電線端末カバー
【課題】 本発明は、電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる電線端末カバーを提供することを課題とする。
【解決手段】 異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部8を複数有する電線端末カバー1において、第1構成体2と、第2構成体3と、第1構成体2及び第2構成体3を開閉自在に連結可能な連結部4とを更に備え、収納部8は、第1構成体2と第2構成体3とを閉じた状態で略筒形状に形成され、複数の収納部8は、筒芯方向と直交する方向Aに並んで設けられると共に、第1構成体2と第2構成体3とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体2と第2構成体3とに分かれて形成されることを特徴とする。
【解決手段】 異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部8を複数有する電線端末カバー1において、第1構成体2と、第2構成体3と、第1構成体2及び第2構成体3を開閉自在に連結可能な連結部4とを更に備え、収納部8は、第1構成体2と第2構成体3とを閉じた状態で略筒形状に形成され、複数の収納部8は、筒芯方向と直交する方向Aに並んで設けられると共に、第1構成体2と第2構成体3とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体2と第2構成体3とに分かれて形成されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線端末の導電部を覆うことにより電線の端末処理を行う電線端末カバーに関し、特に、線径の異なる電線に対応可能な電線端末カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、引留クランプを用いて電柱に引留固定する高圧絶縁電線の引留部において、引留クランプの把持部より突出する高圧絶縁電線の端末は、電気的絶縁性を確保するために電線端末カバーで覆って保護されている。また、停電作業などで電柱を挟んで両側の引留クランプ間を接続する縁回し線を切断したような際も、その高圧絶縁電線の切断個所の端末は、同じように電線端末カバーで覆って保護されている。
【0003】
このような電線端末カバーには、電線を収納可能な収納部を1つ有する電線端末カバー(特許文献1,2参照)や、2以上の異なる電線の線径に対応して複数の収納部を有する電線端末カバー(後述する図13の例及び特許文献3参照)など様々なものがある。
【0004】
例えば、特許文献1に示す電線端末カバーは、有底筒状の収納部を1つ備え、その収納部の開口部にストッパーが装着されている。特許文献2に示す電線端末カバーは、収納部の内周面に突起が複数中心方向に向けて設けられている。これらの電線端末カバーは、このストッパー又は突起が変位することによって電線の線径に左右されることなく異なる線径の電線に使用できる。
【0005】
図13に示す複数の収納部を有する電線端末カバー400は、有底筒状に形成されており、異なる電線の線径に対応して異なる内径を有する筒状形状の収納部401を複数備え、これらの収納部401が筒芯方向Aに沿って開口部402から底部403に向かって内径が小さくなるように並んで設けられる。このように収納部401を配列することにより、電線端末カバー400は、最も開口部402側にある収納部401で最も太い線径の電線に対応し、最も底部403側の収納部401で最も細い線径の電線に対応する。図13に示す電線端末カバー400の例は、4つの線径に対応している。また、特許文献3に示す電線端末カバーも同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−205371号公報
【特許文献2】特開平09−233666号公報
【特許文献3】特開2003−143745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図13で示した電線端末カバー400は、最も開口部402側の収納部401に対応する線径以下の線径の電線に用いる場合、電線の線径に対応した収納部401より開口部402側の他の収納部401と電線との間に隙間ができる。この隙間は、電線の線径に対応した収納部401よりも開口部402側の他の収納部401の方が電線の線径より大きいために発生する。この隙間から電線端末カバー400の内部に水が浸入しないように、通常は、電線端末カバー400の開口部402と電線とに跨って絶縁テープが巻かれる。電線と開口部402側の収納部401との間に隙間が開いたままでは、電線の外周面と電線端末カバー400の開口部402の外周面とに段差が形成され、絶縁テープが巻きにくい。このようなときは、電線の線径に対応した収納部401より開口部402側の他の収納部401を切断し、電線の外周面と電線端末カバー400の開口部402の外周面との段差を下げて使用される。
【0008】
更に、この電線端末カバー400は、電線の端末に対して開口部402側を向けて収納部401に挿入することによって、電線の端末を覆うものである。収納部401に電線の端末を挿入する際、電線の線径に対応した収納部401よりも開口部402側の他の収納部401を切断した後の電線端末カバー400の収納部401と電線との間には、ほとんど隙間が空いていない。電線端末カバー400は、電線の端末を収納部401の底部403まで挿入するためには、タイスティックを取り付けた共用操作棒やストレーリングトングなどを用いて底部403側から叩くなどして挿入しなければならない。他の収納部401を切断して用いる電線端末カバー400は、その切断面が歪になっていることもあり、更に挿入しにくくなる。電線端末カバー400を電線の端末に装着する作業は、このように手間のかかるものであった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる電線端末カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電線端末カバーは、異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部を複数有する電線端末カバーにおいて、第1構成体と、第2構成体と、第1構成体及び第2構成体を開閉自在に連結可能な連結部とを更に備え、収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略筒形状に形成され、複数の収納部は、筒芯方向と直交する方向に並んで設けられると共に、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成されることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、収納部が異なる線径の電線に対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径に適した収納部を選んで装着することができる。収納部は、第1構成体と第2構成体とが開いた状態では、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される。この第1構成体及び第2構成体のいずれか一方に電線の端末を沿わせる。この状態から、第1構成体と第2構成体とを閉じることにより、電線を沿わせた一方の構成体に他方の構成体が合わさって収納部が形成される。このようにして、電線は、この収納部の内部に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバーの筒芯方向から収納部に向けて電線の端末を挿入する必要はなく、電線をその線径に対応した収納部に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0012】
本発明に係る電線端末カバーは、異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部を複数有する電線端末カバーにおいて、第1構成体と、第2構成体と、第1構成体及び第2構成体を開閉自在に連結可能な連結部とを更に備え、収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略筒形状に形成され、複数の収納部は、筒芯方向に沿って並んで設けられると共に、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成されることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、収納部が異なる線径の電線に対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径に適した収納部を選んで装着することができる。収納部は、第1構成体と第2構成体とが開いた状態では、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される。この第1構成体及び第2構成体のいずれか一方に電線の端末を沿わせる。この状態から、第1構成体と第2構成体とを閉じることにより、電線を沿わせた一方の構成体に他方の構成体が合わさって収納部が形成される。このようにして、電線は、この収納部の内部に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバーの筒芯方向から収納部に向けて電線の端末を挿入する必要はなく、電線をその線径に対応した収納部に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0014】
本発明に係る電線端末カバーの複数の収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略円筒形状に形成され、且つ、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成され、少なくとも第1構成体及び第2構成体のうち円弧の長さが長い構成体が弾性変形可能に構成されてなることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される部分の円弧の長さの比率が異なるため、少なくとも第1構成体及び第2構成体のうち円弧の長さが長い構成体が電線の端末を少なくとも中心角180度以上の外周面で覆うことができる。この円弧の長さが長い構成体は、円弧の一端と他端との離間距離が電線の直径より短く形成される。この円弧の長さが長い構成体は、弾性変形可能であるため、この離間距離を拡げる方向に弾性変形させることにより、この円弧の長さが長い構成体に電線の端末を沿わせることができる。円弧の長さの長い構成体がこの状態から弾性変形前に戻ることにより、この円弧の長さの長い構成体に沿わせた電線の端末は、円弧の一端と他端との離間距離が電線の直径より再び短くなるため、電線の端末が抜け落ちるのを防止できる。作業者は、その構成体に電線を沿わせて一方の構成体と他方の構成体とを閉じることによって電線の端末を電線端末カバーに装着するまでの間、電線を保持し続ける必要がなくなる。よって、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0016】
本発明に係る電線端末カバーは、所定の工具を用いて第1構成体と第2構成体とを開閉操作する操作部を更に備えることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、操作部を用いることにより、第1構成体と第2構成体との開閉操作を行うことができ、間接活線作業で導電部を有する電線の端末を覆うことができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0018】
本発明に係る電線端末カバーの操作部は、第1構成体及び第2構成体に設けられ、且つ、絶縁操作棒の先端に設けられる間接活線把持工具の先端を挿入可能な凹部を有することが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、間接活線把持工具の先端を凹部に挿入することにより、間接活線把持工具の開閉と連動して、第1構成体及び第2構成体の開閉を操作することができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0020】
本発明に係る電線端末カバーは、水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段を更に備えることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、電線と開口部との間の隙間が防水手段で塞がれるため、電線と電線端末カバーとに跨って絶縁テープを巻き付ける手間を省くことができる。よって、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の如く、本発明に係る電線端末カバーによれば、電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、第1実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、を示す。
【図2】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある左側面図、(b)は、同状態にある底面図、を示す。
【図3】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、(c)は、同状態にある底面図、を示す。
【図4】同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態から閉じる過程を表す図を示す。
【図5】(a)は、第2実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、を示す。
【図6】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある左側面図、(b)は、同状態にある底面図、を示す。
【図7】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、(c)は、同状態にある底面図、を示す。
【図8】同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態から閉じる過程を表す図を示す。
【図9】(a)は、第3実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、(c)は、同状態にある左側面図、を示す。
【図10】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、を示す。
