説明

電線処理装置

【課題】電線処理装置における被覆電線の切断後に行われる処理の不良を未然に防止するため、当該処理を行う前に電線端部の曲がりを検知する。
【解決手段】電線処理装置は、被覆電線10の端末部近傍を保持するクランプ11と、被覆電線10の端末部10aに所定の処理を施す処理ユニットと、クランプ11を前記処理ユニットに移動させる移動機構21と、クランプ11が処理ユニットに移動する間に、クランプ11に保持された被覆電線10の端末部10aが所定位置を通過したことを検出する端末部通過検出体L1と、端末部通過検出体L1が端末部10aの通過を検出することに基づき、被覆電線10の曲がりを検出する曲がり検出手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電線処理装置として、例えば、下記特許文献1に記載された電線処理装置が知られている。下記特許文献1に記載された電線処理装置は、圧着端子付きのハーネスを製造する電線処理装置であり、被覆電線の送給、被覆電線の切断、切断された被覆電線の被覆部の剥ぎ取り、および被覆部が剥ぎ取られた被覆電線の端部への端子圧着の各動作を順次行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−135286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記電線処理装置において、被覆電線の被覆部の剥ぎ取り後、クランプされた被覆電線の端部に曲がりが生じる場合がある。しかし、曲がりが生じた端部に端子を圧着させようとしても、正確に圧着できないおそれがある。また、被覆電線に対する圧着不良は、端子資材および電線資材の無駄を招くことになる。また、端子圧着が不適切に行われると、前記電線処理装置が予期しない大きな負荷を受け、故障するおそれがある。
【0005】
また、電線を切断してから剥ぎ取り処理を行うまでの間に、ゴム栓を挿入する処理を行う場合がある。この場合にも、電線切断後、クランプされた被覆電線の端部に曲がりが生じる場合がある。しかし、曲がりが生じた端部にゴム栓を挿入させようとしても、電線が真っ直ぐでないので、電線端末部にゴム栓を挿入できないおそれがある。この場合でも、その後の電線端末処理を行うことができず、不良電線を発生させたり、装置故障の原因となる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電線処理装置における被覆電線の切断後に行われる処理の不良を未然に防止するため、当該処理を行う前に電線端部の曲がりを検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電線処理装置は、被覆電線の端末部近傍を保持するクランプと、前記被覆電線の端末部に所定の処理を施す処理ユニットと、前記クランプを前記処理ユニットに移動させる移動機構と、前記クランプが前記処理ユニットに移動する間に、前記クランプに保持された前記被覆電線の端末部が所定位置を通過したことを検出する端末部通過検出体と、前記端末部通過検出体が前記端末部の通過を検出することに基づき、前記被覆電線の曲がりを検出する曲がり検出手段と、を備えたものである。
【0008】
上記電線処理装置によれば、クランプが処理ユニットに移動する間に、曲がり検出手段によって、被覆電線の端末部が所定位置を通過したことに基づいて被覆電線の曲がりが検出される。そのため、処理ユニットによって被覆電線の端末部に所定の処理を施す前に、被覆電線の曲がりを検出することができる。
【0009】
前記電線処理装置は、前記クランプに保持された前記被覆電線の根元部の位置を直接または間接的に検出する根元部位置検出手段をさらに備え、前記曲がり検出手段は、前記端末部通過検出体が前記端末部の所定位置の通過を検出すると、その時の前記根元部の位置と前記端末部の前記所定位置との位置差を算出する演算手段と、前記位置差が所定値以上であると前記被覆電線に曲がりが生じたと判定する判定手段と、を備えていてもよい。
【0010】
このことにより、比較的簡単な構成および方法によって、被覆電線の曲がりを検出することができる。
【0011】
前記移動機構は、回転角度位置の検出が可能なサーボモータを備え、前記根元部位置検出手段は、前記サーボモータの回転角度位置に基づいて前記被覆電線の根元部の位置を検出するものであってもよい。
【0012】
このことにより、サーボモータによって、被覆電線の根元部の位置を間接的に検出することができる。そのため、被覆電線の根元部の位置を検出するための専用のセンサ等が不要となり、装置の構成の簡単化を図ることができる。
【0013】
前記端末部通過検出体は、前記クランプに保持された前記被覆電線の移動方向および前記被覆電線の長手方向とそれぞれ交差する方向に光を投射する投光部と、前記投光部から投射された光を受ける受光部とを備えた光センサであってもよい。
【0014】
