説明

電線用防水シールの供給装置

【課題】きわめて簡単な構造を用いながらも防水シールの向きを確実にかつ高速に揃えることができる防水シール供給装置を提供する。
【解決手段】第1の搬送手段10によって連続的に搬送されて来る防水シール1のうち、小径部1aが前側となって搬送された来たものが円形部材31の受取孔33に入り込んで保持され、円形部材31の回転に伴って前方に搬送されて第2の搬送手段20に受け渡される。これに対して、大径部が前側となって搬送された来た防水シール1は、払い出しピンによって排除されて第1の搬送手段10に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の末端に装着される防水シールを供給する装置に関し、より詳しくは、簡単な構造を用いながら防水シールの向きを確実に揃えて供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線同士を相互に接続するコネクタのなかには、段付き円筒状のゴム製防水シール(ゴム栓あるいはワイヤーシールとも呼ぶ)を電線の端末部に外嵌するとともに(例えば、下記特許文献1の図15を参照)、このゴム製防水シールをハウジングの内壁面に密着させることによって防水構造としたものがある。
【0003】
このようなコネクタを製造する際には、電線端末部の絶縁被覆を剥いで芯線を露出させるとともに露出させた芯線に端子を圧着する端末処理作業に同期させて、防水シールを一つずつ向きを揃えて供給する必要がある。
そこで、防水シールの向きを揃えて整列させるボールフィーダと、整列させた防水シールを電線端末処理装置に順次供給するリニアフィーダとを組み合わせた防水シール供給装置が用いられている(例えば、下記特許文献1の図16を参照)。
【0004】
ところで、近年、電線の細径化および軽量化に伴って防水シールが小径化、薄肉化しているため、ボールフィーダを用いて防水シールの向きを揃える操作が困難となっている。 そこで、防水シールの向きを揃える新しい装置が採用されている。
この装置の構造について図5および図6を参照して概説すると、防水シール1を供給する供給配管2はボールフィーダ等に接続されていて、防水シール1の軸線と搬送方向とが一致するように防水シール1を連続的に供給するようになっているが、小径部1aが前側になったり大径部1bが前側になったりしてその向きは一定していない。
【0005】
また、供給配管2が接続されている方向反転機構のハウジング3の内部には、昇降自在かつ回動自在に支持された円柱状のスライダ4が内蔵され、その上部に貫設されている挿通孔5の内部に防水シール1を一つだけ受け入れるようになっている。
そして、挿通孔5の内部に収納された防水シールは、図示されない光学センサによってその小径部1aおよび大径部1bが識別され、小径部1aおよび大径部1bのいずれが供給方向の前側にあるのかを判別するようになっている。
【0006】
図5(a)に示したように小径部1aが供給方向の前側にある場合には、アクチュエータ6はスライダ4をそのまま上昇させる。
すると、空気配管7を介して供給されている圧縮空気が挿通孔5の内部にある防水シール1を供給配管8の内部に押しやるので、小径部1aを前側として防水シール1を供給することができる。
これとは反対に、図6(a)に示したように防水シール1の大径部1bが供給方向の前側にある場合には、アクチュエータ6はスライダ4の向きを180度回動させながら上昇させる。
これにより、やはり小径部1aが前側となるように防水シール1を供給することができる。
【0007】
なお、このような防水シールの向きを反転させる装置に類似した機構が、下記特許文献2に記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−189429号公報
【特許文献2】特許第3669183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、最近では、防水シール1の小径化および薄肉化がさらに進み、光学センサを用いて小径部1aおよび大径部1bを識別することがますます困難となっている。
また、上述した方向反転機構においては、防水シール1を一つ供給するごとにスライダ4を昇降させなければならないことに加えて、防水シール1の向きを反転させるためにはスライダ4を180度回動させなければならず、防水シール1の向きを揃える作業を高速に行うことが困難である。
【0010】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、きわめて簡単な構造を用いながらも防水シールの向きを確実にかつ高速に揃えることができる防水シール供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
その軸線方向の一端の外径寸法が他端の外径寸法より小さい段付き円筒状の電線用防水シールの向きを揃えて供給する装置であって、
前記防水シールの軸線が搬送方向と一致するように前記防水シールを連続させて前方に搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段によって搬送されて来た防水シールのうち、外径の小さい一端側が前側となって搬送されて来た防水シールを選別して受け取る選別機構と、
前記選別機構から防水シールを受け取って搬送する第2の搬送手段と、を備え、
前記選別機構が、
前記防水シールの一端の外径寸法よりは大きいが前記他端の外径寸法よりは小さい内径寸法を有するとともに前記一端が前側となるように前記第1の搬送手段によって搬送されてきた防水シールを受け取ることができるようにその向きが定められた受取孔、および前記第1の搬送手段によって搬送されてきた防水シールに当接して前記第1の搬送手段の搬送経路から取り除く突出部が、その円周方向に並ぶように並設されている円形部材と、
