説明

電磁駆動装置

【課題】 電磁力を利用して切替動作させることが可能な電磁駆動装置の構成を簡略化し、かつ消費電力を低減する。
【解決手段】 対向配置された一対の固定磁石110,120と、これら固定磁石間に配置された可動磁石130とを備えており、固定磁石又は可動磁石のいずれか一方を電磁石で構成し、他方を永久磁石で構成する。電磁石130に電流を通流して着磁したときに発生する吸引磁力により可動磁石を一対の固定磁石110,120のいずれか一方に吸着させる。電磁石に通流する電流の向きを変化させ、あるいは任意の側の電磁石へ電流を通流することで、可動磁石を任意の側の固定磁石に吸着させ、可動磁石130を搭載したアマチュア140を切替え移動する。電流の通流を停止しても切替え状態が保持でき、消費電力が低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁力を利用して駆動力を発生する駆動装置に関し、特に電磁ソレノイドへの通電制御により駆動力を発生させる電磁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等に内蔵される各種機構を駆動するためにモータやソレノイドが用いられている。例えば、詳細については後述する図1に示すカメラのレンズ光量を調整するための二枚羽根構成の絞り機構では、第1羽根板11と第2羽根板12のそれぞれに三角形の切り欠き11a,12aを設けておき、これら羽根板11,12を互いにP方向、Q方向の反対方向に移動して両者の重なり量、すなわち両羽根板の切り欠き11a,12aの重なり量を調整することで両切り欠き11a,12aにより形成される絞り開口を調整する。この絞り開口の調整を行うために、第2羽根板12の一部にラチェット歯15を設け、このラチェット歯15に噛合する掛止爪142を備えるロック機構10Aによって第1羽根板11及び第2羽根板12を係止する構成がとられている。このロック機構10Aとしては、図7に示すように、駆動装置として電磁石301と、中間部が支軸304により揺動可能に支持された揺動アーム302と、この揺動アーム302の一端部に設けられて当該電磁石301に吸着されるアマチュア303と、揺動アーム302を付勢するためのスプリング305と、揺動アーム302の他端部に設けたピン306に摺接して揺動アーム302を強制的に時計方向に揺動させるカム307とで構成される。電磁石301は磁性体のコア311と当該コア311に巻回されたソレノイド312とで構成され、ソレノイド312に通電されたときにコア311に電磁力を発生させる。揺動アーム302は一端部の一部に係止爪308が設けられ、第2羽根板12のラチェット歯15に噛合して第2羽根板12の移動をロックする。また、スプリング305は揺動アーム302のアマチュア303を電磁石301から離す方向に付勢するバネ力を生じさせるものである。
【0003】
このロック機構10Aでは、電磁石301のソレノイド312に通電しないときにはスプリング305力によって揺動アーム302のアマチュア303を電磁石301から離す方向に付勢し、係止爪308(142)をラチェット歯15に噛合して第1及び第2の羽根板11,12の移動をロックして絞り値を固定する。係止爪308によるロックを解除する際には、カム307を回転して揺動アーム302を時計方向に揺動すると同時にソレノイド312に通電し、コア311により発生する電磁力によりアマチュア302をスプリング305力に抗して吸着し、係止爪308をラチェット歯15との噛合から解除した状態を保持する。これにより、第1及び第2の羽根板11,12の移動を可能にして絞り開口の調整を可能とするものである。
【0004】
このように電磁石を利用してアマチュアを第1の位置と第2の位置に切り替えて各種動作を行わせるための電磁駆動装置は、他の分野でも広く利用されており、例えば特許文献1ではポンプ本体からの吐出空気の流路を切り替えるための流路切替装置を電磁駆動装置で構成している。この流路切替装置は、第1の流路と第2の流路とを切り替えるための切替弁を強制的に第1の位置と第2の位置とに移動させるための切替弁強制移動装置を電磁石と永久磁石とで構成し、両者間に生じる吸引力もしくは反発力等の磁力を利用することで切替弁の移動位置を切り替える構成とされている。すなわち、切替弁を永久磁石で構成し、当該切替弁により開閉する第1の流路に臨んで電磁石を配設したものであり、電磁石に通電していないときには永久磁石による吸引力により切替弁を第1の流路を閉塞する第1の位置に移動する。また、電磁石に通電したときには電磁石と永久磁石の反発力により切替弁を第1の流路を開放して第2の流路を閉塞する第2の位置に移動する構成とされている。