このことにより、光センサの投光部から受光部に向かう光は、被覆電線の端末部が所定位置を通過する際に遮断され、そのことによって被覆電線の端末部が所定位置を通過したことが検出される。なお、受光部は投光部から投射された光を直接受光するものであってもよく、投光部から投射された光が反射された後、その反射光を受光するものであってもよい。すなわち、上記光センサは、いわゆる透過型の光センサであってもよく、反射型の光センサであってもよい。
【0015】
前記処理ユニットは、前記被覆電線の端末部に端子を圧着させる端子圧着ユニットであってもよい。
【0016】
このことにより、端子圧着の前に被覆電線の端末部の曲がりを検出することができ、端子圧着不良を未然に防止することができる。
【0017】
前記処理ユニットは、前記被覆電線の端末部にゴム栓を装着させるゴム栓挿入ユニットであってもよい。
【0018】
このことにより、ゴム栓の装着前に被覆電線の端末部の曲がりを検出することができ、ゴム栓装着不良を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、被覆電線の切断後に行われる処理の前に電線端部の曲がりを検知することが可能となる。そのため、電線処理装置における被覆電線の切断後に行われる処理の不良を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る電線処理装置を示す概略平面図である。
【図2】実施形態1におけるクランプ、電線、および電線曲がりセンサを示す斜視図である。
【図3】実施形態1における電線曲がり検出を示す概略図であり、(a)は電線が真っ直ぐな場合、(b)は電線に曲がりが生じている場合を示す。
【図4】実施形態1における電線曲がりセンサとクランプと制御装置とを示す概略図である。
【図5】実施形態1における電線曲がり検出方法を示すフローチャートである。
【図6】変形例2におけるクランプおよび電線曲がりセンサを示す概略平面図である。
【図7】変形例3における電線曲がりセンサとクランプと制御装置とを示す概略図である。
【図8】変形例3に係る電線曲がり検出方法を示すフローチャートである。
【図9】変形例4におけるクランプおよび電線曲がりセンサの概略平面図である。
【図10】変形例5におけるクランプおよび電線曲がりセンサでの電線曲がり検知を示す概略図である。
【図11】実施形態2に係る電線処理装置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
《実施形態1》
(電線処理装置の全体構成)
以下、本実施形態に係る電線処理装置1について説明する。図1は、電線処理装置1の全体構成を模式的に示している。図1に示すように、電線処理装置1は、フロント側のクランプ11、リア側のクランプ12、フロント側の搬送ユニット13、リア側の搬送ユニット14、フロント側の端子圧着ユニット17、リア側の端子圧着ユニット18、カッターユニット9、制御装置2、フロント側の電線曲がりセンサ150、およびリア側の電線曲がりセンサ160を備えている。
【0022】
処理が施される被覆電線(以下、単に電線という)10は、図の矢印の方向に従って、電線処理装置1へ供給される。クランプ11は、電線処理装置1へ供給される電線10を供給方向の上流側で保持する。また、クランプ12は、電線処理装置1へ供給される電線10を供給方向の下流側で保持する。クランプ11,12で保持される電線10は、カッターユニット9で切断および被覆剥ぎ取りの処理が施される。クランプ11は、搬送ユニット13の作動により、カッターユニット9と端子圧着ユニット17との間を往復移動する。同様に、クランプ12は、搬送ユニット14の作動により、カッターユニット9と端子圧着ユニット18との間を往復移動する。カッターユニット9で切断および被覆剥ぎ取りの処理が施された電線10は、それぞれクランプ11,12が移動することで、端子圧着ユニット17,18へ搬送される。
【0023】
端子圧着ユニット17,18では、被覆剥ぎ取りが施された電線端部に端子を圧着させる処理が行われる。両端に端子が圧着された電線10は、排出トレイ2Aに排出される。その後、クランプ11,12は、図の矢印の方向より供給される新たな電線10を保持し、前述の動作を繰り返す。これにより、所定の電線長を有するハーネスが、順次製造される。
【0024】
制御装置2は、電線処理装置1の各種処理の制御を行う。なお、本実施形態において、クランプ11,12に保持される電線10は、カッターユニット9から端子圧着ユニット17,18に向かう際に、電線10の長手方向と直交する方向(図1の左右方向)に移動する。そこで、制御装置2は、いわゆる直交座標系に基づき、クランプ11,12の移動を制御する。
【0025】
電線曲がりセンサ150,160は、それぞれクランプ11,12にクランプされた電線10がカッターユニット9から端子圧着ユニット17,18に向かう間に、電線10の曲がりを検出する。本実施形態において、電線曲がりセンサ150,160は、カッターユニット9で切断および被覆剥ぎ取りが施された電線10が、それぞれ端子圧着ユニット17,18に搬送される間の経路に配置されている。