【図11】同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態から閉じる過程を表す図を示す。
【図12】(a)は、その他の実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、を示す。
【図13】従来の電線端末カバーの半断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る電線端末カバーの第1実施形態について、図面を参酌しつつ、説明する。
【0025】
<第1実施形態>
まず、同実施形態に係る電線端末カバーの構成について、図1〜図3を参酌しつつ説明する。図1〜図2は、同実施形態に係る電線端末カバー1を閉じた状態を示す図である。図1(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、図2(a)は、左側面図、同図(b)は、底面図である。図3は、同実施形態に係る電線端末カバー1を開いた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、同図(c)は、底面図である。
【0026】
同実施形態に係る電線端末カバー1は、電線の外径と略同一の内径を有する円筒形状に2つの構成体の組み合わせによって形成可能な第1構成体2及び第2構成体3と、該第1構成体2及び該第2構成体3を開閉自在に連結可能な連結部4と、第1構成体2及び第2構成体3を閉じた状態で閉止可能な閉止部5と、所定の工具を用いて第1構成体2と第2構成体3とを開閉操作する操作部6と、水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段7とを備える。本実施形態では、第1構成体2、第2構成体3、連結部4、閉止部5及び操作部6は、一体で成形されており、電線の端末の導電部を絶縁するために合成樹脂などの絶縁性材料で成形されている。
【0027】
第1構成体2及び第2構成体3は、それぞれ断面形状が円弧状に形成された部分を複数備え、各円弧の内面が同じ方向に向き且つ円弧の一端及び他端がすべて同一直線上に並ぶように配置されて形成されている。第1構成体2及び第2構成体3は、この円弧の内側同士を向かい合わせにして重ね合わせることにより略筒形状の収納部8,8,8を複数形成する。以下、第1構成体2及び第2構成体3を重ね合わせたこの状態を「第1構成体2と第2構成体3とを閉じた状態」(図1及び図2の状態)と称し、第1構成体2及び第2構成体3を重ね合わせた状態で筒芯方向(矢印Aの指す方向)の向かい合う一方の縁を軸に他方の縁をそれぞれ離間する方向に回動させた(図4で矢印Dの指す方向)状態を「第1構成体2と第2構成体3とを開いた状態」(図3の状態)と称する。
【0028】
収納部8,8,8は、異なる線径の電線に対応してその端末を収納することができるように、それぞれ異なる線径の電線に対応して複数備えている。これらの収納部8,8,8は、それぞれ筒芯方向と直交する幅方向(矢印Bの指す方向)に並んで設けられると共に、第1構成体2と第2構成体3とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体2と第2構成体3とに分かれて形成される。本実施形態に係る収納部8,8,8は、3つの異なる電線の線径に対応しており、具体的には、公称断面積200mm2、58mm2、25mm2に対応している。なお、ここで挙げる公称断面積(又は線径)は、これに限定されるものではなく、適宜変更することができる。対応可能な電線の種類についても、3つに限定されるものではなく、2つ以上で必要に応じて増減させることも可能である。収納部8の筒芯方向の長さは、これらの公称断面積の違いを明確に示すために、異なる長さに設定されている。具体的には、線径の最も細い25mm2の電線を収納する収納部8が最も短くなっており、線径の最も太い200mm2の電線を収納する収納部8が最も長くなっている。これは、収納部8,8,8の内面と電線の端末の外周面との接触範囲を線径の太いものほど多くすることにより、自重により抜けにくくすることも考慮したものである。
【0029】
第1構成体2及び第2構成体3は、組み合わせることによって異なる線径の電線に対応して収納可能な円筒形状の収納部8,8,8を複数形成可能な構成部21,…,31,…と、該構成部21,…,31,…の強度を隣接する構成部21,…,31,…と相互に補い合うべく構成部21,…,31,…の側面と隣接する構成部21,…,31,…の側面とを結合する補強部22,22,32,32と、複数の構成部21,…,31,…の一端を筒芯方向と直交する方向Bに並べて接続する防水手段保持部23,33とを備える。
【0030】
各構成部21,…,31,…は、断面形状が円弧状に形成されると共に、所定長さ連続して形成される分割円筒部21a,…,31a,…と、該分割円筒部21a,…,31a,…の筒芯方向Aの一端部を塞ぐ底部21b,…,31b,…と、分割円筒部21a,…,31a,…の筒芯方向Aの他端部に形成される開口端部21c,…,31c,…とを備える。分割円筒部21a,…,31a,…は、第1構成体2と第2構成体3とを組み合わせた状態では、電線の端末(電線の端末が導体を露出させているときなどのように、電線の端末と端末に連続する導体被覆部分とでその線径が異なる場合は、その導体被覆部分を含める)の外周面と当接する部分となる。底部21b,…,31b,…は、電線の端末の先端と当接若しくは対向する部分となる。開口端部21c,…,31c,…は、電線をこの収納部8,…から引き出すための開口となる部分となり、電線を通して収納部8,…の内部から外部に通す部分となる。本実施形態に係る第1構成体2及び第2構成体3の分割円筒部21a,…,31a,…は、断面形状が半円の円弧状に形成される。このように、分割円筒部21a,…,31a,…は、円弧の一端と他端との最短の離間距離が電線(若しくは電線の端末)の外形の直径と略同一となっている。
【0031】
補強部22,…,32,…は、分割円筒部21a,…,31a,…の筒芯方向Aの縁とその隣り合う分割円筒部21a,…,31a,…の縁とを、開口端部21c,…,31c,…側から底部21b,…,31b,…側に向かって分割円筒部21a,…,31a,…と面する範囲を結合する。補強部22,…は、分割円筒部21a,…,31a,…と隣接する他の分割円筒部21a,…,31a,…とを結合することにより、剛性が高くなっている。
【0032】
防水手段保持部23,33は、第1構成体2及び第2構成体3を閉じた状態で、収納部8,…に収納された電線の端末以外の部分を電線端末カバー1の外に出すと共に、防水手段7を保持する保持部本体23a,33aと、第1構成体2及び第2構成体3を閉じた状態で収納部8,…と保持部本体23a,33aとの収納空間が連続するように形成する連絡開口23b,33bと、該連絡開口23b,33bが設けられた面(上面)と対向する面(下面)の略全面に設けられる開口23c,33cとを備える。防水手段保持部23,33は、収納部8,…に収納された電線の端末以外の電線の部分を収納部8,…の外部に出すために、電線の端末を第1構成体2と第2構成体3との分割円筒部21a,…,31a,…に沿わせ、電線の端末以外の電線部分を分割円筒部21a,…,31a,…から連絡開口23b,…,33b,…に跨いで開口23c,33cまで沿わせることができるようになっている。
【0033】
連結部4は、筒芯方向Aの長さが最も長い分割円筒部21a,…,31a,…の側面に連続して可撓部材4が設けられる。可撓部材4は、容易に曲げることができる材質で成形されている。この可撓部材4は、第1構成体2と第2構成体3とを、分割円筒部21a,…,31a,…毎に対応する電線の端末の線径がそれぞれ一致するように連結する。
【0034】
分割円筒部21a,…,31a,…は、筒芯方向Aの長さが最も短いものから順に長くなるように配置したが、開閉に伴う負担が大きい可撓部材4が設けられる範囲を広くすると共に、分割円筒部21a,…,31a,…間の補強部22,…,32,…が設けられる範囲も広くするためであるが、これに限定されるものではない。
【0035】
閉止部5は、第1構成体2及び第2構成体3の保持部本体23a,33aの可撓部材4が設けられた面と対向する面に直交する方向Bにそれぞれが向かい合うように突出した閉止部本体51,51と、第1構成体2の閉止部本体51の第2構成体3と対向する面に設けられる円錐台形状の突起部52と、第2構成体3の閉止部本体51の第1構成体2と対向する面に設けられ、突起部52を差し込み可能な係止口53とを備える。なお、係止口53は、突起部52の突出量に応じた深さを有する係止穴であってもよい。
【0036】
操作部6は、第1構成体2及び第2構成体3の保持部本体23a,33aの外周面に設けられ、収納部8の筒芯方向に直交する幅方向Bに連続的に形成されると共に、第1構成体2と第2構成体3とを分割する分割面に直交する方向(矢印Cの指す方向)に突出する板状の部材である。操作部6は、絶縁ヤットコなどの間接活線把持工具などの工具で把持して、第1構成体2と第2構成体3とを開閉操作する。また、第1構成体2と第2構成体3とが開いた状態から閉じる際に、第1構成体2若しくは第2構成体3の閉止部5の閉止部本体51を把持して閉じることが可能であることから、閉止部5も操作部6に含まれる。
【0037】
防水手段7は、防水手段保持部23,33の開口23c,33cに長手方向の縁に沿って設けられる複数の帯状の遮蔽片71,…と、防水手段保持部23、33の内側に保持される弾性変形可能な弾性部材72,72とを備える。
【0038】
遮蔽片71,…は、可撓性の材質で成形されており、例えば、合成樹脂やゴムなどで成形されている。遮蔽片71,…は、防水手段保持部23,33に電線を沿わせた際に、電線の外周面を損傷させることなく、且つその隙間を塞ぐことを目的とする。遮蔽片71,…は、電線端末カバー1の使用状態において、防水手段保持部23と電線との隙間を塞ぐことにより、雨水や融雪などの水が収納部8,…に侵入することを防止する。
【0039】
弾性部材72,72は、第1構成体2及び第2構成体3の防水手段保持部23,33の内側にそれぞれ接着されており、第1構成体2及び第2構成体3を閉じたときに、収納部8,…に装着した電線を圧縮変形することにより避けつつ、電線を装着していない他の収納部8,…との防水手段保持部23,33の連絡開口23b,…,33b,…を塞ぐことができる。
【0040】
次に、同実施形態に係る電線端末カバー1の作用・効果について、図1〜4を参酌しつつ説明する。図4は、第1構成体2及び第2構成体3を開いた状態から閉じる過程を表す。
【0041】
電柱に引留固定される高圧絶縁電線の引留部において、引留クランプの把持部より突出する高圧絶縁電線の端末に電線端末カバー1を装着する場合において、作業者の一人がこの電線の端末Wを絶縁ヤットコなどで把持して、その位置を固定する。2人目の作業者が第1構成体2及び第2構成体3を開いて、絶縁ヤットコで第2構成体3の操作部6を把持し、その電線の端末Wまで移動させる。
【0042】
装着する電線の端末Wの線径を確認し、第2構成体3の3つある構成部31,31,31のうちでこの電線の線径Wに対応する一つの構成部31を選択する。その電線の端末Wを構成部31の底部31b側に合わせ、分割円筒部31a及び防水手段保持部33に沿わせる。この状態で、3人目の作業者が第1構成体2の操作部6若しくは閉止部5を絶縁ヤットコで把持し、図4に示すように、可撓部材4を回動中心に第1構成体2を第2構成体3に向けて矢印D方向に回動させる。このようにして、第1構成体2と第2構成体3とを閉じる。閉止部5でこの第1構成体2及び第2構成体3を閉じた状態を維持させる。
【0043】
このように、収納部8,…が異なる線径の電線Wに対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径Wに適した収納部8,…を選んで装着することができる。収納部8,…は、第1構成体2と第2構成体3とが開いた状態では、第1構成体2と第2構成体3とに分かれて形成される。この第1構成体2及び第2構成体3のいずれか一方に電線の端末Wを沿わせる。この状態から、第1構成体2と第2構成体3とを閉じることにより、電線の端末Wを沿わせた第2構成体3に第1構成体2が合わさって収納部8,…が形成される。電線の端末Wは、この収納部8,…の内部に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバー1の筒芯方向Aから収納部8,…に向けて電線の端末Wを挿入する必要はなく、電線をその線径に対応した収納部8,…に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバー1に電線の端末Wを装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0044】
収納部8,…が第1構成体2及び第2構成体3に分かれて形成される部分の円弧の長さが略同一の比率で形成されており、電線端末カバー1自体も第1構成体2及び第2構成体3の分割面を面対称になるように各構成を備えているため、電線の端末Wに対して左右方向のいずれからでも収納することができる。
【0045】
また、操作部6を用いることにより、第1構成体2と第2構成体3との開閉操作を行うことができ、間接活線作業で導電部を有する電線の端末を覆うことができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバー1に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0046】
また、電線の端末Wと防水手段保持部23,33との間の隙間が防水手段7に塞がれるため、電線の端末Wと電線端末カバー1とに跨って絶縁テープを巻き付ける手間を省くことができる。よって、電線端末カバー1に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0047】
次に、本発明に係る電線端末カバーの第2実施形態について、図面を参酌しつつ、説明する。なお、第1実施形態に係る電線端末カバー1と同様の構成については、同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0048】
<第2実施形態>
まず、同実施形態に係る電線端末カバーの構成について、図5〜図7を参酌しつつ説明する。図5〜図6は、同実施形態に係る電線端末カバー100を閉じた状態を示す図である。図5(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、図6(a)は、左側面図、同図(b)は、底面図である。図7は、同実施形態に係る電線端末カバー100を閉じた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、同図(c)は、底面図、である。
【0049】
