説明

電線ジャケット用材料及び電線ジャケット

【課題】優れた難燃性を有し、成形性、柔軟性を向上した電線ジャケット用材料及び電線ジャケットを提供する。
【解決手段】フッ素樹脂(A)からなる電線ジャケット用材料であって、上記フッ素樹脂(A)は、融点が180℃を超え、245℃以下である温度であることを特徴とする電線ジャケット用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線ジャケット用材料、電線ジャケット及びLANに用いるケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
LANに用いるケーブルは、一般に、フッ素樹脂等からなる絶縁材により被覆した銅線を複数本束ねたものを、主に難燃性付与を目的として、電線ジャケットと称する樹脂製チューブ内に擁してなる。
【0003】
電線ジャケット用材料としては、旧来、ポリ塩化ビニルが用いられてきた。しかしながら、近時高まりつつある難燃性向上への要請に対しては、ポリ塩化ビニルでは不充分という問題がある。
【0004】
電線ジャケットとしては、また、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕からなる外部ジャケットを有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、難燃性が不充分である不都合があった。
【0005】
難燃性向上を目的として、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕が用いられるようになってきた。しかしながら、従来用いられてきたFEPは、高融点であり、成形性、柔軟性に劣る不都合があった。
【0006】
低融点のFEPとしては、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの2元系(例えば、特許文献2参照。)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)を変性剤として共重合した3元系(例えば、特許文献3及び特許文献4参照。)等が提案されている。しかしながら、低融点のFEPを電線ジャケットに使用することは知られていない。
【0007】
【特許文献1】特表昭60−501925号公報
【特許文献2】国際公開94/05712号パンフレット
【特許文献3】国際公開95/14791号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5677404号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、優れた難燃性を有し、成形性、柔軟性を向上した電線ジャケット用材料及び電線ジャケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フッ素樹脂(A)からなる電線ジャケット用材料であって、上記フッ素樹脂(A)は、融点が180℃を超え、245℃以下である温度であることを特徴とする電線ジャケット用材料である。
【0010】
本発明は、上記電線ジャケット用材料を用いて成形したことを特徴とする電線ジャケットである。
本発明は、上記電線ジャケットを備えたことを特徴とするLANに用いるケーブルである。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)からなるものである。
上記フッ素樹脂(A)は、フッ素を有する単量体を重合して得られる含フッ素重合体からなるものである。
上記フッ素樹脂(A)において、上記含フッ素重合体は1種又は2種以上存在するものであってもよい。
【0012】
上記フッ素樹脂(A)としては、例えば、後述する範囲内の融点を有するものであれば特に限定されないが、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、ビニリデンフルオライド〔VdF〕、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕等からなるフッ素含有単量体群のなかから選ばれる1種又は2種以上のフッ素含有単量体を重合することにより得られた含フッ素重合体からなるものが挙げられ、この含フッ素重合体は、上記1種又は2種以上のフッ素含有単量体と、エチレン[Et]、プロピレン等のフッ素非含有単量体群から選ばれる1種若しくは2種以上のフッ素非含有単量体とを共重合することにより得られたものであってもよい。
【0013】
上記含フッ素重合体としては、TFEと、TFEと共重合可能な単量体とからなる共重合体が好ましい。
上記「TFEと共重合可能な単量体」としては、HFP、PAVEが好ましく、該PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が挙げられる。即ち、上記TFEと、TFEと共重合可能な単量体とからなる共重合体としては、TFEとHFPとからなる共重合体であってもよいし、TFEとHFPとPAVEとからなる共重合体であってもよいし、TFEとPAVEとからなる共重合体であってもよい。