【0026】
(電線曲がりセンサの構成)
本実施形態において、電線曲がりセンサ150および電線曲がりセンサ160の構成は同様である。そのため、以下(後述する各変形例も含む)では、電線曲がりセンサ150のみを説明し、電線曲がりセンサ160についての詳細な説明は省略する。
【0027】
図2に示すように、電線曲がりセンサ150は、コの字形状のフレーム150aを有している。フレーム150aの上部151には、第1投光部A1および第2投光部A2が設けられている。フレーム150aの下部152には、第1受光部B1および第2受光部B2が設けられている。第1投光部A1から投射される光は第1受光部B1に入力され、第2投光部A2から投射される光は第2受光部B2に入力される。第1投光部A1から第1受光部B1に向かう光は、光軸E1を形成する。一方、第2投光部A2から第2受光部B2に向かう光は、光軸E2を形成する。第1投光部A1と第1受光部B1とは、第1センサL1を構成している。第2投光部A2と第2受光部B2とは、第2センサL2を構成している。なお、第1投光部A1および第2投光部A2から投射される光の種類は、特に限定されない。例えば、上記光は、可視光線、赤外線、紫外線、およびレーザ等であってもよい。
【0028】
第1投光部A1および第1受光部B1は、平面視において、電線10の端末部10aの移動経路上に位置している。すなわち、第1投光部A1および第1受光部B1は、電線10の端末部10aが光軸E1を横切るような位置に形成されている。なお、電線10の端末部10aとは、クランプされた電線10の先端と根元付近との間のいずれかの部分をいう。ただし、第1センサL1によって検出する端末部10aはできるだけ先端側の位置が好ましく、本実施形態では、電線10の被覆が剥ぎ取られ、端子圧着等の後処理が施される部分をいうものとする。なお、より詳細には、端末部10aは、被覆部分の先端であってもよく、被覆が剥ぎ取られた部分(芯線部分)であってもよい。
【0029】
第2投光部A2および第2受光部B2は、平面視において、電線10の根元部10bの移動経路上に位置している。すなわち、第2投光部A2および第2受光部B2は、電線10の根元部10bが光軸E2を横切るような位置に形成されている。なお、電線10の根元部10bとは、端末部10aとクランプ根元端との間のいずれかの部分をいう。ただし、根元部10bはできる根元側の位置が好ましく、本実施形態では、根元部10bは、電線10がクランプ11に保持される部分の近傍の部分をいうものとする。
【0030】
第1投光部A1と第2投光部A2とは、クランプ11の移動方向と直交する方向に並べられている。言い換えると、第1投光部A1と第2投光部A2とは、クランプ11に保持された電線10が真っ直ぐな場合に当該電線10が延びる方向(すなわち電線10の長手方向)に配置されている。そのため、図3(a)に示すように、クランプ11に保持された電線10が真っ直ぐな場合には、クランプ11の移動に伴って、電線10は光軸E1と光軸E2とを同時に遮光する。一方、図3(b)に示すように、クランプ11に保持された電線10が曲がっている場合には、電線10が光軸E1を遮光する時間と光軸E2を遮光する時間とは異なることになる。
【0031】
図4に示すように、第1受光部B1、第2受光部B2は、それぞれインターフェース2a、インターフェース2bを介して制御装置2の演算制御部2Cに接続されている。制御装置2は、演算制御部2Cと機械制御部2Mとを有している。機械制御部2Mは、図1に示す電線処理装置1における各装置(クランプ11,12、搬送ユニット13,14、端子圧着ユニット17,18、カッターユニット9)の制御を実行する。演算制御部2Cは、電線処理装置1の制御に必要な演算を実行する。本実施形態では、演算制御部2Cは、電線曲がりセンサ150,160の信号を受けて、電線10の曲がりも検出する。
【0032】
(電線の曲がりの検出方法)
次に、図5を参照しながら、電線曲がりセンサ150を用いた電線10の曲がりの検出方法について説明する。まず、ステップS1において、光軸E1および光軸E2の遮光を検出する。次に、ステップS2において、光軸E1が遮光された時間と光軸E2が遮光された時間との時間差Δtを算出する。続いて、ステップS3に進み、当該時間差Δtが所定値Δts以上であるか否かを判定する。
【0033】
電線10に曲がりが生じていない場合、電線10は光軸E1と光軸E2とを同時に遮光する(図3(a)参照)。言い換えると、電線10の端末部10aが光軸E1を遮光する時間と、根元部10bが光軸E2を遮光する時間との間に、実質的に時間差は生じない。一方、電線10が曲がっている場合、電線10の端末部10aが光軸E1を遮光する時間と、根元部10bが光軸E2を遮光する時間との間に、ずれが生じる(図3(b)参照)。ステップS3の判定結果がYESの場合には、電線10に曲がりが生じていると判断し、ステップS4に進む。一方、ステップS3の判定結果がNOの場合には、電線10に曲がりは生じていないと判断し、ステップS5に進み、電線処理装置1の運転を続行する。すなわち、クランプ11,12で保持している電線10を端子圧着ユニット17,18に搬送し、端子圧着ユニット17,18にて端子圧着処理を行う。なお、制御装置2の演算制御部2Cが上記ステップS3の処理を行う際、制御装置2は電線10に曲がりが生じたか否かを判定する判定手段として機能する。
