電磁超音波探傷法およびそれに用いる電磁超音波トランスジューサ
【課題】フィン付伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができ、しかも、検査に時間がかからず、水等の接触媒質を必要とせず、前処理に時間とコストがかからない電磁超音波探傷法を提供する。
【解決手段】空冷式熱交換器の埋込式フィン付伝熱管2内部を軸方向に沿ってEMAT1を移動させながら、このEMAT1から電磁気力を利用して軸対称SH波3を発生させ埋込式フィン付伝熱管2の管本体11を振動させて共鳴を起こさせ、この共鳴周波数をEMAT1で検出し、この検出結果が、上記管本体11の肉厚が正常である場合の共鳴周波数と異なる場合に、上記管本体11の内面に腐食部が発生していると判断するようにしている。
【解決手段】空冷式熱交換器の埋込式フィン付伝熱管2内部を軸方向に沿ってEMAT1を移動させながら、このEMAT1から電磁気力を利用して軸対称SH波3を発生させ埋込式フィン付伝熱管2の管本体11を振動させて共鳴を起こさせ、この共鳴周波数をEMAT1で検出し、この検出結果が、上記管本体11の肉厚が正常である場合の共鳴周波数と異なる場合に、上記管本体11の内面に腐食部が発生していると判断するようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式熱交換器の埋込式フィン付伝熱管内部の腐食を検査するための電磁超音波探傷法およびそれに用いる電磁超音波トランスジューサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空冷式熱交換器のフィン付伝熱管内面が腐食し、この腐食が進行すると、管内を通る流体が管外に漏れ出す等の恐れがあるため、フィン付伝熱管内面の腐食検査が行われている。
【0003】
従来から行われているフィン付伝熱管内面の腐食検査の手法としては、プローブ内のコイルから発生させた交流磁束を利用して探傷を行う渦流探傷法(例えば、特許文献1参照)や振動子を振動させて発生させた超音波を利用して探傷を行う超音波探傷法(例えば、特許文献2参照)があげられる。
【特許文献1】特開2002−296241号公報
【特許文献2】特開2001−50936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、渦流探傷法では、管がフィン付であると、このフィンが障害となり、管内面の腐食を高い精度で検査することができないため、フィン付伝熱管内面の腐食検査には渦流探傷法を適用することができなかった。一方、超音波探傷法では、1本の伝熱管の検査に時間がかかるために検査スピードが遅く、短い時間内に全数検査ができない。しかも、検査を行うには伝熱管内を水で満たさなければならないため、脱水等の後処理が必要になるうえ、伝熱管内を通る流体の種類によっては水が使えない場合もある。しかも、検査精度を高くするためには伝熱管内面のスケールを除去する必要があり、この除去作業等の前処理にも時間とコストがかかる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、埋込式フィン付伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができ、しかも、検査に時間がかからず、水等の接触媒質を必要とせず、前処理に時間とコストがかからない電磁超音波探傷法およびそれに用いる電磁超音波トランスジューサの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、空冷式熱交換器の埋込式フィン付伝熱管内部を軸方向に沿って電磁超音波トランスジューサを移動させながら、この電磁超音波トランスジューサから電磁気力を利用して軸対称SH波を発生させ埋込式フィン付伝熱管の管本体を振動させて共鳴を起こさせ、この共鳴周波数を電磁超音波トランジューサで検出し、この検出結果が、上記管本体の肉厚が正常である場合の共鳴周波数と異なる場合に、上記管本体の内面に腐食部が発生していると判断するようにした電磁超音波探傷法を第1の要旨とし、円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなり、上記永久磁石ユニットの両端面に、互いに交差する複数条のスリットが切欠き形成されている電磁超音波トランジューサを第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、本発明者らは、空冷式熱交換器のフィン付伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができる探傷法について鋭意研究をした結果、フィン付伝熱管が埋込式フィン付伝熱管である場合に、電磁超音波トランスジューサ(以下、「EMAT」という)を用い、このEMATを埋込式フィン付伝熱管内部にその軸方向に沿って移動させながら、上記EMATから電磁気力を利用して軸対称SH波を発生させ埋込式フィン付伝熱管の管本体を振動させて共鳴を起こさせ、この共鳴周波数を上記EMATで検出することにより、上記共鳴周波数を高い精度で検出できることを突き止め、上記検出された共鳴周波数と、上記管本体の肉厚が正常である場合の共鳴周波数とを比較し、上記検出された共鳴周波数が正常である場合の共鳴周波数と異なる場合に、上記管本体の内面に腐食部が発生していると判断することにすれば、伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができることを見出し、本発明に到達した。しかも、上記EMATを用いると、従来の超音波探傷法より短時間で探傷を行うことができ、コストの削減と工程内での全数検査が可能となる。しかも、上記EMATは、水等の接触媒質を必要としないため、管本体内の後処理(脱水等)が不要であるうえ、伝熱管内を通る流体がどのような種類であっても、探傷を行うことができる。さらに、上記EMATは、非接触探傷であるため、管本体の内面にスケール等が付着した状態でも腐食検査が可能であり、前処理時間を短縮し、前処理コストを削減することができる。なお、本発明において、フィン付伝熱管を埋込式フィン付伝熱管に限定しているのは、フィン付伝熱管の管本体の外周部(その全体もしくはその一部)に、フィンと一体成形された外層を有するタイプのフィン付伝熱管(例えば、L字型巻き付け式フィン付伝熱管)では、上記外層の影響により、上記外層が形成された上記管本体の部分で、上記共鳴周波数が発生しないためである。
【0008】