【特許文献1】特開2001−207970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示したロック機構10Aでは、第1及び第2の羽根板11,12を移動可能とするとき、すなわちラチェット歯15の移動を可能とするときにはカム307を駆動して揺動アーム302を揺動すると同時に電磁石301に通電してアマチュア302を吸着した状態を保持する必要がある。そのため、ラチェット歯15のロックを解除するために直接必要とされる揺動アーム302や電磁石301に加えて揺動アーム302を復帰させるためのカム307とこれを駆動するための機構が必要になり、構成が複雑なものになる。また、ロックを解除している間はスプリング305力によりも強い吸引力を発揮させた状態で電磁石301に対する通電を継続していなければならず、消費電力が増大するという問題がある。一方、ラチェット歯15をロックするためには揺動アーム302を付勢するために所要の付勢力を発揮させるためのスプリング305が必要であり、ロック機構10Aを構成する部品点数が多くなるという問題がある。
【0006】
一方、特許文献1の技術では、永久磁石の磁力を利用して切替弁を第1の流路を閉塞した状態を保持させているが、切替弁を一方向に付勢したり初期位置に復帰させるための機構が必要であり、特許文献1では自重を利用したりスプリングを用いた構成が必要とされている。また、切替弁で第1の流路を開放した状態のときには電磁石に通電して永久磁石、すなわち切替弁を吸引しておく必要があり、その間の消費電力が増大するという問題を解消することはできない。
【0007】
本発明の目的は、電磁力を利用して切替動作させることが可能な駆動装置において、付勢手段としてのスプリングや復帰手段としてのカム等の部品を不要にするとともに消費電力を低減することが可能な電磁駆動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電磁駆動装置は、対向配置された一対の固定磁石と、これら固定磁石間に配置された可動磁石とを備えており、固定磁石又は可動磁石のいずれか一方を電磁石で構成し、他方を永久磁石で構成し、電磁石に電流を通流して着磁したときに発生する吸引磁力により可動磁石を一対の固定磁石のいずれか一方に吸着させる構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可動磁石を電磁石で構成したときには、当該電磁石に通流する電流の向きを変化させることにより、永久磁石で構成される一対の固定磁石の任意の側に可動磁石を吸着させることができる。また、可動磁石を永久磁石で構成したときには、電磁石で構成される一対の固定磁石の任意の側に電流を通流することで、電磁石で構成される固定磁石のいずれか一方に可動磁石を吸着させることができる。これにより、電磁石に瞬時的に電流を通流するだけで可動磁石を切替え移動することができ、いずれの場合でも可動磁石を固定磁石に吸着させた後は電流の通流を停止してもその状態を保持することができるので、消費電流を格段に低減することが可能になる。また、可動磁石を所定の作用を行うアマチュアに搭載した場合でも、アマチュアを一方向に付勢又は保持するためのスプリング等の手段やアマチュアを初期位置に復帰させるためのカム等の手段が不要になり、構成の簡略化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで、本発明の第1の形態としては、一対の固定磁石は磁極が互いに反対に向けられた状態で対向配置された永久磁石で構成され、可動磁石は電流が通流されたときに着磁される電磁石で構成され、電磁石に通流する電流の向きによって当該電磁石を一対の永久磁石のいずれか一方に吸着させる構成とする。例えば、一対の永久磁石はそれぞれのS極とN極が互いに異なる磁極同士が対向配置され、電磁石が着磁されたときにS極又はN極となる両端部が一対の永久磁石の各磁極間に配設される。電磁石に通流する電流の向きを変化させるだけで可動磁石を任意の側の位置に切替え移動させることが可能になる。
【0011】
本発明の第2の形態としては、一対の固定磁石はそれぞれ電流が通流されたときに着磁される一対の電磁石で構成され、可動磁石は永久磁石で構成され、一対の電磁石のいずれか一方の電磁石を着磁して永久磁石を吸着させる構成とする。例えば、一対の電磁石は通流する電流の向きを制御することで永久磁石の磁極に対向する磁極をS極又はN極に変化させることを可能とする。一対の電磁石の任意の側に電流を通流させることで可動磁石を任意の側の位置に切替え移動させることが可能になる。
【0012】