【0034】
なお、上記所定値Δtsは、電線10の曲がりが端子圧着処理の際に問題とならない上限値に設定されている。上記所定値Δtsは、予め制御装置2に記憶されている。なお、上記所定値Δtsは、ユーザによって適宜変更されるようになっていてもよい。
【0035】
ステップS4では、電線10が曲がっていることに対応した所定の処理、すなわち異常処理を行う。ここでの異常処理は、例えば、電線10の曲がりを修復する処理であってもよい。また、異常処理として、電線処理装置1の運転を一時的に中止する処理を行ってもよい。さらに、クランプ11,12にて保持している電線10(すなわち、曲がりが検出された電線)を廃棄し、代わりに新たな電線10を保持して、次のハーネスを製造することにしてもよい。
【0036】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る電線処理装置1によれば、電線10を保持したクランプ11,12が端子圧着ユニット17,18に移動する間に、電線10の曲がりを検出することができる。そのため、電線10に端子を圧着する前に、電線10の曲がりを検出することができる。したがって、端子圧着不良を未然に防止することができる。また、端子圧着不良を防止することができるので、端子資材および電線資材の無駄を防止することができる。さらに、不適切な端子圧着を行うことに起因する電線処理装置1の故障を防止することができる。
【0037】
本実施形態に係る電線処理装置1は、電線10の端末部10aが所定位置を通過することを検出する第1センサL1と、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを検出する第2センサL2とを備え、電線10の端末部10aが所定位置を通過した時間と、電線10の根元部10bが所定位置を通過した時間との時間差Δtを算出し、この時間差が所定値Δts以上であると、電線10に曲がりが生じていると判断する。このように、本実施形態によれば、比較的簡単な構成および方法によって、端子圧着前に電線10の曲がりを検出することができる。
【0038】
なお、後述する変形例のように、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを、間接的に検出することも可能である。しかし、本実施形態によれば、電線10の根元部10bが所定位置を通過することは、第2センサL2によって直接検出される。したがって、電線10の根元部10bが所定位置を通過したことを精度良く検出することができ、電線10の曲がりを高精度に検出することができる。
【0039】
電線10の端末部10aの通過を検出するセンサは、電線10を曲げない限り、端末部10aと接触する接触式のセンサであってもよい。また、電線10の根元部10bの通過を検出するセンサも、根元部10bと接触する接触式のセンサであってもよい。しかし、本実施形態によれば、第1センサL1および第2センサL2は光センサであり、電線10と接触しない非接触式のセンサである。したがって、当該センサL1,L2によって電線10を曲げてしまうおそれがない。
【0040】
《変形例1》
上記実施形態では、センサL1,L2は、投光部A1,A2および受光部B1,B2を備えたいわゆる光透過型のセンサであった。しかし、センサL1,L2は、いわゆる光反射型のセンサであってもよい。例えば、上記実施形態のセンサL1,L2の投光部A1,A2に投光部および受光部を設け、受光部B1,B2に反射部を設けることによって、光反射型のセンサを構成するようにしてもよい。
【0041】
《変形例2》
前記実施形態1では、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを、第2センサL2で直接検出することとしていた。しかし、電線10の根元部10bはクランプ11,12の近傍に位置しているため、クランプ11,12が所定位置を通過することを検出することにより、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを間接的に検出することも可能である。
【0042】