一方、本発明のEMATは、円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなっている。したがって、上記送信用コイルに高周波電流を流すと、埋込式フィン付伝熱管の管本体に軸対称SH波を発生させて上記管本体を振動させるとともに、この管本体内で共鳴を起こさせ、この共鳴周波数を上記EMATの受信用コイルで検出することができ、本発明の電磁超音波探傷法のEMATとして用いることができる。しかも、上記永久磁石ユニットの両端面(軸方向の両端面)に、互いに交差する複数条のスリットが切欠き形成されているため、上記スリットによりS/N比(信号対雑音比)が向上し、ノイズが減少する。この場合に、上記永久磁石ユニットの外周面の両端部(軸方向の両端部)に、その周方向に延びる円環状のスリットを形成すると、S/N比が一層向上するため、より好ましい。なお、上記スリットは、凹溝形状(平底形状)が好ましく、上記両端面に形成する場合にも、これに加えて上記外周面の両端部に形成する場合にも、各方向に1本もしくは2本以上あればよい。なお、本発明において、「互いに交差する」とは、互いに傾斜した状態で交差していてもよいし、互いに直交していてもよいが、互いに直交している場合のほうが、S/N比は向上する。
【0009】
また、本発明の電磁超音波探傷法において、上記埋込式フィン付伝熱管のチューブ本体が炭素鋼(強磁性体)からなり、フィンがアルミニウム等の非鉄材料からなっていると、一般的に用いられる埋込式フィン付伝熱管に対して本発明の電磁超音波探傷法を行うことができる。
【0010】
また、本発明の電磁超音波探傷法において、上記軸対称SH波の共振次数が一次モードであると、最も低次のモードを用いているため、埋込式フィンチューブのチューブ内面の腐食を検査するのに適しており、高い精度で検査することができる。
【0011】
また、本発明の電磁超音波探傷法において、上記EMATが、円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなると、上記したように、本発明の電磁超音波探傷法のEMATとして用い、埋込式フィン付伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1は本発明の電磁超音波探傷法の一実施の形態に用いる電磁超音波探傷装置を示している。図において、1は略円筒形状のEMATであり、埋込式フィン付伝熱管(埋込式フィンチューブ)2の内部に挿入され、その軸方向に沿って移動しながら、上記EMAT1から電磁気力により発生させた軸対称SH波3(管表面を周方向に伝播)を利用し、埋込式フィン付伝熱管2の内面の探傷を行うようにしている。5は増幅器,バースト波発振器,A/D変換器等を備えた検出装置で、6は入力信号を解析するためのコンピュータで、7は上記EMAT1を埋込式フィン付伝熱管2内に挿入してその軸方向に移動させるためのパルスモーター型の送り出し装置で、8は出力装置である。
【0014】
上記埋込式フィン付伝熱管2は、空冷式熱交換器に用いられるものであり、円筒形状に形成された炭素鋼製の管本体11と、この管本体11の外周部にらせん状に突設されるアルミニウム等の非鉄金属製の伝熱用フィン12(この伝熱用フィン12の内側端部は、上記管本体11の外周面に形成されたらせん状の溝11aに埋め込まれている)とで構成されている(図2参照)。
【0015】
上記EMAT1は、図3に示すように、略円筒形状に形成された磁石ユニット13と、この磁石ユニット13の円環状凹部13aにその周方向に巻回された一対のスパイラルコイル14(送信用スパイラルコイル14aおよび受信用スパイラルコイル14b)とで構成されている。上記磁石ユニット13は、径方向の大径側に一方の極を有し径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石15a,15bを、上記周方向で交互に極性が逆転するように並べた状態でリング状に配設したものであり、このようなリング状交番磁界形成用磁石列からなっている。上記各永久磁石15a,15bはそれぞれ棒状に形成されており、その極性を除いては、形状が全て同一であり、上記磁石ユニット13として組み付けた状態では、この磁石ユニット13を上記周方向に均等に分割する構造となっている。また、隣り合う永久磁石15a,15b同士は、エポキシ樹脂からなる接着剤層15cで接着,固定されており(図4参照。なお、図3では、図示せず)、この接着剤層15cは、永久磁石15a(15b)の磁力線が、これに隣り合う永久磁石15b(15a)に影響を及ぼす(逃げる)のを軽減する作用をもしている。
【0016】
上記磁石ユニット13を、さらに詳しく説明すると、S極を上記径方向大径側に有する永久磁石15aと、N極を上記径方向大径側に有する永久磁石15bとを交互に上記周方向に並べて隣り合う永久磁石15a,15b同士を接着剤層15cで接着,固定してなるリング状交番磁界形成用磁石列からなり、上記周方向で極性が交互に逆転する交番磁界を形成している(図3参照)。また、上記磁石列の中央外周部(すなわち、磁石ユニット3の中央外周部)には、図5に示すように、上記周方向に沿って円環状凹部13aが円環状に形成されている。すなわち、上記各永久磁石15a,15bには、その中央外周部に、これを横切るようにして凹部16が形成されており、上記磁石ユニット13として組み付けた状態では、上記各凹部16により上記円環状凹部13aが構成されている。この円環状凹部13aは、上記管本体11の内部にEMAT1を挿入したときに、(上記円環状凹部13aに巻回,収容される)後述する両スパイラルコイル14(図7参照)が上記管本体11の内面に擦れて損傷等するのを防ぐためのものであり、その深さは上記両スパイラルコイル14の素線の直径に合わせて設定され、幅は上記両スパイラルコイル14の巻き幅に合わせて設定されている。
【0017】
また、上記磁石列の両端面(すなわち、磁石ユニット13の軸方向の両端面)には、図6に示すように、これら各端面を貫通状に横切るようにして複数本(この実施の形態では、5本であるが、1本でも、何本でもよい)の凹溝形状のスリット17aが所定の間隔で(等間隔でも、等間隔でもなくてもよい)平行に切欠き形成されているとともに、これら各スリット17aに直交する複数本(この実施の形態では、5本であるが、1本でも、何本でもよい)の凹溝形状のスリット17bが所定の間隔で(等間隔でも、等間隔でもなくてもよい)平行に切欠き形成されており、これら各スリット17a,17b(図3および図4では、図示せず)により、S/N比(信号対雑音比)が向上してノイズが減少するという効果を奏している。このような各スリット17a,17bの幅は0.2〜0.4mmに、その深さは1.0〜1.5mmに設定されている。
【0018】
上記円環状凹部13aには、上記管本体11の内面に実質的に平行な電磁気力を発生させるための渦電流を埋込式フィン付伝熱管2内に発生させるよう、上記スパイラルコイル14(図3参照)が巻回されている。このスパイラルコイル14は、上記したように、送信用スパイラルコイル14aと受信用スパイラルコイル14bとからなり、これら両コイル14a,14bは上記磁石列の軸方向(すなわち、磁石ユニット13の軸方向)に交互に配設されている(図7参照)。また、上記両コイル14a,14bは、その一端部が、検出装置5(図1参照)内に配設された増幅器に接続し、その他端部がアースに接続している。図5において、18は上記磁石ユニット13の外周部にその軸方向に沿って形成されたコイル配設用スリットであり、上記両スパイラルコイル14の線端(4本)をスムーズに取り出して結線するためのものであり、これら取り出し線が、円環状凹部13aに巻回された両スパイラルコイル14上に被さらないようにしている。