本発明において、可動磁石を所定の作用を行うためのアマチュアに一体的に搭載することで、可動磁石の位置の切替え移動に伴ってアマチュアにより行われる作用を切り替えることが可能になる。例えば、アマチュアをカメラの絞り機構をロックするためのロック機構の一部として構成することで、絞り開口を設定する際に簡易な構成でかつ低消費電力でのロック動作が実現できる。
【実施例1】
【0013】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図2及び図3は本発明の電磁駆動装置を図1に示したカメラの絞り機構のロック機構10に適用した実施例を示している。すなわち、図1で説明したように、レンズ光量を調整するための二枚羽根構成の絞り機構として、第1羽根板11と第2羽根板12のそれぞれに三角形の切り欠き11a,12aを設けており、両羽根板11,12を互いに反対方向に移動して位置調整することで両切り欠き11a,12aにより形成される絞り開口を調整する。前記第1羽根板11はスプリング13によりカメラ固定部14に掛止され、Q方向に付勢される。前記第2羽根板12は下辺に鋸歯状をしたラチェット歯15が長さ方向に形成されており、このラチェット歯15に前記ロック機構10の後述する掛止爪142が係合可能とされている。また、前記第1羽根板11と第2羽根板12には回転動作されるチャージレバー16が連結されており、このチャージレバー16の回転軸は図には現れないチャージ機構に連結されている。前記ロック機構10は本発明の電磁駆動装置で構成される。
【0014】
図2は前記ロック機構の平面図、図3はそのA−A線断面図である。なお、図2では一部を破断図示している。カメラボディ等への固定穴102を有するベース部材101の表面に設けられた凹部103内に固定磁石としての一対の永久磁石110,120と、1つの可動磁石としての電磁石130と、当該電磁石130を搭載したアマチュア140が配設されている。前記一対の永久磁石110,120はそれぞれの両端部がほぼ平行な方向に向けられた概ねコ字状に形成された第1及び第2の永久磁石であり、両永久磁石110,120の各磁極端部はN極又はS極に着磁されている。そして、両永久磁石110,120は各磁極端部が互いに対向するように方向付けされて前記凹部103内に固定支持されている。このとき、両永久磁石110,120の各磁極端部は互いに異なる磁極が互いに対峙するように、すなわち、一方の永久磁石のN極端部が他方の永久磁石のS極端部に対峙するように、しかも両端部の対峙間に所要の間隙をもつように位置決めした状態で固定支持されている。これら永久磁石110,120を前記ベース部材101に位置決めするために、実施例では各永久磁石110,120の両端面に三角状の切欠111,121を設け、これらの切欠111,121をベース部材101に設けた三角状の突起104,105に嵌合させている。
【0015】
前記アマチュア140は前記一対の第1及び第2の永久磁石110,120間に配設されている。このアマチュア140は基端部において支軸141により前記ベース部材101に支持されており、当該支軸141を中心にして水平方向、すなわちベース部材101の凹部103の底面と平行な面方向に沿って揺動可能とされている。また、前記アマチュア140の先端は三角形をした係止爪142として構成されており、この係止爪142はアマチュア140の揺動に伴って前記ベース部材101の一側面から突出し、あるいは退避される。ここで、図1の絞り機構において、係止爪142は突出したときには前記ラチェット歯15に噛合でき、退避したときにはラチェット歯15との噛合から解除されるように第2羽根板12に対して位置決め固定されている。
【0016】
前記電磁石130は、図2では一部を破断して示しているが、前記アマチュア140の基端部から先端部に向けて貫通支持された矩形棒状をした強磁性体のコア131を有しており、このコア131の長さ方向の両端部はそれぞれ前記一対の永久磁石110,120の各対峙されたN極、S極の各磁極端部の対向間隙内に位置されている。また、前記コア131の長さ方向の中間部には周囲を囲むように導線が巻回されてソレノイド132が形成され、このソレノイド132と前記コア131とで前記電磁石130が構成されている。
【0017】
ここで、前記一対の永久磁石110,120の各磁極端部で構成される間隙は、前記アマチュア140の先端側に位置する間隙寸法が基端側に位置する間隙寸法よりも大きくされており、これによりアマチュア140が支軸141を中心に揺動したときに、電磁石130のコア131は両間隙内でアマチュア140と一体的に揺動することが可能とされ、またこの揺動に伴ってコア131の両端部は一対の永久磁石110,120の各磁極端部に近接ないし接触することが可能とされている。ここでは両端部は各永久磁石の各磁極端部に接触するものとする。
