説明

電磁波遮蔽フィルム、その製造方法及び製造装置

【課題】高い電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽フィルム、高い生産性を有し、製造設備がコンパクトで、製造コストが安い電磁波遮蔽フィルムの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】透明支持体上に、光透過部とパターン状金属部とを有する電磁波遮蔽フィルムであって、該光透過部はバインダーを有さず、該パターン状金属部はバインダーが付着している電磁波遮蔽フィルムの製造装置1は、長尺の支持体201の繰出し工程2と、塗布工程3と、乾燥工程4と、巻取り工程5とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、電子レンジ、CRT及びフラットパネルディスプレイ等の電子機器から発生する電磁波を遮断する電磁波遮断フィルム、その製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の使用増大のために電磁波障害(EMI)を低減する必要性が高まっている。EMIは電子、電気機器の誤動作、障害の原因になる他、人体に対しても害を与えることが指摘されている。このため、電子機器では電磁波放出の強さを規格または規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
特にプラズマ表示パネル(PDP)は、希ガスをプラズマ状態にして紫外線を放射させ、この光線で蛍光体を発光させる原理に基づくために原理的に電磁波を発生する。また、この時、近赤外線も放射されるので、リモコン等の操作素子の誤動作を引き起こすので電磁波遮蔽能と同時に近赤外線の遮蔽も求められている。
【0004】
電磁波遮蔽能は、簡便には表面抵抗値で表すことができ、PDP用の透光性電磁波遮蔽フィルムでは10Ω/□以下が要求され、PDPを用いた民生用プラズマテレビにおいては2Ω/□以下とする必要性が高く、より望ましくは0.2Ω/□以下という極めて高い導電性が要求されている。
【0005】
上記の問題を解決するために開口部を有する金属メッシュを利用した電磁波遮蔽フィルムの生産方法が提案されている。例えば、フォトリソグラフ法による金属メッシュ形成方法(例えば、特許文献1参照)である。しかし、この方法では、銅箔貼合に始まり、レジスト液の塗布乾燥、マスクによる露光、現像、エッチング、レジスト除去といった非常に多くの工程が必要となり、また枚葉の生産となるため、生産性が非常に低いという欠点がある。
【0006】
これを解決するために、ハロゲン化銀粒子から得られる現像銀が金属銀であることより、写真現像を応用した製造方法で金属銀のメッシュを作製することが考えられる。例えば、ハロゲン化銀粒子を含む層を有する感光材料をメッシュ状に露光して現像処理すれば、銀粒子がメッシュ状に集合した導電性金属銀部が形成される(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では、現像銀のみでは導電性が不足するため、後工程として物理現像、または/及びメッキ工程が必要となり、そこで形成される金属メッシュにより、導電性が決まる。従って、現像銀の機能は物理現像、または/及びメッキで金属が成長するための核であり、非常に少量しか要しないのに不必要に厚膜形成されていた。また、この方法のもう一つの欠点は、厚膜塗布のため乾燥ゾーンが長くなり、設備が非常に大型化する、及びエネルギー費等が多額化するという欠点もあった。
【特許文献1】特開2003−46293号公報
【特許文献2】特開2004−221564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽フィルム、高い生産性を有し、製造設備がコンパクトで、製造コストが安い電磁波遮蔽フィルムの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0009】
1.透明支持体上に、光透過部とパターン状金属部とを有する電磁波遮蔽フィルムであって、該光透過部はバインダーを有さず、該パターン状金属部はバインダーが付着していることを特徴とする電磁波遮蔽フィルム。
【0010】
2.前記1に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法であって、透明支持体上に金属塩微粒子を含有する塗布液をパターン状に塗布する工程、乾燥する工程、パターン状塗布部に対して該パターン状塗布部の線幅よりも細い線にてパターン状露光する工程、現像処理にてパターン状金属像を形成する工程、及び、物理現像及び/またはメッキ処理により該パターン状金属像の導電性を高める工程からなることを特徴とする電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0011】
3.前記パターン状に塗布する工程をインクジェット方式にて実施することを特徴とする前記2に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0012】
4.前記金属塩微粒子を含有する塗布液の塗布量が、全面塗布に換算して0.1〜1g金属/m2であることを特徴とする前記3に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0013】
5.前記金属塩微粒子がハロゲン化銀であることを特徴とする前記2〜4のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0014】
6.前記塗布液がバインダーを含有することを特徴とする前記2〜5のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0015】
7.前記透明支持体がハレーション防止層を有することを特徴とする前記2〜6のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0016】
8.前記メッキ処理を行う場合、まず無電解メッキを行い、その後電解メッキを行うことを特徴とする前記2〜7のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0017】
9.前記メッキ処理を行う場合、まず弱電流の電解メッキ処理を行い、その後強電流の電解メッキ処理を行うことを特徴とする前記2〜8のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【0018】
10.前記3〜7のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法に用いられる電磁波遮蔽フィルムの製造装置であって、少なくとも、インクジェットヘッドを備えたパターン状塗布部、該パターン状塗布部の位置を検出して塗布部にパターン状露光する露光部、現像処理部、及び、物理現像処理及び/またはメッキ処理部を有することを特徴とする電磁波遮蔽フィルムの製造装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、高い電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽フィルム、高い生産性を有し、製造設備がコンパクトで、製造コストが安い電磁波遮蔽フィルムの製造方法及び製造装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の電磁波遮断フィルムの製造方法は、支持体上に金属塩微粒子を含む層をインクジェットヘッドでパターン状に塗布、乾燥し、形成したパターンより細い線幅で露光し、現像することでパターン状に金属部を形成した後、物理現像または/及びメッキ処理することで金属部の導電性を高めることにより、電磁波遮断機能を有する層を形成することを特徴とする。
【0021】
(金属塩微粒子)
本発明において、電磁波遮蔽機能を発現するために、金属塩微粒子を含有する層(ハロゲン化銀粒子、ハロゲン化銅等を含有する層)が支持体上に設けられる。金属塩微粒子含有層は金属塩微粒子の他、バインダー、活性剤等を含有することができる。
【0022】
本発明に用いられる金属塩微粒子としては、ハロゲン化銀、ハロゲン化銅等を使うことができるが、光に対する感度の面からはハロゲン化銀微粒子が好ましい。ハロゲン化銀微粒子としては、無機ハロゲン化銀粒子及びベヘン酸銀等の有機ハロゲン化銀粒子が挙げられるが、導電性金属銀を得やすい無機ハロゲン化銀を用いることが好ましい。本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀は、例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀であり、導電性のよい金属銀を得るためには感度の高い微粒子が好ましく、沃素を含むAgBrを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。沃素を多く含むようにすると、感度も高く微粒子にすることができる。