同実施形態に係る電線端末カバー100は、電線の外径と略同一の内径を有する円筒形状に2つの構成体の組み合わせによって形成可能な第1構成体102及び第2構成体103と、該第1構成体102及び該第2構成体103を開閉自在に連結可能な連結部4と、第1構成体102及び第2構成体103を閉じた状態で閉止可能な閉止部105と、所定の工具を用いて第1構成体102と第2構成体103とを開閉操作する操作部106と、水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段7とを備える。本実施形態では、第1構成体102、第2構成体103、連結部4、閉止部105及び操作部106は、一体で成形されており、電線の端末の導電部を絶縁するために合成樹脂などの絶縁性材料で成形されている。
【0050】
第1構成体102及び第2構成体103は、それぞれ断面形状が円弧状に形成された部分を複数備え、各円弧の内面が同じ方向に向き且つ円弧の中心が同一線上に並ぶように配置されて形成されている。第1構成体102及び第2構成体103は、この円弧の内側同士を向かい合わせにして重ね合わせることにより略筒形状の収納部108,…を複数形成する。
【0051】
収納部108,…は、異なる線径の電線に対応してその端末を収納することができるように、それぞれ異なる線径の電線に対応して複数備えている。これらの収納部108,…は、それぞれ筒芯方向Aに沿って並んで設けられると共に、第1構成体102と第2構成体103とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体102と第2構成体103とに分かれて形成される。本実施形態に係る収納部108,…は、3つの異なる電線の線径に対応しており、具体的には、公称断面積200mm2、58mm2、25mm2に対応している。
【0052】
第1構成体102及び第2構成体103は、組み合わせることによって異なる線径の電線に対応して収納可能な円筒形状の収納部108,…を複数形成可能な構成部121,…,131,…と、該構成部121,…,131,…の一端を接続する防水手段保持部123,133とを備える。
【0053】
各構成部121,…,131,…は、断面形状が円弧状に形成されると共に、所定長さ連続して形成される分割円筒部121a,…,131a,…と、該分割円筒部121a,…,131a,…の筒芯方向Aの一端部を塞ぐ底部121b,…,131b,…と、分割円筒部121a,…,131a,…の筒芯方向Aの他端部に形成される開口端部121c,…,131c,…とを備える。分割円筒部121a,…,131a,…は、第1構成体102と第2構成体103とを組み合わせた状態では、電線の端末の外周面と当接する部分となる。底部121b,…,131b,…は、電線の端末の先端と当接若しくは対向する部分となる。開口端部121c,…,131c,…は、電線をこの収納部108,…から出すための開口となる部分となり、電線を通して収納部108,…の内部から外部に通す部分となる。本実施形態に係る第1構成体102及び第2構成体103の分割円筒部121a,…,131a,…は、断面形状が半円の円弧状に形成される。このように、分割円筒部121a,…,131a,…は、円弧の一端と他端との最短の離間距離が電線(若しくは電線の端末)の外形の直径と略同一となっている。
【0054】
防水手段保持部123,133は、第1構成体102及び第2構成体103を閉じた状態で、収納部108,…に収納された電線の端末以外の部分を電線端末カバー100の外に出すと共に、防水手段7を保持する保持部本体123a,133aと、第1構成体102及び第2構成体103を閉じた状態で収納部108,…と保持部本体123a,133aとの収納空間が連続するように形成する連絡開口123b,133bと、該連絡開口123b,133bが設けられた面(上面)と対向する面(下面)の略全面に設けられる開口123c,133cとを備える。防水手段保持部123,133は、収納部108,…に収納された電線の端末以外の電線の部分を収納部108,…の外部に引き出すために、電線の端末を第1構成体102と第2構成体103との分割円筒部121a,…,131a,…に沿わせ、電線の端末以外の電線部分を分割円筒部121a,…,131a,…から連絡開口123b,133bに跨いで開口123c,133cまで沿わせることができるようになっている。
【0055】
閉止部105は、第1構成体102及び第2構成体103の構成部121,…,131,…及び保持部本体123a,133aの可撓部材4が設けられた面と対向する面に直交する方向にそれぞれが向かい合うように突出した閉止部本体151,151と、第1構成体102の閉止部本体151の第2構成体103と対向する面に設けられる円錐台形状の突起部152,152と、第2構成体103の閉止部本体151の第1構成体102と対向する面に設けられ、突起部152,152を差し込み可能な係止口153,153とを備える。なお、係止口153は、突起部152の突出量に応じた深さを有する係止穴であってもよい。
【0056】
操作部106は、第1構成体102及び第2構成体103の保持部本体123a,133aの外周面に設けられ、収納部108,…の筒芯方向Aに沿う方向に連続的に形成されると共に、第1構成体102と第2構成体103とを分割する分割面に直角方向Cに突出する板状の部材である。操作部106は、絶縁ヤットコなどの間接活線把持工具などの工具で把持して、第1構成体102と第2構成体103とを開閉操作する。また、第1構成体102と第2構成体103とが開いた状態から閉じる際に、第1構成体102若しくは第2構成体103の閉止部105を把持して閉じることが可能であることから、閉止部105も操作部106に含まれる。
【0057】
次に、同実施形態に係る電線端末カバー100の作用・効果について、図5〜8を参酌しつつ説明する。図8は、第1構成体102及び第2構成体103を開いた状態から閉じる過程を表す。
【0058】
電柱に引留固定される高圧絶縁電線の引留部において、引留クランプの把持部より突出する高圧絶縁電線の端末に電線端末カバー100を装着する場合において、作業者の一人がこの電線の端末Wを絶縁ヤットコなどで把持して、その位置を固定する。2人目の作業者が第1構成体102及び第2構成体103を開いて、絶縁ヤットコで第2構成体103の操作部106を把持し、その電線の端末Wまで移動させる。
【0059】
装着する電線の端末Wの線径を確認し、第2構成体103の3つある構成部131,…のうちでこの電線の線径に対応する構成部131を選択する。その電線の端末Wを構成部131の底部131b側に合わせ、分割円筒部131a及び防水手段保持部133に沿わせる。この状態で、3人目の作業者が第1構成体102の操作部106若しくは閉止部105を絶縁ヤットコで把持し、図8に示すように、可撓部材4を回動中心に第1構成体102と第2構成体103に向けて矢印D方向に回動させる。このようにして、第1構成体102と第2構成体103とを閉じる。閉止部105でこの第1構成体102及び第2構成体103を閉じた状態を維持させる。
【0060】
このように、収納部108,…が異なる線径の電線に対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径Wに適した収納部108,…を選んで装着することができる。収納部108,…は、第1構成体102と第2構成体103とが開いた状態では、第1構成体102と第2構成体103とに分かれて形成される。この第1構成体102及び第2構成体103のいずれか一方に電線の端末Wを沿わせる。この状態から、第1構成体102と第2構成体103とを閉じることにより、電線の端末Wを沿わせた第2構成体103に第1構成体102が合わさって収納部108,…が形成される。電線の端末Wは、この収納部108,…の内側に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバー100の筒芯方向Aから収納部108,…に向けて電線の端末Wを挿入する必要はなく、電線をその線径に対応した収納部108,…に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバー100に電線の端末Wを装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0061】
複数の収納部108,…は、異なる線径の電線に対応して、筒芯方向Aに沿って設けられる。このように、収納部108,…は、電線の端末Wを装着した状態で、電線の端末Wの延長線上に沿って設けられる。すなわち、収納部108,…の筒芯方向と直交する幅方向Bに拡がることがないため、省スペースとすることができる。
【0062】
収納部108,…が第1構成体102及び第2構成体103に分かれて形成される部分の円弧の長さが略同一の比率で形成されており、電線端末カバー100自体も第1構成体102及び第2構成体103の分割面を面対称になるように各構成を備えているため、電線の端末Wに対して左右方向のいずれからでも収納することができる。
【0063】
また、操作部106を用いることにより、第1構成体102と第2構成体103との開閉操作を行うことができ、間接活線作業で導電部を有する電線の端末Wを覆うことができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバー100に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0064】
また、電線の端末Wと防水手段保持部123,133との間の隙間が防水手段7に塞がれるため、電線の端末Wと電線端末カバー100とに跨って絶縁テープを巻き付ける手間を省くことができる。よって、電線端末カバー100に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0065】
次に、本発明に係る電線端末カバーの第3実施形態について、図面を参酌しつつ、説明する。なお、第1実施形態に係る電線端末カバー1と同様の構成については、同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0066】
<第3実施形態>
まず、同実施形態に係る電線端末カバーの構成について、図9〜図10を参酌しつつ説明する。図9は、同実施形態に係る電線端末カバー200を開いた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、同図(c)は、左側面図、である。図10は、同実施形態に係る電線端末カバー200を閉じた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、である。
【0067】
同実施形態に係る電線端末カバー200は、電線の外径と略同一の内径を有する円筒形状に2つの構成体の組み合わせによって形成可能な第1構成体202及び第2構成体203と、該第1構成体202及び該第2構成体203を開閉自在に連結可能な連結部4と、第1構成体202及び第2構成体203を閉じた状態で閉止可能な閉止部5と、所定の工具を用いて第1構成体202と第2構成体203とを開閉操作する操作部6と、水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段7とを備える。
【0068】
第1構成体202及び第2構成体203は、それぞれ断面形状が円弧状に形成された部分を複数備え、各円弧の内面が同じ方向に向き且つ円弧の一端及び他端がすべて同一直線上に並ぶように配置されて形成されている。第1構成体202及び第2構成体203は、この円弧の内側同士を向かい合わせにして重ね合わせることにより略筒形状の収納部208,…を複数形成する。
【0069】
収納部208,…は、異なる線径の電線に対応してその端末を収納することができるように、それぞれ異なる線径の電線に対応して複数備えている。これらの収納部208,…は、それぞれ筒芯方向と直交する幅方向Bに並んで設けられると共に、第1構成体202と第2構成体203とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される。
【0070】
第1構成体202及び第2構成体203は、組み合わせることによって異なる線径の電線に対応して収納可能な円筒形状の収納部208,…を複数形成可能な構成部221,…,231,…と、該構成部221,…,231,…の強度を隣接する構成部221,…,231,…と相互に補い合うべく構成部221,…,231,…の側面と隣接する構成部221,…,231,…の側面とを結合する補強部222,…,232,…と、複数の構成部221,…,231,…の一端を筒芯方向と直交する幅方向Bに並べて接続する防水手段保持部223,…,233,…とを備える。
【0071】
各構成部221,…,231,…は、断面形状が円弧状に形成されると共に、所定長さ連続して形成される分割円筒部221a,…,231a,…と、該分割円筒部221a,…,231a,…の筒芯方向Aの一端部を塞ぐ底部221b,…,231b,…と、分割円筒部221a,…,231a,…の筒芯方向Aの他端部に形成される開口端部221c,…,231c,…とを備える。
【0072】
第1構成体202及び第2構成体203の分割円筒部221a,…,231a,…は、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成される。本実施形態の第1構成体202及び第2構成体203の分割円筒部221a,…,231a,…は、2対1の比率で形成される。このように、第1構成体202の分割円筒部221a,…,231a,…は、円弧の一端と他端との最短の離間距離が電線(若しくは電線の端末)の外形の直径よりも狭くなっている。第1構成体202及び第2構成体203のうち円弧の長さが長い第1構成体202は、少なくとも弾性変形可能な材質で成形される。なお、第1構成体202と第2構成体203の分割円筒部221a,…,231a,…は、2対1の比率に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0073】
補強部222,…,232,…は、分割円筒部221a,…,231a,…の筒芯方向Aの縁とその隣り合う分割円筒部221a,…,231a,…の縁とを、開口端部221c,…,231c,…側から底部221b,…,231b,…側に向かって分割円筒部221a,…,231a,…と面する範囲を結合する。補強部222,…は、分割円筒部221a,…,231a,…と隣接する他の分割円筒部221a,…,231a,…とを結合することにより、剛性が高くなっている。
【0074】