【0014】
上記フッ素樹脂(A)における上記TFEと、TFEと共重合可能な単量体からなる共重合体としては、例えば、TFE/HFP共重合体[FEP]、TFE/HFP/PAVE共重合体、TFE/PAVE共重合体、Et/TFE/HFP共重合体[EFEP]、TFE/HFP/VdF共重合体[THV]が挙げられるが、TFEとHFPとからなる共重合体、TFEとHFPとPAVEとからなる共重合体、又は、TFEとPAVEとからなる共重合体が好ましい。
上記「TFE/HFP共重合体」及び「TFEとHFPとからなる共重合体」は、それぞれ、TFEとHFPとのみからなる共重合体であってもよいし、TFEとHFPとのみからなる共重合体の特性を損なわない範囲内であれば、TFEとHFPと、更に、TFE及びHFPと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。上記「TFE/HFP/PAVE共重合体」及び上記「TFEとHFPとPAVEとからなる共重合体」、上記「TFE/PAVE共重合体」及び上記「TFEとPAVEとからなる共重合体」等、上に例示した共重合体も同様に、ここに明記した単量体のみからなる共重合体であってもよいし、更に該単量体と共重合可能な単量体とからなる共重合体であってもよい。
上記TFEとHFPとPAVEとからなる共重合体としては、TFEとHFPとPPVEとからなる共重合体が好ましい。
【0015】
本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)として上述の含フッ素共重合体からなるものを用いることにより、得られる電線ジャケットの柔軟性を向上することができる。この柔軟性向上の原因は明らかでないが、例えば、フッ素樹脂(A)がFEPである場合、上述のように低融点でありHFP単位量が比較的多いのでアモルファス性が高いことによるものと考えられる。
【0016】
上記フッ素樹脂(A)は、融点が180℃を超え、245℃以下である温度であるものである。
上記融点は、好ましい下限が195℃、より好ましい下限が210℃であり、好ましい上限が240℃、より好ましい上限が235℃である。
本発明の電線ジャケット用材料は、上記範囲内のように低融点のフッ素樹脂(A)からなるものであり、優れた難燃性を有し、成形性を向上することができたものである。
上記電線ジャケット用材料は、また、後述の軟質樹脂(B)等の他材を配合したものであっても、フッ素樹脂(A)の融点が上記範囲内のように低い。
本明細書において、上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕(RDC−220、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いて10℃/分の速度で昇温したときの結晶融解曲線における融解熱ピークに対応する温度である。
【0017】
上記フッ素樹脂(A)は、乳化重合、懸濁重合等の公知の重合方法を行い、公知の方法にて濃縮、凝析、乾燥等することにより適宜調製することができる。
【0018】
本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)に、更に、軟質樹脂(B)を配合してなるものであってもよい。
本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)に加え更に上記軟質樹脂(B)をも含むものである場合、柔軟性ないし可撓性に特に優れた成形体を得ることができ、一般に高価格であるフッ素樹脂の使用量低減による低価格化をも可能にすることができる。
【0019】
本明細書において、「軟質樹脂(B)」は、電線ジャケット用材料に配合することにより、配合しないものに比べ、得られる成形体に柔軟性ないし可撓性を付与し得る高分子である。
本明細書において、軟質樹脂(B)は、便宜上「樹脂」なる用語を含むが、樹脂のみならず、ゴムであってもよい概念である。
【0020】
上記軟質樹脂(B)としては、得られる成形体の柔軟性ないし可撓性を向上する点で、弾性率が100MPa以下であるものが好ましく、該範囲内であれば、上記軟質樹脂(B)の弾性率は、例えば0.1MPa以上であってもよい。上記軟質樹脂(B)の弾性率のより好ましい上限は50MPa、好ましい下限は0.5MPaである。
これらの弾性率の値は、厚さ1mm×幅5mm×長さ22.5mmのサンプルについて、室温条件下、粘弾性測定装置(RSA−2、レオメトリクス社製)を用いて、周波数3.3Hzにて測定して得られた値である。
【0021】
本発明の電線ジャケット用材料に用いる軟質樹脂(B)としては、上記特徴を有するものであれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0022】
上記シリコーンゴムとしては、メチルシリコーンゴム、ビニルメチルシリコーンゴム、フェニルメチルシリコーンゴム、フェニルビニルメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム等が挙げられる。
【0023】