【0023】
ハロゲン化銀粒子が現像され金属銀粒子になると、粒子から粒子へと電気が流れていくには接触面積ができるだけ大きくなる必要がある。そのためには粒子サイズが小さい程よいが、小さい粒子は凝集して大きな塊状になりやすく、接触面積は逆に少なくなってしまうので最適な粒子径が存在する。
【0024】
ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。ハロゲン化銀粒子の大きさは、ハロゲン化銀粒子の調製時の温度、pAg、粒子径コントロール剤、例えば、1−フェニル−5メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、テトラザインデン化合物類、核酸誘導体類、チオエーテル化合物類等を適宜組み合わせて使用することができる。
【0025】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状等)、八面体状、14面体状等、さまざまな形状であることができる。感度を高くするために、アスペクト比が2以上や、4以上、さらに8以上であって16以下であるような平板粒子も好ましく使用することができる。粒子サイズの分布は広くても狭くてもよいが、高い導電性を得て開口率を大きくするには狭い分布が好ましい。写真業界で知られる単分散度で100以下、さらには30以下が好ましい。粒子の形状は、電気が流れやすくするための観点からは生成した粒子間の接触面積が大きい程よいので、扁平でアスペクト比が大きい程よいが、アスペクト比を大きくすると濃度が出にくくなるので最適なアスペクト比が存在する。
【0026】
本発明に用いられるハロゲン化銀は、さらに他の元素を含有していてもよい。例えば、写真乳剤において、硬調な乳剤を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特に、ロジウムイオン、ルテニウムイオンやイリジウムイオン等の遷移金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。ロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンは、各種の配位子を有する化合物であることもできる。そのような配位子としては、例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオン等を挙げることができる。具体的な化合物の例としては、臭化ロジウム酸カリウムやイリジウム酸カリウム等が挙げられる。
【0027】
本発明において、ハロゲン化銀に含有されるロジウム化合物及び/またはイリジウム化合物の含有率は、ハロゲン化銀中の銀のモル数に対して10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0028】
その他、本発明ではPdイオン、PtイオンPd金属及び/またはPt金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。PdやPtはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/またはPd金属の含有率は、ハロゲン化銀中の銀のモル数に対して10-6〜0.1モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0029】
本発明では、さらに感度を向上させるため写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感としては、例えば、金、パラジウム、白金増感等の貴金属増感、無機イオウ、または有機イオウ化合物によるイオウ増感等のカルコゲン増感、塩化錫、ヒドラジン等還元増感等を利用することができる。
【0030】
化学増感されたハロゲン化銀粒子を分光増感することができる。好ましい分光増感色素としては、シアニン、カルボシアニン、ジカルボシアニン、複合シアニン、ヘミシアニン、スチリール色素、メロシアニン、複合メロシアニン、ホロポーラー色素等を挙げることができ、当業界で用いられている分光増感色素を単用、あるいは併用して使用することができる。
【0031】
特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素及び複合メロシアニン色素である。これらの色素類には、その塩基性異節環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも通用できる。即ち、ピロリン核、オキサゾリン核、チアゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核及びこれらの核に脂環式炭化水素環が融合した核、及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ちインドレニン核、ベンズインドレニン核、インドール核、ベンズオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンズイミダゾール核、キノリン核等である。これらの核は、炭素原子上で置換されてもよい。メロシアニン色素または複合メロシアニン色素には、ケトメチレン構造を有する核として、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核等の5から6員の複素環核を適用することができる。特に好ましい増感色素は近赤外増感色素である。これらの色素は特開2000−347343号、同2004−037711号及び同2005−134710号の各公報を参考にすることができる。特に好ましい具体例を下記に示す。
【0032】
【化1】

【0033】
これらの増感色素は単独で用いてもよいが、組み合わせて用いてもよい。増感色素の組み合わせは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0034】
これらの増感色素をハロゲン化銀乳剤中に含有させるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、プロパノール、メチルセロソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤へ添加してもよい。また、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22089号の各公報等に記載のように酸または塩基を共存させて水溶液としたり、米国特許第3,822,135号、同4,006,025号の各明細書等に記載のようにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤を共存させて水溶液、あるいはコロイド分散物としたものを乳剤へ添加してもよい。また、フェノキシエタノール等の実質上、水と非混和性の溶媒に溶解した後、水または親水性コロイド分散したものを乳剤に添加してもよい。特開昭53−102733号、同58−105141号の各公報に記載のように親水性コロイド中に直接分散させ、その分散物を乳剤に添加してもよい。
【0035】
ハロゲン化銀粒子を硬調化する方法として、塩化銀含有量を高くして粒径の分布を狭くする方法等があるが、製版用ではさらに硬調にするためにヒドラジン化合物やテトラゾリウム化合物を硬調化剤として使用することが知られている。ヒドラジン化合物は−NHNH−基を有する化合物であり、代表的なものを下記一般式で示す。
【0036】
T−NHNHCO−V、T−NHNHCOCO−V
式中、Tは各々置換されてもよいアリール基、ヘテロ環基を表す。Tで表されるアリール基はベンゼン環やナフタレン環を含むもので、この環は置換基を有してもよく、好ましい置換基として直鎖、分岐のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20のメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ドデシル基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数2〜21のメトキシ基、エトキシ基等)、脂肪族アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜21のアルキル基を持つ、アセチルアミノ基、ヘプチルアミノ基等)、芳香族アシルアミノ基等が挙げられ、これらの他に、例えば、上記のような置換または未置換の芳香族環が−CONH−、−O−、−SO2NH−、−NHCONH−、−CH2CHN−、等の連結基で結合しているものも含む。Vは水素原子、置換されてもよいアルキル基(メチル基、エチル基、ブチル、トリフロロメチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(ピリジル基、ピペリジル基、ピロリジル基、フラニル基、チオフェン基、ピロール基等)を表す。