【0019】
そして、上記スパイラルコイル14に高周波電流を流すと、管本体11の内面に、この内面に沿った所定位置にその周方向に均等に分散された節を有し上記内面に沿って偏波した横波、すなわち、軸対称SH波3が励起される。この軸対称SH波3は、管本体11の内面に沿って形成されており、その形成方向は管本体11の内面の周方向であり、また、その振幅方向は、管本体11の内面に平行でかつ管本体11の軸方向に沿った方向である。この励起された軸対称SH波3は受信用スパイラルコイル14bに電流を励起し、この電流の電圧を検出することにより、その音圧を知ることができる。
【0020】
上記コンピュータ6は、上記EMAT1を動作させるための動作信号を、上記検出装置5内に配設されたバースト波発振器に送り、このバースト波発振器で生成されたバースト波を増幅器で増幅したのち送信用スパイラルコイル14aに供給し、埋込式フィン付伝熱管2の管本体11の内面に軸対称SH波3を励起させる。上記バースト波発振器からは、所定の時間間隔で異なる周波数信号が順次発生している。上記励起させた軸対称SH波3は、管本体11の内面に円周方向に伝わり、共鳴を発生させる。周波数によって共鳴を起こした状態の軸対称SH波3は受信用スパイラルコイル14bによって検出され、この検出信号は増幅器,A/D変換器を経てコンピュータ6の信号解析部に送られる。
【0021】
上記信号解析部は、A/D変換器から入力された検出信号の振幅、すなわち軸対称SH波3の音圧レベルを決定し、上記励起・受信・音圧決定操作を経て周波数の関数として得られる音圧分布から音圧が極大となる周波数を共鳴周波数として検出し、検出された共鳴周波数にしたがって腐食減肉の有無もしくは残肉厚みの量を決定する手段を備えている。そして、上記信号解析部には、上記駆動信号の周波数が送られてくるとともに、A/D変換器から受信信号が送られてきており、両者が関係付けられて記録されているとともに、上記記録から音圧が極大となる周波数が共鳴周波数として決定・検出される。
【0022】
また、上記信号解析部は、上記共鳴周波数と板厚の関係をテーブル化したLUT(ルックアップテーブル)を備えており、さきに決定された共鳴周波数からLUTを参照しながら板厚が決定される。さらに、内面に腐食減肉が発生している管本体11における共鳴周波数は、後述するようにして求められた、正常な管本体11における共鳴周波数とは異なるため、この(正常な管本体11における)共鳴周波数と異なった共鳴周波数が検出された場合には、上記LUTから、腐食が発生していると決定・検出できるように構成されている。
【0023】
一方、管本体11に、深さの異なる複数の減肉部を人工的に設け、これら各減肉部に対し、上記EMAT1を用いて共鳴周波数を求め、その実験データを多数収集して、減肉部の残肉厚み(もしくは穴の深さ)と共鳴周波数との関係をテーブル化もしくは数式化(この実施の形態では、数式化)しておく。これにより、欠陥サイズ(この実施の形態では、減肉部の残肉厚み)を評価することが可能となる。また、正常な管本体11に対応する共鳴周波数を、上記EMAT1を用いて求め、その実験データをも収集しておく。これらの実験データから、例えば、残肉厚み(もしくは穴の深さ)と共鳴周波数との間には一定の関係があり、残肉厚みが小さいほど(すなわち、減肉部の穴の深さが深いほど)、共鳴周波数が上昇していることが判る。したがって、上記実験データから欠陥サイズを求めることが可能となり、もしくは、共鳴周波数が変化することにより管本体11の内面に何らかの問題があると判断することが可能となる。
【0024】
上記送り出し装置7は、上記コンピュータ6により制御されており、探傷走査の結果腐食が発生していると決定した場合には、上記送り出し装置7の送り出し量を少なくして探傷ピッチを小さくすることにより、精密探傷を行い検査精度を高めることができるようにしている。また、上記EMAT1の検出位置(管本体11の管端からの距離)は、上記送り出し装置7に内蔵された走査距離検出装置(図示せず)からコンピュータ6に自動的に取り込まれ、データ解析に反映されるようにしている。
【0025】
上記出力装置8は、表示手段(図示せず)を有しており、その表示画面上に、EMAT1の検出位置(mm)を横軸とし、この検出位置における共鳴周波数(MHz)を縦軸としたグラフ(図8参照)が映し出されるようになっており、この表示画面上に映し出された共鳴周波数と振幅(すなわち、共鳴周波数の変動)を見ることで、管本体11の内面に腐食が生じていることを示す共鳴信号およびその位置(管本体11の管端からの距離)が判るようになっている。また、上記グラフの横側に、共鳴周波数と管本体11の肉厚との関係表を映し出すことができる場合には、もしくは上記実験データから、共鳴周波数と管本体11の肉厚との関係表を作成しておく場合には、それを見ることにより、上記共鳴信号から管本体11の腐食部の肉厚(欠陥サイズ)を求めることができるようになる。
【0026】
上記電磁超音波探傷装置を用い、例えば、つぎのようにして管本体11の内面の腐食を検査することができる。すなわち、まず、送り出し装置7を作動させ、EMAT1を管本体11内に挿入させて管本体11の全長をその軸方向に沿って移動させる。そして、この移動の際に、EMAT1から電磁気力により発生させた軸対称SH波3を利用して管本体11の内面の探傷を行わせ、その探傷データをコンピュータ6に入力させる。また、上記移動時におけるEMAT1の移動距離(管本体11の管端からの距離)を走査距離検出装置で検出させ、この検出データをコンピュータ6に入力させる。そして、これら各データを基にして、上記出力装置8の表示画面に映し出させたグラフから腐食の有無を確認し、そのサイズを知ることができる。また、上記出力装置8で記録紙に探傷データをX−Yチャートとして印刷すれば、管本体11の全長についての探傷記録が作成される。例えば、図8に示すグラフでは、正常である場合には、管本体11の肉厚は3.0mmであるが、上記共鳴信号が発生した位置では、管本体11の肉厚は1.4mmになっていることが判る。
【0027】
上記のように、この実施の形態では、埋込式フィン付伝熱管2の管本体11の内面腐食を高い精度で検査することができる。しかも、上記EMAT1を用いると、従来の超音波探傷法より短時間で探傷を行うことができ、コストの削減と工程内での全数検査が可能となる。しかも、上記EMAT1は、水等の接触媒質を必要としないため、管本体11内の後処理(脱水等)が不要であるうえ、どのような種類の流体が通る埋込式フィン付伝熱管2であっても、探傷を行うことができる。しかも、上記EMAT1は、非接触探傷であるため、管本体11の内面にスケール等が付着した状態でも腐食検査が可能であり、前処理時間を短縮し、前処理コストを削減することができる。
