。
(4)
本実施形態のX線検査装置10では、第1電磁波としてのX線を第2電磁波としての可視光へと変換する波長変換部として、X線を吸収して可視光を発する蛍光体33を用いている。
【0044】
これにより、蛍光体33において、X線の波長(約0.03nm)を、可視光の波長域(約420〜900nm)へと変換してフォトダイオード32において可視光を検出することで、間接的にX線の検出を行うことができる。
(5)
本実施形態のX線検査装置10では、第2電磁波としての可視光を検出する検出部として、フォトダイオード32を用いている。
【0045】
これにより、波長変換部としての蛍光体33においてX線から変換された可視光を、蛍光体33に近接するように配置されたフォトダイオード32において検出することができる。
(6)
本実施形態のX線検査装置10では、制御コンピュータ20が、X線ラインセンサ14におけるX線の検出結果に基づいてX線画像を作成するとともに、このX線画像に基づいて異物混入の検査を行う。
【0046】
これにより、低エネルギーのX線を照射して商品Gについての検査を行う場合でも、フォトダイオード32における検出効率を低下させることなく、高精度なX線検出が可能になる。この結果、S/N比が向上し、解像度の高いX線画像を作成して高精度な検査を実施することが可能になる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
(A)
上記実施形態では、基板31の下方にフォトダイオード32および蛍光体32を貼り付けた構成を有するX線ラインセンサ14を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図8(a)および図8(b)に示すように、基板31の中央部付近に欠き込みを形成し、その中に蛍光体32を埋め込むように配置し、蛍光体32と基板31上にフォトダイオード32を貼り付けた構成のX線ラインセンサ(X線検出器、電磁波検出器)44を用いてもよい。
【0048】
この場合でも、フォトダイオード32と蛍光体33との位置関係を維持しつつ、基板31に対してフォトダイオード32を確実に固定することができる。
(B)
上記実施形態では、電磁波としてX線を用いるとともに、電磁波検出器としてX線ラインセンサ14を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
例えば、X線以外の放射線(例えば、γ線等)や電子線等を用いるとともに、これらを検出する電磁波検出器を用いてもよい。この場合でも、低エネルギーの電磁波を照射して検査を行った場合において、効率よく物品を透過した電磁波を検出して高解像度の2次元画像を作成することができるといった上記と同様の効果を得ることができる。
(C)
上記実施形態では、X線を吸収して可視光を発するシンチレータを、波長変換部として用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
例えば、X線を吸収して赤外線を発するような波長変換部や、X線以外の他の電磁波を可視光や赤外線等に変換する波長変換部を用いてもよい。この場合でも、上記と同様に、低エネルギーの電磁波を照射して検査を行った場合において、効率よく物品を透過した電磁波を検出して高解像度の2次元画像を作成することができる。
(D)
上記実施形態では、X線検査装置10において、異物混入の検査を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、商品Gに含まれる物品の個数を確認するための検査や、脱酸素剤等の物品が存在しているか否かの検査を行う検査装置に対して本発明を適用することもできる。
(E)
上記実施形態では、X線ラインセンサ14における検出結果に基づいて2次元のX線画像を作成し、このX線画像を参照して異物混入の検査を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
例えば、X線ラインセンサ14における検出結果に基づいて、X線画像を作成することなく各種検査を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の電磁波検出器は、低いエネルギーの電磁波を照射して検査を行う場合でも、検査対象となる物品を透過した電磁波を効率よく検出することができるという効果を奏することから、電磁波を照射して検査を行う各種検査装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の外観斜視図。
【図2】図1のX線検査装置の前後の構成を示す図。
【図3】図1のX線検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図。
【図4】図1のX線検査装置による異物混入検査の原理を示す模式図。
【図5】図1のX線検査装置が備えている制御コンピュータの構成を示す制御ブロック図。
【図6】(a)および(b)は、図1のX線検査装置が搭載しているX線ラインセンサの詳細な構成を示す斜視図および側断面図。
【図7】図6に示すX線ラインセンサにおける低エネルギーのX線を検出した時の状態を示す模式図。
【図8】(a)および(b)は、本発明の他の実施形態に係るX線検査装置が搭載しているX線検出器の構成を示す斜視図および側断面図。
【図9】(a)および(b)は、従来のX線検出器におけるX線の検出原理を示す図。
【符号の説明】
【0055】
10 X線検査装置(検査装置)
11 シールドボックス
11a 開口
12 コンベア
12a コンベアベルト
12b コンベアフレーム
12c 開口部
12f コンベアモータ
12g ロータリーエンコーダ
13 X線照射器(照射器)
14 X線ラインセンサ(X線検出器、電磁波検出器)
14a 画素
15 光電センサ
16 遮蔽ノレン
20 制御コンピュータ(画像作成部、検査部)
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 USB(外部接続端子)
25 CF(コンパクトフラッシュ:登録商標)
26 モニタ
31 基板
31a 開口
32 フォトダイオード(検出部)
32a 画素
33 蛍光体(波長変換部)
44 X線ラインセンサ(X線検出器、電磁波検出器)
60 前段コンベア
70 振分機構
70a アーム
80 ラインコンベア
G 商品(物品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に対して照射された電磁波のうち、前記物品を透過した電磁波を検出する電磁波検出器であって、
前記物品に対して第1電磁波を照射する照射器と、
前記物品を透過した第1電磁波を、前記第1電磁波よりも波長が長い第2電磁波に変換する波長変換部と、
前記第1電磁波を透過させて前記波長変換部において変換された前記第2電磁波を検出するとともに、前記照射器と前記波長変換部との間に設けられている検出部と、
を備えている、
電磁波検出器。
【請求項2】
前記検出部を固定するための基板をさらに備えた、
請求項1に記載の電磁波検出器。
【請求項3】
前記電磁波は、X線である、
請求項1または2に記載の電磁波検出器。
【請求項4】
前記波長変換部は、前記X線を吸収して可視光を放出する、
請求項3に記載の電磁波検出器。
【請求項5】
前記検出部は、前記可視光を検出するフォトダイオードである、
請求項4に記載の電磁波検出器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電磁波検出器と、
前記電磁波検出器における検出結果に基づいて2次元画像を作成する画像作成部と、
前記画像作成部において作成された2次元画像に基づいて前記物品の検査を行う検査部と、を備えた、
検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−329822(P2006−329822A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154015(P2005−154015)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】