【0037】
ヒドラジン化合物は、米国特許第4,269,929号明細書の記載を参考にして合成することができる。ヒドラジン化合物はハロゲン化銀粒子層中、またはハロゲン化銀粒子層に隣接する親水性コロイド層中、さらには他の親水性コロイド層中に含有せしめることができる。特に好ましいヒドラジンの化合物を下記に挙げる。
【0038】
(H−1):1−トリフロロメチルカルボニル−2−{〔4−(3−n−ブチルウレイド)フェニル〕}ヒドラジン
(H−2):1−トリフロロメチルカルボニル−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(H−3):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(H−4):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニルスルホンアミドフェニル}ヒドラジン
(H−5):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−(4−(3−(4−クロロフェニル−4−フェニル−3−チア−ブタンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニル)ヒドラジン
(H−6):1−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−アミノ−オキザリル)−2−(4−(3−チア−6,9,12,15−テトラオキサトリコサンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニルヒドラジン
(H−7):1−(1−メチレンカルボニルピリジニウム)−2−(4−(3−チア−6,9,12,15−テトラオキサトリコサンアミド)ベンゼンスルホンアミド)フェニルヒドラジンクロライド。
【0039】
ヒドラジン化合物はT基としてスルホンアミドフェニル基、V基としてトリフロロメチル基が置換されているものが特に好ましい。またヒドラジンに結合するオキザリル基には、置換されてもよいピペリジルアミノ基が特に好ましい。テトラゾリウム化合物の具体例を下記に示す。
【0040】
(T−1):2,3−ジ(p−メチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−2):2,3−ジ(p−エチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−3):2,3,5−トリ−p−メチルフェニルテトラゾリウムクロリド
(T−4):2,3−ジフェニル−5−(p−メトキシフェニル)テトラゾリウムクロリド
(T−5):2,3−ジ(o−メチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−6):2,3,5−トリ−p−メトキシフェニルテトラゾリウムクロリド
(T−7):2,3−ジ(o−メチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−8):2,3−ジ(m−メチルフェニル)−5−フェニルテトラゾリウムクロリド
(T−9):2,3,5−トリ−p−エトキシメチルフェニルテトラゾリウムクロリド。
【0041】
これらのテトラゾリウム化合物は特公平5−58175号公報の記載を参考に使用することができ、ヒドラジン化合物と併用することもできる。
【0042】
硬調化剤としてヒドラジンを使用するときに、ヒドラジンの還元作用を強化するためにアミン化合物またはピリジン化合物が使用される。代表的なアミン化合物は、少なくとも一つの窒素原子を含む下記一般式で表すことができる。
【0043】
R−N(Z)−Q、R−N(Z)−L−N(W)−Q
式中のR、Q、Z、Wは炭素数2〜30の置換されてもよいアルキル基を表す。また、これらのアルキル基鎖は窒素、硫黄、酸素等のヘテロ原子で結合されてもよい。RとZ、あるいはQとWは、互いに飽和及び不飽和の環を形成してもよい。Lは2価の連結基を表す。この連結基の中には、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子が含まれてもよい。Lの連結基の中の炭素数は1から200まで可能であり、硫黄原子は1から30まで、窒素原子は1から20まで、酸素原子は1から40までであるが、特に限定されるものではない。これらのアミン化合物の具体例を下記に示す。
【0044】
(A−1):ジエチルアミノエタノール
(A−2):ジメチルアミノ−1
(A−3):2−プロパンジオール
(A−4):5−アミノ−1−ペンタノール
(A−5):ジエチルアミン
(A−6):メチルアミン
(A−7):トリエチルアミン
(A−8):ジプロピルアミン
(A−9):3−ジメチルアミノ−1−プロパノール
(A−10):1−ジメチルアミノ−2−プロパノール
(A−11):ビス(ジメチルアミノテトラエトキシ)チオエーテル
(A−12):ビス(ジエチルアミノペンタエトキシ)チオエーテル
(A−13):ビス(ピペリジノテトラエトキシ)チオエーテル
(A−14):ビス(ピペリジノエトキシエチル)チオエーテル
(A−15):ビス(ニペコチンジエトキシ)チオエーテル
(A−16):ビス(ジシアノエチルアミノジエトキシ)エーテル
(A−17):ビス(ジエトキシエチルアミノテトラエトキシ)エーテル
(A−18):5−ジブチルアミノエチルカルバモイルベンゾトリアゾール
(A−19):5−モルホリノエチルカルバモイルベンゾトリアゾール
(A−20):5−(2−メチルイミダゾール−2−エチレン)カルバモイルベンゾトリアゾール
(A−21):5−ジメチルアミノエチルウレイレンベンゾトリアゾール
(A−22):5−ジエチルアミノエチルウレイレンベンゾトリアゾール
(A−23):1−ジエチルアミノ−2−(6−アミノプリン)エタン
(A−24):1−(ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾール
(A−25):1−ピペリジノエチル5−メルカプトテトラゾール
(A−26):1−ジメチルアミノ−5−メルカプトテトラゾール
(A−27):2−メルカプト−5−ジメチルアミノエチルチオチアジアゾール
(A−28):1−メルカプト−2−モルホリノエタン。
【0045】
ヒドラジン化合物の還元作用を促進するアミン化合物としては、分子中にピペリジン環またはピロリジン環が少なくとも1個、チオエーテル結合が少なくとも1個、エーテル結合が少なくとも2個あることが特に好ましい。
【0046】
ヒドラジンの還元作用を促進する化合物として、ピリジニウム化合物やホスホニウム化合物がアミン化合物の他に使用される。オニウム化合物は正電荷を帯びているため、負電荷に帯電しているハロゲン化銀粒子に吸着して、現像時の現像主薬からの電子注入を促進することにより硬調化を促進するものと考えられている。好ましいピリジニウム化合物は、特開平5−53231号、同6−242534号の各公報のビスピリジニウム化合物を参照することができる。特に好ましいピリジニウム化合物は、ピリジニウムの1位または4位で連結してビスピリジニウム体を形成しているものである。塩においては、ハロゲンアニオンとして塩素イオンや臭素イオン等が好ましく、他に4フッ化ホウ素イオン、過塩素酸イオン等が挙げられるが、塩素イオンまたは4フッ化ホウ素イオンが好ましい。下記に好ましいビスピリジニウム化合物を示す。
【0047】
(B−1):1,1′−ジメチル−4,4′−ビピリジニウムジクロライド
(B−2):1,1′−ジベンジル−4,4′−ビピリジニウムジクロライド
(B−3):1,1′−ジヘプチル−4,4′−ビピリジニウムジクロライド
(B−4):1,1′−ジ−n−オクチル−4,4′−ビピリジニウムジクロライド
(B−5):4,4′−ジメチル−1,1′−ビピリジニウムジクロライド
(B−6):4,4′−ジベンジル−1,1′−ビピリジニウムジクロライド
(B−7):4,4′−ジヘプチル−1,1′−ビピリジニウムジクロライド
(B−8):4,4′−ジ−n−オクチル−1,1′−ビピリジニウムジクロライド
(B−9):ビス(4,4′−ジアセトアミド−1,1′−テトラメチレンピリジニウム)ジクロライド。
【0048】
ヒドラジン化合物は高濃度部の硬調化に作用するが、脚部の硬調化が不十分であるため、これを改良する試みとして、現像時に生成する現像主薬の酸化体を利用する技術を使用してもよい。現像主薬の酸化体と反応するレドックス化合物を存在させて、この化合物から脚部を抑制する抑制剤を放出させることにより画像の鮮明性を高めるのである。現像主薬の酸化体の発生は現像の進行により発生するので、粒子の還元速度と関係がある。化学増感剤で還元速度の早い現像核を形成しておくと、この効果を高めることができるので、よい化学増感剤を使用するのが好ましい。レドックス化合物を使用すると、画像のエッジを鋭くするので粒子間隔を狭め銀の金属線の抵抗を下げることができる。