防水手段保持部223,233は、第1構成体202及び第2構成体203を閉じた状態で、収納部208,…に収納された電線の端末以外の部分を電線端末カバー200の外に出すと共に、防水手段7を保持する保持部本体223a,233aと、第1構成体202及び第2構成体203とを閉じた状態で収納部208,…と保持部本体223a,233aとの収納空間が連続するように形成する連絡開口223b,233bと、該連絡開口223b,233bが設けられた面(上面)と対向する面(下面)の略全面に設けられる開口223c,233cとを備える。防水手段保持部223,233は、収納部208,…に収納された電線の端末以外の電線の部分を収納部208,…の外部に出すために、電線の端末を第1構成体202と第2構成体203との分割円筒部221a,…,231a,…に沿わせ、電線の端末以外の電線部分を分割円筒部221a,…,231a,…から連絡開口223b,233bに跨いで開口223c,233cまで沿わせることができるようになっている。
【0075】
次に、同実施形態に係る電線端末カバー200の作用・効果について、図9〜11を参酌しつつ説明する。図11は、第1構成体202及び第2構成体203を開いた状態から閉じる過程を表す。電柱に引留固定される高圧絶縁電線の引留部において、引留クランプの把持部より突出する高圧絶縁電線の端末Wに電線端末カバー200を装着する場合において、作業者の一人がこの電線の端末Wを絶縁ヤットコなどで把持して、その位置を固定する。2人目の作業者が第1構成体202及び第2構成体203を開いて、絶縁ヤットコで第2構成体203の操作部6を把持し、その電線の端末Wまで移動させる。
【0076】
装着する電線の端末Wの線径を確認し、第2構成体203の3つある構成部231,…のうちでこの電線の線径に対応する構成部231を選択する。その電線の端末Wを構成部231の底部231b側に合わせ、分割円筒部231aの両縁を弾性変形させて、分割円筒部231a及び防水手段保持部233に沿わせる。電線の端末Wは、分割円筒部231aの両縁が弾性変形から復帰することによって、分割円筒部231aの両縁の最短直線距離が直径より狭くなり、分割円筒部231a,…の内部に保持される。この状態で、2人目の作業者が電線の端末Wを離して、第2構成体203の操作部6若しくは閉止部5を絶縁ヤットコで把持し、可撓部材4を回動中心に第1構成体202と第2構成体203とを閉じる。閉止部5でこの第1構成体202及び第2構成体203を閉じた状態を維持させる。
【0077】
このように、収納部208,…が異なる線径の電線に対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径に適した収納部208,…を選んで装着することができる。収納部208,…は、第1構成体202と第2構成体203とが開いた状態では、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される。この第1構成体202及び第2構成体203のいずれか一方に電線の端末Wを沿わせる。この状態から、第1構成体202と第2構成体203とを閉じることにより、電線の端末Wを沿わせた第2構成体203に第1構成体203が合わさって収納部208,…が形成される。電線の端末Wは、この収納部208,…の内部に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバー200の筒芯方向Aから収納部208に向けて電線の端末Wを挿入する必要はなく、電線の端末Wをその線径に対応した収納部208,…に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバー200に電線の端末Wを装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0078】
また、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される部分の円弧の長さの比率が異なるため、少なくとも第1構成体202及び第2構成体203のうち円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…が電線の端末Wを少なくとも中心角180度以上の外周面で覆うことができる。この円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…は、円弧の一端と他端との離間距離が電線の直径より短く形成される。この円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…は、弾性変形可能であるため、この離間距離を拡げる方向に弾性変形させることにより、この円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…に電線の端末Wを沿わせることができる。円弧の長さの長い第1構成体202の分割円筒部221a,…がこの状態から弾性変形前に戻ることにより、円弧の一端と他端との離間距離が電線の直径より再び短くなるため、この円弧の長さの長い第1構成体202の分割円筒部221a,…に沿わせた電線の端末Wが抜け落ちるのを防止できる。作業者は、その第1構成体202に電線の端末Wを沿わせて一方の第1構成体202と他方の第2構成体203とを閉じることによって電線の端末Wを電線端末カバー200に装着するまでの間、電線の端末Wを保持し続ける必要がなくなる。よって、電線端末カバー200に電線の端末Wを装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0079】
なお、同実施形態に係る電線端末カバー200は、第1構成体202及び第2構成体203のうち円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221aが弾性変形可能な材質で成形される例を説明したが、これに限定されるものではない。第1構成体202及び第2構成体203のうち円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…の中心角180度以上の円弧の範囲が弾性変形可能な材質で成形されておればよい。また、この第1構成体221の分割円筒部221a,…の弾性変形の際に、隣接する分割円筒部221a,…とを接続する補強部222,…がその妨げとなる場合、この補強部も弾性変形可能な材質で成形してもよく、又は、補強部を設けなくてもよい。
【0080】
また、同実施形態に係る電線端末カバー200は、収納部208,…が筒芯方向と直交する方向Bに並んで設けられ、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成される例を説明したが、これに限定されるものではない。第2実施形態に示すように、収納部208,…が筒芯方向Aに沿って並んで設けられ、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成されるようにしてもよい。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな変更が可能である。
【0082】
上記第1〜第3実施形態に係る電線端末カバー1,100,200は、防水手段保持部23,33,123,133,223,233の側面に形成される板状の操作部6,6で第1構成体2,102,202と第2構成体3,103,203とを開閉操作する例を説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、図12に示すように、操作部306は、第1構成体2及び第2構成体3の保持部本体23a,33aの閉止部5側の外周面に設けられ、且つ、絶縁操作棒の先端に設けられる間接活線把持工具の先端を挿入可能な凹部306が設けられるものであってもよい。なお、図12は、電線端末カバー300を閉じた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、である。
【0083】
このように、間接活線把持工具の先端を凹部306に挿入することにより、間接活線把持工具の開閉と連動して、第1構成体2及び第2構成体3の開閉を操作することができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバー300に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。なお、操作部306は、凹部306に限定されるものではなく、間接活線把持工具の先端が第1構成体2と第2構成体3とを開閉する方向に係止可能であれば、例えば、鍵状(L状形状)であってもよい。
【0084】
上記第1及び第3実施形態に係る電線端末カバー1,200は、異なる電線の線径に応じた複数の収納部8,…,208,…が筒芯方向と直交する方向Bに所定距離を離して並んで設けられる例を説明したが、これに限定されるものではない。複数の収納部がそれぞれ独立して形成されておらず、筒芯方向と直交する方向Bにつながっていてもよい。よって、本実施形態のように収納部を独立して形成されないが、このように構成することにより、電線端末カバーの幅方向の長さを短縮することができる。
【0085】
上記第1〜第3実施形態に係る電線端末カバー1,100,200は、高圧絶縁電線の端末を覆う例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電力用、通信用及び配電用電線等の電線の端末に適用してもよい。また、その際、電線の線径が丸形の断面形状を有する電線に限定されるものではない。例えば、断面形状が平形や長円形の電線であって、略筒形状に形勢された収納部にも適用することができる。このとき、収納部の断面形状も円筒形状ではなく、この断面形状に合わせて適宜変更してもよい。また、ここでいう電線には、導体に絶縁体を覆うものに加え、導体に絶縁体と保護被覆を覆うケーブルも含まれるものとする。
【0086】
上記第1〜第3実施形態に係る電線端末カバー1,100,200は、複数の収納部8,108,208の開口部に弾性部材収納部23,33,123,133,223,233を備える例を説明したが、これに限定されるものではない。複数の収納部は、異なる線径の電線に対応して、筒芯方向と直交する方向に並んで設けられる。このように、いずれの収納部に電線を装着しても、他の収納部を跨ぐことなく、収納部の開口端部と電線の外周面との間に隙間が空くことのないようにすることができ、他の収納部を切断する必要もない。よって、防水手段保持部を備えない場合で電線端末カバーの開口端部と電線とに絶縁テープを巻き付けるような場合であっても容易に行うことができる。
【0087】
また、電線端末カバーが複数の収納部を備え、弾性部材収納部を備えなくてもよい。この場合、遮蔽片を各収納部の開口端部に設けることで防水手段を構成することができる。また、閉止部及び操作部を収納部に直接接続することにより、その作業・効果を満たすことができる。
【0088】
上記第1〜第3実施形態に係る電線端末カバー1,100,200は、連結部4が第1構成体2,102,202と第2構成体3,103,203とを開閉可能に連結する可撓部材4を備える例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、筒芯方向の長さが最も長い第1構成体2及び第2構成体3の分割円筒部21a,…,31a,…の側面に複数箇所設けられる蝶番4,…接続することにより、開閉可能に連結してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…電線端末カバー、2…第1構成体、21…構成部、21a…分割円筒部、21b…底部、21c…開口端部、22…補強部、23…防水手段保持部、23a…保持部本体、23b…連絡開口、23c…開口、3…第2構成体、31…構成部、31a…分割円筒部、31b…底部、31c…開口端部、32…補強部、33…防水手段保持部、33a…保持部本体、33b…連絡開口、33c…開口、4…連結部(可撓部材)、5…閉止部、51…閉止部本体、52…突起部、53…係止口、6…操作部、7…防水手段、71…遮蔽片、72…弾性部材、8…収納部、100…電線端末カバー、102…第1構成体、121…構成部、121a…分割円筒部、121b…底部、121c…開口端部、123…防水手段保持部、123a…保持部本体、123b…連絡開口、123c…開口、103…第2構成体、131…構成部、131a…分割円筒部、131b…底部、131c…開口端部、133…防水手段保持部、133a…保持部本体、133b…連絡開口、133c…開口、105…閉止部、151…閉止部本体、152…突起部、153…係止口、106…操作部、108…収納部、200…電線端末カバー、202…第1構成体、221…構成部、221a…分割円筒部、221b…底部、221c…開口端部、222…補強部、223…防水手段保持部、223a…保持部本体、223b…連絡開口、223c…開口、203…第2構成体、231…構成部、231a…分割円筒部、231b…底部、231c…開口端部、232…補強部、233…防水手段保持部、233a…保持部本体、233b…連絡開口、233c…開口、208…収納部、300…電線端末カバー、306…操作部(凹部)、400…電線端末カバー、401…収納部、402…開口部、403…底部、A…筒芯方向、B…(筒芯方向と直交する)幅方向、C…分割面に直交する方向、D…回動方向、W…電線の端末
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線端末の導電部を覆うことにより電線の端末処理を行う電線端末カバーに関し、特に、線径の異なる電線に対応可能な電線端末カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、引留クランプを用いて電柱に引留固定する高圧絶縁電線の引留部において、引留クランプの把持部より突出する高圧絶縁電線の端末は、電気的絶縁性を確保するために電線端末カバーで覆って保護されている。また、停電作業などで電柱を挟んで両側の引留クランプ間を接続する縁回し線を切断したような際も、その高圧絶縁電線の切断個所の端末は、同じように電線端末カバーで覆って保護されている。
【0003】
このような電線端末カバーには、電線を収納可能な収納部を1つ有する電線端末カバー(特許文献1,2参照)や、2以上の異なる電線の線径に対応して複数の収納部を有する電線端末カバー(後述する図13の例及び特許文献3参照)など様々なものがある。
【0004】
例えば、特許文献1に示す電線端末カバーは、有底筒状の収納部を1つ備え、その収納部の開口部にストッパーが装着されている。特許文献2に示す電線端末カバーは、収納部の内周面に突起が複数中心方向に向けて設けられている。これらの電線端末カバーは、このストッパー又は突起が変位することによって電線の線径に左右されることなく異なる線径の電線に使用できる。
【0005】