例えば、図6に示すように、第2センサL2の光軸E2を、クランプ11の所定部分、例えば先端部11aや根元部11b等の移動経路上に配置してもよい。ここで、クランプ11は電線10よりも横幅が大きい。そこで、本変形例では、光軸E2は、それらの横幅の差に応じた所定長さ分だけ、電線10の移動方向にずれている。すなわち、本変形例では、電線10に曲がりが生じていない場合に、電線10の端末部10aが光軸E1を遮光し始める時間とクランプ11が光軸E2を遮光し始める時間とが一致するように、光軸E2は光軸E1に対して、電線10の長手方向(図6の上下方向)から移動方向(図6の左右方向)に所定長さだけずれた位置に配置されている。本変形例によれば、クランプ11が所定位置を通過することに基づいて、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを間接的に検出することができる。したがって、前記実施形態1と同様の方法により、電線10の曲がりを検出することができる。
【0043】
また、必ずしも、電線10の端末部10aが第1センサL1の光軸E1を遮光する時間と根元部10bやクランプ11等が第2センサL2の光軸E2を遮光する時間とが一致するように光軸E1,E2を設けなくてもよい。センサL1,L2の取付位置に関して、電線10等が光軸E1,E2を同時に遮光できるようにセンサL1,L2を設置する余裕がない場合は、一方のセンサをその光軸の位置が電線移動方向にずれるような位置に設置してもよい。この場合、そのずれた距離を時間に換算して計算し、センサの遮光時間差が所定値Δts以上であるかどうかに基づいて、電線の曲がりを検出することができる。
【0044】
また、スライダ22等のように、クランプ11と共に移動する物体が存在する場合には、光軸E2をスライダ22等の移動経路上に配置してもよい。このような場合であっても、スライダ22等が所定位置を通過することに基づいて、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを間接的に検出することができる。したがって、前記実施形態1と同様の方法によって、電線10の曲がりを検出することができる。
【0045】
《変形例3》
前記実施形態および各変形例では、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを第2センサL2によって直接または間接的に検出することとしていた。しかし、電線10の根元部10bの位置を検出する位置センサを設け、根元部10bが所定位置を通過することを当該位置センサで検出するようにしてもよい。図7に示す変形例は、クランプ11,12を移動させる移動機構としてサーボモータ21を用い、サーボモータ21の回転位置情報から電線10の根元部10bの位置を検出するものである。
【0046】
詳しくは、電線10の根元部10bの位置は、エンコーダ23により検出される。本変形例では、搬送ユニット13は、サーボモータ21と、サーボモータ21の回転角度位置を検出可能なエンコーダ23と、サーボモータ21の回転軸に取り付けられたボールねじ24と、ボールねじ24に嵌め込まれたスライダ22とを備えている。制御装置2は、サーボモータ21の制御を実行するモータ制御部2eを備えている。このモータ制御部2eの制御に基づき、モータ21が駆動する。エンコーダ23は、インターフェース2dを介して演算制御部2Cに接続されている。また、演算制御部2Cには、インターフェース2aを介して第1センサL1が接続されている。モータ制御部2eは、機械制御部2Mに接続されている。
【0047】
サーボモータ21が駆動すると、ボールねじ24が回転し、スライダ22がボールねじ24上を移動する。クランプ11はスライダ22に取り付けられている。そのため、スライダ22の移動にしたがって、クランプ11も移動する。
【0048】
スライダ22の移動量とモータ21の回転量との間には相関関係があるので、モータ21の回転角度位置に基づいてスライダ22の位置を検出することができ、ひいては電線10の根元部10bの位置を検出することができる。詳しくは、スライダ22の位置は、モータ21の回転角度位置に応じた位置とされる。クランプ11の位置は、スライダ22およびクランプ11の形状および寸法に基づいて、スライダ22の位置より一義的に算出される。電線10の根元部10bは、クランプ11の形状および寸法に基づいて、クランプ11の位置より一義的に算出される。
【0049】
以上のように、本変形例では、電線10の端末部10aの通過を検出する第1センサL1と、電線10の根元部10bの位置を検出する位置センサL3とが構成されている。
【0050】
次に、図8を参照しながら、本変形例における電線10の曲がり検出方法を説明する。まず、ステップS11において、光軸E1の遮光を検出する。すなわち、電線10の端末部10aが所定位置を通過したことを検出する。次に、ステップS12において、光軸E1が遮光された時の電線10の根元部10bの位置を検出する。続いて、ステップS13において、電線10の端末部10aの位置と根元部10bの位置との差ΔAを算出する。なお、端末部10aの位置は、光軸E1が配置されている位置であり、予め定められている。次に、ステップS14において、上記位置差ΔAが所定値ΔAs以上であるか否かを判定する。ステップS14の判定結果がYESの場合には、電線10の端末部10aの位置と根元部10bの位置との差が大きいため、電線10が曲がっていると判断し、ステップS15に進む。ステップS15では、前述の異常処理が行われる。一方、ステップS14の判定結果がNOの場合には、電線10は実質的に曲がっていないと判断し、ステップS16に進み、電線処理装置1の運転を続行する。すなわち、クランプ11で保持している電線10を端子圧着ユニット17に搬送し、端子圧着ユニット17にて端子圧着処理を行う。なお、制御装置2の演算制御部2Cが上記ステップS14の処理を行う際、制御装置2は電線10に曲がりが生じたか否かを判定する判定手段として機能する。