【0049】
レドックス化合物は、レドックス基としてハイドロキノン類、カテコール類、ナフトハイドロキノン類、アミノフェノール類、ピラゾリドン類、ヒドラジン類、レダクトン類等を有する。好ましいレドックス化合物は、レドックス基として−NHNH−基を有する化合物であり、次の一般式で示すものが代表的である。
【0050】
T−NHNHCO−V−(Time)n−PUG
T−NHNHCOCO−V−(Time)n−PUG
式中、T及びVは前記ヒドラジン化合物と同義の基を表す。PUGは写真有用性基を表し、例えば、5−ニトロインダゾール、4−ニトロインダゾール、1−フェニルテトラゾール、1−(3−スルホフェニル)テトラゾール、5−ニトロベンズトリアゾール、4−ニトロベンゾトリアゾール、5−ニトロイミダゾール、4−ニトロイミダゾール等が挙げられる。これらの現像抑制化合物は、T−NHNH−CO−のCO部位にNやS等のヘテロ原子を介して直接または(Time)で表される、アルキレン、フェニレン、アラルキレン、アリール基を介してさらにNやSのヘテロ原子を介して接続することができる。その他に、バラスト基がついたハイドロキノン化合物にトリアゾール、インダゾール、イミダゾール、チアゾール、チアジアオール等の現像抑制基を導入したものも使用できる。
【0051】
例えば、2−(ドデシルエチレンオキサイド)チオプロピオン酸アミド−5−(5−ニトロインダゾール−2−イル)ハイドロキノン、2−(ステアリルアミド)−5−(1−フェニルテトラゾール−5−チオ)ハイドロキノン、2−(2,4−ジ−t−アミルフェノプロピオン酸アミド)−5−(5−ニトロトリアゾール−2−イル)ハイドロキノン、2−ドデシルチオ−5−(2−メルカプトチオチアジアゾール−5−チオ)ハイドロキノン等が挙げられる。なお、nは1または0を表す。レドックス化合物は、米国特許第4,269,929号明細書の記載を参考にして合成することができる。
【0052】
特に好ましいレドックス化合物を下記に挙げる。
【0053】
(R−1):1−(4−ニトロインダゾール−2−イル−カルボニル)−2−{〔4−(3−n−ブチルウレイド)フェニル〕}ヒドラジン
(R−2):1−(5−ニトロインダゾール−2−イル−カルボニル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tertペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(R−3):1−(4−ニトロトリアゾール−2−イル−カルボニル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニル}ヒドラジン
(R−4):1−(4−ニトロイミダゾール−2−イル−カルボニル)−2−{4−〔2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド〕フェニルスルホンアミドフェニル}ヒドラジン
(R−5):1−(1−スルホフェニルテトラゾール−4−メチルオキサゾール)−2−{3−〔1−フェニル−1′−p−クロロフェニルメタンチオグリシンアミドフェニル〕スルホンアミドフェニル}ヒドラジン
(R−6):1−(4−ニトロインダゾール−2−イル−カルボニル)−2−{〔4−(オクチル−テトラエチレンオキサイド)−チオ−グリシンアミドフェニル−スルホンアミドフェニル〕}ヒドラジン。
【0054】
ヒドラジン化合物、アミン化合物、ピリジニウム化合物、テトラゾリウム化合物及びレドックス化合物はハロゲン化銀1モル当たり1×10-6〜5×10-2モル含有するのが好ましく、特に1×10-4〜2×10-2モルが好ましい。これらの化合物の添加量を調節して、硬調化度γを6以上にすることは容易である。γはさらに乳剤の単分散性、ロジウムの使用量、化学増感等によって調節することができる。ここに、γは濃度0.1と3.0を与えるそれぞれの露光量の差に対する濃度差とする。
【0055】
これらの化合物はハロゲン化粒子を含む層、または他の親水性コロイド層に添加して使用する。水溶性の場合には水溶液にして、水不溶性の場合にはアルコール類、エステル類、ケトン類等の水に混和しうる有機溶媒の溶液としてハロゲン化銀粒子溶液、または親水性コロイド溶液に添加すればよい。また、これらの有機溶媒に溶けないときには、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等で0.01〜10μmの大きさの微粒子にして添加することができる。微粒子分散の方法は、写真添加剤である染料の固体分散の技術を好ましく応用することができる。例えば、ボールミル、遊星回転ボールミル、振動ボールミル、ジェットミル等の分散機を使用して所望の粒子径にすることができる。分散時に界面活性剤を使用すると分散後の安定性を向上させることができる。
【0056】
(バインダー)
本発明に係るハロゲン化銀粒子含有層において、ハロゲン化銀粒子を均一に分散させ、かつハロゲン化銀粒子を支持体上に担持し、ハロゲン化銀粒子含有層と支持体の接着性を確保する目的でバインダーを用いることができる。
【0057】
本発明に用いることができるバインダーには特に制限がなく、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれも用いることができるが、現像性向上の観点からは水溶性ポリマーを用いることが好ましい。本発明においては、バインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じてゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外のタンパク質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一あるいは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることができる。ハロゲン化銀粒子含有層中のバインダー量には特に制限はなく、塗布性、皮膜物性、及び電磁波遮断性能等から、最適な値を用いることができる。
【0058】
現像銀のネットワークを形成し、現像後の皮膜の導電性を高めるという観点から、本発明においては、通常の撮影用ハロゲン化銀写真感光材料よりAg/バインダー体積比を高く設定することが好ましく、粒子含有層中のバインダーの含有量はAg/バインダー体積比で0.3〜100であることが好ましく、0.5〜30であることがより好ましく、1〜15であることがさらに好ましい。
【0059】
本発明において、電磁波遮蔽機能を有する電磁波遮蔽フィルムのみではなく、近赤外線遮断の目的で近赤外線吸収染料を含む層も合わせて形成することで、複合フィルムとすることも可能である。この近赤外線吸収染料は、水分散性熱可塑性樹脂または燐酸エステルの微粒子と共にゼラチン水溶液中で分散することが好ましい。
【0060】
近赤外線吸収染料の具体例としては、ポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物等が挙げられる。
【0061】
水分散性熱可塑性樹脂は、特に水媒体中に安定して分散される樹脂を扱うのでラテックスと同義語として扱う。ラテックスとはゴムの樹等から採取される白色乳状の樹液を指していたが、乳化重合物の出現以来、合成高分子の水分散体も含めて、水性媒体の中に高分子物質が安定して分散してるものをラテックスと呼ぶようになったのでこの呼称が使用されている。
【0062】
水分散性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−イタコン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、場合によってはアクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸及びマレイン酸等のカルボン酸基を含むモノマーあるいは、ジメチルアクリルアミドプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸基等のスルホン酸基を持つモノマーを一つまたは複数組み合わせて少量使用したスチレン−ブタジエン系共重合体、スチレンーイソプレン系共重合体等が挙げられる。
【0063】
燐酸エステル化合物としては、燐酸と脂肪族アルコールまたは芳香族アルコールまたはこれらの混合アルコールとエステル化したものや、ジアルキルまたはジアリール燐酸エステルを2つ以上縮合させた縮合エステルを挙げることができる。具体的には、トリオクチル燐酸エステル、トリドデシル燐酸エステル、トリフェニル燐酸エステル、トリクレジル燐酸エステル、トリp−メチルフェニル燐酸エステル等を挙げることができる。
【0064】