図13に示す複数の収納部を有する電線端末カバー400は、有底筒状に形成されており、異なる電線の線径に対応して異なる内径を有する筒状形状の収納部401を複数備え、これらの収納部401が筒芯方向Aに沿って開口部402から底部403に向かって内径が小さくなるように並んで設けられる。このように収納部401を配列することにより、電線端末カバー400は、最も開口部402側にある収納部401で最も太い線径の電線に対応し、最も底部403側の収納部401で最も細い線径の電線に対応する。図13に示す電線端末カバー400の例は、4つの線径に対応している。また、特許文献3に示す電線端末カバーも同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−205371号公報
【特許文献2】特開平09−233666号公報
【特許文献3】特開2003−143745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図13で示した電線端末カバー400は、最も開口部402側の収納部401に対応する線径以下の線径の電線に用いる場合、電線の線径に対応した収納部401より開口部402側の他の収納部401と電線との間に隙間ができる。この隙間は、電線の線径に対応した収納部401よりも開口部402側の他の収納部401の方が電線の線径より大きいために発生する。この隙間から電線端末カバー400の内部に水が浸入しないように、通常は、電線端末カバー400の開口部402と電線とに跨って絶縁テープが巻かれる。電線と開口部402側の収納部401との間に隙間が開いたままでは、電線の外周面と電線端末カバー400の開口部402の外周面とに段差が形成され、絶縁テープが巻きにくい。このようなときは、電線の線径に対応した収納部401より開口部402側の他の収納部401を切断し、電線の外周面と電線端末カバー400の開口部402の外周面との段差を下げて使用される。
【0008】
更に、この電線端末カバー400は、電線の端末に対して開口部402側を向けて収納部401に挿入することによって、電線の端末を覆うものである。収納部401に電線の端末を挿入する際、電線の線径に対応した収納部401よりも開口部402側の他の収納部401を切断した後の電線端末カバー400の収納部401と電線との間には、ほとんど隙間が空いていない。電線端末カバー400は、電線の端末を収納部401の底部403まで挿入するためには、タイスティックを取り付けた共用操作棒やストレーリングトングなどを用いて底部403側から叩くなどして挿入しなければならない。他の収納部401を切断して用いる電線端末カバー400は、その切断面が歪になっていることもあり、更に挿入しにくくなる。電線端末カバー400を電線の端末に装着する作業は、このように手間のかかるものであった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる電線端末カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電線端末カバーは、異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部を複数有する電線端末カバーにおいて、第1構成体と、第2構成体と、第1構成体及び第2構成体を開閉自在に連結可能な連結部とを更に備え、収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略筒形状に形成され、複数の収納部は、筒芯方向と直交する方向に並んで設けられると共に、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成されることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、収納部が異なる線径の電線に対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径に適した収納部を選んで装着することができる。収納部は、第1構成体と第2構成体とが開いた状態では、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される。この第1構成体及び第2構成体のいずれか一方に電線の端末を沿わせる。この状態から、第1構成体と第2構成体とを閉じることにより、電線を沿わせた一方の構成体に他方の構成体が合わさって収納部が形成される。このようにして、電線は、この収納部の内部に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバーの筒芯方向から収納部に向けて電線の端末を挿入する必要はなく、電線をその線径に対応した収納部に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0012】
本発明に係る電線端末カバーは、異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部を複数有する電線端末カバーにおいて、第1構成体と、第2構成体と、第1構成体及び第2構成体を開閉自在に連結可能な連結部とを更に備え、収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略筒形状に形成され、複数の収納部は、筒芯方向に沿って並んで設けられると共に、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成されることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、収納部が異なる線径の電線に対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径に適した収納部を選んで装着することができる。収納部は、第1構成体と第2構成体とが開いた状態では、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される。この第1構成体及び第2構成体のいずれか一方に電線の端末を沿わせる。この状態から、第1構成体と第2構成体とを閉じることにより、電線を沿わせた一方の構成体に他方の構成体が合わさって収納部が形成される。このようにして、電線は、この収納部の内部に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバーの筒芯方向から収納部に向けて電線の端末を挿入する必要はなく、電線をその線径に対応した収納部に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0014】
本発明に係る電線端末カバーの複数の収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略円筒形状に形成され、且つ、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成され、少なくとも第1構成体及び第2構成体のうち円弧の長さが長い構成体が弾性変形可能に構成されてなることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される部分の円弧の長さの比率が異なるため、少なくとも第1構成体及び第2構成体のうち円弧の長さが長い構成体が電線の端末を少なくとも中心角180度以上の外周面で覆うことができる。この円弧の長さが長い構成体は、円弧の一端と他端との離間距離が電線の直径より短く形成される。この円弧の長さが長い構成体は、弾性変形可能であるため、この離間距離を拡げる方向に弾性変形させることにより、この円弧の長さが長い構成体に電線の端末を沿わせることができる。円弧の長さの長い構成体がこの状態から弾性変形前に戻ることにより、この円弧の長さの長い構成体に沿わせた電線の端末は、円弧の一端と他端との離間距離が電線の直径より再び短くなるため、電線の端末が抜け落ちるのを防止できる。作業者は、その構成体に電線を沿わせて一方の構成体と他方の構成体とを閉じることによって電線の端末を電線端末カバーに装着するまでの間、電線を保持し続ける必要がなくなる。よって、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0016】
本発明に係る電線端末カバーは、所定の工具を用いて第1構成体と第2構成体とを開閉操作する操作部を更に備えることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、操作部を用いることにより、第1構成体と第2構成体との開閉操作を行うことができ、間接活線作業で導電部を有する電線の端末を覆うことができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0018】
本発明に係る電線端末カバーの操作部は、第1構成体及び第2構成体に設けられ、且つ、絶縁操作棒の先端に設けられる間接活線把持工具の先端を挿入可能な凹部を有することが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、間接活線把持工具の先端を凹部に挿入することにより、間接活線把持工具の開閉と連動して、第1構成体及び第2構成体の開閉を操作することができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0020】
本発明に係る電線端末カバーは、水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段を更に備えることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、電線と開口部との間の隙間が防水手段で塞がれるため、電線と電線端末カバーとに跨って絶縁テープを巻き付ける手間を省くことができる。よって、電線端末カバーに電線の端末を装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の如く、本発明に係る電線端末カバーによれば、電線の端末を装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、第1実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、を示す。
【図2】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある左側面図、(b)は、同状態にある底面図、を示す。
【図3】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、(c)は、同状態にある底面図、を示す。
【図4】同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態から閉じる過程を表す図を示す。
【図5】(a)は、第2実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、を示す。
【図6】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある左側面図、(b)は、同状態にある底面図、を示す。
【図7】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、(c)は、同状態にある底面図、を示す。
【図8】同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態から閉じる過程を表す図を示す。
【図9】(a)は、第3実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、(c)は、同状態にある左側面図、を示す。
【図10】(a)は、同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、を示す。
【図11】同実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを開いた状態から閉じる過程を表す図を示す。
【図12】(a)は、その他の実施形態に係る電線端末カバーの第1構成体と第2構成体とを閉じた状態にある正面図、(b)は、同状態にある平面図、を示す。
【図13】従来の電線端末カバーの半断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る電線端末カバーの第1実施形態について、図面を参酌しつつ、説明する。
【0025】
<第1実施形態>
まず、同実施形態に係る電線端末カバーの構成について、図1〜図3を参酌しつつ説明する。図1〜図2は、同実施形態に係る電線端末カバー1を閉じた状態を示す図である。図1(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、図2(a)は、左側面図、同図(b)は、底面図である。図3は、同実施形態に係る電線端末カバー1を開いた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、同図(c)は、底面図である。
【0026】
同実施形態に係る電線端末カバー1は、電線の外径と略同一の内径を有する円筒形状に2つの構成体の組み合わせによって形成可能な第1構成体2及び第2構成体3と、該第1構成体2及び該第2構成体3を開閉自在に連結可能な連結部4と、第1構成体2及び第2構成体3を閉じた状態で閉止可能な閉止部5と、所定の工具を用いて第1構成体2と第2構成体3とを開閉操作する操作部6と、水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段7とを備える。本実施形態では、第1構成体2、第2構成体3、連結部4、閉止部5及び操作部6は、一体で成形されており、電線の端末の導電部を絶縁するために合成樹脂などの絶縁性材料で成形されている。
【0027】
第1構成体2及び第2構成体3は、それぞれ断面形状が円弧状に形成された部分を複数備え、各円弧の内面が同じ方向に向き且つ円弧の一端及び他端がすべて同一直線上に並ぶように配置されて形成されている。第1構成体2及び第2構成体3は、この円弧の内側同士を向かい合わせにして重ね合わせることにより略筒形状の収納部8,8,8を複数形成する。以下、第1構成体2及び第2構成体3を重ね合わせたこの状態を「第1構成体2と第2構成体3とを閉じた状態」(図1及び図2の状態)と称し、第1構成体2及び第2構成体3を重ね合わせた状態で筒芯方向(矢印Aの指す方向)の向かい合う一方の縁を軸に他方の縁をそれぞれ離間する方向に回動させた(図4で矢印Dの指す方向)状態を「第1構成体2と第2構成体3とを開いた状態」(図3の状態)と称する。
【0028】