【0018】
以上のロック機構では、可動磁石としての電磁石130のソレノイド132に通電すると、ソレノイド132により発生する磁界により強磁性のコア131は着磁される。ここで、ソレノイド132に予め設定した向きに電流が流れるように通電が行われたとすると、図2に示したように、コア131は基端部がS極に着磁し、先端部がN極に着磁する。そのため、コア131の基端部は第2の永久磁石120のN極に吸引され、先端部は同じ第2の永久磁石120のS極に吸引されるため、コア131の両端部が第2の永久磁石120の各磁極端部に当接して吸着される位置までアマチュア140は支軸141を中心に図2の矢印で示す時計方向に揺動される。このときコア131の両端部と第1の永久磁石110の両磁極端部とは同極になるため、両者間での反発磁力が加えられることになり、コア131の揺動は迅速に行われる。これにより、アマチュア140の先端の係止爪142は後退してロック機構10内に退避される。この状態でソレノイド132への電流の通流を停止しても、第2の永久磁石120とコア131とで閉磁路が構成されるため、コア131は当該着磁状態が保持されることになり、電磁石130及びアマチュア140はその状態が保持される。
【0019】
この状態から、電磁石130のソレノイド132にこれまでとは反対方向に電流が流れるように通電を行なうと、図4に示すように、今度はコア131は基端部がN極に着磁し、先端部がS極に着磁する。そのため、コア131の基端部は第1の永久磁石110のS極に吸引され、先端部は同じ第1の永久磁石110のN極に吸引され、コア131の両端部が第1の永久磁石110の両磁極端部に当接して吸着される位置までアマチュア140は支軸141を中心に図示矢印で示す反時計方向に揺動される。このときコア131の両端部と第2の永久磁石120の両磁極端部との間の反発磁力が加えられるため、コア131の揺動が迅速に行われることは同じである。これにより、アマチュア140の先端の係止爪142はロック機構10から突出する。その後、ソレノイド132への電流の通流を停止しても、コア131は吸着された第1の永久磁石110とで閉磁路が構成されるため、コア131は直前の着磁状態が保持され、電磁石130はその状態が保持される。
【0020】
したがって、このロック機構10を用いた図1の絞り機構では、チャージレバー16を図外のチャージ機構により時計方向に回動して第1羽根板11をスプリング13の付勢力に抗してP方向に移動させる。同時に第2羽根12はQ方向に移動される。このとき絞りは開口面積が最大となる。また、このとき、ロック機構10では図2に示したように電磁石130が揺動位置されており、係止爪142は後退してラチェット歯15との噛合から解除された状態に保持されている。しかる状態から、カメラ内部での絞り値を設定する信号によりチャージレバー16によるチャージ力が無くなると、第1羽根板11はQ方向に、第2羽根板12はP方向にそれぞれ移動され始め、絞り開口は閉じる方向に変化する。そして、所定の絞り開口にまで両羽根板11,12が移動した時点で図4に示したように、電磁石130のソレノイド132に反対方向の電流を流して掛止爪142を突出し、ラチェット歯15に噛合させる。これにより、第2羽根板12及び第1羽根板11の移動がロックされ、絞り開口が調整値に固定される。
【0021】
このように、実施例のロック機構では、一対の永久磁石110,120とアマチュア140との間の距離が微小寸法であるため、電磁石130に通流する電流の向きを変化させることにより、一対の永久磁石110,120の間で電磁石130をいずれか一方の永久磁石、または他方に対して選択的に吸着させることができ、その後は電流の通流を停止してもその状態を保持することができる。すなわち、アマチュア140の揺動方向、すなわち移動位置を切替て変更したいときには、電磁石130に対して当該揺動方向に対応した極性(方向)に瞬時的に電流を通流し、その後は電流の通流を停止すればよい。したがって、アマチュア140がいずれの永久磁石に吸着していても、すなわち係止爪142がラチェット歯15に噛合して絞り開口を固定している状態でも、あるいはラチェット歯15との噛合から開放されて第1及び第2の羽根板11,12の移動を可能にして絞り開口の調整が可能な状態のいずれの場合でも電磁石130に電流を継続して通流しておく必要がなく、消費電流を格段に低減することが可能になる。
【0022】