本発明においては、電磁波遮断機能を有する電磁波遮蔽フィルムのみではなく、裏面側に反射防止層を設けて複合フィルムとすることも可能である。裏面側の最上層に低屈折率層を形成し、その間に高屈折率層の金属酸化物層を形成し、さらに電磁波遮断フィルムと高屈折率層との間にさらに中屈折率層(金属酸化物の含有量あるいは樹脂バインダーとの比率、金属の種類を変更して屈折率を調整した金属酸化物層)を設けることは、反射率の低減のために好ましい。
【0065】
反射防止層各層の屈折率は、低屈折率層は1.46以下が好ましく、特に1.3〜1.45であることが望ましく、高屈折率層は1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、基材フィルムの屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は1.55〜1.80であることが好ましい。
【0066】
各層の厚さは5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
【0067】
高屈折層、中屈折層に用いる無機微粒子は、金属の酸化物から形成された粒子である。金属の酸化物または硫化物の例として、二酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が挙げられる。中でも、二酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSが挙げられる。
【0068】
低屈折率層は、珪素アルコキシドを用いてゾルゲル法によって作製することができる。あるいは、フッ素樹脂を用いて低屈折率層とすることができる。特に、熱硬化性または電離放射線硬化型の含フッ素樹脂の硬化物と珪素の酸化物超微粒子から構成されることが好ましい。珪素の酸化物超微粒子は後述する多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層を有する複合粒子、あるいは内部に溶媒、気体、または多孔質物質で充填された空洞粒子であることが好ましい。
【0069】
(支持体)
本発明においては、支持体として、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を用いることができる。
【0070】
中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
【0071】
本発明においては、透明性、等方性、接着性等の観点から、支持体としてはポリエチレンテレフタレートフィルム、またはセルロースエステルフィルムを用いることが特に好ましい。
【0072】
本発明の電磁波遮断フィルムをディスプレイの表示画面に用いる場合には、高い透明性が要求されるため、支持体自体の透明性も高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルムの全可視光域の平均透過率は、好ましくは85〜100%であり、より好ましくは90〜100%である。また、本発明では色気調節剤として、前記プラスチックフィルムを本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0073】
本発明において、可視光域の平均透過率とは400〜700nmまでの可視光領域の透過率を少なくとも5nm毎に測定して求めた可視光域の各透過率を積算し、その平均値として求めたものと定義する。測定においては、測定アパチャーを前述のメッシュパターンより十分大きくとっておく必要があり、少なくともメッシュの格子面積より100倍以上大きな面積で測定して求める。
【0074】
本発明においては、可視光域による平均透過率が85%以上である態様が好ましく、より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0075】
本発明に用いる支持体の厚さには特に制限はないが、透過率の維持及び取り扱い性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。
【0076】
本発明に用いる支持体には、必要に応じてハロゲン化銀層等を塗布する前に、下引き層等を各種の支持体上に塗布する場合もある。金属塩微粒子層を薄膜で形成するためには、支持体上に事前にハレーション防止層を形成しておくことが好ましい。このハレーション防止層により、少量の金属塩微粒子でもライトパイピング現象が防止できる。
【0077】
本発明におけるハロゲン化銀粒子層を塗布する方法としては、従来より種々の方法が知られている。例えば、ディップ塗布法、ブレード塗布法、エアーナイフ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビア塗布法、リバースロール塗布法、エクストリュージョン型塗布法、スライドホッパー塗布法、スロット型カーテン塗布法、スライド型カーテン塗布法等が知られている。
【0078】
これらの塗布方式は大きく二つに大別される。一つは必要な塗布液膜を形成する量だけ塗布液を吐出させて被塗布物表面上に塗布液を塗設する前計量型塗布方式であり、代表的なものとしてエクストルージョン型塗布法、スライドホッパー型塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。もう一つは予め必要な塗膜形成量よりも余剰な塗布液を被塗布体へ供給し、その後何らかの手段により余剰塗布液を掻き落とす後計量型塗布方式であり、代表的なものとしてリバースロール塗布法、エアーナイフ塗布法、ワイヤーバー塗布法等が挙げられる。
【0079】
従来の塗布液は、塗布液のみにより目標性能を発現するため、ある程度の膜厚で塗布する必要があった。しかし、電磁波遮蔽フィルムに求められる機能は、光透過率と電磁波遮蔽機能であり、電磁波遮蔽機能は電気抵抗値に依存する。金属塩微粒子を現像して形成される金属粒子では金属粒子の間に高分子バインダーが存在し、金属同士の接触が十分でないため、電気抵抗値としては非常に高い。
【0080】
この電気抵抗低減のため物理現像または/及びメッキ処理を行っている。還元されて形成された金属粒子の役割は、物理現像及び/メッキで金属成分が成長するための核であり、付量として非常に少量で構わない。金属塩微粒子の付量として必要なのは、全面塗布に換算して0.1〜1g金属/m2が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5g金属/m2である。これ以上付量を増やしても、製品品質上のメリットは発現することはなく、材料の無駄使いとなりコストアップ要因となる。
【0081】
この0.1〜0.5g金属/m2という固形分付量を塗布後の湿潤膜厚に換算すると凡そ1.5〜4.5μmに該当し、非常に塗布膜厚として薄い領域となる。さらにコストメリットを出すためには1.5〜3μmを狙う必要がある。
【0082】
これに対し、こうした従来の塗布方式において、1.5〜3μmの薄膜化の困難さという問題点が存在する。特に前計量型塗布方式ではその塗布方式の特性や装置上の問題から薄膜化が困難の場合が多い。また、後計量型塗布方式では塗布液のロスや、塗布液の変質、一次膜形成後の被塗布物への浸透といったさまざまな問題点が存在し、1.5〜3μmで薄膜塗布できる塗布方式は未だ少ないのが現状である。
【0083】
これらの塗布方式のもう一つの大きな欠点としては、電磁波遮蔽フィルムの場合、支持体上に導電性のあるパターンが形成されれば機能発現するにもかかわらず、支持体の全面に塗布してしまうという点が挙げられる。余計な部分の塗布層は、電磁波遮蔽フィルムの透過率を低下させてしまうため、後工程でそれを取り除く必要が発生する。
【0084】
(インクジェット方式)
このような低粘度の塗布液を薄膜パターン塗布するための対応として、近年需要の増えている民生用の印刷機等に使用されているインクジェットプリンター技術を塗布液の薄膜形成に摘要することが知られている。例えば、甘利武司監修、「インクジェットプリンター技術と材料」、株式会社シーエムシー、1998年7月31日発行、p187〜200には、インクジェットヘッドから圧電振動子による可撓板の変形により塗布液をノズル吐出口から液滴として吐出させることにより、非常に微小な液滴を被塗布物に並べることによりウェット塗膜を形成すること及び一定の被覆率で塗布液が配置されたパターニングを形成することが記載されている。
【0085】
上記文献に記載されているインクジェットプリンター技術の応用として、インクジェットヘッドを使用して薄膜パターン塗布を行う技術が知られている。被塗布物の面の幅方向に直列にインクジェットヘッドを配設することにより、薄膜塗布を行うことができる。
【0086】
本発明の実施の形態を図1を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0087】
図1はインクジェットヘッドを使用した塗布装置により連続的に搬送する長尺の支持体に塗布液を塗布し、塗布層を有する支持体を製造する製造装置の模式図である。
【0088】