この円形部材をその軸線回りに回転駆動する駆動手段と、を有していることを特徴とする。
【0012】
なお、円形部材は、円板状、円柱状、あるいは算盤玉の形状とすることができる。
受取孔および突出部は、円形部材の外周面(例えば、缶詰のラベルを貼る面)上において円周方向に並ぶように配設することもできるし、円形部材の側面(例えば、缶詰の蓋を開けるために缶切りで切る面)上において円周方向に並ぶように配設することもできる。 円形部材が算盤玉の場合には、傾斜面上に配設することもできる。
突出部は、第1の搬送手段の搬送経路から防水シールを取り除くことができるものであれば任意の形状とすることができる。
第2の搬送手段は、防水シールのうち外径寸法の大きい部分と小さい部分との段付き部分に係合し、円形部材の受取孔から防水シールを抜き取るように構成することができる。
【0013】
すなわち、請求項1に記載した電線用防水シールの供給装置においては、第1の搬送手段によって連続的に搬送されて来る防水シールのうち、外径の小さい一端側(小径部)が前側となって搬送された来た防水シールは、円形部材の受取孔に入り込んで保持された後、円形部材の回転方向前方へと搬送され、そこに位置している第2の搬送手段によって受取孔から取り出されてさらに搬送される。
これに対して、第1の搬送手段によって連続的に搬送されて来る防水シールのうち、外径の大きい他端側(大径部)が前側となって搬送された来た防水シールは、円形部材の受取孔に入り込むことができず、その他端側が円形部材の表面と摺動し続ける状態となる。 そして、円形部材の回転に伴って突出部が接近し、摺動状態にある防水シールに当接すると、この防水シールは突出部によって押しのけられて第1の搬送手段の搬送経路から取り除かれる。
したがって、請求項1に記載した供給装置によれば、第1の搬送手段によって連続的に搬送されて来る防水シールのうち、外径の小さい一端側(小径部)が前側となって搬送された来た防水シールのみを第2の搬送手段に受け渡すことができるから、第2の搬送手段により搬送されて供給される防水シールの向きが揃うことになる。
また、円形部材は、常に所定の回転速度で回転し続ければよく、第1の搬送手段から搬送されて来た防水シールの向きによってその動作が変化することはない。
さらに、円形部材に多数の受取孔を並設することにより、第1の搬送手段から第2の搬送手段へと多数の防水シールを迅速に受け渡すことができるから、多数の防水シールの向きを高速度に揃えて供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、きわめて簡単な構造を用いながらも防水シールの向きを確実にかつ高速に揃えることができる電線用防水シール供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1乃至図4を参照し、本発明に係る電線用防水シールの供給装置の一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、防水シールを搬送する方向を前方と言い、鉛直方向を上下方向と言う。
【0016】
図1および図2に示したように、本実施形態の供給装置100は、第1の搬送手段としてのボールフィーダ10と、第2の搬送手段としてのリニアフィーダ20と、両フィーダ10,20の間に介装された選別機構30とを備えている。
【0017】
ボールフィーダ10は、防水シール1を貯留し選別するボール本体11と、このボール本体11を振動させる加振部12とを有している。
そして、ボール本体11には、防水シール1を貯留する貯留部13,貯留部13から防水シール1を集める収集部14,収集した防水シール1の軸線方向と搬送方向とが一致するように防水シール1を整列させる整列部15,整列させた防水シールを前方に搬送する搬送部16が含まれている。
これにより、搬送部16によって搬送されて来る防水シール1は、図3および図4に拡大して示したように、その小径部1aが前側となって搬送されて来るものと、その大径部1bが前側となって搬送されて来るものとが混在している。
【0018】
リニアフィーダ20は、選別機構30から受け取った防水シール1を搬送する搬送部21と、この搬送部21を加振する加振部22と、図示されない電線端末処理装置に防水シール1を受け渡す受渡部23とを有している。
そして、搬送部21の先端は、防水シール1の段付部に係合して防水シール1を受け取るようになっている。
【0019】
選別機構30は、ボールフィーダ10の搬送部16が防水シール1を搬送する方向に対し垂直かつ水平な軸線の回りに回転できるように図示されない支持手段によって支持された円板状部材31と、この円板状部材31を一定な回転速度で回転駆動するための電動モータ32とを有している。
そして、円板状部材31の外周面31aには、防水シール1の小径部1aの外径寸法よりは大きいが大径部1bの外径寸法よりは小さい内径寸法を有した多数の受取孔33が、円周方向に等しい間隔を開けて凹設されている。
なお、受取孔33は、防水シール1の小径部1aを受け入れて保持することができる深さを有しているとともに、ボールフィーダ10の搬送部16から押し出されてくる防水シール1を受け取ることができるようにその向きが定められている。
さらに、円板状部材31の外周面31aには、半径方向外側に延びる少数の払い出しピン(突出部)34が受取孔33の間の位置に突設されている。
【0020】
これにより、図3に示したように、ボールフィーダ10の搬送部16から連続して押し出されて来る防水シール1のうち、その小径部1aが前側となっている防水シール1は、円板状部材31の外周面31aに凹設されている多数の受取孔33の一つの内部に入り込んで保持され、円板状部材31の回転に伴って上方に移動する。
そして、回転する円板状部材31の最上部に到達した防水シール1は、リニアフィーダ20の搬送部21のうち、防水シール1の段付部1cと係合するように形成されている先端部21aと係合して搬送部21に受け取られる。