また、このロック機構10では、電磁石130、すなわちアマチュア140が一対の永久磁石110,120の間で往復方向に揺動する際には、いずれの方向に揺動する場合でも磁力によって揺動されるため、図7に示した従来のようにアマチュア302を一方向に付勢するためのスプリング303は不要であり、ロック機構を構成する部品点数を削減する上で有利である。また、このロック機構10ではアマチュア140と一対の永久磁石110,120との距離が微小寸法であるために微弱な電磁力でアマチュア140を吸着することができ、アマチュア140を初期位置に復帰させるための機構、例えば図7の従来構成のカム機構が不要になり、部品点数を削減し、かつロック機構の構成の簡略化と小型化の上で有利になる。因みに磁力は距離の二乗に反比例するため、図7の従来構成ではアマチュアを復帰させるためにカム機構等の外力による復帰動作は必須である。また、この場合に、アマチュアをいずれかの方向に揺動する際には、一方の永久磁石による吸引力と他方の永久磁石による反発力が相乗的に作用するので、アマチュアを確実にかつ迅速に揺動してロックの係止、解除を切り替えることが可能になる。
【実施例2】
【0023】
図5は本発明を実施例1と同様なロック機構に適用した実施例2の構成図である。この実施例2では、第1及び第2の一対の電磁石210,220を固定磁石として互いに対向してベース部材201の凹部203内に固定配置するとともに、これら電磁石210,220の間にアマチュア240を配設し、その基端部をベース部材201に対して支軸241により揺動可能に支持するとともに、先端部に係止爪242を設けている。また、このアマチュア240に可動磁石として両端がN極、S極に着磁された矩形棒状の永久磁石230を一体的に搭載し、この永久磁石230の両磁極端部を前記両電磁石210,220の各磁極端部の対向間隙内に配置している。前記一対の電磁石210,220はそれぞれコ字状に形成した強磁性体からなるコア211,221を有し、このコア211,221にそれぞれソレノイド212,222を巻回したものである。
【0024】
この実施例2では、一対の電磁石210,220のいずれか一方のソレノイド212,222に選択的に電流を通流してコア211,221を着磁状態とすることで、永久磁石230に対して吸引力、または反発力を発生し、永久磁石230を搭載しているアマチュア240を支軸241の回りに揺動する。例えば、第1の電磁石210に電流を通流して図5のようにS極、N極を着磁すると永久磁石230は同図矢印に示す反時計方向に揺動して両磁極端部において第1の電磁石210に吸着され、係止爪242がベース部材201から突出され、実施例1と同様に図1に示したラチェット歯15に噛合してロックする。この状態で第1の電磁石210への通電を停止しても、永久磁石230と第1の電磁石210のコア211とで構成される閉磁路によって永久磁石230の吸着状態が保持され、係止爪142によるラチェット歯15のロック状態が保持される。
【0025】
また、図5に示した状態から一対の電磁石のうち第1の電磁石210のソレノイド212に反対向きの電流を通流するとともに、第2の電磁石220のソレノイド222にこれは反対向きの電流を通流すると、図6に示すように、第1の電磁石210のコア211のS極、N極の極性が反転して永久磁石230に対する反発力が作用し、同時に第2の電磁石220により永久磁石230に吸引力が発生する。これにより永久磁石230は同図に矢印で示すように時計方向に揺動して両磁極端部において第2の電磁石220に吸着され、係止爪242がベース部材201から退避され、図1に示したラチェット歯15との噛合が解除される。この状態で第1及び第2の電磁石210,220への通電を停止しても、永久磁石230と第2の電磁石220のコア221とで構成される閉磁路によって永久磁石230の吸着状態が保持され、係止爪242によるラチェット歯15のロック解除状態が保持される。
【0026】
このように、実施例2においても、第1及び第2の電磁石210,220に対して瞬時的に電流を通流することで永久磁石230の揺動位置を変更し、アマチュア240によるロック及びロック解除を切り替えることができ、その後は電流の通流を停止してもアマチュア240の揺動位置を保持することができるので消費電力を低減することが可能である。また、アマチュアを一方向に付勢するためのスプリング等が不要であり、かつアマチュアを初期位置に復帰させるためのカム機構が不要であることは実施例1と同じである。
【0027】
前記実施例1,2ではアマチュアを揺動する構成例について説明したが、本発明の電磁駆動装置では、一対の永久磁石や電磁石で挟まれた領域に電磁石や永久磁石を搭載したアマチュアを配設し、このアマチュアの移動位置を変更する構成であれば、アマチュアを揺動させるのみならず、一対の固定磁石が対向された方向に沿って直線方向に移動させる構成としても良いことは言うまでもない。