【0051】
上記所定値ΔAsは、電線10の曲がりが端子圧着処理の際に問題とならない上限値に設定されている。上記所定値ΔAsは、予め制御装置2に記憶されている。なお、上記所定値ΔAsは、ユーザによって適宜変更されるようになっていてもよい。
【0052】
本変形例によれば、電線10の根元部10bが所定位置を通過したことを検出する第2センサL2は不要となる。そのため、電線10の曲がり検出のために必要となる部品点数を削減することができる。
【0053】
《変形例4》
前記実施形態1および前記各変形例では、クランプ11は、電線10の長手方向と直交する方向に移動するものであった。しかし、クランプ11の移動方向は、電線10の長手方向と直交する方向に限定されるわけではない。例えば、図9に示すように、クランプ11は、所定点CPを中心として回転するものであってもよい。実施形態1および前記各変形例では、制御装置2は、いわゆる直交座標に基づいてクランプ11の移動を制御するものであった。これに対し、本変形例では、制御装置2は、いわゆる極座標に基づいてクランプ11の移動を制御する。
【0054】
本変形例においても、電線10の端末部10aの通過を検出する第1センサL1の光軸E1と、電線10の根元部10bの通過を検出する第2センサL2の光軸E2とは、電線10が真っ直ぐな場合に電線10が延びる方向(電線10の長手方向)に並んでいる。本変形例では、クランプ11は所定点CPを中心として回転するので、光軸E1と光軸E2とは、所定点CPから半径方向に沿って並んでいる。
【0055】
なお、本変形例においても、変形例2と同様、クランプ11が所定位置を通過することを検出することにより(符号E2”参照)、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを間接的に検出するようにしてもよい。また、クランプ11と共に移動する物体26が所定位置を通過することを検出することにより、電線10の根元部10bが所定位置を通過することを間接的に検出するようにしてもよい。
【0056】
また、変形例3と同様に、クランプ11を回転させる機構としてエンコーダ付きサーボモータ25を用い、サーボモータ25の回転位置情報から電線10の根元部10bの位置を検出するようにしてもよい。本変形例においても、電線10の端末部10aが所定位置を通過したときの根元部10bの位置を検出し、端末部10aの位置と根元部10bの位置との差に基づいて、電線10の曲がりを検出することができる。
【0057】
《変形例5》
前記実施形態1および各変形例では、電線曲がりセンサ150は1本の光軸E1または2本の光軸E1,E2を形成するものであった。しかし、電線曲がりセンサ150が形成する光軸の本数は、1本または2本に限定されず、3本以上であってもよい。光軸の本数を増やすことにより、より高精度な曲がり検出が可能となる。
【0058】
また、電線曲がりセンサ150は、いわゆる帯状の光を投射する投光部と、当該帯状の光を受光する受光部とを備えていてもよい。変形例5に係る電線曲がりセンサ150は、図10に示すように、検知可能範囲Wの帯状の光を投光および受光するものである。
【0059】
電線10が真っ直ぐな場合には、電線10の通過の際に、投射した帯状の光の全体(すなわち、検知可能範囲Wの全域)が遮光されることになる。一方、電線10に曲がりが生じている場合には、図10に示すように、電線10の通過の際に遮光される光は、投射した帯状の光の一部(すなわち、検知可能範囲Wよりも狭い範囲W)となる。したがって、受光する帯状光の範囲に基づいて、電線10の曲がりを検出することが可能となる。具体的には、受光する帯状光の範囲が所定範囲以下になると、電線10に曲がりが生じたと判定することができる。
【0060】
また、帯状の光を投射する電線曲がりセンサ150を用いる場合、電線10が通過する際の遮光時間に基づいて電線10の曲がりを検出することも可能である。すなわち、電線10が真っ直ぐな場合に比べて、電線10に曲がりが生じている場合には、電線10が帯状光の少なくとも一部を遮光している時間は長くなる。そのため、例えば、電線10が帯状光の少なくとも一部を遮光している時間が所定時間以上になると、電線10に曲がりが生じていると判定することができる。
【0061】
なお、本変形例においても、電線曲がりセンサ150は、光透過型のセンサであってもよく、光反射型のセンサであってもよい。