収納部8,8,8は、異なる線径の電線に対応してその端末を収納することができるように、それぞれ異なる線径の電線に対応して複数備えている。これらの収納部8,8,8は、それぞれ筒芯方向と直交する幅方向(矢印Bの指す方向)に並んで設けられると共に、第1構成体2と第2構成体3とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体2と第2構成体3とに分かれて形成される。本実施形態に係る収納部8,8,8は、3つの異なる電線の線径に対応しており、具体的には、公称断面積200mm2、58mm2、25mm2に対応している。なお、ここで挙げる公称断面積(又は線径)は、これに限定されるものではなく、適宜変更することができる。対応可能な電線の種類についても、3つに限定されるものではなく、2つ以上で必要に応じて増減させることも可能である。収納部8の筒芯方向の長さは、これらの公称断面積の違いを明確に示すために、異なる長さに設定されている。具体的には、線径の最も細い25mm2の電線を収納する収納部8が最も短くなっており、線径の最も太い200mm2の電線を収納する収納部8が最も長くなっている。これは、収納部8,8,8の内面と電線の端末の外周面との接触範囲を線径の太いものほど多くすることにより、自重により抜けにくくすることも考慮したものである。
【0029】
第1構成体2及び第2構成体3は、組み合わせることによって異なる線径の電線に対応して収納可能な円筒形状の収納部8,8,8を複数形成可能な構成部21,…,31,…と、該構成部21,…,31,…の強度を隣接する構成部21,…,31,…と相互に補い合うべく構成部21,…,31,…の側面と隣接する構成部21,…,31,…の側面とを結合する補強部22,22,32,32と、複数の構成部21,…,31,…の一端を筒芯方向と直交する方向Bに並べて接続する防水手段保持部23,33とを備える。
【0030】
各構成部21,…,31,…は、断面形状が円弧状に形成されると共に、所定長さ連続して形成される分割円筒部21a,…,31a,…と、該分割円筒部21a,…,31a,…の筒芯方向Aの一端部を塞ぐ底部21b,…,31b,…と、分割円筒部21a,…,31a,…の筒芯方向Aの他端部に形成される開口端部21c,…,31c,…とを備える。分割円筒部21a,…,31a,…は、第1構成体2と第2構成体3とを組み合わせた状態では、電線の端末(電線の端末が導体を露出させているときなどのように、電線の端末と端末に連続する導体被覆部分とでその線径が異なる場合は、その導体被覆部分を含める)の外周面と当接する部分となる。底部21b,…,31b,…は、電線の端末の先端と当接若しくは対向する部分となる。開口端部21c,…,31c,…は、電線をこの収納部8,…から引き出すための開口となる部分となり、電線を通して収納部8,…の内部から外部に通す部分となる。本実施形態に係る第1構成体2及び第2構成体3の分割円筒部21a,…,31a,…は、断面形状が半円の円弧状に形成される。このように、分割円筒部21a,…,31a,…は、円弧の一端と他端との最短の離間距離が電線(若しくは電線の端末)の外形の直径と略同一となっている。
【0031】
補強部22,…,32,…は、分割円筒部21a,…,31a,…の筒芯方向Aの縁とその隣り合う分割円筒部21a,…,31a,…の縁とを、開口端部21c,…,31c,…側から底部21b,…,31b,…側に向かって分割円筒部21a,…,31a,…と面する範囲を結合する。補強部22,…は、分割円筒部21a,…,31a,…と隣接する他の分割円筒部21a,…,31a,…とを結合することにより、剛性が高くなっている。
【0032】
防水手段保持部23,33は、第1構成体2及び第2構成体3を閉じた状態で、収納部8,…に収納された電線の端末以外の部分を電線端末カバー1の外に出すと共に、防水手段7を保持する保持部本体23a,33aと、第1構成体2及び第2構成体3を閉じた状態で収納部8,…と保持部本体23a,33aとの収納空間が連続するように形成する連絡開口23b,33bと、該連絡開口23b,33bが設けられた面(上面)と対向する面(下面)の略全面に設けられる開口23c,33cとを備える。防水手段保持部23,33は、収納部8,…に収納された電線の端末以外の電線の部分を収納部8,…の外部に出すために、電線の端末を第1構成体2と第2構成体3との分割円筒部21a,…,31a,…に沿わせ、電線の端末以外の電線部分を分割円筒部21a,…,31a,…から連絡開口23b,…,33b,…に跨いで開口23c,33cまで沿わせることができるようになっている。
【0033】
連結部4は、筒芯方向Aの長さが最も長い分割円筒部21a,…,31a,…の側面に連続して可撓部材4が設けられる。可撓部材4は、容易に曲げることができる材質で成形されている。この可撓部材4は、第1構成体2と第2構成体3とを、分割円筒部21a,…,31a,…毎に対応する電線の端末の線径がそれぞれ一致するように連結する。
【0034】
分割円筒部21a,…,31a,…は、筒芯方向Aの長さが最も短いものから順に長くなるように配置したが、開閉に伴う負担が大きい可撓部材4が設けられる範囲を広くすると共に、分割円筒部21a,…,31a,…間の補強部22,…,32,…が設けられる範囲も広くするためであるが、これに限定されるものではない。
【0035】
閉止部5は、第1構成体2及び第2構成体3の保持部本体23a,33aの可撓部材4が設けられた面と対向する面に直交する方向Bにそれぞれが向かい合うように突出した閉止部本体51,51と、第1構成体2の閉止部本体51の第2構成体3と対向する面に設けられる円錐台形状の突起部52と、第2構成体3の閉止部本体51の第1構成体2と対向する面に設けられ、突起部52を差し込み可能な係止口53とを備える。なお、係止口53は、突起部52の突出量に応じた深さを有する係止穴であってもよい。
【0036】
操作部6は、第1構成体2及び第2構成体3の保持部本体23a,33aの外周面に設けられ、収納部8の筒芯方向に直交する幅方向Bに連続的に形成されると共に、第1構成体2と第2構成体3とを分割する分割面に直交する方向(矢印Cの指す方向)に突出する板状の部材である。操作部6は、絶縁ヤットコなどの間接活線把持工具などの工具で把持して、第1構成体2と第2構成体3とを開閉操作する。また、第1構成体2と第2構成体3とが開いた状態から閉じる際に、第1構成体2若しくは第2構成体3の閉止部5の閉止部本体51を把持して閉じることが可能であることから、閉止部5も操作部6に含まれる。
【0037】
防水手段7は、防水手段保持部23,33の開口23c,33cに長手方向の縁に沿って設けられる複数の帯状の遮蔽片71,…と、防水手段保持部23、33の内側に保持される弾性変形可能な弾性部材72,72とを備える。
【0038】
遮蔽片71,…は、可撓性の材質で成形されており、例えば、合成樹脂やゴムなどで成形されている。遮蔽片71,…は、防水手段保持部23,33に電線を沿わせた際に、電線の外周面を損傷させることなく、且つその隙間を塞ぐことを目的とする。遮蔽片71,…は、電線端末カバー1の使用状態において、防水手段保持部23と電線との隙間を塞ぐことにより、雨水や融雪などの水が収納部8,…に侵入することを防止する。
【0039】
弾性部材72,72は、第1構成体2及び第2構成体3の防水手段保持部23,33の内側にそれぞれ接着されており、第1構成体2及び第2構成体3を閉じたときに、収納部8,…に装着した電線を圧縮変形することにより避けつつ、電線を装着していない他の収納部8,…との防水手段保持部23,33の連絡開口23b,…,33b,…を塞ぐことができる。
【0040】
次に、同実施形態に係る電線端末カバー1の作用・効果について、図1〜4を参酌しつつ説明する。図4は、第1構成体2及び第2構成体3を開いた状態から閉じる過程を表す。
【0041】
電柱に引留固定される高圧絶縁電線の引留部において、引留クランプの把持部より突出する高圧絶縁電線の端末に電線端末カバー1を装着する場合において、作業者の一人がこの電線の端末Wを絶縁ヤットコなどで把持して、その位置を固定する。2人目の作業者が第1構成体2及び第2構成体3を開いて、絶縁ヤットコで第2構成体3の操作部6を把持し、その電線の端末Wまで移動させる。
【0042】
装着する電線の端末Wの線径を確認し、第2構成体3の3つある構成部31,31,31のうちでこの電線の線径Wに対応する一つの構成部31を選択する。その電線の端末Wを構成部31の底部31b側に合わせ、分割円筒部31a及び防水手段保持部33に沿わせる。この状態で、3人目の作業者が第1構成体2の操作部6若しくは閉止部5を絶縁ヤットコで把持し、図4に示すように、可撓部材4を回動中心に第1構成体2を第2構成体3に向けて矢印D方向に回動させる。このようにして、第1構成体2と第2構成体3とを閉じる。閉止部5でこの第1構成体2及び第2構成体3を閉じた状態を維持させる。
【0043】
このように、収納部8,…が異なる線径の電線Wに対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径Wに適した収納部8,…を選んで装着することができる。収納部8,…は、第1構成体2と第2構成体3とが開いた状態では、第1構成体2と第2構成体3とに分かれて形成される。この第1構成体2及び第2構成体3のいずれか一方に電線の端末Wを沿わせる。この状態から、第1構成体2と第2構成体3とを閉じることにより、電線の端末Wを沿わせた第2構成体3に第1構成体2が合わさって収納部8,…が形成される。電線の端末Wは、この収納部8,…の内部に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバー1の筒芯方向Aから収納部8,…に向けて電線の端末Wを挿入する必要はなく、電線をその線径に対応した収納部8,…に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバー1に電線の端末Wを装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0044】
収納部8,…が第1構成体2及び第2構成体3に分かれて形成される部分の円弧の長さが略同一の比率で形成されており、電線端末カバー1自体も第1構成体2及び第2構成体3の分割面を面対称になるように各構成を備えているため、電線の端末Wに対して左右方向のいずれからでも収納することができる。
【0045】
また、操作部6を用いることにより、第1構成体2と第2構成体3との開閉操作を行うことができ、間接活線作業で導電部を有する電線の端末を覆うことができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバー1に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0046】
また、電線の端末Wと防水手段保持部23,33との間の隙間が防水手段7に塞がれるため、電線の端末Wと電線端末カバー1とに跨って絶縁テープを巻き付ける手間を省くことができる。よって、電線端末カバー1に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0047】
次に、本発明に係る電線端末カバーの第2実施形態について、図面を参酌しつつ、説明する。なお、第1実施形態に係る電線端末カバー1と同様の構成については、同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0048】
<第2実施形態>
まず、同実施形態に係る電線端末カバーの構成について、図5〜図7を参酌しつつ説明する。図5〜図6は、同実施形態に係る電線端末カバー100を閉じた状態を示す図である。図5(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、図6(a)は、左側面図、同図(b)は、底面図である。図7は、同実施形態に係る電線端末カバー100を閉じた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、同図(c)は、底面図、である。
【0049】
同実施形態に係る電線端末カバー100は、電線の外径と略同一の内径を有する円筒形状に2つの構成体の組み合わせによって形成可能な第1構成体102及び第2構成体103と、該第1構成体102及び該第2構成体103を開閉自在に連結可能な連結部4と、第1構成体102及び第2構成体103を閉じた状態で閉止可能な閉止部105と、所定の工具を用いて第1構成体102と第2構成体103とを開閉操作する操作部106と、水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段7とを備える。本実施形態では、第1構成体102、第2構成体103、連結部4、閉止部105及び操作部106は、一体で成形されており、電線の端末の導電部を絶縁するために合成樹脂などの絶縁性材料で成形されている。
【0050】
第1構成体102及び第2構成体103は、それぞれ断面形状が円弧状に形成された部分を複数備え、各円弧の内面が同じ方向に向き且つ円弧の中心が同一線上に並ぶように配置されて形成されている。第1構成体102及び第2構成体103は、この円弧の内側同士を向かい合わせにして重ね合わせることにより略筒形状の収納部108,…を複数形成する。
【0051】
収納部108,…は、異なる線径の電線に対応してその端末を収納することができるように、それぞれ異なる線径の電線に対応して複数備えている。これらの収納部108,…は、それぞれ筒芯方向Aに沿って並んで設けられると共に、第1構成体102と第2構成体103とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体102と第2構成体103とに分かれて形成される。本実施形態に係る収納部108,…は、3つの異なる電線の線径に対応しており、具体的には、公称断面積200mm2、58mm2、25mm2に対応している。
【0052】
第1構成体102及び第2構成体103は、組み合わせることによって異なる線径の電線に対応して収納可能な円筒形状の収納部108,…を複数形成可能な構成部121,…,131,…と、該構成部121,…,131,…の一端を接続する防水手段保持部123,133とを備える。
【0053】
各構成部121,…,131,…は、断面形状が円弧状に形成されると共に、所定長さ連続して形成される分割円筒部121a,…,131a,…と、該分割円筒部121a,…,131a,…の筒芯方向Aの一端部を塞ぐ底部121b,…,131b,…と、分割円筒部121a,…,131a,…の筒芯方向Aの他端部に形成される開口端部121c,…,131c,…とを備える。分割円筒部121a,…,131a,…は、第1構成体102と第2構成体103とを組み合わせた状態では、電線の端末の外周面と当接する部分となる。底部121b,…,131b,…は、電線の端末の先端と当接若しくは対向する部分となる。開口端部121c,…,131c,…は、電線をこの収納部108,…から出すための開口となる部分となり、電線を通して収納部108,…の内部から外部に通す部分となる。本実施形態に係る第1構成体102及び第2構成体103の分割円筒部121a,…,131a,…は、断面形状が半円の円弧状に形成される。このように、分割円筒部121a,…,131a,…は、円弧の一端と他端との最短の離間距離が電線(若しくは電線の端末)の外形の直径と略同一となっている。
【0054】