【0028】
上記実施の形態において、多数のデータを収集する場合には、例えば、図9に示すように、管本体11(テストピース)の内面に、深さの異なる複数の減肉部25〜29を人工的に設け、これら各減肉部25〜29に対し、上記EMAT1を用いて共鳴周波数f1〜f5(MHz)を測定することが行われる。上記各減肉部25〜29の腐食量,残厚(残肉厚み)を、表1に示す数値に設定した場合に、図10に示すような測定結果を得た。これらのデータから腐食量もしくは残厚と共鳴周波数との間に一定の関係があり、残厚が小さいほど(すなわち、腐食量が大きくて減肉部の穴の深さが深いほど)、共鳴周波数が上昇していることが判る。したがって、上記各データから欠陥サイズを求めることが可能となり、もしくは、共鳴周波数が変化することにより管本体11の内面に何らかの問題があると判断することが可能となる。例えば、図9において、黒丸30で示す個所に腐食部が発生した場合に、この腐食部での測定共鳴周波数がfxであると判れば、残厚が判り(この例では、残厚が2.4mmで、腐食量が0.6mmであることが判り)、また、その位置も判る。
【0029】
【表1】
【0030】
図11は上記EMAT1の変形例を示している。この例では、上記永久磁石ユニット13の軸方向の両端面にスリット17a,17b(図6参照)が切欠き形成されているだけでなく、上記永久磁石ユニット13の軸方向の両端部外周面にもそれぞれ、その周方向に延びる複数本(この実施の形態では、2本であるが、1本でも、何本でもよい)の円環状の凹溝形状のスリット21が切欠き形成されている。それ以外の部分は上記実施の形態に用いたEMAT1と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この例のEMAT1を用いた場合にも、上記実施の形態と同様の作用,効果を奏する。しかも、上記永久磁石ユニット13の軸方向の両端部外周面にも複数本の円環状のスリット21が切欠き形成されているため、さらにS/N比が向上してノイズが減少する。
【0031】
[実施例1,2および比較例1]
内面に腐食部を有する埋込式フィン付伝熱管2およびL字型巻き付け式フィン付伝熱管(図示せず)を準備した。また、上記実施の形態に示すEMAT1、および磁石列の軸方向の両端面にスリット17a,17bを形成していないこと以外は上記EMAT1と同様構造のもの(EMAT1′)を準備した。そして、埋込式フィン付伝熱管2の腐食部およびその近辺の共鳴周波数をEMAT1を用いて測定し(実施例1)、埋込式フィン付伝熱管2の腐食部およびその近辺の共鳴周波数をEMAT1′を用いて測定し(実施例2)、L字型巻き付け式フィン付伝熱管の腐食部およびその近辺の共鳴周波数をEMAT1′を用いて測定した(比較例1)。その測定結果を図12(実施例1),図13(実施例2)および図14(比較例1)に示す。これらの測定結果により、比較例1では、上記腐食部が発生している場所で共鳴周波数を測定することができないうえノイズが多く、実施例2では、共鳴周波数を測定することができたもののノイズが多く、実施例1では、共鳴周波数を測定することができ、かつノイズが非常に少ないことが判る。
【0032】
なお、上記実施の形態では、上記EMAT1は略円筒形状に形成されているが、これに限定するものではなく、円柱形状に形成されていてもよい。また、上記実施の形態では、上記埋込式フィン付伝熱管2は、炭素鋼製の管本体11とアルミニウム等の非鉄金属製の伝熱用フィン12とで構成されているが、各種の埋込式フィン付伝熱管2を用いることができる。また、上記実施の形態では、上記埋込式フィン付伝熱管2は、ストレート管であるが、U字状等の各種形状に折り曲げ形成されたものでもよい。
【0033】
また、上記実施の形態では、上記磁石ユニット13は12分割されている(12個の永久磁石15a,15bで構成されている)が、これに限定するものではなく、複数個に分割されていればよく、埋込式フィン付伝熱管2の内面腐食を検査するのには、10個,12個もしくは14個に分割されているのが適している。ただし、16個以上に分割されていると、埋込式フィン付伝熱管2の内面腐食を検査するのには、適していない。また、この内面腐食検査で使用される共振次数(一次〜N次モード)は一次モードが最適であるが、三次モードまでであれば、好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の電磁超音波探傷法の一実施の形態に用いる電磁超音波探傷装置を示す説明図である。
【図2】埋込式フィン付伝熱管の構造説明図である。
【図3】EMATを示す斜視図である。
【図4】上記EMATの説明図である。
【図5】磁石ユニットの側面図である。
【図6】上記磁石ユニットの端面図である。
【図7】スパイラルコイルの説明図である。
【図8】表示画面に映し出されるグラフの説明図である。
【図9】テストピースの説明図である。
【図10】表示画面に映し出されるグラフの説明図である。
【図11】上記EMATの変形例を示す側面図である。
【図12】測定結果を示す図である。
【図13】測定結果を示す図である。
【図14】測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 EMAT
2 埋込式フィン付伝熱管
3 軸対称SH波
11 管本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式熱交換器の埋込式フィン付伝熱管内部の腐食を検査するための電磁超音波探傷法およびそれに用いる電磁超音波トランスジューサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空冷式熱交換器のフィン付伝熱管内面が腐食し、この腐食が進行すると、管内を通る流体が管外に漏れ出す等の恐れがあるため、フィン付伝熱管内面の腐食検査が行われている。
【0003】
従来から行われているフィン付伝熱管内面の腐食検査の手法としては、プローブ内のコイルから発生させた交流磁束を利用して探傷を行う渦流探傷法(例えば、特許文献1参照)や振動子を振動させて発生させた超音波を利用して探傷を行う超音波探傷法(例えば、特許文献2参照)があげられる。
【特許文献1】特開2002−296241号公報