【0062】
《変形例6》
前記実施形態1および各変形例において、電線曲がりセンサ150は、光センサであった。しかし、電線曲がりセンサ150として、光センサ以外の非接触式センサを用いることも可能である。例えば、電線曲がりセンサ150は、ホール効果、磁気異方性、電磁誘導等の磁気を用いたセンサであってもよい。
【0063】
《変形例7》
また、電線10に曲がりが生じない限り、電線曲がりセンサ150として、接触式のセンサを用いることも可能である。すなわち、電線曲がりセンサ150は、クランプ10に保持された電線10が移動する際に、電線10またはクランプ11,12等と接触することにより、電線10の端末部10aおよび根元部10bの所定位置の通過を検出するものであってもよい。また、電線10の端末部10aの通過を検出するセンサとして非接触式センサを用い、電線10の根元部10bを直接または間接的に検出するセンサとして、接触式のセンサを用いてもよい。
【0064】
《その他の変形例》
前記実施形態1および各変形例において、光軸E1,E2は、鉛直方向に延びる光軸であった。しかし、光軸E1,E2は鉛直方向から傾いた方向に延びていてもよい。光軸E1,E2は、電線10の移動方向と直交する方向に限らず、当該移動方向と斜めに交差する方向に延びていてもよい。
【0065】
《実施形態2》
前記実施形態1および各変形例において、電線10は、カッターユニット9において切断および被覆剥ぎ取りの処理を施された後は、端子圧着ユニット17,18に直ちに搬送され、端子が圧着されていた。しかし、電線処理装置1は、電線切断後に電線10の端末部10aにゴム栓を挿入するものであってもよい。
【0066】
図11に示すように、本実施形態に係る電線処理装置1は、実施形態1の電線処理装置1において、カッターユニット9と端子圧着ユニット17,18との間に、ゴム栓挿入ユニット31,32をそれぞれ設置したものである。電線曲がりセンサ150,160は、カッターユニット9とゴム栓挿入ユニット31,32との間に設置されている。
【0067】
本実施形態では、カッターユニット9で切断された電線10は、クランプ11,12が移動することでゴム栓挿入ユニット31,32へ搬送され、ゴム栓挿入処理後、再度カッターユニット9に戻され、剥ぎ取りの処理が施される。このゴム栓挿入ユニット31,32に移動中に電線10の曲がりが検出される。また、実施形態1と同様に、剥ぎ取り後、端子圧着ユニット17,18に移動中にも電線10の曲がりが検出される。
【0068】
ゴム栓挿入ユニット31,32は、電線切断された電線端部に、後処理の被覆剥ぎ取り長さより奥部にゴム栓を装着させる。ゴム栓が装着された電線10は、再度カッターユニット9に戻され、被覆剥ぎ取りが行われる。その後、クランプ11,12が移動することで、端子圧着ユニット17,18へ搬送される。端子圧着ユニット17,18では、ゴム栓が装着された電線端部に端子を圧着させる。そして、両端に端子が圧着された電線10は、排出トレイ2Aに排出される。その後、クランプ11,12は、図の矢印の方向から供給される新たな電線10を保持し、前述の処理を順に繰り返す。これにより、所定の電線長を有するハーネスが、順次製造される。
【0069】
本実施形態によれば、ゴム栓が挿入される前に、電線10の曲がりを検出することができる。そのため、ゴム栓の挿入不良を未然に防止することができる。また、ゴム栓挿入不良を防止することができるので、ゴム栓資材および電線資材の無駄を防止することができる。さらに、不適切なゴム栓挿入を行うことに起因する電線処理装置1の故障を防止することができる。
【0070】
《その他の発明》
本発明に係る電線処理装置は、被覆電線の端末部近傍を保持するクランプと、前記被覆電線の端末部に所定の処理を施す処理ユニットと、前記クランプを前記処理ユニットに移動させる移動機構と、前記クランプが前記処理ユニットに移動する間に、前記クランプに保持された前記被覆電線の端末部が所定位置を通過したことを検出する端末部通過検出体と、前記端末部通過検出体が前記端末部の通過を検出することに基づき、前記被覆電線の曲がりを検出する曲がり検出手段と、を備えたものである。
【0071】
前記電線処理装置は、前記クランプに保持された前記被覆電線の根元部が所定位置を通過したことを直接または間接的に検出する根元部通過検出手段を前記端末部通過検出体よりクランプ側にさらに備え、前記曲がり検出手段は、前記端末部通過検出体が前記端末部の前記所定位置の通過を検出した時間と、前記根元部通過検出手段が前記根元部の前記所定位置の通過を検出した時間との時間差を算出する演算手段と、前記時間差が所定値以上であると前記被覆電線に曲がりが生じたと判定する判定手段と、を備えていてもよい。
【0072】
このことにより、比較的簡単な構成および方法によって、被覆電線の曲がりを検出することができる。なお、ここでいう「時間差」は、計算により距離など別の数値に変換されて処理されることも含まれる。
【0073】