上記フッ素ゴムとしては、特に限定されず、例えば、PVdF/HFP共重合体、PVdF/HFP/TFE共重合体、PVdF/クロロトリフルオロエチレン[CTFE]共重合体、TFE/プロピレン共重合体、HFP/エチレン共重合体、PAVE/オレフィン共重合体、フルオロシリコンゴム、フルオロフォスファゼンゴム等が挙げられるが、PVdF/HFP共重合体が好ましい。
【0024】
上記ポリ塩化ビニル[PVC]は、塩化ビニル単独重合体であってもよいし、塩化ビニルと他の共単量体とからなる共重合体であってもよいし、また、更に可塑剤等を配合して得られた軟質ポリ塩化ビニルであってもよい。
上記他の共単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;酢酸ビニル、アクリル酸エステル、アルキルビニルエーテル、臭化ビニル、フッ化ビニル、スチレン、アクリロニトリル等のビニル化合物;塩化ビニリデン等のビニリデン化合物等が挙げられる。
上記PVCとしては、成形性の点で、軟質ポリ塩化ビニルが好ましい。
上記軟質ポリ塩化ビニルとは、通常、塩化ビニルに軟化剤を配合して重合することにより得られるものであって、成形体にした際、引張破断時の伸びが180%以上になるPVCである。
上記軟質ポリ塩化ビニルとしては、例えば、特開平7−292195号公報に記載のものが挙げられる。
【0025】
その他のゴムとしては、特に限定されず、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ニトリルゴム[NBR]、スチレン−ブタジエンゴム[SBR]、エチレン−ブタジエンゴム[EPR]、エチレン−プロピレン−ジエンゴム[EPDM]等が挙げられる。
本発明の電線ジャケット用材料において、本発明における軟質樹脂(B)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
上記軟質樹脂(B)としては、なかでも、難燃性の点で、シリコーンゴム、フッ素ゴム及び/又はポリ塩化ビニルからなるものであることが好ましい。
本明細書において、上記「シリコーンゴム、フッ素ゴム及び/又はポリ塩化ビニル」とは、これら3種類のうち、シリコーンゴムのみ、フッ素ゴムのみ、ポリ塩化ビニルのみ、シリコーンゴムとフッ素ゴム、シリコーンゴムとポリ塩化ビニル、フッ素ゴムとポリ塩化ビニル、シリコーンゴムとフッ素ゴムとポリ塩化ビニル、の何れであってもよいし、また、シリコーンゴムとして1種又は2種以上を用いることができ、フッ素ゴム、ポリ塩化ビニルについても同様にそれぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
上記軟質樹脂(B)として用いるシリコーンゴム、フッ素ゴム及び/又はポリ塩化ビニルは、架橋性ゴムであってもよい。
【0027】
本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)に加え更に上記軟質樹脂(B)をも含むものである場合、通常、海島構造を有する。
本発明の電線ジャケット用材料は、上記海島構造を有することにより、上記フッ素樹脂(A)が有する難燃性を維持しつつ、成形加工性を向上することができる。
上記海島構造は、難燃性の点で、フッ素樹脂(A)が海成分であり且つ軟質樹脂(B)が島成分であるものが好ましい。
上記海島構造は、島成分である軟質樹脂(B)の粒子径が0.1〜30μmの範囲内であることが好ましく、0.3〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0028】
上記軟質樹脂(B)は、フッ素樹脂(A)と軟質樹脂(B)との合計質量の1〜70質量%であることが好ましい。
本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)と軟質樹脂(B)との比率が上記範囲内であると、上述の海島構造をとることが容易となる傾向にある。
フッ素樹脂(A)と軟質樹脂(B)との合計質量に占める軟質樹脂(B)のより好ましい下限は5質量%であり、より好ましい上限は40質量%、難燃性の点で更に好ましい上限は30質量%である。
【0029】
本発明の電線ジャケット用材料は、難燃剤を含むものであってもよい。
本発明の電線ジャケット用材料は、上記難燃剤をも含むものである場合、例えば軟質樹脂(B)としてオレフィンゴム等の難燃性に若干劣る材料を用いる場合であっても、得られる電線ジャケットの難燃性を維持することができる。
【0030】
上記難燃剤としては、特に限定されず、例えば、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;リン酸系難燃剤;臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤等が挙げられるが、金属水酸化物及びリン酸系難燃剤が好ましい。
【0031】
本発明の電線ジャケット用材料において、特に制限はないが、難燃剤は、フッ素樹脂(A)100質量部に対し、又は、更に軟質樹脂(B)からなるものである場合は、フッ素樹脂(A)と軟質樹脂(B)との合計100質量部に対し、1〜70質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、難燃剤を添加することによる難燃効果が特にみられず、70質量部を超えると、成形性や得られる電線ジャケットの柔軟性に劣る場合がある。上記難燃剤のより好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は50質量部である。