【特許文献2】特開2001−50936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、渦流探傷法では、管がフィン付であると、このフィンが障害となり、管内面の腐食を高い精度で検査することができないため、フィン付伝熱管内面の腐食検査には渦流探傷法を適用することができなかった。一方、超音波探傷法では、1本の伝熱管の検査に時間がかかるために検査スピードが遅く、短い時間内に全数検査ができない。しかも、検査を行うには伝熱管内を水で満たさなければならないため、脱水等の後処理が必要になるうえ、伝熱管内を通る流体の種類によっては水が使えない場合もある。しかも、検査精度を高くするためには伝熱管内面のスケールを除去する必要があり、この除去作業等の前処理にも時間とコストがかかる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、埋込式フィン付伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができ、しかも、検査に時間がかからず、水等の接触媒質を必要とせず、前処理に時間とコストがかからない電磁超音波探傷法およびそれに用いる電磁超音波トランスジューサの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、空冷式熱交換器の埋込式フィン付伝熱管内部を軸方向に沿って電磁超音波トランスジューサを移動させながら、この電磁超音波トランスジューサから電磁気力を利用して軸対称SH波を発生させ埋込式フィン付伝熱管の管本体を振動させて共鳴を起こさせ、この共鳴周波数を電磁超音波トランジューサで検出し、この検出結果が、上記管本体の肉厚が正常である場合の共鳴周波数と異なる場合に、上記管本体の内面に腐食部が発生していると判断するようにした電磁超音波探傷法を第1の要旨とし、円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなり、上記永久磁石ユニットの両端面に、互いに交差する複数条のスリットが切欠き形成されている電磁超音波トランジューサを第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、本発明者らは、空冷式熱交換器のフィン付伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができる探傷法について鋭意研究をした結果、フィン付伝熱管が埋込式フィン付伝熱管である場合に、電磁超音波トランスジューサ(以下、「EMAT」という)を用い、このEMATを埋込式フィン付伝熱管内部にその軸方向に沿って移動させながら、上記EMATから電磁気力を利用して軸対称SH波を発生させ埋込式フィン付伝熱管の管本体を振動させて共鳴を起こさせ、この共鳴周波数を上記EMATで検出することにより、上記共鳴周波数を高い精度で検出できることを突き止め、上記検出された共鳴周波数と、上記管本体の肉厚が正常である場合の共鳴周波数とを比較し、上記検出された共鳴周波数が正常である場合の共鳴周波数と異なる場合に、上記管本体の内面に腐食部が発生していると判断することにすれば、伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができることを見出し、本発明に到達した。しかも、上記EMATを用いると、従来の超音波探傷法より短時間で探傷を行うことができ、コストの削減と工程内での全数検査が可能となる。しかも、上記EMATは、水等の接触媒質を必要としないため、管本体内の後処理(脱水等)が不要であるうえ、伝熱管内を通る流体がどのような種類であっても、探傷を行うことができる。さらに、上記EMATは、非接触探傷であるため、管本体の内面にスケール等が付着した状態でも腐食検査が可能であり、前処理時間を短縮し、前処理コストを削減することができる。なお、本発明において、フィン付伝熱管を埋込式フィン付伝熱管に限定しているのは、フィン付伝熱管の管本体の外周部(その全体もしくはその一部)に、フィンと一体成形された外層を有するタイプのフィン付伝熱管(例えば、L字型巻き付け式フィン付伝熱管)では、上記外層の影響により、上記外層が形成された上記管本体の部分で、上記共鳴周波数が発生しないためである。
【0008】
一方、本発明のEMATは、円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなっている。したがって、上記送信用コイルに高周波電流を流すと、埋込式フィン付伝熱管の管本体に軸対称SH波を発生させて上記管本体を振動させるとともに、この管本体内で共鳴を起こさせ、この共鳴周波数を上記EMATの受信用コイルで検出することができ、本発明の電磁超音波探傷法のEMATとして用いることができる。しかも、上記永久磁石ユニットの両端面(軸方向の両端面)に、互いに交差する複数条のスリットが切欠き形成されているため、上記スリットによりS/N比(信号対雑音比)が向上し、ノイズが減少する。この場合に、上記永久磁石ユニットの外周面の両端部(軸方向の両端部)に、その周方向に延びる円環状のスリットを形成すると、S/N比が一層向上するため、より好ましい。なお、上記スリットは、凹溝形状(平底形状)が好ましく、上記両端面に形成する場合にも、これに加えて上記外周面の両端部に形成する場合にも、各方向に1本もしくは2本以上あればよい。なお、本発明において、「互いに交差する」とは、互いに傾斜した状態で交差していてもよいし、互いに直交していてもよいが、互いに直交している場合のほうが、S/N比は向上する。
【0009】
また、本発明の電磁超音波探傷法において、上記埋込式フィン付伝熱管のチューブ本体が炭素鋼(強磁性体)からなり、フィンがアルミニウム等の非鉄材料からなっていると、一般的に用いられる埋込式フィン付伝熱管に対して本発明の電磁超音波探傷法を行うことができる。
【0010】
また、本発明の電磁超音波探傷法において、上記軸対称SH波の共振次数が一次モードであると、最も低次のモードを用いているため、埋込式フィンチューブのチューブ内面の腐食を検査するのに適しており、高い精度で検査することができる。
【0011】
また、本発明の電磁超音波探傷法において、上記EMATが、円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなると、上記したように、本発明の電磁超音波探傷法のEMATとして用い、埋込式フィン付伝熱管内面の腐食を高い精度で検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1は本発明の電磁超音波探傷法の一実施の形態に用いる電磁超音波探傷装置を示している。図において、1は略円筒形状のEMATであり、埋込式フィン付伝熱管(埋込式フィンチューブ)2の内部に挿入され、その軸方向に沿って移動しながら、上記EMAT1から電磁気力により発生させた軸対称SH波3(管表面を周方向に伝播)を利用し、埋込式フィン付伝熱管2の内面の探傷を行うようにしている。5は増幅器,バースト波発振器,A/D変換器等を備えた検出装置で、6は入力信号を解析するためのコンピュータで、7は上記EMAT1を埋込式フィン付伝熱管2内に挿入してその軸方向に移動させるためのパルスモーター型の送り出し装置で、8は出力装置である。