前記根元部通過検出手段は、前記クランプに保持された前記被覆電線の根元部が所定位置を通過したことを直接検出するセンサであってもよい。
【0074】
このことにより、被覆電線の根元部が所定位置を通過したことが直接検出される。そのため、被覆電線の根元部が所定位置を通過したことを高精度に検出することができる。
【0075】
前記根元部通過検出手段は、前記クランプが所定位置を通過したことを検出することによって、前記被覆電線の根元部が所定位置を通過したことを間接的に検出する手段であってもよい。
【0076】
あるいは、前記電線処理装置は、前記クランプが前記処理ユニットに移動する際に前記クランプと共に移動する移動体をさらに備え、前記根元部通過検出手段は、前記移動体が所定位置を通過したことを検出することによって、前記被覆電線の根元部が所定位置を通過したことを間接的に検出する手段であってもよい。
【0077】
このことにより、被覆電線の根元部が所定位置を通過したことが間接的に検出される。この場合、被覆電線の根元部の通過を直接検出する必要がないので、根元部通過検出手段の構成または設置位置の自由度を高めることができる。
【0078】
前記電線処理装置は、前記クランプに保持された前記被覆電線の移動方向および前記被覆電線の長手方向と直交する方向に向かって、前記被覆電線の長手方向に延びる帯状の光を投射する投光部と、前記投光部から投射された光を受ける受光部とを備えた光センサをさらに備え、前記端末部通過検出体は、前記光センサの一部を構成していてもよい。
【0079】
このことにより、帯状の光を利用して、被覆電線の曲がりが検出される。
【符号の説明】
【0080】
1 電線処理装置
2 制御装置
2C 演算制御部(演算手段)
10 電線(被覆電線)
10a 端末部
10b 根元部
11,12 クランプ
13,14 搬送ユニット(移動機構)
17,18 端子圧着ユニット(処理ユニット)
21 サーボモータ
22 スライダ(移動体)
31,32 ゴム栓挿入ユニット(処理ユニット)
150,160 電線曲がりセンサ
A1 投光部
B1 受光体
L1 第1センサ(端末部通過検出体)
L2 第2センサ(根元部通過検出手段)
L3 位置センサ(根元部位置検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の端末部近傍を保持するクランプと、
前記被覆電線の端末部に所定の処理を施す処理ユニットと、
前記クランプを前記処理ユニットに移動させる移動機構と、
前記クランプが前記処理ユニットに移動する間に、前記クランプに保持された前記被覆電線の端末部が所定位置を通過したことを検出する端末部通過検出体と、
前記端末部通過検出体が前記端末部の通過を検出することに基づき、前記被覆電線の曲がりを検出する曲がり検出手段と、
を備えた電線処理装置。
【請求項2】
前記クランプに保持された前記被覆電線の根元部の位置を直接または間接的に検出する根元部位置検出手段をさらに備え、
前記曲がり検出手段は、
前記端末部通過検出体が前記端末部の所定位置の通過を検出すると、その時の前記根元部の位置と前記端末部の前記所定位置との位置差を算出する演算手段と、
前記位置差が所定値以上であると前記被覆電線に曲がりが生じたと判定する判定手段と、を備えている、請求項1に記載の電線処理装置。
【請求項3】
前記移動機構は、回転角度位置の検出が可能なサーボモータを備え、
前記根元部位置検出手段は、前記サーボモータの回転角度位置に基づいて前記被覆電線の根元部の位置を検出する、請求項2に記載の電線処理装置。
【請求項4】
前記端末部通過検出体は、前記クランプに保持された前記被覆電線の移動方向および前記被覆電線の長手方向とそれぞれ交差する方向に光を投射する投光部と、前記投光部から投射された光を受ける受光部とを備えた光センサである、請求項1〜3のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【請求項5】
前記処理ユニットは、前記被覆電線の端末部に端子を圧着させる端子圧着ユニットである、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【請求項6】
前記処理ユニットは、前記被覆電線の端末部にゴム栓を装着させるゴム栓挿入ユニットである、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電線処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−256615(P2012−256615A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208091(P2012−208091)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2008−89881(P2008−89881)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】