防水手段保持部123,133は、第1構成体102及び第2構成体103を閉じた状態で、収納部108,…に収納された電線の端末以外の部分を電線端末カバー100の外に出すと共に、防水手段7を保持する保持部本体123a,133aと、第1構成体102及び第2構成体103を閉じた状態で収納部108,…と保持部本体123a,133aとの収納空間が連続するように形成する連絡開口123b,133bと、該連絡開口123b,133bが設けられた面(上面)と対向する面(下面)の略全面に設けられる開口123c,133cとを備える。防水手段保持部123,133は、収納部108,…に収納された電線の端末以外の電線の部分を収納部108,…の外部に引き出すために、電線の端末を第1構成体102と第2構成体103との分割円筒部121a,…,131a,…に沿わせ、電線の端末以外の電線部分を分割円筒部121a,…,131a,…から連絡開口123b,133bに跨いで開口123c,133cまで沿わせることができるようになっている。
【0055】
閉止部105は、第1構成体102及び第2構成体103の構成部121,…,131,…及び保持部本体123a,133aの可撓部材4が設けられた面と対向する面に直交する方向にそれぞれが向かい合うように突出した閉止部本体151,151と、第1構成体102の閉止部本体151の第2構成体103と対向する面に設けられる円錐台形状の突起部152,152と、第2構成体103の閉止部本体151の第1構成体102と対向する面に設けられ、突起部152,152を差し込み可能な係止口153,153とを備える。なお、係止口153は、突起部152の突出量に応じた深さを有する係止穴であってもよい。
【0056】
操作部106は、第1構成体102及び第2構成体103の保持部本体123a,133aの外周面に設けられ、収納部108,…の筒芯方向Aに沿う方向に連続的に形成されると共に、第1構成体102と第2構成体103とを分割する分割面に直角方向Cに突出する板状の部材である。操作部106は、絶縁ヤットコなどの間接活線把持工具などの工具で把持して、第1構成体102と第2構成体103とを開閉操作する。また、第1構成体102と第2構成体103とが開いた状態から閉じる際に、第1構成体102若しくは第2構成体103の閉止部105を把持して閉じることが可能であることから、閉止部105も操作部106に含まれる。
【0057】
次に、同実施形態に係る電線端末カバー100の作用・効果について、図5〜8を参酌しつつ説明する。図8は、第1構成体102及び第2構成体103を開いた状態から閉じる過程を表す。
【0058】
電柱に引留固定される高圧絶縁電線の引留部において、引留クランプの把持部より突出する高圧絶縁電線の端末に電線端末カバー100を装着する場合において、作業者の一人がこの電線の端末Wを絶縁ヤットコなどで把持して、その位置を固定する。2人目の作業者が第1構成体102及び第2構成体103を開いて、絶縁ヤットコで第2構成体103の操作部106を把持し、その電線の端末Wまで移動させる。
【0059】
装着する電線の端末Wの線径を確認し、第2構成体103の3つある構成部131,…のうちでこの電線の線径に対応する構成部131を選択する。その電線の端末Wを構成部131の底部131b側に合わせ、分割円筒部131a及び防水手段保持部133に沿わせる。この状態で、3人目の作業者が第1構成体102の操作部106若しくは閉止部105を絶縁ヤットコで把持し、図8に示すように、可撓部材4を回動中心に第1構成体102と第2構成体103に向けて矢印D方向に回動させる。このようにして、第1構成体102と第2構成体103とを閉じる。閉止部105でこの第1構成体102及び第2構成体103を閉じた状態を維持させる。
【0060】
このように、収納部108,…が異なる線径の電線に対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径Wに適した収納部108,…を選んで装着することができる。収納部108,…は、第1構成体102と第2構成体103とが開いた状態では、第1構成体102と第2構成体103とに分かれて形成される。この第1構成体102及び第2構成体103のいずれか一方に電線の端末Wを沿わせる。この状態から、第1構成体102と第2構成体103とを閉じることにより、電線の端末Wを沿わせた第2構成体103に第1構成体102が合わさって収納部108,…が形成される。電線の端末Wは、この収納部108,…の内側に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバー100の筒芯方向Aから収納部108,…に向けて電線の端末Wを挿入する必要はなく、電線をその線径に対応した収納部108,…に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバー100に電線の端末Wを装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0061】
複数の収納部108,…は、異なる線径の電線に対応して、筒芯方向Aに沿って設けられる。このように、収納部108,…は、電線の端末Wを装着した状態で、電線の端末Wの延長線上に沿って設けられる。すなわち、収納部108,…の筒芯方向と直交する幅方向Bに拡がることがないため、省スペースとすることができる。
【0062】
収納部108,…が第1構成体102及び第2構成体103に分かれて形成される部分の円弧の長さが略同一の比率で形成されており、電線端末カバー100自体も第1構成体102及び第2構成体103の分割面を面対称になるように各構成を備えているため、電線の端末Wに対して左右方向のいずれからでも収納することができる。
【0063】
また、操作部106を用いることにより、第1構成体102と第2構成体103との開閉操作を行うことができ、間接活線作業で導電部を有する電線の端末Wを覆うことができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバー100に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0064】
また、電線の端末Wと防水手段保持部123,133との間の隙間が防水手段7に塞がれるため、電線の端末Wと電線端末カバー100とに跨って絶縁テープを巻き付ける手間を省くことができる。よって、電線端末カバー100に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0065】
次に、本発明に係る電線端末カバーの第3実施形態について、図面を参酌しつつ、説明する。なお、第1実施形態に係る電線端末カバー1と同様の構成については、同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0066】
<第3実施形態>
まず、同実施形態に係る電線端末カバーの構成について、図9〜図10を参酌しつつ説明する。図9は、同実施形態に係る電線端末カバー200を開いた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、同図(c)は、左側面図、である。図10は、同実施形態に係る電線端末カバー200を閉じた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、である。
【0067】
同実施形態に係る電線端末カバー200は、電線の外径と略同一の内径を有する円筒形状に2つの構成体の組み合わせによって形成可能な第1構成体202及び第2構成体203と、該第1構成体202及び該第2構成体203を開閉自在に連結可能な連結部4と、第1構成体202及び第2構成体203を閉じた状態で閉止可能な閉止部5と、所定の工具を用いて第1構成体202と第2構成体203とを開閉操作する操作部6と、水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段7とを備える。
【0068】
第1構成体202及び第2構成体203は、それぞれ断面形状が円弧状に形成された部分を複数備え、各円弧の内面が同じ方向に向き且つ円弧の一端及び他端がすべて同一直線上に並ぶように配置されて形成されている。第1構成体202及び第2構成体203は、この円弧の内側同士を向かい合わせにして重ね合わせることにより略筒形状の収納部208,…を複数形成する。
【0069】
収納部208,…は、異なる線径の電線に対応してその端末を収納することができるように、それぞれ異なる線径の電線に対応して複数備えている。これらの収納部208,…は、それぞれ筒芯方向と直交する幅方向Bに並んで設けられると共に、第1構成体202と第2構成体203とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される。
【0070】
第1構成体202及び第2構成体203は、組み合わせることによって異なる線径の電線に対応して収納可能な円筒形状の収納部208,…を複数形成可能な構成部221,…,231,…と、該構成部221,…,231,…の強度を隣接する構成部221,…,231,…と相互に補い合うべく構成部221,…,231,…の側面と隣接する構成部221,…,231,…の側面とを結合する補強部222,…,232,…と、複数の構成部221,…,231,…の一端を筒芯方向と直交する幅方向Bに並べて接続する防水手段保持部223,…,233,…とを備える。
【0071】
各構成部221,…,231,…は、断面形状が円弧状に形成されると共に、所定長さ連続して形成される分割円筒部221a,…,231a,…と、該分割円筒部221a,…,231a,…の筒芯方向Aの一端部を塞ぐ底部221b,…,231b,…と、分割円筒部221a,…,231a,…の筒芯方向Aの他端部に形成される開口端部221c,…,231c,…とを備える。
【0072】
第1構成体202及び第2構成体203の分割円筒部221a,…,231a,…は、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成される。本実施形態の第1構成体202及び第2構成体203の分割円筒部221a,…,231a,…は、2対1の比率で形成される。このように、第1構成体202の分割円筒部221a,…,231a,…は、円弧の一端と他端との最短の離間距離が電線(若しくは電線の端末)の外形の直径よりも狭くなっている。第1構成体202及び第2構成体203のうち円弧の長さが長い第1構成体202は、少なくとも弾性変形可能な材質で成形される。なお、第1構成体202と第2構成体203の分割円筒部221a,…,231a,…は、2対1の比率に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0073】
補強部222,…,232,…は、分割円筒部221a,…,231a,…の筒芯方向Aの縁とその隣り合う分割円筒部221a,…,231a,…の縁とを、開口端部221c,…,231c,…側から底部221b,…,231b,…側に向かって分割円筒部221a,…,231a,…と面する範囲を結合する。補強部222,…は、分割円筒部221a,…,231a,…と隣接する他の分割円筒部221a,…,231a,…とを結合することにより、剛性が高くなっている。
【0074】
防水手段保持部223,233は、第1構成体202及び第2構成体203を閉じた状態で、収納部208,…に収納された電線の端末以外の部分を電線端末カバー200の外に出すと共に、防水手段7を保持する保持部本体223a,233aと、第1構成体202及び第2構成体203とを閉じた状態で収納部208,…と保持部本体223a,233aとの収納空間が連続するように形成する連絡開口223b,233bと、該連絡開口223b,233bが設けられた面(上面)と対向する面(下面)の略全面に設けられる開口223c,233cとを備える。防水手段保持部223,233は、収納部208,…に収納された電線の端末以外の電線の部分を収納部208,…の外部に出すために、電線の端末を第1構成体202と第2構成体203との分割円筒部221a,…,231a,…に沿わせ、電線の端末以外の電線部分を分割円筒部221a,…,231a,…から連絡開口223b,233bに跨いで開口223c,233cまで沿わせることができるようになっている。
【0075】
次に、同実施形態に係る電線端末カバー200の作用・効果について、図9〜11を参酌しつつ説明する。図11は、第1構成体202及び第2構成体203を開いた状態から閉じる過程を表す。電柱に引留固定される高圧絶縁電線の引留部において、引留クランプの把持部より突出する高圧絶縁電線の端末Wに電線端末カバー200を装着する場合において、作業者の一人がこの電線の端末Wを絶縁ヤットコなどで把持して、その位置を固定する。2人目の作業者が第1構成体202及び第2構成体203を開いて、絶縁ヤットコで第2構成体203の操作部6を把持し、その電線の端末Wまで移動させる。
【0076】
装着する電線の端末Wの線径を確認し、第2構成体203の3つある構成部231,…のうちでこの電線の線径に対応する構成部231を選択する。その電線の端末Wを構成部231の底部231b側に合わせ、分割円筒部231aの両縁を弾性変形させて、分割円筒部231a及び防水手段保持部233に沿わせる。電線の端末Wは、分割円筒部231aの両縁が弾性変形から復帰することによって、分割円筒部231aの両縁の最短直線距離が直径より狭くなり、分割円筒部231a,…の内部に保持される。この状態で、2人目の作業者が電線の端末Wを離して、第2構成体203の操作部6若しくは閉止部5を絶縁ヤットコで把持し、可撓部材4を回動中心に第1構成体202と第2構成体203とを閉じる。閉止部5でこの第1構成体202及び第2構成体203を閉じた状態を維持させる。
【0077】
このように、収納部208,…が異なる線径の電線に対応して複数設けられており、端末処理が必要な電線の線径に適した収納部208,…を選んで装着することができる。収納部208,…は、第1構成体202と第2構成体203とが開いた状態では、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される。この第1構成体202及び第2構成体203のいずれか一方に電線の端末Wを沿わせる。この状態から、第1構成体202と第2構成体203とを閉じることにより、電線の端末Wを沿わせた第2構成体203に第1構成体203が合わさって収納部208,…が形成される。電線の端末Wは、この収納部208,…の内部に収納される。すなわち、従来のように電線端末カバー200の筒芯方向Aから収納部208に向けて電線の端末Wを挿入する必要はなく、電線の端末Wをその線径に対応した収納部208,…に収納することが容易にできる。よって、電線端末カバー200に電線の端末Wを装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0078】