【0014】
上記埋込式フィン付伝熱管2は、空冷式熱交換器に用いられるものであり、円筒形状に形成された炭素鋼製の管本体11と、この管本体11の外周部にらせん状に突設されるアルミニウム等の非鉄金属製の伝熱用フィン12(この伝熱用フィン12の内側端部は、上記管本体11の外周面に形成されたらせん状の溝11aに埋め込まれている)とで構成されている(図2参照)。
【0015】
上記EMAT1は、図3に示すように、略円筒形状に形成された磁石ユニット13と、この磁石ユニット13の円環状凹部13aにその周方向に巻回された一対のスパイラルコイル14(送信用スパイラルコイル14aおよび受信用スパイラルコイル14b)とで構成されている。上記磁石ユニット13は、径方向の大径側に一方の極を有し径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石15a,15bを、上記周方向で交互に極性が逆転するように並べた状態でリング状に配設したものであり、このようなリング状交番磁界形成用磁石列からなっている。上記各永久磁石15a,15bはそれぞれ棒状に形成されており、その極性を除いては、形状が全て同一であり、上記磁石ユニット13として組み付けた状態では、この磁石ユニット13を上記周方向に均等に分割する構造となっている。また、隣り合う永久磁石15a,15b同士は、エポキシ樹脂からなる接着剤層15cで接着,固定されており(図4参照。なお、図3では、図示せず)、この接着剤層15cは、永久磁石15a(15b)の磁力線が、これに隣り合う永久磁石15b(15a)に影響を及ぼす(逃げる)のを軽減する作用をもしている。
【0016】
上記磁石ユニット13を、さらに詳しく説明すると、S極を上記径方向大径側に有する永久磁石15aと、N極を上記径方向大径側に有する永久磁石15bとを交互に上記周方向に並べて隣り合う永久磁石15a,15b同士を接着剤層15cで接着,固定してなるリング状交番磁界形成用磁石列からなり、上記周方向で極性が交互に逆転する交番磁界を形成している(図3参照)。また、上記磁石列の中央外周部(すなわち、磁石ユニット3の中央外周部)には、図5に示すように、上記周方向に沿って円環状凹部13aが円環状に形成されている。すなわち、上記各永久磁石15a,15bには、その中央外周部に、これを横切るようにして凹部16が形成されており、上記磁石ユニット13として組み付けた状態では、上記各凹部16により上記円環状凹部13aが構成されている。この円環状凹部13aは、上記管本体11の内部にEMAT1を挿入したときに、(上記円環状凹部13aに巻回,収容される)後述する両スパイラルコイル14(図7参照)が上記管本体11の内面に擦れて損傷等するのを防ぐためのものであり、その深さは上記両スパイラルコイル14の素線の直径に合わせて設定され、幅は上記両スパイラルコイル14の巻き幅に合わせて設定されている。
【0017】
また、上記磁石列の両端面(すなわち、磁石ユニット13の軸方向の両端面)には、図6に示すように、これら各端面を貫通状に横切るようにして複数本(この実施の形態では、5本であるが、1本でも、何本でもよい)の凹溝形状のスリット17aが所定の間隔で(等間隔でも、等間隔でもなくてもよい)平行に切欠き形成されているとともに、これら各スリット17aに直交する複数本(この実施の形態では、5本であるが、1本でも、何本でもよい)の凹溝形状のスリット17bが所定の間隔で(等間隔でも、等間隔でもなくてもよい)平行に切欠き形成されており、これら各スリット17a,17b(図3および図4では、図示せず)により、S/N比(信号対雑音比)が向上してノイズが減少するという効果を奏している。このような各スリット17a,17bの幅は0.2〜0.4mmに、その深さは1.0〜1.5mmに設定されている。
【0018】
上記円環状凹部13aには、上記管本体11の内面に実質的に平行な電磁気力を発生させるための渦電流を埋込式フィン付伝熱管2内に発生させるよう、上記スパイラルコイル14(図3参照)が巻回されている。このスパイラルコイル14は、上記したように、送信用スパイラルコイル14aと受信用スパイラルコイル14bとからなり、これら両コイル14a,14bは上記磁石列の軸方向(すなわち、磁石ユニット13の軸方向)に交互に配設されている(図7参照)。また、上記両コイル14a,14bは、その一端部が、検出装置5(図1参照)内に配設された増幅器に接続し、その他端部がアースに接続している。図5において、18は上記磁石ユニット13の外周部にその軸方向に沿って形成されたコイル配設用スリットであり、上記両スパイラルコイル14の線端(4本)をスムーズに取り出して結線するためのものであり、これら取り出し線が、円環状凹部13aに巻回された両スパイラルコイル14上に被さらないようにしている。
【0019】
そして、上記スパイラルコイル14に高周波電流を流すと、管本体11の内面に、この内面に沿った所定位置にその周方向に均等に分散された節を有し上記内面に沿って偏波した横波、すなわち、軸対称SH波3が励起される。この軸対称SH波3は、管本体11の内面に沿って形成されており、その形成方向は管本体11の内面の周方向であり、また、その振幅方向は、管本体11の内面に平行でかつ管本体11の軸方向に沿った方向である。この励起された軸対称SH波3は受信用スパイラルコイル14bに電流を励起し、この電流の電圧を検出することにより、その音圧を知ることができる。
【0020】
上記コンピュータ6は、上記EMAT1を動作させるための動作信号を、上記検出装置5内に配設されたバースト波発振器に送り、このバースト波発振器で生成されたバースト波を増幅器で増幅したのち送信用スパイラルコイル14aに供給し、埋込式フィン付伝熱管2の管本体11の内面に軸対称SH波3を励起させる。上記バースト波発振器からは、所定の時間間隔で異なる周波数信号が順次発生している。上記励起させた軸対称SH波3は、管本体11の内面に円周方向に伝わり、共鳴を発生させる。周波数によって共鳴を起こした状態の軸対称SH波3は受信用スパイラルコイル14bによって検出され、この検出信号は増幅器,A/D変換器を経てコンピュータ6の信号解析部に送られる。
【0021】
上記信号解析部は、A/D変換器から入力された検出信号の振幅、すなわち軸対称SH波3の音圧レベルを決定し、上記励起・受信・音圧決定操作を経て周波数の関数として得られる音圧分布から音圧が極大となる周波数を共鳴周波数として検出し、検出された共鳴周波数にしたがって腐食減肉の有無もしくは残肉厚みの量を決定する手段を備えている。そして、上記信号解析部には、上記駆動信号の周波数が送られてくるとともに、A/D変換器から受信信号が送られてきており、両者が関係付けられて記録されているとともに、上記記録から音圧が極大となる周波数が共鳴周波数として決定・検出される。
【0022】