図中1は製造装置を示す。製造装置1は、長尺の支持体201の繰出し工程2と、塗布工程3と、乾燥工程4と、巻取り工程5とを有している。塗布工程3は、インクジェットヘッド3a1と、インクジェットヘッド3a1に金属塩微粒子含有液を溶解または分散した塗布液を供給する塗布液供給タンク3a3と、制御手段3a4とを有する塗布装置3aを有している。インクジェットヘッドは、支持体の全巾を網羅するように千鳥配置で設置する。
【0089】
本図で示される製造装置1により、繰出し工程2から巻き出され供給された支持体は、塗布工程3で金属塩微粒子を溶解または分散した塗布液をインクジェットヘッド3a1のノズル吐出口から液滴として射出し塗布された後、乾燥工程4で乾燥され塗布層を形成し、巻取り工程5で巻き取られロール状に巻き取られるようになっている。
【0090】
図1では長尺帯状支持体はバックアップロールにより支持されているが、必ずしもバックアップロールにより支持される必要はなく、フリースパンで塗布を行っても構わない。
【0091】
図1に示されるヘッドとしては特に限定はなく、例えば発熱素子を有し、この発熱素子からの熱エネルギーにより塗布液の膜沸騰による急激な体積変化によりノズルから塗布液を吐出させるサーマルヘッドでもよいし、塗布液圧力室に圧電素子を備えた振動板を有し、この振動板による塗布液圧力室の圧力変化で塗布液を吐出させる剪断モード型(ピエゾ型)インクジェットヘッドであってもよい。好ましいヘッドとしては剪断モード型(ピエゾ型)インクジェットヘッドが挙げられる。
【0092】
本来このインクジェットヘッドによる薄膜パターン塗布により電磁波遮蔽フィルムに性能を満足できるパターンが形成できることが好ましい。しかし、現状の電磁波遮蔽フィルムに望まれる線幅は10〜15μ程度に対し、インクジェットヘッドで形成できるパターンの線幅は30〜40μに留まっている。その結果、次工程としてインクジェットヘッドで形成した薄膜パターン上にさらに細線パターンで露光する必要が発生するが、開口率は50%以上のパターン形成は可能であるため、50%以上の原材料の低減が可能であり、未塗布部が形成できるため透過率としても優れた電磁波遮蔽フィルムの製造が可能となる。
【0093】
本発明では、上記経緯で導電性パターンを形成するために支持体上に設けられたパターン状ハロゲン化銀粒子含有層に細線パターン露光を行う。露光に用いられる光源としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、電子線、X線等の放射線等が挙げられるが、紫外線または近赤外線を用いる態様が好ましい。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、波長分布の狭い光源を用いてもよい。
【0094】
可視光線は、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種または2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色あるいは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。また紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0095】
また、本発明では露光は種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本発明における露光は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーまたは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。
【0096】
システムをコンパクトで迅速なものにするために、露光は半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発生光源(SHG)を用いて行うことが好ましい。特にコンパクトで迅速、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザーを用いて行うことが好ましい。
【0097】
レーザー光源としては、具体的には紫外半導体、青色半導体レーザー、緑色半導体レーザー、赤色半導体レーザー、近赤外レーザ等が好ましく用いられる。
【0098】
ハロゲン化銀粒子含有層を画像状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた集光式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、面々接触露光、近接場露光、縮小投影露光、反射投影露光等の露光方式を用いることができる。レーザーの出力は、ハロゲン化銀を感光させるのに適した量であればよいので数十μW〜5W程度でよい。
【0099】
(現像処理)
本発明では、ハロゲン化銀粒子含有層を露光した後、現像処理が行われる。現像処理液としては、現像主薬としてハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム、クロルハイドロキノン等のハイドロキノン類の他に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン等のピラゾリドン類及びN−メチルパラアミノフェノール硫酸塩等の超加成性現像主薬と併用することができる。また、ハイドロキノンを使用しないでアスコルビン酸やイソアスコルビン酸等レダクトン類化合物を上記超加成性現像主薬と併用することが好ましい。
【0100】
また、現像処理液には保恒剤として亜硫酸ナトリウム塩や亜硫酸カリウム塩、緩衝剤として炭酸ナトリウム塩や炭酸カリウム塩、現像促進剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロパンジオール等を適宜使用できる。
【0101】
本発明に係る現像処理で用いられる現像処理液は、画質を向上させる目的で画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えば、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、5−メチルベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。
【0102】
本発明においては、露光後に行われる現像処理が定着前物理現像を含んでいる態様が好ましい。ここで言う定着前物理現像とは、後述の定着処理を行う前に露光により潜像を有したハロゲン化銀粒子の内部以外から銀イオンを供給し、現像銀を補強するプロセスのことを示す。現像処理液から銀イオンを供給するための具体的な方法としては、例えば、予め現像処理液中に硝酸銀等を溶解しておき銀イオンを溶かしておく方法、あるいは現像液中に、チオ硫酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等のようなハロゲン化銀溶剤を溶解しておき、現像時に未露光部のハロゲン化銀を溶解させ、潜像を有するハロゲン化銀粒子の現像を補力する方法等が挙げられる。
【0103】
本発明においては、現像液中に予めハロゲン化銀溶剤を溶解しておく処方を用いた方が、未露光部でのカブリ発生によるフィルムの透過率低下を抑制できるため好ましい。
【0104】
本発明における現像処理においては、露光されたハロゲン化銀粒子の黒白現像終了後に、未露光部分のハロゲン化銀粒子を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を行う。
【0105】
本発明における定着処理は、ハロゲン化銀粒子を用いた写真フィルムや印画紙等で用いられる定着液処方を用いることができる。本発明に係る定着処理で使用する定着液は、定着剤としてチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等を使用することができる。定着時の硬膜剤として、硫酸アルミウム、硫酸クロミウム等を使用することができる。定着剤の保恒剤としては、現像処理液で述べた亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸等を使用することができ、その他にクエン酸、蓚酸等を使用することができる。
【0106】
本発明に使用する水洗水には、防黴剤としてN−メチル−イソチアゾール−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−5−クロロ−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−4,5−ジクロロ−3−オン、2−ニトロ−2−ブロム−3−ヒドロキシプロパノール,2−メチル−4−クロロフェノール、過酸化水素等を使用することができる。
【0107】