【0032】
本発明の電線ジャケット用材料は、難燃性、成形性等の性質を損なわない範囲で、フッ素樹脂(A)、軟質樹脂(B)及び難燃剤に加え、安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、核剤、滑剤、充填剤、分散剤、金属不活性剤、中和剤、加工助剤、離型剤、発泡剤、着色剤等の添加剤を配合してなるものであってもよい。
【0033】
本発明の電線ジャケット用材料としては、フッ素樹脂(A)に更に柔軟性を付与する目的で、軟質樹脂(B)を溶融混練等にて配合したものであってもよい。
上記溶融混練の手法としては、特に制限はなく、公知の手法を使用することができる。例えば、二軸押出機を使用して、フッ素樹脂(A)と軟質樹脂(B)とを両者が溶融する温度(例えば、180〜310℃)にて混合する方法等が挙げられる。
上記溶融混練は、その他、一軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール等の装置を用いて行うこともできる。
【0034】
本発明の電線ジャケット用材料は、上記軟質樹脂(B)として架橋性ゴムを使用する場合には、溶融混練を行う際、架橋剤(D)を存在せしめ、フッ素樹脂(A)と軟質樹脂(B)とを混合すると同時に、軟質樹脂(B)を架橋させる、いわゆる動的架橋の方法によっても製造することができる。
本発明の電線ジャケット用材料は、また、予め軟質樹脂(B)を架橋させた後に微粒子化したものを、フッ素樹脂(A)に上述の溶融混練の手法にて混合する方法でも製造することができる。
上記架橋剤(D)としては、特に制限はないが、有機化酸化物、アミン化合物、ポリオール化合物、イオウ化合物、フェノール化合物等を使用することが出来る。
上記動的架橋において、上記架橋剤(D)等の添加量は、得られる電線ジャケット材料の性質を損なわない範囲で適宜設定することができる。
【0035】
本発明の電線ジャケット用材料としては、上記溶融混練にて製造することにより、フッ素樹脂(A)が海成分であり且つ軟質樹脂(B)が島成分である海島構造を形成してなるものが、難燃性及び成形性を優れたものにする点で好ましい。
【0036】
本発明の電線ジャケット用材料は、例えば、ペレット、粉体等として得ることができるが、押出成形し易い点で、ペレットであることが好ましい。
上記ペレットは、上述した溶融混練を行うことにより調製することができる。
【0037】
本発明の電線ジャケット用材料は、上述の構成からなるものであるので、成形性、耐熱性に優れていることに加え、柔軟性にも優れている。
本発明の電線ジャケット用材料は、100〜700MPaの曲げ弾性率を示すものが好ましい。
上記曲げ弾性率は、好ましい下限が150MPa、より好ましい下限が200MPaであり、好ましい上限が600MPa、より好ましい上限が500MPaである。
本明細書において、曲げ弾性率は、テンシロン万能試験機(UTC−500、ORIENTEC製)を用いて、ASTM D−790に準じて室温にて測定した値である。
【0038】
本発明の電線ジャケット用材料は、上述の構成からなるものであるので、成形性、柔軟性がよく、特に優れた耐熱性を示し、従来よりも高い難燃性が要求されるLCC(Limited Combustible Cable)用ジャケットの成形材料としても好適に用いることができる。
本発明の電線ジャケット用材料を用いて成形したことを特徴とする電線ジャケットもまた、本発明の1つである。
上記電線ジャケットとは、一般に、コンピューター等の電子機器用ワイヤーやケーブルにおいて、難燃性付与、機械的損傷の防止等のためのもので、銅線及びその被覆材を納めるチューブ状体である。
【0039】
本発明の電線ジャケット用材料を用いた成形法としては、特に限定されず、例えば、クロスヘッド及び単軸押出機にて押出成形する方法等、公知の方法が挙げられる。
本発明の電線ジャケットは、用途等に応じ、適宜厚さを設定することができるが、通常、0.2〜1.0mmの範囲の厚さを有する。
本発明の電線ジャケットは、上記範囲の厚さを有するものであるので、特に柔軟性に優れている。
本発明の電線ジャケットは、本発明の電線ジャケット用材料を用いて成形したものであり、難燃性、柔軟性等に優れている。
【0040】
本発明の電線ジャケットは、特に限定されないが、例えば、電子機器配線用電線、電気機器用600V絶縁電線、LANケーブル等の通信ケーブル等に用いることができる。上記LANケーブルとは、LANに用いるケーブルのことである。
【0041】
本発明の電線ジャケットを備えたことを特徴とするLANに用いるケーブルもまた、本発明の1つである。
LANに用いるケーブルとしては、プレナムケーブル等が挙げられ、また、上述のLCCが好適である。
本発明のLANに用いるケーブルは、適宜厚さを設定することができるが、通常、0.2〜1.0mmに成形したものである。