また、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される部分の円弧の長さの比率が異なるため、少なくとも第1構成体202及び第2構成体203のうち円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…が電線の端末Wを少なくとも中心角180度以上の外周面で覆うことができる。この円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…は、円弧の一端と他端との離間距離が電線の直径より短く形成される。この円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…は、弾性変形可能であるため、この離間距離を拡げる方向に弾性変形させることにより、この円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…に電線の端末Wを沿わせることができる。円弧の長さの長い第1構成体202の分割円筒部221a,…がこの状態から弾性変形前に戻ることにより、円弧の一端と他端との離間距離が電線の直径より再び短くなるため、この円弧の長さの長い第1構成体202の分割円筒部221a,…に沿わせた電線の端末Wが抜け落ちるのを防止できる。作業者は、その第1構成体202に電線の端末Wを沿わせて一方の第1構成体202と他方の第2構成体203とを閉じることによって電線の端末Wを電線端末カバー200に装着するまでの間、電線の端末Wを保持し続ける必要がなくなる。よって、電線端末カバー200に電線の端末Wを装着しやすくすることにより電線の端末処理の作業性を改善することができる。
【0079】
なお、同実施形態に係る電線端末カバー200は、第1構成体202及び第2構成体203のうち円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221aが弾性変形可能な材質で成形される例を説明したが、これに限定されるものではない。第1構成体202及び第2構成体203のうち円弧の長さが長い第1構成体202の分割円筒部221a,…の中心角180度以上の円弧の範囲が弾性変形可能な材質で成形されておればよい。また、この第1構成体221の分割円筒部221a,…の弾性変形の際に、隣接する分割円筒部221a,…とを接続する補強部222,…がその妨げとなる場合、この補強部も弾性変形可能な材質で成形してもよく、又は、補強部を設けなくてもよい。
【0080】
また、同実施形態に係る電線端末カバー200は、収納部208,…が筒芯方向と直交する方向Bに並んで設けられ、第1構成体202と第2構成体203とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成される例を説明したが、これに限定されるものではない。第2実施形態に示すように、収納部208,…が筒芯方向Aに沿って並んで設けられ、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成されるようにしてもよい。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな変更が可能である。
【0082】
上記第1〜第3実施形態に係る電線端末カバー1,100,200は、防水手段保持部23,33,123,133,223,233の側面に形成される板状の操作部6,6で第1構成体2,102,202と第2構成体3,103,203とを開閉操作する例を説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、図12に示すように、操作部306は、第1構成体2及び第2構成体3の保持部本体23a,33aの閉止部5側の外周面に設けられ、且つ、絶縁操作棒の先端に設けられる間接活線把持工具の先端を挿入可能な凹部306が設けられるものであってもよい。なお、図12は、電線端末カバー300を閉じた状態を示す図である。同図(a)は、正面図、同図(b)は、平面図、である。
【0083】
このように、間接活線把持工具の先端を凹部306に挿入することにより、間接活線把持工具の開閉と連動して、第1構成体2及び第2構成体3の開閉を操作することができる。よって、このような間接活線作業においても、電線端末カバー300に電線の端末Wを装着しやすくすることにより、更に、電線の端末処理の作業性を改善することができる。なお、操作部306は、凹部306に限定されるものではなく、間接活線把持工具の先端が第1構成体2と第2構成体3とを開閉する方向に係止可能であれば、例えば、鍵状(L状形状)であってもよい。
【0084】
上記第1及び第3実施形態に係る電線端末カバー1,200は、異なる電線の線径に応じた複数の収納部8,…,208,…が筒芯方向と直交する方向Bに所定距離を離して並んで設けられる例を説明したが、これに限定されるものではない。複数の収納部がそれぞれ独立して形成されておらず、筒芯方向と直交する方向Bにつながっていてもよい。よって、本実施形態のように収納部を独立して形成されないが、このように構成することにより、電線端末カバーの幅方向の長さを短縮することができる。
【0085】
上記第1〜第3実施形態に係る電線端末カバー1,100,200は、高圧絶縁電線の端末を覆う例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電力用、通信用及び配電用電線等の電線の端末に適用してもよい。また、その際、電線の線径が丸形の断面形状を有する電線に限定されるものではない。例えば、断面形状が平形や長円形の電線であって、略筒形状に形勢された収納部にも適用することができる。このとき、収納部の断面形状も円筒形状ではなく、この断面形状に合わせて適宜変更してもよい。また、ここでいう電線には、導体に絶縁体を覆うものに加え、導体に絶縁体と保護被覆を覆うケーブルも含まれるものとする。
【0086】
上記第1〜第3実施形態に係る電線端末カバー1,100,200は、複数の収納部8,108,208の開口部に弾性部材収納部23,33,123,133,223,233を備える例を説明したが、これに限定されるものではない。複数の収納部は、異なる線径の電線に対応して、筒芯方向と直交する方向に並んで設けられる。このように、いずれの収納部に電線を装着しても、他の収納部を跨ぐことなく、収納部の開口端部と電線の外周面との間に隙間が空くことのないようにすることができ、他の収納部を切断する必要もない。よって、防水手段保持部を備えない場合で電線端末カバーの開口端部と電線とに絶縁テープを巻き付けるような場合であっても容易に行うことができる。
【0087】
また、電線端末カバーが複数の収納部を備え、弾性部材収納部を備えなくてもよい。この場合、遮蔽片を各収納部の開口端部に設けることで防水手段を構成することができる。また、閉止部及び操作部を収納部に直接接続することにより、その作業・効果を満たすことができる。
【0088】
上記第1〜第3実施形態に係る電線端末カバー1,100,200は、連結部4が第1構成体2,102,202と第2構成体3,103,203とを開閉可能に連結する可撓部材4を備える例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、筒芯方向の長さが最も長い第1構成体2及び第2構成体3の分割円筒部21a,…,31a,…の側面に複数箇所設けられる蝶番4,…接続することにより、開閉可能に連結してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…電線端末カバー、2…第1構成体、21…構成部、21a…分割円筒部、21b…底部、21c…開口端部、22…補強部、23…防水手段保持部、23a…保持部本体、23b…連絡開口、23c…開口、3…第2構成体、31…構成部、31a…分割円筒部、31b…底部、31c…開口端部、32…補強部、33…防水手段保持部、33a…保持部本体、33b…連絡開口、33c…開口、4…連結部(可撓部材)、5…閉止部、51…閉止部本体、52…突起部、53…係止口、6…操作部、7…防水手段、71…遮蔽片、72…弾性部材、8…収納部、100…電線端末カバー、102…第1構成体、121…構成部、121a…分割円筒部、121b…底部、121c…開口端部、123…防水手段保持部、123a…保持部本体、123b…連絡開口、123c…開口、103…第2構成体、131…構成部、131a…分割円筒部、131b…底部、131c…開口端部、133…防水手段保持部、133a…保持部本体、133b…連絡開口、133c…開口、105…閉止部、151…閉止部本体、152…突起部、153…係止口、106…操作部、108…収納部、200…電線端末カバー、202…第1構成体、221…構成部、221a…分割円筒部、221b…底部、221c…開口端部、222…補強部、223…防水手段保持部、223a…保持部本体、223b…連絡開口、223c…開口、203…第2構成体、231…構成部、231a…分割円筒部、231b…底部、231c…開口端部、232…補強部、233…防水手段保持部、233a…保持部本体、233b…連絡開口、233c…開口、208…収納部、300…電線端末カバー、306…操作部(凹部)、400…電線端末カバー、401…収納部、402…開口部、403…底部、A…筒芯方向、B…(筒芯方向と直交する)幅方向、C…分割面に直交する方向、D…回動方向、W…電線の端末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部を複数有する電線端末カバーにおいて、
第1構成体と、第2構成体と、第1構成体及び第2構成体を開閉自在に連結可能な連結部とを更に備え、
収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略筒形状に形成され、
複数の収納部は、筒芯方向と直交する方向に並んで設けられると共に、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成されることを特徴とする電線端末カバー。
【請求項2】
異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部を複数有する電線端末カバーにおいて、
第1構成体と、第2構成体と、第1構成体及び第2構成体を開閉自在に連結可能な連結部とを更に備え、
収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略筒形状に形成され、
複数の収納部は、筒芯方向に沿って並んで設けられると共に、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成されることを特徴とする電線端末カバー。
【請求項3】
収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略円筒形状に形成され、且つ、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成され、少なくとも第1構成体及び第2構成体のうち円弧の長さが長い構成体が弾性変形可能に構成されてなる請求項1又は2に記載の電線端末カバー。
【請求項4】
所定の工具を用いて第1構成体と第2構成体とを開閉操作する操作部を更に備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線端末カバー。
【請求項5】
操作部は、第1構成体及び第2構成体に設けられ、且つ、絶縁操作棒の先端に設けられる間接活線把持工具の先端を挿入可能な凹部を有する請求項4に記載の電線端末カバー。
【請求項6】
水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段を更に備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の電線端末カバー。
【請求項1】
異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部を複数有する電線端末カバーにおいて、
第1構成体と、第2構成体と、第1構成体及び第2構成体を開閉自在に連結可能な連結部とを更に備え、
収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略筒形状に形成され、
複数の収納部は、筒芯方向と直交する方向に並んで設けられると共に、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成されることを特徴とする電線端末カバー。
【請求項2】
異なる線径の電線に対応してその端末を収納可能な収納部を複数有する電線端末カバーにおいて、
第1構成体と、第2構成体と、第1構成体及び第2構成体を開閉自在に連結可能な連結部とを更に備え、
収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略筒形状に形成され、
複数の収納部は、筒芯方向に沿って並んで設けられると共に、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で電線の端末を収納すべく、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成されることを特徴とする電線端末カバー。
【請求項3】
収納部は、第1構成体と第2構成体とを閉じた状態で略円筒形状に形成され、且つ、第1構成体と第2構成体とに分かれて形成される部分の円弧の長さが異なる比率で形成され、少なくとも第1構成体及び第2構成体のうち円弧の長さが長い構成体が弾性変形可能に構成されてなる請求項1又は2に記載の電線端末カバー。
【請求項4】
所定の工具を用いて第1構成体と第2構成体とを開閉操作する操作部を更に備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線端末カバー。
【請求項5】
操作部は、第1構成体及び第2構成体に設けられ、且つ、絶縁操作棒の先端に設けられる間接活線把持工具の先端を挿入可能な凹部を有する請求項4に記載の電線端末カバー。
【請求項6】
水の浸入を防止すべく、電線の端末の形状に応じて変形可能な防水手段を更に備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の電線端末カバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−193599(P2011−193599A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56323(P2010−56323)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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