本発明においては、上述の現像処理によって形成された現像銀同士の接触を補助し、導電性を高めるために補力処理を行うことが好ましい。本発明において補力処理とは、現像処理中、あるいは処理後に予めハロゲン化銀感光材料中に含有されていない導電性物質源を外部から供給し、導電性を高める処理のことを指し、具体的な方法としては、例えば、物理現像、あるいはめっき処理等を挙げることができる。
【0108】
物理現像は、潜像を有するハロゲン化銀乳剤を含有する感光材料を、銀イオンあるいは銀錯イオンと還元剤を含有する処理液に浸漬することでこれを施すことができる。
【0109】
本発明においては、物理現像の現像開始点が潜像核だけでなく、現像銀が物理現像開始点となった場合についても物理現像と定義し、これを好ましく用いることができる。
【0110】
本発明において、補力処理として用いられるめっき処理には従来公知の種々のめっき方法を用いることができ、例えば、電解めっき及び無電解めっきを単独、あるいは組み合わせて実施することができる。中でも、電流分布ムラによるめっきムラが発生しない無電解めっきを好ましく用いることができる。無電解めっきに用いることができる金属としては、例えば、銅、ニッケル、コバルト、すず、銀、金、白金、その他各種合金を用いることができるが、めっき処理が比較的容易であり、かつ高い導電性を得やすいという観点から、銅無電解めっきを用いることが特に好ましい。
【0111】
なお、補力処理は現像中、現像後定着前、定着処理後のいずれのタイミングにおいても実施可能であるが、フィルムの透明性を高く維持するという観点から、定着処理後に実施する態様が好ましい。
【0112】
本発明においては、現像処理あるいは補力処理後に酸化処理を行うことが好ましい。酸化処理により、不要な金属成分をイオン化して溶解除去することが可能となり、フィルムの透過率をより高めることが可能となる。
【0113】
本発明においては、高い透光性と高い電磁波遮断性能を付与するために格子状の細線パターンを露光により描画し、次いで現像処理等を行うことで導電性のメッシュパターンを形成する態様が好ましい。上記導電性金属部の線幅は20μm以下、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部はアース接続等の目的においては、線幅は20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は18μm未満であることが好ましく、15μm未満であることがより好ましく、14μm未満であることがさらに好ましく、10μm未満であることがさらにより好ましく、7μm未満であることが最も好ましい。
【0114】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とはメッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は95%である。
【実施例】
【0115】
以下に、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0116】
実施例
〔電磁波遮蔽フィルム1の作製〕
《ハロゲン化銀含有液の調製》
水媒体中のAg100gに対してゼラチン100gを含む、球相当径平均0.044μmの沃臭化銀粒子(I=2.5モル%)を含有する乳剤を調製した。この際、Ag/ゼラチン質量比は10/1とし、ゼラチン種としては平均分子量4万のアルカリ処理低分子量ゼラチンを用いた。
【0117】
また、この乳剤中には臭化ロジウム酸カリウム及び塩化イリジウム酸カリウムを濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤に塩化パラジウム酸ナトリウムを添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、近赤外増感色素(S−1)をハロゲン化銀1モル当たり10-4モル添加し、近赤外増感した後、硬調化剤としてヒドラジン(H−2)、促進剤のアミン化合物(A−10)を加えた。
【0118】
なお、ハロゲン化銀粒子径は、仕込み時の温度(25℃)により44nmとなるように作製した。
【0119】
《ハロゲン化銀含有液の塗布》
支持体としてポリエチレンテレフタレートを使用し、全面塗布に換算してハロゲン化銀含有液の塗布量が0.30g銀/m2となるように、インクジェットヘッドによりライン/スペース=35μm/215μm(開口率84%)で塗布した。開口率84%のため、実際のハロゲン化銀含有液の塗布量は、0.049g銀/m2となる。
【0120】
《露光/現像》
ハロゲン化銀含有液を塗布、乾燥した塗布膜に、ライン/スペース=5μm/245μmの現像銀を与えうる格子状の描画パターンを与えるイメージセッタ(ライン/スペース=5μm/245μm、ピッチ250μm)を使用して近赤外半導体レーザ露光(810nm)し、下記の現像液を用いて25℃で45秒間現像し、さらに定着液を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0121】
(現像液組成)
ハイドロキノン 30g
1−フェニル−3,3−ジメチルピラゾリドン 1.5g
臭化カリウム 3.0g
亜硫酸ナトリウム 50g
水酸化カリウム 30g
硼酸 10g
N−n−ブチルジエタノールアミン 15g
水を加えて1Lとし、pHは10.20に調整した。
【0122】
(定着液組成)
チオ硫酸アンモニウム72.5質量%水溶液 240ml
亜流酸ナトリウム 17g
酢酸ナトリウム・3水塩 6.5g
硼酸 6.0g
クエン酸ナトリウム・2水塩 2.0g
酢酸90質量%水溶液 13.6ml
硫酸50質量%水溶液 4.7g
硫酸アルミニウム(Al23換算含量が8.1質量/体積%の水溶液) 26.5g
水を加えて1Lとし、pHを5.0に調整した。
【0123】
《物理現像》
下記物理現像液を用いて、25℃、300秒間の物理現像を行い、ついで水洗処理を行った。
【0124】
(物理現像液)
純水 800ml
クエン酸 5g
ハイドロキノン 7g
硝酸銀 3g
水を加えて全量を1Lとする。
【0125】
《電解メッキ》
下記電解メッキ液を用い、25℃、3A/cm2の条件で電解メッキ処理を行い、5μmの電解銅メッキ膜を形成し、電磁波遮蔽フィルム1を作製した。
【0126】
硫酸銅 80g
硫酸 200g
塩素イオン 50ppm
水を加えて全量1Lとする。
【0127】
〔電磁波遮蔽フィルム2の作製〕
《ハロゲン化銀含有液の調製》
電磁波遮蔽フィルム1と同じ、ハロゲン化銀含有液を使用した。
《ハロゲン化銀含有液の塗布》
支持体としてポリエチレンテレフタレートを使用し、全面塗布に換算してハロゲン化銀含有液の塗布量が0.80g銀/m2となるように、インクジェットヘッドによりライン/スペース=40μm/210μm(開口率81%)で塗布した。開口率81%のため、実際のハロゲン化銀含有液の塗布量は、0.15g銀/m2となる。
【0128】
《露光/現像》
ハロゲン化銀含有液を塗布、乾燥した塗布膜に、ライン/スペース=5μm/245μmの現像銀を与えうる格子状の描画パターンを与えるイメージセッタ(ライン/スペース=5μm/2455μm、ピッチ250μm)を使用して近赤外半導体レーザ露光(810nm)し、電磁波遮蔽フィルム1と同じ現像液を用いて25℃で45秒間現像し、電磁波遮蔽フィルム1と同じ定着液を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0129】
《無電解メッキ》
下記Pd触媒液、無電解メッキ液を用い、無電解メッキを行い、3μmの無電解銅メッキ膜を形成した。
【0130】
(Pd触媒液)
硫酸パラジウム 20mg
水を加えて全量を1リットルとする。
【0131】
(無電解銅メッキ液)
硫酸銅 0.04モル
ホルムアルデヒド(37質量%) 0.08モル
水酸化ナトリウム 0.10モル
トリエタノールアミン 0.05モル
ポリエチレングリコール 100ppm
水を加えて全量を1リットルとする。
【0132】
《電解メッキ》
下記電解メッキ液を用い、25℃、3A/cm2の条件で電解メッキ処理を行い、2μmの銅メッキ膜を形成し、電磁波遮蔽フィルム2を作製した。
【0133】
(電解銅メッキ液)
硫酸銅 80g
硫酸 200g
塩素イオン 50ppm
水を加えて全量1Lとする。
【0134】
〔電磁波遮蔽フィルム3の作製〕
《ハロゲン化銀含有液の調製》
電磁波遮蔽フィルム1と同じ、ハロゲン化銀含有液を使用した。
《ハロゲン化銀含有液の塗布》
支持体としてポリエチレンテレフタレートを使用し、全面塗布に換算してハロゲン化銀含有液の塗布量が0.80g銀/m2となるように、インクジェットヘッドによりライン/スペース=50μm/200μm(開口率75%)で塗布した。開口率75%のため、実際のハロゲン化銀含有液の塗布量は、0.20g銀/m2となる。
【0135】
《露光/現像》