本発明のLANに用いるケーブルは、本発明の電線ジャケットを備えたものであるので、難燃性、柔軟性等に優れている。
【発明の効果】
【0042】
本発明の電線ジャケット材料は、上述の構成からなるものであるので、成形性がよく、また、従来の高融点FEPのみからなる電線ジャケットが有する難燃性を損なうことなく、柔軟性に優れ、電線ジャケットを成形することができる。
本発明のLANに用いるケーブルは、上記電線ジャケットを備えたものであるので、難燃性、柔軟性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0044】
実施例及び比較例では、下記のフッ素樹脂(A)、軟質樹脂(B)、フッ素樹脂(C)を使用した。
<フッ素樹脂(A)>
A−1:テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体[FEP](ペレット、融点:210℃)
A−2:テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体(ペレット、融点:210℃)
A−3:テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体(ペレット、融点:200℃)
<軟質樹脂(B)>
B−1:シリコーンゴム(商品名;E−600、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
B−2:フッ素ゴム(商品名;DAI−EL G−701、ダイキン工業社製)
B−3:軟質ポリ塩化ビニル(商品名;SL−C、チッソ社製)
<フッ素樹脂(C)>
FEP(ペレット、融点:260℃)
・なお、フッ素樹脂(A)及びフッ素樹脂(C)の各融点は、示差走査熱量計〔DSC〕(RDC−220、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いて10℃/分の速度で昇温したときの結晶融解曲線における融解熱ピークに対応する温度である。
【0045】
各実施例、比較例で行った測定は、以下の方法により行った。
(1)試験片の作製
実施例及び比較例で作製した「電線ジャケット材料」のペレットから、圧縮成形機((株)神藤金属工業所製 NF−37型)を用いて、フッ素樹脂(A)の場合は300℃、フッ素樹脂(C)の場合は360℃の成形温度にて、成形圧力を3.5MPaにして1分間加熱圧縮した後5分間加圧水冷させて、曲げ弾性率測定用の試験片(ASTM D−790に準拠)及び難燃性評価用の試験片(縦×横×厚み=80mm×10mm×1.5mm)を作製した。
(2)曲げ弾性率の測定
上記試験片を使用して、テンシロン万能試験機(UTC−500、ORIENTEC製)を用いて、室温にて、ASTM D−790に準じて曲げ弾性率を測定した。
(3)難燃性の評価
上記試験片の一方の端に、5分間ガスバーナーを接炎した後、試験片の状態を下記基準にて判定した。
A:着火せず、煙も少ない
B:着火せず、煙が多い
C:着火する
(4)成形性の評価
上記「電線ジャケット材料」のペレットを使用して、30φ押出機(田辺プラスティックス機械(株)電線被覆装置)を使用して、スクリュー回転数10rpmの条件下で、電線ジャケット化を行った。
評価については、ジャケットの表面の観察を目視にて行い、下記基準にて判定した。
A:表面平滑で光沢あり
B:表面平滑で光沢なし
C:表面非平滑
【0046】
実施例1
フッ素樹脂(A−1)から上記(1)の方法にて試験片を作製し、曲げ弾性率及び難燃性の評価を行った。また、フッ素樹脂(A−1)について、上記(4)の方法にて、シリンダー温度300℃の条件下で、成形性の評価を行った。
【0047】
実施例2〜4
フッ素樹脂(A−1)と軟質樹脂(B)を、表1に示す割合で予備混合した後、40φ二軸押出機(プラスチック工学研究所製 BT−40)に供給して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数150rpmの条件下に溶融混練し、電線ジャケット用材料のペレットをそれぞれ製造した。得られたペレットから上記(1)の方法にて試験片を作製し、曲げ弾性率及び難燃性の評価を行った。また、得られたペレットについて、シリンダー温度300℃の条件下で、上記(4)の方法にて成形性の評価を行った。
【0048】
実施例1〜4について、結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、実施例1〜4から得られた試験片は、何れも優れた曲げ弾性率及び難燃性を示した。また、実施例1〜4から得られたペレットは、何れも優れた成形性を示した。
【0051】
実施例5
フッ素樹脂(A−2)から上記(1)の方法にて試験片を作製し、曲げ弾性率及び難燃性の評価を行った。また、フッ素樹脂(A−2)について、上記(4)の方法にて、シリンダー温度300℃の条件下で、成形性の評価を行った。
【0052】
実施例6〜8