【0028】
また、本発明の電磁駆動装置は、実施例1で示したカメラの絞り機構に適用するのみならず、各種の電子機器において機械的な切り替えを行う機構要素して適用できることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の電磁駆動装置が適用されるカメラの絞り機構の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例1のロック機構(電磁駆動装置)の一部を破断した平面構成図である。
【図3】図2のA−A線に沿う箇所の断面図である。
【図4】実施例1の作用を説明するための図2と同様な平面構成図である。
【図5】実施例2の平面構成図である。
【図6】実施例2の作用を説明するための図5と同様な平面構成図である。
【図7】従来のロック機構(電磁駆動装置)の一例の構成図である。
【符号の説明】
【0030】
10 ロック機構(電磁駆動装置)
11 第1羽根板
12 第2羽根板
13 スプリング
14 絞り開口
15 ラチェット歯
16 チャージレバー
101 ベース部材
110 第1の永久磁石(第1の固定磁石)
120 第2の永久磁石(第2の固定磁石)
130 電磁石(可動磁石)
140 アマチュア
142 係止爪
210 第1の電磁石(第1の固定磁石)
220 第2の電磁石(第2の固定磁石)
230 永久磁石(可動磁石)
240 アマチュア
242 係止爪



【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の固定磁石と、前記固定磁石間に配置された可動磁石とを備え、前記固定磁石又は可動磁石のいずれか一方を電磁石で構成し、他方を永久磁石で構成し、前記電磁石に電流を通流して着磁したときに発生する吸引磁力により前記可動磁石を前記一対の固定磁石のいずれか一方に吸着させる構成としたことを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記一対の固定磁石は磁極が互いに反対に向けられた状態で対向配置された永久磁石で構成され、前記可動磁石は電流が通流されたときに着磁される電磁石で構成され、前記電磁石に通流する電流の向きによって当該電磁石を前記一対の永久磁石のいずれか一方に吸着させる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記一対の永久磁石はそれぞれのS極とN極が互いに異なる磁極同士が対向配置され、前記電磁石が着磁されたときにS極又はN極となる両端部が前記一対の永久磁石の各磁極間に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
前記一対の固定磁石はそれぞれ電流が通流されたときに着磁される一対の電磁石で構成され、前記可動磁石は永久磁石で構成され、前記一対の電磁石のいずれか一方の電磁石を着磁して前記永久磁石を吸着させる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項5】
前記一対の電磁石は通流する電流の向きを制御することで前記永久磁石の磁極に対向する磁極をS極又はN極に変化させることが可能であることを特徴とする請求項4に記載の電磁駆動装置。
【請求項6】
前記可動磁石は所定の作用を行うためのアマチュアに一体的に搭載されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電磁駆動装置。
【請求項7】
前記アマチュアは基端部を中心にして揺動可能に構成され、前記可動磁石は前記アマチュアの揺動に伴って一対の固定磁石のいずれか一方に吸着されることを特徴とする請求項6に記載の電磁駆動装置。
【請求項8】
前記アマチュアは前記一対の固定磁石の対向方向に直線移動可能に構成され、前記可動磁石は前記アマチュアの移動に伴って一対の固定磁石のいずれか一方に吸着されることを特徴とする請求項6に記載の電磁駆動装置。
【請求項9】
前記アマチュアはカメラの絞り機構をロックするためのロック機構の一部を構成していることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の電磁駆動装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−324281(P2006−324281A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143527(P2005−143527)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】