また、上記信号解析部は、上記共鳴周波数と板厚の関係をテーブル化したLUT(ルックアップテーブル)を備えており、さきに決定された共鳴周波数からLUTを参照しながら板厚が決定される。さらに、内面に腐食減肉が発生している管本体11における共鳴周波数は、後述するようにして求められた、正常な管本体11における共鳴周波数とは異なるため、この(正常な管本体11における)共鳴周波数と異なった共鳴周波数が検出された場合には、上記LUTから、腐食が発生していると決定・検出できるように構成されている。
【0023】
一方、管本体11に、深さの異なる複数の減肉部を人工的に設け、これら各減肉部に対し、上記EMAT1を用いて共鳴周波数を求め、その実験データを多数収集して、減肉部の残肉厚み(もしくは穴の深さ)と共鳴周波数との関係をテーブル化もしくは数式化(この実施の形態では、数式化)しておく。これにより、欠陥サイズ(この実施の形態では、減肉部の残肉厚み)を評価することが可能となる。また、正常な管本体11に対応する共鳴周波数を、上記EMAT1を用いて求め、その実験データをも収集しておく。これらの実験データから、例えば、残肉厚み(もしくは穴の深さ)と共鳴周波数との間には一定の関係があり、残肉厚みが小さいほど(すなわち、減肉部の穴の深さが深いほど)、共鳴周波数が上昇していることが判る。したがって、上記実験データから欠陥サイズを求めることが可能となり、もしくは、共鳴周波数が変化することにより管本体11の内面に何らかの問題があると判断することが可能となる。
【0024】
上記送り出し装置7は、上記コンピュータ6により制御されており、探傷走査の結果腐食が発生していると決定した場合には、上記送り出し装置7の送り出し量を少なくして探傷ピッチを小さくすることにより、精密探傷を行い検査精度を高めることができるようにしている。また、上記EMAT1の検出位置(管本体11の管端からの距離)は、上記送り出し装置7に内蔵された走査距離検出装置(図示せず)からコンピュータ6に自動的に取り込まれ、データ解析に反映されるようにしている。
【0025】
上記出力装置8は、表示手段(図示せず)を有しており、その表示画面上に、EMAT1の検出位置(mm)を横軸とし、この検出位置における共鳴周波数(MHz)を縦軸としたグラフ(図8参照)が映し出されるようになっており、この表示画面上に映し出された共鳴周波数と振幅(すなわち、共鳴周波数の変動)を見ることで、管本体11の内面に腐食が生じていることを示す共鳴信号およびその位置(管本体11の管端からの距離)が判るようになっている。また、上記グラフの横側に、共鳴周波数と管本体11の肉厚との関係表を映し出すことができる場合には、もしくは上記実験データから、共鳴周波数と管本体11の肉厚との関係表を作成しておく場合には、それを見ることにより、上記共鳴信号から管本体11の腐食部の肉厚(欠陥サイズ)を求めることができるようになる。
【0026】
上記電磁超音波探傷装置を用い、例えば、つぎのようにして管本体11の内面の腐食を検査することができる。すなわち、まず、送り出し装置7を作動させ、EMAT1を管本体11内に挿入させて管本体11の全長をその軸方向に沿って移動させる。そして、この移動の際に、EMAT1から電磁気力により発生させた軸対称SH波3を利用して管本体11の内面の探傷を行わせ、その探傷データをコンピュータ6に入力させる。また、上記移動時におけるEMAT1の移動距離(管本体11の管端からの距離)を走査距離検出装置で検出させ、この検出データをコンピュータ6に入力させる。そして、これら各データを基にして、上記出力装置8の表示画面に映し出させたグラフから腐食の有無を確認し、そのサイズを知ることができる。また、上記出力装置8で記録紙に探傷データをX−Yチャートとして印刷すれば、管本体11の全長についての探傷記録が作成される。例えば、図8に示すグラフでは、正常である場合には、管本体11の肉厚は3.0mmであるが、上記共鳴信号が発生した位置では、管本体11の肉厚は1.4mmになっていることが判る。
【0027】
上記のように、この実施の形態では、埋込式フィン付伝熱管2の管本体11の内面腐食を高い精度で検査することができる。しかも、上記EMAT1を用いると、従来の超音波探傷法より短時間で探傷を行うことができ、コストの削減と工程内での全数検査が可能となる。しかも、上記EMAT1は、水等の接触媒質を必要としないため、管本体11内の後処理(脱水等)が不要であるうえ、どのような種類の流体が通る埋込式フィン付伝熱管2であっても、探傷を行うことができる。しかも、上記EMAT1は、非接触探傷であるため、管本体11の内面にスケール等が付着した状態でも腐食検査が可能であり、前処理時間を短縮し、前処理コストを削減することができる。
【0028】
上記実施の形態において、多数のデータを収集する場合には、例えば、図9に示すように、管本体11(テストピース)の内面に、深さの異なる複数の減肉部25〜29を人工的に設け、これら各減肉部25〜29に対し、上記EMAT1を用いて共鳴周波数f1〜f5(MHz)を測定することが行われる。上記各減肉部25〜29の腐食量,残厚(残肉厚み)を、表1に示す数値に設定した場合に、図10に示すような測定結果を得た。これらのデータから腐食量もしくは残厚と共鳴周波数との間に一定の関係があり、残厚が小さいほど(すなわち、腐食量が大きくて減肉部の穴の深さが深いほど)、共鳴周波数が上昇していることが判る。したがって、上記各データから欠陥サイズを求めることが可能となり、もしくは、共鳴周波数が変化することにより管本体11の内面に何らかの問題があると判断することが可能となる。例えば、図9において、黒丸30で示す個所に腐食部が発生した場合に、この腐食部での測定共鳴周波数がfxであると判れば、残厚が判り(この例では、残厚が2.4mmで、腐食量が0.6mmであることが判り)、また、その位置も判る。
【0029】
【表1】
【0030】
図11は上記EMAT1の変形例を示している。この例では、上記永久磁石ユニット13の軸方向の両端面にスリット17a,17b(図6参照)が切欠き形成されているだけでなく、上記永久磁石ユニット13の軸方向の両端部外周面にもそれぞれ、その周方向に延びる複数本(この実施の形態では、2本であるが、1本でも、何本でもよい)の円環状の凹溝形状のスリット21が切欠き形成されている。それ以外の部分は上記実施の形態に用いたEMAT1と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この例のEMAT1を用いた場合にも、上記実施の形態と同様の作用,効果を奏する。しかも、上記永久磁石ユニット13の軸方向の両端部外周面にも複数本の円環状のスリット21が切欠き形成されているため、さらにS/N比が向上してノイズが減少する。
【0031】
[実施例1,2および比較例1]