ハロゲン化銀含有液を塗布、乾燥した塗布膜に、ライン/スペース=5μm/2455μmの現像銀を与えうる格子状の描画パターンを与えるイメージセッタ(ライン/スペース=5μm/245μm、ピッチ250μm)を使用して近赤外半導体レーザ露光(810nm)し、電磁波遮蔽フィルム1と同じ現像液を用いて25℃で45秒間現像し、電磁波遮蔽フィルム1と同じ定着液を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0136】
《電解メッキ》
下記電解メッキ液を用い、25℃、1A/cm2の条件で電解メッキ処理を行い、2μmの銅メッキ膜を形成し、3A/cm2の条件に変更し、さらに3μmの銅メッキ膜を形成し、トータル5μmのメッキ膜として、電磁波遮蔽フィルム3を作製した。
【0137】
(電解銅メッキ液)
硫酸銅 80g
硫酸 200g
塩素イオン 50ppm
水を加えて全量1Lとする
〔電磁波遮蔽フィルム4の作製〕
《ハロゲン化銀含有液の調製》
電磁波遮蔽フィルム1と同じ、ハロゲン化銀含有液を使用した。
【0138】
《ハロゲン化銀含有液の塗布》
支持体としてポリエチレンテレフタレートを使用し、ハロゲン化銀含有液の塗布量が0.80g銀/m2となるように、インクジェットヘッドにより全面塗布した。開口率0%のため、実際のハロゲン化銀含有液の塗布量も、0.80g銀/m2となる。
【0139】
《露光/現像》
ハロゲン化銀含有液を塗布、乾燥し塗布膜に、ライン/スペース=5μm/245μmの現像銀を与えうる格子状の描画パターンを与えるイメージセッタ(ライン/スペース=5μm/245μm、ピッチ250μm)を使用して近赤外半導体レーザ露光(810nm)し、電磁波遮蔽フィルム1と同じ現像液を用いて25℃で45秒間現像し、電磁波遮蔽フィルム1と同じ定着液を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0140】
《電解メッキ》
下記電解メッキ液を用い、25℃、1A/cm2の条件で電解メッキ処理を行い、2μmの銅メッキ膜を形成し、3A/cm2の条件に変更し、さらに3μmの銅メッキ膜を形成し、トータル5μmのメッキ膜として、電磁波遮蔽フィルム4を作製した。
【0141】
(電解銅メッキ液)
硫酸銅 80g
硫酸 200g
塩素イオン 50ppm
水を加えて全量1Lとする。
【0142】
〔電磁波遮蔽フィルム5の作製〕
《ハロゲン化銀含有液の調製》
電磁波遮蔽フィルム1と同じ、ハロゲン化銀含有液を使用した。
【0143】
《ハロゲン化銀含有液の塗布》
支持体としてポリエチレンテレフタレートを使用し、ハロゲン化銀含有液の塗布量が5.0g銀/m2となるように、スライドホッパー型塗布装置により全面塗布した。開口率0%のため、実際のハロゲン化銀含有液の塗布量も、5.0g銀/m2となる。
【0144】
《露光/現像》
ハロゲン化銀含有液を塗布、乾燥した塗布膜に、ライン/スペース=5μm/245μmの現像銀を与えうる格子状の描画パターンを与えるイメージセッタ(ライン/スペース=5μm/245μm、ピッチ250μm)を使用して近赤外半導体レーザ露光(810nm)し、電磁波遮蔽フィルム1と同じ現像液を用いて25℃で45秒間現像し、電磁波遮蔽フィルム1と同じ定着液を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0145】
《物理現像》
下記物理現像液を用いて、25℃、300秒間の物理現像を行い、ついで水洗処理を行った。
【0146】
(物理現像液)
純水 800ml
クエン酸 5g
ハイドロキノン 7g
硝酸銀 3g
水を加えて全量を1Lとする。
【0147】
《電解メッキ》
下記電解メッキ液を用い、25℃、3A/cm2の条件で電解メッキ処理を行い、5μmの電解銅メッキ膜を形成し、電磁波遮蔽フィルム5を作製した。
【0148】
硫酸銅 80g
硫酸 200g
塩素イオン 50ppm
水を加えて全量1Lとする。
【0149】
〔電磁波遮蔽フィルムの評価〕
上記作製した電磁波遮蔽フィルムについて、下記のような評価を行った。
【0150】
(透過率)
日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて、可視光域における平均透過率を測定した。可視光域の平均透過率とは、400〜700nmの可視光域の透過率を5nm毎に測定して求めた各透過率を積算し、その平均値である。測定においては、測定アパチャーをメッシュパターンより十分大きくとっておく必要があり、メッシュの格子面積より100倍以上大きな面積で測定して求めた。
【0151】
○:平均透過率が90%以上
△:平均透過率が85%以上、90%未満
×:平均透過率が85%未満
(電気抵抗値)
電磁波遮蔽能は表面抵抗値で表すことができる。表面抵抗値はダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて測定した。
【0152】
○:表面抵抗値が0.2Ω/□以下
△:表面抵抗値が0.2Ω/□を超え、10Ω/□以下
×:表面抵抗値が10Ω/□を超える
(製造コスト)
○:材料コストが低い
×:材料コストが高い
評価の結果を表1に示す。
【0153】
【表1】

【0154】
表より、本発明の電磁波遮蔽フィルムは比較例に比べ高い電磁波遮蔽性及び透過率を有し、かつ製造コストが安いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】インクジェットヘッドを使用した塗布装置により連続的に搬送する長尺の帯状支持体に塗布液を塗布し、塗布層を有する帯状支持体を製造する製造装置の模式図である。
【符号の説明】
【0156】
1 製造装置
2 供給工程
201 帯状支持体
3 塗布工程
3a 塗布装置
3a1、3a11、3a12 インクジェットヘッド
3a2 バックアップロール
3a3 塗布液供給タンク
3a31 加圧手段
3a41、3a42 供給管
4 乾燥工程
5 巻取工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、光透過部とパターン状金属部とを有する電磁波遮蔽フィルムであって、該光透過部はバインダーを有さず、該パターン状金属部はバインダーが付着していることを特徴とする電磁波遮蔽フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法であって、透明支持体上に金属塩微粒子を含有する塗布液をパターン状に塗布する工程、乾燥する工程、パターン状塗布部に対して該パターン状塗布部の線幅よりも細い線にてパターン状露光する工程、現像処理にてパターン状金属像を形成する工程、及び、物理現像及び/またはメッキ処理により該パターン状金属像の導電性を高める工程からなることを特徴とする電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記パターン状に塗布する工程をインクジェット方式にて実施することを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記金属塩微粒子を含有する塗布液の塗布量が、全面塗布に換算して0.1〜1g金属/m2であることを特徴とする請求項3に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記金属塩微粒子がハロゲン化銀であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記塗布液がバインダーを含有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記透明支持体がハレーション防止層を有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記メッキ処理を行う場合、まず無電解メッキを行い、その後電解メッキを行うことを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記メッキ処理を行う場合、まず弱電流の電解メッキ処理を行い、その後強電流の電解メッキ処理を行うことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項3〜7のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽フィルムの製造方法に用いられる電磁波遮蔽フィルムの製造装置であって、少なくとも、インクジェットヘッドを備えたパターン状塗布部、該パターン状塗布部の位置を検出して塗布部にパターン状露光する露光部、現像処理部、及び、物理現像処理及び/またはメッキ処理部を有することを特徴とする電磁波遮蔽フィルムの製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−84912(P2008−84912A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260210(P2006−260210)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】