すると、搬送部21に受け取られた防水シール1は、その小径部1aが下方を向くように整列した状態で前方に搬送され、受渡部23において電線端末処理装置に供給される。
【0021】
これに対して、図4(a)に示したように、ボールフィーダ10の搬送部16から連続して押し出されて来る防水シール1のうち、その大径部1bが前側となっている防水シール1は、その大径部1bが受取孔33の内部に入り込むことができず、円板状部材31の外周面31aと摺動し続けることになる。
そして、円板状部材31の回転に伴って徐々に接近する払い出しピン34が防水シール1に当接すると、図4(b)に示したように防水シール1が払い出しピン34によって持ち上げられ、ボールフィーダ10の搬送部16から脱落して貯留部13に戻る。
これにより、ボールフィーダ10から搬送されて来た防水シール1のうち、その大径部1bが前側となっている防水シール1を、確実にボールフィーダ10の貯留部12に戻すことができる。
【0022】
すなわち、本実施形態の供給装置100は、既存のボールフィーダ10とリニアフィーダ20との組み合わせに選別機構30を追加したものであり、その構造はきわめて簡単である。
しかしながら、防水シール1の大径部1bは円板状部材31の受取孔33に入り込むことができないから、この選別機構30からリニアフィーダ20に受け渡された防水シール1は、常にその小径部1aが下方を向くように整列する。
また、円板状部材31は、常に所定の回転速度で回転し続ければよく、ボールフィーダ10から搬送されて来た防水シール1の向きによってその動作が変化することはない。
したがって、本実施形態の供給装置100によれば、防水シールの向きを確実にかつ高速に揃えて電線端末処理装置に供給することができる。
【0023】
以上、本発明に係る電線用防水シールの供給装置の一実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、円板状部材の外周面に受取孔および払い出しピンが配設されている。
これに対して、円板状部材の側面に受取孔および払い出しピンが円周方向に並ぶように配設するとともに、ボールフィーダが防水シールを搬送する方向と円板状部材の回転軸線とが平行となるように円板状部材を配設することによっても、同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態の供給装置を示す正面図。
【図2】図1に示した供給装置の平面図。
【図3】円形部材の作動を説明する平面図(a)および正面図(b)。
【図4】円形部材の作動を説明する正面図。
【図5】従来の供給装置の作動を説明する正面図(a)および平面図(b)
【図6】従来の供給装置の作動を説明する正面図(a)および平面図(b)
【符号の説明】
【0025】
1 防水シール
1a 小径部
1b 大径部
1c 段付部
2 供給配管
3 ハウジング
4 スライダ
5 挿通孔
6 アクチュエータ
7 空気配管
8 供給配管
10 ボールフィーダ(第1の搬送手段)
11 ボール本体
12 加振部
13 貯留部
14 収集部
15 整列部
16 搬送部
20 リニアフィーダ(第2の搬送手段)
21 搬送部
22 加振部
23 受渡部
30 選別機構
31 円板状部材
31a 外周面
32 駆動手段
33 受取孔
34 払い出しピン(突出部)
100 一実施形態の電線用防水シールの供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その軸線方向の一端の外径寸法が他端の外径寸法より小さい段付き円筒状の電線用防水シールの向きを揃えて供給する装置であって、
前記防水シールの軸線が搬送方向と一致するように前記防水シールを連続させて前方に搬送する第1の搬送手段と、
前記第1の搬送手段によって搬送されて来た防水シールのうち、外径の小さい一端側が前側となって搬送されて来た防水シールを選別して受け取る選別機構と、
前記選別機構から防水シールを受け取って搬送する第2の搬送手段と、を備え、
前記選別機構が、
前記防水シールの一端の外径寸法よりは大きいが前記他端の外径寸法よりは小さい内径寸法を有するとともに前記一端が前側となるように前記第1の搬送手段によって搬送されてきた防水シールを受け取ることができるようにその向きが定められた受取孔、および前記第1の搬送手段によって搬送されてきた防水シールに当接して前記第1の搬送手段の搬送経路から取り除く突出部が、その円周方向に並ぶように並設されている円形部材と、
この円形部材をその軸線回りに回転駆動する駆動手段と、
を有していることを特徴とする電線用防水シールの供給装置。
【請求項2】
前記円形部材が円板状部材に形成され、前記受取孔および前記突出部が前記円板状部材の外周面上において円周方向に並ぶように並設されていることを特徴とする請求項1に記載した電線用防水シールの供給装置。
【請求項3】
前記円形部材が円板状部材に形成され、前記受取孔および前記突出部が前記円板状部材の側面上において円周方向に並ぶように並設されていることを特徴とする請求項1に記載した電線用防水シールの供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−153525(P2007−153525A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350647(P2005−350647)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000228257)日本オートマチックマシン株式会社 (39)
【出願人】(597013205)オスコ産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】