内面に腐食部を有する埋込式フィン付伝熱管2およびL字型巻き付け式フィン付伝熱管(図示せず)を準備した。また、上記実施の形態に示すEMAT1、および磁石列の軸方向の両端面にスリット17a,17bを形成していないこと以外は上記EMAT1と同様構造のもの(EMAT1′)を準備した。そして、埋込式フィン付伝熱管2の腐食部およびその近辺の共鳴周波数をEMAT1を用いて測定し(実施例1)、埋込式フィン付伝熱管2の腐食部およびその近辺の共鳴周波数をEMAT1′を用いて測定し(実施例2)、L字型巻き付け式フィン付伝熱管の腐食部およびその近辺の共鳴周波数をEMAT1′を用いて測定した(比較例1)。その測定結果を図12(実施例1),図13(実施例2)および図14(比較例1)に示す。これらの測定結果により、比較例1では、上記腐食部が発生している場所で共鳴周波数を測定することができないうえノイズが多く、実施例2では、共鳴周波数を測定することができたもののノイズが多く、実施例1では、共鳴周波数を測定することができ、かつノイズが非常に少ないことが判る。
【0032】
なお、上記実施の形態では、上記EMAT1は略円筒形状に形成されているが、これに限定するものではなく、円柱形状に形成されていてもよい。また、上記実施の形態では、上記埋込式フィン付伝熱管2は、炭素鋼製の管本体11とアルミニウム等の非鉄金属製の伝熱用フィン12とで構成されているが、各種の埋込式フィン付伝熱管2を用いることができる。また、上記実施の形態では、上記埋込式フィン付伝熱管2は、ストレート管であるが、U字状等の各種形状に折り曲げ形成されたものでもよい。
【0033】
また、上記実施の形態では、上記磁石ユニット13は12分割されている(12個の永久磁石15a,15bで構成されている)が、これに限定するものではなく、複数個に分割されていればよく、埋込式フィン付伝熱管2の内面腐食を検査するのには、10個,12個もしくは14個に分割されているのが適している。ただし、16個以上に分割されていると、埋込式フィン付伝熱管2の内面腐食を検査するのには、適していない。また、この内面腐食検査で使用される共振次数(一次〜N次モード)は一次モードが最適であるが、三次モードまでであれば、好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の電磁超音波探傷法の一実施の形態に用いる電磁超音波探傷装置を示す説明図である。
【図2】埋込式フィン付伝熱管の構造説明図である。
【図3】EMATを示す斜視図である。
【図4】上記EMATの説明図である。
【図5】磁石ユニットの側面図である。
【図6】上記磁石ユニットの端面図である。
【図7】スパイラルコイルの説明図である。
【図8】表示画面に映し出されるグラフの説明図である。
【図9】テストピースの説明図である。
【図10】表示画面に映し出されるグラフの説明図である。
【図11】上記EMATの変形例を示す側面図である。
【図12】測定結果を示す図である。
【図13】測定結果を示す図である。
【図14】測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 EMAT
2 埋込式フィン付伝熱管
3 軸対称SH波
11 管本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷式熱交換器の埋込式フィン付伝熱管内部を軸方向に沿って電磁超音波トランスジューサを移動させながら、この電磁超音波トランスジューサから電磁気力を利用して軸対称SH波を発生させ埋込式フィン付伝熱管の管本体を振動させて共鳴を起こさせ、この共鳴周波数を電磁超音波トランジューサで検出し、この検出結果が、上記管本体の肉厚が正常である場合の共鳴周波数と異なる場合に、上記管本体の内面に腐食部が発生していると判断するようにしたことを特徴とする電磁超音波探傷方法。
【請求項2】
上記埋込式フィン付伝熱管の管本体が炭素鋼からなり、フィンがアルミニウム等の非鉄材料からなっている請求項1記載の電磁超音波探傷方法。
【請求項3】
上記軸対称SH波の共振次数が一次モードである請求項1または2記載の電磁超音波探傷方法。
【請求項4】
上記電磁超音波トランスジューサが、円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁超音波探傷方法。
【請求項5】
円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなり、上記永久磁石ユニットの両端面に、互いに交差する複数条のスリットが切欠き形成されていることを特徴とする電磁超音波トランジューサ。
【請求項1】
空冷式熱交換器の埋込式フィン付伝熱管内部を軸方向に沿って電磁超音波トランスジューサを移動させながら、この電磁超音波トランスジューサから電磁気力を利用して軸対称SH波を発生させ埋込式フィン付伝熱管の管本体を振動させて共鳴を起こさせ、この共鳴周波数を電磁超音波トランジューサで検出し、この検出結果が、上記管本体の肉厚が正常である場合の共鳴周波数と異なる場合に、上記管本体の内面に腐食部が発生していると判断するようにしたことを特徴とする電磁超音波探傷方法。
【請求項2】
上記埋込式フィン付伝熱管の管本体が炭素鋼からなり、フィンがアルミニウム等の非鉄材料からなっている請求項1記載の電磁超音波探傷方法。
【請求項3】
上記軸対称SH波の共振次数が一次モードである請求項1または2記載の電磁超音波探傷方法。
【請求項4】
上記電磁超音波トランスジューサが、円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁超音波探傷方法。
【請求項5】
円筒形状もしくは円柱形状に形成された永久磁石ユニットと、この永久磁石ユニットの外周部に巻回される送信用コイルおよび受信用コイルからなり、上記永久磁石ユニットが、その径方向の大径側に一方の極を有するとともにその径方向の小径側に他方の極を有する複数の永久磁石を、上記永久磁石ユニットの周方向で交互に極性が逆転するように並べたものからなり、上記永久磁石ユニットの両端面に、互いに交差する複数条のスリットが切欠き形成されていることを特徴とする電磁超音波トランジューサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−33329(P2007−33329A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219206(P2005−219206)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(500271030)株式会社日本工業試験所 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(500271030)株式会社日本工業試験所 (3)
【Fターム(参考)】
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