フッ素樹脂(A−2)と軟質樹脂(B)を、表2に示す割合で予備混合した後、実施例2〜4と同様に溶融混練し、電線ジャケット用材料のペレットをそれぞれ製造した。得られたペレットから上記(1)の方法にて試験片を作製し、曲げ弾性率及び難燃性の評価を行った。また、得られたペレットについて、シリンダー温度300℃の条件下で、上記(4)の方法にて成形性の評価を行った。
【0053】
実施例5〜8について、結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示すように、実施例5〜8から得られたペレット及び試験片は、何れも優れた成形性及び難燃性を示した。特に、実施例6〜8から得られた試験片は、特に優れた曲げ弾性率を示した。
【0056】
実施例9
フッ素樹脂(A−3)から上記(1)の方法にて試験片を作製し、曲げ弾性率及び難燃性の評価を行った。また、フッ素樹脂(A−3)について、上記(4)の方法にて、シリンダー温度300℃の条件下で、成形性の評価を行った。
【0057】
実施例10〜12
フッ素樹脂(A−3)と軟質樹脂(B)を、表3に示す割合で予備混合した後、実施例2〜4と同様に溶融混練し、電線ジャケット用材料のペレットをそれぞれ製造した。得られたペレットから上記(1)の方法にて試験片を作製し、曲げ弾性率及び難燃性の評価を行った。また、得られたペレットについて、シリンダー温度300℃の条件下で、上記(4)の方法にて成形性の評価を行った。
【0058】
実施例9〜12について、結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
表3に示すように、実施例9〜12から得られたペレット及び試験片は、何れも優れた成形性及び難燃性を示した。特に、実施例10及び12から得られた試験片は、特に優れた曲げ弾性率を示した。
【0061】
比較例1
フッ素樹脂(C)から上記(1)の方法にて試験片を作製し、曲げ弾性率及び難燃性の評価を行った。また、フッ素樹脂(C)について、上記(4)の方法にて成形性の評価を行った。
【0062】
比較例2〜4
フッ素樹脂(A−1)の代わりにフッ素樹脂(C)を用い、実施例2〜4と同じ方法にて溶融混練し、ペレットを製造した。
【0063】
得られたペレットから上記(1)の方法にて試験片を作製し、曲げ弾性率及び難燃性の評価を行った。また、得られたペレットについて、上記(4)の方法にて成形性の評価を行った。
比較例1〜4の結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表4に示すように、比較例1〜4から得られた試験片は、いずれも成形性に劣るものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の電線ジャケット材料は、上述の構成からなるものであるので、成形性がよく、また、従来の高融点FEPのみからなる電線ジャケットが有する難燃性を損なうことなく、柔軟性に優れた電線ジャケットを成形することができる。
本発明のLANに用いるケーブルは、上記電線ジャケットを備えたものであるので、難燃性、柔軟性に優れている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂(A)からなる電線ジャケット用材料であって、
前記フッ素樹脂(A)は、融点が180℃を超え、245℃以下である温度である
ことを特徴とする電線ジャケット用材料。
【請求項2】
更に、軟質樹脂(B)を配合してなる請求項1記載の電線ジャケット用材料。
【請求項3】
フッ素樹脂(A)は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとからなる共重合体、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)とからなる共重合体、又は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)とからなる共重合体からなるものである請求項1又は2記載の電線ジャケット用材料。
【請求項4】
軟質樹脂(B)は、シリコーンゴム、フッ素ゴム及び/又はポリ塩化ビニルからなるものである請求項2又は3記載の電線ジャケット用材料。
【請求項5】
フッ素樹脂(A)が海成分であり、且つ、軟質樹脂(B)が島成分である海島構造を有するものである請求項2、3又は4記載の電線ジャケット用材料。
【請求項6】
軟質樹脂(B)は、フッ素樹脂(A)と軟質樹脂(B)との合計質量の1〜70質量%である請求項2、3、4又は5記載の電線ジャケット用材料。
【請求項7】
更に、難燃剤を含む請求項1、2、3、4、5又は6記載の電線ジャケット用材料。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の電線ジャケット用材料を用いて成形した
ことを特徴とする電線ジャケット。
【請求項9】
請求項8記載の電線ジャケットを備えた
ことを特徴とするLANに用いるケーブル。


【公開番号】特開2006−96968(P2006−96968A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364286(P2004−364286)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】